シート接合体の製造方法及びシート接合体の製造装置
【課題】接合に際して該処理領域への樹脂シート部材の搬送を停止せずに樹脂シート部材の接合が可能なシート接合体の製造装置を提供する。
【解決手段】先行して処理領域へと搬送される第1の樹脂シート部材1aと、次の第2の樹脂シート部材1bとを接合してシート接合体を作製するシート接合体の製造方法であって、前記第2の樹脂シート部材の先端部を保持する第1の工程と、該第1の工程で保持された前記先端部に光吸収剤を塗布する第2の工程と、前記第1の樹脂シート部材を保持する第3の工程と、保持された部分が末端部を構成するように切断する第4の工程と、前記先端部と前記末端部とを前記光吸収剤を挟んで重ね合わせる第5の工程と、レーザー溶着することによって接合する第6の工程と、前記第1の樹脂シート部材に続いて前記第2の樹脂シート部材を前記処理領域へと搬送する第7の工程と、を有することを特徴とするシート接合体の製造方法。
【解決手段】先行して処理領域へと搬送される第1の樹脂シート部材1aと、次の第2の樹脂シート部材1bとを接合してシート接合体を作製するシート接合体の製造方法であって、前記第2の樹脂シート部材の先端部を保持する第1の工程と、該第1の工程で保持された前記先端部に光吸収剤を塗布する第2の工程と、前記第1の樹脂シート部材を保持する第3の工程と、保持された部分が末端部を構成するように切断する第4の工程と、前記先端部と前記末端部とを前記光吸収剤を挟んで重ね合わせる第5の工程と、レーザー溶着することによって接合する第6の工程と、前記第1の樹脂シート部材に続いて前記第2の樹脂シート部材を前記処理領域へと搬送する第7の工程と、を有することを特徴とするシート接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚以上の樹脂シート部材を、レーザー光を照射することによって接合してシート接合体を作製するシート接合体の製造方法及びシート接合体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置などの画像表示装置において、偏光フィルムなどを含む光学フィルムが利用されている。
この種の偏光フィルムの製造方法としては、原反となる帯状のポリビニルアルコール系樹脂(PVA)フィルム等の樹脂シート部材がロール状に巻回されてなる原反ロールから原反フィルム(樹脂シート部材)を送り出して該原反フィルムの移動経路を規制し、原反フィルムをガイドする複数本のローラと各種の薬液浴とを備えた装置に通して延伸させる方法が採用されており、例えば、原反フィルムをその長手方向に移動させて膨潤浴や染色浴に連続して浸漬させた後に前後2箇所において前記ローラで原反フィルムをニップして、その間において張力を加えて前記延伸を実施させる方法が採用されたりしている。
【0003】
ところで、この種の偏光フィルムの製造方法においては、原反ロールを交換する毎に改めて新しい原反フィルムをローラ等に巻き掛けて装置にセットするのは、非常に煩雑であり且つ時間を浪費するものであることから、先行する原反フィルムの末端部に次の原反ロールから繰り出された原反フィルムの先端部を接合して連結させてシート接合体を作製し、2つの原反フィルムを順次連続して偏光フィルムに加工することがなされている。
このようなシート接合体の製造方法としては、従来、粘着テープや接着剤などの接着接合手段、リベットや糸などによる縫合接合手段またはヒートシーラーなどによる加熱溶融接合手段などが採用されている。
【0004】
しかしながら、上記のような方法においては、それぞれ下記のような問題を有している。
・粘着テープや接着剤などによる接着接合における問題点
膨潤浴、染色浴などに原反フィルムを浸漬させる工程において、接着剤の成分などが薬液に溶け出すことで、薬液を汚染し、製品への異物付着の要因となりうることに加え、接着剤が薬液に溶解されたり薬液の成分によって膨潤したりすることで接合強度が低下し、延伸工程において所望の延伸倍率に達する前に連結部に破断を生じさせるおそれを有する。
・リベットや糸などによる縫合接合における問題点
この方法では、原反フィルムにリベットや糸を通すための穴が穿設されることになるために連結部に張力が加わった場合に前記穴を起点とした破断を生じさせるおそれを有する。
このことを防止すべく穴数を減らして穴の間隔を広めに確保させると、張力が加わった際に、シワが生じやすくなって延伸ムラを生じさせるおそれを有する。
・ヒートシーラー等による加熱溶融接合における問題点
上記のような接着接合や縫合接合における問題点の解決を図り得る接合手段として、下記特許文献1及び2などに示すようなヒートシーラーによって接合する手段が知られている。
この方法では、接着接合に比べて薬液を汚染するおそれが低く、縫合接合のように穴を設ける必要がない。
しかし、ヒートシーラーでは、溶着領域、及び、その周辺は、溶着時に受けた熱によって変性して通常の部分に比べて硬化した状態となる傾向がある。
そのため、延伸時にこの溶着領域を挟んで張力が加えられるとこの硬化した箇所と通常の状態の箇所との境界部分に集中して応力が生じやすく、全体が所望の延伸倍率に至る前に当該領域が極端に延伸されるおそれを有する。
したがって、高い延伸倍率での延伸を実施させようとすると連結部において原反フィルムの破断を生じさせるおそれを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−171897号公報
【特許文献2】特開2010−8509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば偏光フィルムに高い偏光機能を付与するためには、一般には5.25倍以上の延伸を加えることが求められるが、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムを上記に示したような従来のシート接合体の製造方法で作成した場合には、5.25倍以上の延伸負荷に連結部が耐えられず、破断を起こすおそれを有するため、連結部が通過する間の延伸倍率を5.25倍未満に変更することで破断を回避させるような対策がなされている。
しかしながら上記のような回避策を選択した場合においては、設定を変えるために作業が煩雑となる。また、連結部前後の延伸倍率は所望の倍率(5.25倍以上)とはなっていないことから、製品として用いることが出来ず、材料ロスを発生させるおそれがある。
【0007】
すなわち、従来のシート接合体の製造方法においては、偏光フィルムを製造する場合には、高い偏光機能を有する偏光フィルムを効率良く製造することが難しいという問題を有していた。
【0008】
一方、上記したように、先行する原反フィルムの末端部に次の原反ロールの先端部を接合すれば、原反ロールを交換する毎に改めて新しい原反フィルムをローラ等に巻き掛けて装置にセットする煩雑さは回避され得る。しかしながら、かかる末端部と先端部とを接合するために、原反フィルムの繰り出しを一旦停止し、かかる停止の間、原反フィルムの搬送が停止すると、その間延伸が停止するため、従来のシート接合体の製造方法においては、製造効率が低下するという問題も有していた。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、接合部が薬液への含浸や延伸等の後段の処理領域で破断されることを抑制しつつ、接合に際して該処理領域への樹脂シート部材の搬送を停止することなく樹脂シート部材の接合が可能なシート接合体の製造方法及びシート接合体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係るシート接合体の製造方法は、
2以上の帯状の樹脂シート部材のうち先行して処理領域へと搬送される第1の樹脂シート部材と、次の第2の樹脂シート部材とを接合してシート接合体を作製するシート接合体の製造方法であって、
前記第2の樹脂シート部材の先端部を保持する第1の工程と、
該第1の工程で保持された前記先端部に光吸収剤を塗布する第2の工程と、
上流側から搬入される前記第1の樹脂シート部材を蓄積し且つ蓄積した前記第1の樹脂シート部材を下流側に搬出することにより、前記第1の樹脂シート部材の搬入速度と搬出速度とを異ならしめるように構成されたシート蓄積部を介して前記第1の樹脂シート部材を前記処理領域へと搬送し、前記シート蓄積部の下流側では前記第1の樹脂シート部材の搬送を継続しつつ、上流側では前記第1の樹脂シート部材の搬送を停止すると共に前記第1の樹脂シート部材を保持する第3の工程と、
該第3の工程で保持された前記第1の樹脂シート部材を、保持された部分が末端部を構成するように切断する第4の工程と、
前記先端部と前記末端部とを前記光吸収剤を挟んで重ね合わせる第5の工程と、
該第5の工程で重ね合わされた前記先端部及び末端部を加圧しつつレーザー溶着することによって接合する第6の工程と、
前記先端部及び末端部への加圧と、前記先端部及び末端部の保持とを解除して前記第1の樹脂シート部材に続いて前記第2の樹脂シート部材を前記処理領域へと搬送する第7の工程と、
を有することを特徴とする。
【0011】
これにより、2以上の帯状の樹脂シート部材の内の先行する第1の樹脂シート部材の末端部と、次の第2の樹脂シート部材の先端部と、がレーザー溶着によって接合されることから、第1の樹脂シート部材に続いて該第1の樹脂シート部材と接合された第2の樹脂シート部材を処理する際、例えば薬液に浸漬される場合においては、接着剤等の使用によって接着接合する場合に比べて薬液が汚染されたり、該薬液によって接合強度が低下されたりするおそれが抑制され得る。
また、レーザー溶着を行うことにより、例えば延伸処理される場合においては、第1及び第2の樹脂シート部材を連続して延伸処理するに際して、接合部と非接合部との境界において破断の発生を回避することが可能となり、接合部を延伸処理する場合においても延伸条件を変更することなく、連続的に延伸を加えられる。
加えて、シート蓄積部を介して第1の樹脂シート部材を搬送することから、上記末端部と上記先端部とを接合する間、第1の樹脂シート部材を保持しても、該第1の樹脂シート部材の処理領域への搬送を継続することが可能となる。
従って、接合部が薬液への含浸や延伸等の後段の処理領域で破断されることを抑制しつつ、接合に際して該処理領域への樹脂シート部材の搬送を停止することなく樹脂シート部材の接合が可能となる。
【0012】
また、本発明に係るシート接合体の製造方法において、前記第1の樹脂シート部材において前記第4の工程での切断によって生成された不要部を巻き取ることによって、該不要部を回収する第8の工程を有することが好ましい。
【0013】
これにより、上記不要部の除去が容易となる。
【0014】
また、本発明に係るシート接合体の製造方法において、前記樹脂シート部材は、熱可塑性樹脂フィルムの単層であることが好ましい。
【0015】
これにより、シート接合体を作製し易くなる。
【0016】
また、本発明に係るシート接合体の製造方法において、前記樹脂シート部材は、偏光フィルムを作製するためのポリビニルアルコール系樹脂フィルムであることが好ましい。
【0017】
これにより、後段で延伸処理を行う際、破断することなく延伸することが可能となるため、偏光フィルムに高い偏光機能を付与することが可能となる。また、延伸倍率を変更することなく連続して延伸処理を行うことが可能となるため、材料ロスの発生を回避することが可能となる。従って、高い偏光機能を有する偏光フィルムを効率良く製造することが可能となる。
【0018】
また、本発明に係るシート接合体の製造装置は、
2以上の帯状の樹脂シート部材のうち先行して処理領域へと搬送される第1の樹脂シート部材と、次の第2の樹脂シート部材とを接合してシート接合体を作製するシート接合体の製造装置であって、
上流側から搬入される前記第1の樹脂シート部材を蓄積し且つ蓄積した前記第1の樹脂シート部材を下流側に搬出することにより、前記第1の樹脂シート部材の搬入速度と搬出速度とを異ならしめるように構成されており、下流側においては前記処理領域への前記第1の樹脂シートの搬送を継続しつつ、上流側においては前記第1の樹脂シートの搬送の停止を可能とするシート蓄積部と、
前記シート蓄積部よりも上流側に配置され、前記第1の樹脂シート部材の搬送停止に合わせて前記第1の樹脂シート部材を保持する第1の保持部と、
前記第1の樹脂シート部材を、前記第1の保持部に保持された部分が末端部を構成するように切断する切断部と、
前記第2の樹脂シート部材の先端部を保持する第2の保持部と、
前記第2の保持部に保持された先端部に光吸収剤を塗布する塗布部と、
前記先端部及び前記末端部の配置を、該先端部及び末端部が前記光吸収剤を挟んで重ね合わせられるように調整する配置調整部と、
前記先端部及び末端部の重ね合わせ部分を加圧する加圧部と、
前記加圧部によって加圧された前記重ね合わせ部分にレーザー光を照射して、前記先端部と前記末端部とをレーザー溶着により接合するレーザー光照射部と、
を備え、
前記加圧部による前記先端部及び末端部への加圧と、前記先端部及び末端部の保持とを解除することにより前記第1の樹脂シート部材に続いて前記第2の樹脂シート部材が前記処理領域へと搬送されるように構成されていることを特徴とする。
【0019】
これにより、2以上の帯状の樹脂シート部材の内の先行する第1の樹脂シート部材の末端部と、次の第2の樹脂シート部材の先端部と、がレーザー溶着によって接合されることから、第1の樹脂シート部材に続いて該第1の樹脂シート部材と接合された第2の樹脂シート部材を処理する際、例えば薬液に浸漬される場合においては、接着剤等の使用によって接着接合する場合に比べて薬液が汚染されたり、該薬液によって接合強度が低下されたりするおそれが抑制され得る。
また、レーザー溶着を行うことにより、例えば延伸処理される場合においては、第1及び第2の樹脂シート部材を連続して延伸処理するに際して、接合部と非接合部との境界において破断の発生を回避することが可能となり、接合部を延伸処理する場合においても延伸条件を変更することなく、連続的に延伸を加えられる。
加えて、シート蓄積部を介して第1の樹脂シート部材を搬送することから、上記末端部と上記先端部とを接合する間、第1の樹脂シート部材を保持しても、該第1の樹脂シート部材の処理領域への搬送を継続することが可能となる。
従って、接合部が薬液への含浸や延伸等の後段の処理領域で破断されることを抑制しつつ、接合に際して該処理領域への樹脂シート部材の搬送を停止することなく樹脂シート部材の接合が可能となる。
【0020】
また、本発明に係るレーザー接合体の製造装置において、前記第1の樹脂シート部材は、該第1の樹脂シート部材を巻き取り可能な送り出し部に装着されており、該送り出し部が、前記第1の樹脂シート部材において前記切断部による切断によって生成された不要部を巻き取ることによって、該不要部を回収するように構成されていることが好ましい。
【0021】
これにより、上記不要部の除去が容易となる。
【0022】
また、本発明に係るレーザー接合体の製造装置において、前記樹脂シート部材は、熱可塑性樹脂フィルムの単層であることが好ましい。
【0023】
これにより、シート接合体を作製し易くなる。
【0024】
また、本発明に係るレーザー接合体の製造装置において、前記樹脂シート部材は、偏光フィルムを作製するためのポリビニルアルコール系樹脂フィルムであることが好ましい。
【0025】
これにより、後段で延伸処理を行う際、破断することなく延伸することが可能となるため、偏光フィルムに高い偏光機能を付与することが可能となる。また、延伸倍率を変更することなく連続して延伸処理を行うことが可能となるため、材料ロスの発生を回避することが可能となる。従って、高い偏光機能を有する偏光フィルムを効率良く製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
以上の通り、本発明によれば、接合部が薬液への含浸や延伸等の後段の処理領域で破断されることを抑制しつつ、接合に際して該処理領域への樹脂シート部材の搬送を停止することなく樹脂シート部材の接合が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一実施形態の接合装置を示す概略側面図
【図2】アキュムレータの概略側面図
【図3】新原反フィルムの先端部が保持された状態を模式的に示す概略側面図
【図4】新原反フィルムの先端部に光吸収剤が塗布される状態を模式的に示す概略側面図
【図5】アキュムレータの上流側において旧原反フィルムの搬送が停止された状態を模式的に示す概略側面図
【図6】旧原反フィルムが保持され、切断された状態を模式的に示す概略側面図
【図7】新原反フィルムを移動させて旧原反フィルムと重ね合わせた状態を模式的に示す概略側面図
【図8】重ね合わせ部分が加圧された状態を模式的に示す概略側面図
【図9】重ね合わせ部分にレーザー光が照射される状態を模式的に示す概略側面図
【図10】重ね合わせ部分に対する加圧、新旧原反フィルムの保持が解除された状態を模式的に示す概略側面図
【図11】新旧原反フィルムの搬送が再開された状態を模式的に示す概略側面図
【図12】新旧原反フィルムの重ね合わせ方法における別の一例を示す概略側面図
【図13】新旧原反フィルムが搬送される延伸装置の一例を示す概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
まず、本実施形態のシート接合体の製造方法及びシート接合体の製造装置について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の接合装置(製造装置)100の一例を模式的に示す概略側面図である。
【0029】
接合装置100は、2以上の帯状の樹脂シート部材(原反フィルム)1のうち先行して送り出され処理工程(処理領域)に搬送される第1の樹脂シート部材(旧原反フィルム)1aの末端部と、次の第2の樹脂シート部材(新原反フィルム)1bの先端部と、を接合するようになっており、旧原反フィルム1aに続いて新原反フィルム1bが処理工程へと連続して搬送されて、処理されるようになっている。
【0030】
接合装置100によって接合される2以上の原反フィルム1としては、互いに接合される表面に熱可塑性樹層を有していれば、熱可塑性樹脂の単層から形成されていても、熱可塑性樹脂層とその他の樹脂層とが積層されて形成されていてもよく、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂の単層から形成されたものであることが好ましい。これにより、シート接合体の作製が容易となる。また、かかる樹脂シート部材としては、互いに同種の熱可塑性樹脂から構成されたものであるのが一般的であるが、本発明は、同種のものである場合に限定されず、互いに熱融着可能な材質であれば、異なる種類のものであってもよい。
【0031】
このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリイミド、トリアセチルセルロース、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、ノルボルネン樹脂、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、エチレンビニルアセテートなどを挙げることができる。
また、かかる樹脂シート部材がロールトゥロールで搬送されることを考慮して、その厚みは1μm以上2mm以下であることが好ましく、10μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0032】
また、樹脂シート部材としては、偏光フィルムを作製するためのポリビニルアルコール系樹脂フィルム、すなわちポリビニルアルコール系高分子樹脂材料からなるフィルムを用いることが好ましく、これにより、後段で延伸処理を行う際、破断することなく延伸することが可能となるため、偏光フィルムに高い偏光機能を付与することが可能となる。
【0033】
かかるポリビニルアルコール系樹脂フィルムとして、具体的には、例えば、ポリビニルアルコールフィルム、部分ケン化ポリビニルアルコールフィルム又はポリビニルアルコールの脱水処理フィルムなどを用いることができる。
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの形成材料であるポリマーの重合度は、一般に500〜10,000であり、1,000〜6,000の範囲であることが好ましく、1,400〜4,000の範囲にあることがより好ましい。
さらに、部分ケン化ポリビニルアルコールフィルムの場合、そのケン化度は、例えば、水への溶解性の点から、75モル%以上が好ましく、より好ましくは98モル%以上であり、98.3〜99.8モル%の範囲にあることがより好ましい。
【0034】
接合装置100は、第1の送り出し部(送り出し部)21、第1の保持部22、切断部23、第2の送り出し部24、第2の保持部25、ステージ26、レーザー光照射部27、加圧部28、塗布部29、配置調整部31、アキュムレータ(シート蓄積部)32を備えている。
【0035】
第1の送り出し部21は、ロール状に巻回された旧原反フィルム1aを、これを送り出す正方向と巻き取る逆方向とに回転させることができ、正方向に回転させることにより、旧原反フィルム1aを送り出すことができる。かかる第1の送り出し部21は、巻回された旧原反フィルム1aの中空部が装着されるローラ部材から形成されるようになっている。
【0036】
第1の保持部22は、平坦な上面部を有しており、かかる上面部は、第1の送り出し部21から送り出された旧原反フィルム1aの下方に配置されるようになっている。また、かかる上面部には、孔が複数形成されており、不図示の第1の吸引部材によって、当該上面部に対して旧原反フィルム1aが吸引されて保持されるようになっている。そして、後述するように、旧原反フィルム1aの送り出し(アキュムレータ32の上流側の搬送)が停止すると、かかる停止に合わせて上記第1の吸引部材が作動して、旧原反フィルム1aが第1の保持部22に保持されるようになっている。
【0037】
切断部23は、旧原反フィルム1aを切断するためのものであり、刃物23aとその受け部23b等から形成されている。かかる切断部23は、旧原反フィルム1aにおける第1の保持部22に保持された部分の上流側(図1の右側)において、後述する新原反フィルム1bの先端部1baと重なり合う部分を残して切断するようになっている。このように切断部23によって切断されることにより、旧原反フィルム1aは、処理工程に搬送されて処理される旧原反フィルム1aの末端部1aaと、処理されない不要部(図6参照)とが形成されるようになっている。
【0038】
第2の送り出し部24は、ロール状に巻回された新原反フィルム1bを、これを送り出す正方向と巻き取る逆方向とに回転させることができ、正方向に回転させることにより、新原反フィルム1bを送り出すことができる。かかる第2の送り出し部24は、巻回された新原反フィルム1bの中空部が装着されるローラ部材から形成されるようになっている。
【0039】
第2の保持部25は、平坦な上面部を有しており、かかる上面部が、第2の送り出し部24から送り出された新原反フィルム1bの下方に配置されるようになっている。また、かかる上面部には、孔が複数形成されており、不図示の第2の吸引部材によって、当該上面部に対して新原反フィルム1bが吸引されて保持されるようになっている。そして、新原反フィルム1bの先端部1baが、第2の保持部25及び後述するステージ26の上面に重なると、新原反フィルム1bの送り出しが停止し、かかる停止に合わせて上記第2の吸引部材が作動し、先端部1baが第2の保持部25に保持されるようになっている。
【0040】
また、第1の送り出し部21、第2の送り出し部24は、これらの位置を相互に入れ替えるように回転することが可能な配置可変部41に設けられている。そして、後述するように新旧原反フィルム1a、1bの接合後、配置可変部41が回転することにより、新原反フィルム1bが旧原反フィルム1aの位置(図1の上方)に配置され、この位置において新原反フィルム1bが順次繰り出されるようになっている。このとき、下方に配置される旧原反フィルム1aは、配置可変部41から取り外され、新原反フィルム1bの次の原反フィルムが新たに装着されるようになっている。
【0041】
ステージ26は、平坦な上面部を有しており、第2の保持部25の下流側(図1の左側)に隣接して配置されている。かかるステージ26の材質としては、金属、セラミックス、樹脂、ラバー等を用いることができる。これらのうち、ステージ26の材質としてラバーを用いることが好ましく、これにより、後述するように、旧原反フィルム1aの末端部1aaと新原反フィルム1bの先端部1baとの重なり合わされた部分を挟んで加圧部28がステージ26を加圧する際、広い面積を均一に加圧することができる。従って、後述するレーザー光の照射により、上記重なり合わされた部分において良好な接合状態を得ることができる。さらに、末端部1aaと先端部1baとの接合後において、末端部1aaとの剥離性を高めるためや、耐熱性を高めるために、上記ラバーの表面を表面処理することや、上記ラバーの表面に樹脂部材を積層することもできる。
【0042】
レーザー光照射部27は、レーザー光源を有しており、ステージ26の上方に配置されている。また、加圧部28は、ステージ26の上方であってレーザー光照射部27の下方において、上下方向に移動可能に配置されている。そして、先行する旧原反フィルム1aの末端部1aaと、これに接合される新原反フィルム1bの先端部1baとをステージ26上において上下に重ね合わせ、この重ね合わせた部分を加圧部28で加圧しつつレーザー光照射部27からレーザー光Rを照射することにより、末端部1aaと先端部1baとの界面部を加熱溶融させて溶着させ、両者を接合し得るように構成されている。また、加圧部28は、レーザー光Rの透過性に優れた透明な部材で構成されている。
【0043】
上記レーザー光源の種類は特に限定がされるものではないが、用いるレーザー光は、新旧原反フィルム1a、1bを重ね合わせた部分における新旧原反フィルムの界面において新原反フィルム1bの上面に塗布するなどして配置された光吸収剤によって吸収され、発熱させる役目を担うものであって、用いる光吸収剤の吸収感度の高い波長を有することが好ましい。
【0044】
具体的には、レーザー光の種類としては、可視光域もしくは赤外線域の波長を有する半導体レーザー、ファイバーレーザー、フェムト秒レーザー、ピコ秒レーザー、YAGレーザーなどの固体レーザー、CO2レーザーなどのガスレーザーが挙げられる。
なかでも、安価で且つ面内均一なレーザービームが容易に得られる半導体レーザーやファイバーレーザーが好ましい。
また、原反フィルムの分解を避けつつ溶融を促す目的においては、瞬間的に高いエネルギーが投入されるパルスレーザーよりも連続波のCWレーザーのほうが好ましい。
レーザー光の出力(パワー)、ビームサイズ及び形状、照射回数、更に走査速度などは、対象となる原反フィルム及び光吸収剤の光吸収率といった光学特性や原反フィルムを構成しているポリマーの融点、ガラス転移点(Tg)といった熱特性などの違いに対して適宜最適化されればよいが、レーザー光が照射された部分においてポリビニルアルコール系樹脂を効率的に流動化させて強固な接合を得るために、照射するレーザー光のパワー密度としては、200W/cm2〜10,000W/cm2の範囲内であることが好ましく、300W/cm2〜5,000W/cm2の範囲内であることがさらに好ましく、1,000W/cm2〜3,000W/cm2の範囲内であることが特に好ましい。
【0045】
また、上記レーザー光源は、新旧原反フィルム1a、1bの界面において所定の大きさのスポット径(照射巾)でレーザー光を照射しうるものが好ましい。
この照射スポット径(照射巾)としては、上記照射レーザーパワー密度を満たすパワーにて、新旧原反フィルム1a、1bの重ね合わせ幅の半値以上3倍以下が好ましい。
重ね合わせ幅の半値未満では、重ね合わせ部の未接合部が大きく、接合後に搬送する際にばたついて、良好な搬送性を阻害するおそれを有する。
また、3倍以上の巾でレーザー光を照射すると、接合及び延伸特性には影響は及ぼさないものの、エネルギー利用効率の観点からは好ましくない。
好ましくは、重ね合わせ幅と同値以上2倍以下である。
なお、新旧原反フィルム1a、1bの重ね合せ幅は、0.1mm以上10.0mm未満とすることが好ましく、0.5mm以上5mm未満とすることが更に好ましい。
これは、重ね合わせ幅が0.1mm未満では、繰り返し精度よく広幅な原反フィルム1を重ね合わせ配置することが難しいためであり、10.0mm以上になると、未接合部の形成を防止するためにレーザー光を10.0mm巾以上で照射する必要が生じることから必要なエネルギーが高くなり、省エネルギーの観点から好ましくないためである。
【0046】
なお、レーザー光の積算照射量としては、5J/cm2〜400J/cm2の範囲内であることが好ましく、10J/cm2〜300J/cm2の範囲内であることが更に好ましく、30J/cm2〜150J/cm2の範囲内であることが特に好ましい。
したがって、これらの条件を満たすことのできるレーザー光源を有するレーザー光照射部27を接合装置100に採用することが好ましい。
【0047】
また、上記した加圧部28は、用いるレーザー光に対して高い透明性を示すガラス製の加圧部材を有している。
レーザー光の照射に際する加圧強度としては、0.5〜100kgf/cm2の範囲内であることが好ましく、10〜70kgf/cm2の範囲内であることが更に好ましい。
したがって、加圧部材としては、このような強度で加圧することが可能な部材であればそのガラス製部材の形状は特に限定されず、例えば、平板、円筒、球状のものを使用することが出来る。
ガラス製部材の厚みは特に限定されないが、薄すぎると歪みによって良好な加圧ができず、厚すぎるとレーザー光の利用効率が下がるため、レーザー光が透過する方向における厚みが3mm以上30mm未満であることが好ましく、5mm以上20mm未満であることが更に好ましい。
【0048】
加圧部材の材質としては、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス、テンパックス、パイレックス、バイコール、D263、OA10、AF45などが挙げられる。
レーザー光の利用効率を高めるために、加圧部材として利用するガラス製部材は、用いるレーザー光波長に対して高い透明性を有することが好ましく、50%以上の光透過率を有していることが好ましく、70%以上の光透過率を有していることが更に好ましい。
【0049】
なお、加圧部材を上記のようなガラス製の部材を用いて構成させる場合には、より広い面積をより均一に加圧して全域にわたって良好な接合を行わせ得るように、原反フィルムと接する部分に、上記ガラス製部材よりもクッション性に優れたクッション層を形成させることもできる。
すなわち、光透過性の良好なラバーシートやクッション性を有する透明樹脂シート等を備えた加圧部材を採用することもでき、例えば、背面側がガラス製部材で構成され、原反フィルムと接する前面側が透明ラバーシートで構成された加圧部28を採用することができる。
【0050】
上記クッション層の形成には、例えば、シリコンラバー、ウレタンラバーなどのゴム系材料やポリエチレンなどの樹脂材料を用いることが出来る。
このクッション層の厚みは、50μm以上5mm未満であることが好ましく、1mm以上3mm未満が更に好ましい。
50μm未満であると、クッション性に乏しく、5mm以上の場合は、当該クッション層によってレーザー光の吸収や散乱が生じ、末端部1aaと先端部1baとの接触界面部に到達するレーザー光のエネルギーを低下させるおそれを有する。
このクッション層は、用いるレーザー光波長に対して30%以上の光透過率を有することが好ましく、50%以上が更に好ましい。
また、かかるクッション層と同様のクッション層を、ステージ26の上面に配することもできる。
【0051】
本実施形態のレーザー光照射部27においては、重ね合わせた新旧原反フィルム1a、1bの重ね合わせ部分に沿ってレーザー溶着を実施して、ライン状の溶着部たる接合部を形成させ得るように構成されていることが好ましく、例えば、集光レンズによって所望のビームサイズに集光されたスポットビームを重ね合わせ部分に沿って走査させるための機構や、シリンドリカルレンズや回折光学素子といった光学部材の使用によってライン状のレーザービームを整形して原反フィルムの重ね合わせ部分に照射する機構、更には複数のレーザー光源を重ね合わせ部分に沿って配置し、無走査で同時照射することで一括溶融加熱接合する機構などが備えられていることが好ましい。
【0052】
また、上記した塗布部29は、第2の保持部25に保持された新原反フィルム1bの先端部1baにおいてステージ26に載置された部分の上面に、光吸収剤を塗布するようになっている。かかる光吸収剤の塗布により、末端部1aaと先端部1baとの界面部におけるレーザー光の光吸収性を高め、より効率良く溶着を実施させることができる。
【0053】
ここで使用する光吸収剤としては、レーザー光を吸収して熱を発生させるものであれば特に限定がされず、カーボンブラック、顔料、染料などを用いることが出来る。
例えば、フタロシアニン系吸収剤、ナフタロシアニン系吸収剤、ポリメチン系吸収剤、ジフェニルメタン系吸収剤、トリフェニルメタン系吸収剤、キノン系吸収剤、アゾ系吸収剤、ジインモニウム塩などを用いることが出来る。
また、800nm〜1200nmの波長を有するレーザー光を発するレーザー光源を用いる場合には、例えば、米国Gentex社製から商品名「Clearweld」として市販の光吸収剤を用いることが出来る。
【0054】
これらの吸収剤は有機溶媒などで希釈して、塗布部29で塗布させることができ、該塗布部29としては、例えば、ディスペンサー、インクジェットプリンター、スクリーン印刷機、2流体式、1流体式又は超音波式スプレー、スタンパー、コーターなどの一般的な塗布装置を採用することができる。
【0055】
配置調整部31は、第1の保持部22に保持された旧原反フィルム1aの末端部1aaと、第2の保持部25に保持され光吸収剤が塗布された新原反フィルム1bの先端部1baと、がステージ26上で光吸収剤を挟んで重ね合わさるように新旧原反フィルム1a、1bの配置を調整するためのものであり、ここでは、第2の保持部25及びステージ26を、第2の保持部25がステージ26を挟んで第1の保持部22と隣接する位置に向かって移動するように構成されている。また、図1の破線で示す部分が第1の保持部と共に移動するように構成されている。なお、本発明においては、上記末端部1aa及び先端部1baを重ね合わせ可能に構成されていれば、第1の保持部22のみが移動するように構成されていてもよく、第1の保持部22と第2の保持部25及びステージ26との両方が移動するように構成されていてもよい。
【0056】
アキュムレータ32は、上流側から搬入される旧原反フィルム1aを蓄積し且つ蓄積した旧原反フィルム1aを下流側に搬出することにより、旧原反フィルム1aの搬入速度と搬出速度とを異ならしめるように構成されており、上流側において旧原反フィルム1aの搬送が停止しても、後段の処理工程(処理装置)への旧原反フィルム1aの搬送を継続し得るように、旧原反フィルム1aを蓄積できるようになっている。かかるアキュムレータ32は、図1に示すように第1の保持部22の下流側(図1の左側)に配置されており、図2に示すように旧原反フィルム1aが架け渡される第1ローラ33、第2ローラ34、第3ローラ35、第4ローラ36及び第5ローラ37を有している。
【0057】
これらローラのうち、第1ローラ33、第2ローラ34及び第3ローラ35は固定配置されている。また、第4ローラ36は、第1ローラ33及び第2ローラ34の間の下方において、上下方向に移動可能に配置され、第5ローラ37は、第2ローラ34及び第3ローラ35の間の下方において、上下方向に移動可能に配置されている。
【0058】
かかる第4及び第5ローラ36、37は、最下方のホームポジションに配置され、これにより、旧原反フィルム1aはアキュムレータ32に蓄積されるようになっている。そして、図2に示すように、アキュムレータ32の上流側において旧原反フィルム1aの搬送が停止すると、かかる停止に合わせて第4及び第5ローラ36、37は上方に移動し、後段の処理工程への旧原反フィルム1aの搬送を継続し得るようになっている。また、後述するように旧原反フィルム1aと新原反フィルム1bとが接合され、旧原反フィルム1aに続いて新原反フィルム1bが搬送されると、第4及び第5ローラ36、37がホームポジションへと下方に移動し、旧原反フィルム1aに続いて新原反フィルム1bがアキュムレータ32に蓄積されるようになっている。
【0059】
また、第4及び第5ローラ36、37の上方への移動速度及び移動距離は、上記した旧原反フィルム1aの搬送停止から、新旧原反フィルム1a、1bの接合後、新旧原反フィルム1a、1bの搬送が開始されるまでの間、旧原反フィルム1aが後段の処理工程に搬送されるような速度及び距離に応じて設定されている。また、第4及び第5ローラ36、37の下方への移動速度は、後段の処理工程への新旧原反フィルム1a、1bの搬送を妨げないような速度に設定されている。
【0060】
なお、アキュムレータ32に設けられるローラの数量や配置等は、後段の処理工程への旧原反フィルム1aの上記搬送の継続が可能であれば特に限定されるものではない。また、ここでは、第1ローラ33の上流側(図2の右側)に、旧原反フィルム1aの搬送をガイドするローラ対38が配置されているが、かかるローラ対38を設けない構成とすることも、必要に応じて複数のローラ対を設ける構成とすることもできる。
【0061】
次に、上記した接合装置100によるシート接合体の製造方法について説明する。
【0062】
旧原反フィルム1aが、第1の送り出し部21から送り出され、アキュムレータ32を通過しつつ、後段の処理工程へと搬送されており、この状態で、旧原反フィルム1aと新原反フィルム1bとを接合することとする。まず、第2の送り出し部24から第2の保持部25に向かって新原反フィルム1bが送り出される。送り出された新原反フィルム1bの先端部1baが第2の保持部25及びステージ26の上方に配置されると、新原反フィルム1bの送り出しが停止し、かかる停止に合わせて上記第2の吸引部材が作動して、図3に示すように、先端部1baが第2の保持部25に保持される(第1の工程)。また、図4に示すように、ステージ26上の先端部1baの上面に、塗布部29(図1参照)により光吸収剤が塗布される(第2の工程)。
【0063】
次に、図5に示すように、アキュムレータ32の上流側において旧原反フィルム1aの送り出しが停止し、かかる停止に合わせて、前述した図2に示すように第4及び第5ローラ36、37が上方に移動して後段の処理工程への旧原反フィルム1aの搬送を継続しつつ、図6に示すように、上記第1の吸引部材が作動して旧原反フィルム1aが第1の保持部22に保持される(第3の工程)。
【0064】
また、図6に示すように、第1の保持部22に保持された旧原反フィルム1aは切断部23により、旧原反フィルム1aにおける第1の保持部22に保持された部分の上流側(図6の右側)において新原反フィルム1bの先端部1baと重なり合う部分を残して切断され、かかる切断により、旧原反フィルム1aは、処理工程に搬送されて処理される旧原反フィルム1aの末端部1aaと、処理されない不要部とが形成される(第4の工程)。
【0065】
かかる切断後、第1の送り出し部21が逆方向に回転し、旧原反フィルム1aにおける上記不要部が巻き取られて回収される(第8の工程)。
【0066】
上記切断後、図7に示すように、配置調整部31(図1参照)により、新原反フィルム1bの先端部1baが保持された第2の保持部25及びステージ26が移動して、これらが、ステージ26を挟んで第2の保持部25が第1の保持部22と隣接する位置に配置され、ステージ26上において末端部1aaと先端部1baとが光吸収剤を挟んで重ね合わせられる(第5の工程)。
【0067】
次に、図8に示すように、ステージ26上で重ね合わされた末端部1aaと先端部1baが、加圧部28によって上方からステージ26に対して加圧され、図9に示すように、レーザー光照射部27(図1参照)によってレーザー光Rが、末端部1aaと先端部1baとの重ね合わせ部分に対して加圧部28の上方から照射されて、末端部1aaと先端部1baとがレーザー溶着により接合される(第6の工程)。
【0068】
そして、かかるレーザー溶着後、図10に示すように、加圧部28が上昇し、該加圧部28による末端部1aa及び先端部1baの加圧が解除され、上記した第1及び第2吸引部材の作動が停止して、第1及び第2の保持部22、25による末端部1aa及び先端部1baの保持が解除され、図11に示すように、旧原反フィルム1aに続いて新原反フィルム1bが搬送される(第7の工程)。このとき、配置可変部41(図1参照)によって、旧原反フィルム1aと新原反フィルム1bとの配置が入れ替えられる。また、新旧原反フィルム1a、1bの搬送開始に合わせて、第4及び第5ローラ36、37(図1参照)が下方に移動して、旧原反フィルム1aに続いて新原反フィルム1bがアキュムレータ32に蓄積される。
【0069】
上記したように、旧原反フィルム1aの末端部1aaと新原反フィルム1bの先端部1baとが接合されてシート接合体が作製されることにより、両フィルムの接合に際して後段の処理工程への旧原反フィルム1aの搬送が停止することを回避できる。そして、旧原反フィルム1aに引き続いて新原反フィルム1bが連続して搬送されて、処理される。また、このように新旧原反フィルム1a、1bの接合を繰り返すことによって、2つ以上の原反フィルム1を順次連続して接合し、後段の処理工程に搬送することができる。
【0070】
なお、配置可変部41(図1参照)によって下方に移動した旧原反フィルム1aを取り外し、新原反フィルム1bの次の原反フィルムを装着することによって、順次連続して原反フィルムを接合することができる。
【0071】
なお、ここでは詳述しないが、上記した接合装置100には、一般的なレーザー溶着装置ならびにその周辺機器において利用されている種々の機構を採用することができる。また、上記実施形態では、旧原反フィルム1aを切断した後、旧原反フィルム1aと新原反フィルム1bとを接合したが、その他例えば、図12に示すように旧原反フィルム1aと、新原反フィルム1bの先端部の一部と、を重ね合わせて切断した後、かかる切断によって形成された旧原反フィルム1aの後端部1aaと新原反フィルム1baの先端部とを接合することもできる。
【0072】
具体的には、旧原反フィルム1aの搬送中に新原反フィルム1bを送り出してその先端部の長手方向における一部を第2の保持部25で保持し、先端部の上面に光吸収剤を塗布する(図12(a))。また、旧原反フィルム1aの送り出しを停止すると共にアキュムレータ32を作動させ(図2参照)、旧原反フィルム1aを新原反フィルム1bの上方から重ね合わせるようにして第1の保持部22で保持する(図12(b))。次に、切断部23の受け部23bを上昇させ、切断部23によって新旧原反フィルム1a、1bを切断することにより(図12(c))、旧原反フィルム1aの末端部1aaと新原反フィルム1bの先端部1baを形成する。
【0073】
また、切断によって発生した両フィルムの不要部を回収すると共に、受け部23bを下降させる(図12(d))。そして、配置調整部31(図12では図示せず)により第2の保持部25を第1の保持部22に接近させることにより(図12(e))、新原反フィルム1bの先端部1baにおいて光吸収剤が塗布された上面に旧原反フィルム1aの末端部1aaを重ね合わせた後、ステージ26を上昇させると共に加圧部28を下降させ(図12(f))、加圧部28によって末端部1aaと先端部1baとの重ね合わせ部分をステージ26に押圧しながら該重ね合わせ部分にレーザー光を照射して、末端部1aaと先端部1baとを接合する。その後、前述した図10及び図11に示すように、末端部1aa及び先端部の加圧及び保持を解除することにより、旧原反フィルム1aに引き続いて新原反フィルム1bを搬送させることができる。
【0074】
また、上記接合装置100によって作製されたシート接合体(旧原反フィルム1a及び新原反フィルム1b)が搬送される後段の処理工程としては、薬液処理や延伸処理等を挙げることができる。また、例えば原反フィルム1として、偏光フィルムを作製するためのポリビニルアルコール系樹脂フィルムを用いた場合、図13に示すような延伸装置(処理装置)50を用いた延伸処理工程を挙げることができる。尚、図13においては、レーザー溶着によって接合された部分(溶着部)を黒塗り部30で示している。
【0075】
図13に示すように、偏光フィルムを製造するための延伸装置50には、接合装置100から搬送された旧原反フィルム1a及び新原反フィルム1b(原反フィルム1)を所定の薬液に浸漬するための複数の浸漬浴4と、該浸漬浴4内に原反フィルム1を通すように、原反フィルム1の移動経路を規制する複数のローラ9と、該移動経路中にて原反フィルム1を延伸する延伸手段と、複数の浸漬浴4に浸漬され且つ延伸されたフィルムを偏光フィルムとしてロール状に巻き取る偏光フィルム巻取部10とが備えられている。
【0076】
また、浸漬浴4の下流側で且つ巻取部10の上流側には、フィルムに付着した洗浄液を乾燥させる乾燥装置11、具体的には乾燥オーブンが備えられている。更に、ロール状に巻回された表面保護フィルム(例えば、トリアセチルセルロースフィルムやシクロオレフィンポリマーフィルム)等の積層用フィルム12が前記乾燥装置11で乾燥されたフィルムの両面側にそれぞれ配されており、乾燥後のフィルムの両面に積層用フィルム12を積層させるためのラミネート装置が備えられている。
【0077】
かかる延伸装置50により、原反フィルム1の累積した総延伸倍率が2〜8倍となるようにその長さ方向に延伸するようになっており、好ましくは5.25〜8倍となるようにその長さ方向に延伸することによって、得られた偏光フィルムに優れた偏光機能を付与することができる。
【0078】
本実施形態のシート接合体の製造方法及びシート接合体の製造装置は、以上の通りであるが、本発明は本実施形態に限定されず本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。
【実施例】
【0079】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
下記の樹脂シート部材、条件を使用した。
・原反フィルム:トリアセチルセルロース樹脂(TAC)フィルム((株)富士フィルム社製、厚み80μm、巾1,330mm)
・重ね合わせ幅:1.5mm巾
・加熱溶融接合手段:レーザー
・レーザー:半導体レーザー(波長940nm、パワー80W、スポット径2mmφ、
パワー密度2,547W/cm2、走査速度70mm/sec、積算照射 量 102J/cm2、トップハットビーム)
・光吸収剤:商品名「Clearweld LD120C」(米国ジェンテックス社製、
波長940nmの光の吸収率30%、溶媒アセトン)、下側に配した新原 反フィルムの上面に5.0mm巾で10nL/mm2塗布
・加圧部材:溶融石英ガラスの平板(15mm厚)
・加圧条件:原反フィルム重ね合わせ部へ加重50kgf/cm2で押し付け
【0081】
上記した旧TACフィルムを、搬送速度30m/分、張力300Nで搬送し、延伸装置のケン化浴槽に搬送した。かかる旧TACフィルムの搬送中において、上記各条件を用いて前述した図3〜11に示すように旧TACフィルムと新TACフィルムとを接合し、旧TACフィルムに続いて新TACフィルムをケン化浴槽に搬送させてこれを通過させた。
その結果、アキュムレータ32の上流側で旧TCAフィルムの搬送を停止し、新旧TACフィルムを接合している間、旧TACフィルムのケン化浴槽への搬送は良好であり、接合後、新旧TCAフィルムの搬送を開始した後においても、新旧TACフィルムのケン化浴槽への搬送は良好であった。また、ケン化浴槽の通過後、旧TACフィルムと新TACフィルムとの間に破断は認められず、その接合性は良好であった。
【0082】
(実施例2)
新旧の樹脂シート部材として、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)フィルム((株)クラレ社製、厚み75μm、巾3,000mm)を用い、図13に示すような延伸装置において延伸倍率が、膨潤浴では2.6倍、染色浴では3.4倍、架橋浴では3.6倍、延伸浴では6.0倍となるように延伸した後、洗浄浴を通過させたこと以外は実施例1と同様にして、旧PVAフィルムと新PVAフィルムとを接合し、旧PVAフィルムに引き続いて新PVAフィルムを延伸させた。
その結果、新旧PVAフィルムを接合している間、旧PVAフィルムの延伸装置への搬送は良好であり、接合後、新旧PVAフィルムの搬送を開始した後においても、新旧PVAフィルムの延伸装置への搬送は良好であった。また、延伸装置において各薬液槽を通過して延伸された後、旧PVAフィルムと新PVAフィルムとの間に破断は認められず、その接合性は良好であった。さらに、延伸倍率6.0倍の延伸においても破断は認められず、延伸性も良好であった。
【0083】
(比較例1)
接合手段として感圧型接着剤(アクリル系粘着剤;日東電工製、No.5000NS 160μm厚)を用い、該アクリル系粘着剤を新PVAフィルムの先端部の上面に貼付して、かかる先端部と旧PVAフィルムの末端部とを接合したこと以外は実施例2と同様にして、新旧PVAフィルムを延伸させた。
その結果、新旧PVAフィルムを接合している間、旧PVAフィルムの延伸装置への搬送は良好であり、接合後、新旧PVAフィルムの搬送を開始した後においても、新旧PVAフィルムの延伸装置への搬送は良好であった。しかし、延伸浴槽において、旧PVAフィルムと新PVAフィルムとの間に破断は認められた。
【0084】
(比較例2)
新PVAフィルムの先端部と旧PVAフィルムの末端部とをヒートシーラー(ニクロム線3mm巾、温度200℃、10秒)で接合したこと以外は実施例2と同様にして、新旧PVAフィルムを延伸させた。
その結果、新旧PVAフィルムを接合している間、旧PVAフィルムの延伸装置への搬送は良好であり、接合後、新旧PVAフィルムの搬送を開始した後においても、新旧PVAフィルムの延伸装置への搬送は良好であった。しかし、延伸倍率4倍の延伸時に、破断が生じたため、偏光フィルムを得るうえで目標とする延伸倍率5.25倍まで延伸することができなかった。
【符号の説明】
【0085】
1:原反フィルム(樹脂シート部材)、1a:旧原反フィルム(第1の樹脂シート部材)、1aa:末端部、1b:新原反フィルム(第2の樹脂シート部材)、1ba:先端部、21:第1の送り出し部(送り出し部)、22、第1の保持部、23、切断部、24:第2の送り出し部、25:第2の保持部、26:ステージ、27:レーザー光照射部、28:加圧部、29:塗布部、31:配置調整部、32:アキュムレータ(シート蓄積部)、33:第1ローラ、34:第2ローラ、35、第3ローラ、36:第4ローラ、37:第5ローラ、100:接合装置(製造装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚以上の樹脂シート部材を、レーザー光を照射することによって接合してシート接合体を作製するシート接合体の製造方法及びシート接合体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置などの画像表示装置において、偏光フィルムなどを含む光学フィルムが利用されている。
この種の偏光フィルムの製造方法としては、原反となる帯状のポリビニルアルコール系樹脂(PVA)フィルム等の樹脂シート部材がロール状に巻回されてなる原反ロールから原反フィルム(樹脂シート部材)を送り出して該原反フィルムの移動経路を規制し、原反フィルムをガイドする複数本のローラと各種の薬液浴とを備えた装置に通して延伸させる方法が採用されており、例えば、原反フィルムをその長手方向に移動させて膨潤浴や染色浴に連続して浸漬させた後に前後2箇所において前記ローラで原反フィルムをニップして、その間において張力を加えて前記延伸を実施させる方法が採用されたりしている。
【0003】
ところで、この種の偏光フィルムの製造方法においては、原反ロールを交換する毎に改めて新しい原反フィルムをローラ等に巻き掛けて装置にセットするのは、非常に煩雑であり且つ時間を浪費するものであることから、先行する原反フィルムの末端部に次の原反ロールから繰り出された原反フィルムの先端部を接合して連結させてシート接合体を作製し、2つの原反フィルムを順次連続して偏光フィルムに加工することがなされている。
このようなシート接合体の製造方法としては、従来、粘着テープや接着剤などの接着接合手段、リベットや糸などによる縫合接合手段またはヒートシーラーなどによる加熱溶融接合手段などが採用されている。
【0004】
しかしながら、上記のような方法においては、それぞれ下記のような問題を有している。
・粘着テープや接着剤などによる接着接合における問題点
膨潤浴、染色浴などに原反フィルムを浸漬させる工程において、接着剤の成分などが薬液に溶け出すことで、薬液を汚染し、製品への異物付着の要因となりうることに加え、接着剤が薬液に溶解されたり薬液の成分によって膨潤したりすることで接合強度が低下し、延伸工程において所望の延伸倍率に達する前に連結部に破断を生じさせるおそれを有する。
・リベットや糸などによる縫合接合における問題点
この方法では、原反フィルムにリベットや糸を通すための穴が穿設されることになるために連結部に張力が加わった場合に前記穴を起点とした破断を生じさせるおそれを有する。
このことを防止すべく穴数を減らして穴の間隔を広めに確保させると、張力が加わった際に、シワが生じやすくなって延伸ムラを生じさせるおそれを有する。
・ヒートシーラー等による加熱溶融接合における問題点
上記のような接着接合や縫合接合における問題点の解決を図り得る接合手段として、下記特許文献1及び2などに示すようなヒートシーラーによって接合する手段が知られている。
この方法では、接着接合に比べて薬液を汚染するおそれが低く、縫合接合のように穴を設ける必要がない。
しかし、ヒートシーラーでは、溶着領域、及び、その周辺は、溶着時に受けた熱によって変性して通常の部分に比べて硬化した状態となる傾向がある。
そのため、延伸時にこの溶着領域を挟んで張力が加えられるとこの硬化した箇所と通常の状態の箇所との境界部分に集中して応力が生じやすく、全体が所望の延伸倍率に至る前に当該領域が極端に延伸されるおそれを有する。
したがって、高い延伸倍率での延伸を実施させようとすると連結部において原反フィルムの破断を生じさせるおそれを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−171897号公報
【特許文献2】特開2010−8509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば偏光フィルムに高い偏光機能を付与するためには、一般には5.25倍以上の延伸を加えることが求められるが、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムを上記に示したような従来のシート接合体の製造方法で作成した場合には、5.25倍以上の延伸負荷に連結部が耐えられず、破断を起こすおそれを有するため、連結部が通過する間の延伸倍率を5.25倍未満に変更することで破断を回避させるような対策がなされている。
しかしながら上記のような回避策を選択した場合においては、設定を変えるために作業が煩雑となる。また、連結部前後の延伸倍率は所望の倍率(5.25倍以上)とはなっていないことから、製品として用いることが出来ず、材料ロスを発生させるおそれがある。
【0007】
すなわち、従来のシート接合体の製造方法においては、偏光フィルムを製造する場合には、高い偏光機能を有する偏光フィルムを効率良く製造することが難しいという問題を有していた。
【0008】
一方、上記したように、先行する原反フィルムの末端部に次の原反ロールの先端部を接合すれば、原反ロールを交換する毎に改めて新しい原反フィルムをローラ等に巻き掛けて装置にセットする煩雑さは回避され得る。しかしながら、かかる末端部と先端部とを接合するために、原反フィルムの繰り出しを一旦停止し、かかる停止の間、原反フィルムの搬送が停止すると、その間延伸が停止するため、従来のシート接合体の製造方法においては、製造効率が低下するという問題も有していた。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、接合部が薬液への含浸や延伸等の後段の処理領域で破断されることを抑制しつつ、接合に際して該処理領域への樹脂シート部材の搬送を停止することなく樹脂シート部材の接合が可能なシート接合体の製造方法及びシート接合体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係るシート接合体の製造方法は、
2以上の帯状の樹脂シート部材のうち先行して処理領域へと搬送される第1の樹脂シート部材と、次の第2の樹脂シート部材とを接合してシート接合体を作製するシート接合体の製造方法であって、
前記第2の樹脂シート部材の先端部を保持する第1の工程と、
該第1の工程で保持された前記先端部に光吸収剤を塗布する第2の工程と、
上流側から搬入される前記第1の樹脂シート部材を蓄積し且つ蓄積した前記第1の樹脂シート部材を下流側に搬出することにより、前記第1の樹脂シート部材の搬入速度と搬出速度とを異ならしめるように構成されたシート蓄積部を介して前記第1の樹脂シート部材を前記処理領域へと搬送し、前記シート蓄積部の下流側では前記第1の樹脂シート部材の搬送を継続しつつ、上流側では前記第1の樹脂シート部材の搬送を停止すると共に前記第1の樹脂シート部材を保持する第3の工程と、
該第3の工程で保持された前記第1の樹脂シート部材を、保持された部分が末端部を構成するように切断する第4の工程と、
前記先端部と前記末端部とを前記光吸収剤を挟んで重ね合わせる第5の工程と、
該第5の工程で重ね合わされた前記先端部及び末端部を加圧しつつレーザー溶着することによって接合する第6の工程と、
前記先端部及び末端部への加圧と、前記先端部及び末端部の保持とを解除して前記第1の樹脂シート部材に続いて前記第2の樹脂シート部材を前記処理領域へと搬送する第7の工程と、
を有することを特徴とする。
【0011】
これにより、2以上の帯状の樹脂シート部材の内の先行する第1の樹脂シート部材の末端部と、次の第2の樹脂シート部材の先端部と、がレーザー溶着によって接合されることから、第1の樹脂シート部材に続いて該第1の樹脂シート部材と接合された第2の樹脂シート部材を処理する際、例えば薬液に浸漬される場合においては、接着剤等の使用によって接着接合する場合に比べて薬液が汚染されたり、該薬液によって接合強度が低下されたりするおそれが抑制され得る。
また、レーザー溶着を行うことにより、例えば延伸処理される場合においては、第1及び第2の樹脂シート部材を連続して延伸処理するに際して、接合部と非接合部との境界において破断の発生を回避することが可能となり、接合部を延伸処理する場合においても延伸条件を変更することなく、連続的に延伸を加えられる。
加えて、シート蓄積部を介して第1の樹脂シート部材を搬送することから、上記末端部と上記先端部とを接合する間、第1の樹脂シート部材を保持しても、該第1の樹脂シート部材の処理領域への搬送を継続することが可能となる。
従って、接合部が薬液への含浸や延伸等の後段の処理領域で破断されることを抑制しつつ、接合に際して該処理領域への樹脂シート部材の搬送を停止することなく樹脂シート部材の接合が可能となる。
【0012】
また、本発明に係るシート接合体の製造方法において、前記第1の樹脂シート部材において前記第4の工程での切断によって生成された不要部を巻き取ることによって、該不要部を回収する第8の工程を有することが好ましい。
【0013】
これにより、上記不要部の除去が容易となる。
【0014】
また、本発明に係るシート接合体の製造方法において、前記樹脂シート部材は、熱可塑性樹脂フィルムの単層であることが好ましい。
【0015】
これにより、シート接合体を作製し易くなる。
【0016】
また、本発明に係るシート接合体の製造方法において、前記樹脂シート部材は、偏光フィルムを作製するためのポリビニルアルコール系樹脂フィルムであることが好ましい。
【0017】
これにより、後段で延伸処理を行う際、破断することなく延伸することが可能となるため、偏光フィルムに高い偏光機能を付与することが可能となる。また、延伸倍率を変更することなく連続して延伸処理を行うことが可能となるため、材料ロスの発生を回避することが可能となる。従って、高い偏光機能を有する偏光フィルムを効率良く製造することが可能となる。
【0018】
また、本発明に係るシート接合体の製造装置は、
2以上の帯状の樹脂シート部材のうち先行して処理領域へと搬送される第1の樹脂シート部材と、次の第2の樹脂シート部材とを接合してシート接合体を作製するシート接合体の製造装置であって、
上流側から搬入される前記第1の樹脂シート部材を蓄積し且つ蓄積した前記第1の樹脂シート部材を下流側に搬出することにより、前記第1の樹脂シート部材の搬入速度と搬出速度とを異ならしめるように構成されており、下流側においては前記処理領域への前記第1の樹脂シートの搬送を継続しつつ、上流側においては前記第1の樹脂シートの搬送の停止を可能とするシート蓄積部と、
前記シート蓄積部よりも上流側に配置され、前記第1の樹脂シート部材の搬送停止に合わせて前記第1の樹脂シート部材を保持する第1の保持部と、
前記第1の樹脂シート部材を、前記第1の保持部に保持された部分が末端部を構成するように切断する切断部と、
前記第2の樹脂シート部材の先端部を保持する第2の保持部と、
前記第2の保持部に保持された先端部に光吸収剤を塗布する塗布部と、
前記先端部及び前記末端部の配置を、該先端部及び末端部が前記光吸収剤を挟んで重ね合わせられるように調整する配置調整部と、
前記先端部及び末端部の重ね合わせ部分を加圧する加圧部と、
前記加圧部によって加圧された前記重ね合わせ部分にレーザー光を照射して、前記先端部と前記末端部とをレーザー溶着により接合するレーザー光照射部と、
を備え、
前記加圧部による前記先端部及び末端部への加圧と、前記先端部及び末端部の保持とを解除することにより前記第1の樹脂シート部材に続いて前記第2の樹脂シート部材が前記処理領域へと搬送されるように構成されていることを特徴とする。
【0019】
これにより、2以上の帯状の樹脂シート部材の内の先行する第1の樹脂シート部材の末端部と、次の第2の樹脂シート部材の先端部と、がレーザー溶着によって接合されることから、第1の樹脂シート部材に続いて該第1の樹脂シート部材と接合された第2の樹脂シート部材を処理する際、例えば薬液に浸漬される場合においては、接着剤等の使用によって接着接合する場合に比べて薬液が汚染されたり、該薬液によって接合強度が低下されたりするおそれが抑制され得る。
また、レーザー溶着を行うことにより、例えば延伸処理される場合においては、第1及び第2の樹脂シート部材を連続して延伸処理するに際して、接合部と非接合部との境界において破断の発生を回避することが可能となり、接合部を延伸処理する場合においても延伸条件を変更することなく、連続的に延伸を加えられる。
加えて、シート蓄積部を介して第1の樹脂シート部材を搬送することから、上記末端部と上記先端部とを接合する間、第1の樹脂シート部材を保持しても、該第1の樹脂シート部材の処理領域への搬送を継続することが可能となる。
従って、接合部が薬液への含浸や延伸等の後段の処理領域で破断されることを抑制しつつ、接合に際して該処理領域への樹脂シート部材の搬送を停止することなく樹脂シート部材の接合が可能となる。
【0020】
また、本発明に係るレーザー接合体の製造装置において、前記第1の樹脂シート部材は、該第1の樹脂シート部材を巻き取り可能な送り出し部に装着されており、該送り出し部が、前記第1の樹脂シート部材において前記切断部による切断によって生成された不要部を巻き取ることによって、該不要部を回収するように構成されていることが好ましい。
【0021】
これにより、上記不要部の除去が容易となる。
【0022】
また、本発明に係るレーザー接合体の製造装置において、前記樹脂シート部材は、熱可塑性樹脂フィルムの単層であることが好ましい。
【0023】
これにより、シート接合体を作製し易くなる。
【0024】
また、本発明に係るレーザー接合体の製造装置において、前記樹脂シート部材は、偏光フィルムを作製するためのポリビニルアルコール系樹脂フィルムであることが好ましい。
【0025】
これにより、後段で延伸処理を行う際、破断することなく延伸することが可能となるため、偏光フィルムに高い偏光機能を付与することが可能となる。また、延伸倍率を変更することなく連続して延伸処理を行うことが可能となるため、材料ロスの発生を回避することが可能となる。従って、高い偏光機能を有する偏光フィルムを効率良く製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
以上の通り、本発明によれば、接合部が薬液への含浸や延伸等の後段の処理領域で破断されることを抑制しつつ、接合に際して該処理領域への樹脂シート部材の搬送を停止することなく樹脂シート部材の接合が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一実施形態の接合装置を示す概略側面図
【図2】アキュムレータの概略側面図
【図3】新原反フィルムの先端部が保持された状態を模式的に示す概略側面図
【図4】新原反フィルムの先端部に光吸収剤が塗布される状態を模式的に示す概略側面図
【図5】アキュムレータの上流側において旧原反フィルムの搬送が停止された状態を模式的に示す概略側面図
【図6】旧原反フィルムが保持され、切断された状態を模式的に示す概略側面図
【図7】新原反フィルムを移動させて旧原反フィルムと重ね合わせた状態を模式的に示す概略側面図
【図8】重ね合わせ部分が加圧された状態を模式的に示す概略側面図
【図9】重ね合わせ部分にレーザー光が照射される状態を模式的に示す概略側面図
【図10】重ね合わせ部分に対する加圧、新旧原反フィルムの保持が解除された状態を模式的に示す概略側面図
【図11】新旧原反フィルムの搬送が再開された状態を模式的に示す概略側面図
【図12】新旧原反フィルムの重ね合わせ方法における別の一例を示す概略側面図
【図13】新旧原反フィルムが搬送される延伸装置の一例を示す概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
まず、本実施形態のシート接合体の製造方法及びシート接合体の製造装置について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の接合装置(製造装置)100の一例を模式的に示す概略側面図である。
【0029】
接合装置100は、2以上の帯状の樹脂シート部材(原反フィルム)1のうち先行して送り出され処理工程(処理領域)に搬送される第1の樹脂シート部材(旧原反フィルム)1aの末端部と、次の第2の樹脂シート部材(新原反フィルム)1bの先端部と、を接合するようになっており、旧原反フィルム1aに続いて新原反フィルム1bが処理工程へと連続して搬送されて、処理されるようになっている。
【0030】
接合装置100によって接合される2以上の原反フィルム1としては、互いに接合される表面に熱可塑性樹層を有していれば、熱可塑性樹脂の単層から形成されていても、熱可塑性樹脂層とその他の樹脂層とが積層されて形成されていてもよく、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂の単層から形成されたものであることが好ましい。これにより、シート接合体の作製が容易となる。また、かかる樹脂シート部材としては、互いに同種の熱可塑性樹脂から構成されたものであるのが一般的であるが、本発明は、同種のものである場合に限定されず、互いに熱融着可能な材質であれば、異なる種類のものであってもよい。
【0031】
このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリイミド、トリアセチルセルロース、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、ノルボルネン樹脂、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、エチレンビニルアセテートなどを挙げることができる。
また、かかる樹脂シート部材がロールトゥロールで搬送されることを考慮して、その厚みは1μm以上2mm以下であることが好ましく、10μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0032】
また、樹脂シート部材としては、偏光フィルムを作製するためのポリビニルアルコール系樹脂フィルム、すなわちポリビニルアルコール系高分子樹脂材料からなるフィルムを用いることが好ましく、これにより、後段で延伸処理を行う際、破断することなく延伸することが可能となるため、偏光フィルムに高い偏光機能を付与することが可能となる。
【0033】
かかるポリビニルアルコール系樹脂フィルムとして、具体的には、例えば、ポリビニルアルコールフィルム、部分ケン化ポリビニルアルコールフィルム又はポリビニルアルコールの脱水処理フィルムなどを用いることができる。
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの形成材料であるポリマーの重合度は、一般に500〜10,000であり、1,000〜6,000の範囲であることが好ましく、1,400〜4,000の範囲にあることがより好ましい。
さらに、部分ケン化ポリビニルアルコールフィルムの場合、そのケン化度は、例えば、水への溶解性の点から、75モル%以上が好ましく、より好ましくは98モル%以上であり、98.3〜99.8モル%の範囲にあることがより好ましい。
【0034】
接合装置100は、第1の送り出し部(送り出し部)21、第1の保持部22、切断部23、第2の送り出し部24、第2の保持部25、ステージ26、レーザー光照射部27、加圧部28、塗布部29、配置調整部31、アキュムレータ(シート蓄積部)32を備えている。
【0035】
第1の送り出し部21は、ロール状に巻回された旧原反フィルム1aを、これを送り出す正方向と巻き取る逆方向とに回転させることができ、正方向に回転させることにより、旧原反フィルム1aを送り出すことができる。かかる第1の送り出し部21は、巻回された旧原反フィルム1aの中空部が装着されるローラ部材から形成されるようになっている。
【0036】
第1の保持部22は、平坦な上面部を有しており、かかる上面部は、第1の送り出し部21から送り出された旧原反フィルム1aの下方に配置されるようになっている。また、かかる上面部には、孔が複数形成されており、不図示の第1の吸引部材によって、当該上面部に対して旧原反フィルム1aが吸引されて保持されるようになっている。そして、後述するように、旧原反フィルム1aの送り出し(アキュムレータ32の上流側の搬送)が停止すると、かかる停止に合わせて上記第1の吸引部材が作動して、旧原反フィルム1aが第1の保持部22に保持されるようになっている。
【0037】
切断部23は、旧原反フィルム1aを切断するためのものであり、刃物23aとその受け部23b等から形成されている。かかる切断部23は、旧原反フィルム1aにおける第1の保持部22に保持された部分の上流側(図1の右側)において、後述する新原反フィルム1bの先端部1baと重なり合う部分を残して切断するようになっている。このように切断部23によって切断されることにより、旧原反フィルム1aは、処理工程に搬送されて処理される旧原反フィルム1aの末端部1aaと、処理されない不要部(図6参照)とが形成されるようになっている。
【0038】
第2の送り出し部24は、ロール状に巻回された新原反フィルム1bを、これを送り出す正方向と巻き取る逆方向とに回転させることができ、正方向に回転させることにより、新原反フィルム1bを送り出すことができる。かかる第2の送り出し部24は、巻回された新原反フィルム1bの中空部が装着されるローラ部材から形成されるようになっている。
【0039】
第2の保持部25は、平坦な上面部を有しており、かかる上面部が、第2の送り出し部24から送り出された新原反フィルム1bの下方に配置されるようになっている。また、かかる上面部には、孔が複数形成されており、不図示の第2の吸引部材によって、当該上面部に対して新原反フィルム1bが吸引されて保持されるようになっている。そして、新原反フィルム1bの先端部1baが、第2の保持部25及び後述するステージ26の上面に重なると、新原反フィルム1bの送り出しが停止し、かかる停止に合わせて上記第2の吸引部材が作動し、先端部1baが第2の保持部25に保持されるようになっている。
【0040】
また、第1の送り出し部21、第2の送り出し部24は、これらの位置を相互に入れ替えるように回転することが可能な配置可変部41に設けられている。そして、後述するように新旧原反フィルム1a、1bの接合後、配置可変部41が回転することにより、新原反フィルム1bが旧原反フィルム1aの位置(図1の上方)に配置され、この位置において新原反フィルム1bが順次繰り出されるようになっている。このとき、下方に配置される旧原反フィルム1aは、配置可変部41から取り外され、新原反フィルム1bの次の原反フィルムが新たに装着されるようになっている。
【0041】
ステージ26は、平坦な上面部を有しており、第2の保持部25の下流側(図1の左側)に隣接して配置されている。かかるステージ26の材質としては、金属、セラミックス、樹脂、ラバー等を用いることができる。これらのうち、ステージ26の材質としてラバーを用いることが好ましく、これにより、後述するように、旧原反フィルム1aの末端部1aaと新原反フィルム1bの先端部1baとの重なり合わされた部分を挟んで加圧部28がステージ26を加圧する際、広い面積を均一に加圧することができる。従って、後述するレーザー光の照射により、上記重なり合わされた部分において良好な接合状態を得ることができる。さらに、末端部1aaと先端部1baとの接合後において、末端部1aaとの剥離性を高めるためや、耐熱性を高めるために、上記ラバーの表面を表面処理することや、上記ラバーの表面に樹脂部材を積層することもできる。
【0042】
レーザー光照射部27は、レーザー光源を有しており、ステージ26の上方に配置されている。また、加圧部28は、ステージ26の上方であってレーザー光照射部27の下方において、上下方向に移動可能に配置されている。そして、先行する旧原反フィルム1aの末端部1aaと、これに接合される新原反フィルム1bの先端部1baとをステージ26上において上下に重ね合わせ、この重ね合わせた部分を加圧部28で加圧しつつレーザー光照射部27からレーザー光Rを照射することにより、末端部1aaと先端部1baとの界面部を加熱溶融させて溶着させ、両者を接合し得るように構成されている。また、加圧部28は、レーザー光Rの透過性に優れた透明な部材で構成されている。
【0043】
上記レーザー光源の種類は特に限定がされるものではないが、用いるレーザー光は、新旧原反フィルム1a、1bを重ね合わせた部分における新旧原反フィルムの界面において新原反フィルム1bの上面に塗布するなどして配置された光吸収剤によって吸収され、発熱させる役目を担うものであって、用いる光吸収剤の吸収感度の高い波長を有することが好ましい。
【0044】
具体的には、レーザー光の種類としては、可視光域もしくは赤外線域の波長を有する半導体レーザー、ファイバーレーザー、フェムト秒レーザー、ピコ秒レーザー、YAGレーザーなどの固体レーザー、CO2レーザーなどのガスレーザーが挙げられる。
なかでも、安価で且つ面内均一なレーザービームが容易に得られる半導体レーザーやファイバーレーザーが好ましい。
また、原反フィルムの分解を避けつつ溶融を促す目的においては、瞬間的に高いエネルギーが投入されるパルスレーザーよりも連続波のCWレーザーのほうが好ましい。
レーザー光の出力(パワー)、ビームサイズ及び形状、照射回数、更に走査速度などは、対象となる原反フィルム及び光吸収剤の光吸収率といった光学特性や原反フィルムを構成しているポリマーの融点、ガラス転移点(Tg)といった熱特性などの違いに対して適宜最適化されればよいが、レーザー光が照射された部分においてポリビニルアルコール系樹脂を効率的に流動化させて強固な接合を得るために、照射するレーザー光のパワー密度としては、200W/cm2〜10,000W/cm2の範囲内であることが好ましく、300W/cm2〜5,000W/cm2の範囲内であることがさらに好ましく、1,000W/cm2〜3,000W/cm2の範囲内であることが特に好ましい。
【0045】
また、上記レーザー光源は、新旧原反フィルム1a、1bの界面において所定の大きさのスポット径(照射巾)でレーザー光を照射しうるものが好ましい。
この照射スポット径(照射巾)としては、上記照射レーザーパワー密度を満たすパワーにて、新旧原反フィルム1a、1bの重ね合わせ幅の半値以上3倍以下が好ましい。
重ね合わせ幅の半値未満では、重ね合わせ部の未接合部が大きく、接合後に搬送する際にばたついて、良好な搬送性を阻害するおそれを有する。
また、3倍以上の巾でレーザー光を照射すると、接合及び延伸特性には影響は及ぼさないものの、エネルギー利用効率の観点からは好ましくない。
好ましくは、重ね合わせ幅と同値以上2倍以下である。
なお、新旧原反フィルム1a、1bの重ね合せ幅は、0.1mm以上10.0mm未満とすることが好ましく、0.5mm以上5mm未満とすることが更に好ましい。
これは、重ね合わせ幅が0.1mm未満では、繰り返し精度よく広幅な原反フィルム1を重ね合わせ配置することが難しいためであり、10.0mm以上になると、未接合部の形成を防止するためにレーザー光を10.0mm巾以上で照射する必要が生じることから必要なエネルギーが高くなり、省エネルギーの観点から好ましくないためである。
【0046】
なお、レーザー光の積算照射量としては、5J/cm2〜400J/cm2の範囲内であることが好ましく、10J/cm2〜300J/cm2の範囲内であることが更に好ましく、30J/cm2〜150J/cm2の範囲内であることが特に好ましい。
したがって、これらの条件を満たすことのできるレーザー光源を有するレーザー光照射部27を接合装置100に採用することが好ましい。
【0047】
また、上記した加圧部28は、用いるレーザー光に対して高い透明性を示すガラス製の加圧部材を有している。
レーザー光の照射に際する加圧強度としては、0.5〜100kgf/cm2の範囲内であることが好ましく、10〜70kgf/cm2の範囲内であることが更に好ましい。
したがって、加圧部材としては、このような強度で加圧することが可能な部材であればそのガラス製部材の形状は特に限定されず、例えば、平板、円筒、球状のものを使用することが出来る。
ガラス製部材の厚みは特に限定されないが、薄すぎると歪みによって良好な加圧ができず、厚すぎるとレーザー光の利用効率が下がるため、レーザー光が透過する方向における厚みが3mm以上30mm未満であることが好ましく、5mm以上20mm未満であることが更に好ましい。
【0048】
加圧部材の材質としては、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス、テンパックス、パイレックス、バイコール、D263、OA10、AF45などが挙げられる。
レーザー光の利用効率を高めるために、加圧部材として利用するガラス製部材は、用いるレーザー光波長に対して高い透明性を有することが好ましく、50%以上の光透過率を有していることが好ましく、70%以上の光透過率を有していることが更に好ましい。
【0049】
なお、加圧部材を上記のようなガラス製の部材を用いて構成させる場合には、より広い面積をより均一に加圧して全域にわたって良好な接合を行わせ得るように、原反フィルムと接する部分に、上記ガラス製部材よりもクッション性に優れたクッション層を形成させることもできる。
すなわち、光透過性の良好なラバーシートやクッション性を有する透明樹脂シート等を備えた加圧部材を採用することもでき、例えば、背面側がガラス製部材で構成され、原反フィルムと接する前面側が透明ラバーシートで構成された加圧部28を採用することができる。
【0050】
上記クッション層の形成には、例えば、シリコンラバー、ウレタンラバーなどのゴム系材料やポリエチレンなどの樹脂材料を用いることが出来る。
このクッション層の厚みは、50μm以上5mm未満であることが好ましく、1mm以上3mm未満が更に好ましい。
50μm未満であると、クッション性に乏しく、5mm以上の場合は、当該クッション層によってレーザー光の吸収や散乱が生じ、末端部1aaと先端部1baとの接触界面部に到達するレーザー光のエネルギーを低下させるおそれを有する。
このクッション層は、用いるレーザー光波長に対して30%以上の光透過率を有することが好ましく、50%以上が更に好ましい。
また、かかるクッション層と同様のクッション層を、ステージ26の上面に配することもできる。
【0051】
本実施形態のレーザー光照射部27においては、重ね合わせた新旧原反フィルム1a、1bの重ね合わせ部分に沿ってレーザー溶着を実施して、ライン状の溶着部たる接合部を形成させ得るように構成されていることが好ましく、例えば、集光レンズによって所望のビームサイズに集光されたスポットビームを重ね合わせ部分に沿って走査させるための機構や、シリンドリカルレンズや回折光学素子といった光学部材の使用によってライン状のレーザービームを整形して原反フィルムの重ね合わせ部分に照射する機構、更には複数のレーザー光源を重ね合わせ部分に沿って配置し、無走査で同時照射することで一括溶融加熱接合する機構などが備えられていることが好ましい。
【0052】
また、上記した塗布部29は、第2の保持部25に保持された新原反フィルム1bの先端部1baにおいてステージ26に載置された部分の上面に、光吸収剤を塗布するようになっている。かかる光吸収剤の塗布により、末端部1aaと先端部1baとの界面部におけるレーザー光の光吸収性を高め、より効率良く溶着を実施させることができる。
【0053】
ここで使用する光吸収剤としては、レーザー光を吸収して熱を発生させるものであれば特に限定がされず、カーボンブラック、顔料、染料などを用いることが出来る。
例えば、フタロシアニン系吸収剤、ナフタロシアニン系吸収剤、ポリメチン系吸収剤、ジフェニルメタン系吸収剤、トリフェニルメタン系吸収剤、キノン系吸収剤、アゾ系吸収剤、ジインモニウム塩などを用いることが出来る。
また、800nm〜1200nmの波長を有するレーザー光を発するレーザー光源を用いる場合には、例えば、米国Gentex社製から商品名「Clearweld」として市販の光吸収剤を用いることが出来る。
【0054】
これらの吸収剤は有機溶媒などで希釈して、塗布部29で塗布させることができ、該塗布部29としては、例えば、ディスペンサー、インクジェットプリンター、スクリーン印刷機、2流体式、1流体式又は超音波式スプレー、スタンパー、コーターなどの一般的な塗布装置を採用することができる。
【0055】
配置調整部31は、第1の保持部22に保持された旧原反フィルム1aの末端部1aaと、第2の保持部25に保持され光吸収剤が塗布された新原反フィルム1bの先端部1baと、がステージ26上で光吸収剤を挟んで重ね合わさるように新旧原反フィルム1a、1bの配置を調整するためのものであり、ここでは、第2の保持部25及びステージ26を、第2の保持部25がステージ26を挟んで第1の保持部22と隣接する位置に向かって移動するように構成されている。また、図1の破線で示す部分が第1の保持部と共に移動するように構成されている。なお、本発明においては、上記末端部1aa及び先端部1baを重ね合わせ可能に構成されていれば、第1の保持部22のみが移動するように構成されていてもよく、第1の保持部22と第2の保持部25及びステージ26との両方が移動するように構成されていてもよい。
【0056】
アキュムレータ32は、上流側から搬入される旧原反フィルム1aを蓄積し且つ蓄積した旧原反フィルム1aを下流側に搬出することにより、旧原反フィルム1aの搬入速度と搬出速度とを異ならしめるように構成されており、上流側において旧原反フィルム1aの搬送が停止しても、後段の処理工程(処理装置)への旧原反フィルム1aの搬送を継続し得るように、旧原反フィルム1aを蓄積できるようになっている。かかるアキュムレータ32は、図1に示すように第1の保持部22の下流側(図1の左側)に配置されており、図2に示すように旧原反フィルム1aが架け渡される第1ローラ33、第2ローラ34、第3ローラ35、第4ローラ36及び第5ローラ37を有している。
【0057】
これらローラのうち、第1ローラ33、第2ローラ34及び第3ローラ35は固定配置されている。また、第4ローラ36は、第1ローラ33及び第2ローラ34の間の下方において、上下方向に移動可能に配置され、第5ローラ37は、第2ローラ34及び第3ローラ35の間の下方において、上下方向に移動可能に配置されている。
【0058】
かかる第4及び第5ローラ36、37は、最下方のホームポジションに配置され、これにより、旧原反フィルム1aはアキュムレータ32に蓄積されるようになっている。そして、図2に示すように、アキュムレータ32の上流側において旧原反フィルム1aの搬送が停止すると、かかる停止に合わせて第4及び第5ローラ36、37は上方に移動し、後段の処理工程への旧原反フィルム1aの搬送を継続し得るようになっている。また、後述するように旧原反フィルム1aと新原反フィルム1bとが接合され、旧原反フィルム1aに続いて新原反フィルム1bが搬送されると、第4及び第5ローラ36、37がホームポジションへと下方に移動し、旧原反フィルム1aに続いて新原反フィルム1bがアキュムレータ32に蓄積されるようになっている。
【0059】
また、第4及び第5ローラ36、37の上方への移動速度及び移動距離は、上記した旧原反フィルム1aの搬送停止から、新旧原反フィルム1a、1bの接合後、新旧原反フィルム1a、1bの搬送が開始されるまでの間、旧原反フィルム1aが後段の処理工程に搬送されるような速度及び距離に応じて設定されている。また、第4及び第5ローラ36、37の下方への移動速度は、後段の処理工程への新旧原反フィルム1a、1bの搬送を妨げないような速度に設定されている。
【0060】
なお、アキュムレータ32に設けられるローラの数量や配置等は、後段の処理工程への旧原反フィルム1aの上記搬送の継続が可能であれば特に限定されるものではない。また、ここでは、第1ローラ33の上流側(図2の右側)に、旧原反フィルム1aの搬送をガイドするローラ対38が配置されているが、かかるローラ対38を設けない構成とすることも、必要に応じて複数のローラ対を設ける構成とすることもできる。
【0061】
次に、上記した接合装置100によるシート接合体の製造方法について説明する。
【0062】
旧原反フィルム1aが、第1の送り出し部21から送り出され、アキュムレータ32を通過しつつ、後段の処理工程へと搬送されており、この状態で、旧原反フィルム1aと新原反フィルム1bとを接合することとする。まず、第2の送り出し部24から第2の保持部25に向かって新原反フィルム1bが送り出される。送り出された新原反フィルム1bの先端部1baが第2の保持部25及びステージ26の上方に配置されると、新原反フィルム1bの送り出しが停止し、かかる停止に合わせて上記第2の吸引部材が作動して、図3に示すように、先端部1baが第2の保持部25に保持される(第1の工程)。また、図4に示すように、ステージ26上の先端部1baの上面に、塗布部29(図1参照)により光吸収剤が塗布される(第2の工程)。
【0063】
次に、図5に示すように、アキュムレータ32の上流側において旧原反フィルム1aの送り出しが停止し、かかる停止に合わせて、前述した図2に示すように第4及び第5ローラ36、37が上方に移動して後段の処理工程への旧原反フィルム1aの搬送を継続しつつ、図6に示すように、上記第1の吸引部材が作動して旧原反フィルム1aが第1の保持部22に保持される(第3の工程)。
【0064】
また、図6に示すように、第1の保持部22に保持された旧原反フィルム1aは切断部23により、旧原反フィルム1aにおける第1の保持部22に保持された部分の上流側(図6の右側)において新原反フィルム1bの先端部1baと重なり合う部分を残して切断され、かかる切断により、旧原反フィルム1aは、処理工程に搬送されて処理される旧原反フィルム1aの末端部1aaと、処理されない不要部とが形成される(第4の工程)。
【0065】
かかる切断後、第1の送り出し部21が逆方向に回転し、旧原反フィルム1aにおける上記不要部が巻き取られて回収される(第8の工程)。
【0066】
上記切断後、図7に示すように、配置調整部31(図1参照)により、新原反フィルム1bの先端部1baが保持された第2の保持部25及びステージ26が移動して、これらが、ステージ26を挟んで第2の保持部25が第1の保持部22と隣接する位置に配置され、ステージ26上において末端部1aaと先端部1baとが光吸収剤を挟んで重ね合わせられる(第5の工程)。
【0067】
次に、図8に示すように、ステージ26上で重ね合わされた末端部1aaと先端部1baが、加圧部28によって上方からステージ26に対して加圧され、図9に示すように、レーザー光照射部27(図1参照)によってレーザー光Rが、末端部1aaと先端部1baとの重ね合わせ部分に対して加圧部28の上方から照射されて、末端部1aaと先端部1baとがレーザー溶着により接合される(第6の工程)。
【0068】
そして、かかるレーザー溶着後、図10に示すように、加圧部28が上昇し、該加圧部28による末端部1aa及び先端部1baの加圧が解除され、上記した第1及び第2吸引部材の作動が停止して、第1及び第2の保持部22、25による末端部1aa及び先端部1baの保持が解除され、図11に示すように、旧原反フィルム1aに続いて新原反フィルム1bが搬送される(第7の工程)。このとき、配置可変部41(図1参照)によって、旧原反フィルム1aと新原反フィルム1bとの配置が入れ替えられる。また、新旧原反フィルム1a、1bの搬送開始に合わせて、第4及び第5ローラ36、37(図1参照)が下方に移動して、旧原反フィルム1aに続いて新原反フィルム1bがアキュムレータ32に蓄積される。
【0069】
上記したように、旧原反フィルム1aの末端部1aaと新原反フィルム1bの先端部1baとが接合されてシート接合体が作製されることにより、両フィルムの接合に際して後段の処理工程への旧原反フィルム1aの搬送が停止することを回避できる。そして、旧原反フィルム1aに引き続いて新原反フィルム1bが連続して搬送されて、処理される。また、このように新旧原反フィルム1a、1bの接合を繰り返すことによって、2つ以上の原反フィルム1を順次連続して接合し、後段の処理工程に搬送することができる。
【0070】
なお、配置可変部41(図1参照)によって下方に移動した旧原反フィルム1aを取り外し、新原反フィルム1bの次の原反フィルムを装着することによって、順次連続して原反フィルムを接合することができる。
【0071】
なお、ここでは詳述しないが、上記した接合装置100には、一般的なレーザー溶着装置ならびにその周辺機器において利用されている種々の機構を採用することができる。また、上記実施形態では、旧原反フィルム1aを切断した後、旧原反フィルム1aと新原反フィルム1bとを接合したが、その他例えば、図12に示すように旧原反フィルム1aと、新原反フィルム1bの先端部の一部と、を重ね合わせて切断した後、かかる切断によって形成された旧原反フィルム1aの後端部1aaと新原反フィルム1baの先端部とを接合することもできる。
【0072】
具体的には、旧原反フィルム1aの搬送中に新原反フィルム1bを送り出してその先端部の長手方向における一部を第2の保持部25で保持し、先端部の上面に光吸収剤を塗布する(図12(a))。また、旧原反フィルム1aの送り出しを停止すると共にアキュムレータ32を作動させ(図2参照)、旧原反フィルム1aを新原反フィルム1bの上方から重ね合わせるようにして第1の保持部22で保持する(図12(b))。次に、切断部23の受け部23bを上昇させ、切断部23によって新旧原反フィルム1a、1bを切断することにより(図12(c))、旧原反フィルム1aの末端部1aaと新原反フィルム1bの先端部1baを形成する。
【0073】
また、切断によって発生した両フィルムの不要部を回収すると共に、受け部23bを下降させる(図12(d))。そして、配置調整部31(図12では図示せず)により第2の保持部25を第1の保持部22に接近させることにより(図12(e))、新原反フィルム1bの先端部1baにおいて光吸収剤が塗布された上面に旧原反フィルム1aの末端部1aaを重ね合わせた後、ステージ26を上昇させると共に加圧部28を下降させ(図12(f))、加圧部28によって末端部1aaと先端部1baとの重ね合わせ部分をステージ26に押圧しながら該重ね合わせ部分にレーザー光を照射して、末端部1aaと先端部1baとを接合する。その後、前述した図10及び図11に示すように、末端部1aa及び先端部の加圧及び保持を解除することにより、旧原反フィルム1aに引き続いて新原反フィルム1bを搬送させることができる。
【0074】
また、上記接合装置100によって作製されたシート接合体(旧原反フィルム1a及び新原反フィルム1b)が搬送される後段の処理工程としては、薬液処理や延伸処理等を挙げることができる。また、例えば原反フィルム1として、偏光フィルムを作製するためのポリビニルアルコール系樹脂フィルムを用いた場合、図13に示すような延伸装置(処理装置)50を用いた延伸処理工程を挙げることができる。尚、図13においては、レーザー溶着によって接合された部分(溶着部)を黒塗り部30で示している。
【0075】
図13に示すように、偏光フィルムを製造するための延伸装置50には、接合装置100から搬送された旧原反フィルム1a及び新原反フィルム1b(原反フィルム1)を所定の薬液に浸漬するための複数の浸漬浴4と、該浸漬浴4内に原反フィルム1を通すように、原反フィルム1の移動経路を規制する複数のローラ9と、該移動経路中にて原反フィルム1を延伸する延伸手段と、複数の浸漬浴4に浸漬され且つ延伸されたフィルムを偏光フィルムとしてロール状に巻き取る偏光フィルム巻取部10とが備えられている。
【0076】
また、浸漬浴4の下流側で且つ巻取部10の上流側には、フィルムに付着した洗浄液を乾燥させる乾燥装置11、具体的には乾燥オーブンが備えられている。更に、ロール状に巻回された表面保護フィルム(例えば、トリアセチルセルロースフィルムやシクロオレフィンポリマーフィルム)等の積層用フィルム12が前記乾燥装置11で乾燥されたフィルムの両面側にそれぞれ配されており、乾燥後のフィルムの両面に積層用フィルム12を積層させるためのラミネート装置が備えられている。
【0077】
かかる延伸装置50により、原反フィルム1の累積した総延伸倍率が2〜8倍となるようにその長さ方向に延伸するようになっており、好ましくは5.25〜8倍となるようにその長さ方向に延伸することによって、得られた偏光フィルムに優れた偏光機能を付与することができる。
【0078】
本実施形態のシート接合体の製造方法及びシート接合体の製造装置は、以上の通りであるが、本発明は本実施形態に限定されず本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。
【実施例】
【0079】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
下記の樹脂シート部材、条件を使用した。
・原反フィルム:トリアセチルセルロース樹脂(TAC)フィルム((株)富士フィルム社製、厚み80μm、巾1,330mm)
・重ね合わせ幅:1.5mm巾
・加熱溶融接合手段:レーザー
・レーザー:半導体レーザー(波長940nm、パワー80W、スポット径2mmφ、
パワー密度2,547W/cm2、走査速度70mm/sec、積算照射 量 102J/cm2、トップハットビーム)
・光吸収剤:商品名「Clearweld LD120C」(米国ジェンテックス社製、
波長940nmの光の吸収率30%、溶媒アセトン)、下側に配した新原 反フィルムの上面に5.0mm巾で10nL/mm2塗布
・加圧部材:溶融石英ガラスの平板(15mm厚)
・加圧条件:原反フィルム重ね合わせ部へ加重50kgf/cm2で押し付け
【0081】
上記した旧TACフィルムを、搬送速度30m/分、張力300Nで搬送し、延伸装置のケン化浴槽に搬送した。かかる旧TACフィルムの搬送中において、上記各条件を用いて前述した図3〜11に示すように旧TACフィルムと新TACフィルムとを接合し、旧TACフィルムに続いて新TACフィルムをケン化浴槽に搬送させてこれを通過させた。
その結果、アキュムレータ32の上流側で旧TCAフィルムの搬送を停止し、新旧TACフィルムを接合している間、旧TACフィルムのケン化浴槽への搬送は良好であり、接合後、新旧TCAフィルムの搬送を開始した後においても、新旧TACフィルムのケン化浴槽への搬送は良好であった。また、ケン化浴槽の通過後、旧TACフィルムと新TACフィルムとの間に破断は認められず、その接合性は良好であった。
【0082】
(実施例2)
新旧の樹脂シート部材として、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)フィルム((株)クラレ社製、厚み75μm、巾3,000mm)を用い、図13に示すような延伸装置において延伸倍率が、膨潤浴では2.6倍、染色浴では3.4倍、架橋浴では3.6倍、延伸浴では6.0倍となるように延伸した後、洗浄浴を通過させたこと以外は実施例1と同様にして、旧PVAフィルムと新PVAフィルムとを接合し、旧PVAフィルムに引き続いて新PVAフィルムを延伸させた。
その結果、新旧PVAフィルムを接合している間、旧PVAフィルムの延伸装置への搬送は良好であり、接合後、新旧PVAフィルムの搬送を開始した後においても、新旧PVAフィルムの延伸装置への搬送は良好であった。また、延伸装置において各薬液槽を通過して延伸された後、旧PVAフィルムと新PVAフィルムとの間に破断は認められず、その接合性は良好であった。さらに、延伸倍率6.0倍の延伸においても破断は認められず、延伸性も良好であった。
【0083】
(比較例1)
接合手段として感圧型接着剤(アクリル系粘着剤;日東電工製、No.5000NS 160μm厚)を用い、該アクリル系粘着剤を新PVAフィルムの先端部の上面に貼付して、かかる先端部と旧PVAフィルムの末端部とを接合したこと以外は実施例2と同様にして、新旧PVAフィルムを延伸させた。
その結果、新旧PVAフィルムを接合している間、旧PVAフィルムの延伸装置への搬送は良好であり、接合後、新旧PVAフィルムの搬送を開始した後においても、新旧PVAフィルムの延伸装置への搬送は良好であった。しかし、延伸浴槽において、旧PVAフィルムと新PVAフィルムとの間に破断は認められた。
【0084】
(比較例2)
新PVAフィルムの先端部と旧PVAフィルムの末端部とをヒートシーラー(ニクロム線3mm巾、温度200℃、10秒)で接合したこと以外は実施例2と同様にして、新旧PVAフィルムを延伸させた。
その結果、新旧PVAフィルムを接合している間、旧PVAフィルムの延伸装置への搬送は良好であり、接合後、新旧PVAフィルムの搬送を開始した後においても、新旧PVAフィルムの延伸装置への搬送は良好であった。しかし、延伸倍率4倍の延伸時に、破断が生じたため、偏光フィルムを得るうえで目標とする延伸倍率5.25倍まで延伸することができなかった。
【符号の説明】
【0085】
1:原反フィルム(樹脂シート部材)、1a:旧原反フィルム(第1の樹脂シート部材)、1aa:末端部、1b:新原反フィルム(第2の樹脂シート部材)、1ba:先端部、21:第1の送り出し部(送り出し部)、22、第1の保持部、23、切断部、24:第2の送り出し部、25:第2の保持部、26:ステージ、27:レーザー光照射部、28:加圧部、29:塗布部、31:配置調整部、32:アキュムレータ(シート蓄積部)、33:第1ローラ、34:第2ローラ、35、第3ローラ、36:第4ローラ、37:第5ローラ、100:接合装置(製造装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の帯状の樹脂シート部材のうち先行して処理領域へと搬送される第1の樹脂シート部材と、次の第2の樹脂シート部材とを接合してシート接合体を作製するシート接合体の製造方法であって、
前記第2の樹脂シート部材の先端部を保持する第1の工程と、
該第1の工程で保持された前記先端部に光吸収剤を塗布する第2の工程と、
上流側から搬入される前記第1の樹脂シート部材を蓄積し且つ蓄積した前記第1の樹脂シート部材を下流側に搬出することにより、前記第1の樹脂シート部材の搬入速度と搬出速度とを異ならしめるように構成されたシート蓄積部を介して前記第1の樹脂シート部材を前記処理領域へと搬送し、前記シート蓄積部の下流側では前記第1の樹脂シート部材の搬送を継続しつつ、上流側では前記第1の樹脂シート部材の搬送を停止すると共に前記第1の樹脂シート部材を保持する第3の工程と、
該第3の工程で保持された前記第1の樹脂シート部材を、保持された部分が末端部を構成するように切断する第4の工程と、
前記先端部と前記末端部とを前記光吸収剤を挟んで重ね合わせる第5の工程と、
該第5の工程で重ね合わされた前記先端部及び末端部を加圧しつつレーザー溶着することによって接合する第6の工程と、
前記先端部及び末端部への加圧と、前記先端部及び末端部の保持とを解除して前記第1の樹脂シート部材に続いて前記第2の樹脂シート部材を前記処理領域へと搬送する第7の工程と、
を有することを特徴とするシート接合体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の樹脂シート部材において前記第4の工程での切断によって生成された不要部を巻き取ることによって、該不要部を回収する第8の工程を有することを特徴とする請求項1に記載のシート接合体の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂シート部材は、熱可塑性樹脂フィルムの単層であることを特徴とする請求項1または2に記載のシート接合体の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂シート部材は、偏光フィルムを作製するためのポリビニルアルコール系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシート接合体の製造方法。
【請求項5】
2以上の帯状の樹脂シート部材のうち先行して処理領域へと搬送される第1の樹脂シート部材と、次の第2の樹脂シート部材とを接合してシート接合体を作製するシート接合体の製造装置であって、
上流側から搬入される前記第1の樹脂シート部材を蓄積し且つ蓄積した前記第1の樹脂シート部材を下流側に搬出することにより、前記第1の樹脂シート部材の搬入速度と搬出速度とを異ならしめるように構成されており、下流側においては前記処理領域への前記第1の樹脂シートの搬送を継続しつつ、上流側においては前記第1の樹脂シートの搬送の停止を可能とするシート蓄積部と、
前記シート蓄積部よりも上流側に配置され、前記第1の樹脂シート部材の搬送停止に合わせて前記第1の樹脂シート部材を保持する第1の保持部と、
前記第1の樹脂シート部材を、前記第1の保持部に保持された部分が末端部を構成するように切断する切断部と、
前記第2の樹脂シート部材の先端部を保持する第2の保持部と、
前記第2の保持部に保持された先端部に光吸収剤を塗布する塗布部と、
前記先端部及び前記末端部の配置を、該先端部及び末端部が前記光吸収剤を挟んで重ね合わせられるように調整する配置調整部と、
前記先端部及び末端部の重ね合わせ部分を加圧する加圧部と、
前記加圧部によって加圧された前記重ね合わせ部分にレーザー光を照射して、前記先端部と前記末端部とをレーザー溶着により接合するレーザー光照射部と、
を備え、
前記加圧部による前記先端部及び末端部への加圧と、前記先端部及び末端部の保持とを解除することにより前記第1の樹脂シート部材に続いて前記第2の樹脂シート部材が前記処理領域へと搬送されるように構成されていることを特徴とするシート接合体の製造装置。
【請求項6】
前記第1の樹脂シート部材は、該第1の樹脂シート部材を巻き取り可能な送り出し部に装着されており、該送り出し部が、前記第1の樹脂シート部材において前記切断部による切断によって生成された不要部を巻き取ることによって、該不要部を回収するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載のシート接合体の製造装置。
【請求項7】
前記樹脂シート部材は、熱可塑性樹脂フィルムの単層であることを特徴とする請求項5または6に記載のシート接合体の製造装置。
【請求項8】
前記樹脂シート部材は、偏光フィルムを作製するためのポリビニルアルコール系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のシート接合体の製造装置。
【請求項1】
2以上の帯状の樹脂シート部材のうち先行して処理領域へと搬送される第1の樹脂シート部材と、次の第2の樹脂シート部材とを接合してシート接合体を作製するシート接合体の製造方法であって、
前記第2の樹脂シート部材の先端部を保持する第1の工程と、
該第1の工程で保持された前記先端部に光吸収剤を塗布する第2の工程と、
上流側から搬入される前記第1の樹脂シート部材を蓄積し且つ蓄積した前記第1の樹脂シート部材を下流側に搬出することにより、前記第1の樹脂シート部材の搬入速度と搬出速度とを異ならしめるように構成されたシート蓄積部を介して前記第1の樹脂シート部材を前記処理領域へと搬送し、前記シート蓄積部の下流側では前記第1の樹脂シート部材の搬送を継続しつつ、上流側では前記第1の樹脂シート部材の搬送を停止すると共に前記第1の樹脂シート部材を保持する第3の工程と、
該第3の工程で保持された前記第1の樹脂シート部材を、保持された部分が末端部を構成するように切断する第4の工程と、
前記先端部と前記末端部とを前記光吸収剤を挟んで重ね合わせる第5の工程と、
該第5の工程で重ね合わされた前記先端部及び末端部を加圧しつつレーザー溶着することによって接合する第6の工程と、
前記先端部及び末端部への加圧と、前記先端部及び末端部の保持とを解除して前記第1の樹脂シート部材に続いて前記第2の樹脂シート部材を前記処理領域へと搬送する第7の工程と、
を有することを特徴とするシート接合体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の樹脂シート部材において前記第4の工程での切断によって生成された不要部を巻き取ることによって、該不要部を回収する第8の工程を有することを特徴とする請求項1に記載のシート接合体の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂シート部材は、熱可塑性樹脂フィルムの単層であることを特徴とする請求項1または2に記載のシート接合体の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂シート部材は、偏光フィルムを作製するためのポリビニルアルコール系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシート接合体の製造方法。
【請求項5】
2以上の帯状の樹脂シート部材のうち先行して処理領域へと搬送される第1の樹脂シート部材と、次の第2の樹脂シート部材とを接合してシート接合体を作製するシート接合体の製造装置であって、
上流側から搬入される前記第1の樹脂シート部材を蓄積し且つ蓄積した前記第1の樹脂シート部材を下流側に搬出することにより、前記第1の樹脂シート部材の搬入速度と搬出速度とを異ならしめるように構成されており、下流側においては前記処理領域への前記第1の樹脂シートの搬送を継続しつつ、上流側においては前記第1の樹脂シートの搬送の停止を可能とするシート蓄積部と、
前記シート蓄積部よりも上流側に配置され、前記第1の樹脂シート部材の搬送停止に合わせて前記第1の樹脂シート部材を保持する第1の保持部と、
前記第1の樹脂シート部材を、前記第1の保持部に保持された部分が末端部を構成するように切断する切断部と、
前記第2の樹脂シート部材の先端部を保持する第2の保持部と、
前記第2の保持部に保持された先端部に光吸収剤を塗布する塗布部と、
前記先端部及び前記末端部の配置を、該先端部及び末端部が前記光吸収剤を挟んで重ね合わせられるように調整する配置調整部と、
前記先端部及び末端部の重ね合わせ部分を加圧する加圧部と、
前記加圧部によって加圧された前記重ね合わせ部分にレーザー光を照射して、前記先端部と前記末端部とをレーザー溶着により接合するレーザー光照射部と、
を備え、
前記加圧部による前記先端部及び末端部への加圧と、前記先端部及び末端部の保持とを解除することにより前記第1の樹脂シート部材に続いて前記第2の樹脂シート部材が前記処理領域へと搬送されるように構成されていることを特徴とするシート接合体の製造装置。
【請求項6】
前記第1の樹脂シート部材は、該第1の樹脂シート部材を巻き取り可能な送り出し部に装着されており、該送り出し部が、前記第1の樹脂シート部材において前記切断部による切断によって生成された不要部を巻き取ることによって、該不要部を回収するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載のシート接合体の製造装置。
【請求項7】
前記樹脂シート部材は、熱可塑性樹脂フィルムの単層であることを特徴とする請求項5または6に記載のシート接合体の製造装置。
【請求項8】
前記樹脂シート部材は、偏光フィルムを作製するためのポリビニルアルコール系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のシート接合体の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−62187(P2012−62187A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209801(P2010−209801)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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