説明

シーリング・ポンプアップ装置

【課題】流路内におけるシーリング剤の残留量を減らすことができるシーリング・ポンプアップ装置を得る。
【解決手段】バルブアダプタ76の内周面には、シーリング剤の流路方向(流れ方向)に沿って、微細溝86が設けられている。このため、微細溝86のエッジ部で、加圧空気による圧力が部分的に高くなり、この圧力に押されてシーリング剤32は微細溝86を沿って易くなる。従って、シーリング剤を空気入りタイヤに供給した後の流路内におけるシーリング剤の残留量を減らすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンクした空気入りタイヤをシールするためのシーリング剤を空気入りタイヤ内へ注入した後、空気入りタイヤ内に加圧空気を供給して空気入りタイヤの内圧を昇圧させるシーリング・ポンプアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤがパンクした際に、タイヤ及びホイールを交換することなく、タイヤをシーリング剤により補修して規定圧までタイヤ内圧をポンプアップするシーリング・ポンプアップ装置がある。
【0003】
この装置によると、シーリング剤を注入ホース等を介してタイヤに注入することでシーリング剤が注入ホース等の内部に残留する。シーリング剤が残留した状態で加圧空気を注入ホースを介してタイヤへ注入すると、空気の流動によって残留したシーリング剤が刺激を受けて固着する。
【0004】
注入ホース等の内部にシーリング剤が固着した状態で、再度シーリング剤又は加圧空気を注入ホース等を介してタイヤに注入しようとすると、固着したシーリング剤によって注入ホースやシステム全般に必要以上の圧力負荷が発生し、タイヤへのシーリング剤又は加圧空気の注入が不安定になることが考えられる。
【0005】
そこで、シーリング剤の主成分に天然ゴムラテックスを採用し、さらに、天然ゴムラテックスの安定剤として、界面活性剤のうちの炭素数9〜18の脂肪酸塩等を用いることを基本として、シーリング性能を低下させることなく、ホース内で残留したシーリング剤の凝固を防止できるシーリング剤が提案されている。(特許文献1)
【0006】
【特許文献1】特開2000−272022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、装置の流路内により多くのシーリング剤が残留した場合、この状態で加圧空気を注入ホースを介してタイヤへ注入すると、残留したシーリング剤が泡状に吐出し、さらに、霧状に吐出することが考えられる。
【0008】
シーリング剤が霧状に吐出されると最も刺激され、最も固化し易くなり、残留したシーリング剤が装置の流路内で固着して排出することができなることが考えられる。つまり、シーリング剤が流路内に残留することが大きな問題である。
【0009】
本発明は、上記事実を考慮し、流路内におけるシーリング剤の残留量を減らすことができるシーリング・ポンプアップ装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係るシーリング・ポンプアップ装置は、加圧空気を供給する空気供給手段と、前記空気供給手段と連結され、前記空気供給手段からの加圧空気が供給される加圧給液室を備えた注入ユニットと、前記注入ユニットと連結されると共に、シーリング剤を収納し、前記シーリング剤を前記加圧給液室に吐出する吐出口が形成された液剤容器と、一端が前記注入ユニットに取り付けられて前記加圧給液室と連通し、他端が空気入りタイヤのタイヤバルブと連通可能とされたホース部材と、前記ホース部材の先端部に設けられ、前記タイヤバルブと接続可能に設けられたバルブアダプタと、を備えたシーリング・ポンプアップ装置において、前記シーリング剤の流路の少なくとも一部に流路方向の微細溝が設けられたことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、先ず、パンクしたタイヤのバルブにホース部材の他端に設けられたバルブアダプタを接続する。そして、空気供給手段を作動させ、加圧空気を注入ユニットの加圧給液室に供給する。
加圧給液室に供給された加圧空気は、液剤容器の吐出口から吐出したシーリング剤を加圧し、ホース部材に送り込むで、バルブアダプタを通して、空気入りタイヤ内にシーリング剤を供給する。
【0012】
ここで、流路方向に向いた微細溝が、シーリング剤の流路の少なくとも一部に設けられている。このため、微細溝のエッジ部で、加圧空気による圧力が部分的に高くなり、シーリング剤は微細溝に沿って流れ易くなる。
従って、シーリング剤を空気入りタイヤに供給した後の流路内におけるシーリング剤の残留量を減らすことができる。
【0013】
本発明の請求項2に係るシーリング・ポンプアップ装置は、請求項1記載において、前記バルブアダプタに、前記微細溝が設けられることを特徴とする。
上記構成によれば、バルブアダプタに、微細溝が設けられているため、バルブアダプタ内におけるシーリング剤の残留量を減らすことができる。
【0014】
本発明の請求項3に係るシーリング・ポンプアップ装置は、請求項1又は2記載において、前記ホース部材の内周面に、前記微細溝が設けられることを特徴とする。
上記構成によれば、ホース部材の内周面に、微細溝が設けられているため、ホース部材の内周面におけるシーリング剤の残留量を減らすことができる。
【0015】
本発明の請求項4に係るシーリング・ポンプアップ装置は、請求項1乃至3何れか1項記載において、前記液剤容器の前記吐出口に前記微細溝が設けられることを特徴とする。
上記構成によれば、液剤容器の吐出口に、微細溝が設けられているため、液剤容器の吐出口におけるシーリング剤の残留量を減らすことができる。
【0016】
本発明の請求項5に係るシーリング・ポンプアップ装置は、請求項1乃至4何れか1項記載において、前記注入ユニットの前記加圧給液室に前記微細溝が設けられることを特徴とする。
上記構成によれば、注入ユニットの加圧給液室に、微細溝が設けられているため、注入ユニットの加圧給液室におけるシーリング剤の残留量を減らすことができる。
【0017】
本発明の請求項6に係るシーリング・ポンプアップ装置は、請求項1乃至5何れか1項記載において、前記注入ユニットには、前記加圧給液室と前記ホース部材を連通させる円筒状のジョイント部が設けられ、前記ジョイント部の内周面に前記微細溝が設けられることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、注入ユニットのジョイント部の内周面に、微細溝が設けられているため、ジョイント部の内周面におけるシーリング剤の残留量を減らすことができる。
【0019】
本発明の請求項7に係るシーリング・ポンプアップ装置は、請求項1乃至6何れか1項記載において、前記微細溝の断面形状は、三角形であることを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、流路方向に向いた断面三角形の微細溝が、シーリング剤の流路の少なくとも一部に設けられている。このため、三角形の頂点のエッジ部で加圧空気による圧力が部分的に高くなり、シーリング剤は微細溝に沿って流れ易くなる。これにより、流路内におけるシーリング剤の残留量を減らすことができる。
【0021】
本発明の請求項8に係るシーリング・ポンプアップ装置は、請求項1乃至6何れか1項記載において、前記微細溝の断面形状は、四角形であることを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、流路方向に向いた断面四角形の微細溝が、シーリング剤の流路の少なくとも一部に設けられている。このため、四角形の2つの頂点のエッジ部で加圧空気による圧力が部分的に高くなり、シーリング剤は微細溝に沿って流れ易くなる。これにより、流路内におけるシーリング剤の残留量を減らすことができる。
【0023】
本発明の請求項9に係るシーリング・ポンプアップ装置は、請求項8項記載において、前記微細溝の深さが5μm以上1000μm未満であって、かつ、前記微細溝のピッチが3mm以下であることを特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、微細溝の深さが5μm以上1000μm未満であり、かつ、微細溝のピッチが3mm以下であるため、溝部の底面部にシーリング剤が溜まる事無く、シーリング剤は微細溝に沿って流れ易くなり、流路内におけるシーリング剤の残留量を減らすことができる。
【0025】
本発明の請求項10に係るシーリング・ポンプアップ装置は、請求項9項記載において、前記微細溝において、凸状の四角形の幅をA、前記微細溝のピッチをBとした時に、0.2<A/B<0.8の関係が成り立つことを特徴とする。
【0026】
上記構成によれば、微細溝において、凸状の四角形の幅をA、微細溝のピッチをBとした時に、0.2<A/B<0.8の関係が成り立つため、微細溝をバランスよく設けることができ、シーリング剤はこの微細溝に沿って流れ易くなり、流路内におけるシーリング剤の残留量を減らすことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のシーリング・ポンプアップ装置によれば、流路内におけるシーリング剤の残留量を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置について図1から図8に基づいて説明する。
図7には、本発明の実施形態に係るタイヤのシーリング・ポンプアップ装置(以下、単に「シーリング装置」という。)が示されている。シーリング装置10は、自動車等の車両に装着された空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という。)がパンクした際、そのタイヤ及びホイールを交換することなく、タイヤをシーリング剤32(図5参照)により補修して所定の基準圧まで内圧を再加圧(ポンプアップ)するものである。
【0029】
このシーリング装置10は、空気供給手段としてのコンプレッサユニット12を備えており、このコンプレッサユニット12には、その内部にモータ、エアポンプ、電源回路等が配設されると共に、電源回路からユニット外部へ延出する電源ケーブル(図示省略)が設けられている。この電源ケーブルの先端部に設けられたプラグを、例えば、車両に設置されたシガレットライターのソケットに差込むことにより、車両に搭載されたバッテリにより電源回路を通してモータ等へ電源が供給可能になる。ここで、コンプレッサユニット12は、そのエアポンプにより修理すべきタイヤ14の種類毎に規定された基準圧よりも高圧(例えば、300kPa以上)の加圧空気を発生可能とされている。
【0030】
図5(A)に示されるように、シーリング装置10には、シーリング剤32を収容した液剤容器18及び、この液剤容器18が融着される注入ユニット20が設けられている。液剤容器18の下端には、下方に突出する略円筒状の吐出口26が一体的に形成されている。吐出口26は、それよりも上側の容器本体部分よりも径が細く形成されている。また、吐出口26の開口部分(下端)には、シーリング剤32を液剤容器18内に密封するためのアルミシール30が配設されている。なお、吐出口26の内周面形状については、詳細を後述する。
【0031】
ここで、液剤容器18は、ガス遮断性を有する各種の樹脂材料やアルミ合金等の金属材料を素材として成形されている。また液剤容器18内には、シーリング装置10により修理すべきタイヤ14(図7参照)の種類、サイズ等に応じた規定量(例えば、200g〜400g)よりも若干多めのシーリング剤32が充填されている。
【0032】
なお、本実施形態の液剤容器18においては、図5(A)に示されるように、空間を設けることなくシーリング剤32が液剤容器18内に隙間無く充填されているが、シーリング剤32の酸化、窒化等による変質を防止するため、出荷時にAr等の不活性ガスをシーリング剤32と共に液剤容器18内へ若干量封入するようにしても良い。
【0033】
また、液剤容器18を注入ユニット20の上側に吐出口26を下方へ向けて直立した状態にすると、液剤容器18内のシーリング剤32が自重により、液剤容器18のアルミシール30に押し付けられた状態となる。
【0034】
さらに、注入ユニット20には、略円筒状に形成されたユニット本体34及び、このユニット本体34の下端部から外周側へ延出するプレート状の脚部36が設けられている。また、ユニット本体34の上部には、液剤容器18の吐出口26の一部分が押し込まれた状態で融着されるようになっている。
【0035】
ユニット本体34内には、アルミシール30が突き破られると液剤容器18の内部と連通する略円柱状の加圧給液室40が設けられている。具体的には、加圧給液室40の形状は、加圧給液室40の中心より図面右側が、図面左側よりも深く成型されている。
さらに、注入ユニット20の中央には、下面から加圧給液室40へ向けて垂直方向に延びる断面円形の冶具挿入孔42が形成されている。なお、加圧給液室40の壁面形状については、詳細を後述する。
【0036】
また、シーリング装置10には、図7に示されるように、コンプレッサユニット12から延出する耐圧ホース44が設けられると共に、図5(A)に示されるように、注入ユニット20から延出し、ジョイントカプラ46を介して耐圧ホース44に着脱可能に接続される圧力配管48が設けられている。
【0037】
この耐圧ホース44は、基端部がコンプレッサユニット12内におけるエアポンプに接続されており、コンプレッサユニット12(図7参照)の作動時には、エアポンプによって発生した加圧空気が耐圧ホース44側へ供給されるようになっている。また、圧力配管48の先端部は、ユニット本体34の周壁部を貫通して、垂直方向に延びる冶具挿入孔42の中間部分に開口している。
【0038】
さらに、冶具挿入孔42の加圧給液室40側には、冶具挿入孔42を閉塞する閉孔部材50の軸部50Aが挿入されている。閉孔部材50は、軸部50Aの上端部に、径方向外側へ拡径する円盤状の閉孔部50Bを備えている。また、閉孔部50Bの上面には、アルミシール30を突き破りやすくするための刃50Cが複数形成されている。
【0039】
さらに、軸部50Aには、一対のオーリング溝56が形成されており、各オーリング溝56にはオーリング58が嵌めこまれている。
また、軸部50Aは、全体が冶具挿入孔42に挿入されており、圧力配管48の先端部が、軸部50Aのオーリング58とオーリング58との間で塞がれている。
【0040】
さらに、軸部50Aは、オーリング58と冶具挿入孔42の内周面との摩擦により、冶具挿入孔42の内部に保持されている。この状態では、閉孔部50Bがアルミシール30の正面中央に対向しており、閉孔部50Bとアルミシール30との間には若干の隙間が設けられている。
【0041】
また、シーリング装置10には、ユニット本体34から水平方向へ円筒状に吐出したジョイント部52の先端部と中間継手部材(図示省略)を介して接続されるホース部材としてのジョイントホース54が設けられている。このジョイントホース54は、ジョイント部52を介して加圧給液室40内と連通する構成となっている。
【0042】
また、図7に示されるように、ジョイントホース54の先端部には、タイヤ14のタイヤバルブ16に着脱可能に接続されるバルブアダプタ76が設けられている。
【0043】
次に、吐出口26の内周形状、加圧給液室40の壁面形状、ジョイント部52の内周面形状、ジョイントホース54の内周面形状、及びバルブアダプタ76の内周面形状について図1〜図4に従って説明する。
【0044】
図3に示されるように、液剤容器18の吐出口26の内周面には、その全周に渡って、微細溝80がシーリング剤32の流路方向(流れ方向)に沿って設けられている。詳細には、微細溝80の断面形状は、四角形であり、微細溝の深さは、5μm以上1000μm未満(好ましくは10μm以上500μm未満、より好ましくは20μm以上200μm未満)とされており、さらに、微細溝80のピッチは3mm以下(好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下)である。
【0045】
また、微細溝80において、凸状の四角形の幅をA、微細溝80のピッチをBとした時に、0.2<A/B<0.8(好ましくは0.4<A/B<0.6)となるように、A及びBが決められている。
【0046】
また、図2に示されるように、注入ユニット20の加圧給液室40の壁面、及びジョイント部52の内周面には、その全周に渡って、吐出口26の微細溝80と同形状の微細溝82がシーリング剤32の流路方向(流れ方向)に沿って設けられている。
【0047】
さらに、図4に示されるように、ジョイントホース54の内周面にも、その全周に渡って、吐出口26の微細溝80と同形状の微細溝84がシーリング剤32の流路方向(流れ方向)に沿って設けられている。
【0048】
また、図1に示されるように、バルブアダプタ76の内周面にも、その全周に渡って、吐出口26の微細溝80と同形状の微細溝86がシーリング剤32の流路方向(流れ方向)に沿って設けられている。
【0049】
一方、図5(B)に示されるように、シーリング装置10からシーリング剤32を吐出させる際に用いる冶具60は、棒状の挿入部60Aと、挿入部60Aの一端に一体的に形成される円盤状のベース部60Bを備えている。
【0050】
挿入部60Aには、ベース部側とは反対側の先端からベース部側に向けて延びる第1通路62が中心部分に形成されていると共に、第1通路62のベース部側端から外周へ貫通する第2通路64が複数本形成されている。また、挿入部60Aの外周面には、第2通路64の開口部分に空気通路となる環状の溝66が形成されており、溝66の両側には、一対のオーリング溝68が形成されている。なお、オーリング溝68には、オーリング70が嵌め込まれている。
【0051】
さらに、この冶具60のベース部60Bから第1通路62の先端までの距離L1は、シーリング装置10の脚部36の下面から、液剤容器18の内部上壁面までの距離L0(図5(A)参照)よりも短く設定されている。また、冶具60のベース部60Bから第2通路64の中心までの距離L3は、シーリング装置10の脚部36の下面から圧力配管48の中心部までの距離L4(図5(A)参照)と同一寸法に設定されている。
【0052】
次に、本実施形態に係るシーリング装置10を用いてパンクしたタイヤ14を修理する作業手順を説明する。
【0053】
図7に示されるように、タイヤ14にパンクが発生した際には、先ず、作業者は、ジョイントホース54のバルブアダプタ76をタイヤ14のタイヤバルブ16にねじ止めし、ジョイントホース54を通して加圧給液室40(図5(A)参照)をタイヤ14内へ連通させる。
【0054】
次いで、作業者は、図5(B)に示す冶具60の挿入部60Aを図5(A)に示すシーリング装置10の冶具挿入孔42に挿入し、冶具60のベース部60Bをシーリング装置10の脚部36に突き当てる。
【0055】
図6に示されるように、挿入部60Aで押された閉孔部材50の閉孔部50Bがアルミシール30を突き破って液剤容器18内に押し込まれ、挿入部60Aが液剤容器18内に進入する。その後、脚部36が下、液剤容器18が上になるようにシーリング装置10を、例えば路面上に配置する。
【0056】
また、冶具60の挿入部60Aをシーリング装置10の冶具挿入孔42に挿入すると、挿入部60Aの先端が液剤容器18の内部上壁面近くに位置し、また、アルミシール30に開けられた孔30Aと挿入部60Aとの間の環状の隙間を介して液剤容器18内のシーリング剤32が加圧給液室40へ流出する。これにより、液剤容器18内上部には、加圧給液室40へ流出したシーリング剤32の容積に相当する空間72が形成され、挿入部60Aの先端に開口する第1通路62の端部を、シーリング剤32の液面よりも上側に位置させることができる。
【0057】
そして、注入ユニット20の上側に液剤容器18が位置するように注入ユニット20及び液剤容器18を保持しつつ、コンプレッサユニット12を作動させる。コンプレッサユニット12により発生した加圧空気は、耐圧ホース44、圧力配管48、冶具60の第2通路64、及び第1通路62を介して液剤容器18に供給される。前述したように、第1通路62の端部がシーリング剤32の液面よりも上側に位置しているので、加圧空気はシーリング剤32の中を泡となって浮上することはない。
【0058】
加圧空気が液剤容器18に供給されると、液剤容器18上部に形成された空間72の容積が拡大してシーリング剤32を加圧し、加圧されたシーリング剤32は、アルミシール30に開けられた孔30Aと挿入部60Aとの間の環状の隙間を介して加圧給液室40、ジョイントホース54、及びバルブアダプタ76(図7参照)を通って空気入りタイヤ14内へ供給される。
【0059】
さらに、液剤容器18のシーリング剤32が全て排出された後は、加圧給液室40内のシーリング剤32が加圧されてジョイントホース54を通って空気入りタイヤ14内へ供給される。
その後、シーリング装置10からシーリング剤32が吐出されると、加圧空気は液剤容器18、加圧給液室40、及びジョイントホース54を介してタイヤ14内へ供給される。
【0060】
次に、作業者は、図7に示すコンプレッサユニット12に設けられた圧力ゲージ78によりタイヤ14の内圧が規定圧になったことを確認したならば、コンプレッサユニット12を停止し、バルブアダプタ76をタイヤバルブ16から取り外す。
【0061】
ここで、液剤容器18の吐出口26の内周面、加圧給液室40の壁面、ジョイント部52の内周面、ジョイントホース54の内周面、及びバルブアダプタ76の内周面には、前述したように、シーリング剤32の流路方向(流れ方向)に沿って、微細溝80、82、84、86が設けられている。
【0062】
このため、微細溝80、82、84、86のエッジ部で、加圧空気による圧力が部分的に高くなり、この圧力に押されてシーリング剤32は微細溝80、82、84、86に沿って流れ易くなる。
【0063】
従って、シーリング剤32を空気入りタイヤ14に供給した後の流路内におけるシーリング剤の残留量を減らすことができる。
【0064】
ここで、シーリング剤32が残留した状態で加圧空気をジョイントホース54等を介してタイヤ14へ注入すると、加圧空気の流動によってシーリング剤32が刺激を受けて残留したシーリング剤32が固着する。この状態で、再度シーリング剤32又は加圧空気をジョイントホース54等を介してタイヤ14へ注入しようとすると、固着したシーリング剤32によってジョイントホース54やシステム全般に必要以上の圧力負荷が発生し、タイヤ14へのシーリング剤32又は加圧空気の注入が不安定になることが考えられる。
【0065】
しかし、本発明では、前述したようにシーリング剤32の残留量を減らすことができるため、タイヤ14へのシーリング剤32又は加圧空気の注入を安定させることができる。
【0066】
一方、作業者は、タイヤ14の膨張完了後一定時間内に、シーリング剤32が注入されたタイヤ14を用いて一定距離に亘って予備走行する。これにより、タイヤ14内部にシーリング剤32が均一に拡散し、シーリング剤32がパンク穴に充填されてパンク穴を閉塞する。予備走行完了後に、作業者は、タイヤ14の内圧を再測定し、必要に応じて再びジョイントホース54のバルブアダプタ76をタイヤバルブ16にねじ止めし、コンプレッサユニット12を再作動させてタイヤ14を規定の内圧まで加圧する。これにより、タイヤ14のパンク修理が完了し、このタイヤ14を用いて一定の距離範囲内で一定速度以下(例えば、80Km/h以下)での走行が可能になる。
【0067】
さらに、本願発明者は、以下の試験にて流路に微細溝を追加することで、シーリング剤の残留量を減らすことができることを確認した。
【0068】
<試験条件>
【0069】
・450gの液温60℃のシーリング剤を液剤容器に充填し、一定量の加圧空気を注入ユニットに挿入し、シーリング剤をジョイントホースを介してバルブアダプタから排出した。
【0070】
・また、同一条件で同じ試験を5回行い、その5回の測定結果の平均値を後述する図8に記載した。
【0071】
<評価内容>
・加圧空気を挿入する前後でシーリング装置の重量を測定して、シーリング装置内に残留したシーリング剤の重量(残液量)を測定した。
・加圧空気を挿入する前後でバルブアダプタのバルブコアの重量を測定して、バルブアダプタに残留したシーリング剤の重量(バルブコア詰まり量)を測定した。
【0072】
<仕様>
・断面四角形の微細溝の寸法については、図8に示す。
【0073】
<評価基準>
・バルブコア詰まり量としては、実使用上つまりが問題とならない25g以下を合格(○)とした。
【0074】
図8は上記試験の評価結果を示し、微細溝の深さが5μm以上1000μm未満、かつ、微細溝80のピッチが3mm以下で、さらに、凸状の四角形の幅をA、微細溝のピッチをBとした時に、0.2<A/B<0.8とされた、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4のバルブコア詰まり量が25g以下であって、実使用上つまりが問題ないことが判る。
【0075】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、微細溝の断面を四角形状としてシーリング剤の流れを良くしたが、断面を三角形状等の他の断面形状にしてシーリング剤の流れを良くしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置のバルブアダプタを示した斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置の注入ユニットを示した斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置を示し、液剤容器の吐出口の水平断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置のジョイントホースの断面図である。
【図5】(A)本発明の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置を示し、液剤容器、注入ユニット等の構成を表した側面断面図である。(B)本発明の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置を示し、冶具を示した側方断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置を示し、冶具を挿入した後の液剤容器、及び注入ユニット等の構成を表した側方断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置の構成を示した概略構成図である。
【図8】本発明の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置の性能評価結果を表した図面である。
【符号の説明】
【0077】
10 シーリング装置(シーリング・ポンプアップ装置)
12 コンプレッサユニット(空気供給手段)
14 タイヤ(空気入りタイヤ)
16 タイヤバルブ
18 液剤容器
20 注入ユニット
26 吐出口
32 シーリング剤
40 加圧給液室
52 ジョイント部
54 ジョイントホース(ホース部材)
80 微細溝
82 微細溝
84 微細溝
86 微細溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧空気を供給する空気供給手段と、
前記空気供給手段と連結され、前記空気供給手段からの加圧空気が供給される加圧給液室を備えた注入ユニットと、
前記注入ユニットと連結されると共に、シーリング剤を収納し、前記シーリング剤を前記加圧給液室に吐出する吐出口が形成された液剤容器と、
一端が前記注入ユニットに取り付けられて前記加圧給液室と連通し、他端が空気入りタイヤのタイヤバルブと連通可能とされたホース部材と、
前記ホース部材の先端部に設けられ、前記タイヤバルブと接続可能に設けられたバルブアダプタと、
を備えたシーリング・ポンプアップ装置において、
前記シーリング剤の流路の少なくとも一部に流路方向の微細溝が設けられたことを特徴とするシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項2】
前記バルブアダプタに、前記微細溝が設けられることを特徴とした請求項1記載のシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項3】
前記ホース部材の内周面に、前記微細溝が設けられることを特徴とした請求項1又は2記載のシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項4】
前記液剤容器の前記吐出口に前記微細溝が設けられることを特徴とした請求項1乃至3何れか1項に記載されたシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項5】
前記注入ユニットの前記加圧給液室に前記微細溝が設けられることを特徴とした請求項1乃至4何れか1項に記載されたシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項6】
前記注入ユニットには、前記加圧給液室と前記ホース部材を連通させる円筒状のジョイント部が設けられ、前記ジョイント部の内周面に前記微細溝が設けられることを特徴とした請求項1乃至5何れか1項に記載されたシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項7】
前記微細溝の断面形状は、三角形であることを特徴とする請求項1乃至6何れか一項に記載されたシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項8】
前記微細溝の断面形状は、四角形であることを特徴とする請求項1乃至6何れか一項に記載されたシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項9】
前記微細溝の深さが5μm以上1000μm未満であって、かつ、前記微細溝のピッチが3mm以下であることを特徴とする請求項8記載のシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項10】
前記微細溝において、凸状の四角形の幅をA、前記微細溝のピッチをBとした時に、0.2<A/B<0.8の関係が成り立つことを特徴とした請求項9記載のシーリング・ポンプアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−142988(P2008−142988A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331649(P2006−331649)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】