説明

シート処理装置、および画像形成システム

【課題】オペレーターが放出爪とシート処理装置の間に指などをはさまれても、怪我をしないようにする。
【解決手段】シート処理装置30は、後処理したシートを排出する放出爪112の位置を検出する爪露出検知センサー114、爪進入検知センサー120、放出爪112を駆動する放出モーター135、放出モーター135の駆動制御を行う放出モーター駆動装置134、放出モーター駆動装置134にトルク制御をさせるトルク制御手段132を備える。トルク制御手段132は、放出モーター駆動装置134を制御し、放出爪112が放出爪制御手段130の内部にある間は第一のトルクで、放出爪112が放出爪制御手段130の外部に露出している間は第一のトルクより小さくかつ指などを傷つけない大きさの第二のトルクで放出爪112を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状記録媒体(以下、単に「シート」と記載する。)に対して、種々のシート処理を行うシート処理装置、およびこのシート処理装置とシート処理装置に搬送するシートに画像形成を行う画像形成装置とを備えた画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シート処理装置と画像形成装置とを備えた画像システムが知られている。画像形成装置には、複写機、プリンター、ファクシミリ、あるいはデジタル複合機などを使用する。また、シート処理装置は、画像形成装置で画像が形成されたシートにとじ処理、折り処理等所定のシート処理を行う。
【0003】
このようなシート処理装置では、シートを単葉であるいはシート束を排紙トレイへ完全に排出するため、シートあるいはシート束を排紙トレイまで搬送する放出爪が、シート処理装置外へ露出する構成のものがある。
【0004】
このような構成のシート処理装置では、オペレーターやユーザー(以下、単にオペレーターと記載する。)が外部に露出した放出爪に触れたり、はさまれたりして怪我をするおそれがある。そのため、さまざまな工夫がなされている。例えば特許文献1では、オペレーターが放出爪と装置の間に指を入れて傷を負うことが無いようにするため、放出爪のホームポジションをエンドフェンスに近い位置に設定し、放出爪が装置内へ戻るための開口部を放出爪自身でふさぐ構造を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明は、シートに対する連続処理ジョブ中にオペレーターが指がはさまれて外を負うおそれが残り、そのため、オペレーターは装置の動作中に十分な注意をはらう必要がある。
【0006】
本発明は、上記の課題にかんがみてなしたものであり、放出爪にオペレーターの指がはさまれたとしても、怪我を防止可能なシート処理装置、および画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシート処理装置は、搬入、処理したシートあるいはシート束を搬出する搬送手段と、該搬送手段を移動させる駆動手段と、前記搬送手段の位置を検出する位置検出手段と、前記駆動手段の出力トルクを制御するトルク制御手段と、を備え、前記トルク制御手段は、前記位置検出手段が検出した情報に基づいて前記駆動手段を制御して、前記搬送手段をあらかじめ定めた第一のトルクで駆動し、前記搬送手段が前記シート処理装置から露出しているときは、前記搬送手段を前記第一のトルクよりも小さくかつ前記搬送手段にはさまれた物体を損傷しないようにあらかじめ定めた大きさの第二のトルクで駆動する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オペレーターが搬送手段とシート処理装置の間に指をはさまれたとしても怪我をすることを防ぎ得るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態1に係る画像形成システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】図1で示した画像形成システムが備えるシート処理装置を示す断面図である。
【図3】図2で示したシート処理装置の放出爪ベルトを示す斜視図である。
【図4】同じく放出爪ベルトの側面図である。
【図5】同じく放出爪ベルトの正面図である。
【図6】図2で示したシート処理装置の動作を示す断面図である。
【図7】同じくシート処理装置のトルク制御手段の構成を示す回路図である。
【図8】同じく放出モーターのトルクおよび速さを示すグラフである。
【図9】同じく時間計測手段の動作を示すフローチャートである。
【図10】同じくシート処理装置の動作を示す断面図である。
【図11】同じくシート処理装置の動作を示す断面図である。
【図12】同じくシート処理装置の動作を示す断面図である。
【図13】同じくシート処理装置の動作を示す断面図である。
【図14】同じくシート処理装置の動作を示す断面図である。
【図15】同じくシート処理装置の動作を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下では単に実施形態と記載する)に係るシート処理装置、および画像形成システムについて説明する。
【0011】
<実施形態1>
実施形態1に係るシート処理装置、および画像形成システムは、シート処理装置の外部へ露出する経路を持つ放出爪を駆動制御するに際して、この放出爪がシート処理装置の外部に露出していることを検知し、露出している期間は放出爪の駆動トルクを指などがはさまれても損傷を与えない程度に低下させる。またシート処理装置は、前記放出爪がシート処理装置の外部に露出している時間を計測し、この時間があらかじめ定めた閾値を上回ったときにはシート処理装置の動作を停止させる。
【0012】
まず、画像形成システムについて説明する。図1は実施形態1に係る画像形成システムの全体構成を示す概略図である。画像形成システム10は、作像部21、画像読取部22、給紙部23を備えた画像形成装置20と、この画像形成装置20に接続され、画像形成装置20で画像形成処理されたシートに後処理を行うシート処理装置30とを備えて構成してある。実施形態1に係る画像形成システム10では、シート処理装置30は、画像形成装置20の側面に着脱可能に取り付けてある。シート処理装置30には、画像形成装置20の側面の排出口から画像形成済みのシートを搬入し、とじ処理、折り処理などの所定の処理を施す。
【0013】
画像形成装置20が、例えば電子写真方式のデジタル複合機である場合、コピー機能、プリンター機能、ファクシミリ機能などの機能を複合して備える。画像形成装置20の作像部21は、公知の電子写真方式、インクジェット方式などの公知の作像機構を備えている。作像部21は、画像読取部22で読み取った原稿の画像信号、図示しない上位装置から伝送される印刷用の画像信号、電話回線等で伝送される画像信号に基づいて、給紙部23から搬送したシートに画像を形成する。作像処理がなされたシートは順次シート処理装置30に搬送する。
【0014】
次に、実施形態1に係るシート処理装置30について説明する。図2は実施形態1に係るシート処理装置の構成を示す断面図である。シート処理装置30は、入口ローラー対105a、105b、搬送ローラー対104a、104bを備える。またシート処理装置30は、シートを一時的に積載する積載手段である処理トレイ100、排紙トレイ113、戻しコロ102、ジョガーフェンス101、後端フェンス108、搬送手段である放出爪112、放出爪ベルト111、放出ローラー109、放出コロ110を備える。さらに、シート処理装置30は、とじ処理を行うステープラー107、位置検出手段である爪露出検知センサー114、同じく位置検出手段である爪進入検知センサー120を備える。
【0015】
放出爪ベルト111は、環状のベルト状部材であり、放出ローラー109および放出コロ110によって駆動する。放出ローラー109および放出コロ110は、この放出爪ベルト111に取り付けた放出爪112を駆動する駆動手段をなす。放出爪112は、この放出爪ベルト111で形成する移動経路に沿って移動し、放出コロ110側において、シート処理装置30の外部に露出して(図13参照)、シートを排紙トレイ113に排出する。
【0016】
シート処理装置30において、画像形成装置20から排出したシートは、入口ローラー対105a、105b側から搬入する。順次搬入した複数枚のシートは、処理トレイ100で縦横の整合を行った後、ステープラー107によりとじ処理する。とじ処理したシート束は、放出爪112で端部から押し出して排紙トレイ113上へ排出する。
【0017】
入口ローラー対105a、105bは、搬送ガイド板106の最上流側に設けてあり、図示しない搬送モーターによって回転駆動する。搬送ガイド板106の最上流側には、シートの搬入を検知する図示しない入口センサーを設置する。
【0018】
戻しコロ102は、処理トレイ100のシート配置面に対向して設けてあり、回転軸103によって回転可能に支持してある。戻しコロ102は、図示しない戻しコロモータによって回転駆動し、シートを搬送方向上流側(図2中右下方向)に戻す。また、戻しコロ102は、図示しない戻しコロソレノイドによって回転軸103を中心に揺動するように駆動する。
【0019】
戻しコロ102は、戻しコロソレノイドON時に持ち上げ、戻しコロソレノイドOFF時に自重で戻し位置に戻るようにしてある。すなわち、戻しコロ102は、シート戻し動作時にOFFとなって処理トレイ100、またはシートに接触し、シート部材排出時にオン状態となって処理トレイ100またはシートから離間する。
【0020】
放出爪112は、図2および図3に示すように、シート束を保持する、かぎ状の部材を備えており、放出爪ベルト111に固定してある。放出爪ベルト111は、放出ローラー109および放出コロ110で支持してあり、図示しないかみ合い構造により放出ローラー109の回転力で放出爪ベルト111を駆動する。放出爪ベルト111により放出コロ110は連れ回る。
【0021】
放出ローラー109は、図示しない放出モーターによって回転駆動する。放出モーターは、放出爪制御手段130(図6参照)により、所定のトルクと回転数とで放出ローラー109を回転駆動するように制御する。
【0022】
ジョガーフェンス101は、図示しないジョガーモーターにより搬送方向へ直行する向き(図2の紙面に直交する向き)に往復運動し、処理トレイ100上のシートを横方向にそろえる。爪露出検知センサー114は、放出爪112がシート処理装置30の外部へ露出することを検出する。爪進入検知センサー120は、放出爪112がシート処理装置30の内部へ進入することを検出する。
【0023】
排紙トレイ113は搬送方向最下流(図2中左側)に配置してあり、図示しない排紙トレイ昇降モーターにより上下方向で昇降するように駆動する。
【0024】
次に実施形態1に係るシート処理装置30で、シート束を搬出する放出爪ベルト111、放出爪112、爪露出検知センサー114について詳細に説明する。図3は実施形態1に係るシート処理装置の放出爪ベルトを示す斜視図、図4は同放出爪ベルトを示す側面図、図5は同放出爪ベルトを示す正面図である。実施形態1に係るシート処理装置30において、放出爪ベルト111は、環状に形成したベルト部材であり、放出ローラー109と放出コロ110との間に掛け回してある。
【0025】
また、放出爪ベルト111の外側面には、放出爪112が配置してある。そして、放出爪ベルト111の放出爪112の搬送方向上流側(図3中右上方向)の側面片側に他の部分より幅広の突出部111aが形成してある。
【0026】
爪露出検知センサー114は、突出部111aに接触して放出爪112を検出する。実施形態1に係るシート処理装置30では、爪露出検知センサー114は、機械的に動作する電気スイッチで構成する。爪露出検知センサー114は、放出爪112がシート処理装置30の外部へ露出する位置に達すると、突出部111aに接触して、オフ状態となる(開放する)位置に配置してある。また、突出部111aは、放出爪112が初期位置へ帰還すると爪露出検知センサー114から外れて、爪露出検知センサー114をオン状態とする(短絡する)長さに設定してある。
【0027】
また、爪進入検知センサー120は、放出爪112がシート処理装置30内に移動したことを検出する。爪進入検知センサー120は、発光部と受光部とを備え、発光部からの光を物体が遮るのを受光部で検出することによって、物体の有無を検出するフォトインターラプターで構成してある。爪進入検知センサー120は、放出爪112がシート処理装置30の内部へ進入すると突出部111aが爪進入検知センサー120の光路を遮断する位置に配置してある。
【0028】
次にシート処理装置30の駆動制御について説明する。図6は実施形態1に係るシート処理装置の放出爪制御手段を示すブロック図である。放出爪制御手段130は、放出爪位置検出手段131と、トルク制御手段132と、速さ制御手段133と、放出モーター駆動装置134と、放出モーター135と、時間計測手段136と、を備えている。放出爪制御手段130は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Lead Only Memory)等を備えたマイクロコントロールユニット(MCU:Micro Control Unit)を備えている。放出爪制御手段130は、CPUで所定のプログラムを実行することによりその機能を実現する。なお、放出爪制御手段130は、シート処理装置30全体の制御を行う制御部(図示していない)でその機能を兼ねることができる。
【0029】
放出爪位置検出手段131は、前述した爪露出検知センサー114、および爪進入検知センサー120で構成する。
【0030】
トルク制御手段132は、具体的には、放出モーターの制限電流制御装置として構成する。トルク制御手段132の詳細については後に説明する。トルク制御手段132は、放出爪位置検出手段131である爪露出検知センサー114、爪進入検知センサー120の検出情報をもとに、放出爪112が外部へ露出している間、放出モーターの出力トルクを第一のトルクから、この第一のトルクより小さい第二のトルクで駆動するよう制御する。
【0031】
速さ制御手段133は、この放出爪制御手段130を構成するマイクロコントロールユニットに内蔵したパルスジェネレータなどで構成する。速さ制御手段133は、放出爪位置検出手段131の検出情報を元に、放出爪112が放出爪制御手段130内に位置している間はあらかじめ定めた第一の速さで駆動し、放出爪112が外部へ露出している間は第1の速さより遅い第二の速さで放出爪112を駆動するよう、放出モーター135の回転数を制御する。
【0032】
放出モーター駆動装置134は、モータードライブIC等を備えて構成する。また、放出モーター135は、ステッピングモーター、DCサーボモーターなどで構成する。さらに、時間計測手段136は、フラッシュメモリー(不揮発性半導体メモリー)を備えている。時間計測手段136は、放出爪112が露出状態になったときから一定時間ごとにフラッシュメモリーに値を加算していき、爪進入検知センサー120で放出爪112を検出するまでの間の積算値が所定の閾値を超えたとき、一定時間が経過したものとして、シート処理装置30を停止させる停止信号を発生する。
【0033】
次にトルク制御手段132の構成について説明する。図7は実施形態1に係るトルク制御手段の構成を示す回路図である。トルク制御手段132は、トランジスタQ1、抵抗R1、R2、R3、R4を備えている。トルク制御手段132において、爪露出検知センサー114の出力をトランジスタQ1のベースに入力させる。トランジスタQ1がオフ状態となるとき、抵抗R1、R2で電圧VDDを分配し、基準電圧として放出モーター駆動装置134に入力する。一方、トランジスタQ1がオン状態となったとき、抵抗R1、R2、R3で電圧VDDを分配し、基準電圧として放出モーター駆動装置134に入力する。
【0034】
ここで、爪露出検知センサー114が非検出状態、すなわち、爪露出検知センサー114の端子114aと端子114bとの間が0[V]になると、抵抗R1、R2による電圧VDDの分配で第一の基準電圧VREF1が発生する。VREF1の値は下記数式1で与えられる。
【0035】
【数1】

ただし、モーター駆動装置の入力インピーダンスを無限大としている。
【0036】
一方、爪露出検知センサー114が検出状態、すなわち、爪露出検知センサー114の出力(114a)がVDD[V]になると、抵抗R1,R2,R3による電圧VDDの分配で第二の基準電圧VREF2が発生する。VREF2は次式で与えられる。
【0037】
【数2】

ただし、VCEはQ1の飽和電圧であり、モーター駆動装置の入力インピーダンスは無限大としている。
【0038】
このようにして得た第1および第2の基準電圧を放出モーター駆動装置134へ出力する。放出モーター駆動装置134は入力された基準電圧に応じた電流を放出モーターへ出力する。すなわち、第一の基準電圧に対し第一の電流を出力し、第二の基準電圧に対し第二の電流を出力する。モーターが出力するトルクは電流の関数であるため、放出モーターは第一の電流に対し第一のトルクを、第二の電流に対し第二のトルクを出力する。
【0039】
なお、基準電圧により出力電流を制御するモーター駆動装置、モーターの出力トルクと電流の関係については公知のものであるためその説明は省略する。
【0040】
次にトルク制御手段132による放出モーター135の制御について説明する。図8は実施形態1に係る放出モーターのトルクおよび速さを示すグラフである。実施形態1に係るシート処理装置30では、爪露出検知センサー114および、爪進入検知センサー120によって放出爪112がシート処理装置30の外部へ露出していることを検知し、次の状態(1)、状態(2)、状態(3)でトルクおよび速さを制御する。
【0041】
状態(1):放出爪112が初期位置から放出爪112がシート処理装置30の外に露出するまで、すなわち放出爪112が駆動を開始してから(図8中(A))、爪露出検知センサー114が検知するまで(同(B))の間、第一のトルク、および第一の速さで駆動する。
状態(2):放出爪112が露出してから(同(B))、放出爪112が装置内へ進入するまで(同(C))、すなわち爪露出検知センサー114が検知してから爪進入検知センサー120が検知するまでの間、第二のトルク、および第二の速さで駆動する。
状態(3):放出爪112が装置内へ進入してから(同(C))放出爪112が初期位置へ帰還するまで(同(D))、すなわち爪進入検知センサー120が検知してから爪露出検知センサー114が検知しなくなるまでの間、第二のトルク、および第一の速さで駆動する。
【0042】
ここで、第一のトルクは、
第一のトルク=(「放出爪112を駆動する機構の負荷」+「シート束STの負荷」)×余裕度α
で表す。すなわち、第一のトルクは、放出爪112とシート束STを同時に動かし得るトルクに、一定の余裕度αを乗じたものである。これらの値は、放出爪112の駆動機構およびシート処理装置30が処理可能なシート束STに基づいて定める。
【0043】
例えば、放出爪112を駆動する機構(放出ローラー109,放出コロ110,放出爪ベルト111、その他諸機構)の負荷を90[mN・m]、シート束STによる負荷が最大[30mN・m]、余裕度αを1.1、として設計した場合、第一のトルクは132[mN・m]となる。
【0044】
また、第二のトルクは、
第二のトルク=「放出爪112を駆動する機構の負荷」+余裕度β
で表す。すなわち、第二のトルクは、放出爪112を動かし得るトルクに一定の余裕度βを加えたものである。ここで、余裕度βは放出爪112に物体、特にオペレーターの指などをはさみこんだとしても、指を損傷し得ない大きさに設定する。この第二のトルクの値は、放出爪112の形状や材質、具体的な駆動機構の構造、はさみこむ可能性がある物体、異物の性状に基づいて定めればよい。また、βの大きさは放出爪112の詳細な形状や材質に基づいて決定する。
【0045】
ここで、放出爪112を駆動する機構(放出ローラー109,放出コロ110,放出爪ベルト111,その他諸機構)の負荷を90[mN・m]、βを10mN・m、として設計した場合、第二のトルクは100[mN・m]となる。第二のトルクをこのような値に設定することにより、オペレーターの指が放出爪112にはさまれた場合でも、指を傷つけることがなく、安全性を担保できる。
【0046】
さらに、第一の速さと、第二の速さには次の関係とする。
「第一の速さ」>「第二の速さ」
この第一の速さ、および第二の速さは、装置の仕様等により決定する。
【0047】
次に時間計測手段136の動作について説明する。図9は同時間計測手段の動作を示すフローチャートである。時間計測手段136は、フラッシュメモリーを備えており、爪露出検知センサー114が放出爪112の露出を検知すると(ステップS1)、フラッシュメモリーの値を0にした上で(ステップS2)、フラッシュメモリーの値に1を加える(ステップS3)。以上の処理により、時間計測手段136は、放出爪112が放出爪制御手段130から露出している時間を計測する。
【0048】
爪進入検知センサー120が非検知であり(ステップS4のyes)、かつフラシュメモリーの値が閾値未満であれば(ステップS5のno)、再度フラッシュメモリーの値に1を加える(ステップS3)。爪進入検知センサー120が検知したら(ステップS4のyes)処理を終了する。
【0049】
爪進入検知センサー120が非検知状態であり(ステップS4のno)であり、かつフラッシュメモリーの値が閾値以上となった場合(ステップS5のno)、シート処理装置30を停止する(ステップS6)。
【0050】
ここで、閾値は、放出爪112の正常駆動時(異物がはさみこまれていないとき)における爪露出検知センサー114のオン状態から爪進入検知センサー120のオン状態までの時間とする。
【0051】
これにより、放出爪112に異物がはさまり、放出爪112が閾値以上の時間にわたりシート処理装置30の外部に露出しているとき、シート処理装置30の動作を停止することができる。
【0052】
次に実施形態1に係る画像形成装置20の動作について説明する。図10から図15は実施形態1に係るシート処理装置の動作を示す断面図である。図10に示すように、画像形成装置20から搬出されてきたシートSは入口ローラー対105a、105bによってシート処理装置30へと搬入される。シートSは搬送ガイド板106により搬送ローラー対104a、104bへ導く。そして、シートSは搬送ローラー対104a、104bによって処理トレイ100の上へと排出する。このとき、戻しコロ102は図示しない戻しコロソレノイドによって処理トレイ100またはシートSから離間して、図10中破線で示す位置にある。
【0053】
図11に示すように、シートSを処理トレイ100の上に排出すると、戻しコロ102が下降してシートSに接触する。戻しコロ102は、図示しない戻しコロモータによって回転駆動する。戻しコロ102は、シートSを搬送方向上流側(図の右下方向)へ搬送する向きに回転する。すると、戻しコロ102はシートSを搬送し、後端フェンス108に突き当て、シートの縦方向を揃える。また、ジョガーフェンス101がシート搬送方向と直交する方向に進退してシートの横方向を揃える。このように、図10および図11に示した動作を繰り返し処理トレイ100上に複数枚のシートSを積載する。
【0054】
図12に示すように、処理トレイ100上に所定枚数のシートSを積載すると、ステープラー107によってシートSの後端部にとじ処理を施す(これ以降、とじ処理したシートSの束をシート束STと記載する。)。とじ処理が完了すると、戻しコロ102は図示しない戻しコロソレノイドによってシート束STから離間し、図12中破線で示す位置に移動する。そして、放出ローラー109が図中の反時計回りに回転することで、放出爪ベルト111および放出爪112が図中の反時計回りに移動する。放出爪112によりシート束STの後端部を押し上げ、排紙トレイ113の方向へ押し出す。
【0055】
このとき、放出モーター135はトルク制御手段132によって第一のトルクを出力するよう制御する。すなわち第一のトルクにより放出爪112を駆動する。さらにこのとき、放出モーターは速さ制御手段によって第一の速さで回転するよう制御する。すなわち放出爪112は第一の速さで駆動する(図8中の(A)から(B)、状態(1))。
【0056】
図13に示すように、放出爪112がシート処理装置30の外部へ露出する位置まで移動すると、シート束STは自重により排紙トレイ113の上へ落下する。このとき、爪露出検知センサー114で放出爪112が外部へ露出したことを検出すると、放出モーター135はトルク制御手段132によって第二のトルクを出力するよう制御する(同(B)から((C)、状態(2))。すなわち第二のトルクにより放出爪112を駆動する。さらにこのとき、放出モーターは速さ制御手段133によって第二の速さで回転するよう制御する(同(B))から(C)、状態(2))。
【0057】
実施形態1に係るシート処理装置30では、この状態、すなわち放出爪112がシート処理装置30から露出した状態で、放出爪112は、はさまれた指などの異物を傷つけない小さいトルクで駆動する。このため、万が一、放出爪112とシート処理装置30との間に異物、例えばオペレーターの指がはさまれたとしても、指を傷つけることがなく、安全性を確保できる。
【0058】
また、時間計測手段136により、放出爪112がシート処理装置30の外部に所定の閾値以上露出しているとき、シート処理装置30の動作が停止する。このため、挟まれた指等に掛かるエネルギー量を小さくできるとともに、シート処理装置30が停止した状態で、指などを放出爪112とシート処理装置30との間から容易に取り外すことできる。
【0059】
図14に示すように、放出爪112は第二のトルクで駆動されシート処理装置30内部へ進入すると、爪進入検知センサー120により、放出爪112が内部へ進入したことを検出する。これにより、放出モーターは速さ制御手段によって再び第一の速さで回転するよう制御する。すなわち放出爪112を第一の速さで駆動する(同(C)から(D)、状態(3))。
【0060】
図15に示すように、放出爪112を第二のトルク、第一の速さで駆動し、初期位置(図の位置)へ戻して停止させ、これにより、一連の処理を終了する。
【0061】
以上説明したように、実施形態1に係るシート処理装置30によれば、放出爪112がシート処理装置30の外部に露出している間、放出爪112は、はさまれた指などを傷つけることがない第二のトルクで駆動する。このため、オペレーターの指が放出爪112とシート処理装置30とで挟まれたとしても、けがの発生を防止できる。
【0062】
また、シート処理装置30によれば、放出爪112がシート処理装置30の外に露出する状態を検出し、放出爪112が外部へ露出している時間のみ第二のトルクで駆動し、放出爪112が装置内部へ進入した時点で第一のトルクで駆動する。このため、必要以上の期間、駆動トルクの低下させることによって搬送手段に発生する不安定な挙動を防止でき、不安定な挙動によるリスクを回避できる。また、必要な時間だけ大電力を必要とする第2のトルクで放出爪112を駆動するので、シート処理装置30の運転に必要な電力を小さくできる。
【0063】
また、実施形態1に係るシート処理装置30は、電気的な制御で、放出爪112の駆動トルクの制御を行うので、トルクリミッターのような複雑な機械機構でトルク制御を行うのに比べ、シンプル、小型かつ安価にオペレーターの安全を確保できる。
【0064】
また、実施形態1に係るシート処理装置30は、爪露出検知センサー114を機械的な電気スイッチとしているので、半導体センサーを使用するのに比して、スイッチの故障率を小さくできる。このため、より確実に放出爪112の位置を検出できる。そして、マシントラブルにより正常に搬送手段のトルクが低下せず、オペレーターが外傷を負う確率を低減できる。
【0065】
また、実施形態1に係るシート処理装置30では、放出爪112がシート処理装置30の外に露出している区間の速さを遅くする。このため、放出爪112の運動エネルギーを小さくでき、より確実にオペレーターに外傷を負わせることを防止できる。
【0066】
また、シート処理装置30では、時間計測手段で、放出爪112が露出している時間を計測し、所定時間以上放出爪112が露出したときシート処理装置30を停止する。すなわち、搬送手段が外部へ露出中にオペレーターの指がはさまった場合に搬送手段の動作を停止するので、放出爪112からオペレーターの指に加わるエネルギー量を小さくできる。このため、より確実にオペレーターのけがを防止できる。
【0067】
<他の実施形態>
実施形態1では、画像形成装置20として複合機としたが、画像形成装置は、複写機、プリンター等であってもよい。さらに、シート処理装置30は、とじ処理を行うものとしたが、とじ処理の他、公知の処理装置を備え、折り処理、ソート処理等を行うものであってもよい。この場合、シート処理装置には、ステープラーに替え、あるいはステープラーに加えて折り処理装置等を配置する。また、実施形態1では、画像形成システムとして、画像形成装置にシート処理装置を別装置として配置するものとしたが、画像形成システムとして画像形成装置内にシート処理装置を内蔵するように構成することができる。
【符号の説明】
【0068】
10:画像形成システム
20:画像形成装置
21:作像部
30:シート処理装置
100:処理トレイ(積載手段)
101:ジョガーフェンス
102:戻しコロ
103:回転軸
104a、104b:搬送ローラー対
105a、105b:入口ローラー対
106:搬送ガイド板
107:ステープラー
108:後端フェンス
109:放出ローラー
110:放出コロ
111:放出爪ベルト(駆動手段)
111a:突出部
112:放出爪(搬送手段)
113:排紙トレイ
114:爪露出検知センサー(位置検出手段)
114a:端子
114b:端子
120:爪進入検知センサー(位置検出手段)
130:放出爪制御手段
131:放出爪位置検出手段
132:トルク制御手段
133:速さ制御手段
134:放出モーター駆動装置
135:放出モーター
136:時間計測手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開2008−156073

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入、処理したシートあるいはシート束を搬出する搬送手段と、
該搬送手段を移動させる駆動手段と、
前記搬送手段の位置を検出する位置検出手段と、
前記駆動手段の出力トルクを制御するトルク制御手段と、
を備え、
前記トルク制御手段は、
前記位置検出手段が検出した情報に基づいて前記駆動手段を制御して、前記搬送手段をあらかじめ定めた第一のトルクで駆動し、
前記搬送手段が前記シート処理装置から露出しているときは、前記搬送手段を前記第一のトルクよりも小さくかつ前記搬送手段にはさまれた物体を損傷しないようにあらかじめ定めた大きさの第二のトルクで駆動する、
ことを特徴とするシート処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート処理装置において、
前記位置検知手段が、少なくとも前記搬送手段が前記シート処理装置の外部に露出する位置にあることを検出するものであり、
前記トルク制御手段が、前記位置検出手段で前記搬送手段が前記シート処理装置の外部に露出していることを検出している間、前記第二のトルクで前記駆動手段を駆動するとともに、
前記位置検出手段で前記搬送手段が前記シート処理装置の外部に露出していることを検出していない間、前記第一のトルクで前記駆動手段を駆動する、
ことを特徴とするシート処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のシート処理装置において、
前記位置検知手段が、少なくとも前記搬送手段が前記シート処理装置の外部に露出する位置にあること、および前記搬送手段が初期位置にあることを検出するものであり、
前記トルク制御手段が、前記位置検出手段で前記搬送手段が前記シート処理装置の外部に露出していることを検出したときから、前記搬出手段が初期位置にあることを検出するまでの間、前記第二のトルクで前記駆動手段を駆動するともに、
前記位置検出手段で前記搬送手段が初期位置にあることを検出してから、前記搬送手段が前記シート処理装置の外部に露出したことを検出するまでの間、前記第一のトルクで前記搬送手段を駆動する、
ことを特徴とするシート処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のシート処理装置において、
前記トルク制御手段は出力電位を変位させるものである、
ことを特徴とするシート処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のシート処理装置において、
前記位置検出手段の少なくとも一つは機械的に駆動される電気スイッチである、
ことを特徴とするシート処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のシート処理装置において、
シートを搬送する速さを制御する速さ制御手段を有し、
前記速さ制御手段が、前記駆動手段を前記位置検出手段が検出した情報に基づいて、少なくとも第一の速さと前記第一の速さよりも遅い第二の速さ、のいずれかの速さを選択して駆動制御する、
ことを特徴とするシート処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のシート処理装置において、
前記搬送手段が前記シート処理装置の外部に露出していることを検出している時間を計測する時間計測手段を有し、
前記計測手段の計測値があらかじめ定めた閾値を上回ったとき、前記シート処理装置の動作を停止する、
ことを特徴とするシート処理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載のシート処理装置と、
前記シート処理装置に搬入するシートに画像形成を行う作像部を備える画像形成装置と、
を備えたことを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−23341(P2013−23341A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160010(P2011−160010)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】