説明

シールド掘進機の破砕装置

【課題】通常時は、排土管から掘削土を排出する所期の排土能力を確保し、排土口の前側の取込スペースに塊状の掘削物が取り込まれた場合、或いは、閉塞した場合に、その掘削物を破砕し或いは移動させて除去し、排土管等の解体作業や掘削物の除去作業を含む非常に煩雑な作業を行うことなく、排土管の閉塞を解除又は予防できる、シールド掘進機の破砕装置を提供する。
【解決手段】 排土管80の前端側の排土口80aを隔壁7よりも後方に位置させ、排土口80aとチャンバ6とを連通させるように隔壁7から後方へ凹む取込スペース90を形成する筒状部材91を設け、筒状部材90に2対の油圧ジャッキ95を取り付けて、これら油圧ジャッキ95のロッド95bにより取込スペース90内の塊状の掘削物を破砕可能に相対向状に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機のチャンバと排土管の前端側の排土口との間に取込スペースを形成し、その取込スペース内の塊状の掘削物を破砕可能な装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド掘進機は、胴体と、胴体を推進させる複数のシールドジャッキと、胴体の前端側に設けられたカッターヘッドと、カッターヘッドで掘削された掘削土を収容するチャンバと、チャンバの後端を仕切る隔壁と、チャンバ内の掘削土を排出する排土管を有する排土装置とを備え、排土管の前端部が隔壁に接続され、排土管の前端側の排土口がチャンバに臨んでいる。
【0003】
ここで、泥土圧(土圧)式シールド掘進機(例えば、特許文献1参照)では、排土装置として、排土管の内部に回転自在に配設されたスクリュウオーガを有するスクリュウコンベアを採用する場合が多く、また、泥水式シールド掘進機(例えば、特許文献2参照)では、泥水圧送方式の排土装置が採用される。
【0004】
ところで、シールド掘進機では、巨大な礫、玉石、岩、木杭等を含む地山を掘削した際、これら礫、玉石、岩,木杭等が十分に切削、破砕されずに、排土装置で排出不可能な塊状の掘削物としてチャンバ内に取り込まれ、この塊状の掘削物が排土管を閉塞する場合がある。この場合、排土装置による排土能力が低下する、或いは、排土不可能になるため、掘削作業を中断し、排土装置の解体作業や掘削物の除去作業を含む非常に煩雑な作業を行う必要があり、非能率的である。そこで、排土管を閉塞する虞がある塊状の掘削物を破砕する装置が実用に供されている。
【0005】
特許文献1のシールド掘進機では、排土管の前端側の排土口が隔壁よりも後方に位置し、排土口の前側にハウジングが配設され、ハウジングの前端部が隔壁に接続されて、ハウジングの内部がチャンバに臨み、排土管の前端部がハウジングの後壁部に接続されて、排土口がハウジングの内部に臨んでいる。ハウジングの内部に1対のロールが左右に隙間を空けて並設され、これらロールを回転させる油圧モータとギヤが設けられている。1対のロール間の隙間は排土口の前側に位置し、油圧モータとギヤにより1対のロールが回転されて、これらロール間を通る塊状の掘削物を排土装置で排出可能な大きさに破砕する。
【0006】
特許文献2のシールド掘進機では、排土管の前端部が隔壁にダイレクトに接続されて、排土管の前端部分に排泥管内打撃装置が立設されている。この排泥管内打撃装置は、ビットが下端部に交換可能に装着されたロッドと、ロッドを上下動自在にガイドする内筒と、内筒を上下動自在にガイドする外筒と、内筒に対してロッドを上下動させる油圧モータ及びカムと、外筒に対してロッド及び内筒及び油圧モータ及びカム等を一体的に上下動させる油圧ジャッキ等を備えている。
【0007】
この排泥管内打撃装置は、油圧ジャッキにより、ロッドが排土管の内部に突出した位置と外部へ退入した位置とに亙って内筒及び油圧モータ及びカム等と共に上下動され、ロッドが排土管の内部に突出した状態で、油圧モータ及びカムにより、ロッドが毎分100回程度で上下に往復駆動されて、塊状の掘削物を打撃し破砕する。また、油圧ジャッキによっても、ロッドが内筒及び油圧モータ及びカム等と共に毎分60回程度で上下に往復駆動されて、塊状の掘削物を打撃し破砕可能である旨が記載されている。
【0008】
特許文献2のメイン実施例(図2)では、排泥管内打撃装置が鉛直姿勢で配置されて、ロッドが排土管の内壁に向かって延び、排土管に入り込んだ塊状の掘削物を破砕可能に構成され、変形例(図6)では、排泥管内打撃装置が傾斜姿勢で配置されて、ロッドが排土口に向かって延び、排土口に詰まった塊状の掘削物を破砕可能に構成されている。
【0009】
【特許文献1】特開昭59−206598号公報
【特許文献2】特開2002−168091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のシールド掘進機では、1対のロールは大型であり、これらロールの全体が掘削土の排出通路であるケーシングの内部に配設されるため、しかも、1対のロール間の隙間も狭く、これらロールが排土管の排土口の前側を大きく塞いだ状態になるため、そして、掘削物を破砕する必要がない場合でも同状態に維持されるため、排土装置による排土能力が低下する虞がある。
【0011】
また、大型の1対のロールと、これらロールを収容する大型のケーシングが必要になるため、大型構造になること、大きな設置スペースが必要になること、1対のロールを回転させる油圧モータとギヤが別途必要になるため、複雑な構造になること、既存の排土装置への適用が難しいこと、等の問題がある。
【0012】
特許文献2の排泥管内打撃装置では、油圧モータや油圧ジャッキにより、ロッドが上下に往復駆動されて塊状の掘削物を打撃するが、それだけでは掘削物を確実に破砕できない虞がある。メイン実施例(図2)の装置では、ロッドが塊状の掘削物を排土管との間に挟み込んで破砕する可能性があるが、その際、排土管が掘削物を介してロッドから大きな力を受けて損傷する虞があり、また、排土口に詰まった塊状の掘削物については対処できない。変形例(図6)の装置では、排土口に詰まった塊状の掘削物を打撃するが、やはり、それだけでは掘削物を確実に破砕することは難しい。
【0013】
また、この排泥管内打撃装置では、既存の排土装置への適用は容易であるものの、内筒、外筒、油圧モータ、カム、油圧ジャッキ等を備えるため、非常に複雑な構造になること、上下方向に長い大型構造になること、コンパクトに設置できないこと、ロッドを比較的高速で上下に往復駆動しなければならないため、泥土圧式シールド掘進機への適用が困難であること、等の問題がある。
【0014】
本発明の目的は、シールド掘進機の破砕装置において、通常時は、排土管から掘削土を排出する所期の排土能力を確保し、排土口の前側の取込スペースに塊状の掘削物が取り込まれた場合に、その掘削物を破砕し或いは移動させて除去し、排土管等の解体作業や掘削物の除去作業を含む非常に煩雑な作業を行うことなく、排土管の閉塞を解除又は予防すること、トンネルの構築を能率良く行えるようにすること、構造を簡単に且つ小型にして設置スペースを小さくすること、既存の排土管への適用を容易にすること、泥土圧式シールド掘進機と泥水式シールド掘進機の何れにも適用可能にすること、等々である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1のシールド掘進機の破砕装置は、胴体と、胴体の前端側に設けられたカッターヘッドと、カッターヘッドで掘削された掘削土を収容するチャンバと、チャンバの後端を仕切る隔壁と、隔壁に前端部が接続されチャンバ内の掘削土を排出する排土管とを備えたシールド掘進機において、前記排土管の前端側の排土口を隔壁よりも後方に位置させ、この排土口とチャンバとを連通させるように隔壁から後方へ凹む取込スペースを形成する筒状部材を設け、前記筒状部材又はこれの付近の隔壁に取り付けられた少なくとも1対の油圧ジャッキであって、これら油圧ジャッキのロッドにより取込スペース内の塊状の掘削物を破砕可能に相対向状に配置された少なくとも1対の油圧ジャッキを設けたものである。
【0016】
この破砕装置では、通常時は、少なくとも1対の油圧ジャッキのロッドが排土口への掘削土の流入の妨げにならないように縮んだ状態に保持されて、排土口の前側が大きく開放され、排土管から掘削土を排出する所期の排土能力が確保される。取込スペースに塊状の掘削物が取り込まれた場合、少なくとも1対の油圧ジャッキのロッドが伸作動され、これらロッドにより取込スペース内の塊状の掘削物が強力に挟み込まれて破砕され、破砕された掘削物は排土管により排出され、或いは、これらロッドにより塊状の掘削物が押動されて取込スペース外へ移動し、排土口の前側から塊状の掘削物が除去され、排土管の閉塞が解除又は予防される。その後、少なくとも1対の油圧ジャッキのロッドが縮作動されて、再度、排土口の前側が大きく開放され所期の排土能力が確保される。
【0017】
ここで、請求項1の発明に次の構成を採用可能である。
前記1対の油圧ジャッキのロッドが伸びた状態では、これらロッドの先端部が排土口の前側において接近対向するとともに、1対の油圧ジャッキのロッドが縮んだ状態では、これらロッドが排土口への掘削土の流入の妨げにならない側方へ退くように構成される(請求項2)。
【0018】
前記1対の油圧ジャッキのシリンダ本体を取込スペースの外側に配置するとともに、ロッドを筒状部材を貫通させて取込スペースに臨ませる(請求項3)。前記少なくとも1対の油圧ジャッキとして、左右1対の油圧ジャッキを上下に2組設ける(請求項4)。前記筒状部材は、前方広がりの左右1対のテーパ側壁及びテーパ底壁を有する(請求項5)。
【0019】
前記1対の油圧ジャッキのロッドの先端部に交換可能に装着された破砕部材を設ける(請求項6)。前記シールド掘進機は、排土管とこの排土管の内部に回転自在に配設されたスクリュウオーガとを有するスクリュウコンベアを備え、前記スクリュウオーガの前端部に装着されたカッター部材を設ける(請求項7)。
【発明の効果】
【0020】
請求項1のシールド掘進機の破砕装置によれば、排土管の前端側の排土口を隔壁よりも後方に位置させ、この排土口とチャンバとを連通させるように隔壁から後方へ凹む取込スペースを形成する筒状部材を設け、筒状部材又はこれの付近の隔壁に少なくとも1対の油圧ジャッキを取り付け、これら油圧ジャッキのロッドにより取込スペース内の塊状の掘削物を破砕可能に相対向状に配置したので、通常時は、少なくとも1対の油圧ジャッキのロッドが排土口への掘削土の流入の妨げにならないように、これらロッドを縮めた状態に保持して、排土口の前側を大きく開放し、排土管から掘削土を排出する所期の排土能力を確保でき、取込スペースに塊状の掘削物が取り込まれた場合、少なくとも1対の油圧ジャッキのロッドを伸作動させて、これらロッドにより取込スペース内の塊状の掘削物を強力に挟み込んで破砕して排土管により排出し、或いは、これらロッドにより塊状の掘削物を押動して取込スペース外へ移動させ、こうして、排土口の前側から塊状の掘削物を除去し、排土管の閉塞による解体作業や掘削物の除去作業を含む非常に煩雑な作業を行うことなく、排土管の閉塞を解除又は予防でき、トンネルの構築を能率良く行うことができる。
【0021】
ここで、排土口を隔壁よりも後方に位置させ、筒状部材により排土口とチャンバとを連通させるように隔壁から後方へ凹む取込スペースを形成することで、排土管で排出不可能な塊状の掘削物を取込スペースに滞在(筒状部材で保持)させて破砕し易くし、油圧ジャッキを機内側に取り付けて、油圧ジャッキがチャンバ側へ露出して掘削装置と干渉したり損傷しないようにして、油圧ジャッキの上記機能を発揮させることができる。しかも、筒状部材と少なくとも1対の油圧ジャッキを設けて構成できる、この破砕装置については、構造を簡単に且つ小型にし、コンパクトに配置し、設置スペースを小さくし、既存の排土管への適用を容易にし、少なくとも1対の油圧ジャッキで塊状の掘削物を挟み込んで破砕するので、泥土圧式シールド掘進機と泥水式シールド掘進機の何れにも適用可能になる。
【0022】
請求項2のシールド掘進機の破砕装置によれば、1対の油圧ジャッキのロッドが伸びた状態では、これらロッドの先端部が排土口の前側において接近対向するので、取込スペース内の塊状の掘削物を確実に破砕し、また、1対の油圧ジャッキのロッドが縮んだ状態では、これらロッドが排土口への掘削土の流入の妨げにならない側方へ退くので、排土口の前側を大きく開放して、排土管から掘削土を排出する所期の排土能力を確実に確保することができる。
【0023】
請求項3のシールド掘進機の破砕装置によれば、1対の油圧ジャッキのシリンダ本体を取込スペースの外側に配置するとともに、ロッドを筒状部材を貫通させて取込スペースに臨ませたので、シリンダ本体を筒状部材又はこれの付近の隔壁に取り付け、ロッドにより取込スペース内の塊状の掘削物を破砕可能に、また、ロッドを縮めた状態では排土口への土砂流入の妨げにならないように、油圧ジャッキを配置できる。
【0024】
請求項4のシールド掘進機の破砕装置によれば、少なくとも1対の油圧ジャッキとして、左右1対の油圧ジャッキを上下に2組設けたので、通常、排土管の先端部は隔壁の下端部分に接続されるが、これに対応する位置に取込スペース(筒状部材)を設け、左右1対の上下2組の合計4つの油圧ジャッキを筒状部材又はこれの付近の隔壁に適切な配置で取り付けて、取込スペース内の塊状の掘削物を破砕する機能を高めることができる。
【0025】
請求項5のシールド掘進機の破砕装置によれば、筒状部材は、前方広がりの左右1対のテーパ側壁及びテーパ底壁を有するので、筒状部材のチャンバ側の開口を大きくして、チャンバから取込スペースへの掘削土の流入を促進して、その掘削土を排土口へ確実に案内することができる。
【0026】
請求項6のシールド掘進機の破砕装置によれば、1対の油圧ジャッキのロッドの先端部に交換可能に装着された破砕部材を設けたので、塊状の掘削物を破砕する機能を高めるとともに、摩耗した破砕部材を新たな破砕部材に交換でき、また、破砕対象となる塊状の掘削物の種類(礫、玉石、岩,木杭)に適した種類の破砕部材を設けることができるので、高い破砕機能を維持できる。
【0027】
請求項7のシールド掘進機の破砕装置によれば、シールド掘進機は、排土管とこの排土管の内部に回転自在に配設されたスクリュウオーガとを有するスクリュウコンベアを備え、スクリュウオーガの前端部に装着されたカッター部材を設けたので、油圧ジャッキで破砕できなかった取込スペース内の塊状の掘削物をスクリュウオーガの前端部のカッター部材で破砕し、排土管で排出不可能な塊状の掘削物の排土管への侵入を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
シールド掘進機は、胴体、胴体の前端側に設けられたカッターヘッド、カッターヘッドで掘削された掘削土を収容するチャンバ、チャンバの後端を仕切る隔壁、隔壁に前端部が接続されチャンバ内の掘削土を排出する排土管を備え、本発明のシールド掘進機の破砕装置は、排土管の前端側の排土口を隔壁よりも後方に位置させ、この排土口とチャンバとを連通させるように隔壁から後方へ凹む取込スペースを形成する筒状部材を設け、筒状部材又はこれの付近の隔壁に取り付けられた少なくとも1対の油圧ジャッキであって、これら油圧ジャッキのロッドにより取込スペース内の塊状の掘削物を破砕可能に相対向状に配置された少なくとも1対の油圧ジャッキを設けたものである。
【実施例】
【0029】
図1〜図3に示すように、シールド掘進機1は、胴体2、胴体2を推進させる複数のシールドジャッキ3、胴体2を中折れさせる複数の中折れジャッキ4、胴体2の前端側に設けられた掘削装置5、掘削装置5で掘削された掘削土を収容するチャンバ6、チャンバ6の後端を仕切る隔壁7、チャンバ6内の掘削土を攪拌する攪拌装置8、チャンバ6内の掘削土を排出する左右1対の排土管80を有する排土装置9、塊状の掘削物を破砕可能な左右1対の破砕装置10、掘削装置5で掘削形成されたトンネルTの内面にセグメントSを組付けるエレクタ装置11、エレクタ装置11により組付けられたセグメントとトンネルTの内面との間にモルタルを注入する裏込注入装置12等を備えている。
【0030】
左右1対の排土装置9は同構造であり、図1〜図7に示すように、各排土装置9は、排土管80、排土管80の内部に回転自在に配設されたスクリュウオーガ81を有し、排土管80とスクリュウオーガ81等でスクリュウコンベア9Aが構成されている。排土管80の前端側の排土口80aが、隔壁7の下部よりも後方に位置し、対応する破砕装置10の筒状部材91により形成された取込スペース90を介してチャンバ6に連通し、スクリュウオーガ81の先端部には破砕装置10のカッター部材97が装着され、スクリュウオーガ81は、その先端部が排土管80の排土口80aよりも少し前方へ突出している。
【0031】
次に、破砕装置10について詳細に説明する。
左右1対の破砕装置10は同構造であり、図1〜図7に示すように、各破砕装置10は、排土管80の前端側の排土口80aを隔壁7よりも後方に位置させ、この排土口80aとチャンバ6とを連通させるように隔壁7から後方へ凹む取込スペース90を形成する筒状部材91を設け、この筒状部材91に取り付けられた左右2対の油圧ジャッキ95であって、これら油圧ジャッキ95のロッド95bにより取込スペース90内の塊状の掘削物を破砕可能に相対向状に配置された左右2対の油圧ジャッキ95を設けて構成している。
【0032】
筒状部材91は、前方広がりの上壁91a及び左右1対のテーパ側壁91b及びテーパ底壁91cと後方下がり傾斜状の後壁91dとを有する角筒状に形成され、1対の補強側板91eと補強後板91fを介して胴体2に連結支持されるとともに、上壁91aとテーパ側壁91bとテーパ底壁91cの前端部が隔壁7と胴体2の矩形開口45の周縁部分に結合されて、取込スペース90がチャンバ6に臨み、後壁91dに排土管80の前端部が内嵌状に結合されて、排土口80aが取込スペース90に臨んでいる。
【0033】
左右2対の油圧ジャッキ95として、左右1対の油圧ジャッキ95が上下に2組設けられ、上側の左右1対の油圧ジャッキ95は排土口80aの上半部に対応する高さ位置に配置され、下側の左右1対の油圧ジャッキ95は排土口80aの下半部に対応する高さ位置に配置されている。
【0034】
各油圧ジャッキ95は、シリンダ本体95aと、ロッド95bと、ガイド部材95cとを有し、ガイド部材95cはシリンダ本体95aのロッド側端部に固定され、このガイド部材95cにロッド95bがシール部材95dを介して伸縮自在にガイドされている。シリンダ本体95aが取込スペース90の前部の側方外側に配置され、ガイド部材95cが筒状部材91のテーパ側壁91bと補強側板91eとに内嵌状に結合され、ロッド95bがガイド部材95cを介して筒状部材91(テーパ側壁91b)を貫通して取込スペース90に突出状に臨んでいる。
【0035】
各油圧ジャッキ95は、復動型の油圧シリンダで構成され、油圧供給ユニット(図示略)により伸縮され、図6、図7に鎖線で示すように、左右2対の油圧ジャッキ95のロッド95bが伸びた状態では、これらロッド95bの先端部が排土口80aの前側において接近対向するとともに、図6、図7に実線で示すように、左右2対の油圧ジャッキ95のロッド95bが縮んだ状態では、これらロッド95bが排土口80aへの掘削土の流入の妨げにならない側方へ退くように構成されている。
【0036】
各破砕装置10には、2対の油圧ジャッキ95のロッド95bの先端部に交換可能に装着された破砕部材96が設けられ、破砕対象となる塊状の掘削物の種類(礫、玉石、岩,木杭)に適した複数種類の破砕部材96が用意されている。また、スクリュウオーガ81の前端部に交換可能に装着されたカッター部材97が設けられている。
【0037】
ここで、筒状部材90のテーパ側壁91bとテーパ底壁91cには、複数の注入口92が形成され、これら注入口92に注入管93が接続され、これら注入口92から洗浄水を取込スペース90に噴射して、取込スペース90やスクリュウオーガ81の先端部分を洗浄できる。
【0038】
次に、シールド掘進機1の作用について説明する。
このシールド掘進機1では、胴体2が複数のシールドジャッキ3により推進され、掘削装置5により胴体2の前方の地山が掘削されて、掘削土がチャンバ6に回収され、1対の排土装置9により排出される。こうしてトンネルTが掘削形成されると共に、順次、エレクタ装置11により複数のセグメントSがリング状に組付けられていく。
【0039】
上記のようにトンネルTを構築していく通常時では、1対の破砕装置10において、夫々、左右2対の油圧ジャッキ95のロッド95bが、排土口80aへの掘削土の流入の妨げにならないように縮んだ状態(図6、図7に鎖線で示す状態)に保持されて、1対の排土装置9において、夫々、排土口80aの前側が大きく開放され、排土管80から掘削土を排出する所期の排土能力が確保される。
【0040】
ここで、巨大な礫、玉石、岩、木杭等を含む地山を掘削した際、これら礫、玉石、岩,木杭等が十分に切削、破砕されずに、排土装置9で排出不可能な塊状の掘削物としてチャンバ6内に取り込まれ、この塊状の掘削物が取込スペース90に取り込まれる或いは閉塞する場合がある。この状態になったことは、排土管80から排出される掘削土の量が少なくなることや、土圧計43で検出された圧力が上昇することで検知することができる。
【0041】
そこで、破砕装置10において、左右2対の油圧ジャッキ95のロッド95bが伸作動され、これらロッド95bにより取込スペース90内の塊状の掘削物が強力に挟み込まれて破砕され、破砕された掘削物は排土管80により排出され、或いは、これらロッド95bにより塊状の掘削物が押動されて取込スペース90外へ移動し、排土口80aの前側から塊状の掘削物が除去され、その後、左右1対の油圧ジャッキ95のロッド95bが縮作動され、排土口80aの前側が大きく開放され所期の排土能力が確保される。
【0042】
以上説明したシールド掘進機1の破砕装置10によれば、排土管80の前端側の排土口80aを隔壁7よりも後方に位置させ、この排土口80aとチャンバ6とを連通させるように隔壁7から後方へ凹む取込スペース90を形成する筒状部材91を設け、筒状部材91に左右1対の油圧ジャッキ95を取り付け、これら油圧ジャッキ95のロッド95bにより取込スペース90内の塊状の掘削物を破砕可能に相対向状に配置した。
【0043】
従って、通常時は、左右1対の油圧ジャッキ95のロッド95bが排土口80aへの掘削土の流入の妨げにならないように、これらロッド95bを縮めた状態に保持して、排土口80aの前側を大きく開放し、排土管80から掘削土を排出する所期の排土能力を確保でき、取込スペース90に塊状の掘削物が取り込まれた場合、左右1対の油圧ジャッキ95のロッド95bを伸作動させて、これらロッド95bにより取込スペース70内の塊状の掘削物を強力に挟み込んで破砕して排土管80により排出し、或いは、これらロッド95bにより塊状の掘削物を押動して取込スペース90外へ移動させ、こうして、排土口80aの前側から塊状の掘削物を除去し、排土管80の閉塞による解体作業や掘削物の除去作業を含む非常に煩雑な作業を行うことなく、排土管80の閉塞を解除又は予防でき、トンネルTの構築を能率良く行うことができる。
【0044】
ここで、排土口80aを隔壁7よりも後方に位置させ、筒状部材91により排土口80aとチャンバ6とを連通させるように隔壁7から後方へ凹む取込スペース90を形成することで、排土管80で排出不可能な塊状の掘削物を取込スペース90に滞在(筒状部材91で保持)させて破砕し易くし、油圧ジャッキ95を機内側に取り付けて、油圧ジャッキ95がチャンバ6側へ露出して掘削装置5と干渉したり損傷しないようにして、油圧ジャッキ95の上記機能を発揮させることができる。しかも、筒状部材91と左右1対の油圧ジャッキ95を設けて構成できる、この破砕装置10については、構造を簡単に且つ小型にし、コンパクトに配置し、設置スペースを小さくし、既存の排土管への適用を容易にし、左右1対油圧ジャッキ95で塊状の掘削物を挟み込んで破砕するので、泥土圧式シールド掘進機と泥水式シールド掘進機の何れにも適用可能になる。
【0045】
2対の油圧ジャッキ95のロッド95bが伸びた状態では、これらロッド95bの先端部が排土口80aの前側において接近対向するので、取込スペース90内の塊状の掘削物を確実に破砕し、また、1対の油圧ジャッキ95のロッド95bが縮んだ状態では、これらロッド95bが排土口80aへの掘削土の流入の妨げにならない側方へ退くので、排土口80aの前側を大きく開放して、排土管80から掘削土を排出する所期の排土能力を確実に確保することができる。
【0046】
2対の油圧ジャッキ95のシリンダ本体95aを取込スペース90の外側に配置するとともに、ロッド95bを筒状部材91を貫通させて取込スペース90に臨ませたので、シリンダ本体95aを筒状部材91に取り付け、ロッド95bにより取込スペース90内の塊状の掘削物を破砕可能に、油圧ジャッキ95を配置できる。
【0047】
2対の油圧ジャッキ95として、左右1対の油圧ジャッキ95を上下に2組設けたので、排土管80の先端部は隔壁7の下端部分に接続されるが、これに対応する位置に取込スペース90(筒状部材91)を設け、左右1対の上下2組の合計4つの油圧ジャッキ95を筒状部材91に適当な配置で取り付けて、取込スペース90内の塊状の掘削物を破砕する機能を高めることができる。
【0048】
筒状部材91は、前方広がりの左右1対のテーパ側壁91b及びテーパ底壁91cを有するので、筒状部材90のチャンバ6側(前側)の矩形開口45を大きくして、チャンバ6から取込スペース90への掘削土の流入を促進して、その掘削土を排土口80aへ確実に案内することができる。
【0049】
2対の油圧ジャッキ95のロッド95bの先端部に交換可能に装着された破砕部材96を設けたので、塊状の掘削物を破砕する機能を高めるとともに、摩耗した破砕部材96を新たな破砕部材96に交換でき、また、破砕対象となる塊状の掘削物の種類(礫、玉石、岩,木杭)に適した種類の破砕部材96を設けることができるので、高い破砕機能を維持できる。
【0050】
シールド掘進機1は、排土管80とこの排土管80の内部に回転自在に配設されたスクリュウオーガ81とを有するスクリュウコンベア9Aを備え、スクリュウオーガ81の前端部に交換可能に装着されたカッター部材97を設けたので、油圧ジャッキ95で破砕できなかった取込スペース90内の塊状の掘削物をスクリュウオーガ81の前端部のカッター部材97で破砕し、排土管80で排出不可能な塊状の掘削物の排土管80への侵入を防止でき、また、摩耗したカッター部材97を新たなカッター部材97に交換でき、また、破砕対象となる塊状の掘削物の種類(礫、玉石、岩,木杭)に適した種類のカッター部材97を設けることができるので、高い破砕機能を維持できる。
【0051】
尚、前記破砕装置10を次のように変更してもよい。
1]左右2対の油圧ジャッキ95の代わりに、左右1対の油圧ジャッキ95、或いは、左右3対以上の油圧ジャッキ95を設けてもよい。前記後者の場合、左右1対の油圧ジャッキ95を上下に複数組設け、前後に複数組設けてもよい。
2]カッター部材87を省略してもよい。
【0052】
3]図8に示すように、各油圧ジャッキ95のロッド95bの先端部に設けた破砕部材96を省略し、2対の油圧ジャッキ95に対して、大型の左右1対の破砕部材98を設けてもよい。この場合、各破砕部材98は、左右各側の上下2つの油圧ジャッキ95のロッド95bに連結され、これにより、取込スペース90内の塊状の掘削物をより確実に挟み込んで破砕することが可能になる。
【0053】
4]図9に示すように、油圧ジャッキ95を筒状部材91の付近の隔壁7に取り付けてもよい。この場合、油圧ジャッキ95のシリンダ本体95aをブラケット99により隔壁7に固定することになる。
5]筒状部材90を円筒状に形成し、更に、前方広がりのテーパ筒状に形成してもよい。この場合、隔壁7に矩形開口45の代わりに円形開口が形成され、この円形開口の周縁部分に筒状部材90の前端部が結合される。
【0054】
6]取込スペース90に塊状の掘削物が取り込まれたことを検知する掘削物検知手段を設けても良い。この掘削物検知手段としては、塊状の掘削物をレーダ等により直接検出するセンサを採用してもよい。
7]その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前記開示事項以外の種々の変更を付加して実施可能であり、また、本実施例の泥土圧式シールド掘進機以外に、泥水式シールド掘進機等、種々のシールド掘進機に本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例に係るシールド掘進機の縦断面図である。
【図2】シールド掘進機の正面図である。
【図3】左半部が図1のA−A線断面図、右半部が図1のB−B線断面図である。
【図4】排土装置(使用状態)の要部と破砕装置の縦断面図である。
【図5】排土装置(スライド状態)の要部と破砕装置の縦断面図である。
【図6】破砕装置の正面図である。
【図7】図6のC−C線断面図である。
【図8】変更例に係る破砕装置の正面図である。
【図9】別の変更例に係る破砕装置の断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 シールド掘進機
2 胴体
6 チャンバ
7 隔壁
9A スクリュウコンベア
10 破砕装置
62 カッターヘッド
80 排土管
81 スクリュウオーガ
90 取込スペース
91 筒状部材
91b テーパ側壁
91c テーパ底壁
95 油圧ジャッキ
95a シリンダ本体
95b ロッド
96,98 破砕部材
97 カッター部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体と、胴体の前端側に設けられたカッターヘッドと、カッターヘッドで掘削された掘削土を収容するチャンバと、チャンバの後端を仕切る隔壁と、隔壁に前端部が接続されチャンバ内の掘削土を排出する排土管とを備えたシールド掘進機において、
前記排土管の前端側の排土口を隔壁よりも後方に位置させ、この排土口とチャンバとを連通させるように隔壁から後方へ凹む取込スペースを形成する筒状部材を設け、
前記筒状部材又はこれの付近の隔壁に取り付けられた少なくとも1対の油圧ジャッキであって、これら油圧ジャッキのロッドにより取込スペース内の塊状の掘削物を破砕可能に相対向状に配置された少なくとも1対の油圧ジャッキを設けたことを特徴とするシールド掘進機の破砕装置。
【請求項2】
前記1対の油圧ジャッキのロッドが伸びた状態では、これらロッドの先端部が排土口の前側において接近対向するとともに、1対の油圧ジャッキのロッドが縮んだ状態では、これらロッドが排土口への掘削土の流入の妨げにならない側方へ退くように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のシールド掘進機の破砕装置。
【請求項3】
前記1対の油圧ジャッキのシリンダ本体を取込スペースの外側に配置するとともに、ロッドを筒状部材を貫通させて取込スペースに臨ませたことを特徴とする請求項1又は2に記載のシールド掘進機の破砕装置。
【請求項4】
前記少なくとも1対の油圧ジャッキとして、左右1対の油圧ジャッキを上下に2組設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のシールド掘進機の破砕装置。
【請求項5】
前記筒状部材は、前方広がりの左右1対のテーパ側壁及びテーパ底壁を有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のシールド掘進機の破砕装置。
【請求項6】
前記1対の油圧ジャッキのロッドの先端部に交換可能に装着された破砕部材を設けたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のシールド掘進機の破砕装置。
【請求項7】
前記シールド掘進機は、排土管とこの排土管の内部に回転自在に配設されたスクリュウオーガとを有するスクリュウコンベアを備え、
前記スクリュウオーガの前端部に装着されたカッター部材を設けたことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のシールド掘進機の破砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−308931(P2007−308931A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137837(P2006−137837)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】