説明

シーラント組成物

ケイ素に結合した反応性ヒドロキシル基又は加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサン(A)と、湿分の存在下で(A)の反応性基と反応性の加水分解性基を含有する架橋剤(B)であって、(B)の加水分解性基が湿分の存在下で酸を放出する、架橋剤(B)と、(A)の反応性基と(B)の加水分解性基との反応のための金属含有触媒と、充填剤とを含む湿分硬化性シーラント組成物であって、該充填剤が、焼成カオリンを含み、如何なる他の強化充填剤もメタノールも含まないこと、及び、硬化すると該湿分硬化性シーラント組成物が、250%を超える破断伸びを有し、非垂れ落ち性であるという事実を特徴とする、湿分硬化性シーラント組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素に結合した反応性ヒドロキシル基又は加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサン(A)と、(A)の反応性基と反応性の加水分解性基を含有する架橋剤(B)であって、架橋剤(B)の加水分解性基が湿分の存在下で酸を放出する、架橋剤(B)とを含む湿分硬化性シーラント組成物に関する。かかるシリコーンシーラント組成物はまた、(A)の反応性基と(B)の加水分解性基との反応のための金属含有触媒と、充填剤とを含有する。
【背景技術】
【0002】
上記のシーラントは包括的に、接合部、例えば施工継目を封止するのに使用されるため、色々な幾何学形状等の様々な施工継目を封止することができることが要求されており、好ましいシーラントは、可能な限り多くの状況下で接合部を封止することができるものである。好ましいシーラントは、所定位置における硬化に続くシールを維持するために幾つかの物理特性を必要とする。例えば、施工継目及びそれゆえ施工継目を封止するシーラントは一般的に運動(例えば、接合部を形成する基材の熱膨張又は収縮によりもたらされる)を受けるものである。この繰り返される運動に対処するために、シーラントは、或る程度の弾性を有している必要がある。シーラントの弾性は、一般的に測定される幾つかの物理特性、例えば、破断伸び(最大伸張)、100%伸張時におけるモジュラス及び引張強度から求めることができる。無充填シリコーンエラストマーは、500%を超える極めて大きな破断伸びを示し得るが、それらのモジュラス、引張強度、硬度及び引裂抵抗は、硬化シーラントが封止構成用途において上手く機能するには小さすぎる。施工継目を封止するのに機能的なものとなるようにかかるシーラントの全体的な弾性特徴を改善するためには、強化充填剤を該製剤に添加することが必要である。それゆえ多くの場合、シーラント組成物のための充填剤の選択は多くの要件の折衷案となっている。
【0003】
多くのシリコーンシーラントに好ましい充填剤は、硬化シーラントにおいて許容可能なレオロジー及び良好な機械特性を達成する強化充填剤として作用するヒュームドシリカである。しかしながら、シリカは比較的高価な充填剤である。このコストの観点から、当該産業では、適切な弾性特徴をシーラントに与える十分な強化性を有する代替的な充填剤が捜し求められている。多くのシリコーンシーラントは、より低コストの充填剤として、シリカの代わりに炭酸カルシウムと配合させることができるが、炭酸カルシウムが放出された酸と反応するため、酸を放出する硬化系には適しない。現在のところ、商業上実現可能なより低コストの充填剤(即ち、シリカの低コスト代替物)は、この種のシーラントに関して特定されていない。
【0004】
特許文献1は、架橋剤としてアセトキシシラン及び触媒としてジブチルスズジアセテートを伴うシリコーンと、有機官能性シランで表面処理されたシリケート充填剤とから調製されるシーラントを記載している。充填剤は、例えば、カオリナイト、ウォラストナイト、タルク又はバライトであり得る。充填剤の表面処理は、不可欠な特徴として認識されており、重大な費用の増加をもたらすおそれがあるため、シリカの安価な代替物のような充填剤の適性を否定するものである。
【0005】
特許文献2は、オキシム架橋剤、スズ触媒及び板状タルク強化剤と化合される架橋性ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンを記載している。板状タルク。特許文献2中の比較例ではカオリンが充填剤として使用されているが、タルクと比べ、カオリン充填組成物中における充填剤の分散が不満足なものであることから、カオリン充填組成物は不適切であったと教示されている。
【0006】
特許文献3は、シリル化樹脂をベースとする湿分硬化性シーラント組成物を記載しており、考え得る充填剤としてカオリナイトについて言及している。同様に、特許文献4は、ジオルガノポリシロキサン及び有機ナノクレイをベースとする湿分硬化性組成物を記載しており、考え得る充填剤としてカオリナイトについて言及している。
【0007】
特許文献5は、ケイ素に結合したヒドロキシル基、メチルトリアセトキシシラン硬化剤、及びメタノールを組み込むRTV硬化性オルガノポリシロキサン組成物を記載している。RTV硬化性オルガノポリシロキサン組成物はまた充填剤を含有し、挙げられる充填剤の1つは焼成クレイである。縮合触媒も好ましい。約30℃の融点を有するメチルトリアセトキシシランの使用を促進するためにメタノールが使用され、メタノールを使用しなければ(単独で使用する場合には)使用前に加熱することを要し、温度に応じて再度凝固する可能性がある。
【0008】
流動性シーラントは、高速道路の接合部等の水平用途に使用されることが多いが、多くの建設用途ではシーラントが未硬化状態で十分な垂れ落ち防止を有することが要される。これは、未硬化シーラント組成物を上部の裂け目及び壁の裂け目(典型的に、鉛直接合部と称される)に/又はその内部に塗布し、塗布された位置又は作用後の位置に、硬化してシリコーンエラストマー性シールを形成するまで、裂け目から流出することなく残留することを可能にするためである。それゆえ、垂れ落ち防止とは、未硬化状態の組成物が押出可能且つ流動性であるが、重力しか受けない場合には、塗布された未硬化シーラント組成物がエラストマー体へと硬化する前に流れることなく塗布された位置に留まることを意味すると意図される。このため、垂れ落ち防止は、建設業界において特に鉛直接合部を封止するために用いられるシリコーンシーラントにとって重要な特性であると理解することができる。
【0009】
一般的にシーラントの「垂れ落ち」は、大量の充填剤(強化又は非強化)の添加によって低減させることが可能であるが、当然のことながら、上記に述べたように、それでもシーラントは、例えば施工継目上に塗布するために、未硬化状態で押出可能である必要がある。さらに、シリコーンシーラント製剤における非垂れ落ち性をもたらすのに必要とされる充填剤量は、芳しくない機械特性、特に低い伸張をもたらすおそれがある。
【0010】
特許文献6は、ケイ素に結合した反応性ヒドロキシル基又は加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサン(A)と、加水分解性基を含有する架橋剤(B)と、充填剤(C)とを含む1成分型RTVオルガノポリシロキサン組成物を調製する方法を記載している。様々な充填剤が挙げられ、そのうちの1つは焼成クレイであるが、実施例では充填剤としてシリカ又は炭酸カルシウムを使用している。垂れ落ち防止剤が無いにもかかわらず、組成物は良好な垂れ落ち防止及び改善されたスランプ性を示すことが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許出願公開第3439745号明細書
【特許文献2】米国特許第4929664号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第20070179242号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007−173596号明細書
【特許文献5】米国特許第6342575号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0933398号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
驚くべきことに、焼成カオリンが良好な機械特性と併せて望ましい非垂れ落ち性をもたらし得ることが見出された。
【0013】
本発明者らは本発明により、たとえ架橋剤の加水分解性基が湿分の存在下で酸を放出しても、強化充填剤として焼成カオリンを使用することによって、ケイ素に結合した反応性ヒドロキシル基又は加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサンと、湿分の存在下でオルガノポリシロキサンの反応性基と反応性の加水分解性基を含有する架橋剤と、金属含有触媒とを含む湿分硬化性シーラント組成物において、硬化時の良好な機械特性、例えば、高引張強度、高ショアA硬度及び高引裂抵抗、並びに特に高破断伸びと併せて望ましい非垂れ落ち性がもたらされ得ることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、ケイ素に結合した反応性ヒドロキシル基又は加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサン(A)と、湿分の存在下で(A)の反応性基と反応性の加水分解性基を含有する架橋剤(B)であって、(B)の加水分解性基が湿分の存在下で酸を放出する、架橋剤(B)と、(A)の反応性基と(B)の加水分解性基との反応のための金属含有触媒と、充填剤とを含む湿分硬化性シーラント組成物であって、該充填剤が、焼成カオリンを含み、如何なる他の強化充填剤もメタノールも含まないこと、及び、硬化すると該湿分硬化性シーラント組成物が、250%を超える破断伸びを有し、非垂れ落ち性であるという事実を特徴とする、湿分硬化性シーラント組成物が提供される。
【0015】
本発明の目的で、非垂れ落ち性(non-sagging)シーラント組成物とは、ASTM D2202により測定した場合に15分後に5mm未満の値のフローを有するものである。強化充填剤は、典型的にコストを低減させるために組成物中に導入される非強化充填剤と比べ、物理特性を改善するために添加される充填剤である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
オルガノポリシロキサン(A)は、概して、少なくとも2つのヒドロキシル基又は加水分解性基、好ましくは末端ヒドロキシル基又は末端加水分解性基を含有する。ポリマーは、例えば、一般式
1−A’−X2 (1)
(式中、X1及びX2は独立して、ヒドロキシル置換基又は加水分解性置換基を含有するケイ素含有基から選択され、A’はポリマー鎖を表す)を有し得る。ヒドロキシル置換基及び/又は加水分解性置換基を組み込んだX1基又はX2基の例としては、下記:
−Si(OH)3、−(Ra)Si(OH)2、−(Ra2SiOH、−RaSi(ORb2、−Si(ORb3、−Ra2SiORb又は−Ra2Si−Rc−SiRdp(ORb3-p(式中、Raはそれぞれ独立して、一価のヒドロカルビル基、例えば特に1個〜8個の炭素原子を有するアルキル基を表し(且つ、好ましくはメチルであり)、Rb基及びRd基はそれぞれ独立してアルキル基又はアルコキシ基であり、該アルキル基は適宜6個までの炭素原子を有し、Rcは、6個までのケイ素原子を有する1つ又は複数のシロキサンスペーサが介在し得る二価の炭化水素基であり、pは0、1又は2の値を有する)のように終端する基が挙げられる。
【0017】
ヒドロキシ末端オルガノポリシロキサン、特にポリジオルガノシロキサンはシーラントにおいて広範に使用され、本発明における使用に好適である。オルガノポリシロキサン(A)は好ましくは、式(2)
−(R5sSiO(4-s)/2)− (2)
(式中、R5はそれぞれ独立して、1個〜18個の炭素原子を有する炭化水素基、1個〜18個の炭素原子を有する置換炭化水素基、又は18個までの炭素原子を有するヒドロカルボノキシ基等の有機基であり、sは平均して1〜3、好ましくは1.8〜2.2の値を有する)のシロキサン単位を含む。置換炭化水素基において、炭化水素基中の1つ又は複数の水素原子は、別の置換基で置き換えられている。かかる置換基の例としては、塩素、フッ素、臭素及びヨウ素等のハロゲン原子;クロロメチル、ペルフルオロブチル、トリフルオロエチル及びノナフルオロヘキシル等のハロゲン原子含有基;酸素原子;(メタ)アクリル及びカルボキシル等の酸素原子含有基;窒素原子;アミノ官能基、アミド官能基及びシアノ官能基等の窒素原子含有基;硫黄原子;並びに、メルカプト基等の硫黄原子含有基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
好ましくは、R5はそれぞれ、塩素又はフッ素等の1つ又は複数のハロゲン基で任意に置換された、1個〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、sは0、1又は2である。R5基の特定の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ビニル、シクロヘキシル、フェニル、トリル基、3,3,3−トリフルオロプロピル等の塩素又はフッ素で置換されたプロピル基、クロロフェニル、β−(ペルフルオロブチル)エチル又はクロロシクロヘキシル基が挙げられる。好適には、R5基の少なくとも幾つか及び好ましくは実質的に全てがメチルである。
【0019】
ポリマー(A)は、特にポリジオルガノシロキサンである場合、25℃で20000000mPa・sまでの粘度を有することが可能であり、式(2)の200000単位まで、又はさらにそれ以上を含有し得る。式(2)の単位を含むポリジオルガノシロキサンは、ホモポリマーであっても、又はブロック形態であり得るか若しくはランダムに連続し得るコポリマーであってもよい。異なるポリジオルガノシロキサンの混合物も好適である。ポリジオルガノシロキサンコポリマーの場合、ポリマー鎖は、上記の図(2)に示される単位の鎖から作られるブロックの組合せを含むことができ、ここで2つのR5基は:
両方ともアルキル基(好ましくは両方ともメチル若しくはエチル)、又は
アルキル基及びフェニル基、又は
アルキル及びフルオロプロピル、又は
アルキル及びビニル、又は
アルキル基及び水素基である。
典型的に、少なくとも1つのブロックはシロキサン単位を含み、ここでR5基は両方ともアルキル基である。
【0020】
架橋剤(B)は好ましくは、ポリマー(A)のケイ素結合したヒドロキシル基又は加水分解性基と反応性であり且つ湿分の存在下で酸を放出する少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの基を含有する。架橋剤(B)の反応性基はそれら自体が、好ましくはケイ素結合した加水分解性基である。架橋剤中の加水分解性基は例えば、アセトキシ、オクタノイルオキシ、プロピオノキシ又はベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基であり得る。架橋剤は例えば、1つ又は複数のシラン及び/又は1つ又は複数の短鎖オルガノポリシロキサン、例えば、2個〜約100個のシロキサン単位を有するポリジオルガノシロキサンであり得る。このようなオルガノポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、分枝状又は環状であってもよい。架橋剤(B)は代替的に、湿分の存在下で酸を放出する、ケイ素結合した加水分解性基で置換された有機ポリマーであってもよい。
【0021】
架橋剤(B)が、1分子当たり3つのケイ素結合した加水分解性基を有するシランである場合、第4の基は好適には非加水分解性のケイ素結合した有機基である。これらのケイ素結合した有機基は好適には、フッ素及び塩素等のハロゲンで任意に置換されたヒドロカルビル基である。かかる第4の基の例としては、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル及びブチル)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル及びシクロヘキシル)、アルケニル基(例えば、ビニル及びアリル)、アリール基(例えば、フェニル及びトリル)、アラルキル基(例えば、2−フェニルエチル)、並びに前述の有機基中の水素の全て又は一部をハロゲンに置き換えることによって得られる基が挙げられる。好ましくは、第4のケイ素結合した有機基はメチル又はエチルである。
【0022】
架橋剤(B)の例としては、アシルオキシシラン、特にアセトキシシラン、例えば、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ジブトキシジアセトキシシラン及び/又はジメチルテトラアセトキシジシロキサン;並びにまたフェニル−トリプロピオノキシシランが挙げられる。さらなる例は、トリアセトキシシリル基若しくはメチルジアセトキシシリル基等のアシルオキシ基を含有する短鎖オルガノポリシロキサン、又はポリエーテル、例えば、トリアセトキシシリル基若しくはメチルジアセトキシシリル基を先端に付したポリプロピレンオキシド等のアシルオキシ官能性有機ポリマーである。好ましくは、メチルトリアセトキシシランは、主な架橋剤として使用される場合に、凝固を避けるために、エチルトリアセトキシシラン、プロピルトリアセトキシシラン及び/又はビニルトリアセトキシシラン等の1つ又は複数の他のトリアセトキシシランと適切な割合で混合される。代替的には、メチルトリアセトキシシランの二量体及び/又は三量体をメチルトリアセトキシシランと共に使用してもよい。さらなる代替物として、メチルトリアセトキシシランの凝固を防止するために、メトキシシランを少ない割合で導入してもよい。
【0023】
組成物中に存在する架橋剤(B)の量は、架橋剤の特定の性質、特にその分子量に依存すると考えられる。組成物は好適に、ポリマー(A)と比較して少なくとも化学量論量の架橋剤(B)を含有する。ポリマー(A)100重量部に基づき、組成物は、例えば、1重量部〜30重量部、概して2重量部〜20重量部の架橋剤(B)を含有し得る。例えば、アセトキシシランは典型的に、ポリマー(A)100重量部に当たり3重量部〜10重量部の量で存在し得る。
【0024】
金属含有触媒は、ポリシロキサン(A)の反応性基と架橋剤(B)の加水分解性基との反応のための縮合触媒として作用し、組成物が硬化する速度を増大させる。特定のシリコーンシーラント組成物中に含有されるように選ばれる触媒は、求められる硬化速度に応じて決まる。好適な触媒としては、スズ、鉛、アンチモン、鉄、カドミウム、バリウム、マンガン、亜鉛、クロム、コバルト、ニッケル、アルミニウム、ガリウム、チタン、ゲルマニウム又はジルコニウムの化合物が挙げられる。例としては、酒石酸トリエチルスズ、オクタン酸スズ(tin octoate:オクチル酸スズ)、オレイン酸スズ、ナフトエ酸スズ、ブチルスズトリ−2−エチルヘキソエート、酪酸スズ、カルボメトキシフェニルスズトリスベレート、イソブチルスズトリセロエート等の有機スズ金属触媒;及び、ジオルガノスズ塩、とりわけ、ジブチルスズジラウレート、ジメチルスズジブチレート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジアセテート、ジメチルスズビスネオデカノエート、ジブチルスズジベンゾエート、オクタン酸第一スズ、ジメチルスズジネオデコノエート、ジブチルスズジオクトエート等のジオルガノスズジカルボキシレート化合物が挙げられ、そのうち、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテートが特に好ましい。他の例としては、鉄、コバルト、マンガン、鉛及び亜鉛の2−エチルヘキソエートが挙げられる。
【0025】
使用される金属含有触媒の量は典型的に、全組成物の0.005重量%〜3重量%の範囲である。好ましくは、触媒は組成物の0.01重量%〜1重量%の量で存在する。
【0026】
焼成カオリンは、加熱して結晶水を除去したカオリンである。焼成カオリンは、カオリンを700℃超、典型的には1000℃に加熱することによって形成される。かかる加熱は一般的に、不活性な表面を有する極めて白い高表面積の鉱物を生産する。か焼は代替的に、シーラント又はコーティングバインダが出入りすることができない閉じた孔を充填剤中に導く「フラッシュか焼(flash calcination)」と呼ばれるプロセスによって実行することができる。本発明で使用される焼成カオリンは、これらのプロセスのいずれによっても形成することができる。本発明者らは、非焼成カオリン及びメタカオリン(600℃までの加熱処理により部分的に焼成されるカオリン)は、アセトキシシラン架橋剤と共に使用された場合、保存安定性を有するシーラント組成物を形成しないことを見出した。好ましい市販の焼成カオリンの例としては、例えばImerysにより商標Polestar及びOpaliciteとして、Australian China Claysにより商標Microbrite C80/95として、及びBurgessにより商標Ice whiteとして販売されている製品が挙げられる。他の焼成カオリン製造業者としては、Huber Minerals、Inner Mongolia Mengxi、Inner Mongolia Huasheng及びShanxi Jinyang Calcined kaolin Co. Ltdが挙げられる。焼成カオリンは、有機化合物、例えば、脂肪酸、若しくはステアレート等の脂肪酸エステル、又は国際公開第2006/041929号に記載されている塩基性有機化合物、又はオルガノシラン、オルガノシロキサン若しくはオルガノシラザンで表面処理し、カオリンを疎水性にすることができるが、このような処理は本発明に必要ない(即ち、本発明では処理せずに使用することができ、且つ好ましい)。焼成カオリンは一般的に、少なくとも0.1μm且つ30μm未満、好ましくは5μm未満、例えば0.5μm又は1μmから5μmまでの重量基準メジアン粒径を有する。
【0027】
本発明によれば、シーラント組成物が焼成カオリン以外の如何なる強化充填剤も含まない(例えば、シリカを含まない)ことが必要である。焼成カオリンは好ましくは、シーラント組成物のポリマー(A)100重量部当たり3重量部〜400重量部、より好ましくはポリマー(A)100重量部当たり10重量部〜300重量部の範囲で存在する。本発明による幾つかの好ましいシーラント組成物では、焼成カオリンが、組成物中の唯一の充填剤であるか、又は例えば組成物中の充填剤の75重量%〜100重量%を構成する主な充填剤である。代替的に、焼成カオリンは、組成物中の充填剤の10重量%〜75重量%を形成することができる。カオリンが唯一の充填剤でない場合、組成物は、湿分硬化性シーラント組成物において既知のものから選択される第2の充填剤を含有し得るが、但し、第2の充填剤は、架橋剤の加水分解によって放出された酸と反応せず、未硬化シーラント組成物の物理特性(例えば垂れ落ち)又はその後硬化した生成物の物理特性(例えば破断伸び)に悪影響を及ぼしてそれらを本発明の範囲外にしないものとする。最も好ましくは、焼成カオリンは、組成物中の唯一の充填剤であるか、又は例えば組成物中の充填剤の75重量%〜100重量%を構成する主な充填剤である。
【0028】
第2の充填剤は、破砕石英、珪藻土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタン、カーボンブラック、タルク、クリストバライト(crystobalite)、マイカ、長石又はウォラストナイト等の非強化充填剤を含んでいてもよい。任意に上記のものに加えて焼成カオリンと共に使用され得る他の充填剤としては、アルミナイト、硫酸カルシウム(無水石膏)、石膏、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム(ブルーサイト)、黒鉛、酸化アルミニウム、又は、カンラン石族、ザクロ石族、アルミノシリケート、環状シリケート、鎖状シリケート及びシート状シリケートから成る群からのシリケート、又は、プラスチック若しくはガラスの微小球、好ましくは中空微小球が挙げられる。このような非強化性の第2の充填剤は例えば、組成物中のポリマー(A)100重量部当たり5重量部〜300重量部の量で存在し得るが、但し、該第2の充填剤の導入は、未硬化シーラント組成物の物理特性(例えば垂れ落ち)又はその後硬化した生成物の物理特性(例えば破断伸び)に悪影響を及ぼしてそれらを上記に述べた本発明の範囲外にしないことを条件とする。好ましくは、焼成カオリンが、組成物中の充填剤の75重量%以上を構成する、組成物中の主な充填剤である場合、第2の充填剤は、組成物のポリマー(A)100重量部に基づき0.5重量部〜100重量部の範囲で存在する。
【0029】
本発明のシーラント組成物は、ケイ素結合したヒドロキシル基又は加水分解性基をベースとした湿分硬化性組成物、例えばシーラント組成物における使用で知られている他の成分を含み得る。組成物は、ポリマー(A)又は架橋剤(B)と反応性でないシリコーン又は有機流体を含んでいてもよい。かかるシリコーン又は有機流体は、組成物中で可塑剤又は増量剤(加工助剤と称されることもある)として作用する。シリコーン又は有機流体は、ポリマー(A)100重量部当たり200重量部まで、好ましくはポリマー(A)100重量部当たり5重量部から150重量部までを形成し得る。
【0030】
可塑剤として有用な非反応性シリコーン流体の例としては、末端トリオルガノシロキシ基を有するポリジメチルシロキサン等のポリジオルガノシロキサンが挙げられ、ここで、有機置換基は、例えば、メチル、ビニル若しくはフェニル、又はこれらの基の組合せである。かかるポリジメチルシロキサンは、例えば、25℃で約5mPa・s〜約100000mPa・sの粘度を有し得る。
【0031】
シリコーン流体可塑剤に加えて又はその代わりに使用され得る相溶性の有機可塑剤の例としては、ジアルキルフタレート(ここでアルキル基は、直鎖状及び/又は分枝状であってもよく、ジオクチル、ジヘキシル、ジノニル、ジデシル、ジアラニル(diallanyl)及び他のフタレート等の6個〜20個の炭素原子を含有する)、並びに類似のアジピン酸エステル、アゼライン酸エステル、オレイン酸エステル及びセバシン酸エステル、エチレングリコール及びその誘導体等のポリオール、リン酸トリクレシル及び/又はリン酸トリフェニル等の有機リン酸エステルが挙げられる。
【0032】
本発明によるシーラント組成物に使用される増量剤の例としては、鉱油ベース(典型的に石油ベース)のパラフィン系炭化水素、パラフィン系炭化水素及びナフテン系炭化水素の混合物、環状パラフィン及び非環状パラフィンを含むパラフィン油、並びに、ナフテン系化合物(naphthenics)、多環式ナフテン系化合物及びパラフィンを含有する炭化水素流体、又は重質アルキレート(精油所における油の蒸留後に残るアルキル化芳香族材料)等のポリアルキルベンゼンが挙げられる。かかる増量剤の例は、英国特許出願公開第2424898号明細書(その内容は参照により本明細書に援用される)に論じられている。かかる炭化水素増量剤は例えば、235℃〜400℃のASTM D−86沸点を有し得る。好ましい有機増量剤の例は、Totalにより商標G250Hとして販売されている炭化水素流体である。増量剤又は可塑剤は、1つ又は複数の非鉱物ベースの天然油、即ち、動物、種子若しくは堅果に由来し石油に由来しない油、又は、エステル交換植物油、ボイル天然油、吹込天然油、若しくはスタンド油(熱重合油)等のそれらの誘導体を含んでいてもよい。
【0033】
シーラント組成物中に含まれ得る他の成分としては、レオロジー調節剤、接着促進剤、顔料、熱安定剤、難燃剤、UV安定剤、鎖延長剤、硬化調節剤、電気伝導性充填剤及び/又は熱伝導性充填剤、並びに殺真菌剤及び/又は殺生物剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
レオロジー調節剤としては、ポリエーテル又はポリエステルのポリオールをベースとした欧州特許出願公開第0802233号明細書に記載されているもの等のシリコーン有機コポリマー;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エトキシル化ヒマシ油、オレイン酸エトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー、並びにシリコーンポリエーテルコポリマーから成る群から選択される非イオン性界面活性剤;並びに、シリコーングリコールが挙げられる。系によっては、これらのレオロジー調節剤、特にエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー、並びにシリコーンポリエーテルコポリマーは、基材、特にプラスチック基材へのシーラントの接着性を高めることができる。
【0035】
本発明による湿分硬化性組成物中に組み込まれ得る接着促進剤の例としては、アミノアルキルアルコキシシラン、例えば3−アミノプロピルトリエトキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びメルカプト−アルキルアルコキシシラン等のアルコキシシラン、並びにエチレンジアミンとシリルアクリレートとの反応生成物が挙げられる。1,3,5−トリス(トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレート等のケイ素基を含有するイソシアヌレートを付加的に使用してもよい。さらに好適な接着促進剤は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシアルキルアルコキシシランと、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ置換アルコキシシラン、及び任意でメチルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシランとの反応生成物である。
【0036】
熱安定剤としては、酸化鉄及びカーボンブラック、カルボン酸鉄塩、セリウム水和物、ジルコン酸バリウム、オクタン酸セリウム及びオクタン酸ジルコニウム、並びにポルフィリンが挙げられ得る。難燃剤としては、水和水酸化アルミニウム、及びウォラストナイト等のシリケートが挙げられ得る。
【0037】
鎖延長剤としては、架橋が起こることによって硬化エラストマーの伸び弾性率が下がる前にポリシロキサンポリマー鎖長を延長させる二官能性シランが挙げられ得る。鎖延長剤及び架橋剤は、それらと官能性ポリマー末端との反応において競合し、顕著な鎖延長を達成するためには、二官能性シランが、同時に使用される三官能性架橋剤よりも実質的に高い反応性を有していなければならない。好適な鎖延長剤としては、ジアルキルジアセトアミドシラン又はアルケニルアルキルジアセトアミドシラン、特にメチルビニルジ(N−メチルアセトアミド)シラン又はジメチルジ(N−メチルアセトアミド)シラン等のジアミドシラン;ジアルキルジアセトキシシラン又はアルキルアルケニルジアセトキシシラン等のジアセトキシシラン;ジアルキルジアミノシラン又はアルキルアルケニルジアミノシラン等のジアミノシラン;ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン及びα−アミノアルキルジアルコキシアルキルシラン等のジアルコキシシラン;2〜25の重合度を有し且つ1分子当たり少なくとも2つのアセトアミド又はアセトキシ又はアミノ又はアルコキシ又はアミド又はケトキシモ置換基を有するポリジアルキルシロキサン;並びに、ジアルキルジケトキシミノシラン及びアルキルアルケニルジケトキシミノシラン等のジケトキシミノシランが挙げられる。
【0038】
電気伝導性充填剤としては、カーボンブラック;銀粒子等の金属粒子;表面がスズ及び/又はアンチモンで処理された酸化チタン粉末、表面がスズ及び/又はアンチモンで処理されたチタン酸カリウム粉末、表面がアンチモンで処理された酸化スズ、並びに表面がアルミニウムで処理された酸化亜鉛等の任意の好適な電気伝導性金属酸化物充填剤が挙げられ得る。熱伝導性充填剤としては、粉末、フレーク及びコロイド状の銀、銅、ニッケル、白金、金、アルミニウム及びチタン等の金属粒子;金属酸化物、特に酸化アルミニウム(Al23)及び酸化ベリリウム(BeO)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムが挙げられ得る。
【0039】
殺真菌剤及び殺生物剤としては、N−置換ベンゾイミダゾールカルバメート、ベンゾイミダゾリルカルバメート、例えばメチル2−ベンゾイミダゾリルカルバメート、エチル2−ベンゾイミダゾリルカルバメート、イソプロピル2−ベンゾイミダゾリルカルバメート、メチルN−{2−[1−(N,N−ジメチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル]}カルバメート、メチルN−{2−[1−(N,N−ジメチルカルバモイル)−6−メチルベンゾイミダゾリル]}カルバメート、メチルN−{2−[1−(N,N−ジメチルカルバモイル)−5−メチルベンゾイミダゾリル]}カルバメート、メチルN−{2−[1−(N−メチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル]}カルバメート、メチルN−{2−[1−(N−メチルカルバモイル)−6−メチルベンゾイミダゾリル]}カルバメート、メチルN−{2−[1−(N−メチルカルバモイル)−5−メチルベンゾイミダゾリル]}カルバメート、エチルN−{2−[1−(N,N−ジメチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル]}カルバメート、エチルN−{2−[2−(N−メチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル]}カルバメート、エチルN−{2−[1−(N,N−ジメチルカルバモイル)−6−メチルベンゾイミダゾリル]}カルバメート、エチルN−{2−[1−(N−メチルカルバモイル)−6−メチルベンゾイミダゾリル]}カルバメート、イソプロピルN−{2−[1−(N,N−ジメチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル]}カルバメート、イソプロピルN−{2−[1−(N−メチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル]}カルバメート、メチルN−{2−[1−(N−プロピルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル]}カルバメート、メチルN−{2−[1−(N−ブチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル]}カルバメート、メトキシエチルN−{2−[1−(N−プロピルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル]}カルバメート、メトキシエチルN−{2−[1−(N−ブチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル]}カルバメート、エトキシエチルN−{2−[1−(N−プロピルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル]}カルバメート、エトキシエチルN−{2−[1−(N−ブチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル]}カルバメート、メチルN−{1−(N,N−ジメチルカルバモイルオキシ)ベンゾイミダゾリル]}カルバメート、メチルN−{2−[N−メチルカルバモイルオキシ)ベンゾイミダゾリル]}カルバメート、メチルN−{2−[1−(N−ブチルカルバモイルオキシ)ベンゾイミダゾリル]}カルバメート、エトキシエチルN−{2−[1−(N−プロピルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル]}カルバメート、エトキシエチルN−{2−[1−(N−ブチルカルバモイルオキシ)ベンゾイミダゾリル]}カルバメート、メチルN−{2−[1−(N,N−ジメチルカルバモイル)−6−クロロベンゾイミダゾリル]}カルバメート、及びメチルN−{2−[1−(N,N−ジメチルカルバモイル)−6−ニトロベンゾイミダゾリル]}カルバメートが挙げられる。10,10’−オキシビスフェノキサルシン(商品名:Vinyzene、OBPA)、ジ−ヨードメチル−パラ−トリルスルホン、ベンゾチオフェン−2−シクロヘキシルカルボキシアミド−S,S−ジオキシド、N−(フルオロ(fluor)ジクロリドメチルチオ)フタルイミド(商品名:Fluor−Folper、Preventol A3)。メチル−ベンゾイミダゾール(imideazol)−2−イルカルバメート(商品名:Carbendazim、Preventol BCM)、亜鉛−ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)(亜鉛ピリチオン)2−(4−チアゾリル)−ベンゾイミダゾール、N−フェニル−ヨードプロパルギル(iodpropargyl)カルバメート、N−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロリド−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、N−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、及び/又はトリアゾリル−化合物、例えばテブコナゾール(銀含有ゼオライトとの組合せ)。殺真菌剤及び/又は殺生物剤は、好適には、組成物の0重量%〜0.3重量%の量で存在し得る。
【0040】
シーラント組成物は、任意の好適な混合装置を使用し成分を混合することによって調製することができる。例えば、好ましい一液型(one-part)湿分硬化性組成物は、非反応性シリコーン、即ち有機流体増量剤若しくは可塑剤の存在下でポリマー(A)を調製するか、又はポリマー(A)と増量剤又は可塑剤とをプレミックスすると共に、得られる増量ポリシロキサンと、焼成カオリンの全て又は一部とを混合し、且つこれを架橋剤と触媒とのプレミックス(pre-mix)と混合することによって生成することができる。UV安定剤及び顔料等の他の添加剤は所望の任意の段階で混合物に添加してもよい。最終混合工程は、実質的に無水条件下で実行され、得られる硬化性組成物は概して、使用が必要とされるまで、実質的に無水条件下、例えば密閉容器内で貯蔵される。
【0041】
本発明によるこのような一液型湿分硬化性シーラント組成物は、貯蔵中は安定であるが、大気中の湿分に曝されると硬化する。該一液型湿分硬化性シーラント組成物は、接合部、空隙、並びに相対運動を受ける物品及び構造体中の他の空間を封止するのに特に好適である。それらはそれゆえ、ガラスシーラント(glazing sealants)として、またシーラントの外観が重要である建造物を封止するのに特に好適である。他の好適な使用は、例えば、家庭電化製品(例えば冷蔵庫、オーブン等)、家具、衛生器具、自動車及び列車における接合部を封止することである。
【0042】
本発明のシーラント組成物は代替的に、ポリマー(A)及び架橋剤(B)が別々に収容される二液(two-part)型組成物であってもよい。このような組成物では、カオリン及び触媒はポリマー(A)と一緒に収容されることが好ましい。このような二液型組成物におけるパッケージは両方とも、大気中の湿分に曝されると硬化するように無水であってもよく、又は、パッケージを混合すると組成物の初期硬化が加速するように、パッケージの一方のみに制限量の湿分を含有させてもよい。このような2液系は使用の直前に混合される。典型的に、それらは1:10〜10:1の比率(ポリマーA混合物対架橋剤混合物)で混合される。
【0043】
本発明による組成物は、ASTM D2202により測定した場合に15分後に5mm未満の値のフローを有するように、硬化以前には非垂れ落ち性である。好ましくは、本発明による組成物は、ASTM D2202により測定した場合に3mm未満の値のフローを有する。
【0044】
硬化後の本発明による組成物は、ASTM D412−98に準拠して2mmシートについて少なくとも250%の破断伸び値を有する。破断伸びは、ASTM D412−98に準拠して2mmシートについて350%を超えることが好ましい。
【0045】
好ましくは、硬化すると、本発明による組成物の得られる生成物はさらに、ダイBを用いてASTM D624によって測定した場合に6kN/mより大きい引裂強度を有する。
【0046】
本発明を以下の実施例によって例示する。実施例中、部及びパーセンテージは重量に基づくものである。出発原料の全ての粘度は、供給業者によって提供される事前測定値として示し、実験中に取得した粘度の測定値は、5rpmの速度においてコーンプレートスピンドルを備えるBrookfield(登録商標)HB DV−II+PROを用いて測定した。全ての粘度測定値は、特に指定のない限り25℃で取得した。
【実施例】
【0047】
実施例1〜実施例7及び比較例C1〜比較例C11において、使用したポリマーは、80000mPasの粘度を有するジヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンとした。架橋剤は、およそ等量のメチルトリアセトキシシラン及びエチルトリアセトキシシランの混合物とした。有機増量剤は、Totalにより商標G250Hとして販売されている鉱油製品とした。シリコーン油は、100mPasの粘度のトリメチルシリル末端ポリジメチルシロキサンとした。触媒はジブチルスズジアセテートとした。
【0048】
実施例1〜実施例3及び比較例C1a
実施例1〜実施例3及び比較例C1aの湿分硬化性シーラント組成物は、列挙した成分を5l容のNeulingerミキサー内で混合し且つ混合組成物をカートリッジ内に充填することによって調製した。組成物は、周囲温度におけるカートリッジ内での7日間の貯蔵後に試験し、50℃におけるカートリッジ内での28日間の加速エージング後に示した。
【0049】
貫入をASTM D127−97に準拠して測定し、値を3秒の測定についてmm/10単位で示す。プラスチックノズル及び1000mm/分の速度で引っ張るテンションメータを用いてサンプルの表面から引くことができる糸の最大長を測定することにより、シーラントの糸曳き(stringing)を求める。押出は、内径5mm及び長さ90mmを有する較正金属ノズルを用い、またカートリッジに0.8bar(0.8×105Pa)の圧力をかけて測定されるg/分単位の押出速度である。秒単位の表皮形成時間SOTは指先試験により測定した。シーラント表面に静かに触れた後でシーラントが指先にシーラント跡を全く残さないために必要な時間は、SOTとして分単位で記録した。mm単位のフロー(即ち垂れ落ち)は、ASTM D2202に準拠して15分後にフロージグを用いて測定した。
【0050】
ASTM D412−98aに準拠し2mmの試験シートを用いて引張試験を実施した。「引張」は、MPa単位の引張強度(破壊応力)を意味する。「100%モジュラス」は、100%の伸張における公称応力(又は見かけの応力(MPa))である。伸張(破断時)はASTM D412−98に準拠して2mmのシートについて%単位で示す。硬度は、ASTM D2240−02bに準拠して測定されるショアA硬度とした。
【0051】
kN/m単位の引裂強度は、ダイBを用いてASTM D624によって測定した。
【0052】
実施例1〜実施例3及び比較例C1aの組成物の配合を表1に示す。焼成カオリンAはメジアン粒径1.5μm(Malvern)、表面積BET 16g/m2及び吸油量80ml/100g(ISO 787)を有する。表1中でタルクAとして指定のタルクは、IMIにより商品名HTP3として販売されたものである。これらの組成物を試験した結果も表1に示す。表1はまた、比較例1としてアセトキシ架橋剤を用いて一般に市販されているシリカ充填シーラントを試験した結果を示す。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例1〜実施例3は、焼成カオリンで充填される、アセトキシで架橋されたシーラントが驚くほど良好な機械特性を有し、引裂強度及び硬度が典型的なシリカ充填シーラントよりもさらに優れていることを示す。それらはまた、非垂れ落ち性であることを示すフロー測定結果、及び350%を超える破断伸びを有する。
【0055】
焼成カオリンで充填されるシーラントはまた、加速エージング試験において良好な保存安定性を有する。比較例C1aは、焼成カオリンをタルク等の充填剤と1:1ベースで混合することにより、許容可能なフロー(垂れ落ち)結果を提供する組成物をもたらすこと、即ち、組成物は硬化以前に非垂れ落ち性であるが、これほど大きな割合のタルクの導入は許容不可能な破断伸びを招き組成物を本発明の範囲外のものとすることを示す。比較例C1bはシリカ充填剤を使用しており、着目すべきは、結果がシリカ充填組成物よりも良好でない場合には、カオリンで充填された実施例も比較例を示すことである。
【0056】
比較例C2及び比較例C3
表2中にカオリンAとして指定される、Huber Mineralsにより商標90として販売されているカオリンを使用して、シーラント組成物を調製した。これは、低含水量を有するとされる非焼成カオリンである。製剤は、Hausschildデンタルミキサーを用いて調製し、カートリッジ内に充填した。組成物の配合を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
比較例C2及び比較例C3のシーラントは、カートリッジ内で24時間以内に完全に硬化したため、試験手順に付すことができなかった。これらの比較例は、非焼成カオリンは、たとえ低含水量のものであっても、アセトキシで架橋された保存安定性のシーラントを提供しないことを示す。
【0059】
比較例C4及び比較例C5
低含水量を有するとされる、Imerysにより商標Metastar(登録商標)として販売されているメタカオリンを用いて、5l容のNeulingerミキサー内でシーラント組成物を調製した。組成物の配合及び得られる試験結果を表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
比較例C4及び比較例C5は、加速エージング試験においてメタカオリンで充填されるシーラントが保存安定性でなかったことを示す。
【0062】
比較例C6及び比較例C7
タルク又はウォラストナイトを充填剤として使用して、5l容のNeulingerミキサー内でシーラント組成物を調製した。表4中でタルクAとして指定のタルクは、IMIにより商品名HTP3として販売されたものである。ウォラストナイトはNyadにより商品名N400として供給されたものである。組成物の配合及び得られる試験結果を表4に示す。
【0063】
【表4】

【0064】
比較例C6及び比較例C7は、タルク及びウォラストナイトがアセトキシで架橋された保存安定性のシーラントの配合を可能にするが、生成されるシーラントの機械特性がとりわけタルクについて芳しくないことを示す。また着目すべきは、ウォラストナイト充填組成物に関するフロー値がエージング後に著しく増大したことである。それゆえ、いずれの示される配合も、好適な商業上実現可能なシーラント組成物を提供しない。
【0065】
実施例4〜実施例6
実施例4〜実施例6の組成物は、列挙される成分をHausschild実験室用ミキサー(デンタルミキサー)内で混合し且つ混合組成物をカートリッジ内に充填することによって調製した。組成物は周囲温度におけるカートリッジ内での24時間の貯蔵後に試験した。
【0066】
実施例4及び実施例5では、アセトキシで架橋されたシーラント中の充填剤として、異なる度合いの焼成カオリンを使用した。焼成カオリンAはこれまでに記載したものである。焼成カオリンBは、3.2μmのメジアン粒径(Malvern)、表面積8g/m2、2.63の比重及び54ml/100gの吸油量(ISO 787)を有する。焼成カオリンCは、1.2μm〜2.1μmのメジアン粒径(Malvern)、8.5g/m2の表面積及び2.6の比重を有する。実施例6では、実施例1で使用したよりも低度(low level)で焼成カオリンAを使用した。これらの実施例の配合及び結果を表5に示す。
【0067】
【表5】

【0068】
実施例4〜実施例6は、異なる度合い(grade)の焼成カオリンで充填される、アセトキシで架橋されたシーラントが類似の良好な機械特性を示すことを示す。
【0069】
比較例C8〜比較例C11
比較例C8〜比較例C11では、焼成カオリンの代替物として、アセトキシ充填シーラントにおいて様々な充填剤を使用した。タルクBはIMIにより商品名HTP4として販売されたものである。クリストバライトは、Sibelcoにより商品名M3000として販売されたものである。これらの比較例の配合を表6に示す。
【0070】
比較例C8〜比較例C11の組成物は、実施例5〜実施例7に関するものと厳密に同じ方法で調製及び試験した。結果を表6に示す。
【0071】
【表6】

【0072】
比較例C8〜比較例C11は、シーラント中の非強化充填剤として知られる他の材料が、未硬化シーラントの芳しくない機械特性及び/又は過剰なフロー(垂れ落ち)を有する、アセトキシで架橋されたシーラントを形成することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素に結合した反応性ヒドロキシル基又は加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサン(A)と、湿分の存在下で(A)の前記反応性基と反応性の加水分解性基を含有する架橋剤(B)であって、(B)の該加水分解性基が湿分の存在下で酸を放出する、架橋剤(B)と、(A)の前記反応性基と(B)の前記加水分解性基との反応のための金属含有触媒と、充填剤とを含む湿分硬化性シーラント組成物であって、該充填剤が、焼成カオリンを含み、如何なる他の強化充填剤もメタノールも含まないこと、及び、硬化すると該湿分硬化性シーラント組成物が、250%を超える破断伸びを有し、非垂れ落ち性であるという事実を特徴とする、湿分硬化性シーラント組成物。
【請求項2】
前記焼成カオリンが0.1μm〜30μmの重量基準メジアン粒径を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記焼成カオリンが1μm〜5μmの重量基準メジアン粒径を有することを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記焼成カオリンが、ポリマー(A)100重量部当たり3重量部〜400重量部の範囲で存在することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記焼成カオリンが、ポリマー(A)100重量部当たり10重量部〜300重量部の範囲で存在することを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記焼成カオリンが前記組成物中の充填剤の75重量%〜100重量%を形成することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
非強化性の第2の充填剤が、前記組成物のポリマー(A)100重量部に基づき、0.5重量部〜100重量部の範囲で存在することを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記第2の充填剤が、カオリン以外のシリケート充填剤であることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記第2の充填剤が、ウォラストナイト、タルク、石英及びクリストバライトから選択されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記オルガノポリシロキサンが、ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサンであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記架橋剤が1つ又は複数のアセトキシシランであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリマー(A)又は前記架橋剤(B)と反応性でないシリコーン又は有機流体をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
硬化すると、得られる生成物が6kN/mより大きい引裂強度を有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
ケイ素に結合した反応性ヒドロキシル基又は加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサン(A)と、湿分の存在下で(A)の前記反応性基と反応性の加水分解性基を含有する架橋剤(B)であって、(B)の該加水分解性基が湿分の存在下で酸を放出する、架橋剤(B)と、金属含有触媒とを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の湿分硬化性シーラント組成物中における、充填剤としての焼成カオリンの使用。
【請求項15】
建設用途における、又は家庭電化製品、家具、衛生器具、自動車及び/若しくは列車における接合部を封止する際の、請求項1〜13のいずれか一項に記載のシーラントの使用。
【請求項16】
使用前に、前記ポリマー(A)と前記架橋剤(B)とが別々に収容される二液型で収容されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。

【公表番号】特表2011−507996(P2011−507996A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538450(P2010−538450)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010756
【国際公開番号】WO2009/080267
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】