説明

シート原料の切幅表示装置

【課題】簡単な装置でしかも故障の問題を生じることがなくシート原料の切幅を適正な精度で表示する。
【解決手段】可動側カッタブレード10の移動方向と移動速度の信号37aが入力される演算装置17と、演算装置17に接続されてクロックパルスを発生するクロックパルス発生部18と、演算装置17に接続された表示器19とを有し、演算装置17は、クロックパルスのカウント毎に可動側カッタブレード10の移動方向と移動速度に応じて規定値に基づいた切幅認識値の直前値を加減することで求めた新たな切幅認識値を表示器19に表示するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単な装置でしかも電磁ノイズによる誤差等の問題を生じることがなくシート原料の切幅を適正な精度で認識して表示できるようにしたシート原料の切幅表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、2本の混練ロール上にゴム、プラスチック等の可塑材を供給することにより板状のシート原料を形成し、このシート原料を固定ナイフと移動ナイフにより所定の切幅に切断するようにした切断装置を備え、該切断装置で切断したシート原料をカレンダ装置に供給するようにしたものがあり、前記カレンダ装置の2本のカレンダロール上に前記シート原料を供給することで再びシートを形成する際におけるバンクの大きさに応じて、前記移動ナイフの位置を移動することにより前記シート原料の切幅を調整するようにしたカレンダの材料供給量制御装置がある。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
尚、前記カレンダ装置としては、前記カレンダロールによって形成したシートを基材に圧着するようにしたもの、或いは、前記シート自体を製品として取り出すようにしたものがある。
【0004】
特許文献1のような材料供給量制御装置においては、前記バンクに供給するシート原料の供給量を調整するために、一般に、移動ナイフの移動を行うモータに、インクリメンタルエンコーダによる位置検出器を設置しており、該インクリメンタルエンコーダからのパルス列をカウントし、そのカウントをソフトウェアによって距離に換算することにより移動ナイフの位置を求めて表示器で表示していた。又、前記切幅の初期の位置校正は、位置の手計測を行ってその計測値をタッチパネルへ手入力していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−029813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記従来の材料供給量制御装置におけるシート原料の切幅の管理は、移動ナイフを移動させるモータに備えたインクリメンタルエンコーダにより行っているために、インクリメンタルエンコーダのパルスカウンタが電磁ノイズで誤カウントするトラブルが屡々発生しており、このような誤カウントが発生した場合には切断装置によるシート原料の切幅が初期の目標値と違ったものになってしまう問題がある。
【0007】
又、インクリメンタルエンコーダはその配線を含めた検出装置が比較的損傷し易く、そのために保守点検や予備品の準備が必要であり、更に、インクリメンタルエンコーダにはパルスカウンタが必要であってこのパルスカウンタが高価であり、又、検出装置が損傷した場合には交換或いは復旧のための工事が必要となって操業に支障を来す問題がある。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなしたもので、簡単な装置でしかも電磁ノイズによる誤差等の問題を生じることがなくシート原料の切幅を適正な精度で認識して表示できるようにしたシート原料の切幅表示装置に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、可塑材を引き伸ばしてシート原料を形成する混練ロールと、
混練ロールの周面に押付けてシート原料を切断する固定側カッタブレードを有する固定側ブラケットと、前記混練ロール周面に押付けてシート原料を切断する可動側カッタブレードを有し且つ前記固定側ブラケットとの間隔が変化するよう移動して切幅を調節可能にした可動側ブラケットと、該可動側ブラケットを移動させるカッタ移動モータを備えた切断装置と
を有するシート原料の切幅表示装置であって、
可動側カッタブレードの移動方向と移動速度の情報が入力される演算装置と、該演算装置に接続されてクロックパルスを発生するクロックパルス発生部と、前記演算装置に接続された表示器とを有し、
前記演算装置は、クロックパルスのカウント毎に可動側カッタブレードの移動方向と移動速度から計算した移動量を、直前まで認識していた切幅に加減して求めた新たな切幅認識値を前記表示器に表示するようにしたことを特徴とするシート原料の切幅表示装置、に係るものである。
【0010】
上記シート原料の切幅表示装置において、前記可動側ブラケットの移動範囲に、該可動側ブラケットが横切ったことを検出する近接スイッチが備えてあり、前記演算装置が、前記近接スイッチによる検知信号が入力されると、直ちに前記切幅認識値に規定値を上書きするようにしたことは好ましい。
【0011】
又、上記シート原料の切幅表示装置において、前記演算装置には設定時間が入力してあり、設定時間が経過しても前記演算装置に対して近接スイッチからの検知信号が入力されない場合には、演算装置は前記可動側ブラケットが近接スイッチを通過するようにカッタ移動モータを作動させて前記切幅認識値に規定値を上書きするようにしたことは好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシート原料の切幅表示装置によれば、可動側カッタブレードの移動方向と移動速度の情報が入力される演算装置と、演算装置に接続されてクロックパルスを発生するクロックパルス発生部と、演算装置に接続された表示器とを有し、演算装置は、クロックパルスのカウント毎に可動側カッタブレードの移動方向と移動速度から計算した移動量を、直前まで認識していた切幅に加減して求めた新たな切幅認識値を表示器に表示するようにしたので、簡単な装置でしかも故障の問題を生じることがなくシート原料の切幅を適正な精度で表示できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のシート原料の切幅表示装置の一実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明における切断装置の一例を示す側面図である。
【図3】本発明のシート原料の切幅表示装置の作動を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0015】
図1は本発明のシート原料の切幅表示装置の一実施例を示す斜視図、図2は図1における切断装置の一例を示す側面図であり、図2に示す切断装置1は、2本の混練ロール2,2'上に、原料供給装置3,4からのゴム、プラスチック等の可塑材5が供給されて混錬されており、混練ロール2,2'の間からは板状のシート原料6が取り出され、このシート原料6は固定側カッタブレード8と移動側カッタブレード10によって所定の切幅に切断され、この切断したシート原料6はコンベヤ7によってカレンダ装置30に供給されるようになっている。コンベヤ7によってカレンダ装置30の2本のカレンダロール31,31'上に供給されたシート原料6は、バンク32を形成するようにして再びシート状に形成され、更に、下部のロール33,34等により所定の厚さのシート35に成形されるようになっている。尚、前記カレンダ装置30では、前記したように所定の厚さに調整したシート35をそのまま製品として取り出すものと、前記シート35を布や金属等の基材に圧着して複合シートとして取出すようにしたものがある。又、前記2本のロール31,31'上に形成されるバンク32の貯留量を検出する検出器36を設け、該検出器36で検出した原料の貯留量が所定値になるように、カッタ移動モータ13により移動側カッタブレード10を移動させて固定側カッタブレード8と移動側カッタブレード10との距離からなるシート原料6の切幅を調整するようにした調節器37を設けている。
【0016】
図1の切断装置1は、固定側カッタブレード8を備えた固定側ブラケット9と、可動側カッタブレード10を備えて前記固定側ブラケット9に対し近接・離反が可能な可動側ブラケット11と、ネジ軸12を介して前記可動側ブラケット11を移動させるカッタ移動モータ13とを有しており、前記ネジ軸12の駆動により、前記カッタブレード8,10の間隔を変更できるようになっている。前記ネジ軸12は途中が可動側ブラケット11に螺合し、その先端は固定側ブラケット9に対して回転可能でしかも軸方向へは移動不能に枢着されている。14は、可動側ブラケット11の移動を案内するガイドロッドである。
【0017】
前記固定側カッタブレード8及び可動側カッタブレード10は、固定側ブラケット9及び可動側ブラケット11上に回動可能に備えた回動アーム15に夫々固定されており、該回動アームは、前記固定側ブラケット9及び可動側ブラケット11上に備えた押し付けシリンダ16によって回動されるようになっている。そして、退避した状態のカッタブレード8,10を、押し付けシリンダ16の作動によって混練ロール2に押し付けることにより、前記シート原料4の切断を行うようになっている。
【0018】
図1中、17は演算装置であり、該演算装置17には、クロックパルスを発生するクロックパルス発生部18が備えられていると共に、演算装置17で求めた切幅を表示する表示部19が備えられており、更に、前記演算装置17には、前記カッタ駆動モータ13の駆動を調節する調節器37からの可動側カッタブレード10の移動方向と移動速度の信号37a(情報)が入力されている。
【0019】
前記カッタ移動モータ13は定速で駆動されるようになっているため、前記クロックパルス発生部18からのクロックパルスの1パルスの間に移動する可動側ブラケット11の移動距離は一定である。従って、演算装置17は、前記可動側カッタブレード10の移動と同時にクロックパルスをカウントしてカウント毎の移動距離を、可動側カッタブレード10の移動方向に応じて規定値22(可動側カッタブレード10の原点位置)に基づいた切幅認識値の直前値に加減することによって現在の切幅(新たな切幅認識値)を求め、得られた新たな切幅認識値を表示器19に表示している。
【0020】
上記したようにカウント毎に切幅認識値を加減することによって得ている現在の切幅は、可動側ブラケット11の移動の起動・停止が繰り返されることによって宿命的な累計誤差を生じる問題があり、このために、定期的に原点校正をする必要がある。
【0021】
このため、前記可動側ブラケット11の移動範囲には、前記可動側ブラケット11が前面を横切るのを検出する前記近接スイッチ20が設けてあり、該近接スイッチ20で検出した検知信号21が前記演算装置17に入力されており、該演算装置17は、前記近接スイッチ20による検知信号21が入力されると、前記切幅認識値を直ちに規定値22によって上書きするようにした自動原点校正機能を有している。
【0022】
又、前記演算装置17には設定時間Tが入力されており、この設定時間Tが経過しても前記演算装置17に対する近接スイッチ20からの検知信号21が入力されない場合には警報を発し、演算装置17は前記可動側ブラケット11が近接スイッチ20を通過するようにカッタ移動モータ13を作動させる信号17aを前記調節器37に出力して可動側カッタブレード10を移動させ、現在の切幅認識値を、原点位置を示す規定値22で上書きする強制原点校正を行う機能も選択にて可能なようにしている。
【0023】
次に、上記実施例の作動を説明する。
【0024】
前記2本のロール31,31'上に形成されるバンク32が検出器36により検出されて調節器37に入力されており、調節器37は、前記該検出器36で検出した原料の貯留量が所定値になるように、カッタ移動モータ13により移動側カッタブレード10を移動させて固定側カッタブレード8と移動側カッタブレード10との距離からなるシート原料6の切幅を調整する。
【0025】
前記調節器37によってシート原料6の切幅が調整される時には、調節器37による可動側カッタブレード10の移動方向と移動速度の信号37a(情報)が演算装置入力される。従って、演算装置17は、前記可動側カッタブレード10の移動と同時にクロックパルスをカウントしてカウント毎の移動距離を、可動側カッタブレード10の移動方向に応じて規定値22(可動側カッタブレード10の原点位置)に基づいた切幅認識値の直前値に対して加減することにより現在の新たな切幅認識値を求め、得られた新たな切幅認識値を表示器19に表示し続ける。
【0026】
前記調節器37によるシート原料6の切幅の調整が終了すると、調節器37からの信号37aの入力が停止されるので、前記演算装置17によるクロックパルスのカウントは停止され、前記表示器19には切幅の最終値が表示され続ける。
【0027】
図3に示すように、可動側カッタブレード10が+(プラス)方向(切幅が増加する方向)へ移動する場合には、クロックパルスのカウントにより切幅加算演算が行われて切幅の表示が行われ、又、可動側カッタブレード10が−(マイナス)方向(切幅が減少する方向)へ移動する場合には、クロックパルスのカウントにより切幅減算演算が行われて切幅の表示が行われる。
【0028】
又、図3に示すように自動原点校正機能を備えているので、近接スイッチ20による検知信号21が入力されると、演算装置17は、今までの切幅認識値Wを原点の規定値22で上書きする自動原点校正を行う。従って、自動原点校正が行われた後は、新たな規定値22に基づいた切幅認識値が演算されて表示されるようになる。
【0029】
このように、クロックパルスをカウントして切幅認識値の直前値に対する加減を行うことで現在の切幅認識値を求める場合には宿命的な累積誤差を生じる問題があるが、常に正しい規定値22で上書きする原点校正を行うことにより、その後の可動側カッタブレード10の移動時には、規定値22に基づいた適正な精度で切幅認識値を求めて表示することができる。
【0030】
上記したように、可動側カッタブレード10の移動方向と移動速度の信号37a(情報)が入力される演算装置17と、該演算装置17に接続されてクロックパルスを発生するクロックパルス発生部18と、前記演算装置17に接続された表示器19とを有し、演算装置17は、クロックパルスのカウント毎に可動側カッタブレード10の移動方向と移動速度に応じて規定値に基づいた切幅認識値の直前値を加減することで求めた新たな切幅認識値を表示器19に表示するようにしたので、エンコーダレスの切幅認識機能による簡単な装置でしかも故障や電磁ノイズによる狂いの問題を生じることがなくシート原料4の切幅を適正な精度で表示することができる。
【0031】
一方、前記可動側ブラケット11の移動が繰り返されても近接スイッチ20を横切らない場合には、前記原点校正が行われずに累積誤差が生じる可能性がある。
【0032】
しかし、本発明では、設定時間Tが経過しても、近接スイッチ20による検知信号21が入力されない場合には警報を発し、演算装置17は前記可動側ブラケット11が近接スイッチ20を通過するようにカッタ移動モータ13を作動させて可動側カッタブレード10の切幅認識値を原点位置の規定値で強制的に上書きするようにしているので、常に上書きされた規定値22に基づいて求められた適正な切幅を表示することができる。
【0033】
尚、本発明のシート原料の切幅表示装置におけるエンコーダレスの切幅認識機能は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、種々の装置に適用することができる。例えば、ロールギャップ調節装置では、ジャッキ入力軸に定速モータを備えており、操業の合間にロールギャップを大きく開けるチャンスがあるので、この間に自動原点校正ができる。又、別の例として、シート原料表面に切れ目を入れて空気抜きを行う空気抜きカッタ装置においても、定速モータで駆動しており、円板カッタが大きなストロークで常時移動するので、この間に自動原点校正ができる。
【符号の説明】
【0034】
1 カレンダ装置
2,2 混練ロール
3 可塑材
4 シート原料
7 切断装置
8 固定側カッタブレード
9 固定側ブラケット
10 可動側カッタブレード
11 可動側ブラケット
13 カッタ移動モータ
17 演算装置
18 クロックパルス発生部
19 表示部
20 近接スイッチ
21 検知信号
22 規定値
37 調節器
37a 可動側カッタブレード10の移動方向と移動速度の信号(情報)
T 設定時間
W 切幅認識値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑材を引き伸ばしてシート原料を形成する混練ロールと、
混練ロールの周面に押付けてシート原料を切断する固定側カッタブレードを有する固定側ブラケットと、前記混練ロール周面に押付けてシート原料を切断する可動側カッタブレードを有し且つ前記固定側ブラケットとの間隔が変化するよう移動して切幅を調節可能にした可動側ブラケットと、該可動側ブラケットを移動させるカッタ移動モータを備えた切断装置と
を有するシート原料の切幅表示装置であって、
可動側カッタブレードの移動方向と移動速度の情報が入力される演算装置と、該演算装置に接続されてクロックパルスを発生するクロックパルス発生部と、前記演算装置に接続された表示器とを有し、
前記演算装置は、クロックパルスのカウント毎に可動側カッタブレードの移動方向と移動速度から計算した移動量を、直前まで認識していた切幅に加減して求めた新たな切幅認識値を前記表示器に表示するようにしたことを特徴とするシート原料の切幅表示装置。
【請求項2】
前記可動側ブラケットの移動範囲に、該可動側ブラケットが横切ったことを検出する近接スイッチが備えてあり、前記演算装置は、前記近接スイッチによる検知信号が入力されると、直ちに前記切幅認識値に規定値を上書きするようにしたことを特徴とする請求項1記載のシート原料の切幅表示装置。
【請求項3】
前記演算装置には設定時間が入力してあり、設定時間が経過しても前記演算装置に対して近接スイッチからの検知信号が入力されない場合には、演算装置は前記可動側ブラケットが近接スイッチを通過するようにカッタ移動モータを作動させて前記切幅認識値に規定値を上書きするようにしたことを特徴とする請求項1記載のシート原料の切幅表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−49139(P2013−49139A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186734(P2011−186734)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(000198329)株式会社IHI機械システム (27)
【Fターム(参考)】