説明

シールドトンネル用テルハクレーン

【課題】 長大な長さでもトンネルの湾曲部に設置できるようにする。
【解決手段】本発明に係る可撓性搬送レール5は、相互に回動自在に連結された複数のジョイント部材で構成してある。搬送レール湾曲機構22は、離間させて平行配置した一対の吊持板61,61と、該吊持板の上縁を相互につなぐ一体化プレート62と、各吊持板61に形成された長孔状のガイド孔に挿通される複数の吊持用ロッド66とから構成し、一対の吊持板61,61がスクリュー受け台車12の移動軸線と平行になるように吊持部63を用いてスクリュー受け台車12に取り付けてあり、各吊持用ロッド66を、シールド側搬送レールの連結部、複数のジョイント部材及び抗口側搬送レールの連結部の各頂部に突設された吊持部に形成されたロッド孔に挿通することによって、可撓性搬送レール5は、搬送レール湾曲機構22を介してスクリュー受け台車12から吊持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として土圧式シールド工法で地盤掘削を行う場合に用いられるシールドトンネル用テルハクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地下鉄や上下水道をはじめとする公共施設による地下空間の利用が急増してきており、都市地下ではこれら様々な地下構造物が複雑に交錯している。
【0003】
このような地下トンネル工事では、従来から土圧式シールドや泥水式シールド等のシールド工法が主流となっている。
【0004】
シールド工法は、シールドマシン(以下、単にシールド)の先端に設けられたカッタービットにより地盤を掘削していく工法であり、掘削されたトンネルの掘削壁面にはセグメントが覆工されていく。
【0005】
このセグメントは、セグメント搬送台車によって立坑からトンネル先端近くまで搬送された後、テルハクレーンによってシールドのテール部へと搬送され、しかる後、エレクターによって掘削壁面に覆工される。
【0006】
ここで、テルハクレーンは、セグメント搬送台車からセグメントをシールドのテール部近傍へ搬送するだけでなく、セグメント搬送台車の前方あるいは後方に位置する資材搬送台車からも資材をシールドのテール部へ搬送する役目も担っているため、テルハクレーンを構成する搬送レールは、シールドのテール部から最後尾の台車停車位置まで延びている必要がある。
【0007】
一方、土圧式シールド工法においては、土圧制御の関係上、シールド先端のチャンバーから排出された掘削土を1次スクリューコンベア及びその後端に連結された2次スクリューコンベアを介して抗口側に搬出しなければならず、かかる2次スクリューコンベアとの干渉を避けるべく、セグメント搬送台車や資材搬送台車の停車位置は、シールドのテール部からかなり後方にならざるを得ない。
【0008】
したがって、トンネルの規模によっては、搬送レールの長さが十数メートルに及ぶことも珍しくない。
【0009】
【特許文献1】特開平7−217398
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、地上道路との関係上あるいはその他の事情で、トンネルを一定の曲率で曲げなければならないことがある。
【0011】
しかしながら、かかるトンネルの湾曲部に上述したような十数メートルもある搬送レールを設置することは困難であるという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、トンネルを曲げながら掘削する場合にも使用可能なシールドトンネル用テルハクレーンを提供することを目的とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係るシールドトンネル用テルハクレーンは請求項1に記載したように、搬送レールと該搬送レールに沿って走行自在となるように取り付けられた資材搬送用ホイストとからなるシールドトンネル用テルハクレーンにおいて、前記搬送レールを、先端にてシールドにピン接合されたシールド側搬送レールと、該シールド側搬送レールの後端に設けられた連結部に先端がピン接合された可撓性搬送レールと、先端に設けられた連結部が前記可撓性搬送レールの後端にピン接合された抗口側搬送レールとから構成し、前記可撓性レールを第1の牽引アームを介して前記シールドに連結された第1の移動架台からトンネル軸線方向に移動自在となるように吊持するとともに、前記抗口側搬送レールの後端近傍を第2の牽引アームを介して前記第1の移動架台に連結された第2の移動架台にトンネル軸線方向に移動自在となるようにかつ回動自在となるように連結したものである。
【0014】
また、本発明に係るシールドトンネル用テルハクレーンは、前記可撓性搬送レールを相互に回動自在に連結された複数のジョイント部材で構成するとともに搬送レール湾曲機構を介して前記第1の移動架台から吊持し、該搬送レール湾曲機構を、所定の幅だけ離間させるとともに前記第1の移動架台の移動軸線と平行に配置された一対の吊持板と、前記可撓性搬送レールの連結部、前記複数のジョイント部材及び前記抗口側搬送レールの連結部のそれぞれの頂部に突設された吊持部に形成されたロッド孔に挿通される複数の吊持用ロッドとで構成し、該各吊持用ロッドの各端を前記各一対の吊持板に形成された長孔状のガイド孔にそれぞれ挿通するとともに、前記各吊持用ロッドの長さを、それらの両端に設けてある頭部と前記一対の吊持板の外面との間にクリアランスが形成されるように設定したものである。
【0015】
また、本発明に係るシールドトンネル用テルハクレーンは、前記シールド側搬送レールの連結部、前記複数のジョイント部材及び前記坑口側搬送レールの連結部が相互に連結される箇所での折れ曲がり角度の上限値を前記資材搬送用ホイストが走行可能な角度以下とするとともに、前記ジョイント部材の個数を前記トンネルの曲率及び前記折れ曲がり角度の上限値に応じて定めたものである。
【0016】
また、本発明に係るシールドトンネル用テルハクレーンは、前記シールドを土圧式シールドとしたものである。
【0017】
本発明に係るシールドトンネル用テルハクレーンにおいては、搬送レールを、先端にてシールドにピン接合されたシールド側搬送レールと、該シールド側搬送レールの後端に設けられた連結部に先端がピン接合された可撓性搬送レールと、先端に設けられた連結部が前記可撓性搬送レールの後端にピン接合された抗口側搬送レールとから構成し、前記可撓性レールを第1の牽引アームを介して前記シールドに連結された第1の移動架台からトンネル軸線方向に移動自在となるように吊持するとともに、前記抗口側搬送レールの後端近傍を第2の牽引アームを介して前記第1の移動架台に連結された第2の移動架台にトンネル軸線方向に移動自在となるようにかつ回動自在となるように連結してある。
【0018】
このようにすると、トンネルがカーブを描いて湾曲している箇所では、可撓性搬送レールが湾曲することによって、シールド側搬送レールも抗口側搬送レールも湾曲したトンネル軸線に沿うことになる。
【0019】
すなわち、シールドは、第1の牽引アームを介して第1の移動架台を牽引するとともに、さらに第1の移動架台に第2の牽引アームを介して連結された第2の移動架台を牽引しながら、その推進力で地盤を掘削していく。そして、トンネルが直線部でなく、湾曲部の場合には、それぞれ対で構成してある第1の牽引アーム及び第2の牽引アームを伸縮させることで、カーブ内側とカーブ外側の距離の差を吸収しながら、第1の移動架台及び第2の移動架台をシールドで牽引しつつ所定の曲率を持つカーブに沿って移動する。
【0020】
ちなみに、トンネル直線部では、シールド、第1の移動架台及び第2の移動架台は、それらの材軸方向が同じでかつトンネル軸線に一致しているが、トンネル湾曲部においては、トンネル軸線自体が湾曲することになるため、シールド、第1の移動架台及び第2の移動架台は、当然ながら同じ方向を向かず、直線部のときとは相対位置関係が変動する。
【0021】
ここで、搬送レールのうち、シールド側搬送レールは、シールド及び可撓性搬送レールに各端がピン接合してあるため、直線部から湾曲部にさしかかる箇所では、シールドと第1の移動架台との相対位置の変動に追従するようにシールドと同じ方向に回転し、湾曲部の掘削が継続している間は、シールド側搬送レールは、かかる状態が維持される。
【0022】
同様に、抗口側搬送レールは、可撓性搬送レール及び第2の移動架台にピン接合ないし回動自在に連結されているため、直線部から湾曲部にさしかかる箇所では、第1の移動架台と第2の移動架台との相対位置の変動に追従するように第1の移動架台と同じ方向に回転し、湾曲部の掘削が継続している間は、抗口側搬送レールは、かかる状態が維持される。
【0023】
かくして、搬送レールが長大になっても、テルハクレーンをトンネルの湾曲部に設置することが可能となる。
【0024】
ちなみに、第1の牽引アームは、例えば泥土圧シールドの場合、二次スクリューコンベアの吐出口を第1の移動架台から吊持している関係上、その箇所において直線状態と湾曲状態でシールドからの距離が変化しないように調整する必要があるが、カーブ断面である以上、同一断面の他の箇所では、直線状態のときと湾曲状態のときの距離は当然ながら変動する。第1の移動架台と第2の移動架台でも同様なことが言える。
【0025】
しかし、本発明においては、トンネル軸線方向に移動自在となるように可撓性搬送レールを第1の移動架台から吊持してあるとともに、抗口側搬送レールの後端近傍をトンネル軸線方向に移動自在となるように第2の移動架台に連結してあるため、第1の牽引アーム及び第2の牽引アームの動作によって搬送レールがトンネル軸線方向に沿って強制変形を受ける懸念はない。
【0026】
シールド側搬送レール及び抗口側搬送レールは例えばI型鋼(Iビーム)で構成することができる。資材搬送用ホイストは、市販のものから適宜選択すればよいが、I型鋼を搬送レールとする場合には、I形鋼のフランジ上面を走行するようなものを選択するのがよい。
【0027】
抗口側搬送レールの後端近傍においては、トンネル軸線方向に移動自在となるようにかつ回動自在となるように第2の移動架台に連結してあり、その構成は任意であるが、例えば抗口側搬送レールの後端近傍を第2の移動架台の上に載せ、その両側に側方移動拘束部材を立設するようにすればよい。
【0028】
側方移動拘束部材は、例えば抗口側搬送レールのウェブを一対のL型プレートで両側から挟み込むようにして第2の移動架台に立設することが考えられる。
【0029】
一方、可撓性搬送レールをどのように構成するかは任意であり、例えばウェブ厚が薄くかつ靭性に富んだ鋼材で形成されたI型鋼を用いることができる。この場合、一定区間ごとにフランジにスリットを入れておき、レール全体がスムーズに湾曲するようにしておく。
【0030】
ここで、可撓性搬送レールを相互に回動自在に連結された複数のジョイント部材で構成するとともに搬送レール湾曲機構を介して前記第1の移動架台から吊持し、該搬送レール湾曲機構を、所定の幅だけ離間させるとともに前記第1の移動架台の移動軸線と平行に配置された一対の吊持板と、前記可撓性搬送レールの連結部、前記複数のジョイント部材及び前記抗口側搬送レールの連結部のそれぞれの頂部に突設された吊持部に形成されたロッド孔に挿通される複数の吊持用ロッドとで構成し、該各吊持用ロッドの各端を前記各一対の吊持板に形成された長孔状のガイド孔にそれぞれ挿通するとともに、各吊持用ロッドの長さを、それらの両端に設けてある頭部と前記一対の吊持板の外面との間にクリアランスが形成されるように設定して構成することができる。
【0031】
かかる可撓性搬送レールは、いわば関節型レールとでも呼ぶべきものであり、ジョイント部材の個数を増やすことで、湾曲できる程度を自在に設定することができる。
【0032】
搬送レール湾曲機構は、上述したように長孔状のガイド孔が形成された一対の吊持板と、該吊持板のガイド孔に挿通される複数の吊持用ロッドとから構成してあり、可撓性搬送レールの連結部、複数のジョイント部材及び抗口側搬送レールの連結部のそれぞれの頂部に突設された吊持部に形成されたロッド孔には、一対の吊持板のガイド孔に挿通された状態で複数の吊持用ロッドがそれぞれ挿通される。また、各吊持用ロッドは、その両端に設けてある頭部と一対の吊持板の外面との間にクリアランスが形成されるように長さを設定してある。
【0033】
かかる構成において、ジョイント部材等の吊持部のロッド孔に挿通された吊持用ロッドは、長孔状のガイド孔を前後移動可能、換言すればトンネル軸線方向に移動自在となるとともに、吊持用ロッドの両端に設けてある頭部と一対の吊持板の外面との間にクリアランスが形成されるように吊持用ロッドの長さを設定してあるため、複数の吊持用ロッドは、2つのガイド孔を含む面内において、トンネル軸線に直交しかつ互いに平行な状態(トンネルが直線状態のとき)をとりうることができるのみならず、互いに非平行な状態、特に平面で見れば、扇状の位置をとりうることが可能となり、かくして、搬送レール湾曲機構は、ジョイント部材等の相互回転を拘束することなく、しかもトンネル軸線方向に移動自在となるように可撓性搬送レールを吊持することができる。
【0034】
ちなみに、吊持用ロッドの頭部は、該吊持用ロッドが吊持板に形成されたガイド孔から抜けないように適宜構成しておく。
【0035】
シールド側搬送レールの連結部、複数のジョイント部材及び坑口側搬送レールの連結部が相互に連結される箇所での折れ曲がり角度は、資材搬送用ホイストの走行に支障がない限り、任意であるが、かかる折れ曲がり角度の上限値を資材搬送用ホイストが走行可能な角度以下とするとともに、ジョイント部材の個数をトンネルの曲率及び折れ曲がり角度の上限値に応じて定めるようにしたならば、トンネルのカーブの曲率に合わせて可撓性搬送レールを自在に構成することが可能となり、ひいては、どのような曲率のトンネルであっても、テルハクレーンの搬送ビームを設置することが可能となる。
【0036】
本発明に係るシールドトンネル用テルハクレーンは、泥水式シールドにも適用することができるが、これを土圧式シールドに適用したならば、二次スクリューコンベアと搬送レールとの干渉を未然に防止しながら、長大なテルハクレーンをトンネル内に設置することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明に係るシールドトンネル用テルハクレーンを泥土圧式シールドに適用した場合の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0038】
図1は、本実施形態に係るシールドトンネル用テルハクレーンとその周辺を図示した平面図、図2は同じくその側面図である。これらの図でわかるように、本実施形態に係るシールドトンネル用テルハクレーン1は、搬送レール2と、該搬送レールに沿って走行自在となるように取り付けられた資材搬送用ホイスト3とから構成してある。
【0039】
ここで、搬送レール2は図1、図2でよくわかるように、シールド側搬送レール4、可撓性搬送レール5及び抗口側搬送レール6で構成してあり、シールド側搬送レール4の先端は、シールド7から後方に延びる片持ち梁8の先端にピン接合してある。ここで、シールド側搬送レール4は、二次スクリューコンベア9との干渉を避けるため、シールド7の方向に向けて下り勾配としてある。
【0040】
可撓性搬送レール5は、その先端をシールド側搬送レール4の後端に設けられた連結部にピン接合してあり、抗口側搬送レール6は、その先端に設けられた連結部を可撓性搬送レール5の後端にピン接合してある。
【0041】
シールド側搬送レール4及び抗口側搬送レール6は例えばI型鋼(Iビーム)で構成することができる。資材搬送用ホイスト3は、市販のものから適宜選択すればよいが、I型鋼を搬送レールとする場合には、I形鋼のフランジ上面を走行するようなものを選択するのがよい。
【0042】
ここで、シールド7には、第1の牽引アーム11,11を介して第1の移動架台としてのスクリュー受け台車12を連結してあり、可撓性搬送レール5は、該スクリュー受け台車からトンネル軸線方向に移動自在となるように吊持してある。
【0043】
すなわち、スクリュー受け台車12は図3でよくわかるように、概ね門形フレームで構成してあり、可撓性搬送レール5は、スクリュー受け台車12の頂部に吊り下げられた搬送レール湾曲機構22を介して吊持してある。また、スクリュー受け台車12の名前でわかる通り、搬送レール湾曲機構22の側方には、二次スクリューコンベア9の吐出口近傍を該台車の頂部から吊り下げてある。
【0044】
一方、スクリュー受け台車12には図1に示したように、第2の牽引アーム13a,13bを介して第2の移動架台としての運転台車14を連結してあり、抗口側搬送レール6は、その後端近傍をトンネル軸線方向に移動自在となるようにかつ回動自在となるように運転台車14に連結してある。
【0045】
すなわち、抗口側搬送レール6は図4でよくわかるように、その後端近傍を運転台車14を構成する門形フレームの上に載せ、その両側に側方移動拘束部材31を立設することにより、トンネル軸線方向に移動自在となるようにかつ回動自在となるように構成してある。側方移動拘束部材31は、抗口側搬送レール6のウェブを両側から挟み込む一対のL型プレートで構成してある。
【0046】
可撓性搬送レール5は図5でわかるように、相互に回動自在に連結された複数のジョイント部材52a,52b,52cで構成するとともに、搬送レール湾曲機構22を介してスクリュー受け台車12から吊持して構成してある。
【0047】
すなわち、可撓性搬送レール5は、図面の便宜上、3つのジョイント部材52a,52b,52cで構成してあり、かかるジョイント部材52a,52b,52cのうち、先頭に位置するジョイント部材52aを、トンネル底面に垂直な軸線廻りに回動自在となるよう、シールド側搬送レール4の後端に設けられた連結部51に噛合させた上、それぞれに設けられたピン孔にジョイントピン53を差し込み、中間に位置するジョイント部材52bを、トンネル底面に垂直な軸線廻りに回動自在となるよう、ジョイント部材52aに噛合させた上、それぞれに設けられたピン孔にジョイントピン53を差し込み、同様にしてジョイント部材52cをジョイント部材52bに連結し、次いで、抗口側搬送レール6の先端に設けられた連結部54を、トンネル底面に垂直な軸線廻りに回動自在となるよう、ジョイント部材52cに噛合させた上、それぞれに設けられたピン孔にジョイントピン53を差し込んで構成してある。
【0048】
かかる可撓性搬送レール5は、いわば関節型レールとでも呼ぶべきものであり、ジョイント部材の個数を増やすことで、湾曲できる程度を自在に設定することができる。ここで、ジョイント部材の個数やジョイント部材同士の折曲げ角度あるいは連結部51あるいは連結部54とジョイント部材との折曲げ角度は、資材搬送用ホイスト3の走行性を考慮して定める。
【0049】
搬送レール湾曲機構22は図6でわかるように、所定の幅だけ離間させて平行配置した一対の吊持板61,61と、該吊持板の上縁を相互につなぐ一体化プレート62と、各吊持板61に形成された長孔状のガイド孔65に挿通される複数の吊持用ロッド66とから構成してあり、一対の吊持板61,61がスクリュー受け台車12の移動軸線と平行になるように吊持部63を用いてスクリュー受け台車12に取り付けてあり、各吊持用ロッド66を、シールド側搬送レール4の連結部51、複数のジョイント部材52a,52b,52c及び抗口側搬送レール6の連結部54のそれぞれの頂部に突設された吊持部に形成されたロッド孔に挿通することによって、可撓性搬送レール5は、かかる搬送レール湾曲機構22を介してスクリュー受け台車12から吊持されることとなる。
【0050】
ここで、各吊持用ロッド66は、その両端に設けてある頭部と一対の吊持板61,61の外面との間にクリアランスが形成されるように長さを設定してある。
【0051】
本実施形態に係るシールドトンネル用テルハクレーン1においては、図7に示すように、トンネル41がカーブを描いて湾曲している箇所では、可撓性搬送レール5が湾曲することによって、シールド側搬送レール4も抗口側搬送レール6も湾曲したトンネル軸線に沿うことになる。
【0052】
すなわち、シールド7は、第1の牽引アーム11,11を介してスクリュー受け台車12を牽引するとともに、さらに該スクリュー受け台車12に運転台車14を牽引しながら、その推進力で地盤を掘削していく。そして、トンネルが直線部でなく、湾曲部の場合には、それぞれ対で構成してある第1の牽引アーム11,11及び第2の牽引アーム13a,13bを伸縮させることで、カーブ内側とカーブ外側の距離の差を吸収しながら、スクリュー受け台車12及び運転台車14をシールド7で牽引しつつ所定の曲率を持つカーブに沿って移動する。
【0053】
ちなみに、トンネル直線部では、シールド、第1の移動架台及び第2の移動架台は、それらの材軸方向が同じでかつトンネル軸線に一致しているが、トンネル湾曲部においては、トンネル軸線自体が湾曲することになるため、シールド、第1の移動架台及び第2の移動架台は、当然ながら同じ方向を向かず、直線部のときとは相対位置関係が変動する。
【0054】
ここで、搬送レール2のうち、シールド側搬送レール4は、シールド7及び可撓性搬送レール5に各端がピン接合してあるため、直線部から湾曲部にさしかかる箇所では、シールド7とスクリュー受け台車12との相対位置の変動に追従するようにシールド7と同じ方向に回転し、湾曲部の掘削が継続している間は、シールド側搬送レール4は、かかる状態が維持される。
【0055】
同様に、抗口側搬送レール6は、可撓性搬送レール5及び運転台車14にピン接合ないし回動自在に連結されているため、直線部から湾曲部にさしかかる箇所では、スクリュー受け台車12と運転台車14との相対位置の変動に追従するようにスクリュー受け台車12と同じ方向に回転し、湾曲部の掘削が継続している間は、抗口側搬送レール6は、かかる状態が維持される。
【0056】
かくして、搬送レール2が長大になっても、テルハクレーン1をトンネルの湾曲部に設置することが可能となる。
【0057】
なお、本実施形態においては、トンネル軸線方向に移動自在となるように可撓性搬送レール5をスクリュー受け台車12から吊持してあるとともに、抗口側搬送レール6の後端近傍をトンネル軸線方向に移動自在となるように運転台車14に連結してあるため、第1の牽引アーム11,11及び第2の牽引アーム13a,13bの動作によって搬送レール2がトンネル軸線方向に沿って強制変形を受ける懸念はない。
【0058】
また、本実施形態に係るシールドトンネル用テルハクレーン1においては、可撓性搬送レール5を搬送レール湾曲機構22を介してスクリュー受け台車12から吊持してあるが、ジョイント部材等の吊持部のロッド孔に挿通された吊持用ロッド66は、搬送レール湾曲機構22を構成する一対の吊持板61,61に形成された長孔状のガイド孔65,65を前後移動可能、換言すればトンネル軸線方向に移動自在であるとともに、吊持用ロッド66の両端に設けてある頭部と一対の吊持板61,61の外面との間にクリアランスが形成されるように吊持用ロッド66の長さを設定してあるため、複数の吊持用ロッド66は図8(a)に示すように、2つのガイド孔65,65を含む面内において、トンネル軸線に直交しかつ互いに平行な状態(トンネルが直線状態のとき)をとりうることができる。
【0059】
加えて、複数の吊持用ロッド66は同図(b)に示すように、互いに非平行な状態、特に平面で見れば、扇状の位置をとりうることが可能となり、かくして、搬送レール湾曲機構22は、ジョイント部材等の相互回転を拘束することなく、しかもトンネル軸線方向に移動自在となるように可撓性搬送レール5を吊持することができる。
【0060】
ちなみに、吊持用ロッド66の頭部は、該吊持用ロッドが吊持板61,61に形成されたガイド孔65,65から抜けないように適宜構成しておく。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係るシールドトンネル用テルハクレーン1によれば、シールド側搬送レール4と抗口側搬送レール6との間に可撓性搬送レール5を介在させてあるため、トンネルの湾曲部では、シールド7とスクリュー受け台車12との相対位置の変動に追従するようにシールド7と同じ方向にシールド側搬送レール4が回転するとともに、スクリュー受け台車12と運転台車14との相対位置の変動に追従するようにスクリュー受け台車12と同じ方向に抗口側搬送レール6が回転する。
【0062】
そのため、搬送レール2が長大になっても、テルハクレーン1をトンネルの湾曲部に設置することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態に係るシールドトンネル用テルハクレーン1によれば、搬送レール湾曲機構22によって、ジョイント部材等の相互回転を拘束することなく、しかもトンネル軸線方向に移動自在となるように可撓性搬送レール5を吊持することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態に係るシールドトンネル用テルハクレーン1によれば、土圧式シールドに適用するようにしたので、二次スクリューコンベア9と搬送レール2との干渉を未然に防止しながら、長大なテルハクレーンをトンネル内に設置することが可能となる。
【0065】
本実施形態では特に言及しなかったが、シールド側搬送レール4の連結部51、複数のジョイント部材52a,52b,52c及び坑口側搬送レール6の連結部54が相互に連結される箇所での折れ曲がり角度の上限値を資材搬送用ホイスト3が走行可能な角度以下、例えば3゜とするとともに、ジョイント部材52a,52b,52cの個数を、本実施形態では便宜上3つであるが、これらの数をトンネルの曲率及び折れ曲がり角度の上限値に応じて定めるようにしたならば、トンネルのカーブの曲率に合わせて可撓性搬送レール5を自在に構成することが可能となり、ひいては、どのような曲率のトンネルであっても、テルハクレーン1の搬送ビーム2を設置することが可能となる。
【0066】
また、本実施形態では特に説明しなかったが、テルハクレーン1を用いてセグメントや資材をシールド7のテール部近傍に搬送する手順は従来と同様であり、例えばセグメント搬送台車がスクリュー受け台車12の下方に停車しているときは、資材搬送用ホイスト3をその停車位置まで移動し、しかる後、資材搬送用ホイスト3を作動させてセグメントを把持上昇させ、かかる状態でシールド側搬送レール4に沿って資材搬送用ホイスト3を走行させてシールド7のテール部近傍まで搬送し、次いで、セグメントをいったん降ろした後、別のホイストで吊り直し、エレクターの把持部の直下まで送り込む。
【0067】
一方、セグメント搬送台車や資材台車がスクリュー受け台車12の下方に停車している場合に別のセグメント搬送台車が坑口から送られてきたときは、運転台車14の位置でこれを停車させ、以下、同様にして資材搬送用ホイスト3でセグメントを搬送する。なお、このとき、資材搬送用ホイスト3は、可撓性湾曲レール5を通過することになるが、走行には支障はない。
【0068】
搬送対象がセグメントではなく、資材である場合にも同様な手順で搬送することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本実施形態に係るシールドトンネル用テルハクレーンとその周辺を示した平面図。
【図2】本実施形態に係るシールドトンネル用テルハクレーンとその周辺を示した側面図。
【図3】A−A線に沿う断面図。
【図4】B−B線に沿う断面図。
【図5】可撓性搬送レール5の分解斜視図。
【図6】搬送レール湾曲機構22の斜視図。
【図7】シールド7が湾曲部を掘削している様子を示した図。
【図8】搬送レール湾曲機構22の作用を説明した図。
【符号の説明】
【0070】
1 シールドトンネル用テルハクレーン
2 搬送レール
3 資材搬送用ホイスト
4 シールド側搬送レール
5 可撓性搬送レール
6 抗口側搬送レール
7 シールド
11,11 第1の牽引アーム
12 スクリュー受け台車(第1の移動架台)
13a,13b 第2の牽引アーム
14 運転台車(第2の移動架台)
52a,52b,52c ジョイント部材
22 搬送レール湾曲機構
51,54 連結部
61,61 吊持板
65,65 ガイド孔
66 吊持用ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送レールと該搬送レールに沿って走行自在となるように取り付けられた資材搬送用ホイストとからなるシールドトンネル用テルハクレーンにおいて、
前記搬送レールを、先端にてシールドにピン接合されたシールド側搬送レールと、該シールド側搬送レールの後端に設けられた連結部に先端がピン接合された可撓性搬送レールと、先端に設けられた連結部が前記可撓性搬送レールの後端にピン接合された抗口側搬送レールとから構成し、前記可撓性レールを第1の牽引アームを介して前記シールドに連結された第1の移動架台からトンネル軸線方向に移動自在となるように吊持するとともに、前記抗口側搬送レールの後端近傍を第2の牽引アームを介して前記第1の移動架台に連結された第2の移動架台にトンネル軸線方向に移動自在となるようにかつ回動自在となるように連結したことを特徴とするシールドトンネル用テルハクレーン。
【請求項2】
前記可撓性搬送レールを相互に回動自在に連結された複数のジョイント部材で構成するとともに搬送レール湾曲機構を介して前記第1の移動架台から吊持し、該搬送レール湾曲機構を、所定の幅だけ離間させるとともに前記第1の移動架台の移動軸線と平行に配置された一対の吊持板と、前記可撓性搬送レールの連結部、前記複数のジョイント部材及び前記抗口側搬送レールの連結部のそれぞれの頂部に突設された吊持部に形成されたロッド孔に挿通される複数の吊持用ロッドとで構成し、該各吊持用ロッドの各端を前記各一対の吊持板に形成された長孔状のガイド孔にそれぞれ挿通するとともに、前記各吊持用ロッドの長さを、それらの両端に設けてある頭部と前記一対の吊持板の外面との間にクリアランスが形成されるように設定した請求項1記載のシールドトンネル用テルハクレーン。
【請求項3】
前記シールド側搬送レールの連結部、前記複数のジョイント部材及び前記坑口側搬送レールの連結部が相互に連結される箇所での折れ曲がり角度の上限値を前記資材搬送用ホイストが走行可能な角度以下とするとともに、前記ジョイント部材の個数を前記トンネルの曲率及び前記折れ曲がり角度の上限値に応じて定めた請求項2記載のシールドトンネル用テルハクレーン。
【請求項4】
前記シールドを土圧式シールドとした請求項1乃至請求項3のいずれか一記載のシールドトンネル用テルハクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−9403(P2006−9403A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187784(P2004−187784)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】