説明

シート状物のコイルの末端をテープ止めする装置および方法

【課題】プラスチック気泡シートのコイルを対象にして、巻き取りの末端を自動的に検出し、それによってコイルの末端を粘着テープでテープ止めする作業を自動化できる装置を提供し、製造されたプラスチック気泡シートの巻き取りからコイルの自動包装に至る一連の作業を自動化したラインを実現する。
【解決手段】下記の手順を実行するテープ止め装置:
イ)シート状物のコイル(1)をシート末端吸着・脱着装置(3)とコイル支持ロール(4)とで支持し、ロ)シート末端を通気性無端ベルト(31)に吸着させて繰り出し、ハ)光学検出装置(5)によってシート末端の位置を検知し、ニ)シート末端を通気性無端ベルト(31)から脱着させてコイルに沿わせた後、シート末端をコイル中心のほぼ真下に位置させ、ホ)オートラベラー(6)を作動させて、シート末端を粘着テープ(2)でコイルに固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状物を巻いてコイル状にしたものの末端を粘着テープで止めるテープ止め装置と、その装置を使用するテープ止め方法に関する。シート状物としてはプラスチック気泡シートが代表的なものであり、本発明はこれを対象とするとき、とくにその意義を発揮するから、以下、もっぱらプラスチック気泡シートについて説明する。本発明はまた、このテープ止め装置を包含する、プラスチック気泡シート自動包装ラインをも包含する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック気泡シート、すなわちプラスチックフィルムを真空成形して多数のキャップ状の突起を形成したキャップフィルムと、平坦なバックフィルムおよび(または)ライナーフィルムとを貼り合わせてなるシートが、緩衝包装そのほかの分野で広く利用されている。このプラスチック気泡シートは、普通、長尺の製品を連続的に製造し、巻き取ってコイル状にした形で流通させている。
【0003】
このプラスチック気泡シートは、普通、巻き終わった末端がほどけないように粘着テープで固定し、それをさらにプラスチックフィルムで包装して出荷する。このテープ止め作業は手作業で行なわれており、全体の作業を自動化・省力化する上で、妨げになっていた。製造したプラスチック気泡シートの巻き取りは当然に自動的に行われるし、プラスチックフィルムによる包装もまた自動化されていたから、このテープ止め作業さえ自動化できれば、ライン全体を自動化することができる。
【0004】
プラスチック気泡シートのコイルの末端をテープ止めする作業が自動化できない理由は、気泡シートの末端を検知することの困難さにある。検知の技術としては、電磁気的な手法は利用できないので、レーザー光や赤外線を利用した光学的センサーによることになるが、光学的な手法は、プラスチック気泡シートのような透明ないしほぼ透明なものに対しては、従来、有効でないとして採用されなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基本的な目的は、上記の問題を解決し、プラスチック気泡シートのような透明な、または透明に近い材料のコイルを対象にして、巻き取りの末端を自動的に検出し、それによってコイルの末端を粘着テープでテープ止めする作業を自動化できる装置を提供することにある。本発明のさらなる目的は、その装置を利用して、製造されたプラスチック気泡シートの巻き取りからコイルの自動包装に至る一連の作業を自動化した、ラインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のテープ止め装置は、プラスチック気泡シートのようなシート状物のコイルの末端を粘着テープで固定するための装置であって、全体の構成を図1に示し、その作用機構を図I〜Vに示すように、下記の構成部分からなる装置である。
通気性無端ベルト(31)と、それを支持して正逆方向に回転可能な一対のベルト支持ロール(32A,32B)とに、2枚の側面シール板(33)を加えて、ほぼ垂直方向に配置された閉鎖室を形成し、この閉鎖室の内部の空気を吸引して減圧し、また常圧にすることができる真空源を付加してなる無端ベルト型のシート末端吸着・脱着装置(3);
シート末端吸着・脱着装置(3)と共働してコイルを支持し、ベルト支持ロール(32A,32B)と同調して正逆方向に回転可能なコイル支持ロール(4);
通気性無端ベルト(31)上に吸着されたシートの末端を検出するための、光放射手段(51)と反射光受光手段(52)とからなる光学検出装置(5);
シートの末端をコイル中心の直下に位置させるために必要な、コイルを回転させる方向と角度とを算出し、ベルト支持ロール(32A,32B)とコイル支持ロール(4)とを回転させるための演算・制御装置(図示してない);ならびに
シート末端吸着・脱着装置(3)とコイル支持ロール(4)との間に位置し、粘着テープ(2)を吸引保持するテープ保持無端ベルト(61)、このテープ保持無端ベルトをコイルに向って前進させて押しつけ、また後退させることができる前進後退手段に(図示してない)、剥離紙上に個々の粘着テープをのせたものを供給する粘着テープ供給源(これも図示してない)を加えてなるオートラベラー(6)。
【発明の効果】
【0007】
本発明のテープ止め装置を使用すれば、従来は不可能としてあきらめていた、プラスチック気泡シートのような透明な材料を巻き取ったコイルの末端を自動的に検出し、その上に粘着テープを貼り付ける作業を完全に自動化することが可能になり、省力による生産性の向上、およびコストの削減が実現する。これをプラスチック気泡シートの製造ラインに直結させることにより、気泡シートの製造−自動巻き取りによるコイル製造−末端のテープ止め−フィルムを用いた自動包装という一連の作業を、完全に自動化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上述のテープ止め装置を使用したシート状物のコイル(1)末端を粘着テープ(2)で固定するテープ止め作業は、つぎのように行なう:
イ)まず、図2のIに示すように、シート状物のコイル(1)をシート末端吸着・脱着装置(3)とコイル支持ロール(4)とで支持し、シート末端吸着・脱着装置(3)の閉鎖室内を減圧にして、
ロ)シート末端吸着・脱着装置(3)のベルト支持ロール(32A,32B)とコイル支持ロール(4)との協働により、コイルを繰り出し方向(図示した例では右回り)に回転させて、シート末端を通気性無端ベルト(31)に吸着させ、その状態でさらにコイルを回転させて、図2のIIに示すように、コイルからシートの末端を繰り出すようにし、
ハ)図2のIIIに示すように、光学検出装置(5)によって、通気性無端ベルト(31)上に繰り出されたシート末端の位置を検知し、
ニ)続いて、図2のIVに示すように、閉鎖室内の減圧を開放してシート末端を通気性無端ベルト(31)から脱着させ、コイルをいったん巻き込み方向(図示した例では左回り)に回転させてシート末端をコイルに沿わせた後、再び繰り出し方向に回転させ、その回転角度を演算・制御装置により算出した角度とすることにより、シート末端をコイル中心のほぼ真下に位置させ、
ホ)最後に、図2のVに示すように、オートラベラー(6)を作動させて、シート末端を粘着テープ(2)でコイルに固定すること。
【0009】
シートの末端を検知する光学センサーは、前述のように、透明またはそれに近い材料が重なっている場合に末端を検出するという目的に関しては、一般に無力に近かったから、プラスチック気泡シートのコイルをそのまま、つまりシートの末端がコイルの上にある状態で検出することは、絶望的であった。しかし発明者らは、シートの末端が、たとえば磨かれた金属板の表面に存在するところに赤外線を照射して反射光を受光した場合、プラスチック材料と金属材料との境界、すなわちシートの末端の位置を検知することが十分に可能であることを確認し、そのような条件を実現することで、既存の光学センサーによるシート末端の検出を可能にした。
【0010】
上述したところから明らかなように、シート末端吸着・脱着装置(3)の通気性無端ベルト(31)は多数の孔を設けた金属板で製作し、磨いて反射率の高い表面をもったものとすることが推奨される。赤外線センサーは、市販のものを使用することができる。また、検出されたシート末端に粘着テープを貼り付けるオートラベラー(6)も、市販のものが使用可能である。
【0011】
上述のテープ止め装置を使用した本発明のプラスチック気泡シートのコイルを自動包装するラインは、図3に示すように、下記の構成部分からなる:
巻取装置において巻き取られたシート状物のコイル(1)を受け入れるための、シュート(A1)、コンベア(A2)および進退可能に設けたストッパー(A3)からなるコイル受入手段(A);
コイル受入手段(A)からのコイルを受け取り、テープ止め装置(C)に受け渡すための、Y字断面の台とこの台を左右に揺動させる揺動手段とからなるコイル受け渡し手段(B);
上述したテープ止め装置(C);
テープ止めを施されたコイルの軸の方向を、水平面上で90度変化させて自動包装機に送り出すための方向転換機(D);ならびに、
テープ止めを施され、送り出されたコイルを引き取って自動包装するための自動包装機(図示してない)。
【0012】
以上、本発明をプラスチック気泡シートのコイルの末端をテープ止めする場合について説明したが、本発明は類似のシート状物のコイルの末端をテープ止めする場合に広く応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のシート状物のコイルの末端を粘着テープで固定するためのテープ止め装置の全体の構成を示す斜視図。
【図2】図1のテープ止め装置の作用機構を説明するための主要部の側面図であって、それぞれ下記の段階を示す:Iはテープ止め装置上にコイルを位置させたところ、IIはシート末端を少し繰り出したところ、IIIは光学検出装置(5)によってシート末端の位置を検知したところ、IVはシート末端をコイル中心のほぼ真下に位置させたところ、Vはシート末端を粘着テープでコイルに固定したところ。
【図3】図1のテープ止め装置を使用する、本発明のプラスチック気泡シートのコイルを自動包装するラインについて、全体の構成を示す図であって、Aは平面図、Bは側面図。
【符号の説明】
【0014】
1 シート状物のコイル
2 粘着テープ
3 シート末端吸着・脱着装置
31 通気性無端ベルト 32A,32B ベルト支持ロール
33 側面シール板
4 コイル支持ロール
5 光学検出装置
51 光放射手段 52 反射光受光手段
6 オートラベラー
61 テープ保持無端ベルト
A コイル受入手段
A1 シュート A2 コンベア
A3 ストッパー
B コイル受け渡し手段
C テープ止め装置
D 方向転換機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状物のコイル(1)の末端を粘着テープ(2)で固定するためのテープ止め装置であって、下記の構成部分からなる装置:
通気性無端ベルト(31)と、それを支持して正逆方向に回転可能な一対のベルト支持ロール(32A,32B)とに、2枚の側面シール板(33)を加えて、ほぼ垂直方向に配置された閉鎖室を形成し、この閉鎖室の内部の空気を吸引して減圧し、また常圧にすることができる真空源を付加してなる無端ベルト型のシート末端吸着・脱着装置(3);
シート末端吸着・脱着装置(3)と共働してコイルを支持し、ベルト支持ロール(32A)と同調して正逆方向に回転可能なコイル支持ロール(4);
通気性無端ベルト(31)上に吸着されたシートの末端を検出するための、光放射手段(51)と反射光受光手段(52)とからなる光学検出装置(5);
シートの末端をコイル中心の直下に位置させるために必要な、コイルを回転させる方向と角度とを算出し、ベルト支持ロール(32A)とコイル支持ロール(4)とを回転させるための演算・制御装置;ならびに
シート末端吸着・脱着装置(3)とコイル支持ロール(4)との間に位置し、粘着テープ(2)を吸引保持するテープ保持無端ベルト(61)、テープ保持無端ベルトをコイルに向って前進させて押しつけ、また後退させることができる前進後退手段に、剥離紙上に個々の粘着テープをのせたものを供給する粘着テープ供給源を加えてなるオートラベラー(6)。
【請求項2】
請求項1に記載のテープ止め装置を使用してシート状物のコイル(1)の末端を粘着テープ(2)で固定するテープ止め方法であって、下記の操作からなる方法:
イ)シート状物のコイル(1)をシート末端吸着・脱着装置(3)とコイル支持ロール(4)とで支持し、シート末端吸着・脱着装置(3)の閉鎖室内を減圧にして、
ロ)シート末端吸着・脱着装置(3)の支持ロール(32A,32B)とコイル支持ロール(4)との協働により、コイルを繰り出し方向に回転させて、シート末端を通気性無端ベルト(31)に吸着させ、その状態でさらにコイルを回転させて、コイルからシートの末端を繰り出すようにし、
ハ)光学検出装置(5)によって、通気性無端ベルト(31)上に繰り出されたシート末端の位置を検知し、
ニ)閉鎖室内の減圧を開放してシート末端を通気性無端ベルト(31)から脱着させ、コイルをいったん巻き込み方向に回転させてシート末端をコイルに沿わせた後、再び繰り出し方向に回転させ、その回転角度を演算・制御装置により算出した角度とすることにより、シート末端をコイル中心のほぼ真下に位置させ、
ホ)オートラベラー(6)を作動させて、シート末端を粘着テープ(2)でコイルに固定すること。
【請求項3】
プラスチック気泡シートのコイルを自動包装するラインであって、下記の構成部分からなるライン:
巻取装置において巻き取られたシート状物のコイル(1)を受け入れるための、シュート(A1)、コンベア(A2)および進退可能に設けたストッパー(A3)からなるコイル受入手段(A);
コイル受入手段(A)からのコイルを受け取り、テープ止め装置(C)に受け渡すための、Y字断面の台とこの台を左右に揺動させる揺動手段とからなるコイル受け渡し手段(B);
請求項1に記載のテープ止め装置(C);
テープ止めを施されたコイルの軸の方向を、水平面上で90度変化させて自動包装機に送り出すための方向変換機(D);ならびに、
テープ止めを施され、送り出されたコイルを引き取って自動包装するための自動包装機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−63044(P2008−63044A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240781(P2006−240781)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】