説明

シート装置

【課題】背もたれの下端部と座部の後端部の干渉を回避しつつ、座部を前に起こし上げる際に座部の後端部が下に沈み込まないようにする。
【解決手段】車両用シート装置1が、フロアに連結されるとともに、フロアとの第一連結部を中心にして後ろに倒れた状態から前に倒れた状態に回転可能に設けられたアーム21と、アーム21が後ろに倒れた場合の第一連結部の位置よりも後方でアーム21に連結され、アーム21に対してアーム21との第二連結部を中心にして左右方向の軸回りに回転可能に設けられた座部2と、第二連結部よりも後方において座部2に取り付けられ、座部2に対して前後に揺動可能に設けられた留め具32と、フロア上に設けられ、アーム21が後ろに倒れた場合に留め具32を下から受け、留め具32に対して着脱可能とされた受け部33と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート装置に関し、特に、座部が前に起こし上げられるシート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車室の有効活用を図るべく、使用しない後列座席や中列座席を格納することによって、後列座席や中列座席が設置されていたスペースを荷室に利用することができるようにしたものがある。具体的には、座部を前に起こし上げた後、背もたれを前に倒すことで、座席を格納することができる(例えば、特許文献1参照)。一方、座席を使用する場合には、伏していた背もたれを後ろに起こし上げた後、座部を後ろに倒すことで、座席を組み立てることができる(特許文献1参照)。
【0003】
座席が組み立てられた状態では、座部の後端部が背もたれの下端部の下に潜り込んで、背もたれの下端部と座部の上面後端が接しているので、背もたれの下端部と座部の後端部の間の隙間が埋められている。しかし、座部を前に起こし上げる際に、座部の後端部と背もたれの下端部が互いに干渉してしまう。この問題点を解決すべく、特許文献1に記載の車両用シートでは、2つの捩りばね及びアームを用いている。
【0004】
具体的には、特許文献1に記載されているように、固定部材(21a)がフロア(F)に固定され、アーム(21c)の一端部が回転軸(21b)によって回転可能となって固定部材(21a)に連結され、アーム(21c)の他端部が回転軸(21d)によって回転可能となって座部(2)に連結されている。第一の捩りばね(22)はアーム(21c)と固定部材(21a)との連結部に設けられ、第一の捩りばね(22)の荷重はアーム(21c)が回転軸(21b)を中心にして後ろに倒れた状態から前に倒れた状態に回転する向きにアーム(21c)に作用している。一方、第二の捩りばね(21i)はアーム(21c)と座部(2)との連結部に設けられ、左から見て第二の捩りばね(21i)の荷重は回転軸(21d)を中心にして時計回りの向きに座部(2)に作用している。
【0005】
特許文献1に記載の車両用シートが組み立てられた状態では、アーム(21c)が後ろに倒れており、座部(2)の座面が上を向いて、座部(2)の後端部(2b)が背もたれの下端部(3d)の下に潜りこんでいる。一方、その状態から車両用シートを格納する場合には、座部(2)の後端部(2b)が第二の捩りばね(21i)によって下に回転することによって座部(2)の後端部(2b)が背もたれ(3)の下端部(3d)の下から前にずれる。そうすると、アーム(21c)が第一の捩りばね(22)によって後ろに倒れた状態から前に倒れた状態に回転すると、座部(2)の後端部(2b)が背もたれ(3)の下端部(3d)に干渉せずに、座部(2)が前に起こし上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−216704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の車両用シートでは、座部(2)を前に起こし上げる際に、座部(2)の後端部(2b)が下に沈み込むから、座部(2)の後端部(2b)の下方にスペースが必要となってしまう。そのため、車両用シートを車室に設置する際に際して、車室の大きさ、デザイン等に大きな制限となってしまう。
そこで、本発明の課題は、背もたれの下端部と座部の後端部の干渉を回避しつつ、座部を前に起こし上げる際に座部の後端部が下に沈み込まないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に係る発明によれば、
シート装置が、
フロアに連結されるとともに、前記フロアとの第一連結部を中心にして後ろに倒れた状態から前に倒れた状態に回転可能に設けられたアームと、
前記アームが後ろに倒れた場合の前記第一連結部の位置よりも後方で前記アームに連結され、前記アームに対して前記アームとの第二連結部を中心にして左右方向の軸回りに回転可能に設けられた座部と、
前記第二連結部よりも後方において前記座部に取り付けられた留め具と、
前記フロア上に設けられ、前記アームが後ろに倒れた場合に前記留め具を下から受け、前記留め具に対して着脱可能とされた受け部と、を備えることとした。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、
前記留め具と前記受け部のどちらか一方がマグネット、面ファスナのフック部又は凸スナップであり、他方が磁性体、面ファスナのループ部又は凹スナップであることとした。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、
前記座部に設けられ、前記アームが後ろに倒れた状態の場合に前記アームから離れたストッパを更に備え、
前記アームが後ろに倒れた状態から前に倒れた状態に回転すると、前記ストッパが前記アームに当接することとした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、アームが後ろに倒れた状態では、留め具が下から受け部に受けられた状態で留め具と受け部が留められているので、アームがその状態から前に倒れた状態に回転する場合には、座部の後端部が下に大きく沈み込むこともなく、座部の後部が振り上げられることもなく、座部の後部が前に移動する。
そのため、座部の後端部の下方にスペースがなくとも、座部の後端部が背もたれの下端の下から前に抜けることができる。よって、シート装置を車室等に設置する際に際して、車室の大きさ、デザイン等の自由度が向上する。
また、座部の後部が前に移動して、座部の後端部が背もたれの下端部の下から前に抜けるから、その後、座部が第一連結部を中心にして前に旋回しても、座部の後端部と背もたれの下端部が干渉しない。そのため、座部を容易に起こし上げることができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、留め具と被着体を留めることができるとともに、留め具と被着体を引き離すこともできる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、アームが後ろに倒れた状態から前に倒れた状態に回転すると、弾性ストッパがアームに当接し、アームと座部の相対的な回転角度が保たれる。そのため、その後、アームが前に倒れた状態から後ろ倒れた状態に回転すると、留め具が被着体に確実に受けられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態のシート装置を示した側面図である。
【図2】同実施形態のシート装置を示した斜視図である。
【図3】同実施形態のシート装置の一部を示した側面図である。
【図4】同実施形態のシート装置を示した側面図である。
【図5】同実施形態のシート装置を示した側面図である。
【図6】第2の実施形態のシート装置の一部を示した側面図である。
【図7】第4の実施形態のシート装置を一部破断した状態で示した側面図である。
【図8】同実施形態において留め具の取付部を示した断面図である。
【図9】同実施形態における変形例を一部破断した状態で示した側面図である。
【図10】図9に示された一部を拡大して示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0016】
<第1の実施の形態>
図1は、車両用シート装置1の側面図である。
この車両用シート装置1は、乗用車の後列座席や中列座席に用いられる。
車両用シート装置1は、座部2と、座部2の後ろ側に立てられた状態に設けられた背もたれた3と、背もたれ3の上端部に設けられたヘッドレスト4と、を備える。
【0017】
背もたれ3の下端部は、リクライニング機構を介して車室のフロアに連結されている。車両用シート装置1の使用時には、背もたれ3の傾きがリクライニング機構によって調整可能となっており、背もたれ3を後ろに倒したり、背もたれ3を前に起こしたり、背もたれ3の傾斜角を維持したりすることができる。また、車両用シート装置1の格納時には、背もたれ3がリクライニング機構によって前に倒伏され、背もたれ3を前に寝かした状態とすることができる。
【0018】
座部2は、フレームを発泡ウレタン製パッドで覆って、それを表皮で包み込んだものである。座部2の一方の側面の前端部と後端部の間の中間部には、弾性ストッパ10が取り付けられている。弾性ストッパ10は板ばねであり、弾性ストッパ10の前端部が座部2の側面に固定され、弾性ストッパ10がその固定した部分から後ろに延び出ており、その弾性ストッパ10が片持ち梁状に支持されている。弾性ストッパ10には、座面2a側に凹んだ係合凹部10aが形成されている。この係合凹部10aは、後述する係合凸部26が係合可能なように形成されている。
【0019】
座部2の側面であってその後端部には、ホルダ30が段ネジ31によって取り付けられている。ホルダ30は段ネジ31から下に垂下するように設けられている。ホルダ30は、段ネジ31を支点にして座部2に対して相対的に回動可能とされている。ホルダ30の下部に留め具32が取り付けられている。ホルダ30が段ネジ31を中心に回動可能に設けられているので、留め具32が前後に揺動可能に設けられている。この留め具32は、マグネットである。なお、座部2の側面に前後ガイドが設けられ、ホルダ30がその前後ガイドによって前後に案内されることによって、留め具32が前後に揺動可能に設けられてもよい。
【0020】
図2は、座部2等を示す斜視図である。図3は、座部2等を示す側面図である。図1〜図3に示すように、座部2の左右両側には、回転軸20を介してアーム21の一端部が連結され、これらアーム21が座部2に対して回転軸20回りに回転可能に設けられている。回転軸20は、アーム21と座部2を連結した第2の連結部である。
【0021】
ここで、回転軸20は、座部2の左側から右側にかけて左右方向に延びた状態となって、座部2に連結されている。回転軸20は、その軸心を中心にして座部2に対して回転可能に設けられている。回転軸20と座部2との連結位置は、座部2の前端部と後端部の間の中間部であって、座部2の下部である。また、回転軸20と座部2の連結位置は弾性ストッパ10の近傍であり、弾性ストッパ10が回転軸20よりも僅かに座面2a寄りに配置されている。回転軸20の左右両端部には、アーム21の一端部がそれぞれ固定されている。これらアーム21は、回転軸20に対して垂直に設けられている。なお、アーム21と回転軸20が固定されずに、回転軸20がアーム21に対してその軸心回りに回転可能に設けられていてもよい。
【0022】
アーム21の他端が回転軸22及びブラケット23を介して車室のフロアに連結され、これらアーム21がフロアに対して回転軸22回りに回転可能に設けられている。回転軸22は、アーム21とフロアを連結した第1の連結部である。
【0023】
ここで、回転軸22は、これらアーム21に対して垂直に設けられているとともに、一方のアーム21の他端部から他方のアーム21の他端部にかけて左右方向に延びた状態となってこれらアーム21に固定されている。また、回転軸22の左右両端部にはブラケット23が連結され、回転軸22がその軸心を中心にしてブラケット23に対して回転可能に設けられている。ブラケット23は、ボルト24によって車室のフロアに固定されている。なお、アーム21と回転軸22が固定されずに、回転軸22がアーム21に対してその軸心回りに回転可能に設けられていてもよい。
【0024】
アーム21の回転軸20側の端部には、係合凸部26が凸設されている。この係合凸部26は、弾性ストッパ10の係合凹部10aに係合可能となっている。
【0025】
アーム21とブラケット23との間の隙間には、トーションスプリング25が挿入され、そのトーションスプリング25が回転軸22に巻装されている。トーションスプリング25の一端がアーム21に引っ掛かり、トーションスプリング25の他端がブラケット23に引っ掛かっている。トーションスプリング25は、図1に示す方向に見てアーム21を反時計回り、つまり、アーム21を後ろ側から前側に振り上げる向きに付勢する。
【0026】
ブラケット23の後方には、台となる受け部33が設けられている。受け部33は、ボルト等によって車室のフロアに固定されている。受け部33は、鉄等の磁性体からなる。なお、留め具32が鉄等の磁性体からなり、受け部33がマグネットであってもよい。
なお、弾性ストッパ10、ホルダ30、留め具32及び受け部33は左右一対設けられている。
【0027】
図1に示すように、アーム21が回転軸22を支点にして後ろに振り下げられた状態では、そのアーム21が後ろに倒伏している。その状態では、回転軸20が回転軸22よりも後方に位置し、留め具32が回転軸20よりも後方に位置している。アーム21が後ろに倒伏した状態では、座部2が後ろに倒伏し、座部2がフロアの上に配置され、座部2の座面2aが上を向き、座部2の後端部が背もたれ3の下端の下に潜りこんでいる。その状態では、留め具32がその下から受け部33によって支えられた状態で、留め具32の磁力によって留め具32と受け部33が留められている。この状態がロック機構によって保たれている。例えば、ロック機構がアーム21、座部2、回転軸20又はホルダ30に引っ掛かることによって、図1、図3に示す状態が保たれている。
なお、留め具32が受け部33によって受けられることによって、座部2の後部が支えられているが、それに加えて、背もたれ3の下方に受け面が設けられ、その受け面が上を向いており、座部2が後ろに倒伏した状態では座部2の後端部下面がその受け面に載せられていてもよい。
【0028】
車両用シート装置1の動作について説明する。
車両用シート装置1を格納する際には、ロック機構のロックを解除する。ロック機構のロックが解除されると、トーションスプリング25の荷重がアーム21に作用しているから、アーム21が回転軸22を支点にして回転して振れ上がる。この際、留め具32がその下から受け部33に受けられ、留め具32が受け部33に支えられているから、座部2の後端部が下に沈み込まない。一方、留め具32が受け部33に吸着しているから、座部2の後端部が振り上げられず、座部2の前側が振り上げられ、座部2とアーム21は回転軸20を中心にして相対的に回転する。具体的には、図1の図示方向に見て座部2が回転軸20を中心にして時計回りに回転する。座部2の前側の振り上げに伴い、座部2の後端部が前に移動し、ホルダ30及び留め具32が座部2に対して相対的に後ろに揺動する。このように、座部2の後端部が振り上げられないので、座部2の後端部が背もたれ3の下端に当たることもなく、座部2の動きが背もたれ3によって干渉されることもない。
【0029】
引き続き、アーム21がトーションスプリング25の荷重によって回転軸22を支点にして振り上がると、係合凸部26が係合凹部10aに係合する(図3、図4)。係合凸部26が係合凹部10aに係合した時には、留め具32が受け部33に吸着している。
【0030】
引き続き、アーム21がトーションスプリング25の荷重によって回転軸22を支点にして前に倒れる。そうすると、留め具32が受け部33から離れる。そのため、アーム21が前に倒れると、座部2が回転軸22を中心にして前に旋回する(図5)。この際、係合凸部26が係合凹部10aに係合して、アーム21の端部が弾性ストッパ10に受けられているので、アーム21と座部2の相対的な回転が止められ、アーム21に対する座部2の角度が一定に保たれた状態で、座部2が前に旋回する。座部2が前に旋回されると、座部2がその前端部を下にして立てた状態になる。
【0031】
その後、背もたれ3をその下端部を支点にして前に倒伏させる。
以上によって、車両用シート装置1を格納することができる。
【0032】
車両用シート装置1を座席として使用する場合には、まず、背もたれ3をその下端部を支点にして後ろに起こし上げる(図5)。続いて、トーションスプリング25の荷重に抗して、座部2を後ろに旋回する。そうすると、アーム21が回転軸22を支点にして後ろに振り上げられる。この際、アーム21の端部が弾性ストッパ10に受けられているので、アーム21に対する座部2の角度が一定に保たれた状態で、座部2を後ろに旋回することができる。
【0033】
アーム21に対する座部2の角度が一定に保たれているので、座部2を後ろに旋回すると、留め具32が受け部33に確実に当たるとともに、座部2の後端部が受け面に当たる。留め具32が受け部33に当たって受け部33に吸着することによって、座部2の旋回が止められ、回転軸22を支点にしたアーム21の回転も止められる(図3、図4)。背もたれ3の下方に受け面が設けられている場合には、留め具32が受け部33に当接する際に、座部2の後端部が受け面に当たる。
【0034】
その後、座部2を下に押し付けると、座部2の前側が振り下げられ、座部2とアーム21は回転軸20を中心にして相対的に回転し、アーム21が回転軸22を支点にして後ろに振り下げられる。この際、座部2の後端部が背もたれ3の下端の下に潜りこんでいく。またこの際、留め具32が受け部33に吸着した状態で、留め具32及びホルダ30が座部2に対して相対的に前に揺動する。留め具32が受け部33に受けられているから、座部2の後端部が背もたれ3の下端の下に潜りこんでいく際には、座部2の後端部が下に沈み込まない。また、座部2の後端部が背もたれ3の下端の下に潜りこんでいく際には、係合凸部26が係合凹部10aから外れる。
【0035】
そして、座部2が図1に示す状態になると、ロック機構によってロックがなされる。
以上によって、車両用シート装置1を組み立てて、車両用シート装置1を座席として使用することができる。
【0036】
以上のように本実施形態によれば、車両用シート装置1を格納する際には、マグネットである留め具32と受け部33の引力によって、図1、図4に示すように座部2の前側が振り上げられつつ、座部2の後端部が前に移動するので、座部2の後端部から背もたれ2の下端部の下から前に抜ける。そのため、その後、座部2が前に旋回する際には、座部2の後端部と背もたれ2の下端部が干渉しない。従って、座部2を前に起こし上げる操作が容易になる。
【0037】
また、座部2の後端部が背もたれ2の下端部に干渉しないから、トーションスプリング25の荷重だけで、座部2を図1の状態から図5の状態に移動する。つまり、ロック機構のロック解除という操作をするだけで、座部2を図5に示すように起こし上げることができる。このように、トーションスプリング25以外のばねを用いずとも、座部2を容易に起こし上げることができるから、部品点数の削減を図ることができる。
【0038】
座部2の後端部が背もたれ3の下端の下から前に抜ける際に、座部2の後端部の大きな沈み込みが起きないから、座部2の後端部の下方にスペースがなくとも、座部2の後端部が背もたれ3の下端の下から前に抜けることができる。そのため、車両用シート装置1を車室等に設置する際に際して、車室の大きさ、デザイン等の自由度が向上する。
【0039】
<第2の実施の形態>
第2実施形態の車両用シート装置には、図6に示すように、ホルダ30の位置を保持するばね35,36が設けられている。第2実施形態の車両用シート装置は、ばね35,36が設けられていることを除いて、第1実施形態の車両用シート装置1と同様に設けられている。そのため、第2実施形態の車両用シート装置と第1実施形態の車両用シート装置1との間で互いに対応する部分に同一の符号を付し、第2実施形態の車両用シート装置については、第1実施形態の車両用シート装置1と同様に設けられている部分の説明を省略する。
【0040】
図6に示すように、ばね35の一端がホルダ30に連結され、ばね35の他端がホルダ30の後方で座部2の側面に連結されている。ばね36の一端がホルダ30に連結され、ばね36の他端がホルダ30の前方で座部2の側面に連結されている。こうすることで、座部2に対するホルダ30の位置がばね35,36によって止められている。この場合でも、アーム21が後ろに倒れた状態から起き上がる際には、ホルダ30がばね35,36に抗して座部2に対して相対的に後ろに揺動し、座部2の前側が振り下げられる際には、ホルダ30がばね35,36に抗して座部2に対して相対的に前に揺動する。
【0041】
<第3の実施の形態>
第1、第2実施形態では、留め具32と受け部33にマグネット・磁性体を用いたが、第3の実施の形態では、面ファスナ又はスナップを用いる。第3実施形態の車両用シート装置は、面ファスナ又はスナップを用いることを除いて、第1又は第2の実施形態の車両用シート装置と同様に設けられている。
【0042】
面ファスナを用いる場合には、面ファスナのフック部を留め具としてホルダ30の下端に貼着してあり、面ファスナのループ部を受け部としてフロアの上に貼着してある。逆に、面ファスナのループ部を留め具としてホルダ30の下端に貼着してあり、面ファスナのフック部を受け部としてフロアの上に貼着してあってもよい。スナップを用いる場合には、凹フック部を留め具32としてホルダ30の下端に設けてあり、凸スナップを受け部としてフロアの上に設けてある。逆に、凸スナップを留め具としてホルダ30の下端に設けてあり、凹スナップを受け部としてフロアの上に設けてあってもよい。
なお、留め具32と受け部33は、互いを近づけると留め合って、互いを引き離そうとしてもある程度の力では離れず、所定の力以上で離れるものであれば、マグネット・磁性体、面ファスナ、スナップに限るものではない。
【0043】
<第4の実施の形態>
第1〜第2実施形態では、留め具32が座部2の側面に取り付けられ、その留め具32が前後に揺動可能に設けられていた。それに対し、第4実施形態では、図7、図8(a)に示すように、マグネットである留め具32が座部2の後部下面に固定されている。具体的には、座部2の後部下面が座部2のフレーム2bによって構成され、留め具32がフレーム2bの内側でビス32aによってフレーム2bに固定され、フレーム2bに形成された穴2cにおいて留め具32が露出している。一方、磁性体である受け部33はフロアの上に設けられている。受け部33が水平面33a及び傾斜面33bを有し、傾斜面33bが水平面33aの後端に連なっているとともに、その傾斜面33bが後ろに向かうにつれて登るように傾斜している。留め具32の磁力が弱められており、留め具32が水平面33aや傾斜面33bに吸着していても留め具32が水平面33aや傾斜面33bに沿ってスライドするようになっている。
第4実施形態の車両用シート装置は、留め具32が固定されていること、受け部33の形状を除いて、第1又は第2の実施形態の車両用シート装置と同様に設けられている。
【0044】
アーム21が後ろに倒伏した状態では、留め具32が受け部33の傾斜面33bに吸着している。アーム21がトーションスプリング25の荷重によって前に振れ上がると、留め具32が傾斜面33bに吸着した状態で傾斜面33bに沿って摺動する。その後、留め具32が水平面33aに移り、水平面33aに吸着した状態で水平面33aに沿って前に摺動する。そのため、座部2の後端部が下に沈み込んだり振り上げられたりせず、座部2の後端部が前に移動し、座部2の前側が振り上げられる。引き続き、アーム21が回転して前に倒れると、留め具32が受け部33の水平面33aから離れ、座部2が前に旋回されて、座部2がその前端部を下にして立てた状態になる。
【0045】
一方、アーム21を前に倒れた状態から後ろに回転させると、座部2が後ろに旋回され、留め具32が受け部33の水平面33aに当接する。その後、座部2を下に押し付けると、座部2の前側が振り下げられ、アーム21が後ろに倒れていき、留め具32が受け部33の水平面33aに吸着した水平面33aに沿って後ろに摺動する。そのため、座部2の後端部が背もたれ3の下端の下に潜りこんでいく。その後、留め具32が受け部33の傾斜面33bに移って、留め具32が傾斜面33bに吸着し、元の状態に戻る。
【0046】
図8(a)に示すように留め具32を座部2のフレーム2bに固定するのではなく、図8(b)に示すように留め具32を可動式にしてもよい。具体的には、留め具32がピン32cによって案内されることによって、留め具32が穴2cから進出したり穴2cに引き込んだりするようになっている。そして、座部2が前に立った状態では、ばね32よって留め具32が引き込んでいるが、座部2が後ろに倒れた状態では、留め具32の磁力によって留め具32が穴2cから進出して、留め具32が水平面33aや水平面33bに磁着する。
【0047】
留め具32を座部2のフレーム2bの内側に設けるのではなく、図9、図10に示すように、座部2の後部下面に凹部2dを設け、その凹部2dに留め具32を収容するようにして座部2のフレーム2bに取り付けてもよい。ここで、留め具32の厚みを凹部2dの深さよりも薄くしてもよい。そうしても、留め具32が受け部33の水平面33aや傾斜面33bに直接接触しないが、留め具32の磁力によって留め具32が水平面33aや傾斜面33bに引きつけられる。そのため、アーム21が前に回転する際には、座部2の後端部が背もたれ3の下から前に抜け出るまで、座部2の後端部が振り上げられない。
このように、マグネットである留め具32が水平面33aや傾斜面33bに直接接触しないので、留め具32の磁力持続性・耐久性が向上する。
【0048】
<変形例>
本発明を適用可能な実施形態は、上述した各実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記各実施形態では本発明に係るシート装置を自動車の座席に適用した場合について説明したが、その他の乗物(例えば、航空機、船舶、鉄道の車両等)の座席に適用してもよい。
【0049】
また、上記各実施形態では、図1に示す向きに見て、回転軸22を支点にしてアーム21を反時計回りに回転させるのに、トーションスプリング25の荷重を利用したが、モータ等の駆動部を用いてアーム21を反時計回りに回転させてもよい。同様に、手動ではなく、モータ等の駆動部を用いてアーム21を時計回りに回転させてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 車両用シート装置
2 座部
2a 座面
10 弾性ストッパ
10a 係合凹部
20 回転軸
21 アーム
22 回転軸
25 トーションスプリング
26 係合凸部
32 留め具
33 受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアに連結されるとともに、前記フロアとの第一連結部を中心にして後ろに倒れた状態から前に倒れた状態に回転可能に設けられたアームと、
前記アームが後ろに倒れた場合の前記第一連結部の位置よりも後方で前記アームに連結され、前記アームに対して前記アームとの第二連結部を中心にして左右方向の軸回りに回転可能に設けられた座部と、
前記第二連結部よりも後方において前記座部に取り付けられた留め具と、
前記フロア上に設けられ、前記アームが後ろに倒れた場合に前記留め具を下から受け、前記留め具に対して着脱可能とされた受け部と、を備えることを特徴とするシート装置。
【請求項2】
前記留め具と前記受け部のどちらか一方がマグネット、面ファスナのフック部又は凸スナップであり、他方が磁性体、面ファスナのループ部又は凹スナップであることを特徴とする請求項1に記載のシート装置。
【請求項3】
前記座部に設けられ、前記アームが後ろに倒れた状態の場合に前記アームから離れたストッパを更に備え、
前記アームが後ろに倒れた状態から前に倒れた状態に回転すると、前記ストッパが前記アームに当接することを特徴とする請求項1又は2に記載のシート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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