説明

シート状化粧料

【課題】水または化粧水で溶かして肌に適用するシート状化粧品、それを応用した種々の形態の商品を提供すること。
提供すること。
【解決手段】キトサン、魚由来コラーゲンおよびセリシンからなる群から選ばれる1種以上の天然高分子を含む組成物から形成される水溶性シートからなり、その水溶性シートを水で溶かしてその水溶性高分子の皮膚に付着させて皮膚平滑性を向上させる等の機能を利用するシート状化粧料。キトサンが、フィルム形成剤としての機能を有する分子量1万以上の高分子量であって、酸性物質によって溶けている水溶性キトサン、または分子量約数百〜2千のキトサンオリゴ糖、魚由来コラーゲンンが、酸または酵素により加水分解された魚鱗由来コラーゲン加水分解物、セリシンが繭または粗絹糸の熱湯処理で溶出したセリシン、またはそれを部分加水分解させて抽出、分離した分子量約1〜2万のセリシン蛋白質加水分解物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キトサン、魚由来コラーゲンおよびセリシンからなる群から選ばれる1種以上の天然高分子を含む組成物から形成される水溶性シートからなり、その水溶性シートを水で溶かしてその水溶性高分子の皮膚に付着させて皮膚平滑性を向上させる等の機能を利用するシート状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状で用いられる化粧品は、多くはパック剤として、ジェル層などに含浸させた化粧料を時間をかけて皮膚に浸透させ、美白、保湿、角栓除去や皮膚平滑性を向上させるなどの効果を期待して使用されている。またそれとは異なり、働く女性用として外出先などでの使用に適した、携帯に便利で手軽に使用できる化粧品としても用いられている。それらの多くは支持体として不織布などを用いその上に積層されたジェル状物質などに種々の薬効成分を含浸させて用いられる。パック剤として用いられる製品の中には支持体が非水溶性であると皮膚への密着度が弱いために剥がれやすくさらに支持体を水で洗い流すことができないなどの問題があるため、支持体を用いずにジェル状物質のみでシート状としているものがある。しかし、外出先などでの緊急時の使用を想定した製品の場合は支持体を用いない形で製品化されたものは認められていない。
【0003】
支持体を用いた場合の問題点である皮膚への密着度が低く剥がれやすい、使用後に水で洗い流すことができないなどに関し、水溶性の不織布を支持体として用いることで使用後に剥離が容易で水で洗い流すこともできるシート状化粧料組成物が提案されている(特許文献1)。また皮膚への密着感を向上させる点に関しては、親水性で、かつ、ある一定の硬さを持つシートが皮膚に対する密着感が高く、なおかつ、皮膚から剥離しやすい化粧用シートと成るとして既に提案されている(特許文献2)。しかし、それらはいずれも基本的には使用後に皮膚から剥がすことを想定しているために第一に剥がれやすさを担保するように組み上げられたものに限られており、皮膚から剥がすことなく使用する態様を想定したものではない。
【0004】
また、一方で、水溶性シートまたは水溶性フィルムの形態の組成物がパーソナルケアの分野での使用を想定したものとして提案されている。例えば特許文献3には、水溶性ポリマー、ポリビニルアルコール、湿潤剤、界面活性剤を含む組成物から形成される水溶性シートが記載されており、該水溶性シートは、界面活性剤および他の成分と結合し、水に曝された場合、それらの成分が溶解して液状石けんなどから得られるようなパーソナルクレンジングを提供する。
【0005】
皮膚上にシート成分が多量に残留するタイプのシート状化粧料として用い、化粧料に天然由来成分を配合させたものとして、例えば、シート成分としてコラーゲン加水分解物としてのゼラチンを用いてシート状パック材としたもの(特許文献4)や絹糸由来のタンパク質を含有するシート(特許文献5)などが知られている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−216809号公報
【特許文献2】特開平10−120527号公報
【特許文献3】特表2006−502292号公報
【特許文献4】特開昭63−162610号公報
【特許文献5】特開2005−225848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来シート状化粧料として提案されている化粧料はいずれも基本的には使用後に皮膚から剥がすことを想定しているために剥がれやすさを担保するように組み上げられたものである。より簡便性の高い、皮膚から剥がすことなく、そのままあるいは皮膚に密着後に化粧クリームのように延ばして使用し、通常は洗い流しが不要で拭き取るだけでよく、場合によって水で洗い流すなどの使用方法も可能であるように組み上げられたものではなかった。特許文献3の水溶性シートは皮膚から剥がすことは想定していないが、これはあくまでも液状石けんやスキンコンディショナーなどの簡易代替物としての用途を想定したものであって、化粧効果のため皮膚に一定時間密着させて用いられるものではない。また特許文献4に示される皮膚から剥がすように組み上げられたシート状化粧料の場合、化粧水などへの溶解性が高いため、化粧料への保型性が小さいこと、感触的にべたつくなどの問題があった。また特許文献5に示される化粧シートは基材シートと効能シートが別体として調製されているが、シルク由来成分の機能はシートの皮膚に対する密着性と装着感の向上にあった。
【0008】
本発明は、シート状化粧品の重要なニーズの一つである外出先などにおける非日常的使用をも可能とし、より簡便な使用方法として皮膚に密着後に皮膚から剥がすことなくそのままあるいは延ばして使用することが可能なシート状化粧料を提供すること、ならびにそれを基本技術思想とした種々の応用として簡単に剥がして用いる場合などの変形を行った場合でも化粧料としての機能に問題のないシート状化粧料を提供することを課題とする。 すなわち、本発明は、水または化粧水で溶かして肌に適用するシート状化粧品、それを応用した種々の形態の商品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは、キトサン、魚由来コラーゲンおよびセリシンからなる群から選ばれる1種以上の天然高分子を含む組成物から形成される水溶性シートをシート状化粧料として用い、皮膚に密着後に水を噴霧などして定着させて使用したところ、その後皮膚から剥がすことなくそのまま使用することが可能であり、皮膚平滑性の向上、保湿効果などの機能にも優れるシート状化粧料となっていることを見出した。またさらに検討を行ったところ、シートを使用する前における洗顔などによる皮膚への水分補給を行った場合やシートを皮膚に定着後に延ばすようにして使用した場合も問題なく使用することができることなどを見出し、本発明の外出先などにおける非日常的使用にも適したシート状化粧料を提供するという課題を解決した。また、応用として、使用後に皮膚から剥がして用いる用途に適したシートとするには、先の構成にポリビニルアルコールを加えれば良いことを見出し、先の成分を配合した状態で使用後に皮膚から剥がして用いる場合に適したシート状化粧料を提供することを可能とした。
【0010】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(14)のシート状化粧料を要旨とする。
(1)キトサン、魚由来コラーゲンおよびセリシンからなる群から選ばれる1種以上の天然高分子を含む組成物から形成される水溶性シートからなり、その水溶性シートを水で溶かしてその水溶性高分子の皮膚に付着させて皮膚平滑性を向上させる等の機能を利用するシート状化粧料。
(2)皮膚への付着を、適用する皮膚に水分を与えた後、水溶性シートを付着させる、または適用する皮膚に水溶性シートを置いた後、該シートに水分を与える、または水溶性シートを手のひらで水分を与え溶かし、それを適用する皮膚に延ばすことにより行う(1)のシート状化粧料。
(3)皮膚に適用され皮膚から剥がすことなくそのままあるいは延ばして使用する、または皮膚に適用され乾燥させらされ、次いで取り除かれる(1)または(2)のシート状化粧料。
(4)キトサンが、フィルム形成剤としての機能を有する数平均分子量1万以上の高分子量キトサンであって、酸性物質によって溶けている水溶性キトサン、または数平均分子量約数百〜2千のキトサンオリゴ糖である(1)、(2)または(3)のシート状化粧料。
(5)魚由来コラーゲンンが、酸または酵素により加水分解された魚鱗由来コラーゲン加水分解物である、(1)ないし(4)のいずれかのシート状化粧料。
(6)セリシンが繭または粗絹糸の熱湯処理で溶出したセリシン、またはセリシン蛋白質の部分加水分解させて抽出、分離した数平均分子量約1〜2万のセリシン蛋白質加水分解物である、(1)ないし(5)のいずれかのシート状化粧料。
(7)天然物質が、魚鱗由来の数平均分子量400〜1000のコラーゲンオリゴペプチドおよび数平均分子量500〜800のキトサンオリゴ糖を水に溶解し、加熱して該キトサンオリゴ糖の2級アミンと該オリゴペプチドのC末端アミノ酸のカルボキシル基とを反応させていたものである(1)ないし(6)のいずれかのシート状化粧料。
(8)天然物質が、魚鱗由来の数平均分子量400〜1000のコラーゲンオリゴペプチド、数平均分子量500〜800のキトサンオリゴ糖およびセリシン蛋白質の部分加水分解させて抽出、分離した数平均分子量約1〜2万のセリシン蛋白質加水分解物を水に溶解し、加熱して該キトサンの2級アミンと該オリゴペプチドおよび/またはセリシン蛋白質加水分解物のC末端アミノ酸のカルボキシル基とを反応させたものである(1)ないし(6)のいずれかのシート状化粧料。
(9)上記の1種以上の天然高分子を含む組成物がフィルム形成剤として機能するポリビニルアルコールを含むことを特徴とする、(1)ないし(8)のいずれかのシート状化粧料。
(10)水溶性シートの少なくとも1面を覆うコート層を持つことを特徴とする(1)ないし(9)のいずれかのシート状化粧料。
(11)上記の1種以上の天然高分子を含む組成物がフィルム形成剤として機能するキトサン、魚由来コラーゲンおよびセリシンからなる群から選ばれる1種以上の天然高分子と、皮膚平滑性を向上させる機能のために吸収しやすいように低分子化したキトサン、魚由来コラーゲンおよびセリシンからなる群から選ばれる1種以上の天然高分子との混合物である(1)ないし(10)のいずれかのシート状化粧料。
(12)キトサンが、フィルム形成剤としての機能を有する分子量1万以上の高分子量キトサンであって、酸性物質によって溶けている水溶性キトサン、および分子量約数百〜2千のキトサンオリゴ糖の混合物である(11)のシート状化粧料。
(13)魚由来コラーゲンが、フィルム形成剤としての機能を有する分子量10万ないし100万の高分子量魚鱗由来コラーゲン加水分解物および分子量400から1,000のコラーゲンオリゴペプチドの混合物である(11)のシート状化粧料。
(14)セリシンが繭または粗絹糸の熱湯処理で溶出したセリシンおよびセリシン蛋白質の部分加水分解させて抽出、分離した数平均分子量約1〜2万のセリシン蛋白質加水分解物の混合物である、(11)のシート状化粧料。
【発明の効果】
【0011】
本発明は皮膚平滑性の向上、保湿効果などの機能に優れるシート状化粧料を提供することができる。一つは、皮膚に密着後に剥がすことなくそのままあるいは延ばして使用し、洗い流しを行うことなく使用することができるものである。また、皮膚に密着後に剥がすことなくそのままあるいは延ばして使用し、洗い流しを行うことなく拭き取るなどして使用することができ、外出先で化粧を行う場合などに従来の化粧シートに比べて、より手軽に使用することができる。これらの化粧料はセリシン、キトサンおよび魚由来コラーゲン(マリンコラーゲン)の効果により皮膚平滑性の向上、皮膚への保湿効果に優れたのシート状化粧料を提供することができる。
さらに、二つは、皮膚に密着後、最終的に剥がして用いる方がより化粧効果と利便性に優れる場合において、上記の皮膚への効果を維持した上で簡便に剥がすことが可能なシート状化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[キトサン]
キトサンの化学構造は、一般には、2−アセトアミノ−2−デオキシ−D−グルコース(N−アセチルグルコサミン)のβ(1→4)結合多糖であるキチンの脱アセチル化物のうちで、糖鎖中におけるグルコサミン残基の割合(脱アセチル化度)が60%程度以上で、希酸可溶なものを総称してキトサンと呼んでいる。その化学構造はセルロースに類似しているが、酸性溶液中において正電荷を持つポリカチオンであり、このことがキトサンのもつさまざまな有用な機能に関与している。
【0013】
キトサンは、一般にはエビ、カニなどの甲殻類を加工する際に生じる殻を原料として製造されている。まず、エビ、カニなど甲殻類の殻を必要に応じて適当に粉砕した後、5%程度の希水酸化ナトリウム水溶液を用いて蛋白質を除く。このとき、殻に含まれる色素の大部分も同時に除かれる。次に5%程度の希塩酸水溶液を用いて炭酸カルシウムを中心とした灰分を除き、残ったものがキチンである。さらにキチンを40%程度の濃水酸化ナトリウム水溶液で処理すると、キチンの脱アセチル化物であるキトサンが生成される。得られるキトサンの分子量(一般にはキトサン溶液の粘度を指標とする)、脱アセチル化度などを再現性をもってコントロールするためには、処理工程における酸、アルカリの濃度、反応時間、反応温度などの条件設定が重要である。甲殻類の殻から得たキトサンはプラスチック状の性状をしており、一般にはこれを粉砕して、フレークまたは粉末状態にしたものが販売されている。色調はキトサンの製造条件によって異なり、淡赤褐色、淡黄色のものも市販されているが、精製が進んだものはほとんど白色である。
【0014】
キトサンの塩は、蟹、海老の甲殻を原料とし、これに塩酸による脱灰(CaCOの分解除去、例えば2N
HClで常温2日間処理)、苛性ソーダによる脱蛋白(例えば1N NaOH、100℃、36時間処理)をおこなってキチンを得、このキチンを水洗いし、濃苛性ソーダ(例えば40%)にて加熱処理(例えば油浴中6時間処理)し、部分脱アセチル化した後、微粉砕してキトサンを得る。このようにして得られたキトサンの分子量は1万〜100万以上、脱アセチル化度は50%以上、好ましくは80%以上、粒度は36メッシュパス80%以上である。
【0015】
本発明において、キトサンにフィルム形成剤としての機能を期待する場合は、フィルム形成剤としての機能を有する分子量1万以上の高分子量キトサンであって、酸性物質によって溶けている水溶性キトサンが使用される。本発明の好ましい実施形態において、使用される水溶性高分子量キトサンは分子量1万以上の高分子量キトサンの酢酸塩、乳酸塩、塩酸塩、クエン酸塩などである。キトサンは分子量が何十万から百万以上の高分子多糖類であり、優れた食物繊維として知られている。一般には分子量(数平均分子量)が1万以上のキトサンを高分子キトサン、1万以下のキトサンを低分子量のキトサンと呼ぶ。本来、キトサンは高分子のため、水には溶けないが、分子量1万以下にすると水に溶けるようになる。そのため分子量1万以下の低分子キトサンは水溶性キトサンとも呼ばれている。しかし、なかには高分子キトサンでも水に溶けるものがある。これは高分子のキトサンが種々の酸溶媒(酸性物質)に溶ける性質を利用し、高分子のキトサンと一緒に酸溶媒(酸性物質)を配合し水溶性キトサンと称するケースである。本発明はこのタイプの水溶性キトサンも使用することができる。酸溶媒(酸性物質)としてはビタミンC,酢(酢酸)、乳酸、クエン酸などが例示される。
【0016】
キトサンに皮膚に対する保湿性、しっとり感、引き締め作用などの機能を期待する場合は、オリゴキトサン(キトサンオリゴ糖)を含有させるとよい。オリゴキトサンを含むキトサンは、より可溶性であるシートを生じる。オリゴキトサンとする場合には脱アセチル化度は45〜55%とするか、分子量160から3,200の水溶性キトサンとする。このような水溶性キトサンを得るには、希酢酸とメタノールに溶解したキトサン液をピリジン、無水酢酸液に滴下し、常温で5時間撹拌混合し、アセトンを注入してアセトン溶解部分より水溶性キトサンを得る。また、キトサンに濃塩酸を加え、加水分解したキトサンオリゴ糖、若しくはキトサンオリゴ糖のアセチル基に酢酸、ギ酸、乳酸などの有機酸をイオン結合したもの、さらにはキトサンを過酸化水素で処理し、オリゴ糖を得てもよい。また、オリゴキトサンは、キトサン分解酵素(キトサナーゼ)によりキトサンの主鎖を切断して得られるグルコサミンの2個〜7個よりなるオリゴキトサンでもよい。
【0017】
[魚由来コラーゲン]
コラーゲンは通常分子量約10万のポリペプチド鎖が三重らせん構造を形成している。この三重らせん構造が壊れたものが、いわゆるゼラチンと呼ばれ、広く食品素材として利用されている。コラーゲンはグリシンを多く含み、全アミノ酸のうち3分の1を占めている。この他、コラーゲンに特徴的なアミノ酸としてのヒドロキシプロリンを全アミノ酸の10%程度含んでいる。ヒドロキシプロリンは、コラーゲン合成の過程でプロリンが修飾されて生成し、生体内での三重らせん構造を安定化する役割を果たしている。本発明で用いるコラーゲンは魚由来のコラーゲンを酵素分解して、吸収しやすいように低分子化している。化粧品用として皮膚浸透性等の面から、数平均分子量で600〜3,500、好ましくは600〜1,000のより低分子のコラーゲンペプチドを使用する。
本発明で使用する魚由来コラーゲンの一例として魚鱗タンパク質加水分解物(以下、「マリンコラーゲンペプチド」と称することもある。)を挙げることができる。
安全性の高いゼラチン、魚由来のコラーゲン、コラーゲンペプチドが食品、化粧品、医療品の原料として使用されている。魚鱗由来のゼラチン、コラーゲン、コラーゲンペプチドは魚臭や嫌味は魚皮、魚骨由来のものに比べ小さい。魚臭や嫌味は本質的に人に不快感を与えるものであり、無味・無臭の魚鱗タンパク質加水分解物を用いる。
【0018】
魚鱗タンパク質加水分解物は、下記の方法により魚鱗コラーゲンをアルカラーゼ(登録商標)、より具体的には NOVOZYMES社製アルカラーゼ2.4LFG(以下アルカラーゼと記載)により分子量を500〜10,000のペプチドにした魚鱗コラーゲン由来ペプチドである。魚由来コラーゲンにフィルム形成剤としての機能を期待する場合は、フィルム形成剤としての機能を有する高分子量であって、水にも溶けやすいタイプのものを用いる。
分子量400から1,000のコラーゲンオリゴペプチドは、魚鱗を水洗いした後、アルカリ水溶液を用いてコラーゲン以外の蛋白質を除去するアルカリ処理を行い、次に塩酸水溶液を用いてカルシウム成分を除去するために酸処理し、次いで残存するコラーゲン成分をアルカラーゼにより分子量を500〜10,000のペプチドとして抽出して製造する。前記魚鱗は、好ましくは蛋白質の変性温度が寒流域の魚類の蛋白質より高いことから温暖域に生存する魚類の鱗を用いる。前記アルカリ処理は、濃度0.01〜10重量%のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液により、10〜60℃で2〜48時間処理することよりなる。前記酸処理は、濃度0.1〜10重量%の塩酸水溶液により、10〜60℃で1〜48時間処理することよりなる。前記アルカラーゼのよる処理はアルカラーゼ0.05〜0.6重量%液により、pH7で、40〜70℃、1〜48時間処理して分子量を500〜10,000のペプチドにすることよりなる。
【0019】
本発明の魚鱗コラーゲン由来ペプチドの原料とする魚鱗は先に述べたように蛋白質の変性温度が寒流域に生息する魚類より高いことから、タイ国、マレーシア国、インドネシア国、アフリカ沿岸諸国などの温暖域に生息する白身魚の魚鱗を用いた。白身魚類を使用することは、脂質、ヒスタミンが赤身魚類より少なく、タウリンが多いために透明性が得られるからである。魚類としては、マダイ、ヘダイ、クロダイ、ブダイ、アオブダイ、フエフキダイなどが挙げられる。尚、淡水魚であっても使用することができる。
【0020】
細菌および魚臭の除去などは、魚鱗に含まれるコラーゲン以外の蛋白質をアルカリ水溶液で除去することにより行う。アルカリ処理液の濃度0.01〜10重量%好ましくは0.05〜5重量%のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液により、10〜60℃、好ましくは20〜40℃で、5〜48時間アルカリ水溶液処理を行う。
一例として0.01〜0.5重量%の水酸化ナトリウム溶液を原料鱗の10倍量加えて、35℃で24時間処理した場合の、溶出するコラーゲンとコラーゲン以外の蛋白質の量を測定した結果を表1に示す。アルカリ処理液によるコラーゲンの溶出は1重量%で僅かであるため、コラーゲン以外の蛋白質を十分に除去することができる。またこの処理によって紬菌の増殖を抑制し、同時に魚臭の発生を防止することができる。
【0021】
【表1】

【0022】
次に、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムに基づくカルシウム成分は、塩酸水溶液の濃度0.1〜10重量%好ましくは0.5〜5重量%で、10〜60℃好ましくは20〜40℃、1〜48時間の酸処理を行うことにより除去することができる。
アルカリ処理も酸処理も、共に均一な処理を行うには撹拌が重要であり、ロータリー式の回転式処理設傭は有効である。さらに鱗の形状を破砕または粉砕することにより処理時間を短縮することができる。
【0023】
試験例として、塩酸濃度によるカルシウムの除去について、35℃で24時間処理した場合の処理液のカルシウム抽出量を測定したものを表2に示す。塩酸0.6重量%では処理液中のカルシウム量は2.8重量%であるが、塩酸5.9重量%では処理液中のカルシウム量は19重量%に増加している。この場合の残渣(鱗)中のカルシウム量は0.9重量%と低減している。
【0024】
【表2】

【0025】
本発明では魚麟コラーゲン由来ペプチドの調製に使用する蛋白質分解酵素としてアルカラーゼを用いているが本発明に係る魚麟コラーゲン由来ペプチドの機能を確保する点においてその選択は重要である。蛋白質分解酵素には、エキソ型とエンド型のペプチターゼがあり、本発明にはポリペプチドの中間結合部に作用するエンド型が好ましい。エンド型にはペプシン、レニン、トリプシン、キモトリプシン、カテプシン、パパイン、フィシン、トロンビン、コラゲナーゼまたはプロメラインなどがある。そこで、エンド型のペプチターゼ30種について魚鱗コラーゲンの分解を検討した結果、アミノ酸にまで分解されてしまって希望するペプチドが得られなかったり、ペプチドの分子量が希望値に適合しなかったり、ペプチドの収率が少なかったりして、目的とする分子量500〜10,000のペプチドを収率よく工業的に得ることはできなかった。その中でアルカラーゼを用いることで、分子量500〜10,000、好ましくは700〜1,500のペプチドを80%以上の収率で得ることに成功した。さらにアルカラーゼにより得られたペプチドは、後述するようにそのアミノ酸構成に現在最も用いられている豚由来コラーゲンと比べて明確にヒドロキシプロリンが少ないという特徴を有する。
【0026】
本発明の方法ではアパタイトを含有する状態の魚鱗を塩酸処理することなく粉砕し、粉末化することにより、得られた粉末をアルカラーゼ0.05〜0.6重量%液、好ましくは0.1〜0.3重量%液で、pH7に調節して20〜70℃、好ましくは40〜60℃で1〜48時間、カルシウムを除いた魚鱗を処理することによりコラーゲンを酵素分解して分子量500〜10,000のペプチドを抽出することができる。処理時間は、魚鱗の粉末化度や攪拌条件によって相違するが、通常2〜6時間で十分であり魚鱗を微細粉末化することにより処理時間を短縮することができる。その後処理液を濾過することにより目的物のペプチドと、アパタイトを分離回収することができる。
【0027】
本発明で用いる魚鱗コラーゲン由来ペプチドは、分子量が500〜10,000、好ましくは700〜1,500であり、後に記載の実施例で具体的に説明するように本発明のコラーゲンは従来の豚由来コラーゲンに比べて保湿機能に優れたペプチド混合物としての機能を発揮する。
【0028】
[セリシン]
本発明で用いるセリシンについて説明する。セリシンは、カイコの繭または生糸から抽出した高純度のセリシン(加水分解物を含む)が好ましく用いられる。非加水分解物としてのセリシンは、繭または生糸から一般的に行われる抽出方法で得ることができる。繭または生糸に含有されるセリシンを、水によって抽出し、メタノール、エタノール、ジオキサンなどの水溶性有機溶媒を混合してセリシンを析出させた後、これを濾別乾燥して、セリシンを粉体として得る。また、限外濾過膜、あるいは逆浸透膜に付した後、乾燥することによりセリシン粉体を得ることもでき、市販されている。
【0029】
セリシン加水分解物は、セリシン由来のアミノ酸および/またはセリシン蛋白質加水分解物とを含有し、繭または生糸に含有されるセリシンを、酸、アルカリ、あるいは酵素によって部分加水分解して抽出してから、メタノール、エタノール、ジオキサンなどの水溶性有機溶媒を混合してセリシン加水分解物を析出させた後、これを濾別乾燥して、セリシン加水分解物を粉体として得る。また、限外濾過膜、あるいは逆浸透膜に付した後、乾燥することによりセリシン加水分解物粉体を得ることもできき、市販されている。セリシン加水分解物はセリン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸などの含有率が多く、肌に対してアレルギーの防止や肌荒れにも有効である。
【0030】
以上の水溶性キトサン、水溶性キトサンとオリゴキトサンの混合物、セリシンおよび/またはセリシン蛋白質加水分解物とは相互作用してその2者のみを用いた場合でも安定な保湿性組成物を得ることができる。該保湿組成物は、従来の豚由来コラーゲン使用による感触と相違してつるつる感を有する平滑性に優れた保湿膜が得られるという利点がある。
オリゴキトサンと、セリシンおよび/またはセリシン蛋白質加水分解物の配合比率は、オリゴキトサン1に対して、セリシンの合計量は、0.5〜50の重量比で用いるのが適当である。配合比率が、セリシンの使用量が、50以上では、オリゴキトサンの効果が全く得られなくなり、蛋白質の腐敗を招きやすくなる。また、セリシンの使用量が0.5以下では、蛋白質またはアミノ酸を用いて変性する平滑性の造膜効果が得られなくなる。
【0031】
先の2者から選ばれる少なくとも1者に魚鱗タンパク質加水分解物を添加した場合、シートとしての保形性が良好となると共に保湿性がさらに向上するという効果が認められた。(試験例2参照)
【0032】
本発明においては、上記の造膜材料にさらにビタミン類を添加しても良く、ビタミン類(ビタミンC、ビタミンEなど)は造膜性などに悪い影響を与えないのでその際に用いられるビタミン類は特に制限はなく、吸収され皮膚の健康によいものであれば何でもよいが中でもビタミンCはコラーゲンの機能を亢進させる作用などがあることから好ましいものとして例示することができる。そのほかプロポリス、ゲルマニウムなどを配合することもできる。
【0033】
本発明のシート状化粧料は、水溶性であり、オリゴキトサン、セリシン、および主に魚鱗タンパク質加水分解物を由来とするコラーゲン加水分解物からなる群から選ばれる1種以上の保湿、美白等の美容機能を有する天然水溶性高分子を造膜材料とし、好ましくは先のうち少なくとも2種の天然水溶性高分子を含み、より好ましくは3種の天然水溶性高分子を含み、それらのみで造膜材料を構成するものと、それらに水溶性合成皮膜形成性のポリマーであるポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等から選ばれる少なくとも1つのポリマー、中でもポリビニルアルコールを加えてシートとしての強度を向上させたものを含むものである。どちらの場合であっても、先の造膜材料に加えて種々の美容成分等を加えることも可能であり、例えば美容成分としてビタミン類、中でもビタミンCを0.1〜0.2重量%加えることで、先の3種の天然水溶性高分子の美容機能を向上させることができる。またシート自体の保湿性を向上させる為に湿潤剤を加える場合はプロピレングリコール等を用いることができる。
【0034】
先の天然水溶性高分子のみを造膜材料としているシート状化粧料は、予め水や美容液で濡らした皮膚に付着させて皮膚から剥がすことなくそのまま延ばして使用したり、手のひらに取ったシート状化粧料と美容液等とを合わせてシート状化粧料を溶解してから肌に塗って使用する等の使用態様で用いることができ、外出先等での緊急時の使用に適している。
【0035】
後者のポリビニルアルコール等をさらに加えたシート状化粧料はポリビニルアルコールの添加量(例えば5重量%以下)によっては天然高分子のみを造膜材料とする先のシート状化粧料と同様の使用態様を取ることも可能である。主にシート状化粧料を皮膚に付着後にシートを剥がして用いる場合に用いられるシート状化粧料であり、シートの強度も高く湿潤剤や他の美容成分の添加量も増やすことができるので天然水溶性高分子のみを造膜材料とするシート状化粧料とは異なる用途、例えば手軽に皮膚に貼り付けてその後剥がして使用するシート状パック剤としての用途に用いることができる。
【0036】
皮膚に密着後に皮膚から剥がす態様においては、フィルム形成剤として用いられるポリビニルアルコールとしてはケン化度が86から90程度のものを用いる。他の選択肢としては粘度が重要で、組み合わせる成分との関係や形成されるシートの厚みなどを考慮して場合により複数の粘度のものを組み合わせる。例えば、より薄いシートを形成させるには粘度を低目とするなどである。使用量はシートの乾燥重量を100重量%とした場合に20から50重量%程度であり、粘度が低いものを用いた場合は高いものより使用量は多めとなる。その使用量の決定は他の成分と合わせた状態でシートを調製し、シート状化粧料のシートとしての強度、皮膚へ密着度、皮膚からの剥がれやすさなどを目安として決定していけば良い。
【0037】
シートを剥がさずにそのまま用いる場合にポリビニルアルコールを皮膜補強などの用途で添加しておく場合の使用量は湿潤剤の存在の有無などにより異なってくるが5から20重量%程度となる。この際の使用量の上限はシートの水溶性の程度を確認しながら決めていけば良い。
【0038】
シート状化粧料に湿潤剤を加える場合に好ましい湿滑剤は、蜂蜜やプロピレングリコールであり、これは、シート生成物が、水を吸収することを補助することに役立つ。使用される湿滑剤のレベルは、普通は約1重量%から約10重量%程度である。しかし、添加される湿滑剤の量は、シートの形成に不利とならないよう調整しなければならない。
【0039】
シート状化粧料の具備すべき性能として皮膚への密着性があるが、セリシン、キトサンおよびマリンコラーゲンの組み合わせにより作成されたシートは、予め皮膚を水などで処理してあれば通常は他の皮膜形成成分なしでも使用できる。しかしながら、シートとしての強度、保存安定性などを考慮した場合、先に示したようにポリビニルアルコールの添加を検討した方が良い場合も生じる。また、密着性を向上させたい場合はポリビニルアルコールに加えてポリビニルピロリドンを加えると有効な場合がある。そのような場合に用いられるポリビニルピロリドンは、ポリビニルアルコールの使用量以下で用いられる。
【0040】
本発明のシート状化粧料のシート調製方法としては通常行われる乾燥シート調製法を用いることができる。例えばセリシン、水溶性キトサン、マリンコラーゲンおよび水の混合物をローラー成形機を用いて均一な厚さに延展後、室温または加温乾燥することで製造される。ポリビニルアルコールを含む場合には、従来より行われているポリビニルアルコール系フィルムの製法を用いることができるが、各成分を含有後のポリビニルアルコール水溶液を乾燥してシートを形成させる方法を用いることができる。乾燥時に留意すべきことは乾燥後のシート状フィルムの含水率を一定範囲に保つことであり、皮膚への密着性やシートとしての強度を目安として各成分内容に応じてその範囲を設定する必要がある。例えば、セリシン、キトサン、マリンコラーゲンの3者を含み、ポリビニルアルコールを加えた場合にはシート状化粧料の含水率の目安は10%〜20%程度となる。10%以下の含水率となった場合でも使用可能であるが用いた際の肌触りが悪いものとなる。シート状としたのち、得られたシートはアルミパウチなど保存中に含水率が変動しないような商品形態として製品化される。
【0041】
本発明のシート状化粧料は支持体として不織布などの上に積層されたた態様で用いることができる。使用時にシート状化粧料のみをはがして肌に貼り付けることもできるし、シート状化粧料を肌に適用した後に支持体をはがすこともできる。要するに本発明のシート状化粧料を皮膚から剥がすことなく、そのままあるいは皮膚に密着後に化粧クリームのように延ばして使用できるいかなる変形も可能である。
【実施例】
【0042】
本願発明の詳細を各成分の製造例および試験例によって説明する。本願発明はこれら製造例などによって何ら限定されるものではない。
【0043】
[製造例1]
セリシンの製造
生糸500gを、水25リットル中で95℃にて2時間処理し、セリシンを抽出した。得られた抽出液を濾過し凝集物を除去した後、ろ液を得た。ろ液を逆浸透膜により脱塩した。脱塩したセリシン水溶液を濃縮し、凍結乾燥してセリシン粉体(純度95%以上、平均分子量100,000)約50gを得た。
【0044】
[製造例2]
セリシン加水分解物の製造
生糸500gを、0.2%炭酸ナトリウム水溶液(pH11〜12)25リットル中で95℃にて2時間処理し、セリシン加水分解物を抽出した。得られた抽出液を濾過し凝集物を除去した後、ろ液を得た。ろ液を逆浸透膜により脱塩した。脱塩したセリシン加水分解処理水溶液を濃縮し、凍結乾燥してセリシン加水分解物粉体(純度90%以上、平均分子量20,000)約50gを得た。
【0045】
[製造例3]
魚鱗コラーゲン由来ペプチドの製造
タイ国で採取したブダイの鱗を、水洗して、鱗重量の10倍量の0.1N水酸化ナトリウム溶液に35℃で24時間撹拌処理を行って水洗した。次いで3重量%塩酸溶液に35℃で24時間処理してロータリー回転式処理機でカルシウムを除去した、脱カルシウム後に微細に粉砕して、水を注入して60℃としてpH7に調節した。これにBacillus Lichenformisより得たアルカラーゼ2.4LFG(NOYOZYMS杜製品)0.1重量%を撹拌しながら添加して10時間処理を行った。処理後をO.5μmmフィルターおよびメンブレンフィルターを通して噴霧乾燥により白色粉末状の魚鱗コラーゲン由来ペプチドを得た。
得られたペプチドについて、GPC法(Waters社Ultrahydrogel TM 120.78×300 Colu Part No.11520)により分子量分布を測定したものを表3に示す。分子量は、500〜5,000のものが91.5%で平均分子量は989であった。
【0046】
【表3】

【0047】
得た鱗コラーゲン由来ペプチドの構成アミノ酸を、対照として豚コラーゲンおよび鰯鱗コラーゲン由来の構成アミノ酸と比較したものを表4に示す。製造例3の本発明に係る鱗コラーゲン由来ペプチドは、コラーゲン由来のために、グリシン、アラニン、プロリンが高い比率を占めることは豚や鰯鱗由来のものと共通するが、ヒドロキシプロリンとセリンの構成割合が顕著に少ないことが判明した。
【0048】
【表4】

【0049】
(ラットによるコレステロール等試験)
製造例3による、魚鱗コラーゲン由来ペプチドについて、韓国MIRYANG大学生物工学研究室で、ラットを用いて食餌させてコレステロール、血糖値に及ぼす影響を試験した。
(1)試料食餌のブランクの配合を、Casein200部、DL-methionine 3部、Corn starch 150部、Sucrose 490部、Cellulose Powder 50部、Mineral mixture 35部、Vitamine mixture 1O部、Choline bitartrate 2部、Lard 50部、Cholesterol 7.5部およびSodium cholate 2.5部とした。
(2)本発明のペプチドを用いた配合は、上記配合におけるSucrose490部を390部として、残りの100部として製造例3のペプチドを添加した、ラットを31日間飼育し、31日経過後の血清中の総コレステロール値、遊離コレステロール値、中性脂質、血糖濃度等を測定した。
【0050】
(i)コレステロール、HDL-コレステロールおよび動脈硬化指数
31日間実験飼育したラットの血清中の総コレステロール、HDL-コレステロールおよび動脈硬化指数(A.L.)に及ぼす影響を表5に示す。
【0051】
【表5】

【0052】
(ii)LDL-コレステロール値
31日間実験飼育したラットの、血清中のLDL-コレステロール Low density Lipo proteinに及ぼす影響を表6に示す。
【0053】
【表6】

【0054】
(iii)遊離コレステロール等に及ぼす影響
31日間実験飼育したラットの、血清中の遊離コレステロール、コレステロールエステルに及ぼす影響を測定して表7に示す。
【0055】
【表7】

【0056】
(iv)中性脂質等の及ぼす影響
31日間実験飼育したラットの、血清中の中性脂質および燐脂質に及ぼす影響を表8に示す。
【0057】
【表8】

【0058】
(v)血糖濃度
31日間実験飼育したラットの、血清中の血糖濃度に及ぼす影響を表9に示す。
【0059】
【表9】

【0060】
(vi〉Alkaline phosphatase activity
31日間実験飼育したラットの、血清中のAlkaline phosphatase activityに及ぼす影響を表10に示す。
【0061】
【表10】

【0062】
本発明の魚鱗コラーゲン由来ペプチドは、コレステロール低減および血糖値の低減に効果を有するものであり、健康食品としても有効であることが分かる。
【0063】
[実施例1]
マレーシアで採取したフエフキダイの鱗を製造例3の方法によって魚鱗コラーゲン由来のペプチドを製造した。精製水によりペプチド濃度を0.3重量%に調節して皮膚に付与した場合の保湿性の経時的変化を測定して表11に示す。
測定は、24才女性の左腕の内側に、上記試料液を噴霧して皮膚表面の保湿性を、「皮膚水分測定器」(積水化学工業株式会杜製)によって測定した。比較のためにブランクとして精製水のみの場合と、豚由来コラーゲン(平均分子量10,000)0.3重量%溶液、を用いて比較した。測定値が大きいほど保湿性と潤いの高いことを示す。本発明のペプチドが、豚や鰯由来のコラーゲンよりも保湿度および持久性に優れていることが分かる。この効果は該ペプチドの機能性と共に該ペプチドで得られた経皮吸収効果によるものと推定される。
【0064】
【表11】

【0065】
[結果の総括]
本実施例で得られた魚鱗コラーゲン由来ペプチドを、化粧石けんに0.2重量%配合して肌に使用した結果、使用後に肌にしっとりした潤いがあり、肌荒れの予防に有効である。
また、本実施例の魚鱗コラーゲン由来ペプチドを、ご飯の炊飯時に0.1重量%添加した結果、一日経過してブランクのご飯は固くなったが、本発明のペプチドを添加したものは2日経過しても固くならず、柔らかさが保持され、味覚も改善された。また、本実施例で得た魚鱗コラーゲン由来ペプチドを、豆腐に0.2重量%添加して豆腐を製造したところ、弾カがあるプリン状の豆腐が得られ、味覚が改善された。
以上述べたように、本発明は、温暖域に生存する魚類の鱗を資源として、Bacillus Lichenformisにより作られる酵素Alcalaseを用いることで、分子量500〜10,OOOのペプチドをを容易に工業的に製造することができ、その低分子ポリペプチドを化粧晶に使用した場合、保湿性と潤いに優れ、健康食品に使用したとき、コレステロール低減、血糖値低減の効果があり、食品添加物では味覚改善に有効である。
【0066】
[実施例1]
魚鱗由来コラーゲンペプチドの皮膚保湿性に与える影響の検討
マレーシアで採取したフエフキダイの鱗から製造例3の方法によって魚鱗コラーゲン由来ペプチドを製造した。精製水によりペプチド濃度を0.3重量%に調節して皮膚に付与した場合の保湿性の経時的変化を測定した。得られた結果を表12に示す。
測定は、24才女性の左腕の内側に、上記試料液を噴霧して皮膚表面の保湿性を、「皮膚水分測定器」(積水化学工業株式会社製)によって測定した。比較のためにブランクとして精製水のみの場合と、豚由来コラーゲン(平均分子量10,000)0.3重量%溶液、を用いて比較した。測定値が大きいほど保湿性と潤いの度合いが高いことを示す。本発明のペプチドが、豚由来のコラーゲンよりも保湿度および持久性に優れていることが判明した。この効果は該ペプチドの機能性と共に該ペプチドで得られた経皮吸収効果によるものと推定された。
【0067】
【表12】

【0068】
[実施例2]
シート状化粧料の製造
加熱可能な容器中に 製造例1で得たセリシン粉体を5g、製造例2で得たマリンコラーゲン粉末5g、キトサン(カニ由来)(焼津水産化学工業)の乳酸塩 0.5g、オリゴキトサン(日本理化)0.1gに精製水を適当量加えて温度を加えつつ膨潤させた。その後の展延処理の方法に応じた粘度になるよう調整後にシリコンなどで平滑処理した板上に展延してシート状とした。乾燥処理中にシートの一部を採取して水分量をカールフィッシャー法で測定し、略15%程度の水分量となるまで乾燥させた。シート表面に剥離用フィルムを重ねてから適当な大きさに裁断し、ガスバリア性のポリエチレン製の袋に装填した。
【0069】
[実施例3]
シート状化粧料の製造(水溶性合成高分子の添加)
加熱可能な容器中に 製造例1で得たセリシン粉体を5g、製造例2で得たマリンコラーゲン粉末5g、キトサン(カニ由来)(焼津水産化学工業)の乳酸塩 0.5g、オリゴキトサン(日本理化)0.1gに精製水を適当量加えて必要に応じて加熱しながら膨潤させた。一定に撹拌しながら、パック基剤用ポリ酢酸ビニル粉体7gを温度を加えつつゆっくりと添加した。ポリビニルアルコールが加えられた混合物は粘度が高くなるにつれて展延後に形成されるシート状化粧料はより厚くなる。より薄いシートを得るためには水などを添加して混合物の粘度を下げる必要がある。他の成分、例えば湿潤剤や他の薬効成分などをさらに加える場合は、ポリビニルアルコール添加後に行うと良い。シート粘度を調整することと併せて薬効成分などを添加する際に水を添加することはそれらの成分をシート中に均一に分散させる効果がある。シート乾燥後は実施例1と同様に取り扱うが、実施例2のシートに比べて皮膜強度があるため取り扱いはより容易である。
【0070】
[実施例4]
シート状化粧料のシートとしての評価と化粧料としての評価
オリゴキトサン(平均分子量674)(グループ1)、セリシン加水分解物(平均分子量2,000)(グループ2)、および魚鱗コラーゲンペプチド(平均分子量726)(グループ3)、オリゴキトサン(平均分子量674)およびセリシン加水分解物(平均分子量20,000)の混合物(グループ4)、オリゴキトサン、セリシン加水分解物および魚鱗コラーゲンペプチドの混合物(グループ5)を用いて実施例2と同様の調製を行い各成分を含有するシート状化粧料を得た。
これらのシートについて、
1)皮膚上での延び、皮膚に対する違和感および皮膚に対する密着感の3点につき、いわゆるシート状化粧料として用いた場合のシートの適合度を評価した。結果を表13に示す。
(評価方法)
皮膚上での延び、皮膚に対する違和感:市販美容液0.3mlを半顔に塗布した後にシートを張り付け、皮膚上で指でのばした時の皮膚に対する密着感、皮膚に対する違和感を専門パネラー10名で評価した。
◎;7名以上がよくのびて違和感がなく、皮膚にしっとりと密着感を与えると応えた。
○;5〜6名がよくのびて違和感がなく、皮膚にしっとりと密着感を与えると応えた。
△;3〜4名がよくのびて違和感がなく、皮膚にしっとりと密着感を与えると応えた。
×;2名以下がよくのびて違和感がなく、皮膚にしっとりと密着感を与えると応えた。
【0071】
【表13】

【0072】
2)皮膚に潤いを与えるいわゆる化粧効果:1)の皮膚付着感を評価した後、張り付けたシートに再度化粧水を噴霧し全顔に、まんべんなくのばしたときの皮膚に潤いを与えるいわゆる化粧効果を評価した。結果を表14に示す。
(評価方法)
○;膜が均一にのびて皮膚全体が潤いを感じた。
△;膜ののびが若干悪いが皮膚全体が潤いを感じた。
×;膜がのびなくて皮膚全体が潤いを感じるまでにはならなかった。
【0073】
【表14】

【0074】
表13,表14の結果から、本発明の実施例4に係るシート状化粧料(グループ3〜5)は、用いやすいシートであり、かつ、化粧効果にも優れていることが明らかとなった。
【0075】
[実施例5]
シート状化粧料と市販美容液とを組合せて使用したときの、皮膚水分量および皮膚の状態を評価した。すなわち、市販美容液0.3mlを全顔に塗布した後に本発明シート(実施例3のシート)または比較シート(不織布、膜強度150,000gf/mm2 、厚さ3mm)を張り付け、15分間放置した後、剥離した。測定は、20℃、15%RHの冬場の乾燥した条件で行い、水分量は、スキコン−200(IBS社製)を用いて、美容液を基準として、相対値で示した。また、皮膚(キメ)の状態は、皮膚を顕微鏡で拡大して観察し、専門家による目視判定を行い、塗布前の皮膚とキメの整い具合を比較して、キメが改善した場合を○、やや改善した場合を△、変化しなかった場合を×で示した。結果を表15に示す。
【0076】
【表15】

【0077】
表15の結果より、本発明のシート状化粧料を併用した場合には、美容液の効果の向上が認められた。以上より、本発明の実施例3の、皮膚に装着後に剥がして使用するシート状化粧料は化粧効果の高いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、水または化粧水で溶かして肌に適用するシート状化粧品の種々の形態の商品を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キトサン、魚由来コラーゲンおよびセリシンからなる群から選ばれる1種以上の天然高分子を含む組成物から形成される水溶性シートからなり、その水溶性シートを水で溶かしてその水溶性高分子の皮膚に付着させて皮膚平滑性を向上させる等の機能を利用するシート状化粧料。
【請求項2】
皮膚への付着を、適用する皮膚に水分を与えた後、水溶性シートを付着させる、または適用する皮膚に水溶性シートを置いた後、該シートに水分を与える、または水溶性シートを手のひらで水分を与え溶かし、それを適用する皮膚に延ばすことにより行う請求項1のシート状化粧料。
【請求項3】
皮膚に適用され皮膚から剥がすことなくそのままあるいは延ばして使用する、または皮膚に適用され乾燥させらされ、次いで取り除かれる請求項1または2のシート状化粧料。
【請求項4】
キトサンが、フィルム形成剤としての機能を有する数平均分子量1万以上の高分子量キトサンであって、酸性物質によって溶けている水溶性キトサン、または数平均分子量約数百〜2千のキトサンオリゴ糖である請求項1,2または3のシート状化粧料。
【請求項5】
魚由来コラーゲンンが、酸または酵素により加水分解された魚鱗由来コラーゲン加水分解物である、請求項1ないし4のいずれかのシート状化粧料。
【請求項6】
セリシンが繭または粗絹糸の熱湯処理で溶出したセリシン、またはセリシン蛋白質の部分加水分解させて抽出、分離した数平均分子量約1〜2万のセリシン蛋白質加水分解物である、請求項1ないし5のいずれかのシート状化粧料。
【請求項7】
天然物質が、魚鱗由来の数平均分子量400〜1000のコラーゲンオリゴペプチドおよび数平均分子量500〜800のキトサンオリゴ糖を水に溶解し、加熱して該キトサンオリゴ糖の2級アミンと該オリゴペプチドのC末端アミノ酸のカルボキシル基とを反応させたものである請求項1ないし6のいずれかのシート状化粧料。
【請求項8】
天然物質が、魚鱗由来の数平均分子量400〜1000のコラーゲンオリゴペプチド、数平均分子量500〜800のキトサンオリゴ糖およびセリシン蛋白質の部分加水分解させて抽出、分離した数平均分子量約1〜2万のセリシン蛋白質加水分解物を水に溶解し、加熱して該キトサンの2級アミンと該オリゴペプチドおよび/またはセリシン蛋白質加水分解物のC末端アミノ酸のカルボキシル基とを反応させたものである請求項1ないし6のいずれかのシート状化粧料。
【請求項9】
上記の1種以上の天然高分子を含む組成物がフィルム形成剤として機能するポリビニルアルコールを含むことを特徴とする、請求項1ないし8のいずれかのシート状化粧料。
【請求項10】
水溶性シートの少なくとも1面を覆うコート層を持つことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかのシート状化粧料。
【請求項11】
上記の1種以上の天然高分子を含む組成物がフィルム形成剤として機能するキトサン、魚由来コラーゲンおよびセリシンからなる群から選ばれる1種以上の天然高分子と、皮膚平滑性を向上させる機能のために吸収しやすいように低分子化したキトサン、魚由来コラーゲンおよびセリシンからなる群から選ばれる1種以上の天然高分子との混合物である請求項1ないし10のいずれかのシート状化粧料。
【請求項12】
キトサンが、フィルム形成剤としての機能を有する分子量1万以上の高分子量キトサンであって、酸性物質によって溶けている水溶性キトサン、および分子量約数百〜2千のキトサンオリゴ糖の混合物である請求項11のシート状化粧料。
【請求項13】
魚由来コラーゲンが、フィルム形成剤としての機能を有する分子量10万ないし100万の高分子量魚鱗由来コラーゲン加水分解物および分子量400から1,000のコラーゲンオリゴペプチドの混合物である請求項11のシート状化粧料。
【請求項14】
セリシンが繭または粗絹糸の熱湯処理で溶出したセリシンおよびセリシン蛋白質の部分加水分解させて抽出、分離した数平均分子量約1〜2万のセリシン蛋白質加水分解物の混合物である、請求項11のシート状化粧料。












【公開番号】特開2008−69116(P2008−69116A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250325(P2006−250325)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(506294462)
【Fターム(参考)】