シート給送装置及び画像形成装置
【課題】簡単な構成でシートの連れ出し現象に起因するシートの座屈の発生を抑制し、坪量の低いシートにおいても安定した給送が可能なシート給送装置及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】円弧状の摩擦部15a及び切欠部15bを有し、摩擦部15aでシートを給送する給送ローラ15と、給送ローラ15を回転駆動する給送モータと、摩擦部15aにより給送されるシートに摩擦部15aと反対側から圧接して重送されたシートを分離する分離パッド19と、摩擦部15aが分離パッド19に到達するまで、昇降部3に積載されたシートが摩擦部15aに接触しないように給送ローラ15の下位置で昇降部3を待機させ、摩擦部15aが分離パッド19に到達すると、昇降部3に積載されたシートが摩擦部15aに押し付けられて摩擦部15aがシートを給送する当接位置P1まで昇降部3を上昇させる給送バネ5等と、を備えたシート給送装置。
【解決手段】円弧状の摩擦部15a及び切欠部15bを有し、摩擦部15aでシートを給送する給送ローラ15と、給送ローラ15を回転駆動する給送モータと、摩擦部15aにより給送されるシートに摩擦部15aと反対側から圧接して重送されたシートを分離する分離パッド19と、摩擦部15aが分離パッド19に到達するまで、昇降部3に積載されたシートが摩擦部15aに接触しないように給送ローラ15の下位置で昇降部3を待機させ、摩擦部15aが分離パッド19に到達すると、昇降部3に積載されたシートが摩擦部15aに押し付けられて摩擦部15aがシートを給送する当接位置P1まで昇降部3を上昇させる給送バネ5等と、を備えたシート給送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート給送装置及びこれを備える画像形成装置に関し、特にシートを1枚ずつ分離しながら給送するシート給送装置及びこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置には、シート積載板に積載されているシートをその最上位から1枚ずつ分離しながら画像形成部に給送するシート給送装置が設けられている。シート給送装置は、例えば、昇降自在に設けられたシート積載板をコイルスプリングで給送ローラに向かって付勢し、積載されているシートの最上面を給送ローラと同軸上に軸支された給送コロに当接させる。その後、給送ローラの回転により給送ローラに設けられた摩擦部がシートと当接し、摩擦部に対して圧接配置された分離パッドで1枚ずつ分離されながらシートが給送される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−257765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、環境意識の高まり等から、パルプ量の少ない(坪量の低い)薄いシート(以下、「薄紙」という)の需要が多くなってきている。しかしながら、薄紙は、剛性が低いため、従来の小型で低コストな画像形成装置に使用すると、給送できずにジャムを引き起こし易いという問題があった。
【0005】
ここで、薄紙のジャムについて、図16(a)から図16(c)を参照しながら説明する。従来の画像形成装置は、図16(a)に示すように、直前の給送工程でシート同士の摩擦力による連れ出し現象によりシートが重送されても、分離パッド19でシートが分離されるため、分離パッド19と給送コロ18の間にシートS1が残っている場合がある。
【0006】
この状態で制御部からの給送信号により、給送ローラ15が矢印R1方向へ回転すると共に、昇降部3が給送バネ5の付勢力により矢印R2方向に回転すると、図16(b)に示すように、シートS1がシート束Tと給送コロ18とに挟持された状態になる。そして、図16(b)の状態から更に給送ローラ15が矢印R1方向へ回転すると、図16(c)に示すように、給送ローラ15の摩擦部15aの先端がシートS1と当接する。
【0007】
このとき、図16(d)に示すように、シートS1は、給送ローラ15の摩擦部15aの先端と当接する当接位置P1で矢印F1方向の摩擦力を受けると共に、先端部が分離パッド19から矢印F2方向の摩擦力を受ける。これにより、シートS1の剛性が低いと上述の摩擦力によりシートS1が座屈し、シートS1が座屈すると、画像形成装置はジャムを引き起こしやすくなる。
【0008】
特に、小型で低コストな画像形成装置(シート給送装置)においては、上述の連れ出し現象が発生し易いやすいため、今後需要が高くなることが想定される薄紙では今以上に座屈起因のジャムが問題となる可能性がある。一方、シートの連れ出し現象を防止するシート分離装置を設けることで座屈起因のジャム問題は解決されることも考えられるが、複雑な機構が必要となるため、安価な構成では実現し難く、小型で低コストな画像形成装置には搭載し難い。
【0009】
そこで本発明は、簡単な構成でシートの連れ出し現象に起因するシートの座屈の発生を抑制し、坪量の低いシートにおいても安定した給送が可能なシート給送装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、シートを支持して昇降可能に設けられた昇降部と、円弧状の摩擦部及び周方向の一部が切りかかれた切欠部を有し、前記摩擦部で前記昇降部に支持されるシートを給送する給送ローラと、前記給送ローラを回転駆動する回転駆動手段と、前記摩擦部により給送されるシートに前記摩擦部と反対側から圧接して重送されたシートを分離する摩擦分離部材と、前記摩擦部が前記摩擦分離部材に到達するまで、前記昇降部に積載されたシートが前記摩擦部に接触しないように前記給送ローラの下位置で前記昇降部を待機させ、前記摩擦部が前記摩擦分離部材に到達すると、前記昇降部に積載されたシートが前記摩擦部に押し付けられて前記摩擦部がシートを給送する押付位置まで前記昇降部を上昇させる昇降手段と、を備えたことを特徴とするシート給送装置に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シートの先端部を給送ローラの摩擦部で保持した状態でシートを給送することにより、簡単な構成でシートの連れ出し現象に起因するシートの座屈の発生を抑制し、坪量の低いシートにおいても安定した給送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置を模式的に示す断面図である。
【図2】(a)は、第1実施形態に係るシート給送部の要部を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の側面図である。
【図3】第1実施形態に係るシート給送部の給送ローラ等の回転位置を説明するための説明図である。
【図4】第1実施形態に係る制御部のシートを給送するためのブロック図である。
【図5】(a)は、第1実施形態に係るシート給送部の摩擦部の先端が接触位置まで回転した状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の側面図である。
【図6】(a)は、第1実施形態に係るシート給送部の昇降部が上昇して摩擦部とシートが接触した状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の側面図である。
【図7】(a)は、第1実施形態に係るシート給送部の摩擦部がシートを給送した状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の側面図である。
【図8】第1実施形態に係るシート給送部のシート給送動作を示すフローチャートである。
【図9】(a)は、シートが給送コロと分離パッドに挟持された状態を示す図であり、(b)は、摩擦部の先端がシートと接触位置P2で接触した状態を示す図である。(c)は、摩擦部がシートと当接位置P1と接触位置P2とで接触する状態を示す図であり、(d)は、(c)の部分拡大図である。
【図10】(a)は、第2実施形態に係るシート給送部の摩擦部の先端が回転する状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の正面図であり、(c)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大側面図である。
【図11】(a)は、第2実施形態に係るシート給送部の摩擦部の先端が接触位置まで回転した状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大正面図であり、(c)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大側面図である。
【図12】(a)は、第2実施形態に係るシート給送部の昇降部が上昇して摩擦部とシート束が接触した状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大正面図であり、(c)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大側面図である。
【図13】(a)は、第2実施形態に係るシート給送部の付勢バネが縮んだ状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大正面図であり、(c)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大側面図である。
【図14】(a)は、第2実施形態に係るシート給送部の摩擦部がシートを給送した状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大正面図であり、(c)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大側面図である。
【図15】(a)は、昇降部に積載されたシートの量が最大となった場合の給送ローラの近傍を示す断面図であり、(b)は、昇降部に積載されたシートの量が最小となった場合の給送ローラの近傍を示す断面図である。
【図16】(a)は、従来例の画像形成装置のシート給送部で給送されるシートが給送コロと分離パッドに挟持された状態を示す図であり、(b)は、給送ローラが回転する状態を示す図である。(c)は、給送ローラがシートと当接位置P1で接触した態を示す図であり、(d)は、(c)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るシート給送部を備える画像形成装置について、図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれら複合機器等、シートを1枚ずつ分離しながら給送するシート給送装置を備えた画像形成装置である。
【0014】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1について、図1から図9を参照しながら説明する。まず、第1実施形態に係る画像形成装置1の概略構成について、シートSの動きに沿って、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1を模式的に示す断面図である。
【0015】
図1に示すように、画像形成装置1は、シートSを収納するシート収納部40と、シート給送装置としてのシート給送部50と、シート給送部50により給送されるシートSに画像を形成する画像形成部60と、を備える。シート給送部50は、画像形成装置1の下方に配置されており、シート収納部40に収納されたシートSを画像形成部60に給送する。なお、シート給送部50については、後に詳しく説明する。
【0016】
シートSは、シート収納部40の給送トレイ2及び昇降部3に積載された状態(以下、給送トレイ2及び昇降部3に積載された状態のシートSを「シート束T」という)でセットされる。給送トレイ2及び昇降部3にセットされたシート束Tは、不図示の駆動モータが作動することにより給送動作が開始される。例えば、不図示の駆動モータが作動することにより不図示の給送ローラ用ソレノイドが操作され、給送動作が開始される。そして、給送動作が開始されると、昇降手段を構成する給送バネ5のR2方向の付勢力により、昇降手段を構成する軸4を中心にシートを支持して昇降可能な昇降部3が給送ローラ15に向かって上昇する。つまり、下位置に待機していた昇降部3が下位置から給送ローラ15に向かって上昇する。これにより、昇降部3上に積載されているシート束Tの最上面のシートSが給送ローラ15に押し付けられる。給送ローラ15に押し付けられたシートSは、給送ローラ15の回転により給送される。その後、シートSは、摩擦分離部材としての分離パッド19で1枚ずつ分離され(重送されていた場合)、搬送ローラ対21を経て画像形成部60に搬送される。
【0017】
画像形成部60は、シート給送部50の上方に配置されており、プロセスカートリッジ25内に配置された感光体ドラム22と、転写ローラ23と、レーザスキャナ24と、を備えて構成されている。画像形成部60に給送されたシートSは、感光体ドラム22と転写ローラ23とからなる転写ニップへと搬送される。レーザスキャナ24は、感光体ドラム22に静電潜像を形成する。レーザスキャナ24により感光体ドラム22に形成された静電潜像は、プロセスカートリッジ25内でトナーが付着されてトナー像となり、感光体ドラム22と転写ローラ23とから構成される転写ニップにて、搬送されたシートSに未定着画像として転写される。未定着画像が転写されたシートSは、未定着画像を加熱定着するために、定着装置26に送られ、未定着画像が加熱定着される。
【0018】
画像定着を終えたシートSは、搬送ガイド27に沿って排紙ローラ28へと搬送される。排紙ローラ28は、弾性力によって付勢された状態で当接している排紙コロ29とでニップを形成しており、シートSを排紙トレイ30へ排出する。
【0019】
次に、第1実施形態に係るシート給送部50について、図1に加え、図2(a)から図9(d)を参照しながら具体的に説明する。まず、シート給送部50の全体構成について、図2(a)及び図2(b)を参照しながら説明する。図2(a)は、第1実施形態に係るシート給送部50の要部を示す斜視図である。図2(b)は、図2(a)に示すシート給送部50の側面図である。
【0020】
図2(a)及び図2(b)に示すように、シート束Tは、シートSを積載可能な給送トレイ2及び昇降部3に積載されている。給送トレイ2及び昇降部3は、並列に配置されており、給送トレイ2は、シート給送方向の上流側に配置され、昇降部3は、シート給送方向の下流側に配置されている。
【0021】
昇降部3は、不図示のフレームに支持された軸4を中心に、図2(b)に示す矢印R2及びR3方向に回動自在となるように軸4に支持されている。昇降部3は、シート給送方向の上流側で軸4に支持されており、シート給送方向の下流側が昇降するように構成されている。給送バネ5は、シート給送方向の下流側において昇降部3の下方に配置されており、昇降部3を矢印R2方向に付勢する。
【0022】
昇降手段を構成するカム部材としての昇降部カム6は、昇降手段を構成する昇降部カム軸7に基端が固定支持されている。一方、昇降部カム6の先端部は、昇降部カム軸7に固定支持された昇降手段を構成する昇降部ギア8の回転と同期して矢印R4及びR5方向に回動自在となっている。また、昇降部カム6の先端部は、昇降部3の両側(シート給送方向と直交する側)に連結された昇降手段を構成するカムフォロア3aと係合しており、給送バネ5の付勢力に抗って昇降部3の昇降(上昇及び下降)を制御する機能を有している。なお、昇降部カム6の先端部に形成されるカム面は、給送ローラ15の摩擦部15aが分離パッド19で停止した後、昇降部3が押付位置に移動するように形成されている。昇降手段を構成するギア9は、昇降手段を構成する不図示の昇降部駆動モータからの回転駆動力を昇降部ギア8に伝達する。
【0023】
回転駆動手段を構成する給送軸10は、不図示のフレームに回転自在に支持されている。回転駆動手段を構成する給送ギア11は、給送軸10に固着されており、回転駆動手段を構成する不図示の給送モータから伝達される回転駆動力を給送軸10に伝達する。回転駆動手段を構成する電磁クラッチ12は、後述の制御部70からの指示により、不図示の給送モータに接続された回転駆動手段を構成するギア13と、給送ギア11に噛み合う回転駆動手段を構成するギア14との間の回転駆動力の伝達の可否を行う。すなわち、ギア13とギア14の接続を行う。
【0024】
給送ローラ15は、給送軸10に固着されており、ゴム部材で形成された円弧状の摩擦部15aと、周方向の一部が切りかかれた切欠部15bと、を有する。摩擦部15aは、シート束Tの最上面に位置するシートSに圧接して、シートSを給送する。検知手段を構成するフラグ16は、給送軸10の端部に固着されており、給送ローラ15と同位相で回転する。フラグ16は、フォトセンサ遮断部16aを有しており、フォトセンサ遮断部16aは、フラグ16の回転動作範囲内に位置する検知手段を構成する赤外線通光部17aを遮断するように形成されている。給送コロ18は、給送ローラ15の両側において、給送軸10に回転自在に支持されている。
【0025】
分離パッド19は、摩擦材料により形成されており、シート給送方向におけるシート収納部40の下流側において、給送ローラ15と対向する位置に配置されている。また、分離パッド19は、分離パッド19の背面に設けられた分離パッドバネ20により、給送ローラ15の摩擦部15a及び給送コロ18に圧接するように付勢されている。分離パッド19は、例えば、シートSの給送時にシート束Tから複数枚のシートが給送された場合(以下、「重送」ともいう)に、摩擦部15aと反対側からシートSに圧接して最上面の1枚のみを分離させる。
【0026】
次に、給送ローラ15の摩擦部15a及びフラグ16のフォトセンサ遮断部16aの回転位置について、図3を参照しながら説明する。図3は、第1実施形態に係るシート給送部50の給送ローラ15等の回転位置を説明するための説明図である。図3に示す位置は、給送ローラ15の摩擦部15a及びフラグ16に設けられたフォトセンサ遮断部16aの初期位置を示している。ここで、初期位置での摩擦部15aの先端位置を位置P0、給送ローラ15が図3に示す矢印R1方向に回転した場合に分離パッド19に摩擦部15aの先端が当接又は所定の量当接し合う位置を接触位置P2、位置P0から接触位置P2までの角度をθ1とする。図3に示すように、フォトセンサ遮断部16aが初期位置から矢印R1方向に回転し、赤外線通光部17aを遮断するまでの角度は、位置P0から接触位置P2までの角度θ1と同じになるように構成されている。また、フォトセンサ遮断部16aが赤外線通光部17aを遮断してから矢印R1方向に更に回転し、初期位置へ戻るまでの角度θ2は、角度θ2=360−θ1となるように構成されている。
【0027】
次に、第1実施形態に係るシート給送部50におけるシート給送制御について、図4から図8を参照しながら説明する。
【0028】
まず、図4を参照しながらシート給送部50の給送制御を行う制御部70について説明する。図4は、第1実施形態に係る制御部70のシートを給送するためのブロック図である。図4に示すように、制御部70は、赤外線通光部17aと電気的に接続されており、赤外線通光部17aがフォトセンサ遮断部16aにより遮断されると、赤外線通光部17aから所定の信号が入力されるように構成されている。また、制御部70は、タイマ71を備え、タイマ71は、制御部70に電気的に接続された給送モータや昇降部駆動モータ等の駆動時間の測定等を行う。また、制御部70は、電磁クラッチ12に電気的に接続されており、ギア13とギア14の接続の制御を行う。
【0029】
次に、図8に示すフローチャートに沿って、図2(a)及び図2(b)に加え、図5(a)から図7(b)を参照しながらシート給送部50による給送動作について説明する。図5(a)は、第1実施形態に係るシート給送部50の摩擦部15aの先端が接触位置まで回転した状態を示す斜視図である。図5(b)は、図5(a)に示すシート給送部50の側面図である。図6(a)は、第1実施形態に係るシート給送部50の昇降部3が上昇して摩擦部15aとシートSが接触した状態を示す斜視図である。図6(b)は、図6(a)に示すシート給送部50の側面図である。図7(a)は、第1実施形態に係るシート給送部50の摩擦部15aがシートS1を給送した状態を示す斜視図である。図7(b)は、図7(a)に示すシート給送部50の側面図である。図8は、第1実施形態に係るシート給送部50のシート給送動作を示すフローチャートである。なお、図5(b)、図6(b)、図7(b)においては、給送ローラ15の摩擦部15aを見やすくするために給送コロ18の手前側を不図示としている。
【0030】
図2(a)及び図2(b)に示す位置が、給送ローラ15(摩擦部15a)、フラグ16(フォトセンサ遮断部16a)、昇降部3及び昇降部カム6の初期位置となる。初期位置において、制御部70からの駆動信号が不図示の給送モータに入力されると、給送モータが回転し、不図示の駆動列からギア13に回転駆動力が伝達される。これにより、ギア13が図2(b)に示す矢印R8方向に回転を始める(ステップS101)。次に、制御部70からの信号が電磁クラッチ12に入力され、電磁クラッチ12はギア13からの回転駆動力をギア14に伝達する(ステップS102)。ギア14に回転駆動力が伝達されると、ギア14は矢印R8方向に回転を始め、給送ギア11、給送軸10、フラグ16及び給送ローラ15がそれぞれ矢印R1方向に回転を始める(ステップS103)。
【0031】
(給送ローラ15が回転を一時停止する動作)
図5(a)及び図5(b)に示すように、給送ギア11、給送軸10、フラグ16及び給送ローラ15がそれぞれ矢印R1方向に図2に示す角度θ1回転すると、給送ローラ15の摩擦部15aの先端が分離パッド19と接する位置である接触位置P2に到達する。ここで、フォトセンサ遮断部16aが角度θ1回転すると、赤外線通光部17aがフォトセンサ遮断部16aにより遮断される。赤外線通光部17aがフォトセンサ遮断部16aにより遮断されると、赤外線通光部17aは、制御部70に所定の信号を発信する。赤外線通光部17aから発信された所定の信号が制御部70に入力されると、制御部70は電磁クラッチ12への信号を遮断する(ステップS104、105)。電磁クラッチ12への信号が遮断されると、電磁クラッチ12は、ギア13からの回転駆動力をギア14に伝達しなくなり、ギア14、給送ギア11、給送軸10、フラグ16及び給送ローラ15は、それぞれ回転を停止する(ステップS106)。
【0032】
(昇降部3の動作と給送開始動作までの流れ)
また、赤外線通光部17aから発信された所定の信号が制御部70に入力されると、図6(a)及び図6(b)に示すように、制御部70からの駆動信号が不図示の昇降部駆動モータに入力され、ギア9が矢印R6方向に回転する。ギア9が矢印R6方向に回転すると、昇降部ギア8、昇降部カム軸7及び昇降部カム6が矢印R4方向に回転する(ステップS107)。
【0033】
ここで、ギア9が矢印R6方向に回転する昇降部駆動モータの回転方向を正回転とし、その反対方向を逆回転とすると、昇降部カム6が矢印R4方向に回転することで、昇降部3は、給送バネ5から付勢力を受け矢印R2方向に回転する。昇降部3の上にはシート束Tが積載されており、シート束Tの最上面のシートSが給送ローラ15の摩擦部15aに当接することで停止する。なお、制御部70は、シート束Tの最上面のシートSが給送ローラ15の摩擦部15aに当接する所定の時間、昇降部駆動モータを回転させるように構成されている(ステップS108、S109)。つまり、タイマ71が所定時間を計測し、制御部70は、タイマ71により計測された時間に基づいて昇降部駆動モータを回転させる。
【0034】
昇降部3に積載されたシート束Tの最上面のシートSが給送ローラ15の摩擦部15aに当接すると、制御部70からの信号が電磁クラッチ12に入力され、電磁クラッチ12はギア13からの回転駆動力をギア14に伝達する(ステップS110)。回転駆動力がギア14に伝達されると、ギア14が矢印R8方向に回転し、給送ギア11、給送軸10、フラグ16及び給送ローラ15がそれぞれ矢印R1方向に回転する(ステップS111)。これにより、給送ローラ15の摩擦部15aが最上面のシートSとの摩擦力により、シート束Tの最上面のシートSを給送する。
【0035】
(給送動作終了時の動作)
次に、給送ギア11、給送軸10、フラグ16及び給送ローラ15がそれぞれ矢印R1方向に図3に示した角度θ2回転する時間をタイマが測定し、所定時間が経過すると、制御部70は、電磁クラッチ12の信号を遮断する。電磁クラッチ12の信号が遮断されると、電磁クラッチ12はギア13からギア14への回転駆動力の伝達を遮断する(ステップS112、S113)。これにより、図7(a)及び図7(b)に示すように、ギア14、給送ギア11、給送軸10、フラグ16及び給送ローラ15は、回転を停止し、初期位置にある状態が維持される(ステップS114)。
【0036】
同様に、制御部70からの昇降部駆動モータを逆回転させる駆動信号が入力され、昇降部駆動モータがギア9を矢印R7方向に回転する。昇降部駆動モータがギア9を矢印R7方向に回転すると、昇降部ギア8、昇降部カム軸7及び昇降部カム6が矢印R5の方向に回転を始める(ステップS115)。昇降部カム6が矢印R5方向に回転することにより、昇降部3は矢印R3方向に押し下げられる。昇降部カム6及び昇降部3が初期位置に戻る所定の時間をタイマ71が測定し、所定の時間が経過すると、制御部70は、昇降部駆動モータを停止させ、ギア9、昇降部ギア8、昇降部カム軸7及び昇降部カム6が初期位置で停止する。すなわち、図2に示す状態に戻り、シート給送制御が完了する(ステップS116,S117)。
【0037】
このようなシート給送制御を繰り返すことにより、給送トレイ2に積載されたシート束Tは、給送ローラ15の1回転毎に1枚ずつ分離されながら給送される。ここで、上述したシート給送制御の動作によって、直前の給送工程において連れ出された(重送された)シートS1の給送工程において、座屈が防止されることについて、図9(a)から図9(d)を参照しながら説明する。図9(a)は、シートS1が給送コロ18と分離パッド19に挟持された状態を示す図である。図9(b)は、摩擦部15aの先端がシートS1と当接位置P1で接触した状態を示す図である。図9(c)は、摩擦部15aがシートS1と当接位置P1と接触位置P2とで接触する状態を示す図である。図9(d)は、図9(c)の部分拡大図である。
【0038】
図9(a)に示すように、直前の給送工程において連れ出されたシートS1は、分離パッド19により最上面のシートSのみが給送されるため、先端部が分離パッド19と給送コロ18のニップに残ったままの状態となる。この状態において、制御部70からの駆動信号が不図示の給送モータに入力されて給送が開始されると、上述のステップS101からステップS106の動作が行われる。これにより、給送ローラ15は摩擦部15aの先端がシートS1の先端に当接する接触位置P2で停止する(図9(b)参照)。このときシートS1は、先端部が分離パッド19と給送コロ18のニップに挟持されたまま、摩擦部15aの先端が当接するまで給送されることなく接触位置P2で保持される。
【0039】
次に、上述のステップS107からステップS109の動作が行われると、昇降部3が上昇し、昇降部3に積載されているシート束Tに押されてシートS1が給送ローラ15に当接する(図9(c)参照)。このときの給送ローラ15とシートS1とが当接する位置を押付位置としての当接位置P1とする。そして、上述のステップS110及びステップS111の動作が行われると、給送ローラ15が矢印R1方向に回転を始める。このときのシートS1は、図9(d)に示すように、シート束Tの上昇により当接する当接位置P1と給送ローラ15の摩擦部15aの先端とシートS1の先端の接触位置である接触位置P2の2点で摩擦力を受ける。
【0040】
このように、シートS1は、当接位置P1で給送ローラ15の摩擦部15aから矢印F1方向の摩擦力を受けると共に、接触位置P2で給送ローラ15の摩擦部15aから矢印F3方向の摩擦力を受けることにより給送される。そのため、シートS1が分離パッド19から矢印F2方向の摩擦力を受けた場合においても、接触位置P2で矢印F3方向の摩擦力でシートS1を給送することで、シートS1の先端部の近傍で座屈が発生することを抑制することができる。その後、シートS1に対してステップS112からステップS117の動作が行われることにより、シート給送制御の動作が終了する。
【0041】
以上のような構成を有する第1実施形態に係る画像形成装置1によれば、以下のような効果を奏する。第1実施形態に係る画像形成装置1のシート給送部50は、給送ローラ15が分離パッド19に到達するまで昇降部3待機させ、給送ローラ15が分離パッド19に到達すると、昇降部3を上昇させてシートを給送ローラ15に当接させる。そのため、直前の給送工程におけるシートS1の連れ出し現象により分離パッド19上にシートS1が連れ出されても、シートS1を当接位置P1と接触位置P2の2点で接触した状態で給送することができる。これにより、例えば、剛性の低い(坪量の低い)薄紙等を使用した場合においても、シートの連れ出し現象に起因するシートの座屈の発生を抑制することができる。その結果、シートの給送不良等の発生を抑制した安定した給送が可能となり、より信頼性の高い画像形成装置を提供することができる。
【0042】
また、例えば、連れ出されたシートS1を戻す機構等を追加することなく、シートS1の座屈の発生を抑制可能となるため、小型かつ低コストで、給送安定性の高いシート給送装置を提供することができる。
【0043】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置1Aについて、図10から図15を参照しながら説明する。第2実施形態においては、給送軸10を等速回転させて複雑な制御を行うことなく給送ローラを一時停止させる。つまり、第2実施形態に係る画像形成装置1Aは、摩擦部15aが分離パッド19に到達したときの給送ローラ15の回転の停止制御を一時停止機構により行うことにおいて第1実施形態と相違する。そのため、第2実施形態においては、第1実施形態と相違する点、すなわち、給送ローラ15の一時停止機構を中心に説明し、第1実施形態に係る画像形成装置1と同様の構成のものについては、同じ符号を付してその説明を省略する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成のものについては、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0044】
まず、第2実施形態に係るシート給送部50Aの全体構成について、図10(a)及び図10(b)を参照しながら説明する。図10(a)は、第2実施形態に係るシート給送部50Aの摩擦部15aの先端が回転する状態を示す斜視図である。図10(b)は、図10(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大正面図である。図10(c)は、図10(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大側面図である。
【0045】
図10(a)から図10(c)に示すように、一時停止機構は、給送軸10に固着された第1回転体としての給送軸ホルダ31と、給送軸ホルダ31に揺動自在に支持された第2回転体としての給送ローラホルダ32と、付勢バネ33と、を備える。給送軸ホルダ31は、外周面から突出した第1突出部31aと、第2突出部31bと、を備える。給送ローラホルダ32は、第1突出部31aが露出される第1切欠き部32aと、第2突出部31bが露出される第2切欠き部32bと、を備える。第1切欠き部32aは、給送ローラホルダ32を矢印R1方向に回転させた際に第1突出部31aと突き当たる第1突当面32cと、給送ローラホルダ32を矢印R1方向と反対方向に回転させた際に第1突出部31aと突き当たる第2突当面32dとを備える。同様に、第2切欠き部32bは、付勢バネ33の一端を連結する連結面32eと、給送ローラホルダ32を矢印R1方向に回転させた時に第2突出部31bと突き当たる突当面32fと、を備える。なお、給送ローラ15は、給送ローラホルダ32に連結されている。
【0046】
付勢バネ33は、給送ローラホルダ32の第2切欠き部32bにおいて第2突出部31bと給送ローラホルダ32の間に介在された圧縮バネである。付勢バネ33は、給送ローラホルダ32を矢印R1方向に付勢して、給送ローラホルダ32を給送軸ホルダ31に連動して回転させる。ここで、図10(c)に示すように、第1切欠き部32aの第2突当面32dと第1突出部31aとがなす角度をφ1とし、第2切欠き部32bの突当面32fと第2突出部31bがなす角をφ2とすると、φ2はφ1よりも大きくなるように形成される。φ1及びφ2は、ともに給送ローラホルダ32の揺動範囲内での可変の値を示すが、初期状態においてはφ1=θ3とすることで、θ3≧φ1>0のとき、付勢バネ33の付勢力で給送ローラホルダ32を付勢する。また、φ1=0のとき給送軸ホルダ31が第2突当面32dと突き当たることで給送ローラホルダ32をより大きな力で付勢する。
【0047】
また、付勢バネ33が給送ローラホルダ32を付勢する付勢力は、給送ローラ15の摩擦部15aと分離パッド19の間に摩擦力が発生した時点で、給送ローラ15及び給送ローラホルダ32が回転できないように、付勢バネ33の付勢力が設定される。
【0048】
カム部材としての給送カム34は、給送軸10の両端に固着されており、昇降部3のカムフォロア3aに形成されたカム35と摺動し、給送バネ5の付勢力に抗して昇降部3を昇降させる昇降手段を構成する。なお、給送カム34は、1回転毎に昇降部3が矢印R2およびR3方向に1往復の揺動運動する構成とされている。
【0049】
次に、第2実施形態に係るシート給送部50Aにおけるシート給送制御について、図10(a)から図10(c)に加え、図11(a)から図14(c)を参照しながら説明する。図11(a)は、第2実施形態に係るシート給送部50Aの摩擦部15aの先端が接触位置まで回転した状態を示す斜視図である。図11(b)は、図11(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大正面図である。図11(c)は、図11(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大側面図である。図12(a)は、第2実施形態に係るシート給送部50Aの昇降部3が上昇して摩擦部15aとシート束Tが接触した状態を示す斜視図である。図12(b)は、図12(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大正面図である。図12(c)は、図12(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大側面図である。図13(a)は、第2実施形態に係るシート給送部50Aの付勢バネ33が縮んだ状態を示す斜視図である。図13(b)は、図13(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大正面図である。図13(c)は、図13(a)に示すシート給送部の部分拡大側面図である。図14(a)は、第2実施形態に係るシート給送部50Aの摩擦部15aがシートSを給送した状態を示す斜視図である。図14(b)は、図14(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大正面図である。図14(c)は、図14(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大側面図である。
【0050】
図10(a)から図10(c)に示す位置が給送ローラ15(摩擦部15a)、給送軸ホルダ31、給送ローラホルダ32、昇降部3、給送カム34の初期位置となる。初期位置において、不図示の制御部からの駆動信号が不図示の駆動源としての給送モータに入力されると、給送モータが回転し、不図示の駆動列から給送軸10に固定支持される不図示のギアへ回転駆動力が伝達される。これにより、給送軸10に矢印R1方向の回転駆動力が伝達され、給送軸10に固定された給送軸ホルダ31と給送カム34が矢印R1方向に回転する。給送軸ホルダ31が矢印R1方向に回転すると、給送ローラホルダ32が付勢バネ33により矢印R1方向の付勢力を受け、給送軸ホルダ31の第1突出部31aと第1突当面32cが当接したまま矢印R1方向に回転する(図10(c)参照)。同様に、給送カム34が矢印R1方向に回転すると、昇降部3が給送バネ5より矢印R2方向の付勢力を受け、昇降部3が矢印R2方向に回転する。
【0051】
(給送ローラ15が回転を一時停止する動作)
図11(a)から図11(c)に示すように、給送ローラ15と給送ローラホルダ32が矢印R1方向に回転し、給送ローラ15の摩擦部15aの先端が接触位置P2に到達すると、摩擦部15aが分離パッド19から摩擦力を受けて給送ローラ15が停止する。ここで、給送ローラ15が停止するまでは、付勢バネ33に付勢されて第1突出部31aと突当面32cが当接したまま矢印R1方向に回転するため、給送軸ホルダ31と給送ローラホルダ32は、矢印R1方向に連動して回転する。一方、上述したように、付勢バネ33の付勢力は、給送ローラ15の摩擦部15aと分離パッド19の間に摩擦力が発生した時点で、給送ローラ15及び給送ローラホルダ32が回転できないように設定されている。そのため、φ2が小さくなり、付勢バネ33の付勢力が大きくなっても、給送ローラ15は、摩擦部15aと分離パッド19との間に生じる摩擦力により、付勢バネ33の付勢力に抗して、接触位置P2で停止したままの状態となる。つまり、給送軸ホルダ31と給送ローラホルダ32の連動が解除される。
【0052】
(昇降部3の動作と給送開始動作までの流れ)
図12(a)から図12(b)に示すように、給送ローラホルダ32及び給送ローラ15が分離パッド19との摩擦力により停止しても、給送軸10、給送軸ホルダ31及び給送カム34は、矢印R1方向に回転を続ける。そのため、給送カム34の回転により、給送カム34が昇降部3のカムフォロア3aに形成されたカム35と摺動して、昇降部3の上に積載されたシート束Tは上昇する。そして、シート束Tの最上面のシートSが給送ローラ15の摩擦部15aに当接すると、昇降部3は停止する。
【0053】
図13(a)から図13(c)に示すように、昇降部3が停止した後、給送軸ホルダ31が矢印R1方向に回転を続けると、φ1=0°となる。つまり、給送軸ホルダ31の第1突出部31aが第1突当面32dに当接する。これにより、給送ローラホルダ32と給送ローラ15が矢印R1方向に押され、回転を再開する。そして、給送ローラ15の摩擦部15aが昇降部3の最上面のシートSを押圧し、シートSの給送が再開される。このとき、付勢バネ33は、昇降部3が当接位置P1に到達したタイミングで復帰する。
【0054】
(給送動作終了時の動作)
図14(a)から図14(c)に示すように、給送軸10、給送軸ホルダ31、給送ローラホルダ32、給送ローラ15及び給送カム34が矢印R1方向に回転を続けると、給送カム34がカム35と当接し昇降部3を矢印R3方向に押し下げる。これにより、昇降部3は、図10(c)に示す初期位置に戻る。また、昇降部3が初期位置に戻った時点で、不図示のソレノイドが給送軸10に固定支持される不図示のギアと係合して給送軸10への回転駆動力の伝達を絶つ。これにより、給送軸10、給送軸ホルダ31及び給送カム34は、それぞれ初期位置で停止する。
【0055】
初期位置においては、給送ローラホルダ32は、付勢バネ33から矢印R1方向の付勢力を受けるため、給送ローラホルダ32の第1突当面32cが給送軸ホルダ31の第1突出部31aに突き当たる。これにより、給送ローラ15は、図10(a)から図10(c)に示す初期位置に戻り、シート給送部の動作が完了する。なお、付勢バネ33の付勢力によって給送ローラ15は初期位置へ戻る。そのため、給送軸10への回転駆動力の伝達が断たれたときの給送ローラ15は、分離パッド19の摩擦力の影響をうけないように摩擦部15aの後端が分離パッド19を抜けたシート給送方向の下流側に位置するように構成される。
【0056】
上記動作を繰り返すことで、給送トレイ2に積載されたシートSは、給送ローラ15の1回転毎に、1枚ずつ分離給送される構成となっている。
【0057】
ここで、図15(a)及び図15(b)を参照しながら、給送カム34のカム面の形成条件について説明する。図15(a)は、昇降部3に積載されたシートSの量が最大となった場合の給送ローラ15の近傍を示す断面図である。図15(b)は、昇降部3に積載されたシートSの量が最小となった場合の給送ローラ15の近傍を示す断面図である。
【0058】
図15(a)は、昇降部3のシート束Tの量が最大の量の場合に、摩擦部15aが接触位置P2に位置した状態を示している。この状態において、シート束Tの最上面のシートSが給送ローラ15の摩擦部15aに当接する前に、給送ローラ15の摩擦部15aの先端が分離パッド19に当接し、摩擦力により停止するように、給送カム34とカム35のカム面は形成される。これをカム面の形成条件1とする。
【0059】
また、図15(b)は、昇降部3にシートSが積載されない場合に、摩擦部15aが接触位置P2に位置した状態を示している。この状態において、昇降部3が接触位置P2で停止中の給送ローラ15に当接した後に給送ローラ15が回転を再開するように、前述のθ3の値と給送カム34とカム35のカム面は形成される。これをカム面の形成条件2とする。
【0060】
このように、カム面の形成条件1及び形成条件2で給送カム34とカム35のカム面を決定することでシートSの積載量に関わらず、摩擦部15aが接触位置P2で停止している間に、昇降部3のシートSを給送ローラ15に当接させることが可能になる。
【0061】
以上のような構成を有する第2実施形態に係る画像形成装置1Aによれば、以下のような効果を奏する。第2実施形態に係る画像形成装置1Aのシート給送部50Aは、摩擦部15aが分離パッド19に到達すると、給送ローラ15の回転を停止させ、昇降部3が上昇して当接位置P1に到達すると、給送ローラ15を再度回転させる一時停止機構を備える。そのため、直前の給送工程におけるシートS1の連れ出し現象により分離パッド19上にシートS1が連れ出されても、シートS1を当接位置P1と接触位置P2の2点で接触した状態で給送することができる。これにより、例えば、剛性の低い(坪量の低い)薄紙等を使用した場合においても、シートの連れ出し現象に起因するシートの座屈の発生を抑制することができる。その結果、シートの給送不良等の発生を抑制した安定した給送が可能となり、より信頼性の高い画像形成装置を提供することができる。
【0062】
また、第2実施形態に係る画像形成装置1Aのシート給送部50Aは、例えば、複雑な制御を要することなく、簡単な構成で薄紙においての座屈の発生を軽減可能となり、給送不良の発生を抑制することができる。また、例えば、連れ出されたシートS1を戻す機構等を追加することなく、薄紙においての座屈の発生を軽減可能となり、給送不良の発生を抑制することができる。これにより、小型かつ低コストで、給送安定性の高いシート給送装置を提供することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されない。
【0064】
例えば、第2実施形態においては、給送軸ホルダ31、給送ローラホルダ32及び付勢バネ33を用いて遊び機構を構成したが、本発明においてはこれに限定されない。例えば、遊び機構は、所定の領域に融通部が設けられる欠歯やカム等により実現させる構成であってもよい。
【0065】
また、例えば、本実施形態においては、検知手段として、フラグ16及び赤外線通光部17aを用いて説明したが本発明においてはこれに限定されない。検知手段は、給送ローラの回転が検知可能であればよい。
【0066】
また、本実施形態においては、昇降手段としてカム及びカムフォロアを用いて説明したが本発明においてはこれに限定されない。昇降手段は、昇降部3を昇降自在なものであればよい。
【符号の説明】
【0067】
1 画像形成装置
2 給送トレイ
3 昇降部
3a カムフォロア(昇降手段)
4 軸
5 給送バネ(昇降手段)
6 昇降部カム(昇降手段)
7 昇降部カム軸(昇降手段)
8 昇降部ギア(昇降手段)
9 ギア(昇降手段)
10 給送軸(回転駆動手段)
11 給送ギア(回転駆動手段)
12 電磁クラッチ(回転駆動手段)
13 ギア(回転駆動手段)
14 ギア(回転駆動手段)
15 給送ローラ
15a 摩擦部
15b 切欠部
16 フラグ(検知手段)
17a 赤外線通光部(検知手段)
19 分離パッド(摩擦分離部材)
40 シート収納部
50 シート給送部(シート給送装置)
60 画像形成部
70 制御部
P1 当接位置
P2 接触位置
S シート
T シート束
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート給送装置及びこれを備える画像形成装置に関し、特にシートを1枚ずつ分離しながら給送するシート給送装置及びこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置には、シート積載板に積載されているシートをその最上位から1枚ずつ分離しながら画像形成部に給送するシート給送装置が設けられている。シート給送装置は、例えば、昇降自在に設けられたシート積載板をコイルスプリングで給送ローラに向かって付勢し、積載されているシートの最上面を給送ローラと同軸上に軸支された給送コロに当接させる。その後、給送ローラの回転により給送ローラに設けられた摩擦部がシートと当接し、摩擦部に対して圧接配置された分離パッドで1枚ずつ分離されながらシートが給送される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−257765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、環境意識の高まり等から、パルプ量の少ない(坪量の低い)薄いシート(以下、「薄紙」という)の需要が多くなってきている。しかしながら、薄紙は、剛性が低いため、従来の小型で低コストな画像形成装置に使用すると、給送できずにジャムを引き起こし易いという問題があった。
【0005】
ここで、薄紙のジャムについて、図16(a)から図16(c)を参照しながら説明する。従来の画像形成装置は、図16(a)に示すように、直前の給送工程でシート同士の摩擦力による連れ出し現象によりシートが重送されても、分離パッド19でシートが分離されるため、分離パッド19と給送コロ18の間にシートS1が残っている場合がある。
【0006】
この状態で制御部からの給送信号により、給送ローラ15が矢印R1方向へ回転すると共に、昇降部3が給送バネ5の付勢力により矢印R2方向に回転すると、図16(b)に示すように、シートS1がシート束Tと給送コロ18とに挟持された状態になる。そして、図16(b)の状態から更に給送ローラ15が矢印R1方向へ回転すると、図16(c)に示すように、給送ローラ15の摩擦部15aの先端がシートS1と当接する。
【0007】
このとき、図16(d)に示すように、シートS1は、給送ローラ15の摩擦部15aの先端と当接する当接位置P1で矢印F1方向の摩擦力を受けると共に、先端部が分離パッド19から矢印F2方向の摩擦力を受ける。これにより、シートS1の剛性が低いと上述の摩擦力によりシートS1が座屈し、シートS1が座屈すると、画像形成装置はジャムを引き起こしやすくなる。
【0008】
特に、小型で低コストな画像形成装置(シート給送装置)においては、上述の連れ出し現象が発生し易いやすいため、今後需要が高くなることが想定される薄紙では今以上に座屈起因のジャムが問題となる可能性がある。一方、シートの連れ出し現象を防止するシート分離装置を設けることで座屈起因のジャム問題は解決されることも考えられるが、複雑な機構が必要となるため、安価な構成では実現し難く、小型で低コストな画像形成装置には搭載し難い。
【0009】
そこで本発明は、簡単な構成でシートの連れ出し現象に起因するシートの座屈の発生を抑制し、坪量の低いシートにおいても安定した給送が可能なシート給送装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、シートを支持して昇降可能に設けられた昇降部と、円弧状の摩擦部及び周方向の一部が切りかかれた切欠部を有し、前記摩擦部で前記昇降部に支持されるシートを給送する給送ローラと、前記給送ローラを回転駆動する回転駆動手段と、前記摩擦部により給送されるシートに前記摩擦部と反対側から圧接して重送されたシートを分離する摩擦分離部材と、前記摩擦部が前記摩擦分離部材に到達するまで、前記昇降部に積載されたシートが前記摩擦部に接触しないように前記給送ローラの下位置で前記昇降部を待機させ、前記摩擦部が前記摩擦分離部材に到達すると、前記昇降部に積載されたシートが前記摩擦部に押し付けられて前記摩擦部がシートを給送する押付位置まで前記昇降部を上昇させる昇降手段と、を備えたことを特徴とするシート給送装置に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シートの先端部を給送ローラの摩擦部で保持した状態でシートを給送することにより、簡単な構成でシートの連れ出し現象に起因するシートの座屈の発生を抑制し、坪量の低いシートにおいても安定した給送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置を模式的に示す断面図である。
【図2】(a)は、第1実施形態に係るシート給送部の要部を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の側面図である。
【図3】第1実施形態に係るシート給送部の給送ローラ等の回転位置を説明するための説明図である。
【図4】第1実施形態に係る制御部のシートを給送するためのブロック図である。
【図5】(a)は、第1実施形態に係るシート給送部の摩擦部の先端が接触位置まで回転した状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の側面図である。
【図6】(a)は、第1実施形態に係るシート給送部の昇降部が上昇して摩擦部とシートが接触した状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の側面図である。
【図7】(a)は、第1実施形態に係るシート給送部の摩擦部がシートを給送した状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の側面図である。
【図8】第1実施形態に係るシート給送部のシート給送動作を示すフローチャートである。
【図9】(a)は、シートが給送コロと分離パッドに挟持された状態を示す図であり、(b)は、摩擦部の先端がシートと接触位置P2で接触した状態を示す図である。(c)は、摩擦部がシートと当接位置P1と接触位置P2とで接触する状態を示す図であり、(d)は、(c)の部分拡大図である。
【図10】(a)は、第2実施形態に係るシート給送部の摩擦部の先端が回転する状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の正面図であり、(c)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大側面図である。
【図11】(a)は、第2実施形態に係るシート給送部の摩擦部の先端が接触位置まで回転した状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大正面図であり、(c)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大側面図である。
【図12】(a)は、第2実施形態に係るシート給送部の昇降部が上昇して摩擦部とシート束が接触した状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大正面図であり、(c)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大側面図である。
【図13】(a)は、第2実施形態に係るシート給送部の付勢バネが縮んだ状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大正面図であり、(c)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大側面図である。
【図14】(a)は、第2実施形態に係るシート給送部の摩擦部がシートを給送した状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大正面図であり、(c)は、(a)に示すシート給送部の部分拡大側面図である。
【図15】(a)は、昇降部に積載されたシートの量が最大となった場合の給送ローラの近傍を示す断面図であり、(b)は、昇降部に積載されたシートの量が最小となった場合の給送ローラの近傍を示す断面図である。
【図16】(a)は、従来例の画像形成装置のシート給送部で給送されるシートが給送コロと分離パッドに挟持された状態を示す図であり、(b)は、給送ローラが回転する状態を示す図である。(c)は、給送ローラがシートと当接位置P1で接触した態を示す図であり、(d)は、(c)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るシート給送部を備える画像形成装置について、図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれら複合機器等、シートを1枚ずつ分離しながら給送するシート給送装置を備えた画像形成装置である。
【0014】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1について、図1から図9を参照しながら説明する。まず、第1実施形態に係る画像形成装置1の概略構成について、シートSの動きに沿って、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1を模式的に示す断面図である。
【0015】
図1に示すように、画像形成装置1は、シートSを収納するシート収納部40と、シート給送装置としてのシート給送部50と、シート給送部50により給送されるシートSに画像を形成する画像形成部60と、を備える。シート給送部50は、画像形成装置1の下方に配置されており、シート収納部40に収納されたシートSを画像形成部60に給送する。なお、シート給送部50については、後に詳しく説明する。
【0016】
シートSは、シート収納部40の給送トレイ2及び昇降部3に積載された状態(以下、給送トレイ2及び昇降部3に積載された状態のシートSを「シート束T」という)でセットされる。給送トレイ2及び昇降部3にセットされたシート束Tは、不図示の駆動モータが作動することにより給送動作が開始される。例えば、不図示の駆動モータが作動することにより不図示の給送ローラ用ソレノイドが操作され、給送動作が開始される。そして、給送動作が開始されると、昇降手段を構成する給送バネ5のR2方向の付勢力により、昇降手段を構成する軸4を中心にシートを支持して昇降可能な昇降部3が給送ローラ15に向かって上昇する。つまり、下位置に待機していた昇降部3が下位置から給送ローラ15に向かって上昇する。これにより、昇降部3上に積載されているシート束Tの最上面のシートSが給送ローラ15に押し付けられる。給送ローラ15に押し付けられたシートSは、給送ローラ15の回転により給送される。その後、シートSは、摩擦分離部材としての分離パッド19で1枚ずつ分離され(重送されていた場合)、搬送ローラ対21を経て画像形成部60に搬送される。
【0017】
画像形成部60は、シート給送部50の上方に配置されており、プロセスカートリッジ25内に配置された感光体ドラム22と、転写ローラ23と、レーザスキャナ24と、を備えて構成されている。画像形成部60に給送されたシートSは、感光体ドラム22と転写ローラ23とからなる転写ニップへと搬送される。レーザスキャナ24は、感光体ドラム22に静電潜像を形成する。レーザスキャナ24により感光体ドラム22に形成された静電潜像は、プロセスカートリッジ25内でトナーが付着されてトナー像となり、感光体ドラム22と転写ローラ23とから構成される転写ニップにて、搬送されたシートSに未定着画像として転写される。未定着画像が転写されたシートSは、未定着画像を加熱定着するために、定着装置26に送られ、未定着画像が加熱定着される。
【0018】
画像定着を終えたシートSは、搬送ガイド27に沿って排紙ローラ28へと搬送される。排紙ローラ28は、弾性力によって付勢された状態で当接している排紙コロ29とでニップを形成しており、シートSを排紙トレイ30へ排出する。
【0019】
次に、第1実施形態に係るシート給送部50について、図1に加え、図2(a)から図9(d)を参照しながら具体的に説明する。まず、シート給送部50の全体構成について、図2(a)及び図2(b)を参照しながら説明する。図2(a)は、第1実施形態に係るシート給送部50の要部を示す斜視図である。図2(b)は、図2(a)に示すシート給送部50の側面図である。
【0020】
図2(a)及び図2(b)に示すように、シート束Tは、シートSを積載可能な給送トレイ2及び昇降部3に積載されている。給送トレイ2及び昇降部3は、並列に配置されており、給送トレイ2は、シート給送方向の上流側に配置され、昇降部3は、シート給送方向の下流側に配置されている。
【0021】
昇降部3は、不図示のフレームに支持された軸4を中心に、図2(b)に示す矢印R2及びR3方向に回動自在となるように軸4に支持されている。昇降部3は、シート給送方向の上流側で軸4に支持されており、シート給送方向の下流側が昇降するように構成されている。給送バネ5は、シート給送方向の下流側において昇降部3の下方に配置されており、昇降部3を矢印R2方向に付勢する。
【0022】
昇降手段を構成するカム部材としての昇降部カム6は、昇降手段を構成する昇降部カム軸7に基端が固定支持されている。一方、昇降部カム6の先端部は、昇降部カム軸7に固定支持された昇降手段を構成する昇降部ギア8の回転と同期して矢印R4及びR5方向に回動自在となっている。また、昇降部カム6の先端部は、昇降部3の両側(シート給送方向と直交する側)に連結された昇降手段を構成するカムフォロア3aと係合しており、給送バネ5の付勢力に抗って昇降部3の昇降(上昇及び下降)を制御する機能を有している。なお、昇降部カム6の先端部に形成されるカム面は、給送ローラ15の摩擦部15aが分離パッド19で停止した後、昇降部3が押付位置に移動するように形成されている。昇降手段を構成するギア9は、昇降手段を構成する不図示の昇降部駆動モータからの回転駆動力を昇降部ギア8に伝達する。
【0023】
回転駆動手段を構成する給送軸10は、不図示のフレームに回転自在に支持されている。回転駆動手段を構成する給送ギア11は、給送軸10に固着されており、回転駆動手段を構成する不図示の給送モータから伝達される回転駆動力を給送軸10に伝達する。回転駆動手段を構成する電磁クラッチ12は、後述の制御部70からの指示により、不図示の給送モータに接続された回転駆動手段を構成するギア13と、給送ギア11に噛み合う回転駆動手段を構成するギア14との間の回転駆動力の伝達の可否を行う。すなわち、ギア13とギア14の接続を行う。
【0024】
給送ローラ15は、給送軸10に固着されており、ゴム部材で形成された円弧状の摩擦部15aと、周方向の一部が切りかかれた切欠部15bと、を有する。摩擦部15aは、シート束Tの最上面に位置するシートSに圧接して、シートSを給送する。検知手段を構成するフラグ16は、給送軸10の端部に固着されており、給送ローラ15と同位相で回転する。フラグ16は、フォトセンサ遮断部16aを有しており、フォトセンサ遮断部16aは、フラグ16の回転動作範囲内に位置する検知手段を構成する赤外線通光部17aを遮断するように形成されている。給送コロ18は、給送ローラ15の両側において、給送軸10に回転自在に支持されている。
【0025】
分離パッド19は、摩擦材料により形成されており、シート給送方向におけるシート収納部40の下流側において、給送ローラ15と対向する位置に配置されている。また、分離パッド19は、分離パッド19の背面に設けられた分離パッドバネ20により、給送ローラ15の摩擦部15a及び給送コロ18に圧接するように付勢されている。分離パッド19は、例えば、シートSの給送時にシート束Tから複数枚のシートが給送された場合(以下、「重送」ともいう)に、摩擦部15aと反対側からシートSに圧接して最上面の1枚のみを分離させる。
【0026】
次に、給送ローラ15の摩擦部15a及びフラグ16のフォトセンサ遮断部16aの回転位置について、図3を参照しながら説明する。図3は、第1実施形態に係るシート給送部50の給送ローラ15等の回転位置を説明するための説明図である。図3に示す位置は、給送ローラ15の摩擦部15a及びフラグ16に設けられたフォトセンサ遮断部16aの初期位置を示している。ここで、初期位置での摩擦部15aの先端位置を位置P0、給送ローラ15が図3に示す矢印R1方向に回転した場合に分離パッド19に摩擦部15aの先端が当接又は所定の量当接し合う位置を接触位置P2、位置P0から接触位置P2までの角度をθ1とする。図3に示すように、フォトセンサ遮断部16aが初期位置から矢印R1方向に回転し、赤外線通光部17aを遮断するまでの角度は、位置P0から接触位置P2までの角度θ1と同じになるように構成されている。また、フォトセンサ遮断部16aが赤外線通光部17aを遮断してから矢印R1方向に更に回転し、初期位置へ戻るまでの角度θ2は、角度θ2=360−θ1となるように構成されている。
【0027】
次に、第1実施形態に係るシート給送部50におけるシート給送制御について、図4から図8を参照しながら説明する。
【0028】
まず、図4を参照しながらシート給送部50の給送制御を行う制御部70について説明する。図4は、第1実施形態に係る制御部70のシートを給送するためのブロック図である。図4に示すように、制御部70は、赤外線通光部17aと電気的に接続されており、赤外線通光部17aがフォトセンサ遮断部16aにより遮断されると、赤外線通光部17aから所定の信号が入力されるように構成されている。また、制御部70は、タイマ71を備え、タイマ71は、制御部70に電気的に接続された給送モータや昇降部駆動モータ等の駆動時間の測定等を行う。また、制御部70は、電磁クラッチ12に電気的に接続されており、ギア13とギア14の接続の制御を行う。
【0029】
次に、図8に示すフローチャートに沿って、図2(a)及び図2(b)に加え、図5(a)から図7(b)を参照しながらシート給送部50による給送動作について説明する。図5(a)は、第1実施形態に係るシート給送部50の摩擦部15aの先端が接触位置まで回転した状態を示す斜視図である。図5(b)は、図5(a)に示すシート給送部50の側面図である。図6(a)は、第1実施形態に係るシート給送部50の昇降部3が上昇して摩擦部15aとシートSが接触した状態を示す斜視図である。図6(b)は、図6(a)に示すシート給送部50の側面図である。図7(a)は、第1実施形態に係るシート給送部50の摩擦部15aがシートS1を給送した状態を示す斜視図である。図7(b)は、図7(a)に示すシート給送部50の側面図である。図8は、第1実施形態に係るシート給送部50のシート給送動作を示すフローチャートである。なお、図5(b)、図6(b)、図7(b)においては、給送ローラ15の摩擦部15aを見やすくするために給送コロ18の手前側を不図示としている。
【0030】
図2(a)及び図2(b)に示す位置が、給送ローラ15(摩擦部15a)、フラグ16(フォトセンサ遮断部16a)、昇降部3及び昇降部カム6の初期位置となる。初期位置において、制御部70からの駆動信号が不図示の給送モータに入力されると、給送モータが回転し、不図示の駆動列からギア13に回転駆動力が伝達される。これにより、ギア13が図2(b)に示す矢印R8方向に回転を始める(ステップS101)。次に、制御部70からの信号が電磁クラッチ12に入力され、電磁クラッチ12はギア13からの回転駆動力をギア14に伝達する(ステップS102)。ギア14に回転駆動力が伝達されると、ギア14は矢印R8方向に回転を始め、給送ギア11、給送軸10、フラグ16及び給送ローラ15がそれぞれ矢印R1方向に回転を始める(ステップS103)。
【0031】
(給送ローラ15が回転を一時停止する動作)
図5(a)及び図5(b)に示すように、給送ギア11、給送軸10、フラグ16及び給送ローラ15がそれぞれ矢印R1方向に図2に示す角度θ1回転すると、給送ローラ15の摩擦部15aの先端が分離パッド19と接する位置である接触位置P2に到達する。ここで、フォトセンサ遮断部16aが角度θ1回転すると、赤外線通光部17aがフォトセンサ遮断部16aにより遮断される。赤外線通光部17aがフォトセンサ遮断部16aにより遮断されると、赤外線通光部17aは、制御部70に所定の信号を発信する。赤外線通光部17aから発信された所定の信号が制御部70に入力されると、制御部70は電磁クラッチ12への信号を遮断する(ステップS104、105)。電磁クラッチ12への信号が遮断されると、電磁クラッチ12は、ギア13からの回転駆動力をギア14に伝達しなくなり、ギア14、給送ギア11、給送軸10、フラグ16及び給送ローラ15は、それぞれ回転を停止する(ステップS106)。
【0032】
(昇降部3の動作と給送開始動作までの流れ)
また、赤外線通光部17aから発信された所定の信号が制御部70に入力されると、図6(a)及び図6(b)に示すように、制御部70からの駆動信号が不図示の昇降部駆動モータに入力され、ギア9が矢印R6方向に回転する。ギア9が矢印R6方向に回転すると、昇降部ギア8、昇降部カム軸7及び昇降部カム6が矢印R4方向に回転する(ステップS107)。
【0033】
ここで、ギア9が矢印R6方向に回転する昇降部駆動モータの回転方向を正回転とし、その反対方向を逆回転とすると、昇降部カム6が矢印R4方向に回転することで、昇降部3は、給送バネ5から付勢力を受け矢印R2方向に回転する。昇降部3の上にはシート束Tが積載されており、シート束Tの最上面のシートSが給送ローラ15の摩擦部15aに当接することで停止する。なお、制御部70は、シート束Tの最上面のシートSが給送ローラ15の摩擦部15aに当接する所定の時間、昇降部駆動モータを回転させるように構成されている(ステップS108、S109)。つまり、タイマ71が所定時間を計測し、制御部70は、タイマ71により計測された時間に基づいて昇降部駆動モータを回転させる。
【0034】
昇降部3に積載されたシート束Tの最上面のシートSが給送ローラ15の摩擦部15aに当接すると、制御部70からの信号が電磁クラッチ12に入力され、電磁クラッチ12はギア13からの回転駆動力をギア14に伝達する(ステップS110)。回転駆動力がギア14に伝達されると、ギア14が矢印R8方向に回転し、給送ギア11、給送軸10、フラグ16及び給送ローラ15がそれぞれ矢印R1方向に回転する(ステップS111)。これにより、給送ローラ15の摩擦部15aが最上面のシートSとの摩擦力により、シート束Tの最上面のシートSを給送する。
【0035】
(給送動作終了時の動作)
次に、給送ギア11、給送軸10、フラグ16及び給送ローラ15がそれぞれ矢印R1方向に図3に示した角度θ2回転する時間をタイマが測定し、所定時間が経過すると、制御部70は、電磁クラッチ12の信号を遮断する。電磁クラッチ12の信号が遮断されると、電磁クラッチ12はギア13からギア14への回転駆動力の伝達を遮断する(ステップS112、S113)。これにより、図7(a)及び図7(b)に示すように、ギア14、給送ギア11、給送軸10、フラグ16及び給送ローラ15は、回転を停止し、初期位置にある状態が維持される(ステップS114)。
【0036】
同様に、制御部70からの昇降部駆動モータを逆回転させる駆動信号が入力され、昇降部駆動モータがギア9を矢印R7方向に回転する。昇降部駆動モータがギア9を矢印R7方向に回転すると、昇降部ギア8、昇降部カム軸7及び昇降部カム6が矢印R5の方向に回転を始める(ステップS115)。昇降部カム6が矢印R5方向に回転することにより、昇降部3は矢印R3方向に押し下げられる。昇降部カム6及び昇降部3が初期位置に戻る所定の時間をタイマ71が測定し、所定の時間が経過すると、制御部70は、昇降部駆動モータを停止させ、ギア9、昇降部ギア8、昇降部カム軸7及び昇降部カム6が初期位置で停止する。すなわち、図2に示す状態に戻り、シート給送制御が完了する(ステップS116,S117)。
【0037】
このようなシート給送制御を繰り返すことにより、給送トレイ2に積載されたシート束Tは、給送ローラ15の1回転毎に1枚ずつ分離されながら給送される。ここで、上述したシート給送制御の動作によって、直前の給送工程において連れ出された(重送された)シートS1の給送工程において、座屈が防止されることについて、図9(a)から図9(d)を参照しながら説明する。図9(a)は、シートS1が給送コロ18と分離パッド19に挟持された状態を示す図である。図9(b)は、摩擦部15aの先端がシートS1と当接位置P1で接触した状態を示す図である。図9(c)は、摩擦部15aがシートS1と当接位置P1と接触位置P2とで接触する状態を示す図である。図9(d)は、図9(c)の部分拡大図である。
【0038】
図9(a)に示すように、直前の給送工程において連れ出されたシートS1は、分離パッド19により最上面のシートSのみが給送されるため、先端部が分離パッド19と給送コロ18のニップに残ったままの状態となる。この状態において、制御部70からの駆動信号が不図示の給送モータに入力されて給送が開始されると、上述のステップS101からステップS106の動作が行われる。これにより、給送ローラ15は摩擦部15aの先端がシートS1の先端に当接する接触位置P2で停止する(図9(b)参照)。このときシートS1は、先端部が分離パッド19と給送コロ18のニップに挟持されたまま、摩擦部15aの先端が当接するまで給送されることなく接触位置P2で保持される。
【0039】
次に、上述のステップS107からステップS109の動作が行われると、昇降部3が上昇し、昇降部3に積載されているシート束Tに押されてシートS1が給送ローラ15に当接する(図9(c)参照)。このときの給送ローラ15とシートS1とが当接する位置を押付位置としての当接位置P1とする。そして、上述のステップS110及びステップS111の動作が行われると、給送ローラ15が矢印R1方向に回転を始める。このときのシートS1は、図9(d)に示すように、シート束Tの上昇により当接する当接位置P1と給送ローラ15の摩擦部15aの先端とシートS1の先端の接触位置である接触位置P2の2点で摩擦力を受ける。
【0040】
このように、シートS1は、当接位置P1で給送ローラ15の摩擦部15aから矢印F1方向の摩擦力を受けると共に、接触位置P2で給送ローラ15の摩擦部15aから矢印F3方向の摩擦力を受けることにより給送される。そのため、シートS1が分離パッド19から矢印F2方向の摩擦力を受けた場合においても、接触位置P2で矢印F3方向の摩擦力でシートS1を給送することで、シートS1の先端部の近傍で座屈が発生することを抑制することができる。その後、シートS1に対してステップS112からステップS117の動作が行われることにより、シート給送制御の動作が終了する。
【0041】
以上のような構成を有する第1実施形態に係る画像形成装置1によれば、以下のような効果を奏する。第1実施形態に係る画像形成装置1のシート給送部50は、給送ローラ15が分離パッド19に到達するまで昇降部3待機させ、給送ローラ15が分離パッド19に到達すると、昇降部3を上昇させてシートを給送ローラ15に当接させる。そのため、直前の給送工程におけるシートS1の連れ出し現象により分離パッド19上にシートS1が連れ出されても、シートS1を当接位置P1と接触位置P2の2点で接触した状態で給送することができる。これにより、例えば、剛性の低い(坪量の低い)薄紙等を使用した場合においても、シートの連れ出し現象に起因するシートの座屈の発生を抑制することができる。その結果、シートの給送不良等の発生を抑制した安定した給送が可能となり、より信頼性の高い画像形成装置を提供することができる。
【0042】
また、例えば、連れ出されたシートS1を戻す機構等を追加することなく、シートS1の座屈の発生を抑制可能となるため、小型かつ低コストで、給送安定性の高いシート給送装置を提供することができる。
【0043】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置1Aについて、図10から図15を参照しながら説明する。第2実施形態においては、給送軸10を等速回転させて複雑な制御を行うことなく給送ローラを一時停止させる。つまり、第2実施形態に係る画像形成装置1Aは、摩擦部15aが分離パッド19に到達したときの給送ローラ15の回転の停止制御を一時停止機構により行うことにおいて第1実施形態と相違する。そのため、第2実施形態においては、第1実施形態と相違する点、すなわち、給送ローラ15の一時停止機構を中心に説明し、第1実施形態に係る画像形成装置1と同様の構成のものについては、同じ符号を付してその説明を省略する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成のものについては、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0044】
まず、第2実施形態に係るシート給送部50Aの全体構成について、図10(a)及び図10(b)を参照しながら説明する。図10(a)は、第2実施形態に係るシート給送部50Aの摩擦部15aの先端が回転する状態を示す斜視図である。図10(b)は、図10(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大正面図である。図10(c)は、図10(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大側面図である。
【0045】
図10(a)から図10(c)に示すように、一時停止機構は、給送軸10に固着された第1回転体としての給送軸ホルダ31と、給送軸ホルダ31に揺動自在に支持された第2回転体としての給送ローラホルダ32と、付勢バネ33と、を備える。給送軸ホルダ31は、外周面から突出した第1突出部31aと、第2突出部31bと、を備える。給送ローラホルダ32は、第1突出部31aが露出される第1切欠き部32aと、第2突出部31bが露出される第2切欠き部32bと、を備える。第1切欠き部32aは、給送ローラホルダ32を矢印R1方向に回転させた際に第1突出部31aと突き当たる第1突当面32cと、給送ローラホルダ32を矢印R1方向と反対方向に回転させた際に第1突出部31aと突き当たる第2突当面32dとを備える。同様に、第2切欠き部32bは、付勢バネ33の一端を連結する連結面32eと、給送ローラホルダ32を矢印R1方向に回転させた時に第2突出部31bと突き当たる突当面32fと、を備える。なお、給送ローラ15は、給送ローラホルダ32に連結されている。
【0046】
付勢バネ33は、給送ローラホルダ32の第2切欠き部32bにおいて第2突出部31bと給送ローラホルダ32の間に介在された圧縮バネである。付勢バネ33は、給送ローラホルダ32を矢印R1方向に付勢して、給送ローラホルダ32を給送軸ホルダ31に連動して回転させる。ここで、図10(c)に示すように、第1切欠き部32aの第2突当面32dと第1突出部31aとがなす角度をφ1とし、第2切欠き部32bの突当面32fと第2突出部31bがなす角をφ2とすると、φ2はφ1よりも大きくなるように形成される。φ1及びφ2は、ともに給送ローラホルダ32の揺動範囲内での可変の値を示すが、初期状態においてはφ1=θ3とすることで、θ3≧φ1>0のとき、付勢バネ33の付勢力で給送ローラホルダ32を付勢する。また、φ1=0のとき給送軸ホルダ31が第2突当面32dと突き当たることで給送ローラホルダ32をより大きな力で付勢する。
【0047】
また、付勢バネ33が給送ローラホルダ32を付勢する付勢力は、給送ローラ15の摩擦部15aと分離パッド19の間に摩擦力が発生した時点で、給送ローラ15及び給送ローラホルダ32が回転できないように、付勢バネ33の付勢力が設定される。
【0048】
カム部材としての給送カム34は、給送軸10の両端に固着されており、昇降部3のカムフォロア3aに形成されたカム35と摺動し、給送バネ5の付勢力に抗して昇降部3を昇降させる昇降手段を構成する。なお、給送カム34は、1回転毎に昇降部3が矢印R2およびR3方向に1往復の揺動運動する構成とされている。
【0049】
次に、第2実施形態に係るシート給送部50Aにおけるシート給送制御について、図10(a)から図10(c)に加え、図11(a)から図14(c)を参照しながら説明する。図11(a)は、第2実施形態に係るシート給送部50Aの摩擦部15aの先端が接触位置まで回転した状態を示す斜視図である。図11(b)は、図11(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大正面図である。図11(c)は、図11(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大側面図である。図12(a)は、第2実施形態に係るシート給送部50Aの昇降部3が上昇して摩擦部15aとシート束Tが接触した状態を示す斜視図である。図12(b)は、図12(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大正面図である。図12(c)は、図12(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大側面図である。図13(a)は、第2実施形態に係るシート給送部50Aの付勢バネ33が縮んだ状態を示す斜視図である。図13(b)は、図13(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大正面図である。図13(c)は、図13(a)に示すシート給送部の部分拡大側面図である。図14(a)は、第2実施形態に係るシート給送部50Aの摩擦部15aがシートSを給送した状態を示す斜視図である。図14(b)は、図14(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大正面図である。図14(c)は、図14(a)に示すシート給送部50Aの部分拡大側面図である。
【0050】
図10(a)から図10(c)に示す位置が給送ローラ15(摩擦部15a)、給送軸ホルダ31、給送ローラホルダ32、昇降部3、給送カム34の初期位置となる。初期位置において、不図示の制御部からの駆動信号が不図示の駆動源としての給送モータに入力されると、給送モータが回転し、不図示の駆動列から給送軸10に固定支持される不図示のギアへ回転駆動力が伝達される。これにより、給送軸10に矢印R1方向の回転駆動力が伝達され、給送軸10に固定された給送軸ホルダ31と給送カム34が矢印R1方向に回転する。給送軸ホルダ31が矢印R1方向に回転すると、給送ローラホルダ32が付勢バネ33により矢印R1方向の付勢力を受け、給送軸ホルダ31の第1突出部31aと第1突当面32cが当接したまま矢印R1方向に回転する(図10(c)参照)。同様に、給送カム34が矢印R1方向に回転すると、昇降部3が給送バネ5より矢印R2方向の付勢力を受け、昇降部3が矢印R2方向に回転する。
【0051】
(給送ローラ15が回転を一時停止する動作)
図11(a)から図11(c)に示すように、給送ローラ15と給送ローラホルダ32が矢印R1方向に回転し、給送ローラ15の摩擦部15aの先端が接触位置P2に到達すると、摩擦部15aが分離パッド19から摩擦力を受けて給送ローラ15が停止する。ここで、給送ローラ15が停止するまでは、付勢バネ33に付勢されて第1突出部31aと突当面32cが当接したまま矢印R1方向に回転するため、給送軸ホルダ31と給送ローラホルダ32は、矢印R1方向に連動して回転する。一方、上述したように、付勢バネ33の付勢力は、給送ローラ15の摩擦部15aと分離パッド19の間に摩擦力が発生した時点で、給送ローラ15及び給送ローラホルダ32が回転できないように設定されている。そのため、φ2が小さくなり、付勢バネ33の付勢力が大きくなっても、給送ローラ15は、摩擦部15aと分離パッド19との間に生じる摩擦力により、付勢バネ33の付勢力に抗して、接触位置P2で停止したままの状態となる。つまり、給送軸ホルダ31と給送ローラホルダ32の連動が解除される。
【0052】
(昇降部3の動作と給送開始動作までの流れ)
図12(a)から図12(b)に示すように、給送ローラホルダ32及び給送ローラ15が分離パッド19との摩擦力により停止しても、給送軸10、給送軸ホルダ31及び給送カム34は、矢印R1方向に回転を続ける。そのため、給送カム34の回転により、給送カム34が昇降部3のカムフォロア3aに形成されたカム35と摺動して、昇降部3の上に積載されたシート束Tは上昇する。そして、シート束Tの最上面のシートSが給送ローラ15の摩擦部15aに当接すると、昇降部3は停止する。
【0053】
図13(a)から図13(c)に示すように、昇降部3が停止した後、給送軸ホルダ31が矢印R1方向に回転を続けると、φ1=0°となる。つまり、給送軸ホルダ31の第1突出部31aが第1突当面32dに当接する。これにより、給送ローラホルダ32と給送ローラ15が矢印R1方向に押され、回転を再開する。そして、給送ローラ15の摩擦部15aが昇降部3の最上面のシートSを押圧し、シートSの給送が再開される。このとき、付勢バネ33は、昇降部3が当接位置P1に到達したタイミングで復帰する。
【0054】
(給送動作終了時の動作)
図14(a)から図14(c)に示すように、給送軸10、給送軸ホルダ31、給送ローラホルダ32、給送ローラ15及び給送カム34が矢印R1方向に回転を続けると、給送カム34がカム35と当接し昇降部3を矢印R3方向に押し下げる。これにより、昇降部3は、図10(c)に示す初期位置に戻る。また、昇降部3が初期位置に戻った時点で、不図示のソレノイドが給送軸10に固定支持される不図示のギアと係合して給送軸10への回転駆動力の伝達を絶つ。これにより、給送軸10、給送軸ホルダ31及び給送カム34は、それぞれ初期位置で停止する。
【0055】
初期位置においては、給送ローラホルダ32は、付勢バネ33から矢印R1方向の付勢力を受けるため、給送ローラホルダ32の第1突当面32cが給送軸ホルダ31の第1突出部31aに突き当たる。これにより、給送ローラ15は、図10(a)から図10(c)に示す初期位置に戻り、シート給送部の動作が完了する。なお、付勢バネ33の付勢力によって給送ローラ15は初期位置へ戻る。そのため、給送軸10への回転駆動力の伝達が断たれたときの給送ローラ15は、分離パッド19の摩擦力の影響をうけないように摩擦部15aの後端が分離パッド19を抜けたシート給送方向の下流側に位置するように構成される。
【0056】
上記動作を繰り返すことで、給送トレイ2に積載されたシートSは、給送ローラ15の1回転毎に、1枚ずつ分離給送される構成となっている。
【0057】
ここで、図15(a)及び図15(b)を参照しながら、給送カム34のカム面の形成条件について説明する。図15(a)は、昇降部3に積載されたシートSの量が最大となった場合の給送ローラ15の近傍を示す断面図である。図15(b)は、昇降部3に積載されたシートSの量が最小となった場合の給送ローラ15の近傍を示す断面図である。
【0058】
図15(a)は、昇降部3のシート束Tの量が最大の量の場合に、摩擦部15aが接触位置P2に位置した状態を示している。この状態において、シート束Tの最上面のシートSが給送ローラ15の摩擦部15aに当接する前に、給送ローラ15の摩擦部15aの先端が分離パッド19に当接し、摩擦力により停止するように、給送カム34とカム35のカム面は形成される。これをカム面の形成条件1とする。
【0059】
また、図15(b)は、昇降部3にシートSが積載されない場合に、摩擦部15aが接触位置P2に位置した状態を示している。この状態において、昇降部3が接触位置P2で停止中の給送ローラ15に当接した後に給送ローラ15が回転を再開するように、前述のθ3の値と給送カム34とカム35のカム面は形成される。これをカム面の形成条件2とする。
【0060】
このように、カム面の形成条件1及び形成条件2で給送カム34とカム35のカム面を決定することでシートSの積載量に関わらず、摩擦部15aが接触位置P2で停止している間に、昇降部3のシートSを給送ローラ15に当接させることが可能になる。
【0061】
以上のような構成を有する第2実施形態に係る画像形成装置1Aによれば、以下のような効果を奏する。第2実施形態に係る画像形成装置1Aのシート給送部50Aは、摩擦部15aが分離パッド19に到達すると、給送ローラ15の回転を停止させ、昇降部3が上昇して当接位置P1に到達すると、給送ローラ15を再度回転させる一時停止機構を備える。そのため、直前の給送工程におけるシートS1の連れ出し現象により分離パッド19上にシートS1が連れ出されても、シートS1を当接位置P1と接触位置P2の2点で接触した状態で給送することができる。これにより、例えば、剛性の低い(坪量の低い)薄紙等を使用した場合においても、シートの連れ出し現象に起因するシートの座屈の発生を抑制することができる。その結果、シートの給送不良等の発生を抑制した安定した給送が可能となり、より信頼性の高い画像形成装置を提供することができる。
【0062】
また、第2実施形態に係る画像形成装置1Aのシート給送部50Aは、例えば、複雑な制御を要することなく、簡単な構成で薄紙においての座屈の発生を軽減可能となり、給送不良の発生を抑制することができる。また、例えば、連れ出されたシートS1を戻す機構等を追加することなく、薄紙においての座屈の発生を軽減可能となり、給送不良の発生を抑制することができる。これにより、小型かつ低コストで、給送安定性の高いシート給送装置を提供することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されない。
【0064】
例えば、第2実施形態においては、給送軸ホルダ31、給送ローラホルダ32及び付勢バネ33を用いて遊び機構を構成したが、本発明においてはこれに限定されない。例えば、遊び機構は、所定の領域に融通部が設けられる欠歯やカム等により実現させる構成であってもよい。
【0065】
また、例えば、本実施形態においては、検知手段として、フラグ16及び赤外線通光部17aを用いて説明したが本発明においてはこれに限定されない。検知手段は、給送ローラの回転が検知可能であればよい。
【0066】
また、本実施形態においては、昇降手段としてカム及びカムフォロアを用いて説明したが本発明においてはこれに限定されない。昇降手段は、昇降部3を昇降自在なものであればよい。
【符号の説明】
【0067】
1 画像形成装置
2 給送トレイ
3 昇降部
3a カムフォロア(昇降手段)
4 軸
5 給送バネ(昇降手段)
6 昇降部カム(昇降手段)
7 昇降部カム軸(昇降手段)
8 昇降部ギア(昇降手段)
9 ギア(昇降手段)
10 給送軸(回転駆動手段)
11 給送ギア(回転駆動手段)
12 電磁クラッチ(回転駆動手段)
13 ギア(回転駆動手段)
14 ギア(回転駆動手段)
15 給送ローラ
15a 摩擦部
15b 切欠部
16 フラグ(検知手段)
17a 赤外線通光部(検知手段)
19 分離パッド(摩擦分離部材)
40 シート収納部
50 シート給送部(シート給送装置)
60 画像形成部
70 制御部
P1 当接位置
P2 接触位置
S シート
T シート束
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを支持して昇降可能に設けられた昇降部と、
円弧状の摩擦部及び周方向の一部が切りかかれた切欠部を有し、前記摩擦部で前記昇降部に支持されるシートを給送する給送ローラと、
前記給送ローラを回転駆動する回転駆動手段と、
前記摩擦部により給送されるシートに前記摩擦部と反対側から圧接して重送されたシートを分離する摩擦分離部材と、
前記摩擦部が前記摩擦分離部材に到達するまで、前記昇降部に積載されたシートが前記摩擦部に接触しないように前記給送ローラの下位置で前記昇降部を待機させ、前記摩擦部が前記摩擦分離部材に到達すると、前記昇降部に積載されたシートが前記摩擦部に押し付けられて前記摩擦部がシートを給送する押付位置まで前記昇降部を上昇させる昇降手段と、
を備えたことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記回転駆動手段は、前記摩擦部が前記摩擦分離部材に到達すると前記給送ローラの回転を停止させ、前記昇降手段により前記昇降部が前記押付位置まで上昇すると、前記給送ローラを再度回転させてシートを給送させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記給送ローラの回転位置を検知する検知手段と、
前記摩擦部が前記摩擦分離部材に到達したことを前記検知手段が検知すると、前記回転駆動手段に前記給送ローラの回転を停止させると共に、前記昇降手段に前記昇降部を前記押付位置まで上昇させ、前記昇降部が前記押付位置に到達すると、前記回転駆動手段に前記給送ローラを再度回転させる制御部と、を備えた、
ことを特徴とする請求項2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記回転駆動手段により前記昇降手段を駆動すると共に、前記回転駆動手段と前記給送ローラとの間に遊び機構を介在して連結し、前記摩擦部が前記摩擦分離部材まで到達すると前記遊び機構により前記給送ローラの回転を一時停止させ、前記昇降部が上昇して前記押付位置に到達すると、前記給送ローラを再度回転させる一時停止機構と、を備えた、
ことを特徴とする請求項2に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記一時停止機構は、前記回転駆動手段からの回転駆動力により前記昇降手段と連動して回転する給送軸と、前記給送軸に固着された第1回転体と、前記給送ローラと連結されると共に前記給送軸に回転自在に支持された第2回転体と、前記第2回転体と前記第1回転体との間に介在して前記第2回転体を前記第1回転体に連動させると共に付勢力が前記摩擦部と前記摩擦分離部材との間に生じる摩擦力よりも小さい付勢バネと、を備え、
前記給送軸が回転して前記摩擦部が前記摩擦分離部材に到達すると、前記摩擦部と前記摩擦分離部材との間に生じる摩擦力により前記付勢バネが縮むことで前記第1回転体と前記第2回転体の連動が解除されて前記給送ローラが停止し、前記昇降部が上昇して前記押付位置に到達したときに前記付勢バネが縮みきると前記第2回転体が前記第1回転体と連動して前記給送ローラが再度回転する、
ことを特徴とする請求項4に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記昇降手段は、前記昇降部に連結されたカムフォロアと、前記給送ローラの前記摩擦部が前記摩擦分離部材で停止した後、前記昇降部が前記押付位置に移動し得るように、前記カムフォロアを昇降させるカム面が形成されたカム部材と、を備えた、
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のシート給送装置と、画像を形成する画像形成部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
シートを支持して昇降可能に設けられた昇降部と、
円弧状の摩擦部及び周方向の一部が切りかかれた切欠部を有し、前記摩擦部で前記昇降部に支持されるシートを給送する給送ローラと、
前記給送ローラを回転駆動する回転駆動手段と、
前記摩擦部により給送されるシートに前記摩擦部と反対側から圧接して重送されたシートを分離する摩擦分離部材と、
前記摩擦部が前記摩擦分離部材に到達するまで、前記昇降部に積載されたシートが前記摩擦部に接触しないように前記給送ローラの下位置で前記昇降部を待機させ、前記摩擦部が前記摩擦分離部材に到達すると、前記昇降部に積載されたシートが前記摩擦部に押し付けられて前記摩擦部がシートを給送する押付位置まで前記昇降部を上昇させる昇降手段と、
を備えたことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記回転駆動手段は、前記摩擦部が前記摩擦分離部材に到達すると前記給送ローラの回転を停止させ、前記昇降手段により前記昇降部が前記押付位置まで上昇すると、前記給送ローラを再度回転させてシートを給送させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記給送ローラの回転位置を検知する検知手段と、
前記摩擦部が前記摩擦分離部材に到達したことを前記検知手段が検知すると、前記回転駆動手段に前記給送ローラの回転を停止させると共に、前記昇降手段に前記昇降部を前記押付位置まで上昇させ、前記昇降部が前記押付位置に到達すると、前記回転駆動手段に前記給送ローラを再度回転させる制御部と、を備えた、
ことを特徴とする請求項2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記回転駆動手段により前記昇降手段を駆動すると共に、前記回転駆動手段と前記給送ローラとの間に遊び機構を介在して連結し、前記摩擦部が前記摩擦分離部材まで到達すると前記遊び機構により前記給送ローラの回転を一時停止させ、前記昇降部が上昇して前記押付位置に到達すると、前記給送ローラを再度回転させる一時停止機構と、を備えた、
ことを特徴とする請求項2に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記一時停止機構は、前記回転駆動手段からの回転駆動力により前記昇降手段と連動して回転する給送軸と、前記給送軸に固着された第1回転体と、前記給送ローラと連結されると共に前記給送軸に回転自在に支持された第2回転体と、前記第2回転体と前記第1回転体との間に介在して前記第2回転体を前記第1回転体に連動させると共に付勢力が前記摩擦部と前記摩擦分離部材との間に生じる摩擦力よりも小さい付勢バネと、を備え、
前記給送軸が回転して前記摩擦部が前記摩擦分離部材に到達すると、前記摩擦部と前記摩擦分離部材との間に生じる摩擦力により前記付勢バネが縮むことで前記第1回転体と前記第2回転体の連動が解除されて前記給送ローラが停止し、前記昇降部が上昇して前記押付位置に到達したときに前記付勢バネが縮みきると前記第2回転体が前記第1回転体と連動して前記給送ローラが再度回転する、
ことを特徴とする請求項4に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記昇降手段は、前記昇降部に連結されたカムフォロアと、前記給送ローラの前記摩擦部が前記摩擦分離部材で停止した後、前記昇降部が前記押付位置に移動し得るように、前記カムフォロアを昇降させるカム面が形成されたカム部材と、を備えた、
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のシート給送装置と、画像を形成する画像形成部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−201446(P2012−201446A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65999(P2011−65999)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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