シート厚検出装置、画像形成装置およびシート給送装置
【課題】シートの厚さに拘わらず、シート厚を正確に検出することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】ユーザが使用する用紙の設定を行った場合、CPUは、設定された用紙の坪量が閾値である坪量DM以下であるか否かを判定する(S4)。この判定結果、設定された用紙の坪量が坪量DM以下である場合、CPUは、増幅度を値n2に選択する(S25)。一方、設定された用紙の坪量が閾値である坪量DMより大きい場合、CPUは、増幅度を値n1に選択する(S26)。この後、CPUは、センサ出力レベルのキャリブレーションを行い、JOBの開始に備える(S23)。このように、用紙厚に応じて、従動部材の変位量の増幅度を可変させる。
【解決手段】ユーザが使用する用紙の設定を行った場合、CPUは、設定された用紙の坪量が閾値である坪量DM以下であるか否かを判定する(S4)。この判定結果、設定された用紙の坪量が坪量DM以下である場合、CPUは、増幅度を値n2に選択する(S25)。一方、設定された用紙の坪量が閾値である坪量DMより大きい場合、CPUは、増幅度を値n1に選択する(S26)。この後、CPUは、センサ出力レベルのキャリブレーションを行い、JOBの開始に備える(S23)。このように、用紙厚に応じて、従動部材の変位量の増幅度を可変させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送されるシートのシート厚を検出するシート厚検出装置、画像形成装置およびシート給送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、52g紙のような薄紙から400g紙のような厚紙まで、用紙厚を精度良く測ることができる用紙厚検知装置が検討されている。ここで、52g紙、400g紙とは、それぞれ坪量が52g/m2、400g/m2の用紙のことである。
【0003】
複写機やプリンタなどの機器においては、搬送路に用紙を搬送させるための搬送ローラが取り付けられている。この搬送ローラでは、用紙が通過することで、ローラの回転軸(ローラ軸)が用紙厚分変動する。このローラ軸の変位を、ローラ軸の端部に取り付けられたマグネットとそのマグネットと向かい合う面に取り付けられた磁気センサとによって検出することで、用紙厚が測定されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、別の用紙厚検知装置として、特許文献2に示すような装置が考えられている。この装置は、搬送路中に設けられた基準ローラとこれに対向して配置された検知ローラとが、搬送路の用紙厚に追従して変位するように構成されている。この検知ローラの変位量に追従して駆動される各種ギア等のユニットを介して、用紙厚の検出が行われる。さらに、用紙厚に相当する変位量を増幅することで、検知精度を向上させ、重送時の重送枚数も検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−254855号公報
【特許文献2】特許第2872022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のシート厚検出装置では、つぎのような問題があった。すなわち、坪量が38g/m2である38g紙のような超薄紙の用紙厚を、前者の用紙厚検知装置で計測しようとすると、用紙厚に相当するセンサ出力が微小なものになる。
【0007】
具体的に、非通紙状態における出力電圧レベルをv0、通紙状態における出力電圧レベルをv1とすると、差分値|v1−v0|が用紙厚に相当するセンサ出力となる。この用紙厚に相当するセンサ出力|v1−v0|は微小なものとなってしまうので、精度の良い用紙厚の検知が困難であった。
【0008】
また、後者の用紙厚検知装置は、薄い用紙から厚い用紙まで用紙厚による変位量を一定の増幅度で増幅している。センサの出力特性が厚い用紙になるにつれ、その線形性が劣化する(飽和する)場合、一定の増幅度で検知を行うと、用紙厚に相当する出力が得られなくなる。この結果、用紙の厚みを正確に検知することができなくなる。
【0009】
そこで、本発明は、シートの厚さに拘わらず、シート厚を正確に検出することができるシート厚検出装置、画像形成装置およびシート給送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のシート厚検出装置は、搬送されるシートのシート厚を検出するシート厚検出装置において、シートの種類に関して設定されたシート情報を取得する取得手段と、シートを搬送路に沿って搬送する搬送手段と、前記搬送路に設けられ、前記搬送されるシートのシート厚に追従して変位する従動部材と、前記従動部材の変位量を、当該変位量の増幅度が異なるようにそれぞれ増幅して検知する複数の変位量検知手段と、前記取得手段によって取得されたシート情報に基づき、前記複数の変位量検知手段の中から、特定の前記変位量検知手段を選択する選択手段と、前記選択手段によって選択された前記特定の変位量検知手段の検知結果に基づき、前記シート厚を算出する算出手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に係るシート厚検出装置によれば、従動部材によってシート厚による変位量を増幅させることで、シートの厚さに拘わらず、シート厚を正確に検出することができる。例えば、38g紙のような超薄紙の用紙厚も検出できるようになる。また、厚いシートの場合、増幅度を低くし、薄いシートの場合、増幅度を高くするというように、増幅度をシート厚ごとに適宜に切り換える。また、増幅度の異なる複数の変位量検知手段の出力特性における局所的な線形性を選択的に利用することができ、超薄紙から厚紙まで精度よく検出することができる。また、搬送されるシートは、ユーザが設定したシートに間違いがないか否かを確認することができる。
【0012】
請求項2に係るシート厚検出装置によれば、シート厚に追従して変位量検知手段の感度を切り換える。このように、増幅度を一定にしたまま、薄いシートの場合、厚みによる変位が少ない分、感度を高くし、それ以外のシートでは、変位量検知手段の感度を下げる。これにより、極めて薄いシートから厚いシートまで、精度良くシート厚を検出することができる。
【0013】
請求項3に係るシート厚検出装置によれば、増幅度の切換のみではシート厚の検出が困難である場合、または、変位量検知手段の感度切換のみではシート厚の検出が困難である場合、両者を最適に組み合わせることでシート厚を検出できる。つまり、極めて薄いシートの場合、増幅度および感度の両方を大きくし、非常に厚いシートの場合、増幅度および感度を小さくすることで、シート厚を正確に検出することができる。
【0014】
請求項4に係るシート厚検出装置によれば、揺動部材の揺動量を変位量として検知するので、シート厚を簡単に変位量として捉えることができる。
【0015】
請求項5に係るシート厚検出装置によれば、磁性体の磁束密度を磁気センサで検知するので、磁性体の取り付け位置によって増幅度を容易に可変することができる。
【0016】
請求項6に係るシート厚検出装置によれば、揺動部材の変位量を角度として捉えることができる。
【0017】
請求項7に係るシート厚検出装置によれば、変位量検知手段に供給される電流値を切り換えることにより、変位量検知手段の感度を容易に切り換えることができる。
【0018】
請求項8に係る画像形成装置によれば、画像形成装置から出力されるシートの成果物の品位が向上する。また、画像プロセス制御を適切に行うことができる。
【0019】
請求項9に係るシート給送装置によれば、シート給送装置から出力されるシートの成果物の品位が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態における用紙厚検知装置が搭載された画像形成システムの構成を示す図である。
【図2】画像形成システムにおいて用紙搬送に関する制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】用紙厚検知装置500の構成を示す図である。
【図4】用紙厚検知装置500の動作を示す図である。
【図5】用紙厚に応じたセンサ出力特性を示すグラフである。
【図6】用紙の坪量と用紙厚の関係を表すグラフである。
【図7】画像形成システムにおける給紙部313に対する用紙給送動作手順を示すフローチャートである。
【図8】ステップS4における増幅度切換およびセンサ調整動作手順を示すフローチャートである。
【図9】ステップS7における用紙厚検知処理手順を示すフローチャートである。
【図10】キャリブレーションを行う際、磁気センサのセンサ出力レベルの時間変化を示すグラフである。
【図11】センサ出力をデータ化する際、磁気センサのセンサ出力レベルの時間変化を示すグラフである。
【図12】用紙厚に対する磁気センサの出力レベルを示すグラフである。
【図13】用紙の坪量と用紙厚の関係を表すグラフである。
【図14】センサの感度調整手順を示すフローチャートである。
【図15】キャリブレーションを行う際、磁気センサのセンサ出力レベルの時間変化を示すグラフである。
【図16】第3の実施形態における用紙の坪量と用紙厚の関係を表すグラフである。
【図17】増幅度およびセンサの感度調整手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のシート厚検出装置、画像形成装置およびシート給送装置の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態のシート厚検出装置は、画像形成システムに搭載された用紙厚検知装置に適用される。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態における用紙厚検知装置が搭載された画像形成システムの構成を示す図である。画像形成システムは、用紙給送装置301、画像形成装置300、操作部302、リーダスキャナ303および排紙処理装置304から構成される。
【0023】
画像形成システムは、ユーザにより操作部302あるいは外部ホストPC(図示せず)で設定された用紙処理設定、およびリーダスキャナ303あるいは外部ホストPCから送られる画像情報に基づき、用紙給紙搬送、画像形成および後処理を行う。これらの動作が行われ、成果物として出力された画像形成済みの用紙は、ユーザに提供される。
【0024】
この画像形成システムにおける一連の処理について説明する。用紙給送装置301は、2段の給紙部311、312から構成され、各給紙部に搭載される収納庫3311、3312に用紙束を格納し、ここから用紙を随時給紙する。
【0025】
用紙給送装置301の天面には、重送やJAM等による異常紙を強制排出するエスケープ排紙トレイ101が備えられている。満載検知部102は、エスケープ排紙トレイ101に排出される用紙の満載を検知するために設けられている。各搬送経路には、搬送センサ(図示せず)が複数設けられており、各搬送路(パス)で用紙が通過することを検知する。
【0026】
給紙動作は、各給紙部に設けられた給紙搬送部316a、316bにより行われる。なお、給紙搬送部316a、316bを特に区別する必要がない場合、単に給紙搬送部316という。また、画像形成装置300内の給紙部313には、給紙搬送部316cが設けられている。
【0027】
本実施形態では、エア給紙制御のため給紙搬送部316a、316b、316cには、ファン(図示せず)が複数配置されている。給紙動作時、収納庫3311、3312内の用紙に対し、搬送方向の上流から、用紙間に空気を送り込むようにファンが制御される。用紙が捌かれると、無端ベルト内部に配置された用紙吸引用のファンにより無端ベルトに吸い付けられ、1枚ずつ用紙が給紙・搬送される。
【0028】
上給紙部311の場合、無端ベルトによる搬送後の用紙は、上部搬送部317によって継続して搬送される。一方、下給紙部312の場合、無端ベルトによる搬送後の用紙は、下部搬送部318によって継続して搬送され、上部搬送部317と合流する合流搬送部319にそれぞれ継続して搬送される。
【0029】
合流搬送部319には、用紙厚検知装置500が設けられている。用紙厚検知装置500は、給紙部311、312から給紙・搬送されてくる用紙に対し、用紙厚を順次検知する。
【0030】
各搬送部には、それぞれ搬送用のステッピングモータが設けられている。搬送制御部は、これらのモータを制御する。各搬送部に設けられステッピングモータの駆動力は機械的に伝達され、各部の搬送ローラ360を回転させることで、用紙の搬送が行われる。
【0031】
用紙給送装置301は、画像形成装置300からの用紙の要求情報に従い、各収納庫の用紙を順次給紙・搬送し、プレレジストレーション位置(以下、プレレジ位置と称す)で待機完了後に画像形成装置へ準備完了を通知する。
【0032】
画像形成装置300は、用紙給送装置301からの準備完了を受け、受渡し要求を通知する。用紙給送装置301は、受渡し要求の通知ごとに、プレレジ位置から画像形成装置300に用紙を順次排出し、要求された用紙枚数を排出後に動作を終了し、スタンバイ状態となる。
【0033】
画像形成装置300は、用紙給送装置301に対し、受渡し要求を通知すると共に、一枚ずつ用紙を受け取り、順次画像形成を行う。画像形成装置300の上部には、ユーザが画像形成システムに対して動作設定を行うための操作部302、および原稿画像を読み取るためのリーダスキャナ(リーダ部)303が配置されている。
【0034】
画像形成装置300は、自身に接続されている用紙給送装置301から、あるいは画像形成装置300内にある給紙部313から用紙を受けとった後、各搬送部を制御し、用紙搬送を行う。
【0035】
また、給紙部313から作像部307への搬送路には、用紙厚検知装置501が設けられている。用紙厚検知装置501は、給紙部313から給紙・搬送される用紙に対して用紙厚を順次検知する。
【0036】
給紙部313は、用紙給送装置301内の給紙部311、312と同様の構成を有するので、その説明を割愛する。また、用紙厚検知装置501は、用紙給送装置301に備えられた用紙厚検知装置500と同一の構成を有する。
【0037】
フラッパ310の動作は、用紙給送装置301の用紙厚検知装置500、あるいは画像形成装置300の用紙厚検知装置501のいずれかの搬送元の用紙厚検知結果に基づき、決定される。フラッパ310は、用紙の異常を検知すると、エスケープ排紙トレイ101へ、正常時に作像部307へと搬送路を選択する。
【0038】
用紙の異常時、用紙は、エスケープ排紙トレイ101に排紙される。正常時、画像基準センサ305による用紙の検知を起点として、作像部307は、受信した画像データに基づく画像形成動作を行う。
【0039】
作像部307は、レーザスキャナユニット354、現像部352、感光体ドラム353および中間転写ベルト355から構成される。作像部307は、レーザスキャナユニット354内の半導体レーザの点灯など、光量制御を行うと共に、ポリゴンミラー(図示せず)を回転駆動するスキャナモータを制御し、画像データに基づいたレーザ光により感光体ドラム353上に潜像画像を形成する。
【0040】
作像部307は、トナーボトル351からトナーが給送される現像部352により感光体ドラム353上の潜像画像をトナーで現像し、この現像されたトナー画像を感光体ドラム353から中間転写ベルト355に1次転写する。
【0041】
中間転写ベルト355に転写されたトナー画像は、用紙に2次転写されることで、用紙にトナー画像として形成される。2次転写位置の直前には、レジストレーション制御部306が設けられている。転写位置直前の用紙に対し、用紙の持つ斜行補正や中間転写ベルト355に形成されたトナー画像と用紙先端位置を微調整して合せる用紙搬送制御が用紙を停止させることなく行われる。
【0042】
2次転写後の用紙は定着部308に搬送される。定着部308は、熱と圧力を用紙に加え、トナーを溶融し用紙に定着させる。この時、用紙厚検知装置500、501の検知結果に基づき、定着部308の温調温度が決定される。すなわち、定着部308は、用紙厚が薄い場合、温調温度を基準温度より低めに設定し、用紙厚が厚い場合、基準温度より高めに設定する。これにより、用紙の持つ熱容量によりトナーへ加える熱が奪われることによる定着不良や、トナーへ過剰に熱が加わることによる定着後画像のグロス低下等の画像不良を防止することができる。
【0043】
定着後の用紙は、裏面を継続して印字する場合、あるいは用紙の表裏反転が必要な場合、反転搬送部309に搬送される。一方、印字終了である場合、用紙は下流の排紙処理装置304に継続して搬送される。
【0044】
排紙処理装置304は、画像形成装置300の下流側に接続され、画像形成後の用紙に対し、操作部302でユーザにより設定された所望の後処理(折り、ステイプル、穴あけ)を行う。この成果物として、排紙トレイ370のいずれか一方に、画像形成済みの用紙が順次出力され、ユーザに提供される。
【0045】
図2は画像形成システムにおいて用紙搬送に関する制御部の構成を示すブロック図である。画像形成装置300に対し、操作部302、ネットワーク(図示せず)、USB等を介して、あるいはPC外部入力により、JOB要求がユーザにより行われる。
【0046】
コピー時、リーダ部303から画像形成装置300内のコントローラ404へ画像情報が送られる。また、プリント時、ネットワークから画像形成装置300内のコントローラ404へ画像情報が送られる。
【0047】
コントローラ404の内部に送られてきた画像情報に対し、ユーザ指定の画像加工や、画像形成装置300に適応した画像形態とするべく画像処理が行われる。
【0048】
また、画像処理後の画像データと共に、画像サイズ、ページ情報、使用する給紙部情報、排紙処理情報など、種々のステータス情報が、画像形成装置300内の画像形成制御部401にコントローラ404から送信される。
【0049】
ここで、給紙部情報とは、操作部302、ネットワーク、USB等を介して、ユーザによって行われる、JOBで使用するシートの指定に相当する。
【0050】
用紙指定の前処理として、JOB実行前に、予めユーザにより各給紙部に格納する用紙情報が指定される。この用紙情報は、サイズ、坪量および表面性からなり、各給紙部に対して行われ、コントローラ404を経由して、画像形成制御部401および用紙給送装置301内の給送制御部410に通知され、記憶される。
【0051】
画像形成装置300、用紙給送装置301および排紙処理装置304は、それぞれバス405で接続されている。バス405は、I2CやARCNET(登録商標)などの多重接続可能なシリアルバスによって構成される。
【0052】
また、バス405とは別に、画像形成装置300と用紙給送装置301との間には、受渡しタイミング信号440の信号線が接続されている。受渡しタイミング信号440は、用紙給送装置301で待機している用紙を画像形成装置300に対して受渡し搬送する起点となる信号である。
【0053】
次に搬送される後続の用紙は、用紙給送装置301内の給送制御部により搬送・制御される。受渡しタイミング信号440による受渡し搬送速度は、画像形成装置300内での搬送速度と同一である。この速度は、定着性、転写性などの画像形成品位を満足可能な最高速度となっている。用紙給送装置301には、このような制約が少ないので、画像形成装置300に比べ、容易に高速での搬送速度設定が可能である。
【0054】
排紙処理装置304の制御部については、本発明において、特に詳述する必要がないので、割愛する。
【0055】
画像形成制御部401には、CPU403が設けられている。CPU403は、コントローラ404と通信で接続され、ステータス情報のやり取りを行うと共に、コントローラとの画像データの授受およびタイミングを制御する。
【0056】
また、CPU403は、通信制御部406を介してバス405に接続され、各用紙給送装置のステータス情報や搬送制御を行う。そして、CPU403は、画像形成装置300内の作像部307、定着部308、反転搬送部309などの各装置内ユニットに対して制御指令を出すと共に、状態検知を行い、画像形成制御およびそれに伴うシート搬送制御を行う。
【0057】
用紙厚検知装置501は、CPU403と接続される。CPU403は、用紙厚検知装置501の出力調整を行うとともに、用紙厚に相当する出力値を入力する。
【0058】
ROM601は、CPU403と接続されている。ROM601には、CPUの制御プログラムや各制御部の初期設定値や制御値が格納されている。また、ROM601には、坪量−用紙厚変換テーブル(図6参照)や用紙厚検知装置出力−用紙厚変換テーブル(図5参照)などの特性テーブルが予め格納されている。
【0059】
RAM602もCPU403に接続され、用紙厚検知装置の調整値の格納等に使用される。RAM602は、装置の電源OFF時でも電池によりバックアップされる不揮発性のメモリとなっている。
【0060】
用紙給送装置301の内部には、給送制御部410が設けられている。給送制御部410は、用紙給送装置301の全ての負荷およびセンサ情報を基とした給送制御を行う。
【0061】
給送制御部410には、CPU411が設けられている。CPU411には、画像形成装置300からの受渡しタイミング信号440が入力される。CPU411は、この信号を起点とした画像形成装置300と用紙給送装置301間の用紙受渡し搬送を行うと共に、通信制御部413を介し、バス405に接続された周辺装置とのステータス情報や搬送制御を行う。
【0062】
また、搬送部317、318は、給紙搬送部316からの給紙制御を行う給紙部311、312、給紙後の用紙搬送を行う上部搬送部317および下部搬送部318、および合流搬送部319における用紙搬送制御を行う。
【0063】
用紙厚検知装置500は、CPU411と接続される。CPU411は、用紙厚検知装置500の出力調整を行うとともに、用紙厚に相当する出力値を入力する。
【0064】
ROM701は、CPU411と接続されている。ROM701には、CPU411の制御プログラム、給紙部311、312や搬送部317、318の初期設定値および制御値が格納されている。また、ROM701には、画像形成装置300と同様、用紙厚検知装置の特性テーブル(図5、図6参照)が予め格納されている。
【0065】
RAM702もCPU411に接続され、用紙厚検知装置500の調整値の格納等に使用される。RAM702は、装置の電源OFF時、電池によりバックアップされる不揮発性のメモリとなっている。
【0066】
図3は用紙厚検知装置500の構成を示す図である。なお、用紙厚検知装置501については、用紙厚検知装置501を制御するCPUがCPU403になるだけで、用紙厚検知装置501の構成は用紙厚検知装置500と同じである。ここでは、用紙厚検知装置500について説明し、用紙厚検知装置501の説明については省略する。
【0067】
用紙厚は、用紙給送装置301内に設けられた用紙厚検知装置500に用紙が進入し、搬送パスセンサ380で検知されてから所定時間後に検知される。用紙厚検知装置500は、マグネット363、364(磁性体)、用紙厚検知センサ基板361、362、従動部材366などから構成される。用紙厚検知センサ基板361、362には、マグネット363、364とそれぞれ対向するように、磁気センサ(図示せず)が搭載されている。また、帯域抑制フィルタ(LPF)372が設けられ、磁気センサの出力に含まれるノイズなどを除去する。このノイズが除去された信号がCPU411に入力され、CPU411が演算処理することで、用紙厚が決定される。CPU411は、磁気センサ駆動回路373を介して、用紙厚検知センサ基板361、362に取り付けられた磁気センサに流れる電流値および磁気センサにかかる電圧値を制御する。
【0068】
図4は用紙厚検知装置500の動作を示す図である。用紙の給送が開始されると、用紙368が図中矢印369に示す方向に搬送される。従動部材366の一端部である先端部(ローラ)366aに用紙368が到達すると、用紙厚に追従して用紙厚分だけ従動部材366が支点(固定された軸)367を中心に変位する。変位後、従動部材366は図4の破線に示すような姿勢になる。このように、従動部材366は支点(軸)367を中心に回動自在な揺動部材である。
【0069】
また、従動部材366の後端部(他端部)366bには、マグネット363、364が取り付けられている。従動部材366が変位すると、マグネット363、364も支点367を中心に変位する。マグネットが変位することで、用紙厚検知センサ基板361、362に取り付けられた磁気センサが検出可能な磁束密度も変化する。このため、磁気センサは、変化する磁束密度を電圧信号として検出し、この電圧信号はCPU411に送信される。CPU411が入力した電圧信号に所定の処理を行うことで、用紙厚が計測される。
【0070】
つぎに、用紙厚検知装置500の機械的構造および増幅度について説明する。用紙厚検知装置500は、前述したように、従動部材366の後端部366bにマグネット363、364が取り付けられている。このとき、マグネット363、364は、数式(1)を満たす位置に設けられている。
【0071】
L2/L > L1/L > 1 …… (1)
ここで、L2は従動部材366の支点367とマグネット363の中心までの距離である。L1は従動部材366の支点367とマグネット364の中心までの距離である。Lは用紙に接触する部分から従動部材366の支点367までの距離である。
【0072】
つづいて、数式(1)に示すように、マグネットの取り付け位置を設定することについて説明する。図4に示すように、用紙368が図中右側から搬送され、従動部材366の先端部366aに差し掛かると、従動部材366は支点367を中心として回動し、先端部366aが変位する。このとき、従動部材366の先端部366aの変位量をxとすると、マグネット363、364の変位量はそれぞれx・L2/L、x・L1/Lとなる。このように、用紙厚分の変位量が従動部材366を介して増幅される。
【0073】
例えば、L2/L=3、L1/L=2をそれぞれ満足するように、マグネット363、364を設けた場合を考える。この場合、厚さ100[μm]の用紙が検知部を通過すると、マグネット363が支点367を中心に変位する変位量は300[μm]となる。同様に、マグネット364が支点367を中心に変位する変位量は200[μm]となる。このように、用紙厚の変位量はそれぞれ3倍、2倍に増幅される。
【0074】
図5は用紙厚に応じたセンサ出力特性を示すグラフである。ここで、図5におけるセンサ出力とは、非通紙時の出力電圧レベルと通紙時の出力電圧レベルとの差分値である。図5の符号A、B、Cに示す各センサ出力特性のうち、符号Aは最も増幅度の小さいセンサ出力特性を示し、符号Cは最も増幅度の大きいセンサ出力特性を示す。なお、図5のセンサ出力特性は、非通紙の電圧レベルと通紙によって変化した電圧レベルの差分値を用紙厚ごとに測定することで得られた。
【0075】
つづいて、図5を用いて、用紙厚検知装置500の出力特性にみられる飽和領域について説明する。符号Cに示すセンサ出力特性に着目すると、用紙厚が比較的薄い場合、用紙厚に比例したセンサ出力が得られる。しかし、用紙厚が厚くなるにつれて用紙厚とセンサ出力の比例関係が崩れ、センサ出力が飽和する。
【0076】
磁気センサとマグネットとの距離は用紙厚に応じて変化する。このため、用紙厚が厚くなると、磁気センサとマグネットのギャップ間隔が大きくなり、マグネットの磁束は周囲に広がっていく。この結果、磁気センサが検知することができる磁束密度は、ギャップ間隔が拡がるにつれて減少する。つまり、センサ出力は、厚い用紙になるほど用紙厚に相当するセンサ出力が得られなくなり、飽和する。
【0077】
そこで、本実施形態の用紙厚検知装置は、用紙厚に応じて出力特性が最適になるように、複数の磁気センサの中から、特定の磁気センサを選択し、用紙厚の変位量を検出する際の増幅度を切り換える。この増幅度を切り換える方法については後述する。
【0078】
図6は用紙の坪量と用紙厚の関係を表すグラフである。このグラフでは、増幅度n1、n2のいずれかが選択される。ここで、増幅度(値)n1、n2は、それぞれ図4のL1/L、L2/Lに相当する。前述したように、増幅度を大きくすると、センサ出力特性の飽和領域が広くなる(図5の符号C参照)。
【0079】
そこで、本実施形態では、用紙厚の範囲ごとに増幅度を切り換え、飽和領域で用紙厚を検出ことを避けるように制御を行う。すなわち、比較的薄い用紙の場合、増幅度を大きくし、比較的厚い用紙の場合、増幅度を小さくすることで、増幅度によって異なるセンサ出力特性の線形性の良い部分だけを利用する。
【0080】
図6に示すように、坪量と用紙厚はほぼ比例する。このため、ある坪量DMを閾値とし、この坪量DMより小さい用紙が設定された場合、増幅度を値n2に設定する。一方、坪量DMより大きい用紙が設定された場合、増幅度を値n1に設定する(n2<n1)。このような処理を行うことで、増幅度を切り換えることができる。ここで、ROM701には、この坪量と用紙厚の関係が予め記憶されている。ユーザが用紙情報を設定すると、CPU411は、ROM701に格納されている坪量と用紙厚の関係から、使用する用紙厚範囲を認識し、増幅度を切り換える処理を行う。
【0081】
上記構成を有する用紙厚検知装置の動作を示す。ここでは、画像形成装置300に搭載された用紙厚検知装置501について説明する。図7は画像形成システムにおける給紙部313に対する用紙給送動作手順を示すフローチャートである。この処理は、電源ONによる初期化処理後、CPU403によって行われる。なお、用紙給送装置301における用紙厚検知も同様の手順で行われる。
【0082】
まず、CPU403は、操作部302からの用紙情報(シート情報)をもとに、ユーザによって使用される用紙を設定する(ステップS1)。このとき、操作部302から入力された用紙情報のデータがバス405を介してCPU403に通知される。CPU403は、この通知された用紙情報を認識する。
【0083】
CPU403は、給紙部313(給紙装置)内に用紙が存在しているか否かを判別する(ステップS2)。用紙が存在していない場合、CPU403は、ユーザにその旨を通知する(ステップS12)。そして、CPU403は、ユーザによって用紙が補給されるのを待つ(ステップS13)。用紙の補給が完了すると、CPU403は、給紙装置内に存在する用紙残量を確認する(ステップS14)。この後、CPU403は、ステップS3の処理に進む。
【0084】
一方、ステップS2で給紙装置内に用紙が存在する場合、あるいはステップS14の処理後、CPU403は、スタンバイ状態になる(ステップS3)。そして、CPU403は、増幅度切換およびセンサ調整動作を行う(ステップS4)。この増幅度切換およびセンサ調整動作では、ステップS1で設定された用紙情報に基づき、用紙厚検知センサ基板361、362のうち、いずれかの磁気センサによって検知されたセンサ出力を、CPU403に取り込むかが決定される。この増幅度切換およびセンサ調整動作については後述する。
【0085】
CPU403は、JOBが開始された否かを判別する(ステップS5)。JOBが開始されないとき、CPU403は、ステップS3の処理に戻る。一方、JOBが開始されるとき、操作部302から入力されたJOB情報のデータは、バス405を介してCPU403に通知される。CPU403は、JOB情報を認識し、給紙部313あるいは用紙給送装置301からの給紙を開始する(ステップS6)。
【0086】
給紙が開始されると、CPU403は、用紙厚検知処理を開始する(ステップS7)。CPU403は、JOBがユーザ所望の出力枚数(規定JOB枚数)に到達しているか否かを判断する(ステップS8)。なお、用紙給送装置301から給紙する場合、CPU411が出力枚数に到達しているか判断し、CPU403に通知するようにしてもよい。
【0087】
出力枚数に到達している場合、CPU403は、JOBを完了する(ステップS9)。この後、CPU403は、JOB信号をバス405を介してCPU411に通知するまで、スタンバイ状態となる。
【0088】
一方、ステップS8で規定JOB枚数に到達していない場合、CPU403は、用紙残数が値0であるか否かを判断する(ステップS10)。用紙残数が値0でない場合、CPU403は、ステップS6の処理に戻る。一方、用紙残数が値0である場合、CPU403は、ユーザに用紙の補給を通知する(ステップS11)。この後、CPU403は、ステップS13の処理に進む。
【0089】
図8はステップS4における増幅度切換およびセンサ調整動作手順を示すフローチャートである。用紙厚検知装置501は、ユーザが電源を投入した際、画像形成システム全体の初期化動作中、通紙しない状態(紙なし時)のセンサ出力を検知してキャリブレーションを行い、スタンバイ状態となっている。なお、スタンバイ状態とは画像形成の開始の指示を待機している状態である。
【0090】
スタンバイ状態にある画像形成システムにおいて、CPU403は、ユーザが使用する用紙(用紙の種類など)の設定を行ったか否かを判別する(ステップS21)。ユーザが用紙の設定を行わなかった場合、CPU403は、用紙厚検知装置501の増幅度を、デフォルト値である値n1に設定し、JOBの開始に備える(ステップS22)。
【0091】
一方、ステップS21でユーザが使用する用紙の設定を行った場合、CPU403は、設定された用紙情報を取得し、設定された用紙の坪量が閾値である坪量DM以下であるか否かを判定する(ステップS4)。この判定結果、設定された用紙の坪量が坪量DM以下である場合、CPU403は、増幅度を値n2に選択する(ステップS25)。一方、ステップS24で、設定された用紙の坪量が閾値である坪量DMより大きい場合、CPU403は、増幅度を値n1に選択する(ステップS26)。
【0092】
ステップS25あるいはS26の処理後、CPU403は、センサ出力レベルのキャリブレーションを行い、JOBの開始に備える(ステップS23)。なお、ステップS22の処理後においては、CPU403は、センサ出力レベルのキャリブレーションを行うことなく、JOBの開始に備える。この後、CPU403は元の処理に復帰する。
【0093】
図9はステップS7における用紙厚検知処理手順を示すフローチャートである。前述したように、ステップS5でJOBが開始されると、ステップS6で用紙の給紙が開始する。CPU403は、搬送される用紙が搬送パスセンサ380を通過したか否かを判断する(ステップS31)。用紙の通過が検知されていない場合、CPU403は、ステップS31の処理を繰り返す。
【0094】
一方、ステップS31で用紙の通過を検知した場合、CPU403は、この検知信号をトリガとして、所定時間後に用紙厚の検知を開始する(ステップS32)。CPU403は、所定の期間中、用紙厚のデータを複数回サンプリングしてRAM602に格納する(ステップS33)。
【0095】
CPU403は、RAM602に格納された用紙厚のデータを平均化処理して用紙厚を算出し、決定する(ステップS34)。この後、CPU403は元の処理に復帰する。
【0096】
つぎに、磁気センサのキャリブレーションについて説明する。図10はキャリブレーションを行う際、磁気センサのセンサ出力レベルの時間変化を示すグラフである。磁気センサからのセンサ出力信号は常時出力されている。
【0097】
予めROM601(用紙給送装置からの給紙の場合、ROM701)には、磁気センサの非通紙状態におけるセンサ出力電圧レベルVref、および出力電圧レベルのばらつき許容レベル範囲αが記憶されている。ばらつき許容レベル範囲αは、予めROM601に格納された出力変動の許容最高値αHおよび許容最低値αLにより決定される。
【0098】
CPU403は、ユーザによって設定された用紙情報ごとに、センサ出力レベルVrefがαL<Vref<αHを満たしているか否かを、用紙厚検知センサ基板361および362から得られる出力レベルをもとに判別する。
【0099】
CPU403は、ばらつき許容レベル範囲α以内にセンサ出力レベルが収束していないと判断した場合、センサ出力値に対してオフセット補正を行い、センサ出力レベルを許容レベル範囲α以内になるように調整する。本実施形態では、この調整を磁気センサのキャリブレーションと呼ぶ。
【0100】
つぎに、検知したセンサ出力をデータ化する手法について説明する。図11はセンサ出力をデータ化する際、磁気センサのセンサ出力レベルの時間変化を示すグラフである。用紙厚検知センサ基板361、362から得られる信号はアナログ信号である。
【0101】
用紙368が従動部材366の検知部に突入すると、図11に示すように、センサ出力には、その衝撃でアンダーシュートが発生する。用紙368の先端がローラ366aに突入した時刻をtinに、用紙368の後端がローラ366aを抜けた瞬間の時刻をtoutとすると、本実施形態では、用紙の突入によるアンダーシュートが発生する時間を予めマスクする。
【0102】
そして、センサ出力信号レベルが安定した状態で、CPU403は、データの取得を開始する。測定データは、デジタルデータとして量子化され、RAM602に格納される(図9のS33参照)。このとき、データ化するポイントは複数回測定される。これらのデータうち、最大値と最小値を取り除いたデータをさらに平均化することで、用紙厚が決定される。
【0103】
このように、第1の実施形態の用紙厚検知装置によれば、従動部材によって用紙厚による変位量を増幅させることで、用紙の厚さに拘わらず、用紙厚を正確に検出することができる。例えば、38g紙のような超薄紙の用紙厚も検出できるようになる。また、厚い用紙の場合、増幅度を低くし、薄い用紙の場合、増幅度を高くするというように、増幅度を用紙厚ごとに適宜に切り換える。また、増幅度の異なる複数の用紙厚検知センサ基板の出力特性における局所的な線形性を選択的に利用することができ、超薄紙から厚紙まで精度よく検出することができる。また、搬送される用紙は、ユーザが設定した用紙に間違いがないか否かを確認することができる。また、マグネットの磁束密度を磁気センサで検知するので、マグネットの取り付け位置によって増幅度を容易に可変することができる。
【0104】
また、搬送される用紙の用紙厚を判別することで、つぎのような有益性がある。一例として、ユーザの設定した用紙の厚さに間違いがないか否かを確認するという装置として利用できる。ユーザが設定した用紙厚と検知した用紙厚とが大きく異なる場合、用紙厚に応じた定着器の温度制御が不適切になる惧れがあるため、その用紙はエスケープトレイ101に排紙される。
【0105】
また、前述したように、ユーザは、予めJOBの開始前に使用する用紙の用紙情報を指定する。仮に、ユーザが給紙装置に補給した用紙情報と、操作部から入力した用紙情報とが違う場合、予定していた用紙とは異なる用紙が搬送されてしまう。このため、本実施形態の用紙厚検知装置を用いることで、ユーザの設定した用紙と搬送される用紙が違っていないかを判別することができる。
【0106】
[第2の実施形態]
第2の実施形態の用紙厚検知装置について説明する。第2の実施形態の画像形成システムの構成は、前記第1の実施形態と同じであるので、同一の部分については、同一の符号を付してその部分の説明を省略する。
【0107】
用紙厚検知センサ基板361、362に搭載された磁気センサは、定電流回路によって駆動される。磁気センサの感度は、この磁気センサを流れる電流値で制御される。磁気センサの感度とは、単位磁束密度当たりに出力される電圧レベルを表す。
【0108】
例えば、100[mT]の磁気空間を検知したことを示す電気信号として、1[V]の出力を出した場合と10[V]の出力を出した場合とを考えると、後者の方が感度は高いことになる。したがって、磁気センサの感度を高めることで、磁気センサとマグネットのギャップ間隔における、微小な変位量も検出することができる。
【0109】
つぎに、用紙厚検知装置の感度について説明する。図12は用紙厚に対する磁気センサの出力レベルを示すグラフである。横軸は用紙厚を表し、縦軸はセンサ出力電圧レベルを表す。ここで、センサ出力レベルは磁気センサが常時出力している電圧レベルを表す。
【0110】
前述したうように、用紙が従動部材のローラ(検知部)に掛かると、磁気センサとマグネットのギャップ間隔は、非通紙状態の時より大きくなる。このため、厚い用紙ほど、センサ出力電圧レベルは低くなる。図12において、符号e、fに示す特性のうち、感度が大きい(磁気センサに流れる電流値が最も大きい)特性は、符号eに示すようになる。また、感度が小さい(磁気センサに流れる電流値が最も小さい)特性は、符号fに示すようになる。
【0111】
ここで、符号eに示す特性の出力電圧をve、符号fに示す特性の出力電圧をvf、用紙厚をtとする。そして、磁気センサの出力変動分をdve、dvfとし、用紙厚変動分をdtとすると、用紙厚が薄い場合の用紙厚に対するセンサ出力の変動率は、数式(2)に示すようになる。
【0112】
【数1】
【0113】
つまり、用紙厚の変動に対し、符号eにおける感度設定の場合、符号fにおける感度設定に比べ、大きなセンサ出力変化が得られる。用紙厚という微小な変位量を検出する場合、厚みに相当するセンサ出力をなるべく大きくしたい。例えば、40[μm]の厚み変化をセンサ出力に換算し、100[mV]の出力の変化を得る場合と200[mV]の出力変化を得る場合とでは、感度設定において、後者の方が望ましい。
【0114】
しかし、用紙厚tが大きくなるにつれ、感度の高い符号eに示す特性の線形性は、劣化する。このため、用紙厚tが大きい領域では、用紙厚に相当するだけ出力変動は、符号fに示す特性よりも得られなくなる。従って、厚い用紙の場合、符号fに示す特性のように、小さい感度で検知した場合、符号eに示す特性の感度で用紙厚を測定する場合に比べ、正確に検知することができる。
【0115】
図13は用紙の坪量と用紙厚の関係を表すグラフである。センサの感度として、感度X、Yのどちらかを選択する。前述したように、薄い用紙を検知する場合、センサの感度を高め、厚い用紙を検知する場合、センサの感度を低く設定する。
【0116】
図13に示すように、坪量と用紙厚はほぼ比例する。このため、ある坪量DMを閾値として、この坪量DMより小さい用紙が設定された場合、感度Xにし、坪量DMより大きい用紙が設定された場合、感度Y(X>Y)にする処理を行うことで、感度を切り換えることができる。この場合、ROM601には、この坪量と用紙厚の関係が予め記憶されている。ユーザが用紙情報を設定すると、CPU403はROM601に格納されている坪量と用紙の関係から使用する用紙厚の範囲を認識し、感度を切り換える処理を行う。
【0117】
つぎに、センサの感度調整について説明する。図14はセンサの感度調整手順を示すフローチャートである。この感度調整処理は、前記第1の実施形態のステップS4において、前述した図8の増幅度切換・センサ調整処理の代わりに実行される。
【0118】
用紙厚検知装置501は、ユーザが電源を投入した際に画像形成システム全体の初期化動作の中で、通紙しない状態のセンサ出力を検知してキャリブレーションを行い、スタンバイ状態になる。
【0119】
この状態で、CPU403は、ユーザが用紙設定を行ったか否かを判別する(ステップS41)。ユーザが用紙設定を行わなかった場合、CPU403は、感度をデフォルトの感度Yに設定し、センサ出力のキャリブレーションを行う(ステップS42)。
【0120】
一方、ユーザが用紙設定を行った場合、CPU403は、設定された用紙情報を取得し、設定された用紙の坪量が閾値である坪量DM以下であるか否かを判別する(ステップS43)。閾値である坪量DM以下である場合、CPU403は、感度を感度Xに設定し、キャリブレーションを行う(ステップS44)。一方、用紙の坪量が閾値DMより大きい場合、感度を感度Yに設定し(X>Y)、キャリブレーションを行う(ステップS45)。そして、ステップS42、S44、S45の処理後、CPU403は、元の処理に復帰する。
【0121】
つぎに、センサのキャリブレーションについて説明する。図15はキャリブレーションを行う際、磁気センサのセンサ出力レベルの時間変化を示すグラフである。磁気センサからのセンサ出力信号は常時出力されている。
【0122】
センサの非通紙状態において、感度Xおよび感度Yにおけるセンサ出力レベルはそれぞれセンサ出力電圧レベルVref1およびVref2である。また、ROM601には、予めそれぞれの出力電圧レベルのばらつき許容レベルα、βが記憶されている。
【0123】
そして、CPU403は、ユーザによって設定された用紙情報ごとに、センサ出力レベルが規定の状態を満たしているか否かを、用紙厚検知センサ基板361、362から得られる出力レベルをもとに判別する。
【0124】
感度Xの場合、センサ出力レベルは、Vref1に示すようになる。また、ばらつき許容レベルαは、予めROM601に格納された出力変動の許容最高値αHおよび許容最低値αLにより決定される。
【0125】
そして、CPU403は、ユーザの用紙情報設定ごとに、センサ出力レベルVref1が数式(3)を満たしているか否かを、用紙厚検知センサ基板361および362から得られる出力レベルをもとに判別する。
【0126】
αL < Vref1 < αH …… (3)
同様に、ばらつき許容レベルβは、予めROM601に格納された出力変動の許容最高値βHおよび許容最低値βLにより決定される。そして、ユーザによって設定された用紙情報ごとに、センサ出力レベルVref1が数式(4)を満たしているかを用紙厚検知センサ基板361および362から得られる出力レベルをもとに判別する。
【0127】
βL<Vref2<βH …… (4)
CPU403は、感度Xの場合、許容レベルαの範囲内にセンサ出力レベルが収束していないと判断した場合、センサ出力値に対してオフセット補正を行い、センサ出力レベルを許容レベルαの範囲内になるように調整する。同様に、CPU403は、感度Yの場合、許容レベルβの範囲内になるように調整する。
【0128】
このように、第2の実施形態の用紙厚検知装置は、比較的薄い用紙の場合、磁気センサの感度を大きく(磁気センサに流れる電流値を大きく)設定し、比較的厚い用紙の場合、磁気センサの感度を小さく(磁気センサに流れる電流値を小さく)設定する。なお、増幅度は一定のままとする。これにより、用紙厚を精度良く測定することができる。
【0129】
すなわち、増幅度を一定にしたまま、薄い用紙の場合、厚みによる変位が少ない分、感度を高くする。それ以外では、変位量検知手段の感度を下げる。これにより、極めて薄い用紙から厚い用紙まで、精度良く用紙厚を検出することができる。また、磁気センサに供給される電流値を切り換えることにより、磁気センサの感度を容易に切り換えることができる。
【0130】
[第3の実施形態]
第3の実施形態における画像形成システムの構成は、前記第1、第2の実施形態と同じであるので、同一の部分については、同一の符号を付してその部分の説明を省略する。
【0131】
第3の実施形態では、増幅度および感度を制御する場合を示す。図16は第3の実施形態における用紙の坪量と用紙厚の関係を表すグラフである。用紙の坪量と用紙厚はほぼ比例する。
【0132】
ある坪量DM、DE1およびDE2を閾値とし、坪量DMより小さい用紙が設定された場合、増幅度を値n2にし、坪量DMより大きい用紙が設定された場合、増幅度を値n1にする処理を行うことで、増幅度を切り換えることができる(n2>n1)。
【0133】
ROM601には、この坪量と用紙厚の関係が予め記憶されている。ユーザが用紙情報を設定すると、CPU403は、ROM601に格納されている坪量と用紙の関係から、使用する用紙厚範囲を認識し、増幅度を切り換える処理を行う。
【0134】
CPU403は、閾値である坪量DMより小さい坪量の用紙のうち、閾値である坪量DE1より小さい坪量の用紙が設定された場合、センサの感度を感度Xに設定し、一方、坪量DE1より大きい坪量の用紙が設定された場合、感度を感度Yに設定する(X>Y)。
【0135】
同様に、CPU403は、閾値である坪量DMより大きい坪量の用紙のうち、閾値である坪量DE2より小さい坪量の用紙が設定された場合、センサの感度を感度Xに設定し、閾値である坪量DE2より大きい坪量の用紙が設定された場合、感度を感度Yに設定する。
【0136】
つぎに、ユーザが用紙情報を設定した場合の増幅度およびセンサの感度の調整について説明する。図17は増幅度およびセンサの感度調整手順を示すフローチャートである。この増幅度および感度調整処理は、ステップS4において、前述した図8の増幅度切換・センサ調整処理の代わりに実行される。
【0137】
用紙厚検知装置は、ユーザが電源を投入した際に画像形成システム全体の初期化動作の中で、通紙しない状態のセンサ出力を検知してキャリブレーションを行い、スタンバイ状態になる。
【0138】
CPU403は、ユーザが用紙情報の設定を行ったか否かを判別する(ステップS51)。図16に示すように、用紙の坪量と紙厚は比例する。ユーザが用紙情報の設定を行った場合、CPU403は、設定された用紙情報を取得し、設定された用紙の坪量が坪量DM以下であるか否かを判別する(ステップS53)。坪量DMより大きい場合、CPU403は、増幅度を値n1に設定する(ステップS58)。一方、坪量DM以下である場合、CPU403は、増幅度n2を選択する(ステップS54)。
【0139】
増幅度を値n2に設定した状態で、CPU403は、ユーザが設定した坪量が閾値DE1以下であるか否かを判別する(ステップS55)。閾値である坪量DE1以下である場合、CPU403は、感度を感度Xに設定し、キャリブレーションを行う(ステップS56)。一方、ユーザが設定した坪量が閾値である坪量DE1より大きい場合、CPU403は、感度を感度Yに設定し、キャリブレーションを行う(ステップS57)。
【0140】
同様に、増幅度を値n1に設定した状態で、CPU403は、ユーザが設定した坪量が閾値である坪量DE2以下であるか否かを判別する(ステップS59)。閾値である坪量DE2以下である場合、CPU403は、感度を感度Xに設定し、キャリブレーションを行う(ステップS60)。一方、閾値である坪量DE2より大きい場合、CPU403は、感度を感度Yに設定し、キャリブレーションを行う(ステップS61)。
【0141】
一方、ユーザが用紙情報を設定しない場合、CPU403は、増幅度はデフォルトである値n2に、感度をデフォルトである値Yに設定し、キャリブレーションを行う(ステップS52)。ステップS52、S56、S57、S60、S61の処理後、CPU403は元の処理に復帰する。なお、ステップS56、S60における感度Xはそれぞれ異なる値でもよい。同様に、ステップS57、S61における感度Yはそれぞれ異なる値でもよい。
【0142】
このように、第3の実施形態の用紙厚検知装置は、増幅度の切換のみでは用紙厚の検知が困難である場合、または、磁気センサの感度切換のみでは用紙厚の検知が困難である場合、両者を最適に組み合わせることで、用紙厚を正確に検出することができる。つまり、極めて薄い用紙の場合、増幅度と磁気センサの感度を大きくし、非常に厚い用紙の場合、増幅度と磁気センサの感度を小さくすることで、用紙厚を正確に検知することができる。
【0143】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、特許請求の範囲で示した機能、または本実施形態の構成が持つ機能が達成できる構成であればどのようなものであっても適用可能である。
【0144】
例えば、上記実施形態では、用紙厚検知センサとして、マグネットおよび磁気センサが用いられていたが、この代わりに、揺動部材の変位量を角度として検知する角度センサを用いてもよい。すなわち、揺動部材の変位した角度を、2倍、3倍、…の角度に増幅して検知可能な角度センサを複数設けてもよい。
【0145】
また、上記実施形態では、従動部材として、シート厚の変位量を回動量(揺動量)として検知可能な揺動部材を用いた場合を示したが、シートの厚み方向に移動して変位量を検知可能な移動部材を用いてもよい。
【0146】
また、上記実施形態に記載されている構成部品の形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明の範囲は上記例示するもののみに限定されものではない。
【0147】
また、上記実施形態では、電子写真方式とした場合を例に挙げたが、本発明は、電子写真方式に限定されるものではなく、インクジェット方式、熱転写方式、感熱方式、静電方式、放電破壊方式など各種印刷方式に適用することができる。
【0148】
また、シートの形状としては、定形紙、タブ紙など、特に限定されない。また、シートのマテリアル(材質)としては、特に限定されない。
【符号の説明】
【0149】
361、362 用紙厚検知センサ基板
363、364 マグネット
366 従動部材
368 用紙
373 磁気センサ駆動回路
403、411 CPU
500、501 用紙厚検知装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送されるシートのシート厚を検出するシート厚検出装置、画像形成装置およびシート給送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、52g紙のような薄紙から400g紙のような厚紙まで、用紙厚を精度良く測ることができる用紙厚検知装置が検討されている。ここで、52g紙、400g紙とは、それぞれ坪量が52g/m2、400g/m2の用紙のことである。
【0003】
複写機やプリンタなどの機器においては、搬送路に用紙を搬送させるための搬送ローラが取り付けられている。この搬送ローラでは、用紙が通過することで、ローラの回転軸(ローラ軸)が用紙厚分変動する。このローラ軸の変位を、ローラ軸の端部に取り付けられたマグネットとそのマグネットと向かい合う面に取り付けられた磁気センサとによって検出することで、用紙厚が測定されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、別の用紙厚検知装置として、特許文献2に示すような装置が考えられている。この装置は、搬送路中に設けられた基準ローラとこれに対向して配置された検知ローラとが、搬送路の用紙厚に追従して変位するように構成されている。この検知ローラの変位量に追従して駆動される各種ギア等のユニットを介して、用紙厚の検出が行われる。さらに、用紙厚に相当する変位量を増幅することで、検知精度を向上させ、重送時の重送枚数も検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−254855号公報
【特許文献2】特許第2872022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のシート厚検出装置では、つぎのような問題があった。すなわち、坪量が38g/m2である38g紙のような超薄紙の用紙厚を、前者の用紙厚検知装置で計測しようとすると、用紙厚に相当するセンサ出力が微小なものになる。
【0007】
具体的に、非通紙状態における出力電圧レベルをv0、通紙状態における出力電圧レベルをv1とすると、差分値|v1−v0|が用紙厚に相当するセンサ出力となる。この用紙厚に相当するセンサ出力|v1−v0|は微小なものとなってしまうので、精度の良い用紙厚の検知が困難であった。
【0008】
また、後者の用紙厚検知装置は、薄い用紙から厚い用紙まで用紙厚による変位量を一定の増幅度で増幅している。センサの出力特性が厚い用紙になるにつれ、その線形性が劣化する(飽和する)場合、一定の増幅度で検知を行うと、用紙厚に相当する出力が得られなくなる。この結果、用紙の厚みを正確に検知することができなくなる。
【0009】
そこで、本発明は、シートの厚さに拘わらず、シート厚を正確に検出することができるシート厚検出装置、画像形成装置およびシート給送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のシート厚検出装置は、搬送されるシートのシート厚を検出するシート厚検出装置において、シートの種類に関して設定されたシート情報を取得する取得手段と、シートを搬送路に沿って搬送する搬送手段と、前記搬送路に設けられ、前記搬送されるシートのシート厚に追従して変位する従動部材と、前記従動部材の変位量を、当該変位量の増幅度が異なるようにそれぞれ増幅して検知する複数の変位量検知手段と、前記取得手段によって取得されたシート情報に基づき、前記複数の変位量検知手段の中から、特定の前記変位量検知手段を選択する選択手段と、前記選択手段によって選択された前記特定の変位量検知手段の検知結果に基づき、前記シート厚を算出する算出手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に係るシート厚検出装置によれば、従動部材によってシート厚による変位量を増幅させることで、シートの厚さに拘わらず、シート厚を正確に検出することができる。例えば、38g紙のような超薄紙の用紙厚も検出できるようになる。また、厚いシートの場合、増幅度を低くし、薄いシートの場合、増幅度を高くするというように、増幅度をシート厚ごとに適宜に切り換える。また、増幅度の異なる複数の変位量検知手段の出力特性における局所的な線形性を選択的に利用することができ、超薄紙から厚紙まで精度よく検出することができる。また、搬送されるシートは、ユーザが設定したシートに間違いがないか否かを確認することができる。
【0012】
請求項2に係るシート厚検出装置によれば、シート厚に追従して変位量検知手段の感度を切り換える。このように、増幅度を一定にしたまま、薄いシートの場合、厚みによる変位が少ない分、感度を高くし、それ以外のシートでは、変位量検知手段の感度を下げる。これにより、極めて薄いシートから厚いシートまで、精度良くシート厚を検出することができる。
【0013】
請求項3に係るシート厚検出装置によれば、増幅度の切換のみではシート厚の検出が困難である場合、または、変位量検知手段の感度切換のみではシート厚の検出が困難である場合、両者を最適に組み合わせることでシート厚を検出できる。つまり、極めて薄いシートの場合、増幅度および感度の両方を大きくし、非常に厚いシートの場合、増幅度および感度を小さくすることで、シート厚を正確に検出することができる。
【0014】
請求項4に係るシート厚検出装置によれば、揺動部材の揺動量を変位量として検知するので、シート厚を簡単に変位量として捉えることができる。
【0015】
請求項5に係るシート厚検出装置によれば、磁性体の磁束密度を磁気センサで検知するので、磁性体の取り付け位置によって増幅度を容易に可変することができる。
【0016】
請求項6に係るシート厚検出装置によれば、揺動部材の変位量を角度として捉えることができる。
【0017】
請求項7に係るシート厚検出装置によれば、変位量検知手段に供給される電流値を切り換えることにより、変位量検知手段の感度を容易に切り換えることができる。
【0018】
請求項8に係る画像形成装置によれば、画像形成装置から出力されるシートの成果物の品位が向上する。また、画像プロセス制御を適切に行うことができる。
【0019】
請求項9に係るシート給送装置によれば、シート給送装置から出力されるシートの成果物の品位が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態における用紙厚検知装置が搭載された画像形成システムの構成を示す図である。
【図2】画像形成システムにおいて用紙搬送に関する制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】用紙厚検知装置500の構成を示す図である。
【図4】用紙厚検知装置500の動作を示す図である。
【図5】用紙厚に応じたセンサ出力特性を示すグラフである。
【図6】用紙の坪量と用紙厚の関係を表すグラフである。
【図7】画像形成システムにおける給紙部313に対する用紙給送動作手順を示すフローチャートである。
【図8】ステップS4における増幅度切換およびセンサ調整動作手順を示すフローチャートである。
【図9】ステップS7における用紙厚検知処理手順を示すフローチャートである。
【図10】キャリブレーションを行う際、磁気センサのセンサ出力レベルの時間変化を示すグラフである。
【図11】センサ出力をデータ化する際、磁気センサのセンサ出力レベルの時間変化を示すグラフである。
【図12】用紙厚に対する磁気センサの出力レベルを示すグラフである。
【図13】用紙の坪量と用紙厚の関係を表すグラフである。
【図14】センサの感度調整手順を示すフローチャートである。
【図15】キャリブレーションを行う際、磁気センサのセンサ出力レベルの時間変化を示すグラフである。
【図16】第3の実施形態における用紙の坪量と用紙厚の関係を表すグラフである。
【図17】増幅度およびセンサの感度調整手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のシート厚検出装置、画像形成装置およびシート給送装置の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態のシート厚検出装置は、画像形成システムに搭載された用紙厚検知装置に適用される。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態における用紙厚検知装置が搭載された画像形成システムの構成を示す図である。画像形成システムは、用紙給送装置301、画像形成装置300、操作部302、リーダスキャナ303および排紙処理装置304から構成される。
【0023】
画像形成システムは、ユーザにより操作部302あるいは外部ホストPC(図示せず)で設定された用紙処理設定、およびリーダスキャナ303あるいは外部ホストPCから送られる画像情報に基づき、用紙給紙搬送、画像形成および後処理を行う。これらの動作が行われ、成果物として出力された画像形成済みの用紙は、ユーザに提供される。
【0024】
この画像形成システムにおける一連の処理について説明する。用紙給送装置301は、2段の給紙部311、312から構成され、各給紙部に搭載される収納庫3311、3312に用紙束を格納し、ここから用紙を随時給紙する。
【0025】
用紙給送装置301の天面には、重送やJAM等による異常紙を強制排出するエスケープ排紙トレイ101が備えられている。満載検知部102は、エスケープ排紙トレイ101に排出される用紙の満載を検知するために設けられている。各搬送経路には、搬送センサ(図示せず)が複数設けられており、各搬送路(パス)で用紙が通過することを検知する。
【0026】
給紙動作は、各給紙部に設けられた給紙搬送部316a、316bにより行われる。なお、給紙搬送部316a、316bを特に区別する必要がない場合、単に給紙搬送部316という。また、画像形成装置300内の給紙部313には、給紙搬送部316cが設けられている。
【0027】
本実施形態では、エア給紙制御のため給紙搬送部316a、316b、316cには、ファン(図示せず)が複数配置されている。給紙動作時、収納庫3311、3312内の用紙に対し、搬送方向の上流から、用紙間に空気を送り込むようにファンが制御される。用紙が捌かれると、無端ベルト内部に配置された用紙吸引用のファンにより無端ベルトに吸い付けられ、1枚ずつ用紙が給紙・搬送される。
【0028】
上給紙部311の場合、無端ベルトによる搬送後の用紙は、上部搬送部317によって継続して搬送される。一方、下給紙部312の場合、無端ベルトによる搬送後の用紙は、下部搬送部318によって継続して搬送され、上部搬送部317と合流する合流搬送部319にそれぞれ継続して搬送される。
【0029】
合流搬送部319には、用紙厚検知装置500が設けられている。用紙厚検知装置500は、給紙部311、312から給紙・搬送されてくる用紙に対し、用紙厚を順次検知する。
【0030】
各搬送部には、それぞれ搬送用のステッピングモータが設けられている。搬送制御部は、これらのモータを制御する。各搬送部に設けられステッピングモータの駆動力は機械的に伝達され、各部の搬送ローラ360を回転させることで、用紙の搬送が行われる。
【0031】
用紙給送装置301は、画像形成装置300からの用紙の要求情報に従い、各収納庫の用紙を順次給紙・搬送し、プレレジストレーション位置(以下、プレレジ位置と称す)で待機完了後に画像形成装置へ準備完了を通知する。
【0032】
画像形成装置300は、用紙給送装置301からの準備完了を受け、受渡し要求を通知する。用紙給送装置301は、受渡し要求の通知ごとに、プレレジ位置から画像形成装置300に用紙を順次排出し、要求された用紙枚数を排出後に動作を終了し、スタンバイ状態となる。
【0033】
画像形成装置300は、用紙給送装置301に対し、受渡し要求を通知すると共に、一枚ずつ用紙を受け取り、順次画像形成を行う。画像形成装置300の上部には、ユーザが画像形成システムに対して動作設定を行うための操作部302、および原稿画像を読み取るためのリーダスキャナ(リーダ部)303が配置されている。
【0034】
画像形成装置300は、自身に接続されている用紙給送装置301から、あるいは画像形成装置300内にある給紙部313から用紙を受けとった後、各搬送部を制御し、用紙搬送を行う。
【0035】
また、給紙部313から作像部307への搬送路には、用紙厚検知装置501が設けられている。用紙厚検知装置501は、給紙部313から給紙・搬送される用紙に対して用紙厚を順次検知する。
【0036】
給紙部313は、用紙給送装置301内の給紙部311、312と同様の構成を有するので、その説明を割愛する。また、用紙厚検知装置501は、用紙給送装置301に備えられた用紙厚検知装置500と同一の構成を有する。
【0037】
フラッパ310の動作は、用紙給送装置301の用紙厚検知装置500、あるいは画像形成装置300の用紙厚検知装置501のいずれかの搬送元の用紙厚検知結果に基づき、決定される。フラッパ310は、用紙の異常を検知すると、エスケープ排紙トレイ101へ、正常時に作像部307へと搬送路を選択する。
【0038】
用紙の異常時、用紙は、エスケープ排紙トレイ101に排紙される。正常時、画像基準センサ305による用紙の検知を起点として、作像部307は、受信した画像データに基づく画像形成動作を行う。
【0039】
作像部307は、レーザスキャナユニット354、現像部352、感光体ドラム353および中間転写ベルト355から構成される。作像部307は、レーザスキャナユニット354内の半導体レーザの点灯など、光量制御を行うと共に、ポリゴンミラー(図示せず)を回転駆動するスキャナモータを制御し、画像データに基づいたレーザ光により感光体ドラム353上に潜像画像を形成する。
【0040】
作像部307は、トナーボトル351からトナーが給送される現像部352により感光体ドラム353上の潜像画像をトナーで現像し、この現像されたトナー画像を感光体ドラム353から中間転写ベルト355に1次転写する。
【0041】
中間転写ベルト355に転写されたトナー画像は、用紙に2次転写されることで、用紙にトナー画像として形成される。2次転写位置の直前には、レジストレーション制御部306が設けられている。転写位置直前の用紙に対し、用紙の持つ斜行補正や中間転写ベルト355に形成されたトナー画像と用紙先端位置を微調整して合せる用紙搬送制御が用紙を停止させることなく行われる。
【0042】
2次転写後の用紙は定着部308に搬送される。定着部308は、熱と圧力を用紙に加え、トナーを溶融し用紙に定着させる。この時、用紙厚検知装置500、501の検知結果に基づき、定着部308の温調温度が決定される。すなわち、定着部308は、用紙厚が薄い場合、温調温度を基準温度より低めに設定し、用紙厚が厚い場合、基準温度より高めに設定する。これにより、用紙の持つ熱容量によりトナーへ加える熱が奪われることによる定着不良や、トナーへ過剰に熱が加わることによる定着後画像のグロス低下等の画像不良を防止することができる。
【0043】
定着後の用紙は、裏面を継続して印字する場合、あるいは用紙の表裏反転が必要な場合、反転搬送部309に搬送される。一方、印字終了である場合、用紙は下流の排紙処理装置304に継続して搬送される。
【0044】
排紙処理装置304は、画像形成装置300の下流側に接続され、画像形成後の用紙に対し、操作部302でユーザにより設定された所望の後処理(折り、ステイプル、穴あけ)を行う。この成果物として、排紙トレイ370のいずれか一方に、画像形成済みの用紙が順次出力され、ユーザに提供される。
【0045】
図2は画像形成システムにおいて用紙搬送に関する制御部の構成を示すブロック図である。画像形成装置300に対し、操作部302、ネットワーク(図示せず)、USB等を介して、あるいはPC外部入力により、JOB要求がユーザにより行われる。
【0046】
コピー時、リーダ部303から画像形成装置300内のコントローラ404へ画像情報が送られる。また、プリント時、ネットワークから画像形成装置300内のコントローラ404へ画像情報が送られる。
【0047】
コントローラ404の内部に送られてきた画像情報に対し、ユーザ指定の画像加工や、画像形成装置300に適応した画像形態とするべく画像処理が行われる。
【0048】
また、画像処理後の画像データと共に、画像サイズ、ページ情報、使用する給紙部情報、排紙処理情報など、種々のステータス情報が、画像形成装置300内の画像形成制御部401にコントローラ404から送信される。
【0049】
ここで、給紙部情報とは、操作部302、ネットワーク、USB等を介して、ユーザによって行われる、JOBで使用するシートの指定に相当する。
【0050】
用紙指定の前処理として、JOB実行前に、予めユーザにより各給紙部に格納する用紙情報が指定される。この用紙情報は、サイズ、坪量および表面性からなり、各給紙部に対して行われ、コントローラ404を経由して、画像形成制御部401および用紙給送装置301内の給送制御部410に通知され、記憶される。
【0051】
画像形成装置300、用紙給送装置301および排紙処理装置304は、それぞれバス405で接続されている。バス405は、I2CやARCNET(登録商標)などの多重接続可能なシリアルバスによって構成される。
【0052】
また、バス405とは別に、画像形成装置300と用紙給送装置301との間には、受渡しタイミング信号440の信号線が接続されている。受渡しタイミング信号440は、用紙給送装置301で待機している用紙を画像形成装置300に対して受渡し搬送する起点となる信号である。
【0053】
次に搬送される後続の用紙は、用紙給送装置301内の給送制御部により搬送・制御される。受渡しタイミング信号440による受渡し搬送速度は、画像形成装置300内での搬送速度と同一である。この速度は、定着性、転写性などの画像形成品位を満足可能な最高速度となっている。用紙給送装置301には、このような制約が少ないので、画像形成装置300に比べ、容易に高速での搬送速度設定が可能である。
【0054】
排紙処理装置304の制御部については、本発明において、特に詳述する必要がないので、割愛する。
【0055】
画像形成制御部401には、CPU403が設けられている。CPU403は、コントローラ404と通信で接続され、ステータス情報のやり取りを行うと共に、コントローラとの画像データの授受およびタイミングを制御する。
【0056】
また、CPU403は、通信制御部406を介してバス405に接続され、各用紙給送装置のステータス情報や搬送制御を行う。そして、CPU403は、画像形成装置300内の作像部307、定着部308、反転搬送部309などの各装置内ユニットに対して制御指令を出すと共に、状態検知を行い、画像形成制御およびそれに伴うシート搬送制御を行う。
【0057】
用紙厚検知装置501は、CPU403と接続される。CPU403は、用紙厚検知装置501の出力調整を行うとともに、用紙厚に相当する出力値を入力する。
【0058】
ROM601は、CPU403と接続されている。ROM601には、CPUの制御プログラムや各制御部の初期設定値や制御値が格納されている。また、ROM601には、坪量−用紙厚変換テーブル(図6参照)や用紙厚検知装置出力−用紙厚変換テーブル(図5参照)などの特性テーブルが予め格納されている。
【0059】
RAM602もCPU403に接続され、用紙厚検知装置の調整値の格納等に使用される。RAM602は、装置の電源OFF時でも電池によりバックアップされる不揮発性のメモリとなっている。
【0060】
用紙給送装置301の内部には、給送制御部410が設けられている。給送制御部410は、用紙給送装置301の全ての負荷およびセンサ情報を基とした給送制御を行う。
【0061】
給送制御部410には、CPU411が設けられている。CPU411には、画像形成装置300からの受渡しタイミング信号440が入力される。CPU411は、この信号を起点とした画像形成装置300と用紙給送装置301間の用紙受渡し搬送を行うと共に、通信制御部413を介し、バス405に接続された周辺装置とのステータス情報や搬送制御を行う。
【0062】
また、搬送部317、318は、給紙搬送部316からの給紙制御を行う給紙部311、312、給紙後の用紙搬送を行う上部搬送部317および下部搬送部318、および合流搬送部319における用紙搬送制御を行う。
【0063】
用紙厚検知装置500は、CPU411と接続される。CPU411は、用紙厚検知装置500の出力調整を行うとともに、用紙厚に相当する出力値を入力する。
【0064】
ROM701は、CPU411と接続されている。ROM701には、CPU411の制御プログラム、給紙部311、312や搬送部317、318の初期設定値および制御値が格納されている。また、ROM701には、画像形成装置300と同様、用紙厚検知装置の特性テーブル(図5、図6参照)が予め格納されている。
【0065】
RAM702もCPU411に接続され、用紙厚検知装置500の調整値の格納等に使用される。RAM702は、装置の電源OFF時、電池によりバックアップされる不揮発性のメモリとなっている。
【0066】
図3は用紙厚検知装置500の構成を示す図である。なお、用紙厚検知装置501については、用紙厚検知装置501を制御するCPUがCPU403になるだけで、用紙厚検知装置501の構成は用紙厚検知装置500と同じである。ここでは、用紙厚検知装置500について説明し、用紙厚検知装置501の説明については省略する。
【0067】
用紙厚は、用紙給送装置301内に設けられた用紙厚検知装置500に用紙が進入し、搬送パスセンサ380で検知されてから所定時間後に検知される。用紙厚検知装置500は、マグネット363、364(磁性体)、用紙厚検知センサ基板361、362、従動部材366などから構成される。用紙厚検知センサ基板361、362には、マグネット363、364とそれぞれ対向するように、磁気センサ(図示せず)が搭載されている。また、帯域抑制フィルタ(LPF)372が設けられ、磁気センサの出力に含まれるノイズなどを除去する。このノイズが除去された信号がCPU411に入力され、CPU411が演算処理することで、用紙厚が決定される。CPU411は、磁気センサ駆動回路373を介して、用紙厚検知センサ基板361、362に取り付けられた磁気センサに流れる電流値および磁気センサにかかる電圧値を制御する。
【0068】
図4は用紙厚検知装置500の動作を示す図である。用紙の給送が開始されると、用紙368が図中矢印369に示す方向に搬送される。従動部材366の一端部である先端部(ローラ)366aに用紙368が到達すると、用紙厚に追従して用紙厚分だけ従動部材366が支点(固定された軸)367を中心に変位する。変位後、従動部材366は図4の破線に示すような姿勢になる。このように、従動部材366は支点(軸)367を中心に回動自在な揺動部材である。
【0069】
また、従動部材366の後端部(他端部)366bには、マグネット363、364が取り付けられている。従動部材366が変位すると、マグネット363、364も支点367を中心に変位する。マグネットが変位することで、用紙厚検知センサ基板361、362に取り付けられた磁気センサが検出可能な磁束密度も変化する。このため、磁気センサは、変化する磁束密度を電圧信号として検出し、この電圧信号はCPU411に送信される。CPU411が入力した電圧信号に所定の処理を行うことで、用紙厚が計測される。
【0070】
つぎに、用紙厚検知装置500の機械的構造および増幅度について説明する。用紙厚検知装置500は、前述したように、従動部材366の後端部366bにマグネット363、364が取り付けられている。このとき、マグネット363、364は、数式(1)を満たす位置に設けられている。
【0071】
L2/L > L1/L > 1 …… (1)
ここで、L2は従動部材366の支点367とマグネット363の中心までの距離である。L1は従動部材366の支点367とマグネット364の中心までの距離である。Lは用紙に接触する部分から従動部材366の支点367までの距離である。
【0072】
つづいて、数式(1)に示すように、マグネットの取り付け位置を設定することについて説明する。図4に示すように、用紙368が図中右側から搬送され、従動部材366の先端部366aに差し掛かると、従動部材366は支点367を中心として回動し、先端部366aが変位する。このとき、従動部材366の先端部366aの変位量をxとすると、マグネット363、364の変位量はそれぞれx・L2/L、x・L1/Lとなる。このように、用紙厚分の変位量が従動部材366を介して増幅される。
【0073】
例えば、L2/L=3、L1/L=2をそれぞれ満足するように、マグネット363、364を設けた場合を考える。この場合、厚さ100[μm]の用紙が検知部を通過すると、マグネット363が支点367を中心に変位する変位量は300[μm]となる。同様に、マグネット364が支点367を中心に変位する変位量は200[μm]となる。このように、用紙厚の変位量はそれぞれ3倍、2倍に増幅される。
【0074】
図5は用紙厚に応じたセンサ出力特性を示すグラフである。ここで、図5におけるセンサ出力とは、非通紙時の出力電圧レベルと通紙時の出力電圧レベルとの差分値である。図5の符号A、B、Cに示す各センサ出力特性のうち、符号Aは最も増幅度の小さいセンサ出力特性を示し、符号Cは最も増幅度の大きいセンサ出力特性を示す。なお、図5のセンサ出力特性は、非通紙の電圧レベルと通紙によって変化した電圧レベルの差分値を用紙厚ごとに測定することで得られた。
【0075】
つづいて、図5を用いて、用紙厚検知装置500の出力特性にみられる飽和領域について説明する。符号Cに示すセンサ出力特性に着目すると、用紙厚が比較的薄い場合、用紙厚に比例したセンサ出力が得られる。しかし、用紙厚が厚くなるにつれて用紙厚とセンサ出力の比例関係が崩れ、センサ出力が飽和する。
【0076】
磁気センサとマグネットとの距離は用紙厚に応じて変化する。このため、用紙厚が厚くなると、磁気センサとマグネットのギャップ間隔が大きくなり、マグネットの磁束は周囲に広がっていく。この結果、磁気センサが検知することができる磁束密度は、ギャップ間隔が拡がるにつれて減少する。つまり、センサ出力は、厚い用紙になるほど用紙厚に相当するセンサ出力が得られなくなり、飽和する。
【0077】
そこで、本実施形態の用紙厚検知装置は、用紙厚に応じて出力特性が最適になるように、複数の磁気センサの中から、特定の磁気センサを選択し、用紙厚の変位量を検出する際の増幅度を切り換える。この増幅度を切り換える方法については後述する。
【0078】
図6は用紙の坪量と用紙厚の関係を表すグラフである。このグラフでは、増幅度n1、n2のいずれかが選択される。ここで、増幅度(値)n1、n2は、それぞれ図4のL1/L、L2/Lに相当する。前述したように、増幅度を大きくすると、センサ出力特性の飽和領域が広くなる(図5の符号C参照)。
【0079】
そこで、本実施形態では、用紙厚の範囲ごとに増幅度を切り換え、飽和領域で用紙厚を検出ことを避けるように制御を行う。すなわち、比較的薄い用紙の場合、増幅度を大きくし、比較的厚い用紙の場合、増幅度を小さくすることで、増幅度によって異なるセンサ出力特性の線形性の良い部分だけを利用する。
【0080】
図6に示すように、坪量と用紙厚はほぼ比例する。このため、ある坪量DMを閾値とし、この坪量DMより小さい用紙が設定された場合、増幅度を値n2に設定する。一方、坪量DMより大きい用紙が設定された場合、増幅度を値n1に設定する(n2<n1)。このような処理を行うことで、増幅度を切り換えることができる。ここで、ROM701には、この坪量と用紙厚の関係が予め記憶されている。ユーザが用紙情報を設定すると、CPU411は、ROM701に格納されている坪量と用紙厚の関係から、使用する用紙厚範囲を認識し、増幅度を切り換える処理を行う。
【0081】
上記構成を有する用紙厚検知装置の動作を示す。ここでは、画像形成装置300に搭載された用紙厚検知装置501について説明する。図7は画像形成システムにおける給紙部313に対する用紙給送動作手順を示すフローチャートである。この処理は、電源ONによる初期化処理後、CPU403によって行われる。なお、用紙給送装置301における用紙厚検知も同様の手順で行われる。
【0082】
まず、CPU403は、操作部302からの用紙情報(シート情報)をもとに、ユーザによって使用される用紙を設定する(ステップS1)。このとき、操作部302から入力された用紙情報のデータがバス405を介してCPU403に通知される。CPU403は、この通知された用紙情報を認識する。
【0083】
CPU403は、給紙部313(給紙装置)内に用紙が存在しているか否かを判別する(ステップS2)。用紙が存在していない場合、CPU403は、ユーザにその旨を通知する(ステップS12)。そして、CPU403は、ユーザによって用紙が補給されるのを待つ(ステップS13)。用紙の補給が完了すると、CPU403は、給紙装置内に存在する用紙残量を確認する(ステップS14)。この後、CPU403は、ステップS3の処理に進む。
【0084】
一方、ステップS2で給紙装置内に用紙が存在する場合、あるいはステップS14の処理後、CPU403は、スタンバイ状態になる(ステップS3)。そして、CPU403は、増幅度切換およびセンサ調整動作を行う(ステップS4)。この増幅度切換およびセンサ調整動作では、ステップS1で設定された用紙情報に基づき、用紙厚検知センサ基板361、362のうち、いずれかの磁気センサによって検知されたセンサ出力を、CPU403に取り込むかが決定される。この増幅度切換およびセンサ調整動作については後述する。
【0085】
CPU403は、JOBが開始された否かを判別する(ステップS5)。JOBが開始されないとき、CPU403は、ステップS3の処理に戻る。一方、JOBが開始されるとき、操作部302から入力されたJOB情報のデータは、バス405を介してCPU403に通知される。CPU403は、JOB情報を認識し、給紙部313あるいは用紙給送装置301からの給紙を開始する(ステップS6)。
【0086】
給紙が開始されると、CPU403は、用紙厚検知処理を開始する(ステップS7)。CPU403は、JOBがユーザ所望の出力枚数(規定JOB枚数)に到達しているか否かを判断する(ステップS8)。なお、用紙給送装置301から給紙する場合、CPU411が出力枚数に到達しているか判断し、CPU403に通知するようにしてもよい。
【0087】
出力枚数に到達している場合、CPU403は、JOBを完了する(ステップS9)。この後、CPU403は、JOB信号をバス405を介してCPU411に通知するまで、スタンバイ状態となる。
【0088】
一方、ステップS8で規定JOB枚数に到達していない場合、CPU403は、用紙残数が値0であるか否かを判断する(ステップS10)。用紙残数が値0でない場合、CPU403は、ステップS6の処理に戻る。一方、用紙残数が値0である場合、CPU403は、ユーザに用紙の補給を通知する(ステップS11)。この後、CPU403は、ステップS13の処理に進む。
【0089】
図8はステップS4における増幅度切換およびセンサ調整動作手順を示すフローチャートである。用紙厚検知装置501は、ユーザが電源を投入した際、画像形成システム全体の初期化動作中、通紙しない状態(紙なし時)のセンサ出力を検知してキャリブレーションを行い、スタンバイ状態となっている。なお、スタンバイ状態とは画像形成の開始の指示を待機している状態である。
【0090】
スタンバイ状態にある画像形成システムにおいて、CPU403は、ユーザが使用する用紙(用紙の種類など)の設定を行ったか否かを判別する(ステップS21)。ユーザが用紙の設定を行わなかった場合、CPU403は、用紙厚検知装置501の増幅度を、デフォルト値である値n1に設定し、JOBの開始に備える(ステップS22)。
【0091】
一方、ステップS21でユーザが使用する用紙の設定を行った場合、CPU403は、設定された用紙情報を取得し、設定された用紙の坪量が閾値である坪量DM以下であるか否かを判定する(ステップS4)。この判定結果、設定された用紙の坪量が坪量DM以下である場合、CPU403は、増幅度を値n2に選択する(ステップS25)。一方、ステップS24で、設定された用紙の坪量が閾値である坪量DMより大きい場合、CPU403は、増幅度を値n1に選択する(ステップS26)。
【0092】
ステップS25あるいはS26の処理後、CPU403は、センサ出力レベルのキャリブレーションを行い、JOBの開始に備える(ステップS23)。なお、ステップS22の処理後においては、CPU403は、センサ出力レベルのキャリブレーションを行うことなく、JOBの開始に備える。この後、CPU403は元の処理に復帰する。
【0093】
図9はステップS7における用紙厚検知処理手順を示すフローチャートである。前述したように、ステップS5でJOBが開始されると、ステップS6で用紙の給紙が開始する。CPU403は、搬送される用紙が搬送パスセンサ380を通過したか否かを判断する(ステップS31)。用紙の通過が検知されていない場合、CPU403は、ステップS31の処理を繰り返す。
【0094】
一方、ステップS31で用紙の通過を検知した場合、CPU403は、この検知信号をトリガとして、所定時間後に用紙厚の検知を開始する(ステップS32)。CPU403は、所定の期間中、用紙厚のデータを複数回サンプリングしてRAM602に格納する(ステップS33)。
【0095】
CPU403は、RAM602に格納された用紙厚のデータを平均化処理して用紙厚を算出し、決定する(ステップS34)。この後、CPU403は元の処理に復帰する。
【0096】
つぎに、磁気センサのキャリブレーションについて説明する。図10はキャリブレーションを行う際、磁気センサのセンサ出力レベルの時間変化を示すグラフである。磁気センサからのセンサ出力信号は常時出力されている。
【0097】
予めROM601(用紙給送装置からの給紙の場合、ROM701)には、磁気センサの非通紙状態におけるセンサ出力電圧レベルVref、および出力電圧レベルのばらつき許容レベル範囲αが記憶されている。ばらつき許容レベル範囲αは、予めROM601に格納された出力変動の許容最高値αHおよび許容最低値αLにより決定される。
【0098】
CPU403は、ユーザによって設定された用紙情報ごとに、センサ出力レベルVrefがαL<Vref<αHを満たしているか否かを、用紙厚検知センサ基板361および362から得られる出力レベルをもとに判別する。
【0099】
CPU403は、ばらつき許容レベル範囲α以内にセンサ出力レベルが収束していないと判断した場合、センサ出力値に対してオフセット補正を行い、センサ出力レベルを許容レベル範囲α以内になるように調整する。本実施形態では、この調整を磁気センサのキャリブレーションと呼ぶ。
【0100】
つぎに、検知したセンサ出力をデータ化する手法について説明する。図11はセンサ出力をデータ化する際、磁気センサのセンサ出力レベルの時間変化を示すグラフである。用紙厚検知センサ基板361、362から得られる信号はアナログ信号である。
【0101】
用紙368が従動部材366の検知部に突入すると、図11に示すように、センサ出力には、その衝撃でアンダーシュートが発生する。用紙368の先端がローラ366aに突入した時刻をtinに、用紙368の後端がローラ366aを抜けた瞬間の時刻をtoutとすると、本実施形態では、用紙の突入によるアンダーシュートが発生する時間を予めマスクする。
【0102】
そして、センサ出力信号レベルが安定した状態で、CPU403は、データの取得を開始する。測定データは、デジタルデータとして量子化され、RAM602に格納される(図9のS33参照)。このとき、データ化するポイントは複数回測定される。これらのデータうち、最大値と最小値を取り除いたデータをさらに平均化することで、用紙厚が決定される。
【0103】
このように、第1の実施形態の用紙厚検知装置によれば、従動部材によって用紙厚による変位量を増幅させることで、用紙の厚さに拘わらず、用紙厚を正確に検出することができる。例えば、38g紙のような超薄紙の用紙厚も検出できるようになる。また、厚い用紙の場合、増幅度を低くし、薄い用紙の場合、増幅度を高くするというように、増幅度を用紙厚ごとに適宜に切り換える。また、増幅度の異なる複数の用紙厚検知センサ基板の出力特性における局所的な線形性を選択的に利用することができ、超薄紙から厚紙まで精度よく検出することができる。また、搬送される用紙は、ユーザが設定した用紙に間違いがないか否かを確認することができる。また、マグネットの磁束密度を磁気センサで検知するので、マグネットの取り付け位置によって増幅度を容易に可変することができる。
【0104】
また、搬送される用紙の用紙厚を判別することで、つぎのような有益性がある。一例として、ユーザの設定した用紙の厚さに間違いがないか否かを確認するという装置として利用できる。ユーザが設定した用紙厚と検知した用紙厚とが大きく異なる場合、用紙厚に応じた定着器の温度制御が不適切になる惧れがあるため、その用紙はエスケープトレイ101に排紙される。
【0105】
また、前述したように、ユーザは、予めJOBの開始前に使用する用紙の用紙情報を指定する。仮に、ユーザが給紙装置に補給した用紙情報と、操作部から入力した用紙情報とが違う場合、予定していた用紙とは異なる用紙が搬送されてしまう。このため、本実施形態の用紙厚検知装置を用いることで、ユーザの設定した用紙と搬送される用紙が違っていないかを判別することができる。
【0106】
[第2の実施形態]
第2の実施形態の用紙厚検知装置について説明する。第2の実施形態の画像形成システムの構成は、前記第1の実施形態と同じであるので、同一の部分については、同一の符号を付してその部分の説明を省略する。
【0107】
用紙厚検知センサ基板361、362に搭載された磁気センサは、定電流回路によって駆動される。磁気センサの感度は、この磁気センサを流れる電流値で制御される。磁気センサの感度とは、単位磁束密度当たりに出力される電圧レベルを表す。
【0108】
例えば、100[mT]の磁気空間を検知したことを示す電気信号として、1[V]の出力を出した場合と10[V]の出力を出した場合とを考えると、後者の方が感度は高いことになる。したがって、磁気センサの感度を高めることで、磁気センサとマグネットのギャップ間隔における、微小な変位量も検出することができる。
【0109】
つぎに、用紙厚検知装置の感度について説明する。図12は用紙厚に対する磁気センサの出力レベルを示すグラフである。横軸は用紙厚を表し、縦軸はセンサ出力電圧レベルを表す。ここで、センサ出力レベルは磁気センサが常時出力している電圧レベルを表す。
【0110】
前述したうように、用紙が従動部材のローラ(検知部)に掛かると、磁気センサとマグネットのギャップ間隔は、非通紙状態の時より大きくなる。このため、厚い用紙ほど、センサ出力電圧レベルは低くなる。図12において、符号e、fに示す特性のうち、感度が大きい(磁気センサに流れる電流値が最も大きい)特性は、符号eに示すようになる。また、感度が小さい(磁気センサに流れる電流値が最も小さい)特性は、符号fに示すようになる。
【0111】
ここで、符号eに示す特性の出力電圧をve、符号fに示す特性の出力電圧をvf、用紙厚をtとする。そして、磁気センサの出力変動分をdve、dvfとし、用紙厚変動分をdtとすると、用紙厚が薄い場合の用紙厚に対するセンサ出力の変動率は、数式(2)に示すようになる。
【0112】
【数1】
【0113】
つまり、用紙厚の変動に対し、符号eにおける感度設定の場合、符号fにおける感度設定に比べ、大きなセンサ出力変化が得られる。用紙厚という微小な変位量を検出する場合、厚みに相当するセンサ出力をなるべく大きくしたい。例えば、40[μm]の厚み変化をセンサ出力に換算し、100[mV]の出力の変化を得る場合と200[mV]の出力変化を得る場合とでは、感度設定において、後者の方が望ましい。
【0114】
しかし、用紙厚tが大きくなるにつれ、感度の高い符号eに示す特性の線形性は、劣化する。このため、用紙厚tが大きい領域では、用紙厚に相当するだけ出力変動は、符号fに示す特性よりも得られなくなる。従って、厚い用紙の場合、符号fに示す特性のように、小さい感度で検知した場合、符号eに示す特性の感度で用紙厚を測定する場合に比べ、正確に検知することができる。
【0115】
図13は用紙の坪量と用紙厚の関係を表すグラフである。センサの感度として、感度X、Yのどちらかを選択する。前述したように、薄い用紙を検知する場合、センサの感度を高め、厚い用紙を検知する場合、センサの感度を低く設定する。
【0116】
図13に示すように、坪量と用紙厚はほぼ比例する。このため、ある坪量DMを閾値として、この坪量DMより小さい用紙が設定された場合、感度Xにし、坪量DMより大きい用紙が設定された場合、感度Y(X>Y)にする処理を行うことで、感度を切り換えることができる。この場合、ROM601には、この坪量と用紙厚の関係が予め記憶されている。ユーザが用紙情報を設定すると、CPU403はROM601に格納されている坪量と用紙の関係から使用する用紙厚の範囲を認識し、感度を切り換える処理を行う。
【0117】
つぎに、センサの感度調整について説明する。図14はセンサの感度調整手順を示すフローチャートである。この感度調整処理は、前記第1の実施形態のステップS4において、前述した図8の増幅度切換・センサ調整処理の代わりに実行される。
【0118】
用紙厚検知装置501は、ユーザが電源を投入した際に画像形成システム全体の初期化動作の中で、通紙しない状態のセンサ出力を検知してキャリブレーションを行い、スタンバイ状態になる。
【0119】
この状態で、CPU403は、ユーザが用紙設定を行ったか否かを判別する(ステップS41)。ユーザが用紙設定を行わなかった場合、CPU403は、感度をデフォルトの感度Yに設定し、センサ出力のキャリブレーションを行う(ステップS42)。
【0120】
一方、ユーザが用紙設定を行った場合、CPU403は、設定された用紙情報を取得し、設定された用紙の坪量が閾値である坪量DM以下であるか否かを判別する(ステップS43)。閾値である坪量DM以下である場合、CPU403は、感度を感度Xに設定し、キャリブレーションを行う(ステップS44)。一方、用紙の坪量が閾値DMより大きい場合、感度を感度Yに設定し(X>Y)、キャリブレーションを行う(ステップS45)。そして、ステップS42、S44、S45の処理後、CPU403は、元の処理に復帰する。
【0121】
つぎに、センサのキャリブレーションについて説明する。図15はキャリブレーションを行う際、磁気センサのセンサ出力レベルの時間変化を示すグラフである。磁気センサからのセンサ出力信号は常時出力されている。
【0122】
センサの非通紙状態において、感度Xおよび感度Yにおけるセンサ出力レベルはそれぞれセンサ出力電圧レベルVref1およびVref2である。また、ROM601には、予めそれぞれの出力電圧レベルのばらつき許容レベルα、βが記憶されている。
【0123】
そして、CPU403は、ユーザによって設定された用紙情報ごとに、センサ出力レベルが規定の状態を満たしているか否かを、用紙厚検知センサ基板361、362から得られる出力レベルをもとに判別する。
【0124】
感度Xの場合、センサ出力レベルは、Vref1に示すようになる。また、ばらつき許容レベルαは、予めROM601に格納された出力変動の許容最高値αHおよび許容最低値αLにより決定される。
【0125】
そして、CPU403は、ユーザの用紙情報設定ごとに、センサ出力レベルVref1が数式(3)を満たしているか否かを、用紙厚検知センサ基板361および362から得られる出力レベルをもとに判別する。
【0126】
αL < Vref1 < αH …… (3)
同様に、ばらつき許容レベルβは、予めROM601に格納された出力変動の許容最高値βHおよび許容最低値βLにより決定される。そして、ユーザによって設定された用紙情報ごとに、センサ出力レベルVref1が数式(4)を満たしているかを用紙厚検知センサ基板361および362から得られる出力レベルをもとに判別する。
【0127】
βL<Vref2<βH …… (4)
CPU403は、感度Xの場合、許容レベルαの範囲内にセンサ出力レベルが収束していないと判断した場合、センサ出力値に対してオフセット補正を行い、センサ出力レベルを許容レベルαの範囲内になるように調整する。同様に、CPU403は、感度Yの場合、許容レベルβの範囲内になるように調整する。
【0128】
このように、第2の実施形態の用紙厚検知装置は、比較的薄い用紙の場合、磁気センサの感度を大きく(磁気センサに流れる電流値を大きく)設定し、比較的厚い用紙の場合、磁気センサの感度を小さく(磁気センサに流れる電流値を小さく)設定する。なお、増幅度は一定のままとする。これにより、用紙厚を精度良く測定することができる。
【0129】
すなわち、増幅度を一定にしたまま、薄い用紙の場合、厚みによる変位が少ない分、感度を高くする。それ以外では、変位量検知手段の感度を下げる。これにより、極めて薄い用紙から厚い用紙まで、精度良く用紙厚を検出することができる。また、磁気センサに供給される電流値を切り換えることにより、磁気センサの感度を容易に切り換えることができる。
【0130】
[第3の実施形態]
第3の実施形態における画像形成システムの構成は、前記第1、第2の実施形態と同じであるので、同一の部分については、同一の符号を付してその部分の説明を省略する。
【0131】
第3の実施形態では、増幅度および感度を制御する場合を示す。図16は第3の実施形態における用紙の坪量と用紙厚の関係を表すグラフである。用紙の坪量と用紙厚はほぼ比例する。
【0132】
ある坪量DM、DE1およびDE2を閾値とし、坪量DMより小さい用紙が設定された場合、増幅度を値n2にし、坪量DMより大きい用紙が設定された場合、増幅度を値n1にする処理を行うことで、増幅度を切り換えることができる(n2>n1)。
【0133】
ROM601には、この坪量と用紙厚の関係が予め記憶されている。ユーザが用紙情報を設定すると、CPU403は、ROM601に格納されている坪量と用紙の関係から、使用する用紙厚範囲を認識し、増幅度を切り換える処理を行う。
【0134】
CPU403は、閾値である坪量DMより小さい坪量の用紙のうち、閾値である坪量DE1より小さい坪量の用紙が設定された場合、センサの感度を感度Xに設定し、一方、坪量DE1より大きい坪量の用紙が設定された場合、感度を感度Yに設定する(X>Y)。
【0135】
同様に、CPU403は、閾値である坪量DMより大きい坪量の用紙のうち、閾値である坪量DE2より小さい坪量の用紙が設定された場合、センサの感度を感度Xに設定し、閾値である坪量DE2より大きい坪量の用紙が設定された場合、感度を感度Yに設定する。
【0136】
つぎに、ユーザが用紙情報を設定した場合の増幅度およびセンサの感度の調整について説明する。図17は増幅度およびセンサの感度調整手順を示すフローチャートである。この増幅度および感度調整処理は、ステップS4において、前述した図8の増幅度切換・センサ調整処理の代わりに実行される。
【0137】
用紙厚検知装置は、ユーザが電源を投入した際に画像形成システム全体の初期化動作の中で、通紙しない状態のセンサ出力を検知してキャリブレーションを行い、スタンバイ状態になる。
【0138】
CPU403は、ユーザが用紙情報の設定を行ったか否かを判別する(ステップS51)。図16に示すように、用紙の坪量と紙厚は比例する。ユーザが用紙情報の設定を行った場合、CPU403は、設定された用紙情報を取得し、設定された用紙の坪量が坪量DM以下であるか否かを判別する(ステップS53)。坪量DMより大きい場合、CPU403は、増幅度を値n1に設定する(ステップS58)。一方、坪量DM以下である場合、CPU403は、増幅度n2を選択する(ステップS54)。
【0139】
増幅度を値n2に設定した状態で、CPU403は、ユーザが設定した坪量が閾値DE1以下であるか否かを判別する(ステップS55)。閾値である坪量DE1以下である場合、CPU403は、感度を感度Xに設定し、キャリブレーションを行う(ステップS56)。一方、ユーザが設定した坪量が閾値である坪量DE1より大きい場合、CPU403は、感度を感度Yに設定し、キャリブレーションを行う(ステップS57)。
【0140】
同様に、増幅度を値n1に設定した状態で、CPU403は、ユーザが設定した坪量が閾値である坪量DE2以下であるか否かを判別する(ステップS59)。閾値である坪量DE2以下である場合、CPU403は、感度を感度Xに設定し、キャリブレーションを行う(ステップS60)。一方、閾値である坪量DE2より大きい場合、CPU403は、感度を感度Yに設定し、キャリブレーションを行う(ステップS61)。
【0141】
一方、ユーザが用紙情報を設定しない場合、CPU403は、増幅度はデフォルトである値n2に、感度をデフォルトである値Yに設定し、キャリブレーションを行う(ステップS52)。ステップS52、S56、S57、S60、S61の処理後、CPU403は元の処理に復帰する。なお、ステップS56、S60における感度Xはそれぞれ異なる値でもよい。同様に、ステップS57、S61における感度Yはそれぞれ異なる値でもよい。
【0142】
このように、第3の実施形態の用紙厚検知装置は、増幅度の切換のみでは用紙厚の検知が困難である場合、または、磁気センサの感度切換のみでは用紙厚の検知が困難である場合、両者を最適に組み合わせることで、用紙厚を正確に検出することができる。つまり、極めて薄い用紙の場合、増幅度と磁気センサの感度を大きくし、非常に厚い用紙の場合、増幅度と磁気センサの感度を小さくすることで、用紙厚を正確に検知することができる。
【0143】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、特許請求の範囲で示した機能、または本実施形態の構成が持つ機能が達成できる構成であればどのようなものであっても適用可能である。
【0144】
例えば、上記実施形態では、用紙厚検知センサとして、マグネットおよび磁気センサが用いられていたが、この代わりに、揺動部材の変位量を角度として検知する角度センサを用いてもよい。すなわち、揺動部材の変位した角度を、2倍、3倍、…の角度に増幅して検知可能な角度センサを複数設けてもよい。
【0145】
また、上記実施形態では、従動部材として、シート厚の変位量を回動量(揺動量)として検知可能な揺動部材を用いた場合を示したが、シートの厚み方向に移動して変位量を検知可能な移動部材を用いてもよい。
【0146】
また、上記実施形態に記載されている構成部品の形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明の範囲は上記例示するもののみに限定されものではない。
【0147】
また、上記実施形態では、電子写真方式とした場合を例に挙げたが、本発明は、電子写真方式に限定されるものではなく、インクジェット方式、熱転写方式、感熱方式、静電方式、放電破壊方式など各種印刷方式に適用することができる。
【0148】
また、シートの形状としては、定形紙、タブ紙など、特に限定されない。また、シートのマテリアル(材質)としては、特に限定されない。
【符号の説明】
【0149】
361、362 用紙厚検知センサ基板
363、364 マグネット
366 従動部材
368 用紙
373 磁気センサ駆動回路
403、411 CPU
500、501 用紙厚検知装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるシートのシート厚を検出するシート厚検出装置において、
シートの種類に関して設定されたシート情報を取得する取得手段と、シートを搬送路に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送路に設けられ、前記搬送されるシートのシート厚に追従して変位する従動部材と、
前記従動部材の変位量を、当該変位量の増幅度が異なるようにそれぞれ増幅して検知する複数の変位量検知手段と、
前記取得手段によって取得されたシート情報に基づき、前記複数の変位量検知手段の中から、特定の前記変位量検知手段を選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された前記特定の変位量検知手段の検知結果に基づき、前記シート厚を算出する算出手段とを備えたことを特徴とするシート厚検出装置。
【請求項2】
搬送されるシートのシート厚を検出するシート厚検出装置において、
シートの種類に関して設定されたシート情報を取得する取得手段と、
シートを搬送路に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送路に設けられ、前記搬送されるシートのシート厚に追従して変位する従動部材と、
前記従動部材の変位量を検知する変位量検知手段と、
前記取得手段によって取得されたシート情報に基づき、前記変位量検知手段の感度を切り換える切換手段と、
前記切換手段によって前記感度が切り換えられた前記変位量検知手段の検知結果に基づき、前記シート厚を算出する算出手段とを備えたことを特徴とするシート厚検出装置。
【請求項3】
搬送されるシートのシート厚を検出するシート厚検出装置において、
シートの種類に関して設定されたシート情報を取得する取得手段と、
シートを搬送路に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送路に設けられ、前記搬送されるシートのシート厚に追従して変位する従動部材と、
前記従動部材の変位量を、当該変位量の増幅度が異なるようにそれぞれ増幅して検知する複数の変位量検知手段と、
前記取得手段によって取得されたシート情報に基づき、前記複数の変位量検知手段の中から前記変位量検知手段を選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された変位量検知手段の感度を切り換える切換手段と、
前記切換手段によって前記感度が切り換えられた変位量検知手段の検知結果に基づき、前記シート厚を算出する算出手段とを備えたことを特徴とするシート厚検出装置。
【請求項4】
前記従動部材は、固定された軸を中心に回動自在な揺動部材から構成され、前記揺動部材の一端部が前記シート厚に追従して揺動し、前記揺動部材の他端部の揺動量が前記増幅された変位量として前記変位量検知手段によって検知されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート厚検出装置。
【請求項5】
前記変位量検知手段は、前記揺動部材に取り付けられた磁性体、および前記磁性体に対向する位置に設けられた磁気センサを有し、前記磁性体で発生する磁束密度を前記磁気センサで検知することにより前記揺動部材の変位量を検知することを特徴とする請求項4項記載のシート厚検出装置。
【請求項6】
前記変位量検知手段は、前記軸を中心に回動自在な前記揺動部材の変位量を角度として検知する角度センサを有することを特徴とする請求項4項記載のシート厚検出装置。
【請求項7】
前記変位量検知手段に電流を供給する供給手段を備え、
前記切換手段は、前記供給手段によって前記変位量検知手段に供給される電流値を切り換えることにより前記変位量検知手段の感度を切り換えることを特徴とする請求項2または請求項3記載のシート厚検出装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシート厚検出装置が搭載され、前記シートに画像を形成する画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシート厚検出装置が搭載され、前記シートを給送するシート給送装置。
【請求項1】
搬送されるシートのシート厚を検出するシート厚検出装置において、
シートの種類に関して設定されたシート情報を取得する取得手段と、シートを搬送路に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送路に設けられ、前記搬送されるシートのシート厚に追従して変位する従動部材と、
前記従動部材の変位量を、当該変位量の増幅度が異なるようにそれぞれ増幅して検知する複数の変位量検知手段と、
前記取得手段によって取得されたシート情報に基づき、前記複数の変位量検知手段の中から、特定の前記変位量検知手段を選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された前記特定の変位量検知手段の検知結果に基づき、前記シート厚を算出する算出手段とを備えたことを特徴とするシート厚検出装置。
【請求項2】
搬送されるシートのシート厚を検出するシート厚検出装置において、
シートの種類に関して設定されたシート情報を取得する取得手段と、
シートを搬送路に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送路に設けられ、前記搬送されるシートのシート厚に追従して変位する従動部材と、
前記従動部材の変位量を検知する変位量検知手段と、
前記取得手段によって取得されたシート情報に基づき、前記変位量検知手段の感度を切り換える切換手段と、
前記切換手段によって前記感度が切り換えられた前記変位量検知手段の検知結果に基づき、前記シート厚を算出する算出手段とを備えたことを特徴とするシート厚検出装置。
【請求項3】
搬送されるシートのシート厚を検出するシート厚検出装置において、
シートの種類に関して設定されたシート情報を取得する取得手段と、
シートを搬送路に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送路に設けられ、前記搬送されるシートのシート厚に追従して変位する従動部材と、
前記従動部材の変位量を、当該変位量の増幅度が異なるようにそれぞれ増幅して検知する複数の変位量検知手段と、
前記取得手段によって取得されたシート情報に基づき、前記複数の変位量検知手段の中から前記変位量検知手段を選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された変位量検知手段の感度を切り換える切換手段と、
前記切換手段によって前記感度が切り換えられた変位量検知手段の検知結果に基づき、前記シート厚を算出する算出手段とを備えたことを特徴とするシート厚検出装置。
【請求項4】
前記従動部材は、固定された軸を中心に回動自在な揺動部材から構成され、前記揺動部材の一端部が前記シート厚に追従して揺動し、前記揺動部材の他端部の揺動量が前記増幅された変位量として前記変位量検知手段によって検知されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート厚検出装置。
【請求項5】
前記変位量検知手段は、前記揺動部材に取り付けられた磁性体、および前記磁性体に対向する位置に設けられた磁気センサを有し、前記磁性体で発生する磁束密度を前記磁気センサで検知することにより前記揺動部材の変位量を検知することを特徴とする請求項4項記載のシート厚検出装置。
【請求項6】
前記変位量検知手段は、前記軸を中心に回動自在な前記揺動部材の変位量を角度として検知する角度センサを有することを特徴とする請求項4項記載のシート厚検出装置。
【請求項7】
前記変位量検知手段に電流を供給する供給手段を備え、
前記切換手段は、前記供給手段によって前記変位量検知手段に供給される電流値を切り換えることにより前記変位量検知手段の感度を切り換えることを特徴とする請求項2または請求項3記載のシート厚検出装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシート厚検出装置が搭載され、前記シートに画像を形成する画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシート厚検出装置が搭載され、前記シートを給送するシート給送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−178487(P2011−178487A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42449(P2010−42449)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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