説明

シート状物の周期性欠陥検査装置

【課題】シート状物に発生した周期性の凹凸状欠陥を安価な装置構成で比較的単純な信号処理によってリアルタイムに判定し、信頼性の高い周期性欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】走行するシート状物の幅方向を照明する照明手段と、反射光を検出する撮像手段と、検出した欠陥を画像判定してシート状物の幅方向の位置情報を演算し、その幅方向の位置情報に基づいて複数の領域に分別する幅方向領域分別手段と、該幅方向領域分別手段から欠陥検出のタイミングで外部へ電気信号として出力する信号出力手段と、特定の周期性欠陥判定処理手段とを具備ことを特徴とするシート状物の周期性欠陥検査装置により、上記課題を解決しえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状物の周期性欠陥をインラインで低コストかつ確実に検出する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶等に用いる光学フィルムや電子機器部品等に用いる高機能性フィルムは、近年ますます欠陥に対する要求規格が厳しくなりつつある。これらのシート状物はクリーンルームで製造され、製造ライン中にある欠陥検査機によってシート状物の欠陥を検出することで品質の管理が行われている。しかしながら、工程内のロール等に付着した異物が原因となってシート状物表面に凹凸状の欠陥等が発生することがある。この凹凸状欠陥を検知するために、生産工程において、シート状物に照射した光の透過や反射を撮像手段よって検出する欠陥検査機が設置されている。ところで、ロールに付着した異物が原因となる欠陥は、その異物が剥がれない限り、そのロール外周の周期で連続した欠陥となる。その周期性の欠陥が規格外の凹凸状欠陥である場合には、発見が遅れると膨大な廃棄損出や機会損出につながるといった問題があった。また、工程に設置した欠陥検査機は、有害となる凹凸状欠陥の他に、後工程で除外可能なシート状物表面に付着した異物も検出するため、周期的に発生する凹凸状欠陥とその他の欠陥や異物とをリアルタイムに判別することは困難である。
【0003】
この問題を解決するため、シート状物の欠陥の検出頻度に応じて任意に変更可能な長手方向の区間を設定し、その一定区間内で複数の周期性欠陥を判定する方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。しかしながら、この方法は設定した長手方向の区間が過ぎないと周期性欠陥の判定ができず、結果的に発見が遅れるといった問題がある。また、シート状物の幅方向を複数に分割したエリアにおいて、同じエリア内に検出した欠陥の長手方向の位置情報から各欠陥の距離を算出し、周期性欠陥を早期に発見する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、この方法は、分割したエリア内に周期性欠陥以外の欠陥が混入した場合、判定ミスが生じるリスクがあり、その判定ミスを軽減するためには、分割エリアをより細かくする必要があり、その結果の分割した数だけ周期性判定手段が必要となって検査装置に多大なコストがかかるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−329598
【特許文献2】特開2004−245720
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の技術の上記問題点を解決し、シート状物に発生した周期性欠陥を、比較的単純な演算処理によってインラインで漏れなく検出し、信頼性の高い周期性欠陥検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、走行するシート状物の幅方向を照明する照明手段と、反射光を検出する撮像手段と、
検出した欠陥を画像判定してシート状物の幅方向の位置情報を演算し、その幅方向の位置情報に基づいて複数の領域に分別する幅方向領域分別手段と、
該幅方向領域分別手段から欠陥検出のタイミングで外部へ電気信号として出力する信号出力手段と、
周期性欠陥判定処理手段とを具備し、該周期性欠陥判定処理手段は、該信号出力手段から欠陥検出時の電気信号を領域毎に並列で入力し、領域毎に入力した時間間隔から各欠陥同士の長手方向の距離を時系列に算出して蓄積する欠陥距離算出手段と、該欠陥距離算出手段によって算出した各欠陥の距離を予め設定した条件に基づいて逐次加算または減算して欠陥距離加減算変数に格納し、この欠陥距離加減算変数と予め設定した周期判定のための距離を照合する周期性欠陥照合手段と、照合結果に基づいて周期性欠陥の判定を行う周期性欠陥判定手段とから構成されることを特徴とするシート状物の周期性欠陥検査装置に関する。
【0007】
好ましい実施態様としては、前記周期性欠陥判定手段は、予め設定した周期判定のための距離に対して、前記欠陥距離加減算変数の値が小さい場合には逐次加算し、周期判定の距離と欠陥距離加減算変数値が一致した場合、または、超過した場合に、加算した最も古い順番に欠陥との距離を減算し、続けて新たに検出した欠陥の距離を加算して周期判定の距離との照合を連続して繰り返すことを特徴とするシート状物の周期性欠陥検査装置に関する。
【0008】
好ましい実施態様としては、前記周期性欠陥判定手段は、予め設定した周期判定のための距離に対して、欠陥長手方向距離を加算した欠陥距離加減算変数値が満たない場合には逐次加算し、周期判定の距離と変数値が一致した場合に、周期性欠陥の候補として周期判定変数にカウント値を1つ加算し、周期判定変数が予め設定した時間内に予め設定したしきい値に到達した場合に周期性欠陥として判定することを特徴とする周期性欠陥検査装置に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シート状物に発生した欠陥情報に基づいて、安価な装置構成で比較的単純な信号処理によって周期的な凹凸状欠陥をリアルタイムに判定することが可能となり、信頼性の高い欠陥検査装置が得られる。その結果、工程異常を早期に発見して損出拡大を防止し、信頼性の高い品質管理ができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】発明の実施形態に係るシート状物の周期性欠陥検査装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るシート状物の幅方向領域分別の一例と欠陥配置を示す模式図である。
【図3】発明の実施形態に係るシート状物の周期性欠陥検査装置における周期性欠陥判定処理フローの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係わるシート状物の周期性欠陥検査装置は、走行するシート状物の幅方向を照明する照明手段と、反射光を検出する撮像手段と、
検出した欠陥を画像判定してシート状物の幅方向の位置情報を演算し、その幅方向の位置情報に基づいて複数の領域に分別する幅方向領域分別手段と、
該幅方向領域分別手段から欠陥検出のタイミングで外部へ電気信号として出力する信号出力手段と、
周期性欠陥判定処理手段とを具備し、該周期性欠陥判定処理手段は、該信号出力手段から欠陥検出時の電気信号を領域毎に並列で入力し、領域毎に入力した時間間隔から各欠陥同士の長手方向の距離を時系列に算出して蓄積する欠陥距離算出手段と、該欠陥距離算出手段によって算出した各欠陥の距離を予め設定した条件に基づいて逐次加算または減算して欠陥距離加減算変数に格納し、この欠陥距離加減算変数と予め設定した周期判定のための距離を照合する周期性欠陥照合手段と、照合結果に基づいて周期性欠陥の判定を行う周期性欠陥判定手段とから構成されることを特徴としている。
【0012】
ここで、凹凸状欠陥とは、シート状物の搬送手段のロールや熱ロールやニップロール等の表面に異物が付着した場合に、そのロール上をシート状物が通過した際に、異物が接触した部位が凹み、場合によってはその反対面が凸状となる欠陥をいう。
【0013】
このロールに付着した異物が原因となった凹凸状欠陥は、ロール上の異物が除去されるまでロール外周の間隔で周期的に発生する。
【0014】
ここで、撮像手段は、シート状物に照射した光の反射または透過方向からイメージセンサカメラ等で検出し、欠陥部と欠陥のないシート状物との地合とをしきい値で判別して二値化画像の欠陥を検出する。
【0015】
この撮像手段によって検出される欠陥は、凹凸状欠陥やシート状物の内部欠陥やシート状物表面の疵や付着異物等があり、シート状物の地合とコントラストの差があれば全て検出される。
【0016】
ここで、幅方向領域分別手段では、欠陥のシート状物幅方向の位置情報から複数に分割した領域に分別し、ロールへの付着異物に起因した周期性欠陥が検出されたときに、その付着した部位を素早く発見して掃除しやすい範囲と、領域毎に並列で行う周期判定処理の負荷とを考慮して、10mm〜200mmの範囲で設定することが好ましく、より好ましい範囲は30mm〜100mmである。
【0017】
ここで、信号出力手段では、幅方向領域分別手段の情報に基づいて、各領域で設定した欠陥距離算出手段の入力部に電気信号をリアルタイムに出力する。
【0018】
ここで、周期性欠陥判定処理手段とは、欠陥距離算出手段と、周期性欠陥照合手段と、周期性欠陥判定手段とから構成される。
【0019】
ここで、欠陥距離算出手段では、各領域で欠陥検出時の入力時間間隔とシート状物生産工程内に設置したエンコーダから換算した速度情報を基に、各欠陥の距離を算出して欠陥距離加減算変数に格納する。
【0020】
ここで、周期性欠陥照合手段では、欠陥距離加減算変数の値と予め設定した周期判定のための距離とを逐次照合し、一致した場合には周期性欠陥の候補として周期欠陥候補カウンタに値を一つ追加する。
【0021】
ここで、周期性欠陥判定手段は、周期欠陥候補カウンタの値が予め設定したしきい値に達し、かつ、予め設定した周期性欠陥判定タイマー以内であれば周期性欠陥と判定する。
【0022】
上記構成によれば、シート状物幅方向で分別した領域毎で、欠陥の検出の時間間隔から欠陥毎の距離を換算するので、比較的単純な信号処理によってリアルタイムに周期性欠陥の判定が可能となる。
【0023】
本発明に係わるシート状物の周期性欠陥検査装置においては、前記周期性欠陥判定手段は、予め設定した周期判定のための距離に対して、前記欠陥距離加減算変数の値が小さい場合には逐次加算し、周期判定の距離と欠陥距離加減算変数値が一致した場合、または、超過した場合に、加算した最も古い順番に欠陥との距離を減算し、続けて新たに検出した欠陥の距離を加算して周期判定の距離との照合を連続して繰り返すことが好ましい。
【0024】
ここで、周期性欠陥判定手段において周期判定の設定は、生産工程で使用している複数のロールの外周を設定し、異物が付着すると剥がれにくい粘着ロールや熱ロール等に絞り込むことが好ましい。
【0025】
ここで、予め設定した周期判定の距離と欠陥距離加減算変数値との照合は、エンコーダによって換算したシート状物の速度の誤差と、欠陥検出時の信号入力時間間隔の計時誤差とを考慮し、欠陥距離加減算変数値に所定の幅を持たせて周期判定の距離と一致の判定を行うことが好ましい。
【0026】
ここで、欠陥距離加減算変数は、予め設定した周期判定まで欠陥毎の距離を逐次加算していき、一致または超過したときに、最も古い順番に欠陥との距離を減算し、続けて新たに検出した欠陥の距離を加算することを繰り返すことにより、周期性欠陥の間にその他の欠陥や異物が検出された場合においても判定ミスが生じることが無く検査ができる点で優れている。
【0027】
本発明に係わるシート状物の周期性欠陥検査装置においては、前記周期性欠陥判定手段は、予め設定した周期判定のための距離に対して、欠陥長手方向距離を加算した欠陥距離加減算変数値が満たない場合には逐次加算し、周期判定の距離と変数値が一致した場合に、周期性欠陥の候補として周期判定変数にカウント値を1つ加算し、周期判定変数が予め設定した時間内に予め設定したしきい値に到達した場合に周期性欠陥として判定することが好ましい。
【0028】
ここで、周期性欠陥判定手段で予め設定した周期判定の距離と欠陥距離加減算変数値が一致した場合に、周期性欠陥の候補として周期判定変数にカウント値を1つ加算し、そのカウント値が予め設定したしきい値に到達した場合に周期性欠陥として判定する方法において、カウント値のしきい値を3以上にすることが過剰検知を防ぐ点で好ましい。
【0029】
また、周期判定のためのカウント値の積算時間を予め設定する時間は、周期性欠陥が連続して3回以上検出される時間間隔より大きくすることが好ましく、周期性欠陥が連続して3回以上検出される時間間隔の1.34倍以上にすることで周期性欠陥が途中で1回検出漏れが生じた場合でも周期判定ができる点で優れている。
【0030】
以下に、本発明に係わるシート状物の周期性欠陥検査装置に関して図1に基づいて説明する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係るシート状物の周期性欠陥検査装置の一例を示す模式図である。
【0032】
図1において、速度vで走行するシート状物Wの走行方向をMDとし、幅方向をTDとし、その走行するシート状物Wに対して欠陥検出のために用いる照明手段1と反射光を検出するための撮像手段2と、撮像手段2に用いるイメージセンサカメラの信号を処理するカメラ信号処理手段5と、検出した欠陥画像の処理および欠陥のシート状物幅方向TDの位置情報を演算する欠陥画像処理手段6と、欠陥の幅方向の位置情報に基づいて複数の領域に分別する幅方向領域分別手段7と幅方向領域分別手段から欠陥検出のタイミングで外部へ電気信号として出力する信号出力手段7と、信号出力手段7から欠陥検出時の電気信号を領域毎に並列で周期性欠陥判定処理手段11へ入力し、周期性欠陥判定処理手段11において、領域毎に入力した時間間隔から各欠陥同士の長手方向の距離を時系列に算出して蓄積する欠陥距離算出手段8と、欠陥距離算出手段8で算出した各欠陥の距離を予め設定した条件に基づいて逐次加算または減算して欠陥距離加減算変数に格納し、この欠陥距離加減算変数と予め設定した周期判定のための距離を照合する周期性欠陥照合手段9と、その周期性欠陥の判定を行う周期性欠陥判定手段10とを、具備している。
【0033】
また、図1において、シート状物Wの走行速度を検出するためにロール3に設置されたエンコーダ4は、撮像手段2を同期するためにカメラ信号処理手段5と、欠陥の検出時間間隔から各欠陥の距離を換算するために周期性欠陥判定処理手段11に接続している。
【0034】
ここで、撮像手段2には、一次元のイメージセンサカメラ等を用いることができ、
シート状物Wに照射した光の反射方向から検出、もしくは、図示していない透過方向から検出することができ、対象とする周期性の凹凸状欠陥を最も検出能力が高い光学系を選択すること好ましい。イメージセンサカメラ等で検出した欠陥画像は、欠陥のないシート状物Wとの地合とをしきい値で判別して二値化画像の欠陥を検出し、カメラ視野の欠陥の検出位置からシート状物Wの幅方向の座標が換算できる。また、シート状物Wの有効幅全域を検査するために、複数のイメージセンサカメラ等を並列に設置することができ、カメラ信号処理手段5において複数のイメージセンサカメラの配置からシート状物Wの幅方向の座標が換算できる。
【0035】
ここで、幅方向領域分別手段7では、欠陥のシート状物幅方向の位置情報から複数に分割した領域に分別し、ロールへの付着異物に起因した周期性欠陥が検出されたときに、その付着した部位を素早く発見して掃除しやすい範囲と、領域毎に並列で行う周期判定処理の負荷とを考慮して、10mm〜200mmの範囲で設定することが好ましく、より好ましい範囲は30mm〜100mmである。また、信号出力手段7では、幅方向領域分別手段7の情報に基づいて、各領域で設定した欠陥距離算出手段8の入力部に電気信号をリアルタイムに出力する。この幅方向領域分別手段7および信号出力手段7は、安価なシーケンサで機能を果たすことができる。
【0036】
図1において、周期性欠陥判定処理手段11には、幅方向領域分別手段7および信号出力手段7と同様に安価なシーケンサを用いることができ、シート状物Wの幅方向の分割領域に対応した入力端子とエンコーダ4の入力端子の他に、欠陥検査の開始や終了信号の人力端子の用意することが好ましい。
【0037】
ここで、周期性欠陥判定処理手段11における欠陥距離算出手段8では、各領域で欠陥検出時の入力時間間隔とシート状物Wの生産工程内に設置したエンコーダ4から換算した速度情報を基に、各欠陥の距離を算出して欠陥距離加減算変数に格納する。ここで、速度から換算する各欠陥の距離が周期判定するための最小のロール外周に対して5%以下にするようなエンコーダ4の分解能を選択するが好ましい。ここで、周期性欠陥判定手段10は、欠陥距離加減算変数の値と予め設定した周期判定のための距離とを逐次照合し、周期判定が一致した場合に周期性欠陥候補として周期性欠陥判定手段10に格納し、予め設定したしきい値に達した時点で周期性欠陥と判定し、このしきい値は図示していない操作画面から設定することが好ましい。
【0038】
図2は、本発明の実施形態に係るシート状物の幅方向領域分別の一例と欠陥配置を示す模式図である。
【0039】
図2では、シート状物Wの有効幅Xの範囲で分割領域Z1〜Zi〜Znを設定し、シート状物幅方向分割領域Ziに周期判定のためのロール外周の設定距離Lxに該当した周期性欠陥aがある場合に、その分割領域Ziの周期性欠陥aの間に、周期性欠陥以外の欠陥および異物bが混在する例を図示している。
【0040】
図2において、ロール外周の設定距離Lxに対して周期性欠陥判定設定時間TxSを5倍〜6倍の間に設定しており、周期性欠陥判定設定時間TxSは周期性欠陥毎に設定値を持ち、対象とした周期性欠陥aが連続して3回以上検出される時間間隔より大きくすることが好ましく、周期性欠陥が連続して3回以上検出される時間間隔の1.34倍以上にすることで周期性欠陥が途中で1回検出漏れが生じた場合でも周期判定ができる点で好ましい。
【0041】
図3は、発明の実施形態に係るシート状物の周期性欠陥検査装置における周期性欠陥判定処理フローの一例を示す模式図である。
【0042】
図3において、分割領域Ziでロール外周の設定距離Lxに相当した周期性欠陥aと周期性欠陥以外の欠陥および異物bが混在するモデルでの周期性欠陥判定は、予め設定した周期判定のためのロール外周の設定距離Lxに対して、欠陥距離加減算変数Dの値が小さい場合には逐次加算し、周期判定の距離Lxと欠陥距離加減算変数Dが一致した場合または超過した場合に、加算した最も古い順番に欠陥との距離を減算し、続けて新たに検出した欠陥の距離を加算して周期判定の距離Lxとの照合を連続して繰り返すことを特徴としている。
【0043】
ここで、欠陥距離加減算変数Dには、周期性欠陥の判定開始から検出された欠陥とその次に検出された欠陥との距離d1をシート状物Wの走行速度vから換算し、d2,d3を欠陥距離加減算変数Dに逐次加算し、ロール外周の設定距離Lxを越えた時点で、最も古い順番に欠陥との距離d1を減算し、続けて新たに検出した欠陥の距離d4を加算することを繰り返し、ロール外周の設定距離Lxと一致した場合に周期性欠陥候補カウンタNxに1つ積算し、加減算の操作を繰り返して周期性欠陥候補カウンタNxが予め設定した周期性欠陥判定しきい値Thxに達し、かつ、周期性欠陥判定設定時間TxSが判定開始から計時した周期性欠陥判定タイマーTx以内である場合に、シート状物幅方向分割領域Ziにロール外周の設定距離Lxの周期性欠陥有りと判定する。続けて周期性欠陥判定タイマーTxと周期性欠陥候補カウンタNxと欠陥距離加減算変数Dをリセットして周期性欠陥の判定を継続する。ここで、欠陥距離加減算変数Dによる照合は、図示していない複数のロール外周の設定距離Lxについて行い、ロール外周の設定距離Lx毎に各周期性欠陥候補カウンタNxを設定する。ここで、ロール外周の設定距離Lxは、生産工程において異物が付着すると剥がれにくい粘着ロールや熱ロール等に絞り込むことが好ましい。
【0044】
ここで、予め設定した周期判定の距離Lxと欠陥距離加減算変数Dとの照合は、エンコーダ4によって換算したシート状物の速度vの換算誤差と、欠陥検出時の信号入力時間間隔の計時誤差とを考慮し、欠陥距離加減算変数Dに所定の余裕幅を持たせて周期判定の距離Lxと一致の判定を行うことが好ましく、距離Lxに対して±1%〜±3%の余裕幅を設定することが好ましい。
【0045】
ここで、周期性欠陥候補カウンタNxと比較する周期性欠陥判定しきい値Thxは、3以上にすることが過剰検知を防ぐ点で好ましく、また、周期性判定の遅れを抑制するために20以下に設定することが好ましい。
【0046】
ここで、周期性欠陥判定設定時間TxSは、周期性欠陥が連続して3回以上検出される時間間隔より大きくすることが好ましく、周期性欠陥が連続して3回以上検出される時間間隔の1.34倍以上にすることで周期性欠陥が途中で1回検出漏れが生じた場合でも周期判定ができる点で好ましい。
【0047】
上記構成によれば、周期性欠陥の間にその他の欠陥や異物が検出された場合においても判定ミスが生じることが無く、リアルタイムに周期性欠陥の判定が可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 照明手段
2 撮像手段
3 ロール
4 エンコーダ
5 カメラ信号処理手段
6 欠陥画像処理手段
7 幅方向領域分別手段および信号出力手段
8a,8b,8c〜8n 欠陥距離算出手段
9a,9b,9c〜9n 周期性欠陥照合手段
10a,10b,10c〜10n 周期性欠陥判定手段
11 周期性欠陥判定処理手段
W シート状物
X シート状物の有効幅
MD シート状物の走行方向
TD シート状物の幅方向
v シート状物の走行速度
Z1,Z2,Z3〜Zi〜Zn シート状物幅方向分割領域
a 周期性欠陥
b 周期性欠陥以外の欠陥および異物
D 欠陥距離加減算変数
d1,d2,d3〜dn 同領域内での各欠陥距離
Lx 周期判定のためのロール外周の設定距離
Tx 周期性欠陥判定タイマー
TxS 周期性欠陥判定設定時間
Nx 周期性欠陥候補カウンタ
Thx 周期性欠陥判定しきい値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行するシート状物の幅方向を照明する照明手段と、反射光を検出する撮像手段と、
検出した欠陥を画像判定してシート状物の幅方向の位置情報を演算し、その幅方向の位置情報に基づいて複数の領域に分別する幅方向領域分別手段と、
該幅方向領域分別手段から欠陥検出のタイミングで外部へ電気信号として出力する信号出力手段と、
周期性欠陥判定処理手段とを具備し、該周期性欠陥判定処理手段は、該信号出力手段から欠陥検出時の電気信号を領域毎に並列で入力し、領域毎に入力した時間間隔から各欠陥同士の長手方向の距離を時系列に算出して蓄積する欠陥距離算出手段と、該欠陥距離算出手段によって算出した各欠陥の距離を予め設定した条件に基づいて逐次加算または減算して欠陥距離加減算変数に格納し、この欠陥距離加減算変数と予め設定した周期判定のための距離を照合する周期性欠陥照合手段と、照合結果に基づいて周期性欠陥の判定を行う周期性欠陥判定手段とから構成されることを特徴とするシート状物の周期性欠陥検査装置。
【請求項2】
前記周期性欠陥判定手段は、予め設定した周期判定のための距離に対して、前記欠陥距離加減算変数の値が小さい場合には逐次加算し、周期判定の距離と欠陥距離加減算変数値が一致した場合、または、超過した場合に、加算した最も古い順番に欠陥との距離を減算し、続けて新たに検出した欠陥の距離を加算して周期判定の距離との照合を連続して繰り返すことを特徴とする請求項1に記載のシート状物の周期性欠陥検査装置。
【請求項3】
前記周期性欠陥判定手段は、予め設定した周期判定のための距離に対して、欠陥長手方向距離を加算した欠陥距離加減算変数値が満たない場合には逐次加算し、周期判定の距離と変数値が一致した場合に、周期性欠陥の候補として周期判定変数にカウント値を1つ加算し、周期判定変数が予め設定した時間内に予め設定したしきい値に到達した場合に周期性欠陥として判定することを特徴とする請求項1に記載のシート状物の周期性欠陥検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−163349(P2012−163349A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21683(P2011−21683)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】