説明

シート状スイッチ及びこれに用いられるスペーサ

【課題】 本発明は、広い温度領域において安定した感度を有するシート状スイッチを提供する。
【解決手段】 本発明のシート状スイッチAは、第一スイッチ電極11を有する上側電極シート1と、第二スイッチ電極21を有する下側電極シート2とが上記第一、第二スイッチ電極11、21が対向した状態にスペーサ3を介して積層一体化されているシート状スイッチAであって、上記スペーサ3は、融点が130℃以上の合成樹脂からなる基材層31の両面に、アクリル系樹脂及び粘着付与樹脂を含む粘着剤からなる粘着剤層32、32が積層一体化されており、上記粘着剤のガラス転移温度(Tg)が−10〜0℃であり、且つ、上記粘着剤から形成された厚みが50μmのシートのJIS K7105に準拠して測定されたヘーズ値が20〜40%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状スイッチ及びこれに用いられるスペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、計測機器、家電、表示装置などの電子機器においてシート状スイッチが広く利用されているが、近年、シート状スイッチの利用分野が広がったことに伴い、様々な環境下で使用可能なシート状スイッチが求められている。具体的には、低温下でも高温下でも同じように高精度のスイッチング機能を発揮できるシート状スイッチが求められている。
【0003】
上記シート状スイッチとしては、例えば、特許文献1に、第一の電極部を備えた第一のシート部材と第二の電極部を備えた第二のシート部材とをスペーサを介して積層してなり、スイッチ押圧操作側に蓄光部材と光触媒とを備えたメンブレンスイッチが提案されている。このメンブレンスイッチにおけるスペーサとしては、レジストインクを厚み数百μmに印刷したものが開示されている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のメンブレンスイッチは、そのスペーサが単にレジストインキで印刷形成されることが開示されているのみで、広い温度領域での使用するための構成については何ら示唆されておらず、広い温度領域で使用できないことがあった。
【0005】
又、特許文献2には、フィルム状のスペーサを介して第一のフィルム部材と第二のフィルム部材とを配置したメンブレンスイッチが開示されている。このメンブレンスイッチは、低温下での回路の断線を防止する目的で、フィルム部材とスペーサとの間にフィルム部材との密着性に優れた樹脂でコーティングすることが提案されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載のメンブレンスイッチは、低温下における断線の防止には着目しているものの、低温度領域での使用が困難となり、或いは、広い温度領域で使用できないことがあった。又、このメンブレンスイッチを構成するスペーサに関しては、メンブレンスイッチを広い温度領域で使用するために、その材料や物性を選択することについては何ら示唆されていなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2000−21258号公報
【特許文献2】特開2007−80665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、広い温度領域において安定した感度を有するシート状スイッチを得ることができるスペーサ及びこのスペーサを用いたシート状スイッチを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシート状スイッチAは、図1に示すように、第一スイッチ電極11を有する上側電極シート1と、第二スイッチ電極21を有する下側電極シート2とが上記第一スイッチ電極11及び第二スイッチ電極21が対向した状態にスペーサ3を介して積層一体化されてなる。
【0010】
具体的には、上側電極シート1と下側電極シート2とはスペーサ3を介して積層一体化されているが、一部においてスペーサ3が介在されておらず、上下電極シート1、2の対向面間に空間部Sが形成されており、この空間部Sを形成している上下電極シート1、2の対向面に第一スイッチ電極11及び第二スイッチ電極21が形成されている。
【0011】
なお、図2に示したように、上下電極シート1、2の対向面の全面に電極を形成し、空間部Sに露出した電極部をそれぞれ第一スイッチ電極11、第二スイッチ電極21としてもよい。
【0012】
そして、第一スイッチ電極11と第二スイッチ電極21とは常態において互いに上下方向に離間した状態となっているが、上側電極シート1と下側電極シート2とを互いに接近させる方向にシートスイッチAに押圧力が加わると、上下電極シート1、2が復元可能に撓むと共にスペーサ3もその厚み方向に収縮して、第一スイッチ電極11と第二スイッチ電極21とが互いに接離可能に接触する一方、シートスイッチAへの押圧力を解除すると、上下電極シート1、2及びスペーサ3が元の状態に復帰することによって第一スイッチ電極11と第二スイッチ電極21とが互いに離間し元の状態に復帰するように構成されている。
【0013】
上下電極シート1、2は可撓性を有しておればよく、即ち、上下電極シート1、2にそれらの厚み方向に押圧力を付与した際に、上下電極シート1、2の第一、第二スイッチ電極11、21が互いに接離可能に接触するまで撓むことができればよく、ポリエステル系樹脂シートなどの合成樹脂シートから形成されておればよい。
【0014】
そして、上下電極シート1、2の対向面において、上側電極シート1には第一スイッチ電極11が、下側電極シート2には第二スイッチ電極21が形成されている。第一、第二スイッチ電極は銀や銅などから形成されており、上下電極シート1、2に第一、第二スイッチ電極11、21を形成する方法としては、従来公知の方法によればよく、例えば、上下電極シート1、2上に銀ペースト又は銅ペーストを印刷する方法などが挙げられる。
【0015】
そして、上述のように、上側電極シート1と下側電極シート2とはスペーサ3を介して積層一体化されている。このスペーサ3は、融点が130℃以上の合成樹脂からなる基材層31の両面に、アクリル系樹脂及び粘着付与樹脂を含む粘着剤からなる粘着剤層32、32が積層一体化されてなる。
【0016】
スペーサ3において、基材層31を構成している合成樹脂としては、融点が130℃以上であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなどが挙げられ、剛性及び耐屈曲性に優れていると共に広い温度領域にて優れた寸法安定性を示すことからポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0017】
そして、基材層31を構成している合成樹脂の融点は、低いと、高温での寸法安定性に劣ることがあるので、130℃以上に限定され、高過ぎると、曲げ剛性が強すぎて少し曲げると折れることがあるので、130〜300℃が好ましい。なお、合成樹脂の融点は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量計(DSC)による測定によって得られる融解ピーク温度に基づき定められる温度をいう。
【0018】
上記基材層31の厚みは、薄いと、シート状スイッチの感度が高くなり過ぎて、僅かな押圧力で第一、第二スイッチ電極11、21が互いに不測に接触してしまい、シート状スイッチの第一、第二スイッチ電極が不要時に接触してしまう虞れがある一方、厚いと、シート状スイッチの感度が悪くなり、第一、第二スイッチ電極同士を接触させるのに、大きな押圧力を必要とすることがあるので、50〜200μmが好ましく、60〜150μmがより好ましい。
【0019】
上記基材層31の両面には、アクリル酸ブチルを60〜90重量%含むモノマー混合物を共重合させて得られる(メタ)アクリル系樹脂100重量部と、軟化点が130℃以上である粘着付与樹脂5〜25重量部とを含有する粘着剤からなる粘着剤層32、32が積層一体化されている。
【0020】
アクリル酸ブチルを60〜90重量%含むモノマー混合物を共重合させて得られる(メタ)アクリル系樹脂は、高温領域で使用しても粘着剤層が柔らかくなったり、或いは、貼着位置がずれたりせず、更に、低温領域で硬くなりすぎない程度の低いガラス転移温度を有しており好ましい。
【0021】
モノマー混合物中におけるアクリル酸ブチルの量は、少ないと、繰り返し使用されることによって、常温以上の温度にて粘着剤層がへたってしまうことがある一方、多いと、低温でのスイッチング性が悪化することがあるので、60〜90重量%に限定され、70〜90重量%が好ましい。
【0022】
上記モノマー混合物中に含まれるアクリル酸ブチル以外のモノマーとしては、特に限定されず、例えば、アルキル基の炭素数が1〜12の一級又は二級のアルキルアルコールと、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルなどが挙げられ、アクリル酸エチルが好ましい。なお、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、単独で用いられても、二種以上が併用されてもよいが、アクリル酸−2−エチルヘキシルが含有されていることが好ましい。
【0023】
そして、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと共重合可能な他のビニルモノマーとしては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、n−メチロールアクリルアミド、無水マレイン酸、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられ、粘着剤層の架橋度が上がり、高温領域においてもスペーサのずれが生じず、優れたスイッチング製を示すことから、アクリル酸が好ましい。なお、これらのビニルモノマーは単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【0024】
上記アクリル系樹脂を得るには、例えば、アクリル酸ブチルを含有するモノマー混合物を重合開始剤の存在下にてラジカル反応させればよい。なお、重合方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などが挙げられる。
【0025】
なお、上記重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレートなどが挙げられ、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシピバレートが好ましい。なお、上記重合開始剤は単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【0026】
更に、上記粘着剤層32を構成する粘着剤には粘着付与樹脂が含有されている。上記粘着付与樹脂としては、特に限定されず、例えば、キシレン樹脂、フェノール樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂などが挙げられ、粘着剤層の粘着性に優れ、上下電極シートに対してスペーサが強固に貼着し、上下電極シートをスペーサを介して強固に一体化することができることから、ロジン系樹脂が好ましい。なお、これらの粘着付与樹脂は単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【0027】
そして、上記粘着付与樹脂の軟化点は、低いと、シート状スイッチを高温下で使用した際に粘着剤層が柔軟になり、シート状スイッチに小さな押圧力が加わった場合にあっても、第一スイッチ電極と第二スイッチ電極が不測に接触する虞れがあるので、125℃以上が好ましく、高過ぎると、粘着剤層が硬くなり過ぎて、シート状スイッチの感度が低下することがあるので、130〜150℃がより好ましい。なお、上記粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K2207に準拠して測定した値をいう。
【0028】
又、上記粘着付与樹脂は、重量平均分子量が600以下の成分の含有量が13重量%以下であることが好ましい。このような粘着付与剤を用いることによって、粘着物性を損なうことなく粘着付与剤によって生じる揮発性成分を低く抑えることができ、アウトガス成分の量を低くしたアクリル系粘着剤を得ることができる。揮発性成分が多く含まれると、透明なシートスイッチに使用した場合に揮発成分による変色などにより外観上の美観が損なわれ、或いは、粘着剤層の粘着力や硬さに影響し、スイッチング性能が劣ってしまう場合がある。なお、上記粘着付与剤の重量平均分子量及びその含有量はGPCにより測定し、ポリスチレン換算値及び面積比により算出できる。
【0029】
粘着付与剤において、重量平均分子量が600以下の成分を13重量%以下とする方法としては、例えば、粘着付与剤を軟化点以上に加熱溶融する方法、水蒸気を吹き込む方法などが挙げられる。
【0030】
粘着付与剤を加熱溶融する場合には、空気中の酸素との酸化反応を防ぐために、窒素、ヘリウムなどの不活性ガス中で加熱することが好ましく、又、加熱時間は、加熱による粘着付与剤の分解を避けるために1〜5時間が好ましい。
【0031】
水蒸気を吹き込む場合には、粘着付与剤を加熱溶融後に1〜50kPaに減圧してから水蒸気を吹き込むと、揮発性成分の低減を効果的に行うことができる。水蒸気を吹き込む時間としては、短いと、揮発性成分の低減を図ることができないことがある一方、長くても、揮発性成分の低減効果に差がないので、1〜5時間が好ましい。
【0032】
上記粘着剤における粘着付与樹脂の含有量は、少ないと、粘着剤層の粘着力が不充分となり、上下側電極シート1、2とスペーサ3との一体性が低下することがある一方、多いと、粘着剤層のガラス転移温度が高くなって粘着剤層の柔軟性が温度条件によって変化し易くなったり、或いは、粘着剤層の形状回復性が低下したりして、シート状スイッチの感度が温度によって変化するといった問題や、シート状スイッチを低温下で使用した際に粘着剤層が硬くなって粘着力が低下し、上下側電極シート1、2とスペーサ3との一体性が低下することがあり、更に、高温下にて粘着付与樹脂から揮発した揮発成分が電子部品の正常動作に悪影響を与えたり、上下電極シートが透明である場合にシート状スイッチの外観が低下することがあるので、(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して5〜25重量部に限定され、10〜20重量部が好ましい。
【0033】
本発明のシートスイッチは、粘着剤層が、これを90℃で30分間に亘って加熱した際に、下記式(1)により算出される揮発成分濃度が500ppm未満であることが好ましい。このように、揮発成分濃度が500ppm未満であることから、使用環境下の温度が高くなった場合にあっても粘着層から発生する揮発成分量を低く抑えることができ、シートスイッチのスイッチング性への悪影響を防止することができる。
揮発成分濃度(ppm)
=揮発成分重量X(μg)/加熱前の両面粘着テープ重量(g)・・式(1)
(但し、式(1)中、揮発成分重量Xはヘキサデカン換算重量を表す。)
揮発成分重量Xは、スペーサを90℃にて30分間に亘って加熱した際に放出された揮発成分の重量を熱脱着装置を用いて濃縮しGC−MS装置を用いることによって測定することができる。そして、測定された揮発成分重量Xをスペーサの重量で除することによって揮発成分濃度を算出することができる。
【0034】
具体的には、上記揮発成分濃度の測定方法としては、具体的には、スペーサを構成している粘着剤を用意し、この粘着剤約20mgをサンプルチューブ(内径:約5mm、長さ:約10cm)に入れて90℃に加熱保持しながら、ヘリウムガスを1.5ミリリットル/分の流速にて30分間に亘ってサンプルチューブ内に流して得られた揮発成分を熱脱着装置に内蔵されたトラップチューブに捕集して濃縮した後、トラップチューブを280℃にて10分間に亘って加熱してGC−MS装置に供給する。
【0035】
GC−MS装置において、無極性のキャピラリーカラム(アジレントテクノロジー社製
商品名「HP−1」、0.32mm×60m×0.25μm)を使用し、キャピラリーカラムの温度を40℃にて4分間に亘って維持した後、キャピラリーカラムを毎分5℃の昇温速度にて100℃まで昇温し、しかる後、キャピラリーカラムを毎分10℃の昇温速度にて320℃まで昇温した後、320℃にて3分間に亘って保持する。なお、MS測定範囲は30〜400amu、ヘリウム流量は1.5ミリリットル/分、イオン化電圧は70eV、イオン源は230℃、インターフェイスは250℃、トランスファーラインは225℃とする。揮発成分の重量は、得られたピーク面積を、n−ヘキサデカンにより作成した絶対検量線に基づいて重量換算することによって算出することができる。
【0036】
そして、測定された揮発成分の重量を、測定対象となるスペーサを構成している粘着剤の重量に比例換算し、この比例換算された揮発成分重量Xをスペーサの重量で除することによって揮発成分濃度を算出することができる。
【0037】
なお、熱脱着装置は、例えば、パーキンエルマー社から商品名「ATD−400」にて市販されており、GC−MS装置は、例えば、日本電子社から商品名「AutomassII−15」にて市販されている。
【0038】
上記粘着剤層32を構成している粘着剤のガラス転移温度(Tg)は、低いと、粘着剤層の粘着力が低下する一方、高いと、粘着剤層の柔軟性が温度条件によって、特に低温領域で変化し易くなり、シート状スイッチが広い温度領域、特に低温領域での使用に適さなくなるので、−20〜0℃が好ましく、−10〜0℃がより好ましい。なお、上記粘着剤層32を構成している粘着剤のガラス転移温度は、JIS C6481に準拠して測定されたものをいう。
【0039】
ここで、上記粘着剤層32を構成している粘着剤のガラス転移温度(Tg)を調整する方法としては、アクリル系樹脂を構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーやこれと共重合可能な他のモノマーの種類や含有量を調整する方法や、粘着剤層32中におけるアクリル系樹脂及び粘着付与樹脂の含有量を調整する方法、アクリル系樹脂の架橋度を調整する方法などが挙げられるが、本発明においては、アクリル酸ブチルを60〜90重量%含むモノマー混合物を共重合させて得られる(メタ)アクリル系樹脂100重量部と、軟化点が130℃以上である粘着付与樹脂5〜25重量部とを含有する粘着剤を用いることによって、粘着剤のガラス転移温度が上述した好ましい範囲内となるように調整することができる。
【0040】
なお、上記粘着剤層32を構成している粘着剤には、アクリル系樹脂の主鎖間に架橋構造を形成させて粘着剤のガラス転移温度を調整する目的で、架橋剤を含有させてもよい。このような架橋剤としては、特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤などが挙げられる。
【0041】
又、上記粘着剤層32の厚みは、薄いと、粘着剤層の粘着力が低下し、上下側電極シート1、2とスペーサ3との一体性が不充分となることがある一方、厚いと、シート状スイッチの感度が不安定になることがあるので、8〜30μmが好ましく、10〜25μmがより好ましい。なお、基材層31の両面に積層一体化される両粘着剤層32、32の厚みは、異なっていてもよいが同じ厚みであることが好ましい。
【0042】
このようにして得られるシートスイッチは、薄型、軽量で且つ低温帯域でも良好なスイッチ性能を発揮するため、家電などの操作パネルから、カード式電卓等のような携行品にまで幅広く適用することが可能である。又、粘着剤層を構成している粘着剤からの揮発成分を抑制しているので、透明な外観を有するシート状スイッチに用いた場合にも、シート状スイッチは、変色するようなことはなく長期間に亘って優れた外観を呈する。
【発明の効果】
【0043】
本発明のシート状スイッチは、上述の如き構成をしているので、粘着剤層の柔軟性がシート状スイッチの使用環境下における温度変化によって変動しにくく、広い温度領域にて安定した感度を有する。
【0044】
更に、上記シート状スイッチは、そのスペーサとして、基材の両面に粘着剤層が積層一体化されてなる両面粘着シートが用いられているため、シート状スイッチの製造時において上下電極シートとスペーサとを積層一体化させる際に、従来のシート状スイッチの製造時のように上下電極シートとスペーサとの間に接着剤や両面粘着シートなどを介在させる必要がなく、製造工程が簡略化されており製造効率に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
温度計、攪拌機、冷却管、滴下漏斗及び窒素ガス導入管を備えた反応器に、アクリル酸n−ブチル70重量部、アクリル酸2-エチルヘキシル27重量部、アクリル酸3重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル0.1重量部及びドデカンチオール0.05重量部からなるモノマー混合物と、酢酸エチル80重量部とを供給した上で攪拌することによって、酢酸エチルにモノマー混合物を溶解させてモノマー混合溶液を作製した。
【0047】
モノマー混合溶液を50℃に加熱した上で、モノマー混合溶液中に、重合開始剤としてパーオキシエステル(t−ヘキシルパーオキシー2−エチルヘキサノエート)(10時間半減期温度:70℃)0.03重量部を加えてモノマーを重合させた。
【0048】
次に、パーオキシエステル(t−ヘキシルパーオキシピバレート)(10時間半減期温度:70℃)1.47重量部を断続的に4時間かけてモノマー混合溶液に供給しながら6時間に亘ってモノマーを更に重合させ、続いて、残存モノマー量及び残存重合開始剤量を低減させるために75℃にて10時間に亘って重合させてアクリル系樹脂を得た。
【0049】
得られたアクリル系樹脂の固形分100重量部に、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製 商品名「コロネートL」、有効成分:55重量%)1.6重量部と、粘着付与樹脂として重量平均分子量が600以下の揮発性成分を除去したロジンエステル化合物(軟化点:140℃)19重量部とを加えて攪拌してアクリル系粘着剤(重量平均分子量:60万)を得た。
【0050】
厚みが100μmであるポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製 商品名「ルミラー#100」、融点:260℃)の両面に上記アクリル系粘着剤を乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布してスペーサを作製した。
【0051】
縦20mm×横50mm×厚み20μmの平面長方形状のポリエチレンテレフタレートフィルムを二枚用意した。二枚のポリエチレンテレフタレートフィルムのうちの一枚のポリエチレンテレフタレートフィルムの一面の中央部に直径5mmの円形状の円を描いた。
【0052】
上記スペーサを縦20mm×横50mmの平面長方形状に切り出し、スペーサの中央部に直径5mmの貫通孔を形成した。この貫通孔は、後述するように、二枚のポリエチレンテレフタレートフィルムをスペーサを介して積層一体化した際に、スペーサの貫通孔とポリエチレンテレフタレートフィルムの円とが合致するように形成された。
【0053】
次に、二枚のポリエチレンテレフタレートフィルムをスペーサを介して積層一体化してシート状スイッチを作製した。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムの円とスペーサの貫通孔とが積層方向に完全に合致した状態となっていた。
【0054】
(比較例1)
ロジンエステル化合物を19重量部の代わりに3重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてスペーサ及びシート状スイッチを作製した。
【0055】
(比較例2)
ロジンエステル化合物を19重量部の代わりに27重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてスペーサ及びシート状スイッチを作製した。
【0056】
(比較例3)
ロジンエステル化合物として、重量平均分子量が600以下の成分を除去しない軟化点が125℃のロジンエステル化合物(荒川化学社製「ペンセルD125」)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてスペーサ及びシート状スイッチを作製した。
【0057】
得られたシート状スイッチのスイッチング性、並びに、スペーサの粘着力及び揮発成分濃度を上記又は下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0058】
(スイッチング性)
シート状スイッチを水平な透明なアクリル板上に載置し、シート状スイッチのスペーサの貫通孔を垂直上方に投影した上側のポリエチレンテレフタレートフィルム上に49N(5kgf)の重錘を載置した。
【0059】
各実施例及び比較例について10個のシート状スイッチを用意し、各シート状スイッチについて、上側のポリエチレンテレフタレートフィルムが下側のポリエチレンテレフタレートフィルムに接触したか否かをアクリル板の下方から目視観察した。
【0060】
10個のシート状スイッチのうち、接触した個数が9個以上の場合を「○」、8個未満である場合を「×」とした。シート状スイッチを載置した雰囲気温度を50℃、23℃及び0℃とした場合のそれぞれについて上述の要領で測定した。
【0061】
(粘着力)
スペーサから縦25mm×横100mmの平面長方形状の試験片を切り出した。スペーサの一方の粘着剤層をポリプロピレン板上に載置し、スペーサ上に2kgのローラを転がすことによってスペーサをポリプロピレン板上に貼着させて30分間に亘って放置した。
【0062】
次に、スペーサの粘着剤層の180°粘着力を引っ張り試験機を用いてJIS Z0237に準拠して測定した。
【0063】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明のシート状スイッチを示した縦断面図である。
【図2】本発明のシート状スイッチの他の一例を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 上側電極シート
11 第一スイッチ電極
2 下側電極シート
21 第二スイッチ電極
3 スペーサ
31 基材層
32 粘着剤層
A シート状スイッチ
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一スイッチ電極を有する上側電極シートと、第二スイッチ電極を有する下側電極シートとが上記第一、第二スイッチ電極が対向した状態にスペーサを介して積層一体化されていると共に、上記上下電極シートに該上下電極シートが近接する方向に押圧力を付与することによって上記第一、第二スイッチ電極が接離可能に接触するように構成されているシート状スイッチであって、上記スペーサは、融点が130℃以上の合成樹脂からなる基材層の両面に、アクリル酸ブチルを60〜90重量%含むモノマー混合物を共重合させて得られる(メタ)アクリル系樹脂100重量部と、軟化点が130℃以上である粘着付与樹脂5〜25重量部とを含有する粘着剤からなる粘着剤層が積層一体化されていることを特徴とするシート状スイッチ。
【請求項2】
粘着付与樹脂は、重量平均分子量が600以下の成分を13重量%以下含有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート状スイッチ。
【請求項3】
基材層の厚みが50〜200μmで且つ粘着剤層の厚みが10〜30μmであることを特徴とする請求項1に記載のシート状スイッチ。
【請求項4】
第一スイッチ電極を有する上側電極シートと、第二スイッチ電極を有する下側電極シートとが上記第一、第二スイッチ電極が対向した状態にスペーサを介して積層一体化されていると共に、上記上下電極シートに該上下電極シートが近接する方向に押圧力を付与することによって上記第一、第二スイッチ電極が接離可能に接触するように構成されているシート状スイッチに用いられるスペーサであって、融点が130℃以上の合成樹脂からなる基材層の両面に、アクリル酸ブチルを60〜90重量%含むモノマー混合物を共重合させて得られる(メタ)アクリル系樹脂100重量部と、軟化点が130℃以上である粘着付与樹脂5〜25重量部とを含有する粘着剤からなる粘着剤層が積層一体化されていることを特徴とするシート状スイッチ用のスペーサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−231088(P2009−231088A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75794(P2008−75794)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】