説明

シート支持構造

【課題】コンバイン等のシート支持構造において、簡単な構成であり、工具などを必要とせずに簡単に位置調整をすることができ、運転者が小柄な人などの場合でも、良好な操作性が得られるようにするとともにシートの座り心地を改善する。
【解決手段】ボンネット20上に、回動軸22にて回動自在にシート21の前部を支持する前支持部23と、ボンネット20のシート載置面20a及びシート下面21aの間に介在する支持部材34によりシート21の後部を支持する後支持部33とによりシート21を支持するシート支持構造において、シート21を、「後位置」と、該「後位置」よりも前記回動軸22の高さ位置を低くする「前位置」とに調節可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに用いて好適な運転用のシートの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンバイン等の作業車両における運転用のシートにおいては、前後方向の取付け位置を変更することや、レール等を介して前後方向にスライド可能な構成とすること等により、シートの前後方向の位置調節を可能としたものがある。また、特許文献1においては、このような前後方向にのみ調節可能な構成では、身長・体形に応じた最適運転姿勢で操縦することが困難であること等に鑑み、前後方向の位置調節に加え、上下方向の位置調整を可能としたものが示されている。
【特許文献1】特許第3157398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に示されている構造においては、シートの位置調節を行う際、ボルトを緩めたり締めたりするための工具が必要であり、また、シートの後部を支持する台座を、シートの前部高さ位置に対応させて交換する必要がある。このため、シートの位置調節を行う際の作業が複雑であり、また、シート位置に対応して交換するための部材を別途用意する必要があることから部品点数が多くなったり、その部品を収納または保管する場所が必要となったりしていた。
【0004】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、簡単な構成であり、工具などを必要とせずに簡単に位置調整をすることができ、運転者が小柄な人などの場合でも、良好な操作性が得られるとともにシートの座り心地を改善することができるシート支持構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、載置台上に、回動軸にて回動自在にシートの前部を支持する前支持部と、前記載置台のシート載置面及びシートの下面の間に介在する支持部材によりシートの後部を支持する後支持部とによりシートを支持するシート支持構造において、シートを、「後位置」と、該「後位置」よりも前記回動軸の高さ位置を低くする「前位置」とに調節可能としたものである。
【0007】
請求項2においては、前記前支持部は、シートの下面に取り付けられシートの前部を支持する支持片を有するシート側ブラケットと、前記載置台の前上部に固設され前記シート載置面よりも低位置となる支持面を形成する載置台側ブラケットと、前記シート側ブラケットに回動自在に支持され前記回動軸を構成するとともに前記載置台側ブラケットに対して回動自在に支持される回動アームと、を有するものである。
【0008】
請求項3においては、前記載置台上に、前記支持片に当接することにより、シートの着座状態での「後位置」から「前位置」への移動を規制する邪魔板を設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、シートを「後位置」から「前位置」に調節することにより、シートが前方に移動するとともに前傾するので、運転者が小柄な人などの場合でも、良好な操作性・足つき性が得られるとともにシートの座り心地を改善することができる。
【0011】
請求項2においては、簡単な構成により、シートの前後方向及びこれにともなうシートの傾きの変更を行うことが可能となる。また、シートの位置調節に際して工具などを必要としないことから、簡単な操作によりシートの位置調節を行うことができる。
【0012】
請求項3においては、「後位置」にある状態のシートが、運転者やシート自体の慣性などにより不用意に「前位置」に移動されることを防止でき、シートの安定した支持が可能になるとともに安全性の向上が図れる。また、邪魔板を、後方に下る斜面部を有する構成とすることにより、シートの位置調整をスムーズかつ確実に行うことが可能となり、シートの位置調節の際に良好な作業性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明のシート支持構造における「後位置」の状態を示す側面図、図2は同じく正面図、図3は同じく斜視図、図4は本発明のシート支持構造における「前位置」の状態を示す側面図、図5は同じく斜視図、図6は前支持部を示す拡大側面図であり、(a)は「後位置」の状態を示す図、(b)は「前位置」の状態を示す図、図7は邪魔板を示す斜視図、図8は「後位置」の状態における前支持部を示す拡大一部断面側面図、図9は本発明に係るコンバインの全体構成を示す側面図、図10は同じく平面図、図11は刈取部の前処理機構の支持構造を示す平面図、図12は刈取部の前処理機構のスライド構造を示す平面図、図13は引起し装置の駆動系を示す正面図、図14は揺動伝動ケースの固定機構を示す平面図、図15は同じく別構成を示す図、図16は従来の揺動伝動ケースを示す平面図である。
【0014】
まず、本発明のシート支持構造を適用するコンバインの全体構成について、図9及び図10を用いて説明する。本発明に係るコンバインにおいて、クローラ式走行装置1上には機体フレーム2が載置され、この機体フレーム2の前端には刈取部3が昇降可能に配設されている。この刈取部3の前端からは穀稈を分草するための分草板4が突出しており、この分草板4の後部には引起しケース5(引起し装置)が立設されている。そして、引起しケース5からはタイン6が突出しておいり、このタイン6の回転により穀稈を引き起し、前記分草板4後部に配設される刈刃7により穀稈の株元を刈り取る構成となっている。刈り取られた穀稈は、下部搬送装置8a、上部搬送装置8b、縦搬送装置8cにより後方へ搬送され、株元が縦搬送装置8cの上端からフィードチェーン9に受け継がれて脱穀部12内に搬送される。フィードチェーン9の後端には排藁チェーン10が配設されており、この排藁チェーン10の後部下方には排藁カッター装置、拡散コンベア等からなる排藁処理部11が形成されている。この排藁処理部11により、排藁を切断して藁片にした後、拡散しながら圃場に均一放出、あるいは切断せずに放出するようにしている。
【0015】
前記脱穀部12の下方には選別部が配設されており、この選別部によって脱穀部12から流下する穀粒や藁屑などから穀粒を選別し、選別後の穀粒を脱穀部12の側方に配設されるグレンタンク13に搬送して貯溜したり、藁屑などを機外に排出したりするようにしている。このグレンタンク13後方には穀粒排出装置15が構成されて縦排出オーガ17が立設されている。この縦排出オーガ17を中心にしてグレンタンク13が側方へ回動可能とされており、機体内部側に配置される駆動系や油圧系のメンテナンスが容易に行われるようになっている。グレンタンク13の底部には排出コンベア(図示せず)が前後方向に配設されており、この排出コンベアから前記穀粒排出装置15に動力を伝達することで、穀粒排出装置15に設けられた排出口19から外部へグレンタンク13内の穀粒を排出できるようにしている。前記穀粒排出装置15は、主に、下端が前記排出コンベアと連通され穀粒を縦送りする前記縦排出オーガ17と、この縦排出オーガ17の上端に連通されて穀粒を横送りする横排出オーガ18とからなり、グレンタンク13の後側に立設された縦排出オーガ17の上端に、横排出オーガ18の基端側が上下回動可能に枢着されている。
【0016】
また、グレンタンク13の前方には運転部14が構成されており、この運転部14においては、操向ハンドル16、走行変速レバー、刈取クラッチレバー、脱穀クラッチレバー等が配設されるとともに、ボンネット20の上面にシート21が載置支持されている。なお、本実施形態においては、エンジンを収納するボンネット20上にシート21を配置しているが、シートの載置位置としてはボンネット20に限定されるものではない。
【0017】
次に、前記運転部14におけるシート21の支持構造について図1〜図8用いて説明する。本発明に係るシート支持構造は、載置台としての前記ボンネット20上に、左右方向の回動軸22にて回動自在にシート21の前部を支持する前支持部23と、ボンネット20のシート載置面20a及びシート21の下面21a(以下、「シート下面21a」という)の間に介在する支持部材34によりシート21の後部を支持する後支持部33とによりシート21を支持する。そして、シート21を、「後位置」(図1〜図3及び図8参照)と、この「後位置」よりも回動軸22の高さ位置を低くする「前位置」(図4及び図5参照)とに調節可能としている。
【0018】
すなわち、シート21は、「後位置」から「前位置」に調節されることにより、シート21の前後方向の位置が前方に移動するとともに、シート21の前部を支持する回動軸22が下方に移動することとなる。この回動軸22の下方への移動により、「前位置」におけるシート21は「後位置」におけるシート21よりも前傾することとなる。
【0019】
これにより、例えば、運転者が女性などのように比較的小柄な人の場合、シート21が「後位置」にある状態では、運転部14において操向ハンドル16の下方に配設されるブレーキペダル等を操作する際などに、シート21の腰掛部21bの先端からの圧迫感をふともも裏に感じることがあるが、前述のごとくシート21を「前位置」に調節することにより、シート21が前方に移動するとともに前傾するので、ふともも裏の圧迫感を解消することができる。また、運転者がシート21に着席した状態での視界性が向上する。シート21を「後位置」から「前位置」に調節することにより、シート21が前方に移動するとともに前傾するので、運転者が小柄な人などの場合でも、良好な操作性・足つき性が得られるとともにシート21の座り心地を改善することができる。
【0020】
以下、シート21の支持構造について図1〜図8を用いて具体的に説明する。前述したように、シート21は、前支持部23と後支持部33とにより前後方向二箇所で支持されており、まず、前支持部23について説明する。前支持部23は、シート下面21aに取り付けられシート21の前部を支持する支持片24aを有するシート側ブラケット24と、ボンネット20の前上部に固設されシート載置面20aよりも低位置となる支持面25aを形成する載置台側ブラケット25と、前記シート側ブラケット24に回動自在に支持され前記回動軸22を構成するとともに載置台側ブラケット25に対して回動自在に支持される回動アーム26とを有する。
【0021】
前記シート側ブラケット24は、両側部24b・24bを水平部24cに対して略直角に折り曲げられて略逆U字状に形成される板状部材であり、正面視で門状となるようにシート下面21aの前部に固設される。このシート側ブラケット24のシート下面21aに対する固定は、接合部材27・27を介して行われる。すなわち、接合部材27は、シート側ブラケット24が正面視で門状となる状態で、シート側ブラケット24の側部24bの外側面とシート下面21aとに固着されることにより、シート側ブラケット24をシート下面21aに対してその両側部24b・24bにて接合する。ここで、接合部材27は、シート側ブラケット24に対してはボルト28・28を用いたボルト締結により、シート下面21aに対しては溶接によりそれぞれ固着される。ただし、接合部材27の固着方法は本実施形態に限定されるものではなく、シート側ブラケット24及びシート下面21aそれぞれに対してボルト締結や溶接などを適宜用いることができ、さらに、接合部材27を用いることなく、シート側ブラケット24をシート下面21aに直接ボルト締結や溶接などにより固設することもできる。
【0022】
そして、シート側ブラケット24がシート下面21aに固設された状態で後側となる水平部24cの一側から、前記支持片24aが、水平部24cに対して前記側部24b・24bと同じ方向(略直角)に折り曲げられて形成されている。この支持片24aの先端(下端)は、シート載置面20aに当接した状態となる。すなわち、シート側ブラケット24に形成される支持片24aにより、シート21の前部が支持されている。このように、シート側ブラケット24の支持片24aがシート載置面20aに当接し、該シート載置面20a上にてシート21の前部が支持されている状態が、シート21が「後位置」にある状態となる。
【0023】
この「後位置」にあるシート21を「前位置」へと調節可能にすべく、前支持部23には、前記載置台側ブラケット25及び回動アーム26が設けられている。載置台側ブラケット25は、両側部25b・25bを底部25cに対して略直角方向に折り曲げられて略U字状に形成される板状部材であり、正面視で同じくU字状となるようにボンネット20の前上部に固設される。この載置台側ブラケット25のボンネット20に対する固定は、両側部25b・25b及び底部25cを介して行われる。すなわち、側部25bにおいては、その後面がボンネット20の前面20bに沿って当接するように形成されるとともに、上部にシート載置面20aに沿う延設部25dが後方に向けて形成されており、側部25bがボンネット20の前上角部の形状(本実施形態においては略直角形状)に沿うように形成されている。そして、前記延設部25dが溶接などによりシート載置面20aに対して固着されるとともに、前記溶接片25eが溶接によりボンネット20の前面20bに対して固着されることにより、載置台側ブラケット25の側部25bがボンネット20に固着される。また、底部25cにおいても同様に、ボンネット20の前面20bに沿うようにして形成される溶接片25fなどを介して溶接によりボンネット20の前面20bに固着される。ただし、載置台側ブラケット25のボンネット20に対する固着方法は本実施形態に限定されるものではなく、ボルト締結なども適宜用いることができる。
【0024】
そして、載置台側ブラケット25の底部25cに、前記支持面25aが形成される。支持面25aは、底部25cにおいて、門状に折曲げ形成される突部25g上に形成される。つまり、この突部25gは、支持面25aが正面視で前記シート側ブラケット24の支持片24aに対応するように(左右方向の幅が支持片24aと略同一となるように)形成される。なお、本実施形態においては、支持面25aを形成する突部25gを上方に突となるように形成しているが、下方に突となるように折り曲げて形成してもよく、また、突部25gを形成することなく(底部25cを折り曲げることなく)支持面25aを形成してもよい。このようにして載置台側ブラケット25に形成される支持面25aが、シート21の「前位置」の状態での支持面となる。つまり、シート21が「前位置」にある状態では、シート側ブラケット24の支持片24aの下端は載置台側ブラケット25の支持面25aに当接することとなる。
【0025】
また、前記回動アーム26は、シート21の前部における回動軸22を構成する水平軸部26aと、両端部が折り曲げられて形成され載置台側ブラケット25に対する回動軸となる枢軸部26b・26bとから正面視略ハット状(略門状)に形成される。回動アーム26の水平軸部26aは、シート側ブラケット24の水平部24cの下面に固設される支持板29により、シート側ブラケット24に対して回動自在に支持される。具体的には、支持板29には、該支持板29とシート側ブラケット24の水平部24cの下面との間に回動アーム26の水平軸部26aを抱え込む湾曲部29aが形成されており、この湾曲部29aにて水平軸部26aが支持されることにより、回動アーム26がシート側ブラケット24に対して回動自在に支持される。一方、回動アーム26の枢軸部26b・26bは、載置台側ブラケット25の両側部25b・25bそれぞれにおいて、内側から側部25bを貫通して外側に突出しており、この突出する部分に留めピン30が挿嵌されて側部25bに枢支されている。
【0026】
つまり、回動アーム26は、水平軸部26aによりシート21の回動軸22を構成するとともに、枢軸部26b・26bにより回動アーム26の載置台側ブラケット25(ボンネット20)に対する回動軸(以下、「枢支軸32」という。)を構成している(図1参照)。これら2つの回動軸は、シート21の前後方向に対して垂直方向であり互いに平行となる。すなわち、回動アーム26は、同一面内に所定距離離れた二つの回動支点を有し、この二つの回動支点の軸心が前後平行に配置される。
【0027】
以上のような構成の前支持部23により、回動軸22が前後方向に移動可能に構成される。また、前支持部23においては、シート側ブラケット24及び載置台側ブラケット25はそれぞれシート21に対して正面視で左右略対称となるように構成される。なお、本実施形態においては、シート側ブラケット24の両側部24b・24bが、載置台側ブラケット25の両側部25b・25bよりも内側となるように構成されているが、シート側ブラケット24の両側部24b・24bが載置台側ブラケット25の両側部25b・25bよりも外側となるように構成することもできる。
【0028】
前述したように、シート21の回動軸22を前後方向に移動可能に構成される前支持部23に対して、シート21の後部を支持する後支持部33は次のように構成される。すなわち、後支持部33においては、シート載置面20aとシート下面21aとの間に介在する支持部材34によりシート21が支持される。支持部材34は、前後方向略同一位置において左右二箇所シート21の中心に対して左右略対称に配置され、シート載置面20a上に固設される。支持部材34は、クッション性を有するゴム等の弾性素材により構成され略円筒状に形成されており、シート21における衝撃を吸収するように構成されている。なお、後支持部33を構成する支持部材34は、シート21側のシート下面21aに固設されてもよく、また、その形状や配置される個数についても本実施形態に限定されるものではない。
【0029】
以上のように構成される前支持部23及び後支持部33とによりシート21を支持するシート支持構造におけるシート21の位置調節について図6を用いて説明する。シート21が「後位置」にある状態(図6(a)参照)から、「前位置」(同図(b)参照)に調節する場合、シート21を持ち上げ前方に移動させることにより、前支持部23において、枢支軸32を中心としてシート側ブラケット24の支持片24aが載置台側ブラケット25の支持面25a上に当接する位置までシート21を回動させる。この際、回動アーム26が水平軸部26a及び枢軸部26b・26bそれぞれにて回動し、これにより、シート21の回動軸22は、枢支軸32を中心に回動することにより軌跡Lを描いて前方かつ下方へ移動することとなる。
【0030】
そして、後支持部33においては、支持部材34がシート載置面20aに固設されていることから、シート21の前方への移動にともない、シート21の「後位置」におけるシート下面21aのさらに後部に当接することとなり、この状態でシート21の後部を支持する。つまり、シート21を「前位置」に調節することにより、シート下面21aとシート載置面20aとの間隔を略一定に保持する支持部材34によってシート21の後部を支持する後支持部33に対して、前支持部23における回動軸22が下方に移動するので、シート21が前傾することとなる。
【0031】
逆に、シート21を「前位置」から「後位置」へ調節する場合は、前述した場合と同様に、シート21を持ち上げて後方に移動させることにより、回動アーム26を後方に回動させて枢支軸32を中心に回動軸22を回動させ、載置台側ブラケット25の支持面25a上に当接してシート21の前部を支持しているシート側ブラケット24の支持片24aを、シート載置面20a上に当接させシート21の前部を支持させる状態とする。
【0032】
以上のようにシート21の支持構造を構成することで、簡単な構成により、シート21の前後方向及びこれにともなうシート21の傾きの変更を行うことが可能となる。また、シート21の位置調節に際して工具などを必要としないことから、簡単な操作によりシート21の位置調節を行うことができる。
【0033】
また、前述の如く「後位置」と「前位置」とに調節可能なシート支持構造においては、コンバインの機体急停止時などに、「後位置」にある状態のシート21が、運転者やシート21自体の慣性などにより不用意に「前位置」に移動されることを防止するため、載置台としてのボンネット20上に、前記シート側ブラケット24の支持片24aに当接することにより、シート21の着座状態での「後位置」から「前位置」への移動を規制する邪魔板35が設けられている。
【0034】
前記のシート21の着座状態とは、シート21の「後位置」及び「前位置」において、運転者が着座している状態を指す。すなわち、邪魔板35は、シート21が「後位置」にある状態で、シート側ブラケット24の支持片24aに当接するとともに、「後位置」におけるシート21の着座状態から、「前位置」へ移動する際の支持片24aの軌道上に存在することにより、「後位置」でのシート21の着座状態における該シート21の支持状態を保持するように構成される。
【0035】
邪魔板35の構成としては、例えば、ボンネット20上にて板状の部材を垂直に立設させたり、ボンネット20上に突条を形成したりすること等が考えられるが、シート21の位置調節の際の作業性などの観点から、後方に下る傾斜面を有するように形成されることが好ましい。具体的には、図7及び図8に示すように、邪魔板35は、側面視で略へ字状に折曲げ形成される板状部材により構成され、ボンネット20上に設けられた状態で、後方に下る傾斜面となる斜面部(後斜面部35a)を有する。
【0036】
そして、邪魔板35は、載置台側ブラケット25の両側部25b・25b間であって、シート21が「後位置」にある状態でシート側ブラケット24の支持片24aの前方位置、即ちボンネット20の前上部に、その長手方向が機体左右方向に沿うように配置されて設けられる。この邪魔板35は、前記後斜面部35aと前斜面部35bとにより、前述の如く側面視で略へ字状に形成され、後斜面部35aには、邪魔板35をボンネット20に固定するための固着部35cが後方に向けて延設されている。つまり、この固着部35cが、ボンネット20のシート載置面20a上にスポット溶接などにより固着されることにより、邪魔板35がボンネット20上に固定される。ただし、邪魔板35のボンネット20に対する固着方法は本実施形態に限定されるものではなく、固着部35cを前斜面部35bに設けたり、固着部35cをボルト締結などにより固着したりしてもよい。
【0037】
このようにして、ボンネット20上に設けられる邪魔板35に対して、シート21が「後位置」にある状態でシート側ブラケット24の支持片24aが当接することにより、シート21の着座状態での「後位置」から「前位置」への移動が規制される。つまり、シート21が「後位置」にある状態においては、支持片24aが、邪魔板35における後斜面部35aの後端部にて固着部35c上に位置することにより、支持片24aが邪魔板35に当接した状態となり、シート21の着座状態での「後位置」から「前位置」への移動が規制される。
【0038】
このように、邪魔板35によりシート21の着座状態での「前位置」への移動が規制された「後位置」の状態から、シート21を「前位置」に調節する場合、前述の如くシート21を持ち上げ前方に移動する際、シート側ブラケット24の支持片24aが邪魔板35を乗り越えるように、シート21を持ち上げて前記回動軸22を中心として回動させるとともに、該回動軸22が前記枢支軸32を中心に回動するようにして、シート21を前側へと移動する。この際、邪魔板35の後部は後方に下る斜面である後斜面部35aにより構成されているため、支持片24aが邪魔板35に引っ掛かることなく、スムーズに調節することができる。
【0039】
また、シート21を「前位置」から「後位置」に調節する場合は、邪魔板35の後斜面部35aがガイド的な役割を果たし、シート21を、支持片24aの位置が邪魔板35の前斜面部35bよりも後方となる位置まで移動させると、そこからは支持片24aが後斜面部35aに沿うことによりシート21が後方に移動し、シート21の位置決めが行われるとともに「後位置」の状態にセットされる。これにより、シート21のスムーズかつ確実な位置調節が可能となる。
【0040】
なお、邪魔板35は、ボンネット20のシート載置面20aを上方に向けて突出させたり膨出させたりする等して、ボンネット20に直接形成することにより設けることもできる。また、図1〜図5においては、説明の便宜上、邪魔板35の図示を省略している。
【0041】
このように、シート21の載置台であるボンネット20上に邪魔板35を設けることにより、コンバインの機体急停止時などに、「後位置」にある状態のシート21が、運転者やシート21自体の慣性などにより不用意に「前位置」に移動されることを防止でき、シート21の安定した支持が可能になるとともに安全性の向上が図れる。また、邪魔板35を、後方に下る斜面部である後斜面部35aを有する構成とすることにより、シート21の位置調整をスムーズかつ確実に行うことが可能となり、シート21の位置調節の際に良好な作業性を得ることができる。
【0042】
ところで、コンバインにおける前記刈取部3は、4節リンクにより左右スライド可能に連結されている。この刈取部3について図11〜図13を用いて説明する。刈取部3の前方においては、未刈取穀稈を刈取部3内に掻き込んで刈り取り、前記搬送装置8a・8b・8cに搬送する前処理機構が構成されている。この前処理機構は、前記の分草板4、引起しケース5及び刈刃7、掻込みベルト40、掻込みホイル41等から構成され、刈取部3の下部にて横設される横伝動ケース42に一体的に支持されている。横伝動ケース42は、該横伝動ケース42と略平行に配置される横支持杆43の直前方において、その左右両端にて介設される4節リンクを構成する左右のスライドアーム44L・44Rを介して左右スライド可能に連結されている。
【0043】
また、刈取部3の最後部においては、右端部に刈取入力プーリ54aを有し機体フレーム2の前部右側に搭載されるエンジン(図示略)からの動力がミッションケース49等を介して伝達される刈取入力軸54が軸支される刈取入力ケース45が横設されている。この刈取入力ケース45の中途部からは、縦支持杆46が前方に突設されており、この縦支持杆46の先端に前記横支持杆43が固設されている。すなわち、刈取入力ケース45に固設される縦支持杆46及び該縦支持杆46に固設される横支持杆43に対して、横伝動ケース42及び前処理機構が一体的に左右スライドするように支持されている。
【0044】
前記スライドアーム44L・44Rは、その後端が横支持杆43の左右端部に左右回動自在に枢支されるとともに、前端が横伝動ケース42の左右端部に固設されるリンクブラケット47L・47Rにそれぞれ枢支されている。右側のスライドアーム44Rの先端には、左右2個の係止孔44a・44bが穿設されており、右側のリンクブラケット47Rには、スライド操作レバー48の下端部が挿嵌されるための挿嵌孔47aが穿設されている。そして、スライド操作レバー48が、挿嵌孔47aを介して係止孔44a・44bのいずれかに嵌入されることで、スライドアーム44L・44Rが左右の二位置に固定される。すなわち、スライド操作レバー48が上方に持ち上げられると、該スライド操作レバー48の下端部が係止孔44a・44bのいずれかから抜脱され、この状態で該スライド操作レバー48が左右に回動されると、前処理機構が左右に移動する構成となっている。なお、前記係止孔44a・44bは3個以上であってもよく、この係止孔の個数が、刈取部3における前処理機構が固定される位置の数となる。
【0045】
このような構成において、左右一側に固定されている前処理機構に対して、スライド操作レバー48を操作すると、4節リンクを構成するスライドアーム44L・44Rの固定が解除されるとともに前処理機構が移動され、該前処理機構が左右他側の固定位置に達した状態で、スライド操作レバー48を固定することにより前処理機構が固定される。
【0046】
このように構成される前処理機構においては、図12に示すように、刈取入力ケース45の中途部上端に、平面視略前後方向に設けられる揺動伝動ケース50の後端が枢支されている。揺動伝動ケース50は、刈取入力ケース45への枢支部を支点として左右回動自在となっている。この揺動伝動ケース50は、その中途部に摺動受けケース51が形成されており、該摺動受けケース51から前方に前部摺動ケース52が突設され、該前部摺動ケース52の後部が摺動受けケース51内にて摺動自在に軸支されている。また、前部摺動ケース52内においては、揺動伝動軸53が前後に摺動しないように、その前部が軸支されている。この揺動伝動軸53の後部は前部摺動ケース52よりも後方に突出しており、この突出する部分が揺動伝動ケース50内にて前後摺動自在に軸支されている。そして、揺動伝動軸53の後端部は、刈取入力ケース45内に軸支される刈取入力軸54にベベルギアを介して噛合しており、該揺動伝動軸53は、その後部に設けられるベベルギアに対して摺動自在に嵌合されている。これにより、揺動伝動軸53の摺動に対しても、該揺動伝動軸53と刈取入力軸54とのベベルギアの噛合は保持される。
【0047】
一方、前処理機構を支持する横伝動ケース42内には、横伝動軸55が軸支されており、この横伝動軸55の機体進行方向左端部においては、左側の引起しケース5の引越しチェーン56Lを駆動する左引起し伝動軸57が、横伝動軸55とベベルギアを介して噛合するとともに左引起し伝動ケース58に軸支され上方に突設されている。この突設される左引起し伝動軸57の上端部は、左側の引起しケース5の上部スプロケット軸59Lにベベルギアを介して噛合している。また、横伝動軸55の機体進行方向右端部は、刈取部3の右側端の上下中央付近に設けられる伝動ケース60より下方に垂設される右下方伝動ケース61内に軸支される右下方伝動軸62の下端とベベルギアを介して噛合している。この右下方伝動軸62の上端は、伝動ケース60内において、右上方伝動ケース63内にて軸支される右上方伝動軸64とギア噛合またはチェーン伝動などによって連動しており、右上方伝動軸64の動力が右下方伝動軸62に伝動される。この右上方伝動軸64の上端は、右側の引起しケース5内の上部スプロケット軸59Rにベベルギアを介して噛合している。
【0048】
そして、前部摺動ケース52の先端には、前処理機構の入力ケースであるベベルギアケース65が固設されており、このベベルギアケース65が右上方伝動ケース63の中途部にて回動自在に外嵌されている。この右上方伝動ケース63内においては、前部摺動ケース52より前方に突出する揺動伝動軸53が挿入され、この揺動伝動軸53がベベルギアを介して右上方伝動軸64に動力が伝達されるようになっている。
【0049】
つまり、前記刈取入力軸54の駆動力が、揺動伝動軸53を介して右上方伝動軸64を駆動し、直接的に右側の引起しケース5の引起しチェーン56Rを駆動する一方、右上方伝動軸64より伝動ケース60を介して右下方伝動軸62に伝動され、横伝動軸55を駆動し、さらに左引起し伝動軸57を介して左側の引起しケース5の引起しチェーン56Lを駆動している。
【0050】
このように構成される前処理機構の駆動系においては、前述した左引起し伝動ケース58、伝動ケース60、右下方伝動ケース61、右上方伝動ケース63が横伝動ケース42に対して固設されており、前処理機構の左右方向のスライドにともない一体的にスライドする。この際、揺動伝動ケース50も左右回動するが、この揺動伝動ケース50は、その前後長が4節リンクを構成する左右のスライドアーム44L・44Rよりも長いため、左右スライドにともなう前後変位量を左右のスライドアーム44L・44Rと同一とする必要がある。このため、左側スライド時には、前述したように、前部摺動ケース52及び揺動伝動軸53が揺動伝動ケース50に対して前方に摺動するように摺動可能に構成されており、刈取部3の前処理機構の左右スライドに追随できる構成となっている。
【0051】
このように、摺動可能に構成される揺動伝動ケース50及び前述した4節リンクによって左右スライド可能に構成される刈取部3においては、重量物となる引起しケース5等により構成される前処理機構が、その自重により前方が垂れる方向にたわむ現象(以下、「前垂れ」という)が生じることがある。
【0052】
この刈取部3における前垂れを防止するため、従来においては、図16に示すように、弾性部材としての圧縮バネ171が用いられていた。すなわち、圧縮バネ171を有する摺動棒172が、揺動伝動ケース50と平行状に配置され、該揺動伝動ケース50に対して前後方向に移動するベベルギアケース65に固設されており、この圧縮バネ171によりスットッパーが構成され、刈取部3の前処理機構が左右一側に固定された状態で前垂れが弾性的に防止されていた。
【0053】
具体的には、前記摺動棒172の後部に圧縮バネ171が外嵌されており、該圧縮バネ171の後端部は摺動棒172に固定されるとともに前端部は圧縮バネ171の弾性変形により摺動可能に構成される。また、摺動棒172の前端部はベベルギアケース65に固設される。そして、摺動棒172は、その中途部が、揺動伝動ケース50に形成される摺動受けケース51の外側に固設される支持部173において摺動可能に支持されている。
【0054】
このような構成において、刈取部3の前処理機構が左右一側で固定された状態では、摺動棒172が前方に位置して圧縮バネ171の前端が前記支持部173に当接した状態となる。つまり、この支持部173に当接する圧縮バネ171により、ベベルギアケース65の移動(揺動伝動軸53及び前部摺動ケース52の摺動)が規制され、刈取部3における前垂れが弾性的に防止されていた。
【0055】
しかし、このように圧縮バネ171を用いた構成においては、左右一側のみでしか前垂れが防止されないこととなるので、コンバインの機体の振動にともない刈取部3が振動し、左右一側に固定される前処理機構の位置が安定せず、刈取部3の前処理機構と該刈取部3にて刈り取られる穀稈が搬送される搬送装置(上部搬送装置8b及び縦搬送装置8c(図9参照))との相対位置が変化してしまい、搬送装置における穀稈搬送の確実性の点で問題があった。
【0056】
そこで、本構成においては、刈取部3における前垂れを防止するとともに、搬送装置における安定した確実な搬送を可能にするため、図14に示すように、揺動伝動ケース50に、4節リンクに連動する固定機構70を設けている。固定機構70は、揺動伝動ケース50の外側に突設される係止片71と、該係止片71と係合する係止凹部72aを有し該係止凹部72a及び係止片71の係合が解除される方向に回動可能に設けられる係止板72と、係止片71及び係止凹部72aが係合する方向に係止板72を付勢する回動バネ73とを有している。
【0057】
前記係止片71は、揺動伝動ケース50の外側において、前記係止板72が設けられる側(本実施形態においては右側)に向けて突設される。つまり、この係止片71は、刈取部3の左右スライドにともなう前部摺動ケース52及び揺動伝動軸53の摺動により、その摺動方向に移動しないようにするため揺動伝動ケース50に設けられる。このことから、係止片71は、摺動受けケース51に設けられてもよい。
【0058】
前記係止板72は、その後部に係止凹部72aを有しており、この係止凹部72aは、係止板72が揺動伝動ケース50に対して平行状となった状態で係止片71と係合するように形成される。また、係止板72は、ベベルギアケース65に付設される前記回動バネ73により付勢されて該係止板72の前端部が回動可能に支持されている。この回動バネ73は、例えばトーションバネ等が用いられ、係止板72を、その前端部にてベベルギアケース65に回動可能に支持するとともに、この係止板72の係止凹部72aと係止片71とが係合する方向に回動するように係止板72を付勢する。
【0059】
つまり、ベベルギアケース65に固設される係止板72は、係止片71と係止凹部72aとの係合が解除された状態では、刈取部3の左右スライドにともなうベベルギアケース65の揺動伝動ケース50に対する移動にともなって移動し、このベベルギアケース65の移動後の状態で、係止片71と係止凹部72aとが係合されることで、ベベルギアケース65の揺動伝動ケース50に対する移動を規制する。このため、係止板72に形成される係止凹部72aは、少なくとも刈取部3の前処理機構の固定位置(本実施形態においては左右二位置)に対応して係止片71と係合できるように設けられる。すなわち、係止凹部72aは、前処理機構が三箇所以上の位置で固定される構成の場合は、それぞれの固定位置において係止片71と係合できるように設けられる。なお、係止片71及び係止凹部72aの形状は、図示の場合に限定されるものではなく、ベベルギアケース65の揺動伝動ケース50に対する移動を規制して刈取部3における前垂れを防止するに十分な強度で係合可能であればよい。例えば、係止片71を円柱状に形成するとともに、係止凹部72aを同じく円柱状の穴に形成し、係止片71を係止凹部72aに挿嵌させる構成などが考えられる。
【0060】
また、前記係止片71と係止凹部72aとの係合及びその解除は、刈取部3の左右スライドを操作する前記スライド操作レバー48の操作と連動している。すなわち、前述したように、刈取部3における前処理機構は、左右一側に固定された状態から、スライド操作レバー48が上方に持ち上げられ左右に回動されることにより、その固定が解除されて左右にスライドされるが、このスライド操作レバー48の持上げ操作または回動操作を行うことにより、図示せぬ伝動機構を介して係止片71と係止凹部72aとの係合が解除されるように係止板72が回動する構成となっている。つまり、スライド操作レバー48を握って前処理機構の固定を解除して左右スライドさせる操作を行うことにより、同時に前記伝動機構を介して係止板72が矢印bの方向に回動して係止片71と係止凹部72aとの係合が解除される。
【0061】
そして、前処理機構をスライドさせた後、スライド操作レバー48の握りを離すと、回動バネ73の付勢力により、係止板72が自動的に矢印aの方向に回動して、係止片71と係止凹部72aとが係合し、固定機構70がロックされる。ここで、回動バネ73は、係止片71と係止凹部72aとが係合される方向に係止板72を付勢することにより、機体の振動などによって係止片71と係止凹部72aとの係合が不用意に解除されることを防止する役割も果たす。
【0062】
このように、揺動伝動ケース50に固定機構70を設けることにより、前処理機構が固定された状態での刈取部3における前垂れを防止することができるとともに、従来のように圧縮バネ171を用いた構成において生じていた前処理機構の振動(前後方向のガタツキ)を防止することができるので、刈取部3の前処理機構の位置が安定し、前処理機構と搬送装置との相対位置が変化することなく、搬送装置における穀稈搬送の確実性の向上を図ることができる。
【0063】
また、揺動伝動ケース50における固定機構は、次のような構成とすることもできる。本構成における固定機構80は、図15に示すように、前部摺動ケース52に形成される係止穴81(81a・81b)と、この係止穴81に係合する係止ピン82を有するスライドロック83とを有している。係止穴81は、少なくとも刈取部3の前処理機構の固定位置に対応して設けられる。すなわち、本実施形態のように、左右二位置で固定される前処理機構において、機体進行方向右側で固定される状態よりも左側で固定される状態の方がベベルギアケース65の前方への変位量が大きい構成の場合、該前処理機構が右側で固定された状態では、係止ピン82は係止穴81bと係合し(図15(a)参照)、左側で固定された状態では、係止ピン82は前記係止穴81bよりも後方に形成される係止穴81aと係合する(同図(b)参照)。なお、係止穴81は、3個以上であってもよく、前処理機構が三箇所以上の位置で固定される構成の場合は、それぞれの固定位置において係止ピン82と係合できるように設けられる。
【0064】
前記スライドロック83は、摺動受けケース51の外側に固設され該摺動受けケース51内と連通するケース体84内に、前記係止ピン82を、前部摺動ケース52及び揺動伝動軸53の摺動方向に対して垂直方向に摺動可能に設けている。また、この係止ピン82は、該係止ピン82が前記係止穴81に係合する方向(摺動受けケース51の内側方向)に、バネ等の弾性部材85により付勢されている。
【0065】
また、スライドロック83における係止ピン82は、前述した固定機構70における係止板72と同様にスライド操作レバー48の操作と連動している。すなわち、スライド操作レバー48を握って刈取部3の前処理機構の固定を解除して左右スライドさせる操作を行うことにより、同時に係止ピン82が、該係止ピン82と係止穴81との係合が解除する方向(摺動受けケース51の外側方向)に摺動し、係止ピン82と係止穴81との係合が解除される。このため、係止ピン82とスライド操作レバー48とは、ワイヤやロッド等の連結部材86により連結されて連動するように構成される。
【0066】
そして、刈取部3の前処理機構をスライドさせた後、スライド操作レバー48の握りを離すと、弾性部材85の付勢力により、係止ピン82が自動的に摺動受けケース51の内側方向に移動して、係止ピン82と係止穴81とが係合し、固定機構80がロックされる。ここで、弾性部材85は、係止穴81と係止ピン82とが係合される方向に該係止ピン82を付勢することにより、機体の振動などによって係止穴81と係止ピン82との係合が不用意に解除されることを防止する役割も果たす。
【0067】
このような構成の固定機構80においては、前述した固定機構70における効果に加え揺動伝動ケース50の軽量化が図れるので、刈取部3を軽量化することができ、刈取部3における前垂れの防止効果の向上が図れる。
【0068】
また、刈取部3においては、図13に示すように、引起しケース5の上端部に、左右の引起しケース5・5間に架設されるアーチ上のフロントゲート(引起しゲート)90が取り付けられている。このフロントゲート90は、ポリエチレン樹脂等をブロー成形等することにより中空に構成されている。そして、このフロントゲート90内に形成される空間を、引起しケース5内の上部スプロケット軸59L・59Rや引起しチェーン56L・56R等のコンバインにおける被潤滑部に供給され注油される潤滑油の注油タンクとして用いている。
【0069】
つまり、従来から、コンバインの刈取部においては、複数設けられる引起しケース間の剛性の向上やデザイン性の向上を図る等の目的のため、複数の引起しケースの上端部にフロントゲートを架設する技術は公知となっているが、本構成においては、このフロントゲートをコンバインの各部に供給され注油される潤滑油のタンクとして用いている。
【0070】
この注油タンクとしてのフロントゲート90は、引起しケース5に対して着脱自在に取り付けられる。そのため、フロントゲート90内への潤滑油の補給は、引起しケース5に取り付けた状態で行う場合に加え、フロントゲート90を引起しケース5から取り外して行うこともできる。これにより、潤滑油の補給を行う際の作業性の向上を図ることができる。ここで、フロントゲート90の引起しケース5に対する固定方法としては、種々の方法が考えられるが、例えば、ボルト締結による方法や枢支ピンを用いて枢支する方法、また、マグネットを用いる方法等が適宜用いられる。
【0071】
そして、フロントゲート90から潤滑油を吸い上げ刈取部3の各部へ供給するための注油ポンプ91を、該フロントゲート90の近傍、具体的には、図13に示すように、一方の引起しケース5の側方などに付設する。この注油ポンプ91により、フロントゲート90内と連通する配管92を介してフロントゲート90内に貯溜されている潤滑油が吸い上げられ、供給配管93を介してコンバインにおける各部へと供給される。ここで、注油ポンプ91の設置場所としては、刈取穀稈の邪魔にならない部分で、操作性を考慮した上、様々な場所が考えられる。
【0072】
このように、引起しケース5の上端部に架設されるフロントゲート90を潤滑油のタンクとして用いることにより、引起しケース5の剛性を向上する等の目的のため取り付けられるフロントゲートと潤滑油のタンクとを兼ねることができるので、潤滑油タンクを別途設ける必要がなくなり、コンバインにおける部品点数の削減及びスペースの有効活用ができる。また、潤滑油のタンクとしてのフロントゲート90から潤滑油を吸上げる注油ポンプ91を、フロントゲート90の近傍に設けることが容易となるので、潤滑油のタンクと注油ポンプ91とを接続する配管92を簡略化することができる。さらに、引起しケース5の上端部に取り付けられるフロントゲート90は、運転部14において運転者が前記シート21に着席して作業を行っている状態で視野に入ることとなるので、フロントゲート90を成形する際に、樹脂材料をナチュラルに近い薄い色としておくこと、あるいは肉厚を調整すること等によって、内部の潤滑油レベルを視認可能とすることにより、フロントゲート90内の潤滑油の残量を容易に把握することが可能となり、運転者による潤滑油の残量の監視負担を減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明のシート支持構造における「後位置」の状態を示す側面図。
【図2】同じく正面図。
【図3】同じく斜視図。
【図4】本発明のシート支持構造における「前位置」の状態を示す側面図。
【図5】同じく斜視図。
【図6】前支持部を示す拡大側面図。(a)は「後位置」の状態を示す図。(b)は「前位置」の状態を示す図。
【図7】邪魔板を示す斜視図。
【図8】「後位置」の状態における前支持部を示す拡大一部断面側面図。
【図9】本発明に係るコンバインの全体構成を示す側面図。
【図10】同じく平面図。
【図11】刈取部の前処理機構の支持構造を示す平面図。
【図12】刈取部の前処理機構のスライド構造を示す平面図。
【図13】引起し装置の駆動系を示す正面図。
【図14】揺動伝動ケースの固定機構を示す平面図。
【図15】同じく別構成を示す図。
【図16】従来の揺動伝動ケースを示す平面図。
【符号の説明】
【0074】
20 ボンネット
20a シート載置面
21 シート
21a シート下面
22 回動軸
23 前支持部
24 シート側ブラケット
24a 支持片
25 載置台側ブラケット
25a 支持面
26 回動アーム
26a 水平軸部
26b 枢軸部
32 枢支軸
33 後支持部
34 支持部材
35 邪魔板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置台上に、回動軸にて回動自在にシートの前部を支持する前支持部と、前記載置台のシート載置面及びシートの下面の間に介在する支持部材によりシートの後部を支持する後支持部とによりシートを支持するシート支持構造において、
シートを、「後位置」と、該「後位置」よりも前記回動軸の高さ位置を低くする「前位置」とに調節可能としたことを特徴とするシート支持構造。
【請求項2】
前記前支持部は、シートの下面に取り付けられシートの前部を支持する支持片を有するシート側ブラケットと、前記載置台の前上部に固設され前記シート載置面よりも低位置となる支持面を形成する載置台側ブラケットと、前記シート側ブラケットに回動自在に支持され前記回動軸を構成するとともに前記載置台側ブラケットに対して回動自在に支持される回動アームと、を有する請求項1記載のシート支持構造。
【請求項3】
前記載置台上に、前記支持片に当接することにより、シートの着座状態での「後位置」から「前位置」への移動を規制する邪魔板を設けたことを特徴とする請求項2記載のシート支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−192961(P2006−192961A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4256(P2005−4256)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】