説明

シート処理装置

【課題】カバー部材に搭載されたガイド部材の、装置本体に対する位置決めを確実に行えるようにする。
【解決手段】ガイド部材30は、反転搬送のための中継搬送路44を形成する部材であって、第2ガイド面31と、カバー部材20との係合のために備えられた第1係合部32と、装置本体10との係合のために備えられた第2係合部33とを含む。第1係合部32は円柱型のボスであって、カバー部材20に備えられた長孔25に挿通されると共に、コイルバネ26で付勢されている。第2係合部33は、装置本体10に設けられた受け溝14に密に嵌合されている。第2係合部33が受け溝14に嵌合されることで、装置本体10に対するガイド部材30の位置が決まる。これに対し、第1係合部32は、長孔25内において移動可能であり、第2係合部33に対する第1係合部32の位置関係に応じて、適宜な収まり位置に逃げることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに所定の処理、例えば画像形成処理を施すシート処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートの表裏両面に画像を形成するシート処理装置(画像形成装置)においては、片面に画像形成処理が施されたシートを再び画像形成部に戻すための反転搬送路が備えられている。近年では、前記反転搬送路を備えた搬送ユニットが、装置本体に対して開閉自在なカバー部材に搭載される場合が多い(例えば特許文献1)。この搬送ユニットの内面は、シートを給紙部から画像形成部を経由して排紙部まで搬送する主搬送路の片側ガイド面を兼用する。主搬送路でシートジャムが発生した場合や、画像形成部のメンテナンスの際にはカバー部材及び搬送ユニットが開放される。
【0003】
搬送ユニットに備えられた反転搬送路と、主搬送路(若しくはスイッチバック搬送路)との間を繋ぐために、搬送ガイド部材が両搬送路間に設けられる場合がある。この種の搬送ガイド部材は、通常は前記カバー部材の側に搭載され、ジャム処理を容易とするためにカバー部材に対して回動自在に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−116591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の如き搬送ガイド部材が、装置本体に対して開閉されるカバー部材に搭載されている場合に問題となるのが、搬送ガイド部材と装置本体側の搬送路との位置決めである。両者の位置決めが不十分であると、その境界部分でシートジャムが発生したり、他の搬送路にシートを送ったりする不具合が生じ得る。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みて為されたもので、装置本体に対して開閉されるカバー部材に搭載されたシートのガイド部材の、装置本体に対する位置決めを確実に行うことができるシート処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係るシート処理装置は、側面を備えた筐体構造を有し、シートを搬送しつつ当該シートに所定の処理を施す機器を収容する装置本体と、前記側面に対向して配置されると共に、その下端部が前記装置本体に回動自在に支持され、前記側面に対向する面にシートをガイドする第1ガイド面を有し、前記側面を塞ぐ第1姿勢と、前記側面を開放する第2姿勢との間で姿勢変更可能なカバー部材と、前記第1ガイド面に対向して配置される第2ガイド面と、前記カバー部材との係合のために備えられた第1係合部と、前記装置本体との係合のために備えられた第2係合部とを含むガイド部材と、前記カバー部材に設けられ、前記第1係合部と係合する第1受け部と、前記装置本体に備えられ、前記第2係合部と係合する第2受け部と、を備え、前記第1係合部は、前記ガイド部材を回動自在に支持させるための支点突起であって、前記第1係合部と前記第1受け部とは前記カバー部材が前記第1姿勢及び第2姿勢のいずれの姿勢のときでも離間せず、前記第1受け部は前記第1係合部を遊嵌状態で支持可能な孔であり、前記第2係合部は、前記カバー部材が前記第1姿勢のとき前記第2受け部に嵌合される一方で前記第2姿勢のとき前記第2受け部から離間する部材であって、前記第2受け部は前記第2係合部が密に嵌合される受け溝である、構成を備える。
【0008】
この構成によれば、第2係合部の第2受け部への係合によって、ガイド部材の装置本体に対する位置決めが為される。ここで、前記第1受け部は前記第1係合部を遊嵌状態で支持可能な孔であり、前記第2受け部は前記第2係合部が密に嵌合される受け溝である。従って、カバー部材が第1姿勢の状態において、第2係合部の第2受け部への嵌合によって、ガイド部材を装置本体に正確に位置決めさせることができる。一方、ガイド部材の部品公差等によって部品寸法にバラツキが生じたとしても、前記第1受け部が前記第1係合部を遊嵌状態で支持していることから、前記バラツキを吸収することができる。
【0009】
上記構成において、前記第1受け部は長孔であり、前記第1係合部は前記長孔の長手方向に移動可能に当該長孔に挿通されていることが望ましい。
【0010】
この構成によれば、支持突起である第1係合部を、部品公差等に応じた分だけ前記長孔の長手方向にスライド移動させることができ、ガイド部材の位置決めを容易に行わせることができる。
【0011】
この場合、前記第1係合部を、前記長孔の長手方向の一端側に向かうように付勢する付勢部材をさらに備えることが望ましい。
【0012】
この構成によれば、前記付勢部材の付勢力を活用して、第2係合部の第2受け部への係合をアシストさせることが可能となる。
【0013】
上記構成において、前記ガイド部材は、前記第2ガイド面の一端側の第1端部と、他端側の第2端部とを備え、前記第2ガイド面は、前記シートの搬送方向に沿った断面が円弧状に湾曲したガイド面であり、前記第1端部が上下方向に延びる第1シート搬送路の一端に連接され、前記第2端部が前記第1シート搬送路の一端よりも高所に配置され水平方向に延びる第2シート搬送路の一端に連接され、前記第1係合部は前記ガイド部材の前記第1端部側に設けられ、前記第2係合部は前記第2端部側に設けられ、前記長孔は、上下方向に長い長孔であり、前記第2受け部に対する前記第2係合部の嵌合方向は水平方向であり、前記付勢部材は、前記第1係合部を、前記長孔の上端側に向かうように付勢するものであることが望ましい。
【0014】
この構成によれば、カバー部材が前記第2姿勢から前記第1姿勢に姿勢変更されるとき(カバー部材の閉動作)、前記付勢部材の付勢力によって前記第1係合部は前記長孔の上端側に向けて付勢される。これにより、前記第2係合部が前記第2受け部に押し込まれる方向に付勢されるようになる。一方、カバー部材が前記第1姿勢に至ったとき、ガイド部材の位置が決まり、これに応じて前記第1係合部は前記長孔の下端側に逃げるようになる。従って、ガイド部材の位置決めを一層安定的に行わせることができる。
【0015】
上記構成において、前記装置本体に収容される機器が、シートに画像形成処理を施す画像形成部であることが望ましい。
【0016】
或いは、前記装置本体に収容される機器が、シートの両面に画像形成処理を施す画像形成部であり、前記第1シート搬送路が、片面に画像形成処理が施されたシートを前記画像形成部に戻す反転搬送路であり、前記第2シート搬送路が、片面に画像形成処理が施されたシートを前記反転搬送路に向かわせるスイッチバック搬送路であることが望ましい。
【0017】
この構成によれば、ガイド部材の位置決めを的確に行わせることができるので、画像形成装置において、シートジャムの発生や、他の搬送路にシートを送ったりする不具合を抑止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、装置本体に対して開閉されるカバー部材に搭載されたシートのガイド部材の、装置本体に対する位置決めを確実に行うことができる。従って、ガイド部材の位置決め不良に伴うシート搬送不良を抑止したシート処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の外観斜視図である。
【図2】画像形成装置の後方部の断面図である。
【図3】画像形成装置の後方部の断面図であって、カバー部材が開放された状態を示している。
【図4】図3におけるガイド部材の近傍を拡大した断面図である。
【図5】図2におけるガイド部材の近傍を拡大した断面図である。
【図6】ガイド部材の斜視図である。
【図7】カバー部材及びガイド部材の分解斜視図である。
【図8】カバー部材とガイド部材とが連結された状態を示す斜視図である。
【図9】ガイド部材の要部を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施形態との比較例となる構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1(シート処理装置)の外観を示す斜視図である。ここでは、画像形成装置としてモノクロタイプのプリンターを例示している。なお、画像形成装置は、コピー機、ファクシミリ、これらの機能を備える複合機であっても良い。
【0021】
画像形成装置1は、略直方体形状の筐体構造を備えた装置本体10と、装置本体10の後面10R(側面)に対向して配置されるカバー部材20とを含む。後に説明するが、装置本体10内には、シートを搬送しつつ当該シートに画像を形成するのに必要な様々な機器が収容されている。カバー部材20は、その下端部が装置本体10の後面10Rの下部において回動自在に支持され、ユーザーの操作によって、後面10Rを塞ぐ閉止姿勢(第1姿勢)と、後面10Rを開放する開放姿勢(第2姿勢)との間で姿勢変更が可能である。
【0022】
装置本体10の下部には、画像形成処理が施されるシートを貯留する給紙カセット11が装着されている。給紙カセット11は、装置本体10の前面10Fから前方に引き出し可能に、装置本体10に組み付けられている。装置本体10の上面には、画像形成処理後のシートを排出する排紙孔12が設けられている。この排紙孔12に対向して、装置本体10の上面には、当該上面を窪ませて形成された排紙トレイ13が備えられている。
【0023】
図2は、画像形成装置1の後方部の断面図である。当該後方部には画像形成装置1の要部構成が含まれており、この図2に基づき画像形成装置1の内部構成を説明する。装置本体10内には、搬送ユニット24、反転搬送路用のガイド部材30、画像形成部50及び定着部60が含まれている。
【0024】
カバー部材20は、装置本体10の後面10Rのサイズを略同じサイズを有する平板状の部材である。カバー部材20の下部に設けられた回動軸22は、上述の閉止姿勢と開放姿勢との間の姿勢変更を実現させるための支点であり、この回動軸22は装置本体10の軸受け(図略)にて支持されている。搬送ユニット24及びガイド部材30はカバー部材20に搭載されており、図3に示すように、カバー部材20が開放姿勢となったとき、これらは装置本体10から離間する。カバー部材20及びガイド部材30については、後記で詳述する。
【0025】
画像形成部50は、外部機器から与えられる画像データに基づきシートにトナー像を転写する画像形成処理を行うもので、感光体ドラム51と、この感光体ドラム51の周囲に配置された、帯電器52、図略の露光装置、図略の現像装置、一次転写ローラー54、及びクリーニング装置53とを含む。
【0026】
感光体ドラム51は、その周面に静電潜像、及びこの静電潜像に沿ったトナー像を形成させるためのものである。感光体ドラム51としては、周面にアモルファスシリコン層が積層されたアモルファスシリコン感光体ドラムが好適である。帯電器52は、感光体ドラム51の周面を一様に帯電させる。露光装置は、前記画像データに基づき変調されたレーザー光を、回転している感光体ドラム51の周面に照射する。感光体ドラム51周面のレーザー光が照射された部分は、電荷が消去され、これによって当該感光体ドラム51の周面にレーザー光照射パターンに応じた静電潜像が形成される。
【0027】
現像装置は、感光体ドラム51の周面に、内蔵する現像ローラーを介してトナーを供給する。感光体ドラム51にトナーが供給されると、前記静電潜像が形成された部分にトナーが付着し、これによって感光体ドラム51の周面にトナー像が形成される。現像装置には図略のトナー容器が着脱可能に装着されており、現像装置内のトナーが費消されると、このトナー容器からトナーが補給される。
【0028】
一次転写ローラー54は、感光体ドラム51とニップ部を構成し、そのニップ部に送り込まれたシートに対し、当該感光体ドラム51の周面に形成されているトナー像を転写させる。感光体ドラム51周面のトナー像が例えばプラスに帯電している場合、一次転写ローラー54は、トナー像の電荷と逆極性であるマイナスの電荷をシートに付与する。クリーニング装置53は、転写処理後の感光体ドラム51の周面に残留しているトナーを取り除いて清浄化する。
【0029】
定着部60は、画像形成部50によってトナー像の転写処理が施されたシートに、加熱による定着処理を施す。定着部60は、内部に通電発熱体が装着されたヒートローラー61と、このヒートローラー61と周面同士が対向配置された加圧ローラー62とを備えている。転写処理後のシートは、駆動回転されるヒートローラー61及び加圧ローラー62の間のニップ部を通過することによって、ヒートローラー61からの熱を得て定着処理が施される。
【0030】
装置本体10内には、シートを搬送するためのシート搬送路が備えられている。本実施形態では、主搬送路41、排紙搬送路42(第2シート搬送路)、反転搬送路43(第1シート搬送路)及び中継搬送路44を含む。
【0031】
主搬送路41は、給紙カセット11の給紙口11Fから画像形成部50を経由して定着部60の下流側まで至る、上下方向に延びる搬送路である。この主搬送路41を搬送されつつ、シートは上述の画像形成処理及び定着処理が施される。排紙搬送路42は、主搬送路41の終端から排紙孔12までを結ぶ、水平方向に延びる搬送路である。
【0032】
反転搬送路43は、両面印刷が行われる際に、片面に画像形成処理が施されたシートを、画像形成面を反転させて画像形成部50に反転搬送させるための搬送路である。反転搬送路43は、カバー部材20の内側面に沿って上下方向に延びる搬送路であり、その入口端は定着部60の右方付近であり、画像形成部50の上流側においてその出口端が主搬送路41に合流している。なお、排紙搬送路42は、この反転搬送が実行される際に、片面に画像形成処理が施されたシートの一部を排紙トレイ13に排出させるようにシートを順搬送した後に当該シートを反転搬送路43に向かわせるべく逆搬送するスイッチバック搬送路として活用される。中継搬送路44は、上下方向に延びる反転搬送路43の入口端(一端)と、この入口端よりも高所に配置され水平方向に延びる排紙搬送路42の上流端(一端)とを繋ぐ、断面形状が円弧状に湾曲した搬送路である。
【0033】
主搬送路41の、画像形成部50の上流側にはレジストローラー対45が配置されている。レジストローラー対45は、駆動ローラー451と従動ローラー452とからなる(図3参照)。シートは、レジストローラー対45にて一旦停止され、スキュー矯正が行われた後、画像転写のための所定のタイミングで感光体ドラム51と一次転写ローラー54とのニップ部に送り出される。また、排紙搬送路42には正逆回転が可能な排紙ローラー対46が配置されている。排紙トレイ13にシートを排紙させる際、排紙ローラー対46は正転を続けるよう駆動される。一方、スイッチバック搬送が行われる際には、排紙ローラー対46は一定時間だけ正回転した後、逆回転するよう駆動される。
【0034】
図3は、画像形成装置1の後方部の断面図であって、カバー部材20が回動軸22の軸回りに回動して装置本体10の後面10Rが開放された状態(開放姿勢)を示している。搬送ユニット24は、主搬送路41を形成する一対のガイド面の片側を構成する内側ガイド面24Aと、反転搬送路43を形成する一対のガイド面の片側を構成する外側ガイド面24Bとを備える。搬送ユニット24の内側ガイド面24Aには、レジストローラー対45の従動ローラー452と、一次転写ローラー54とが保持されている。また、外側ガイド面24Bには、前記反転搬送が行われる際にシートに搬送力を与える搬送ローラー241、242が保持されている。なお、反転搬送路43は、この外側ガイド面24Bとカバー部材20の内面に設けられたガイド面とで形成されている。
【0035】
中継搬送路44は、カバー部材20の後面10Rと対向する面に突設された複数の搬送リブの突設端で構成される第1ガイド面23と、ガイド部材30の第1ガイド面23と対向する面に形成された第2ガイド面31とで形成されている。第1ガイド面23及び第2ガイド面31は、共に円弧状に湾曲したガイド面である。カバー部材20が閉止姿勢のとき、第1ガイド面23及び第2ガイド面31は一定間隔をおいて対向し、断面形状が円弧状に湾曲した中継搬送路44を形成する(図2)。一方、カバー部材20が開放姿勢のとき、第1ガイド面23と第2ガイド面31との間は開き、当該中継搬送路44においてシートジャム等が生じた場合にジャム処理が容易に行えるようになっている。
【0036】
以下、図4〜図9を参照して、ガイド部材30及びその周辺の構成を詳細に説明する。図4は、図3におけるガイド部材30の近傍を拡大した断面図、図5は、図2におけるガイド部材30の近傍を拡大した断面図、図6は、ガイド部材30の斜視図、図7は、カバー部材20及びガイド部材30の分解斜視図、図8は、カバー部材20とガイド部材30とが連結された状態を示す斜視図、図9は、ガイド部材30の要部を示す斜視図をそれぞれ示している。
【0037】
ガイド部材30は、上述の第2ガイド面31と、カバー部材20との係合のために備えられた第1係合部32と、装置本体10との係合のために備えられた第2係合部33とを含む。第2ガイド面31は、シートの搬送方向に沿った断面が円弧状に湾曲したガイド面であり、前記反転搬送におけるシート搬送方向で見て、搬送方向下流側に位置する第1端部31Aと、搬送方向上流側に位置する第2端部31Bとを有する。第1端部31Aは、反転搬送路43の上流端に連接され、第2端部31Bは、排紙搬送路42の上流端(主搬送路41の下流端)に連接されている。第1係合部32は第1端部31A側に設けられ、第2係合部33は第2端部31B側に設けられている。
【0038】
ガイド部材30は、さらに、一対の側板300と、これら側板の間に配置された複数枚のリブ板34と、一部のリブ板34によって回転自在に支持される2つのガイドコロ311とを含む。
【0039】
側板300は、円弧状に湾曲した端縁を備えた平板部材であり、その第1端部31A側にはアーム部材35が前記円弧状端縁から直立して突出する態様で延設され、第2端部31B側においてはその外面側から軸方向外側へ突出するように第2係合部33が突設されている。複数枚のリブ板34は、中継搬送路44を搬送されるシートをガイドするもので、円弧状に凸湾曲した突端縁を有し、これら突端縁が第2ガイド面31を形成している。複数枚のリブ板34及び一対の側板300は、側板300間に延設されている保持板によって一体化されている。
【0040】
複数枚のリブ板34は、第1端部31Aから第2端部31Bまで延びる円弧状の突端縁を有する第1リブ板341と、同じく第1端部31Aから第2端部31Bまで延びる円弧状の突端縁を有すると共にガイドコロ311を軸支する第2リブ板342と、第2端部31Bからガイドコロ311の手前まで延びる円弧状の突端縁を有する第3リブ板343とを含む。ガイドコロ311は、第2ガイド面31からコロ周面の一部が突出するように(図4参照)、その回転軸が第2リブ板342によって軸支されている。
【0041】
第1係合部32は、ガイド部材30をカバー部材20に対して回動自在に支持させるための支点突起であり、各側板300のアーム部材35の突端付近に各々突設されている。本実施形態では第1係合部32は、図6に示すように円柱状のボスからなり、図中右方のアーム部材35においては、その外面側から突設され、図中左方のアーム部材35においては、その内面側から突設され、カバー部材20に対する組み付けが容易な構造とされている。第2係合部33は、装置本体10に対するガイド部材30の位置決めを行わせるための係合部であり、本実施形態では半円筒状の突起からなる。
【0042】
カバー部材20は、上述の回動軸22の他、化粧板200と、一対の側フレーム21と、これら側フレーム21の間に配置された複数の搬送リブ211(図7、図8参照)と、搬送コロ231とを含む。
【0043】
化粧板200は、カバー部材20の外装を形成する部材であり、装置本体の外装と同色の部材で構成される。一対の側フレーム21は、カバー部材20の幅方向両端に配置される部材である。搬送リブ211は、中継搬送路44を搬送されるシートをガイドするもので、円弧状に凹湾曲した突端縁を有し、これら突端縁が第1ガイド面23を形成している。搬送コロ231は、第1ガイド面23からコロ周面の一部が突出するように、その回転軸が側フレーム21によって軸支されている。搬送コロ231は、カバー部材20が閉止姿勢のときガイド部材30のガイドコロ311と接し、搬送ニップ部を形成する。シートの反転搬送時、搬送コロ231の回転軸の端部から搬送駆動力が入力され、搬送コロ231は回転駆動されると共にガイドコロ311は従動回転する。
【0044】
一対の側フレーム21は、上下方向に長い長孔25(第1受け部)をそれぞれ備える。上述した一対の第1係合部32は、これら長孔25にそれぞれ挿通されている。長孔25の短手方向の内径は、第1係合部32の外径よりも僅かに大きい長さである。一方、長孔25の長さは第1係合部32の外径の1.3倍〜2.0倍程度の長さとされている。このため、第1係合部32は、長孔25に遊嵌状態で支持されており、長孔25の長手方向に沿って上下方向に移動可能である。第1係合部32と長孔25とは常時係合状態とされ、カバー部材20が前記閉止姿勢及び開放姿勢のいずれの姿勢のときでもカバー部材20とガイド部材30とは離間しない。但し、カバー部材20が開放姿勢であるとき、ガイド部材30は第1係合部32の軸回りに反時計方向に回動し、上述の通り第1ガイド面23と第2ガイド面31との間が開放される(図3、図4参照)。
【0045】
第1係合部32は、長孔25の上端25T(長手方向の一端側;図9参照)に向かうように、コイルバネ26(付勢部材)によって付勢されている。このコイルバネ26の支持のため、側フレーム21には水平面を形成するバネ支持板27が立設され、該バネ支持板27の上面にはバネ座となる突起28が設けられている。コイルバネ26の下端は突起28に嵌め込まれ、上端は第1係合部32の下方に当接している。従って、カバー部材20が開放姿勢とされ、ガイド部材30に何ら外力が作用しない状態では、コイルバネ26の付勢力によって、第1係合部32は長孔25の上端25Tに当接乃至は近接する状態となる。
【0046】
一方、上述の第2係合部33を嵌合させるために、装置本体10の排紙搬送路42の上流端付近には、受け溝14(第2受け部)が配置されている。受け溝14は、カバー部材20に対向する方向(水平方向)に開口した断面U字型の受け溝である。第2係合部33は、受け溝14に対向する側に曲面を有する半円筒状の突起であり、受け溝14に対して水平方向から嵌合される。第2係合部33は、カバー部材が閉止姿勢のとき受け溝14に嵌合される一方で、開放姿勢のとき受け溝14から離間する。
【0047】
第2係合部33の上下方向幅と、受け溝14の開口幅とはほぼ同一に設定されている。従って、第2係合部33は受け溝14に密に嵌合する。すなわち、第2係合部33が受け溝14に嵌合されることで、装置本体10に対するガイド部材30の位置、つまり、排紙搬送路42に対する第2ガイド面31の位置が決まる。
【0048】
これに対し、第1係合部32の長孔25に対する嵌合位置は、第2係合部33の位置決め後に決まることとなる。上述の通り、第1係合部32は長孔25に遊嵌され、長孔25の長手方向の幅内で移動自在である。カバー部材20が開放姿勢の状態から、第2係合部33が受け溝14に嵌合されるまで閉じられ、さらに閉止姿勢に近づいて行くと、やがて第1係合部32はコイルバネ26を押圧するようになり、上端25Tから離れ、長孔25の下端に向かうようになる。そして、カバー部材20が閉止姿勢に至ったとき、第2係合部33に対する第1係合部32の位置関係に応じて、第1係合部32の長孔25内での位置が決まる。従って、たとえガイド部材30の部品公差等によって部品寸法にバラツキが存在していても、そのバラツキは第1係合部32の長孔25内における移動度合いによって吸収される。
【0049】
このように、上記反転搬送においてシート搬送方向上流側となる第2ガイド面31の第2端部31Bは、第2係合部33と受け溝14との密嵌合によって排紙搬送路42の上流端に正確に位置決めされる。このため、反転搬送の際に的確にシートを中継搬送路44へ搬入させることができる。一方、部品寸法にバラツキが存在していることが想定される場合において、第2係合部33と受け溝14とを密嵌合させることに伴う第1係合部32の収まり位置のズレは、コイルバネ26で付勢された第1係合部32の長孔25内での位置シフトで吸収される。従って、第1係合部32が破損することはない。
【0050】
図10は、本実施形態に対する比較例となる画像形成装置の構成を示す断面図である。この比較例構成は、本実施形態とは逆に、ガイド部材30の第2係合部33の側で部品寸法のバラツキを吸収させる構成である。円柱状のボスである第1係合部32は、側フレーム21に設けられた丸孔25Aによって軸ズレしないように支持されている。一方、第2係合部33は、第2係合部33よりも十分広幅の開口を有する受け溝14Aに嵌合可能とされている。
【0051】
上記比較例構成によれば、ガイド部材30は、第1係合部32を介してカバー部材20に対して位置決めされることになり、部品寸法のバラツキは第2係合部33の受け溝14Aに対する嵌合位置で吸収されることとなる。この場合、第2ガイド面31の第2端部31Bの位置が装置毎に異なることとなり、反転搬送の際にシートを中継搬送路44へ安定的に搬入させることができないことが生じ得る。例えば、第2係合部33が受け溝14Aの上限付近において嵌合する場合は、第2端部31B付近でシートジャムが発生したり、中継搬送路44へ向かうべきシートが主搬送路41を逆搬送されたりする不具合が発生する。これに対し、本実施形態では、上記反転搬送においてシート搬送方向下流側となる第1端部31Aに位置する第1係合部32の側で部品寸法のバラツキを吸収する構成であるので、上記のような不具合は生じることはない。
【0052】
さらに、本実施形態のガイド部材30は、第2ガイド面31はシートの搬送方向に沿った断面が円弧状に湾曲したガイド面であり、第1端部31Aが上下方向に延びる反転搬送路43の上流端に連接され、第2端部31Bが反転搬送路43の上流端よりも高所に配置され水平方向に延びる排紙搬送路42の上流端に連接される構成を備える。そして、長孔25は、上下方向に長い長孔であり、受け溝14に対する第2係合部33の嵌合方向は水平方向であり、コイルバネ26は、第1係合部32を、長孔25の上端25T側に向かうように付勢している。
【0053】
このため、カバー部材20が開放姿勢から閉止姿勢に姿勢変更されるとき、コイルバネ26の付勢力によって第1係合部32は長孔25の上端25T側に向けて付勢される。かかる付勢力は、第2係合部33を受け溝14に押し込む方向に作用することになる。すなわち、側板300は側面視で略90°湾曲した形状を有しており、図4に示す通りカバー部材20が開放姿勢となって傾斜しているとき、ガイド部材30は第1係合部32の軸回りに反時計方向に回動している。従って、カバー部材20が閉止姿勢に向けて姿勢変更するとき、第2係合部33は受け溝14に対して食い込む方向に付勢される。一方、カバー部材20が第1姿勢に至るとガイド部材30の位置が決まり、これに応じて第1係合部32は長孔25の下端側に逃げるようになる。また、コイルバネ26による付勢は、カバー部材20が閉止姿勢の状態でも継続される。このように本実施形態では、コイルバネ26の付勢力を利用して、ガイド部材30の位置決めを一層安定的に行わせることができる利点がある。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採ることができる。
【0055】
(1)上記実施形態では、シート処理装置として画像形成装置(プリンター)を例示した。シート処理装置は、シートに画像形成以外の他の処理、例えば乾燥処理、コーティング処理、着色処理等を施すシート処理装置であってもよい。
【0056】
(2)上記実施形態では、付勢部材としてコイルバネ26を例示し、該コイルバネ26が第1係合部32を直接付勢する例を示した。付勢部材は板バネや捻りコイルバネ等であっても良い。また、付勢する箇所は、第1係合部32でなくとも良く、例えばアーム部材35を付勢するようにしても良い。或いは、第1係合部32に軸受けを付設し、この軸受けを付勢部材で付勢するようにしても良い。
【0057】
(3)上記実施形態では、第1受け部として上下方向に長い長孔25を例示したが、水平方向に長い長孔としても良く、或いは第1係合部32より大径の円形孔としてもよい。また、第2受け部をピン孔とし、第2係合部をこのピン孔に密に嵌合するピンとしても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 画像形成装置(シート処理装置)
10 装置本体
10R 後面(側面)
14 受け溝(第2受け部)
20 カバー部材
21 側フレーム
22 回動軸
23 第1ガイド面
25 長孔(第1受け部)
25T 長孔の上端
26 コイルバネ(付勢部材)
30 ガイド部材
300 側板
31 第2ガイド面
31A 第1端部
31B 第2端部
32 第1係合部
33 第2係合部
41 主搬送路
42 排紙搬送路(第2シート搬送路)
43 反転搬送路(第1シート搬送路)
44 中継搬送路
50 画像形成部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面を備えた筐体構造を有し、シートを搬送しつつ当該シートに所定の処理を施す機器を収容する装置本体と、
前記側面に対向して配置されると共に、その下端部が前記装置本体に回動自在に支持され、前記側面に対向する面にシートをガイドする第1ガイド面を有し、前記側面を塞ぐ第1姿勢と、前記側面を開放する第2姿勢との間で姿勢変更可能なカバー部材と、
前記第1ガイド面に対向して配置される第2ガイド面と、前記カバー部材との係合のために備えられた第1係合部と、前記装置本体との係合のために備えられた第2係合部とを含むガイド部材と、
前記カバー部材に設けられ、前記第1係合部と係合する第1受け部と、
前記装置本体に備えられ、前記第2係合部と係合する第2受け部と、を備え、
前記第1係合部は、前記ガイド部材を回動自在に支持させるための支点突起であって、前記第1係合部と前記第1受け部とは前記カバー部材が前記第1姿勢及び第2姿勢のいずれの姿勢のときでも離間せず、前記第1受け部は前記第1係合部を遊嵌状態で支持可能な孔であり、
前記第2係合部は、前記カバー部材が前記第1姿勢のとき前記第2受け部に嵌合される一方で前記第2姿勢のとき前記第2受け部から離間する部材であって、前記第2受け部は前記第2係合部が密に嵌合される受け溝である、シート処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート処理装置において、
前記第1受け部は長孔であり、前記第1係合部は前記長孔の長手方向に移動可能に当該長孔に挿通されている、シート処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシート処理装置において、
前記第1係合部を、前記長孔の長手方向の一端側に向かうように付勢する付勢部材をさらに備える、シート処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシート処理装置において、
前記ガイド部材は、前記第2ガイド面の一端側の第1端部と、他端側の第2端部とを備え、
前記第2ガイド面は、前記シートの搬送方向に沿った断面が円弧状に湾曲したガイド面であり、前記第1端部が上下方向に延びる第1シート搬送路の一端に連接され、前記第2端部が前記第1シート搬送路の一端よりも高所に配置され水平方向に延びる第2シート搬送路の一端に連接され、
前記第1係合部は前記ガイド部材の前記第1端部側に設けられ、前記第2係合部は前記第2端部側に設けられ、
前記長孔は、上下方向に長い長孔であり、
前記第2受け部に対する前記第2係合部の嵌合方向は水平方向であり、
前記付勢部材は、前記第1係合部を、前記長孔の上端側に向かうように付勢するものである、シート処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のシート処理装置において、
前記装置本体に収容される機器が、シートに画像形成処理を施す画像形成部である、シート処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載のシート処理装置において、
前記装置本体に収容される機器が、シートの両面に画像形成処理を施す画像形成部であり、
前記第1シート搬送路が、片面に画像形成処理が施されたシートを前記画像形成部に戻す反転搬送路であり、前記第2シート搬送路が、片面に画像形成処理が施されたシートを前記反転搬送路に向かわせるスイッチバック搬送路である、シート処理装置。


【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−242736(P2012−242736A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114770(P2011−114770)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】