説明

シート状物の製造方法

【課題】本発明は、優美な外観と良好な強度物性を有し、かつ柔軟な風合いのシート状物の製造方法を提供する。
【解決手段】繊維長が0.1mm以上10mm以下である極細繊維発生型繊維を含む懸濁液を用いて基布上で湿式ウエブを形成後、または該懸濁液を用いて予め抄造したシートを基布に積層した後において、基布上の湿式ウエブあるいは抄造シートに高圧水流噴射処理して極細繊維発生型繊維を基布に交絡させて不織布とし、その後、該不織布を構成する極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させることを特徴とするシート状物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優美な外観と良好な強度物性を有し、かつ柔軟な風合いのシート状物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主として極細繊維からなる不織布にポリウレタンを含浸または付着せしめたシート状物は天然皮革にない優れた特徴を有しており、種々の用途に広く利用されている。とりわけポリエステル系極細繊維を用いたシート状物は耐光性に優れるため、衣料や椅子張り、自動車内装材用途等にその使用が年々広がってきており、使用が広がるにつれて、より高品位な表面感、より高強力、より高耐久といった要求が強く求められている。
【0003】
このような要求特性の中で、シート状物の表面感や強度物性は主に不織布の種類や製造方法によって決定される。例えば、不織布は繊維長によって長繊維不織布と短繊維不織布に分けられるが、シート状物の表面感は繊維の緻密感が発現しやすいことから表面感を重視するなら短繊維不織布を用いた方が有利であり、強度物性を重視するなら繊維が連続的に繋がっている長繊維不織布を用いた方が有利である。高品位な表面感と強度物性の両立を考えた場合、長繊維不織布にて繊維の緻密感を向上するよりも、短繊維不織布にて強度物性を向上する方が比較的容易であることから、シート状物には短繊維不織布が用いられる場合が多い。
【0004】
短繊維不織布の製造方法はニードルパンチ法や抄紙法が一般的であり、ニードルパンチ法は繊維長10mm〜100mm程度の短繊維からなるウェブを数枚重ね、厚さ方向に針で突き刺すことで絡合を進める方法、抄紙法は繊維長10mm以下の短繊維を分散させた懸濁液を用いて基布又はネット上に湿式ウェブを形成後、高圧水流噴射処理によって繊維の絡合を進める方法である。強度物性についてはどちらの方法で製造された短繊維不織布でも大きな差はないが、不織布表面の繊維の緻密感は繊維長が短いほど有利となりやすいことから、近年、抄紙法による短繊維不織布を用いたシート状物の検討が進められている。
【0005】
例えば特許文献1は、直接紡糸した繊度0.5デニール以下の極細繊維を抄紙法により交絡不織布とし、水系ポリウレタンエマルジョンを付与することでシート状物を得ている。しかし、直接紡糸では技術的に紡糸できる繊度に限界があり、例えば0.1デニール以下の直接紡糸は困難であるため、高級感のある高品位を得ることは難しいものである。
【0006】
すなわち、高級感のある高品位と高強力の両立したシート状物が求められているが、これらの要求を満足するシート状物はまだ得られていない。
【特許文献1】特許第3047951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、優美な外観と良好な強度物性を有し、かつ柔軟な風合いのシート状物の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明のシート状物の製造方法は、「繊維長が0.1mm以上10mm以下である極細繊維発生型繊維を含む懸濁液を用いて基布上で湿式ウエブを形成後、または該懸濁液を用いて予め抄造したシートを基布に積層した後において、基布上の湿式ウエブあるいは抄造シートに高圧水流噴射処理して極細繊維発生型繊維を基布に交絡させて不織布とし、その後、該不織布を構成する極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させることを特徴とするシート状物の製造方法」である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優美な外観と良好な強度物性を有し、かつ柔軟な風合いのシート状物の製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明でいうシート状物とは、極細繊維発生型繊維からなる湿式ウエブ又は抄造シートと基布とを交絡させた不織布を極細化したものであり、天然皮革のようなスエード、ヌバック、銀面等の優れた表面外観を有し、好ましくはスエードやヌバックといった立毛調の外観において、滑らかなタッチと優れたライティングエフェクトを有するものである。
【0011】
本発明においては、まず、極細繊維発生型繊維を含む懸濁液を用いて湿式ウエブまたは抄造シートを製造する。
【0012】
本発明で用いる懸濁液に含まれる極細繊維発生型繊維の繊維長は0.1mm以上10mm以下である。繊維長は長すぎると懸濁液として安定に得られず、不織布の目付や厚みのムラとなりやすい。また、繊維長は短すぎると不織布からの毛羽落ちが発生しやすくなる。極細繊維発生型繊維の繊維長は、好ましくは1mm以上、7mm以下である。
【0013】
本発明で用いる極細繊維発生型繊維としては、2種類以上の熱可塑性高分子成分を海成分・島成分とし、海成分を溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型複合繊維や、2成分の熱可塑性高分子成分を繊維断面を放射状または多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。中でも海島型複合繊維は、海成分を除去することによって島成分間、すなわち繊維束内部の極細繊維間に適度な空隙を付与することができるので、不織布の表面品位や柔軟性、風合いの観点からも好ましい。また、本発明は交絡後に高圧水流噴射処理により極細繊維を発生させる(極細化する)ものであるが、海島型複合繊維であれば極細繊維となるべき島成分が海成分に囲まれているため、高圧水流噴射処理によって島成分が損傷を受けないというメリットを有し、これが良好な強度物性を得るための要因にもなっていると考えられる。
【0014】
海島型複合繊維には、海島型複合用口金を用い、海・島の2成分を相互配列して紡糸する高分子相互配列体方式と、海・島の2成分を混合して紡糸する混合紡糸方式などを用いることができるが、均一な繊度の極細繊維が得られる点で高分子配列体方式による海島型複合繊維がより好ましい。
【0015】
海島型複合繊維の海成分としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルに5−スルホイソフタル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ビスフェノールA化合物、イソフタル酸、アジピン酸、ドデカジオン酸、シクロヘキシルカルボン酸等を5〜12mol%共重合した共重合ポリエステルや、ポリ乳酸などを用いることができる。特に耐熱性や、海成分溶出時の溶剤の環境対応の観点から、弱アルカリ水溶液へ溶解可能な5−スルホイソフタル酸ナトリウムを5〜12mol%共重合したポリエチレンテレフタレート共重合体を用いることが好ましい。また、これらの共重合体は2元のみならず、3元以上の多元共重合体であってもよい。
【0016】
一方、海島型複合繊維の島成分(本発明で得られるシート状物を構成する極細繊維となる。)は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどのポリエステル、6−ナイロン、66−ナイロンなどのポリアミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの各種合成繊維を単体、または複合して用いることができる。中でも、強度、寸法安定性、耐光性、染色性の観点からポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル繊維を用いることが好ましい。
【0017】
本発明で用いる懸濁液は極細繊維発生型繊維を含むものであるが、極細繊維発生型繊維の分散性を向上する目的で、界面活性剤や水溶性高分子等の分散剤を含んでいてもよい。
【0018】
懸濁液の分散媒は、水やイソプロピルアルコール等の有機溶剤、およびそれらを混合して用いることができるが、環境への配慮の観点から、水であることが好ましい。
【0019】
分散媒への極細繊維発生型繊維の分散方法は特に限定はないが、例えばカットして短繊維とした極細繊維発生型繊維をパルパー等の回転式の装置で分散媒と、必要に応じて分散剤を併せて混合し、離解、均一分散を行うことができる。
【0020】
かかる極細繊維発生型繊維を含む懸濁液を用いて抄紙することにより、基布上に湿式ウエブを形成、あるいは抄造したシートを得るが、抄紙法については特に限定されない。たとえば一般の湿式抄紙機を用いることにより効率的に所望の湿式ウエブ、あるいは抄造シートを得ることができる。抄造シートを得るのに用いる抄き網としては円網、短網及び長網等が挙げられ、これらの抄き網を単独で用いて単層としても、また抄き網の組み合せによる複数層の抄きあわせシートとしてもよい。地合斑のない均質な抄造シートを得る点からは複数層の抄きあわせとするのが好ましく、なかでも短網―円網抄紙機にて2層抄きあわせとするのが好ましい。
【0021】
抄き上げた後に乾燥することにより目的とする湿式ウエブあるいは抄造シートが得られる。必要に応じて熱プレス加工等をさらに行うこともできる。
【0022】
なお、本発明における湿式ウエブとは、基布上に極細繊維発生型繊維を含む懸濁液を流下後、基布上に形成される極細繊維発生型繊維群のシート状構造物をいい、抄造シートとは、通常の抄造装置にて極細繊維発生型繊維を含む懸濁液を用いて抄造し乾燥して得たシート状物をいう。
【0023】
本発明で用いる基布は、熱処理によって収縮し、基布に交絡した極細繊維発生型繊維を強固に把持固定できるものであることが好ましく、具体的には織物や編物が好ましい。基布の素材には特に限定はなく、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、セルロースアセテート繊維、ポリウレタン繊維等であってもよいが、特にポリエステル繊維からなる織物または編物がより好ましい。基布を存在させることにより、極細繊維が短繊維であっても良好な強度物性を付与することができる。
【0024】
基布を構成する繊維の平均単繊維繊度は特に限定はなく、0.001dtex以上1dtex以下であってもよい。
【0025】
極細繊維発生型繊維を含む懸濁液を用いて基布上に流下し、基布上で湿式ウエブを形成する際の基布の支持ネットとしては、特に制限はないが、水抜け性が良好であり、ネットマークを少なくするうえで、20〜200メッシュ、好ましくは50〜120メッシュの表面が平滑な金属ネット又はプラスチックネットを用いることができる。
【0026】
基布上で形成する湿式ウエブ、あるいは予め抄造した抄造シートの好ましい目付は、10g/m以上200g/m以下である。基布上で湿式ウエブを形成する際は、多段の吸引脱水処理による湿式ウエブ形成後、あるいはその後の高圧水流噴射処理後に、湿式ウエブ或いは高圧水流噴射処理シート状物の上に更に多段の吸引脱水処理にて湿式ウエブを形成して、かかる好ましい目付としてもよい。また、予め抄造した抄造シートを用いる際は、抄造シートを複数積層し、あるいは高圧水流噴射処理シート状物の上に更に抄造シートを積層し、かかる好ましい目付としてもよい。
【0027】
本発明では、基布上の湿式ウエブあるいは抄造シートと基布に積層した後に、高圧水流噴射処理して極細繊維発生型繊維を基布に交絡させて不織布とする。高圧水流噴射処理により極細繊維発生型繊維が基布に交絡して三次元立体絡合構造の不織布を形成することができる。
【0028】
高圧水流噴射処理としては、作業環境の点で水流を使用するウォータージェットパンチ処理を行うことが好ましい。この時、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。柱状流を得るには、通常、直径0.06〜1.0mmのノズルから圧力1〜60MPaで噴出させることで得られる。かかる処理は、効率的な絡合性と良好な表面品位を得るために、ノズルの直径は0.06〜0.15mm、間隔は5mm以下であることが好ましく、直径0.06〜0.12mm、間隔は1mm以下がより好ましい。これらのノズルスペックは、複数回処理する場合、すべて同じ条件にする必要はなく、例えば大孔径と小孔径のノズルを併用することも可能であるが、少なくとも1回は上記構成のノズルを使用することが好ましい。特に直径が0.15mmを超えると極細繊維同士の絡合性が低下し、表面がモモケやすくなるとともに、表面平滑性も低下するため好ましくない。従ってノズル孔径は小さい方が好ましいが、0.06mm未満となるとノズル詰まりが発生しやすくなるため、水を高度に濾過する必要性からコストが高くなる問題があり好ましくない。また、厚さ方向に均一な交絡を達成する目的、および/または不織布表面の平滑性を向上させる目的で、好ましくは多数回繰り返して処理する。また、その水流圧力は処理する不織布の目付によって適宜選択し、高目付のもの程高圧力とすることが好ましい。さらに、極細繊維発生型繊維同士を高度に絡合させる目的で、少なくとも1回は10MPa以上の圧力で処理することが好ましく、15MPa以上がより好ましい。また上限は特に限定されないが、圧力が上昇する程コストが高くなり、また低目付であると不織布が不均一となったり、繊維の切断により毛羽が発生する場合もあるため、好ましくは40MPa以下であり、より好ましくは30MPa以下である。こうすることによって、耐摩耗性等の表面特性を向上させることもできる。なお、表面の品位を向上させるために、ノズルヘッドと不織布を相対的に移動させたり、交絡後に不織布とノズルの間に金網等を挿入して散水処理する等の方法を行うこともできる。
【0029】
本発明においては、不織布を構成する極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させる前に、加熱処理によって不織布中の基布を収縮させて極細繊維発生型繊維を基布に強固に固定してもよい。加熱処理は不織布中の基布が収縮すれば特に限定はないが、例えば熱水中への浸漬や、スチーム処理、乾熱処理を用いることができる。
【0030】
また、本発明においては、不織布は密度向上のために厚さ方向にプレスしてもよい。好ましくは、プレスのタイミングは、加熱処理による収縮の後に行ってもよい。プレスの方法は、カレンダーロールなど通常の方法を採用することができる。
【0031】
本発明の不織布には、高分子弾性体を付与してもよい。高分子弾性体は、極細繊維発生型繊維から構成される不織布に付与してもよく、また、極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させたシート状物に付与してもよい。
【0032】
高分子弾性体は、特に限定はないが、例えばポリウレタン、アクリル、シリコーン等、およびそれらを併用して用いてもよい。中でも本発明においては、シート状物の耐久性や天然皮革のような手持ち感の発現の観点から、ポリウレタンが特に好ましい。
【0033】
ポリウレタンはポリオールの種類としてカーボネート系、エーテル系、エステル系やそれらの併用であってもよいが、耐加水分解性、耐光性、耐熱性等の耐久性の観点から、カーボネート系ポリウレタンであることが好ましい。
【0034】
また、ポリウレタンは、ポリウレタンを有機溶媒中に溶解させた溶剤系であっても、水中に分散させた水エマルジョン系であってもよいが、環境付加の観点から、水エマルジョン系ポリウレタンであることがより好ましい。
【0035】
高分子弾性体の付与量は特に限定はないが、付与量は多すぎるとシート状物の風合いは硬くなるため、シート状物を構成する極細繊維を発生させた不織布の重量に対して100重量%以下が好ましく、80重量%以下であることがより好ましい。特に好ましくは60重量%以下である。
【0036】
また、高分子弾性体は、カーボンブラック等の顔料、染料、防カビ剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤、光安定剤などの耐光剤、難燃剤、浸透剤や滑剤、帯電防止剤等の界面活性剤、シリコーン等の消泡剤、セルロース等の充填剤、凝固調整剤、感熱ゲル化剤等を含有していてもよい。
【0037】
本発明の不織布は、高分子弾性体を付与する前に水溶性高分子を付与してもよい。水溶性高分子を付与することにより、高分子弾性体を付与する前に不織布構造を固定することができ、高分子弾性体を付与する工程での不織布構造の変化を抑制して得られるシート状物の表面品位を良好にすることができる。また、高分子弾性体を付与する前に付与した水溶性高分子は、高分子弾性体を付与後、水洗等により除去してもよい。
【0038】
水溶性高分子の付与量は特に限定はないが、付与量は多すぎると高分子弾性体を付与することができなくなることから、シート状物を構成する極細繊維を発生させた不織布の重量に対して70重量%以下が好ましく、50重量%以下であることがより好ましい。
【0039】
水溶性高分子は、ポリビニルアルコール及びその共重合体、澱粉、ポリビニルピロリドン等を用いてもよい。
【0040】
本発明では、極細繊維発生型繊維を基布に交絡させて不織布とした後に極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させることが重要である。不織布としてから、すなわち極細繊維発生型繊維を基布に交絡させた後に極細繊維を発生させることにより、極細繊維束同士が絡合したシート状物とすることができ、それにより、シート状物の柔軟な風合いを発現しつつも高い強度物性を発現することができる。極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させた後に基布と交絡させると、極細繊維が繊維束ではなく単繊維同士で絡合し、繊維の交絡点が多いために、シート状物の風合いは硬くなり、強度物性では引裂強力が著しく低下する。
【0041】
極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させる方法は特に限定はないが、例えば海島型複合繊維であれば、海成分を溶出除去、または分解除去できる有機溶剤や熱水、アルカリ水溶液等で処理することで、極細繊維を発生させ、また、剥離型複合繊維であれば、水流や揉み等の物理力、有機溶剤等による繊維の膨潤等により、極細繊維を発生させることができる。
【0042】
海島型複合繊維の海成分を溶出除去できる有機溶剤としては例えばトルエン、トリクロロエチレン等が挙げられる。
【0043】
発生させた極細繊維の平均単繊維繊度は、シート状物の柔軟性や立毛品位の観点から0.001dtex以上0.5dtex以下であることが好ましい。好ましくは0.3dtex以下、より好ましくは0.2dtex以下である。一方、染色後の発色性やサンドペーパーなどによる研削など起毛処理時の繊維の分散性、さばけ易さの観点からは、0.005dtex以上であることが好ましい。
【0044】
なお、シート状物を構成する極細繊維の平均単繊維繊度は、極細繊維の断面が円形または円形に近い楕円形の場合は、シート状物(もしくは不織布)表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率2000倍で撮影し、極細繊維をランダムに100本選び、繊維径を測定して素材ポリマーの比重から繊度に換算し、さらにその100本の平均値を計算することで算出される。
【0045】
一方、シート状物を構成する極細繊維が異形断面の場合は、同様にして、異形断面の外周円直径を繊維径として算出する。さらに、円形断面と異形断面が混合している場合、繊度が大きく異なるものが混合している場合等は、それぞれが同数程度となるように100本を選び、算出する。
【0046】
シート状物を構成する極細繊維の繊度の均一性に関しては、繊維束内の繊度CVが10%以下であることが好ましい。ここで繊度CVとは、繊維束を構成する繊維の繊度標準偏差を束内平均繊度で割った値を百分率(%)表示したものであり、値が小さいほど均一であることを示すものである。繊度CVを10%以下とすることで、本発明のシート状物表面の立毛の外観は優美となり、また染色も均質で良好なものとすることができる。極細繊維の断面が円形または円形に近い楕円形でない場合の繊度CVは、平均単繊維繊度の算出と同様の方法による。
【0047】
極細繊維の断面形状としては、丸断面でよいが、楕円、扁平、三角などの多角形、扇形、十字型などの異形断面のものを採用してもよい。
【0048】
本発明においては、シート状物を少なくとも片面に極細繊維の立毛を有している立毛調のシート状物とするため、起毛処理を施してもよい。シート状物表面に立毛を形成するための起毛処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて、研削する方法などにより施すことができる。起毛処理の前にシリコーンエマルジョンなどの滑剤を付与してもよい。
【0049】
また、起毛処理の前に帯電防止剤を付与することは、研削によってシート状物から発生した研削粉がサンドペーパー上に堆積しにくくなる傾向にあり好ましい。
【0050】
また、シート状物は、起毛処理を行う前に、シート厚み方向に半裁、ないしは数枚に分割してもよい。
【0051】
本発明においては、シート状物に染色を施すことが好ましい。染色方法は、特に限定されるものではなく、染色機は液流染色機、サーモゾル染色機、高圧ジッガー染色機等いずれを用いてもよいが、シート状物を染色すると同時に揉み効果を与えて柔軟化することができることから、液流染色機を用いることが好ましい。液流染色機は、通常の液流染色機を使用することができる。
【0052】
染色温度は高すぎると発色できる染料に限定があり、逆に低すぎると繊維への染着が不十分となるため、繊維の種類により変更するのがよく、一般に80℃以上150℃以下が好ましく、110℃以上130℃以下がより好ましい。
【0053】
染料は特に限定はなくシート状物を構成する極細繊維にあわせて選択すればよいが、例えばポリエステル系極細繊維であれば分散染料、ポリアミド系極細繊維であれば酸性染料や含金染料といった染料、及びそれらを組み合わせた染料を用いることができる。
【0054】
分散染料で染色した場合は、染色後に還元洗浄を行ってもよい。
【0055】
また、染色の均一性や再現性をアップする目的で染色時に染色助剤を使用することは好ましい。さらにシリコーン等の柔軟剤、帯電防止剤、撥水剤、難燃剤、耐光剤、ピリング防止剤、抗菌剤、消臭剤、芳香剤等の仕上げ剤処理を施してもよく、仕上げ処理は染色後でも、染色と同浴でもよい。
【0056】
本発明によって製造されたシート状物は、タテおよびヨコ方向のいずれの引張強力も30N/cm以上であることが好ましい。より好ましくは40N/cm以上である。タテまたはヨコ方向いずれかの引張強力が30N/cm未満であると、シート状物を適用する用途にもよるが、加工性が悪く、破れやすい等の問題が発生しやすい。上限は特に限定されるものではないが、通常200N/cm以下となる。引張強力はJISL 1096−8.12.1(2005年度版)により、幅5cm、長さ20cmのサンプルを採取し、つかみ間隔10cmで定速伸長型引張試験器にて、引張速度10cm/分にて伸長させて求めた。得られた値から幅1cm当たりの荷重を引張強力(単位;N/cm)とした。
【0057】
なお、前述の引張強力は本発明の製造方法によって得られるシート状物において、目付100〜550g/m、好ましくは120〜450g/m、より好ましくは140〜350g/mによって得ることができる。100g/m未満であると引張強力は低下し、さらにシート状物表面に不織布内部の基布の外観が見えやすくなり、品位が低下するため好ましくない。また550g/mを越える場合は、耐摩耗性が低下する傾向があるため好ましくない。
【0058】
本発明によって製造されたシート状物は、タテおよびヨコ方向のいずれの引裂強力は3〜50Nであることが好ましい。より好ましくは5〜30Nである。タテまたはヨコ方向いずれかの引裂強力が3N未満であると、工程通過性が低下し、安定した生産が困難になる。逆に、タテまたはヨコ方向いずれかの引裂強力が50Nを越えると、一般に柔軟化しすぎる傾向があり、風合いとのバランスが取りにくくなるため好ましくない。なお、引裂強力はJISL 1096−8.15.5(2005年度版)D法(ペンジュラム法)に基づいて測定した。
【0059】
なお、前述の引裂強力の範囲は本発明の製造方法によって得られるシート状物において、目付100〜550g/m、好ましくは120〜450g/m、より好ましくは140〜350g/mによって得ることができる。100g/m未満であると引裂強力は低下し、さらにシート状物表面に不織布内部の基布の外観が見えやすくなり、品位が低下するため好ましくない。また550g/mを越える場合は、耐摩耗性が低下する傾向があるため好ましくない。
【0060】
本発明によって製造されたシート状物は、家具、椅子、壁材や、自動車、電車、航空機などの車輛室内における座席、天井、内装などの表皮材として非常に優美な外観を有する内装材、シャツ、ジャケット、カジュアルシューズ、スポーツシューズ、紳士靴、婦人靴等の靴のアッパー、トリム等、鞄、ベルト、財布等、及びそれらの一部に使用した衣料用資材、ワイピングクロス、研磨布、CDカーテン等の工業用資材として好適に用いることができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0062】
[評価方法]
(1)平均単繊維繊度
不織布、またはシート状物表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率2000倍で撮影し、円形または円形に近い楕円形の繊維をランダムに100本選び、繊維径を測定して繊維の素材ポリマーの比重から繊度に換算し、さらに100本の平均値を計算することで算出した。
【0063】
(2)繊度CV
不織布、またはシート状物の内部の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率2000倍で観察し、その写真から、束状繊維の1つの束内を構成する極細繊維の繊維径を測定し、繊維径から各単繊維の繊度に換算して、繊維束を構成する繊維の繊度標準偏差を束内平均繊度で割った値を百分率(%)で表した。5つの束状繊維について、同様の測定を行い、平均値を繊度CVとした。
【0064】
(3)目付
JIS L 1096−8.4.2(2005年度版)の方法で測定した。
【0065】
(4)引張強力
JIS L 1096−8.12.1(2005年度版)により、幅5cm、長さ20cmのサンプルを採取し、つかみ間隔10cmで定速伸長型引張試験器にて、引張速度10cm/分にて伸長させた。得られた値を幅1cm当たりに換算して引張強力とした。
【0066】
(5)引裂強力
JIS L 1096−8.15.5(2005年度版)D法(ペンジュラム法)に基づいて測定した。
【0067】
(6)外観品位
シート状物の表面品位は目視と官能評価にて下記のように評価した。
○:十分な立毛長があり、かつ立毛が配向していることにより、ライティングエフェクトが明らかに確認できる。
×:立毛はあるが、配向していないことにより、ライティングエフェクトは確認できない。
【0068】
(7)風合い
JIS L1096−8.19.1(2005年度版)記載のA法(45°カンチレバー法)に基づき、タテ方向とヨコ方向へそれぞれ2×15cmの試験片を5枚作成し45℃の斜面を有する水平台へ置き、試験片を滑らせて試験片の一端の中央点が斜面と接したときのスケールを読み、5枚の平均値を求めた。
【0069】
[化学物質の表記]
各実施例・比較例で用いた化学物質の略号の意味は以下の通りである。
PET:ポリエチレンテレフタレート
Ny:6−ナイロン
co−PET:テレフタル酸とエチレングリコールを主たる構成成分としてなり、かつ、全酸成分に対し、8mol%の5−スルホイソフタル酸ナトリウムを含有する共重合ポリエステル
PST:ポリスチレン
WJP:ウォータージェットパンチ
PTMG:ポリテトラメチレングリコール
PHC:ポリヘキサメチレンカーボネートジオール
MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート
H12MDI:ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
HDA:ヘキサメチレンジアミン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド。
【0070】
[実施例1]
海成分としてテレフタル酸とエチレングリコールを主たる構成成分としてなり、かつ、全酸成分に対し、8mol%の5−スルホイソフタル酸ナトリウムを含有する共重合ポリエステル、島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、島数16島の海島型複合用口金を用いて、海成分45重量%、島成分55重量%の複合比率にて海島型複合繊維を紡糸した後、延伸、カットして繊維長5mmに切断し、水中に分散せしめて懸濁液とした。この懸濁液を抄造し、目付150g/mと目付100g/mの抄造シートを製造した。84dtex/72フィラメントのPET繊維からなる目付量50g/mの平織物の両面に上記抄造シートを積層し、ウォータージェットパンチによる高速水流の噴射により三次元的に交絡一体化させた。高速水流は孔径0.1mmの直進流噴射ノズルから12MPaの圧力で噴射した。
【0071】
積層シートは下面に吸引装置を有する80メッシュの金網にのせ、ノズルから30mmの位置で高圧水流を衝突させた。積層シートの表裏両面からこの操作を行ない目付量300g/m、厚さ1.15mmの不織布を製造した。
【0072】
この不織布にポリオールとしてPTMGとPHCを重量比3:7、イソシアネートとしてH12MDI、鎖伸長剤としてHDA、内部乳化剤としてポリエチレングリコールを側鎖に有するジアミンから構成されるエーテル−カーボネート共重合系の自己乳化型ポリウレタンの水エマルジョン(濃度=10重量%)を含浸し、絞りロールにてポリウレタン水エマルジョンの付着量を調節した後、100℃のスチーム雰囲気下で5分処理し、120℃10分乾燥させ、極細繊維を発生させた不織布重量に対するポリウレタン付与量が30重量%であるシート状物を得た。
【0073】
その後、濃度10g/Lの水酸化ナトリウム水溶液中で海成分である共重合ポリエステルを分解除去し、乾燥を行って目付390g/m2、平均単繊維繊度0.14dtex、繊度CV7.2%の極細繊維からなるシート状物を得た。
【0074】
このシート状物の片面を150メッシュ、次いで240メッシュのサンドペーパーを用いてバフィングし、分散染料にて染色を施してシート状物を得た。
【0075】
得られたシート状物は、引張強力、引裂強力はともに良好であり、風合いは柔軟で、かつ外観品位は立毛に配向があって高級感のあるライティングエフェクトを確認できた。
【0076】
[実施例2]
海成分としてポリスチレン、島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、島数16島の海島型複合用口金を用いて、海成分45重量%、島成分55重量%の複合比率にて海島型複合繊維を紡糸した後、延伸、カットして繊維長5mmに切断し、水中に分散せしめて懸濁液とした。この懸濁液を抄造し、目付100g/mの抄造シートを製造した。84dtex/72フィラメントのPET繊維からなる目付量50g/mの平織物の両面に上記抄造シートを積層し、ウォータージェットパンチによる高速水流の噴射により三次元的に交絡一体化させた。高速水流は孔径0.1mmの直進流噴射ノズルから3MPaの圧力で噴射した。
【0077】
積層シートは下面に吸引装置を有する80メッシュの金網にのせ、ノズルから30mmの位置で高圧水流を衝突させた。積層シートの表裏両面からこの操作を行ない目付量250g/m、厚さ0.95mmの不織布を製造した。
【0078】
この海島型複合繊維からなる不織布を、鹸化度87%のポリビニルアルコール10%水溶液に含浸した後、乾燥することで、極細繊維を発生させた不織布重量に対して20重量%のポリビニルアルコールを付与した。
【0079】
その後、トリクロロエチレン中で海成分であるポリスチレンを抽出除去し、次いで熱水中でポリビニルアルコールを除去後、乾燥を行って平均単繊維繊度0.14dtex、繊度CV7.3%の極細繊維からなるシート状物を得た。
【0080】
このシート状物にポリオールとしてPTMGとPHCを重量比3:7、イソシアネートとしてMDI、鎖伸長剤としてHDAから構成されるエーテル−カーボネート共重合系ポリウレタンのDMF溶液(濃度=10重量%)を含浸し、絞りロールにてポリウレタン溶液の付着量を調節した後、30℃のDMF濃度30%の水溶液中でポリウレタンを湿式凝固せしめ、100℃で10分乾燥することでシート状物重量に対するポリウレタン付与量が10重量%である目付275g/mのシート状物を得た。
【0081】
シート状物の片面を150メッシュ、次いで240メッシュのサンドペーパーを用いてバフィングし、分散染料にて染色を施してシート状物を得た。
【0082】
得られたシート状物は、引張強力、引裂強力はともに良好であり、風合いは柔軟で、かつ外観品位は立毛に配向があって高級感のあるライティングエフェクトを確認できた。
【0083】
[実施例3]
海成分としてポリスチレン、島成分として6−ナイロンを用い、島数16島の海島型複合用口金を用いて、海成分55重量%、島成分45重量%の複合比率にて海島型複合繊維を紡糸した後、延伸、カットして繊維長5mmに切断し、水中に分散せしめて懸濁液とした。この懸濁液を抄造し、目付50g/mの抄造シートを製造した。84dtex/72フィラメントのPET繊維からなる目付量50g/mの平織物の両面に上記抄造シートを積層し、ウォータージェットパンチによる高速水流の噴射により三次元的に交絡一体化させた。高速水流は孔径0.1mmの直進流噴射ノズルから3MPaの圧力で噴射した。
【0084】
積層シートは下面に吸引装置を有する80メッシュの金網にのせ、ノズルから30mmの位置で高圧水流を衝突させた。積層シートの表裏両面からこの操作を行ない目付量150g/m、厚さ0.55mmの不織布を製造した。
【0085】
この海島型複合繊維からなる不織布を、鹸化度87%のポリビニルアルコール10%水溶液に含浸した後、乾燥することで、極細繊維を発生させたシート状物重量に対して20重量%のポリビニルアルコールを付与した。
【0086】
その後、トリクロロエチレン中で海成分であるポリスチレンを抽出除去し、次いで熱水中でポリビニルアルコールを除去後、乾燥を行って平均単繊維繊度0.12dtex、繊度CV7.5%の極細繊維からなるシート状物を得た。
【0087】
この不織布にポリオールとしてPTMG、イソシアネートとしてMDI、鎖伸長剤としてHDAから構成されるエーテル系ポリウレタンのDMF溶液(濃度=10重量%)を含浸し、絞りロールにてポリウレタン溶液の付着量を調節した後、30℃のDMF濃度30%の水溶液中でポリウレタンを湿式凝固せしめ、100℃で10分乾燥することでシート状物重量に対するポリウレタン付与量が20重量%である目付180g/mのシート状物を得た。
【0088】
シート状物の片面を150メッシュ、次いで240メッシュのサンドペーパーを用いてバフィングし、含金染料にて染色を施してシート状物を得た。
【0089】
得られたシート状物は、引張強力、引裂強力はともに良好であり、風合いは柔軟で、かつ外観品位は立毛に配向があって高級感のあるライティングエフェクトを確認できた。
【0090】
[実施例4]
海成分としてポリスチレン、島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、島数16島の海島型複合用口金を用いて、海成分45重量%、島成分55重量%の複合比率にて海島型複合繊維を紡糸した後、延伸、カットして繊維長5mmに切断し、水中に分散せしめて懸濁液とした。この懸濁液を用い、84dtex/72フィラメントのPET繊維からなる目付量50g/mの平織物の片面に湿式ウエブを形成し、ウォータージェットパンチによる高速水流の噴射により三次元的に交絡一体化させた。高速水流は孔径0.1mmの直進流噴射ノズルから3MPaの圧力で噴射した。
【0091】
積層シートは下面に吸引装置を有する80メッシュの金網にのせ、ノズルから30mmの位置で高圧水流を衝突させた。積層シートの表面からこの操作を行ない目付量100g/m、厚さ0.35mmの不織布を製造した。
【0092】
この海島型複合繊維からなる不織布を、鹸化度87%のポリビニルアルコール10%水溶液に含浸した後、乾燥することで、極細繊維を発生させた不織布重量に対して20重量%のポリビニルアルコールを付与した。
【0093】
その後、トリクロロエチレン中で海成分であるポリスチレンを抽出除去し、次いで熱水中でポリビニルアルコールを除去後、乾燥を行って平均単繊維繊度0.14dtex、繊度CV7.3%の極細繊維からなるシート状物を得た。
【0094】
このシート状物にポリオールとしてPTMGとPHCを重量比3:7、イソシアネートとしてMDI、鎖伸長剤としてHDAから構成されるエーテル−カーボネート共重合系ポリウレタンのDMF溶液(濃度=10重量%)を含浸し、絞りロールにてポリウレタン溶液の付着量を調節した後、30℃のDMF濃度30%の水溶液中でポリウレタンを湿式凝固せしめ、100℃で10分乾燥することでシート状物重量に対するポリウレタン付与量が10重量%である目付110g/mのシート状物を得た。
【0095】
シート状物の片面を150メッシュ、次いで240メッシュのサンドペーパーを用いてバフィングし、分散染料にて染色を施してシート状物を得た。
【0096】
得られたシート状物は、引張強力、引裂強力はともに良好であり、風合いは柔軟で、かつ外観品位は立毛に配向があって高級感のあるライティングエフェクトを確認できた。
【0097】
[比較例1]
直接紡糸法によって単繊維繊度0.1dtexのPET極細繊維を製造し、繊維長5mmに切断した短繊維を水中に分散せしめて懸濁液とした。この懸濁液を抄造し、目付50g/mの抄造シートを製造した。84dtex/72フィラメントのPET繊維からなる目付量50g/mの平織物の両面に上記抄造シートを積層し、ウォータージェットパンチによる高速水流の噴射により三次元的に交絡一体化させた。高速水流は孔径0.1mmの直進流噴射ノズルから3MPaの圧力で噴射した。
【0098】
積層シートは下面に吸引装置を有する80メッシュの金網にのせ、ノズルから30mmの位置で高圧水流を衝突させた。積層シートの表裏両面からこの操作を行ない目付量150g/m、厚さ0.55mm、繊度CV8.2%の極細繊維不織布を製造した。
【0099】
この不織布にポリオールとしてPTMG、イソシアネートとしてMDI、鎖伸長剤としてHDAから構成されるエーテル系ポリウレタンのDMF溶液(濃度=10重量%)を含浸し、絞りロールにてポリウレタン溶液の付着量を調節した後、30℃のDMF濃度30%の水溶液中でポリウレタンを湿式凝固せしめ、100℃で10分乾燥することで不織布重量に対するポリウレタン付与量が10重量%である目付165g/mのポリウレタン付与シートを得た。
【0100】
ポリウレタン付与シートの片面を150メッシュ、次いで240メッシュのサンドペーパーを用いてバフィングし、分散染料にて染色を施してシート状物を得た。
【0101】
得られたシート状物の引張強力、引裂強力はともに良好であり、風合いは柔軟であったが、外観品位は立毛の配向がなく、高級感のあるライティングエフェクトは確認できなかった。
【0102】
[比較例2]
海島繊維の海成分を溶出除去するタイミングをウォータージェットパンチの前に実施する以外は、実施例2と同様の手法によりシート状物を得た。
【0103】
得られたシート状物は、引張強力、引裂強力はともに低く、風合いは硬かった。また、外観品位は立毛の配向がなく、高級感のあるライティングエフェクトは確認できなかった。
【0104】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維長が0.1mm以上10mm以下である極細繊維発生型繊維を含む懸濁液を用いて基布上で湿式ウエブを形成後、または該懸濁液を用いて予め抄造したシートを基布に積層した後において、基布上の湿式ウエブあるいは抄造シートに高圧水流噴射処理して極細繊維発生型繊維を基布に交絡させて不織布とし、その後、該不織布を構成する極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させることを特徴とするシート状物の製造方法。
【請求項2】
前記不織布を構成する極細繊維発生型繊維が海島型複合繊維であることを特徴とする請求項1に記載のシート状物の製造方法。
【請求項3】
前記海島型複合繊維の島成分がポリエステルを主成分とするポリマーであることを特徴とする請求項2に記載のシート状物の製造方法。
【請求項4】
前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項3に記載のシート状物の製造方法。
【請求項5】
前記海島型複合繊維の海成分がテレフタル酸とエチレングリコールを主たる構成成分としてなり、かつ、全酸成分に対し、5〜12mol%の5−スルホイソフタル酸ナトリウムを含有する共重合ポリエステルからなることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のシート状物の製造方法。
【請求項6】
前記不織布に水溶性高分子を付与した後に該不織布を構成する極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させることを特徴とする請求項1または2に記載のシート状物の製造方法。
【請求項7】
前記不織布を構成する極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させた後に高分子弾性体を付与することを特徴とする請求項1、2および6のいずれかに記載のシート状物の製造方法。

【公開番号】特開2009−52166(P2009−52166A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219350(P2007−219350)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】