説明

シート材の防着剤付着装置

【課題】攪拌用の空気の吐出を長時間停止しても攪拌効果を低下させることのないシート材の防着剤付着装置を提供する。
【解決手段】下端から防着剤タンク10内に空気を吐出することにより防着剤の水溶液Bを攪拌する複数の空気吐出管30を備え、各空気吐出管30の空気を防着剤タンク10の底面に向かって吐出するようにしたので、防着剤の水溶液Bを防着剤タンク10の底面側まで満遍なく攪拌することができる。この場合、各空気吐出管30の下端を防着剤タンク10の底面に向かって開口するようにしたので、空気の供給を長時間停止しても、沈殿した防着剤が各空気吐出管30内に侵入することがなく、沈殿した防着剤による各空気吐出管30の目詰まりを確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばタイヤの製造工程において、混練工程から搬送されたゴムのシート材に防着剤を付着させるために用いられるシート材の防着剤付着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、混練工程から搬送されたゴムのシート材に防着剤を付着させる装置としては、図3に示すように、上面を開口した防着剤タンク1と、シート材Aを防着剤タンク1内の防着剤の水溶液Bに漬けながら搬送するコンベア2とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、前記防着剤付着装置においては、水溶液Bの防着剤が沈殿しやすいため、複数の空気吐出孔3aを有する空気吐出管3を防着剤タンク2内の底面の複数箇所に設置し、各空気吐出管3に接続したホース4によって各空気吐出管3に空気を供給することにより、各空気吐出管3から空気を吐出して防着剤の水溶液を攪拌するようにしている。
【特許文献1】特公平2−41402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の防着剤付着装置では、各空気吐出管3を防着剤タンク2内の底に横向きに配置しているため、例えば工場の休業時やメンテナンス時に空気の供給を長時間停止すると、沈殿した防着剤が空気吐出管3の空気吐出孔3a内に侵入し、空気吐出孔3aを目詰まりさせるという問題点があった。このため、空気吐出孔3aの目詰まりにより攪拌効果が低下して防着剤の沈殿量が増加し、防着剤タンクの底に堆積した防着剤の固形分の除去作業に多大な労力を要していた。また、空気吐出管3が目詰まりした状態で攪拌効果を高めるために空気の供給量を増加させると、気泡が増大して水溶液Bが防着剤タンク2から吹きこぼれるという問題点があった。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、攪拌用の空気の吐出を長時間停止しても攪拌効果を低下させることのないシート材の防着剤付着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、上面を開口した防着剤タンクと、シート材を防着剤タンク内の防着剤の水溶液に漬けながら搬送するコンベアとを備え、防着剤タンク内に空気を吐出して防着剤の水溶液を攪拌するようにしたシート材の防着剤付着装置において、下端が防着剤タンク内の底面に向かって開口するように設けられ、下端から防着剤タンク内の底面に向かって空気を吐出する複数の空気吐出管を備えている。
【0007】
これにより、各空気吐出管の空気が防着剤タンクの底面に向かって吐出することから、防着剤の水溶液が防着剤タンクの底面側まで満遍なく攪拌される。その際、各空気吐出管の下端が防着剤タンクの底面に向かって開口していることから、空気の供給を長時間停止しても、沈殿した防着剤が各空気吐出管内に侵入することがない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、防着剤の水溶液を防着剤タンクの底面側まで満遍なく攪拌することができるので、防着剤の沈殿を効果的に防止することができる。また、空気の供給を長時間停止しても、沈殿した防着剤が各空気吐出管内に侵入することがないので、沈殿した防着剤による空気吐出管の目詰まりを確実に防止することができる。これにより、長期的な使用においても攪拌効果が低下することがないので、防着剤タンクの底に堆積した防着剤の固形分の除去作業を大幅に軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1及び図2は本発明の一実施形態を示すもので、図1は防着剤付着装置の側面断面図、図2はその正面断面図である。
【0010】
この防着剤付着装置は、上面を開口した防着剤タンク10と、シート材Aを防着剤タンク10内の防着剤の水溶液Bに漬けながら搬送するコンベア20と、防着剤タンク10内に空気を吐出して防着剤の水溶液Bを攪拌する複数の空気吐出管30とを備えている。
【0011】
防着剤タンク10は防着剤の水溶液Bを貯溜しており、水溶液Bは粉末の防着剤を水に溶かしたものである。
【0012】
コンベア20は、複数のローラ21と、各ローラ21に巻き掛けられた上下一対の網目状のベルト22とからなり、シート材Aを各ベルト22の間に挟んで搬送するようになっている。
【0013】
各空気吐出管30は防着剤タンク10内を上下方向に延びる鋼管からなり、防着剤タンク10内の周縁側に両側面に沿って互いに前後方向に間隔をおいて配置されている。各空気吐出管30の上端は防着剤タンク10の上方を前後方向に延びる空気供給管31にそれぞれ接続され、その下端は防着剤タンク10の底面のやや上方に位置している。各空気吐出管30の下端は防着剤タンク10の底面に向かって開口し、防着剤タンク10の底面に向かって空気を吐出するようになっている。この場合、各空気吐出管30の下端側は防着剤タンク10の中央側に向かって所定角度θ(例えば45゜)だけ傾斜をなすように形成されている。また、各空気吐出管30の上端側にはそれぞれ空気吐出管30の空気吐出量を調整可能なバルブ32が設けられている。
【0014】
以上のように構成された防着剤付着装置においては、混練工程から搬送されたゴムのシート材Aがコンベア20によって防着剤タンク10内の防着剤の水溶液Bに漬かるように搬送され、シート材Aの表面に防着剤が付着される。また、空気供給管31から各空気吐出管30に空気が供給されるとともに、各空気吐出管30の下端から防着剤タンク10内に空気が吐出され、防着剤タンク10内の水溶液Bが攪拌される。その際、各空気吐出管30の空気が防着剤タンク10の底面に向かって吐出されることから、防着剤の水溶液Bが防着剤タンク10の底面側まで満遍なく攪拌される。また、各空気吐出管30の下端は防着剤タンク10の底面に向かって開口しているため、空気の供給を長時間停止しても、沈殿した防着剤が各空気吐出管30内に侵入することがない。
【0015】
このように、本実施形態の防着剤付着装置によれば、下端から防着剤タンク10内に空気を吐出することにより防着剤の水溶液Bを攪拌する複数の空気吐出管30を備え、各空気吐出管30の空気を防着剤タンク10の底面に向かって吐出するようにしたので、防着剤の水溶液Bを防着剤タンク10の底面側まで満遍なく攪拌することができ、防着剤の沈殿を効果的に防止することができる。この場合、各空気吐出管30の下端を防着剤タンク10の底面に向かって開口するようにしたので、空気の供給を長時間停止しても、沈殿した防着剤が各空気吐出管30内に侵入することがなく、沈殿した防着剤による各空気吐出管30の目詰まりを確実に防止することができる。これにより、長期的な使用においても攪拌効果が低下することがないので、防着剤タンク10の底に堆積した防着剤の固形分の除去作業を大幅に軽減することができる。
【0016】
また、各空気吐出管30を防着剤タンク10内の周縁側に配置したので、防着剤が沈殿しやすい防着剤タンク10の周縁部も積極的に攪拌することができ、防着剤の沈殿防止に極めて効果的である。
【0017】
この場合、各空気吐出管30の下端側を防着剤タンク10内の中央側に向かって傾斜するように形成したので、各空気吐出管30の空気を防着剤タンク10内の周縁側から中央側に向かって吐出させることができ、防着剤タンク10の全体の攪拌効果をより高めることができる。
【0018】
また、各空気吐出管30にそれぞれ空気吐出量を調整可能なバルブ32を設けたので、各空気吐出管30の空気吐出量が均一になるように調整したり、或いは防着剤が沈殿しやすい特定の箇所に積極的に空気を吐出させるようにするなど、使用状況に応じた的確な攪拌を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を示す防着剤付着装置の側面断面図
【図2】防着剤付着装置の正面断面図
【図3】従来例を示す防着剤付着装置の側面断面図
【符号の説明】
【0020】
10…防着剤タンク、20…コンベア、30…空気吐出管、32…バルブ、A…シート材、B…水溶液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を開口した防着剤タンクと、シート材を防着剤タンク内の防着剤の水溶液に漬けながら搬送するコンベアとを備え、防着剤タンク内に空気を吐出して防着剤の水溶液を攪拌するようにしたシート材の防着剤付着装置において、
下端が防着剤タンク内の底面に向かって開口するように設けられ、下端から防着剤タンク内の底面に向かって空気を吐出する複数の空気吐出管を備えた
ことを特徴とするシート材の防着剤付着装置。
【請求項2】
前記各空気吐出管を防着剤タンク内の周縁側に配置した
ことを特徴とする請求項1記載のシート材の防着剤付着装置。
【請求項3】
前記各空気吐出管の下端側を防着剤タンク内の中央側に向かって傾斜するように形成した
ことを特徴とする請求項2記載のシート材の防着剤付着装置。
【請求項4】
前記各空気吐出管の空気吐出量をそれぞれ調整可能なバルブを備えた
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のシート材の防着剤付着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−58408(P2010−58408A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227455(P2008−227455)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】