説明

シールド掘進機及びその解体方法

【課題】シールド掘進機が掘進完了位置に到達してから、地盤改良と並行して、カッター支持機構及びカッター駆動機構を取外して解体でき、この解体を簡単に確実に安全に行うことができ、シールド掘進機の解体に要する時間、つまりトンネル工事全体の工期を極力短縮できる、シールド掘進機及びその解体方法を提供する。
【解決手段】 カッター機構の後端部に可動隔壁26が設けられ、その外周側部分が前部環状部材3の固定隔壁25の前側に位置して、それらの間が環状シール12でシールされ、連結支持機構14により、シールド掘進機1の掘進動作時には、可動隔壁26の外周側部分と固定隔壁25とが連結解除されて、固定隔壁25に対して可動隔壁26が回転可能な状態に保持され、シールド掘進機1の解体時には、可動隔壁26の外周側部分と固定隔壁25とが連結されて、カッター機構5が前部環状部材3に固定支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機の解体時に、胴部材の内面に固着された前部環状部材にカッター機構を固定支持した状態で、カッター支持機構をカッター駆動機構と共に後側へ取外し可能に構成した、シールド掘進機及びその解体方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド掘進機は、胴部材と、胴部材の前端側に配設されたカッターヘッドを有するカッター機構と、胴部材の前端部分内側のチャンバの後端を仕切る隔壁と、カッター機構を回転可能に支持するカッター支持機構と、カッター機構を回転駆動するカッター駆動機構とを備え、その他、複数のシールドジャッキ、排土装置、エレクター、真円保持装置、後部作業デッキ等を備えている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
一般に、シールド掘進機において、カッター支持機構は、胴部材の内部に固定的に設けられた固定環状部材と、固定環状部材に回転自在に嵌合支持されてカッター機構の後端部が連結された可動リング部材とを有し、カッター駆動機構は、可動リング部材の後端部に連結されたリングギヤと、リングギヤに噛合する複数のピニオンと、複数のピニオンを夫々回転させる複数のモータとを有する。
【0004】
ところで、シールド掘進機が所定の掘進完了位置に到達すると、シールド掘進機を解体することになり、その内蔵部品については再利用できるが、このシールド掘進機で掘削されたトンネルと、他のシールド掘進機で掘削されたトンネルとを地中接続するような場合等、シールド掘進機を地中で解体する場合、チャンバ側から土水圧を受けている場合には、その土水圧を確実に受止めて、チャンバ内の土砂や泥水等が胴部材内の隔壁よりも後側に侵入しないようにして、内蔵部品を解体する必要がある。
【0005】
特許文献1のシールド掘進機では、固定環状部材が胴部材の内面に固着され、可動リング部材が固定環状部材に回転自在に内嵌されるとともに、固定環状部材の径方向内側に位置する内側固定環状部材に回転自在に外嵌されている。可動リング部材と固定環状部材間及び内側固定環状部材間が夫々環状シールでシールされ、カッターヘッドから後方へ延びる複数のビームの後端部が可動リング部材に連結されている。環状ホルダがその前端部と後端部を固定環状部材と胴部材に固着して設けられ、この環状ホルダに複数のモータが固定され、また、内側固定環状部材が連結支持されている。
【0006】
解体時には、環状ホルダを固定環状部材と内側固定環状部材と胴部材から分離し、また、リングギヤを可動リング部材から分離して、環状ホルダと共にカッター駆動機構を後側へ取外す。その際、環状ホルダがトンネルの内面に組付けられたセグメントと干渉しないように、環状ホルダの後端部外周側部分を分断して胴部材に残留させる。また、複数のシールドジャッキが環状ホルダの後端部外周側部分に貫通状に取付けられており、環状ホルダを後側へ取外す際、複数のシールドジャッキを中心側へ移動させて、環状ホルダと共に複数のシールドジャッキも取外す。
【0007】
特許文献2のシールド掘進機では、ガイド筒が胴部材の内面に固着され、軸駆動筒がガイド筒に後退可能に内嵌支持され、ガータリングが軸駆動筒の後端部に連結されて胴部材の内面に固着されている。隔壁が、ガイド筒及び軸駆動筒の前面部の固定隔壁と、この固定隔壁の内端側に位置する可動隔壁からなり、カッターヘッドから後方へ延びる軸部の後端部が可動隔壁に連結されている。固定環状部材が軸駆動筒の内部に固定的に設けられ、可動リング部材が固定環状部材に回転自在に外嵌されて可動隔壁に連結されている。
【0008】
解体時には、ガータリングを胴部材から分離して、軸駆動筒と共にカッター機構、カッター支持機構、カッター駆動機構を後退させる。その際、カッター機構において、カッターヘッドの外周側部分を分断して胴部材の前端側に残留させて、裏当て中蓋を前面部に予め取付けたカッターヘッドを後退させてガイド筒の前端部内に収容し、裏当て中蓋でガイド筒の前端を塞いで封止し、その後、軸駆動筒と共にカッター機構、カッター支持機構、カッター駆動機構をガイド筒から後側へ引抜いて取外す。
【0009】
【特許文献1】特開2007−9691号公報
【特許文献2】特開2007−92412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
シールド掘進機を地中で解体する場合、通常、チャンバ側から受ける土水圧を低下させ、チャンバ内の土砂や泥水等が胴部材内の隔壁よりも後側に侵入しないように、隔壁の前方において地盤改良材を注入し、チャンバ内の掘削土及びカッターヘッドの前方の地山を改良した後に、カッター支持機構やカッター駆動機構を取外して解体するが、この地盤改良が完了する迄には相当の時間を費やし、更に、その後、カッター支持機構やカッター駆動機構を解体するのにも相当の時間を要するので、シールド掘進機の解体に要する時間が非常に長くなり、トンネル工事全体の工期を短縮することが難しい。
【0011】
特許文献1のシールド掘進機では、環状ホルダと共にカッター駆動機構を後側へ取外す際、カッター支持機構でカッター機構を支持した状態を維持し、可動リング部材と固定環状部材間及び内側固定環状部材間を夫々シールした状態を維持する必要があるので、カッター支持機構を解体することはできず、前記地盤改良が完了してからカッター支持機構を解体することになるので、その分、シールド掘進機の解体に要する時間を短縮できない。
【0012】
また、環状ホルダを内側固定環状部材から分離し、リングギヤを可動リング部材から分離した状態のままでは、チャンバ側から受ける土水圧に耐え得るように、内側固定環状部材と可動リング部材の支持強度を確保することが難しく、そこで、環状ホルダを取外す前に、内側固定環状部材と可動リング部材を固定環状部材に対して連結支持する必要があるが、特許文献1には、その点の記載が皆無であり、もしそうした場合でも、環状ホルダと共にカッター駆動機構を取外すために必要な作業が多くなり煩雑になる。
【0013】
特許文献2のシールド掘進機では、軸駆動筒と共にカッター機構、カッター支持機構、カッター駆動機構を後退させる際、複数のシールドジャッキによりチャンバ側の土水圧を支承しながら行う必要があり、軸駆動筒、カッター機構、カッター支持機構、カッター駆動機構の後退を、チャンバ内に地盤改良材を充填し止水しつつ行うことができるが、そのチャンバ内を裏当て中蓋と共にカッターヘッドを後退させることになるので、カッターヘッドをガイド筒の前端部内に収容する負荷及び時間が大きくなる。
【0014】
また、ガイド筒の前端を塞ぐ裏当て中蓋については、当初、カッターヘッドに非閉塞状態で設けられ、使用時、チューブを膨らまして閉塞状態にするものであるが、チャンバ側の土水圧に耐え得るか否か疑問であり、ガイド筒から軸駆動筒等を引抜くと、ガイド筒内にチャンバ内の土砂や泥水が侵入してくる虞がある。これを回避するために、チャンバ内をモルタルで固めてから、ガイド筒から軸駆動筒等を引抜くようにすると、従来のシールド掘進機と同様に、結局、シールド掘進機の解体に要する時間が非常に長くなる。
【0015】
本発明の目的は、シールド掘進機が掘進完了位置に到達してから、地盤改良と並行して、カッター支持機構及びカッター駆動機構を取外して解体でき、この解体を簡単に確実に安全に行うことができ、シールド掘進機の解体に要する時間、つまりトンネル工事全体の工期を極力短縮できる、シールド掘進機及びその解体方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1のシールド掘進機は、胴部材と、胴部材の前端側に配設されたカッターヘッドを有するカッター機構と、胴部材の前端部分内側のチャンバの後端を仕切る隔壁とを備えたシールド掘進機において、前記胴部材の内面に外周部が固着され、前面部に前記隔壁の外周側部分を形成する固定隔壁を有する前部環状部材と、前記カッター機構の後端部に設けられ、外周側部分が固定隔壁の前側に位置して前記隔壁の中央側部分の少なくとも一部を形成する可動隔壁と、前記前部環状部材の内周部に内嵌状に後側へ取外し可能に装着され、カッター機構を可動隔壁を介して回転可能に支持するカッター支持機構と、前記カッター支持機構に装備され、カッター機構を可動隔壁を介して回転駆動するカッター駆動機構と、前記可動隔壁の外周側部分と固定隔壁との間をシールする環状シールと、前記シールド掘進機の掘進動作時には固定隔壁に対して可動隔壁を回転可能な状態に保持するとともに、シールド掘進機の解体時には可動隔壁の外周側部分と固定隔壁とを連結してカッター機構を前部環状部材に固定支持する連結支持機構とを備えたことを特徴とする。
【0017】
胴部材の前端部分内側のチャンバの後端を仕切る隔壁が、胴部材の内面に外周部が固着された前部環状部材の前面部の可動隔壁と、胴部材の前端側に配設されたカッターヘッドを有するカッター機構の後端部に設けられた可動隔壁とを有する。カッター支持機構とカッター駆動機構が可動隔壁の後側に設けられ、カッター支持機構にカッター駆動機構が装備され、カッター支持機構によりカッター機構が可動隔壁を介して回転可能に支持され、カッター駆動機構によりカッター機構が可動隔壁を介して回転駆動される。
【0018】
可動隔壁の外周側部分が固定隔壁の前側に位置して、環状シールにより可動隔壁の外周側部分と固定隔壁との間がシールされ、チャンバ内の土砂や泥水等が胴部材内のチャンバの後側に侵入しないように止水される。可動隔壁の外周側部分と固定隔壁とを連結・連結解除可能な連結支持機構が設けられ、この連結支持機構により、シールド掘進機の掘進動作時には、可動隔壁の外周側部分と固定隔壁とが連結解除されて、固定隔壁に対して可動隔壁が回転可能な状態に保持され、シールド掘進機の解体時には、環状シールにより可動隔壁の外周側部分と固定隔壁との間がシールされた状態で、可動隔壁の外周側部分と固定隔壁とが連結されて、カッター機構が可動隔壁を介して前部環状部材に固定支持される。
【0019】
連結支持機構によりカッター機構が前部環状部材に固定支持された状態で、可動隔壁からカッター支持機構が分離されて、カッター機構を支持するものがカッター支持機構から前部環状部材へ移行され、また、前部環状部材からカッター支持機構が分離されて、カッター支持機構がカッター駆動機構と共に前部環状部材に対して後側へ取外され解体される。その際、チャンバ内の掘削土及びカッターヘッドの前方の地山が改良されていない状態で、チャンバ側の土水圧が可動隔壁を含む隔壁で確実に受止められ、環状シールにより可動隔壁の外周側部分と固定隔壁との間がシールされた状態であるため、チャンバ内の土砂や泥水等が胴部材内の隔壁よりも後側に侵入することが防止される。
【0020】
従属請求項として次の構成を採用可能である。前記カッター支持機構は、前部環状部材の内周部に内嵌され固定解除可能に固定された固定環状部材と、この固定環状部材に回転自在に内嵌支持され且つ可動隔壁に固定解除可能に固定された可動リング部材とを有し、前記カッター駆動機構が、可動リング部材の後端部に連結されたリングギヤと、このリングギヤに噛合する複数のピニオンと、固定環状部材に固定されて複数のピニオンを夫々回転させる複数のモータとを有する(請求項2)。
【0021】
前記カッター機構からカッター支持機構の可動リング部材を介して固定環状部材に伝わる回転方向及び後方向きの反力を前部環状部材で受止め可能に、固定環状部材の外周部を前部環状部材の内周部に連結解除可能に連結する複数の第1反力受けを周方向適当間隔おきに設ける(請求項3)。前記カッター機構からカッター支持機構の可動リング部材を介して固定環状部材に伝わる後方向きの反力を前部環状部材で受止め可能に、固定環状部材の後端部に後側から当接して前部環状部材の内周部に連結解除可能に連結される複数の第2反力受けを周方向適当間隔おきに設ける(請求項4)。
【0022】
前記連結支持機構は、前記可動隔壁の外周側部分に周方向適当間隔おきに配設されて後方向開放状に形成された複数のネジ穴部と、前記固定隔壁に複数のネジ穴部の配置と対応する周方向適当間隔おきに配設され且つ固定隔壁に挿通状に装着された複数のボルト部材であって、夫々、固定隔壁に対して前方へ非突出状に保持されるとともに固定隔壁の後側から操作されて前方へ突出しネジ穴部に螺合される複数のボルト部材とを有する(請求項5)。前記連結支持機構は、前記各ボルト部材に固定隔壁の後側において外嵌状に螺合された締結ナット部材であって、ボルト部材がネジ穴部に螺合された状態で、固定隔壁の後側から操作されて可動隔壁をボルト部材を介して固定隔壁に締結する締結ナット部材を有する(請求項6)。
【0023】
前記可動隔壁の後面に固着されて環状シールを保持する環状のシール保持部材を有し、前記シール保持部材に複数のネジ穴部に夫々連通する複数のボルト貫通孔が形成される(請求項7)前記シール保持部材は、環状シールを径方向内外から挟持する内周側シール保持部材と外周側シール保持部材とからなり、前記複数のボルト貫通孔が内周側シール保持部材に形成される(請求項8)。前記連結支持機構は、前記各ボルト部材が挿通され且つ固定隔壁に挿通状に螺合された固定ナット部材であって、固定隔壁に前方へ非突出状に保持されるとともに固定隔壁の後側から操作されて前方へ突出しシール保持部材に押圧される複数の固定ナット部材を有する(請求項9)。前記可動隔壁が円板状に形成される(請求項10)。
【0024】
前記可動隔壁がリング状に形成され、外周側部分が可動隔壁の前側又は後側に位置して前記隔壁の中心側部分を形成し且つ固定環状部材に固定解除可能に固定された円板状の中心側固定隔壁と、前記シールド掘進機の掘進動作時には、中心側固定隔壁を固定環状部材に固定した状態で、中心側固定隔壁に対して可動隔壁を回転可能な状態に保持するとともに、シールド掘進機の解体時には、中心側固定隔壁の外周側部分と可動隔壁とを連結して、中心側固定隔壁を固定環状部材から固定解除した状態で可動隔壁に支持可能な第2の連結支持機構とを備える(請求項11)。前記可動隔壁の中心部分に貫通状に固定された筒部材と、前記筒部材に挿通された取付基部と取付基部の前端部に固定されてチャンバ内に配置された翼部とを有するアジテータと、前記筒部材とアジテータの取付基部との間をシールするシール部材と、前記アジテータの取付基部を固定環状部材に固定解除可能に固定する第1アジテータ固定機構と、前記筒部材にアジテータの取付基部を固定して、アジテータの取付基部を固定環状部材から固定解除した状態で筒部材に支持可能な第2アジテータ固定機構とを備える(請求項12)。
【0025】
請求項13のシールド掘進機の解体方法は、請求項1のシールド掘進機を解体するシールド掘進機の解体方法であって、前記シールド掘進機が所定の掘進完了位置に到達してから、環状シールで可動隔壁の外周側部分と固定隔壁との間がシールされた状態で、連結支持機構により可動隔壁の外周側部分と固定隔壁とを連結して、カッター機構と可動隔壁を前部環状部材に固定支持する連結支持工程と、次に、前記カッター支持機構を可動隔壁から分離するとともに、前部環状部材からカッター支持機構を分離する分離工程と、次に、前記前部環状部材に対してカッター支持機構をカッター駆動機構と共に後側へ取外す取外工程とを備えたことを特徴とする。
【0026】
従属請求項として次の構成採用可能である。少なくとも前記連結支持工程以降の工程と並行して実行され、隔壁の前方において地盤改良材を注入し、チャンバ内の掘削土及びカッターヘッドの前方の地山を改良する地盤改良工程を備える(請求項14)。前記地盤改良工程の後、前部環状部材と可動隔壁とカッター機構とを解体する最終解体工程を備える(請求項15)。
【発明の効果】
【0027】
請求項1のシールド掘進機によれば、カッター機構を、その後端部に設けた可動隔壁を介してカッター支持機構で回転可能に支持し、可動隔壁を介してカッター駆動機構で回転駆動し、可動隔壁の外周側部分を固定隔壁の前側に位置させて、可動隔壁の外周側部分と固定隔壁との間を環状シールでシールして、連結支持機構により、シールド掘進機の掘進動作時には、可動隔壁の外周側部分と固定隔壁とを連結解除して、固定隔壁に対して可動隔壁を回転可能な状態に保持し、シールド掘進機の解体時には、環状シールにより可動隔壁の外周側部分と固定隔壁との間をシールした状態で、可動隔壁の外周側部分と固定隔壁とを連結して、カッター機構を可動隔壁を介して前部環状部材に固定支持できる。
【0028】
従って、連結支持機構によりカッター機構を前部環状部材に固定支持した状態で、可動隔壁からカッター支持機構を分離して、カッター機構を支持するものをカッター支持機構から前部環状部材へ移行し、また、前部環状部材からカッター支持機構を分離して、カッター支持機構をカッター駆動機構と共に前部環状部材に対して後側へ取外して解体でき、その際、チャンバ内の掘削土及びカッターヘッドの前方の地山が改良(地盤改良)されていない状態で、チャンバ側の土水圧を可動隔壁を含む隔壁で確実に受止めることができ、環状シールにより可動隔壁の外周側部分と固定隔壁との間をシールした状態であるため、チャンバ内の土砂や泥水等が胴部材内の隔壁よりも後側に侵入することを防止できる。
【0029】
つまり、シールド掘進機が掘進完了位置に到達してから、地盤改良と並行して、カッター支持機構及びカッター駆動機構を取外して解体でき、この解体を簡単に且つ確実に且つ安全に行うことができ、地盤改良の完了後、前部環状部材、可動隔壁、カッター機構等の解体を順調に行うことができるので、シールド掘進機の解体に要する時間、つまりトンネル工事全体の工期を極力短縮できる。
【0030】
請求項2のシールド掘進機によれば、カッター支持機構は、前部環状部材の内周部に内嵌され固定解除可能に固定された固定環状部材と、この固定環状部材に回転自在に内嵌支持され且つ可動隔壁に固定解除可能に固定された可動リング部材とを有し、カッター駆動機構が、可動リング部材の後端部に連結されたリングギヤと、このリングギヤに噛合する複数のピニオンと、固定環状部材に固定されて複数のピニオンを夫々回転させる複数のモータとを有するので、カッター支持機構とカッター駆動機構を可動隔壁の後側に設け、カッター機構を確実に回転可能に支持でき確実に回転駆動できるようにして、カッター支持機構をカッター駆動機構と共に前部環状部材に対して確実に後側へ取外して解体できる。
【0031】
請求項3のシールド掘進機によれば、カッター機構からカッター支持機構の可動リング部材を介して固定環状部材に伝わる回転方向及び後方向きの反力を前部環状部材で受止め可能に、固定環状部材の外周部を前部環状部材の内周部に連結解除可能に連結する複数の第1反力受けを周方向適当間隔おきに設けたので、シールド掘進機の掘進動作時には、複数の第1反力受けにより固定環状部材の外周部を前部環状部材の内周部に連結して、前記回転方向及び後方向きの反力を前部環状部材で確実に受止めることができ、複数の第1反力受けにより固定環状部材の外周部を前部環状部材の内周部から連結解除して、カッター支持機構をカッター駆動機構と共に前部環状部材に対して後側へ取外して解体できる。
【0032】
請求項4のシールド掘進機によれば、カッター機構からカッター支持機構の可動リング部材を介して固定環状部材に伝わる後方向きの反力を前部環状部材で受止め可能に、固定環状部材の後端部に後側から当接して前部環状部材の内周部に連結解除可能に連結される複数の第2反力受けを周方向適当間隔おきに設けたので、シールド掘進機の掘進動作時には、複数の第2反力受けを前部環状部材の内周部に連結して、前記後方向きの反力を前部環状部材で一層確実に受止めることができ、複数の第2反力受けを固定環状部材の内周部から連結解除して、カッター支持機構をカッター駆動機構と共に前部環状部材に対して後側へ取外して解体できる。
【0033】
請求項5のシールド掘進機によれば、連結支持機構は、可動隔壁の外周側部分に周方向適当間隔おきに配設されて後方向開放状に形成された複数のネジ穴部と、固定隔壁に複数のネジ穴部の配置と対応する周方向適当間隔おきに配設され且つ固定隔壁に挿通状に装着された複数のボルト部材であって、夫々、固定隔壁に対して前方へ非突出状に保持されるとともに固定隔壁の後側から操作されて前方へ突出しネジ穴部に螺合される複数のボルト部材とを有するので、シールド掘進機の解体時に、複数のボルト部材を機内から操作して複数のネジ穴部に螺合させて、可動隔壁の外周側部分と固定隔壁とを連結できる。
【0034】
請求項6のシールド掘進機によれば、連結支持機構は、各ボルト部材に固定隔壁の後側において外嵌状に螺合された締結ナット部材であって、ボルト部材がネジ穴部に螺合された状態で、固定隔壁の後側から操作されて可動隔壁をボルト部材を介して固定隔壁に締結する締結ナット部材を有するので、シールド掘進機の解体時に、複数の締結ナット部材を機内から操作して、これら締結ナット部材により可動隔壁を複数のボルト部材を介して固定隔壁に確実に締結できる。
【0035】
請求項7のシールド掘進機によれば、可動隔壁の後面に固着されて環状シールを保持する環状のシール保持部材を有し、シール保持部材に複数のネジ穴部に夫々連通する複数のボルト貫通孔を形成したので、シール保持部材の配置に制約を受けることなく、シール保持部材を有効に利用し、複数のボルト部材を複数のボルト貫通孔を貫通させて複数のネジ穴部に夫々螺合させることができる。
【0036】
請求項8のシールド掘進機によれば、シール保持部材は、環状シールを径方向内外から挟持する内周側シール保持部材と外周側シール保持部材とからなり、複数のボルト貫通孔を内周側シール保持部材に形成したので、内周側シール保持部材の配置に制約を受けることなく、内周側シール保持部材を有効に利用して、請求項7と同様の効果を奏し、しかも、環状シールによって、ボルト貫通孔及びネジ穴部にチャンバ内の土砂や泥水等が流入して溜まることを防止して、連結支持機構を確実に作動させることができる。
【0037】
請求項9のシールド掘進機によれば、連結支持機構は、各ボルト部材が挿通され且つ固定隔壁に挿通状に螺合された固定ナット部材であって、固定隔壁に前方へ非突出状に保持されるとともに固定隔壁の後側から操作されて前方へ突出しシール保持部材に押圧される固定ナット部材を有するので、シールド掘進機の解体時に、複数の固定ナット部材を機内から操作して、シール保持部材に押圧させることで、ボルト部材のネジ穴部へボルト通路を確保して、その後、ボルト部材をネジ穴部に確実に螺合させることができる。
【0038】
請求項10のシールド掘進機によれば、可動隔壁を円板状に形成したので、隔壁の構造を簡単化し、シールド掘進機の解体時には、連結支持機構により可動隔壁の外周側部分と固定隔壁とを連結するだけで、隔壁によりチャンバ側の土水圧を確実に受止めて、カッター支持機構とカッター駆動機構とを解体可能な状態にすることができる。
【0039】
請求項11のシールド掘進機によれば、可動隔壁をリング状に形成し、外周側部分が可動隔壁の前側又は後側に位置して隔壁の中心側部分を形成し且つ固定環状部材に固定解除可能に固定された円板状の中心側固定隔壁を備えたので、カッターヘッドと対向して一体的に回転する可動隔壁の面積を小さくし、カッターヘッドと対向する固定隔壁及び中心側固定隔壁の面積を大きくして、チャンバ内に回収された掘削土がカッターヘッドと可動隔壁との間に残留して供回りすることを極力防止でき、故に、チャンバ内の掘削土の攪拌能力も高まって、チャンバ内の掘削土を円滑に排出でき、掘削能力の低下を防止できる。
【0040】
第2の連結支持機構により、シールド掘進機の掘進動作時には、中心側固定隔壁を固定環状部材に固定した状態で、中心側固定隔壁に対して可動隔壁を回転可能な状態に保持し、シールド掘進機の解体時には、中心側固定隔壁の外周側部分と可動隔壁とを連結して、中心側固定隔壁を固定環状部材から固定解除した状態で可動隔壁に支持できるので、シールド掘進機の解体時には、連結支持機構により可動隔壁の外周側部分と固定隔壁とを連結するとともに、第2の連結支持機構により、中心側固定隔壁の外周側部分と可動隔壁とを連結することで、隔壁によりチャンバ側の土水圧を確実に受止めて、カッター支持機構とカッター駆動機構とを解体可能な状態にすることができる。
【0041】
請求項12のシールド掘進機によれば、可動隔壁の中心部分に貫通状に固定された筒部材と、筒部材に挿通された取付基部と取付基部の前端部に固定されてチャンバ内に配置された翼部とを有するアジテータと、筒部材とアジテータの取付基部との間をシールするシール部材と、アジテータの取付基部を固定環状部材に固定解除可能に固定する第1アジテータ固定機構とを備えたので、アジテータの翼部をチャンバ内に固定的に配置でき、このアジテータの翼部により、チャンバ内に回収されカッターヘッドと可動隔壁との間に残留して供回りする掘削土を掻き落とすことができ、チャンバ内の掘削土の攪拌能力も高まって、チャンバ内の掘削土を円滑に排出でき、掘削能力の低下を防止できる。
【0042】
シールド掘進機の解体時には、第2アジテータ固定機構により、筒部材にアジテータの取付基部を固定することで、アジテータの取付基部を固定環状部材から固定解除した状態で筒部材に支持でき、つまり、隔壁によりチャンバ側の土水圧を確実に受止めて、カッター支持機構とカッター駆動機構とを解体可能な状態にすることができる。
【0043】
請求項13のシールド掘進機の解体方法によれば、請求項1のシールド掘進機を解体するシールド掘進機の解体方法であって、連結支持工程において、シールド掘進機が所定の掘進完了位置に到達してから、環状シールで可動隔壁の外周側部分と固定隔壁との間がシールされた状態で、連結支持機構により可動隔壁の外周側部分と固定隔壁とを連結して、カッター機構と可動隔壁を前部環状部材に固定支持し、次に、分離工程において、カッター支持機構を可動隔壁から分離するとともに、前部環状部材からカッター支持機構を分離し、次に、取外工程において、前部環状部材に対してカッター支持機構をカッター駆動機構と共に後側へ取外すので、請求項1の効果と同様の効果を奏する。
【0044】
請求項14のシールド掘進機の解体方法によれば、少なくとも前記連結支持工程以降の工程と並行して実行され、隔壁の前方において地盤改良材を注入し、チャンバ内の掘削土及びカッターヘッドの前方の地山を改良する地盤改良工程を備えたので、シールド掘進機が掘進完了位置に到達してから、地盤改良と並行して、カッター支持機構及びカッター駆動機構を確実に取外して解体できる。
【0045】
請求項15のシールド掘進機の解体方法によれば、地盤改良工程の後、前部環状部材と可動隔壁とカッター機構とを解体する最終解体工程を備えたので、環状部材と可動隔壁とカッター機構とを確実に解体できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明のシールド掘進機は、胴部材、胴部材の前端側に配設されたカッターヘッドを有するカッター機構、胴部材の前端部分内側のチャンバの後端を仕切る隔壁、胴部材の内面に外周部が固着され、前面部に隔壁の外周側部分を形成する固定隔壁を有する前部環状部材、カッター機構の後端部に設けられ、外周側部分が固定隔壁の前側に位置して隔壁の中央側部分の少なくとも一部を形成する可動隔壁、前部環状部材の内周部に内嵌状に後側へ取外し可能に装着され、カッター機構を可動隔壁を介して回転可能に支持するカッター支持機構、カッター支持機構に装備され、カッター機構を可動隔壁を介して回転駆動するカッター駆動機構、可動隔壁の外周側部分と固定隔壁との間をシールする環状シール、シールド掘進機の掘進動作時には固定隔壁に対して可動隔壁を回転可能な状態に保持するとともに、シールド掘進機の解体時には可動隔壁の外周側部分と固定隔壁とを連結してカッター機構を前部環状部材に固定支持する連結支持機構を備えている。
【0047】
本発明のシールド掘進機の解体方法は、前記シールド掘進機を解体する方法であって、シールド掘進機が所定の掘進完了位置に到達してから、環状シールで可動隔壁の外周側部分と固定隔壁との間がシールされた状態で、連結支持機構により可動隔壁の外周側部分と固定隔壁とを連結して、カッター機構と可動隔壁を前部環状部材に固定支持する連結支持工程、次に、カッター支持機構を可動隔壁から分離するとともに、前部環状部材からカッター支持機構を分離する分離工程、次に、前部環状部材に対してカッター支持機構をカッター駆動機構と共に後側へ取外す取外工程を備えている。
【実施例1】
【0048】
先ず、シールド掘進機1について説明する。
図1〜図4に示すように、シールド掘進機1は、胴部材2、前部環状部材3、中央部環状部材4、カッター機構5、チャンバ6、隔壁7、カッター支持機構8、カッター駆動機構9、複数の第1反力受け10、複数の第2反力受け11、環状シール12、シール保持部材13、連結支持機構14、複数のシールドジャッキ15、スクリューコンベア16,17、支柱18、エレクター19、真円保持装置20、後部作業デッキ21等を備えている。
【0049】
胴部材2は円筒状に形成され、胴部材2の前部の内面に前部環状部材3の外周部が固着され、胴部材2の中央部の内面に中央部環状部材4の外周部が固着されている。胴部材2の後端部分には裏込注入装置22とテールシール23が装備されている。前部環状部材3は胴部材2の前端よりも少し後側に配置されて、比較的大きい前後方向幅と比較的小さい内径とを有し、前面部に隔壁7の外周側部分を形成する固定隔壁25を有する。
【0050】
複数のシールドジャッキ15は、胴部材2の中央部分の内面に沿って周方向適当間隔おきに後向きに配設されて、中央部環状部材4に貫通状に固定されている。スクリューコンベア16は、前方斜め下方へ傾斜して前部環状部材3の下部を貫通し、その前端がチャンバ6の下部に臨んでいる。スクリューコンベア17は、スクリューコンベア16の後端に接続されて、後方へ略水平に延びている。
【0051】
中央部環状部材4には、支柱18が固定支持され、その後側にエレクター19が取付けられ、エレクター19の後方に真円保持装置20が配設されている。後部作業デッキ21は、その前端部が支柱18に連結されて、エレクター19、真円保持装置20の内側を通るように後方へ延びている。
【0052】
カッター機構5は、胴部材2の前端側に配設されたディスク状のカッターヘッド30、カッターヘッド30から後方へ延びる複数のビーム31を有する。カッターヘッド30は、中央ヘッド部32、中央ヘッド部32から径方向外側へ延びる複数(4本)のスポーク33、複数のスポーク33の長さ方向中央部同士を連結する中間リング34、中間リング34から径方向外側へ延びる複数(4本)のスポーク35、複数のスポーク33,35の径方外端部が連結され胴部材2と同径の外周リング36を有する。
【0053】
中央ヘッド部32の前面部にセンターカッター37が取付けられ、複数のスポーク33,35の前面部に多数のカッタービット38が取付けら、スポーク33,35の後面部に攪拌羽根39が取付けられている。複数(2本)のスポーク33には、夫々、コピーカッター装置40が装備され、このコピーカッター装置40は、スポーク33の径方外端部分に出没可能に設けられたコピーカッター41、スポーク33の内部に配設されコピーカッター41を出没駆動する油圧シリンダ42を有する。
【0054】
チャンバ6は、カッターヘッド30の後側において、胴部材2の前端部分内側に形成され、このチャンバ6の後端が隔壁7で仕切られている。カッター機構5(複数のビーム31)の後端部には円板状に形成された可動隔壁26が連結されて設けられ、この可動隔壁26は、その外周側部分が固定隔壁25の内周側部分の前側に位置して、隔壁7の中央側部分を形成している。つまり、隔壁7は固定隔壁25と可動隔壁26とで構成されている。
【0055】
可動隔壁26とカッターヘッド30からは、隔壁7の前方において止水材やモルタル等の地盤改良材を注入可能に構成され、その地盤改良材を回転する可動隔壁26とカッターヘッド30に供給するために、また、カッターヘッド30に設けられたコピーカッター装置40の油圧シリンダ42に油圧を供給するために、可動隔壁26の中央部分後側にロータリージョイント27が設けられている。
【0056】
カッター支持機構8は、カッター機構5を可動隔壁26を介して回転可能に支持する機構であり、可動隔壁26の後側において、前部環状部材3の内周部に内嵌状に後側へ取外し可能に装着されている。このカッター支持機構8は、前部環状部材3の内周部に内嵌され複数の第1,第2反力受け11,12により固定解除可能に固定された固定環状部材45、固定環状部材45に回転自在に内嵌支持され且つ可動隔壁26に固定解除可能に固定された可動リング部材46を有する。
【0057】
固定環状部材45は前部環状部材3と略同じ前後幅を有し、固定環状部材45の後端部分には径方向内側へ張り出す環状フランジ45aが形成されている。可動リング部材46は固定環状部材45の前部に内嵌されて、可動隔壁26に複数の締結具(図示略)で固定され、これら締結具については、可動隔壁26の後側から操作して、可動リング部材46を可動隔壁26から固定解除できるようにしてある。
【0058】
カッター駆動機構9は、カッター機構5を可動隔壁26と可動リング部材46を介して回転駆動する機構であり、カッター支持機構8に装備されている。このカッター駆動機構9は、可動リング部材46の後端部に連結されたリングギヤ47、リングギヤ47に噛合する複数のピニオン48、固定環状部材45に固定されて複数のピニオン48を夫々回転させる複数のモータ49(例えば、電動モータ49)を有する。
【0059】
リングギヤ47は、可動リング部材46と固定環状部材45の環状フランジ45aとの間に配設され、後端部が環状フランジ45aに摺動自在に当接し、リングギヤ47の外周部にギヤ歯が形成されている。複数の油圧モータ49は、固定環状部材45の環状フランジ45aに周方向適当間隔おきに配設されて前向きに貫通状に固定され、各油圧モータ49の出力軸にピニオン48が取付けられている。
【0060】
複数の第1反力受け10は、カッター機構5から可動隔壁26を介して固定環状部材45に伝わる回転方向及び後方向きの反力を前部環状部材3で受止め可能に、固定環状部材45の外周部を前部環状部材3の内周部に連結解除可能に連結するものであり、周方向適当間隔おきに設けられている。
【0061】
図4に示すように、各第1反力受け10においては、筒部材50,51が径方向に対向するように、前部環状部材3の内周壁3aと固定環状部材45の外周壁45bに取付けられ、連結ピン部材52が筒部材50,51に挿入係合され、連結ピン部材52のフランジ52aが筒部材50にボルト53で締結され、前部環状部材3の内部から、ボルト53の締結解除と連結ピン部材52の取外しとが可能に構成されている。尚、複数の第1反力受け10の前側において、前部環状部材3の内周壁3aと固定環状部材45の外周壁45bとの間が環状シール54でシールされている。
【0062】
複数の第2反力受け11は、カッター機構5から可動隔壁26を介して固定環状部材45に伝わる後方向きの反力を前部環状部材3で受止め可能に、固定環状部材45の後端部に後側から当接して前部環状部材3の内周部に連結解除可能に連結されるものであり、周方向適当間隔おきに設けられている。
【0063】
図4に示すように、各第2反力受け11においては、前部環状部材3の内周壁3aが固定環状部材45よりも後方へ延び、その内周部分に凹部3bが形成され、断面L形の円弧状のストッパ部材55が前部環状部材3の内周壁3aの凹部3bに係合されて、前部環状部材3の内周壁3aにボルト56で締結されて、固定環状部材45の後壁45cに後側から当接し、前部環状部材3の後側から、ボルト56の締結解除とストッパ部材55の取外しとが可能に構成されている。
【0064】
図4、図5等に示すように、環状シール12は可動隔壁26の外周側部分と固定隔壁25の内周側部分との間をシールするものである。可動隔壁26の外周側部分と固定隔壁25の内周側部分が一定の隙間を空けて対向し、その隙間に環状シール12が配設されて、可動隔壁26の外周側部分の後面に固着された環状のシール保持部材13により保持されている。環状シール12は、例えば、可動隔壁26に当接する本体部、この本体部から後方へ延びて固定隔壁25に当接する複数の襞状部を有する樹脂製のシールである。
【0065】
シール保持部材13は、環状シール12を径方向内外から挟持する内周側シール保持部材57と外周側シール保持部材58とからなり、これらシール保持部材57,58は固定隔壁25に少しの隙間を空けて対向している。
【0066】
図1、図4〜図9に示すように、連結支持機構14は、シールド掘進機1の掘進動作時には固定隔壁25に対して可動隔壁26を回転可能な状態に保持するとともに(図5参照)、シールド掘進機1の解体時には可動隔壁26の外周側部分と固定隔壁25の内周側部分とを連結してカッター機構5を可動隔壁26を介して前部環状部材3に固定支持する(図9参照)ものである。
【0067】
連結支持機構14は、可動隔壁26の外周側部分に周方向適当間隔(等間隔)おきに配設されて後方向開放状に形成された複数(例えば、30〜40個)のネジ穴部60と、固定隔壁25に複数のネジ穴部60の配置と対応する周方向適当間隔(等間隔)おきに配設され且つ固定隔壁25に挿通状に装着された複数(例えば、30〜40本)のボルト部材61であって、夫々、図5、図6に示すように、固定隔壁25に対して前方へ非突出状に保持されるとともに、図8、図9に示すように、固定隔壁25の後側から操作されて前方へ突出しネジ穴部60に螺合される複数のボルト部材61とを有する。
【0068】
複数のネジ穴部60は、可動隔壁26の外周側部分のうち、内周側シール保持部材57の前方に位置する部分に適当な深さで形成され、内周側シール保持部材57には、複数のネジ穴部60に夫々連通する複数のボルト貫通孔62が形成され、固定隔壁25には、ボルト部材61よりも大径(例えば、ボルト部材61の1.5倍程度の径)で複数のボルト部材61が夫々挿通する複数の隔壁貫通孔部63が形成され、この隔壁貫通孔部63の前端部を除く大部分が隔壁ネジ孔部63aに形成されている。
【0069】
ボルト部材61は、前端部分にネジ穴部60に螺合される前部ネジ部61aが形成され、後端部分に後部ネジ部61bが形成され、後部ネジ部61bの後端側に工具操作部61cが形成され、前部ネジ部61aがネジ穴部60に完全に螺合された状態で、後部ネジ部61bが固定隔壁25よりも後方に位置するように、ボルト部材61が形成されている。
【0070】
また、連結支持機構14は、各ボルト部材61が前後方向へ摺動自在に挿通され且つ固定隔壁25の隔壁貫通孔部63に挿通状に隔壁ネジ孔部63aに螺合された固定ナット部材64であって、図5に示すように、固定隔壁25に前方へ非突出状に保持されるとともに、図6〜図9に示すように、固定隔壁25の後側から操作されて前方へ突出し内周側シール保持部材57に押圧される固定ナット部材64を有する。
【0071】
固定ナット部材64は、その前端面が固定隔壁25の内周側部分の前端面と略同じ前後方向位置になるようにして、固定隔壁25に保持され、この状態で、固定隔壁25よりも後方へ突出し、固定ナット部材64の後端部分には工具操作部64aが形成されている。尚、固定隔壁25の隔壁貫通孔部63の前端部と固定ナット部材64との間がシール部材65でシールされ、固定ナット部材64とボルト部材61の前部ネジ部61aよりも後側部分との間がシール部材66でシールされている。
【0072】
また、連結支持機構14は、各ボルト部材61の後部ネジ部61bに固定隔壁25の後側において外嵌状に螺合された締結ナット部材67であって、図9に示すように、ボルト部材61の前部ネジ部61aがネジ穴部60に完全に螺合されて、固定ナット部材64が内周側シール保持部材57に押圧された状態で、固定隔壁25の後側から操作されて、固定ナット部材64を内周側シール保持部材57とで挟持することで、可動隔壁26をボルト部材61を介して固定隔壁25に締結する締結ナット部材67を有する。
【0073】
各ボルト部材61の後方に受け板68が配設されて、複数のロッド68aにより固定隔壁25に連結され、この受け板68に押込みボルト69が前後に貫通状に螺合され、この押込みボルト69の前端部がボルト部材61の後端部に当接して、押込みボルト69、受け板68、複数のロッド68aにより、チャンバ6側の土水圧を受けるボルト部材61を後側から支承することができる。
【0074】
次に、シールド掘進機1の解体方法について説明する。
このシールド掘進機1の解体方法は、シールド掘進機1が地中の所定の掘進完了位置に到達してから、図10に示すように、後部作業デッキ21、スクリューコンベア16,17、真円保持装置20、エレクター19、支柱18等を順次解体する第1の工程と、次に、図10〜図12に示すように、カッター支持機構8、カッター駆動機構9を解体撤去する第2の工程を備えている。
【0075】
また、このシールド掘進機1の解体方法は、隔壁7の前方において止水材やモルタル等の地盤改良材を注入し、チャンバ6内の掘削土及びカッターヘッド30の前方の地山を改良する第3の工程(地盤改良工程)を備え、この第3の工程が第1,第2の工程と並行して実行されるとともに、第2,第3の工程の後、中央部環状部材4、複数のシールドジャッキ5、前部環状部材3、可動隔壁26、カッター機構5等を順次解体撤去する第4の工程(最終解体工程)を備えている。
【0076】
そして、第2の工程が、環状シール12で可動隔壁26の外周側部分と固定隔壁25との間がシールされた状態で、連結支持機構14により可動隔壁26の外周側部分と固定隔壁25とを連結して、カッター機構5と可動隔壁26を前部環状部材3に固定支持する連結支持工程と、次に、カッター支持機構5を可動隔壁26から分離するとともに、前部環状部材3からカッター支持機構8を分離する分離工程と、次に、前部環状部材3に対してカッター支持機構8をカッター駆動機構9と共に後側へ取外す取外工程とを備えている。
【0077】
連結支持工程では、先ず、図5に示すように、カッター駆動機構9によりカッター機構5を回転させて、複数のネジ穴部60が複数のボルト部材61の前方に位置するように位置合わせを行う。この位置検出については、前部環状部材3又は固定環状部材45と可動隔壁26又は可動リング部材46とに、スイッチやセンサを有する検出装置を設けて行ってもよいし、予め印した指標を設けて行ってもよい。
【0078】
次に、図6に示すように、固定ナット部材64の工具操作部64aを工具で操作して、固定ナット部材64を回動させて前方へ移動させ、内周側シール保持部材57に押圧させて、固定ナット部材64と内周側シール保持部材57間の隙間を無くして、固定ナット部材64の内部とボルト貫通孔62及びネジ穴部60とを連通状にする。
【0079】
次に、図7に示すように、押込みボルト69を工具で操作して、押込みボルト69を回動させて前方へ移動させ、これにより、ボルト部材61を前方へ押動してボルト貫通孔62に挿入させ、ボルト部材61の前端部をネジ穴部60の後端部に押当てる。次に、図8に示すように、ボルト部材61の工具操作部61cを工具で操作して、ボルト部材61を回動させて前方へ移動させ前部ネジ部61aをネジ穴部60に螺合させる。
【0080】
次に、図9に示すように、ボルト部材61がネジ穴部60に完全に螺合した後、締結ナット部材67を回動させて前方へ移動させ、固定ナット部材64の後端部に押圧させて、可動隔壁26を内周側シール保持部材57、ボルト部材61、固定ナット部材64、締結ナット部材67を介して固定隔壁25に強固に締結する。連結支持機構14の全てのロッド部材61、押込みボルト69、固定ナット部材64、締結ナット部材67について、上記の操作を行って、連結支持工程が完了する。
【0081】
分離工程では、可動リング部材46に可動隔壁26を締結する複数の締結具を締結解除することで、カッター支持機構5を可動隔壁26から分離し、また、複数の第1反力受け10において、夫々、ボルト53を取外して、連結ピン部材52を筒部材50,51から引抜くとともに、複数の第2反力受け11において、夫々、ボルト56を取外し、ストッパ部材55を前部環状部材3の内周壁3aから取外すことで、前部環状部材3からカッター支持機構8を分離する。
【0082】
取外工程では、図10に示すように、複数の引抜きブラケット70、複数の引抜きジャッキ71、レール72、搬送台車73を利用し、カッター支持機構8をカッター駆動機構9と共に後側へ取外し、この引抜きブラケット70、引抜きジャッキ71、レール72、搬送台車73の準備は、連結支持工程や分離工程と並行して行うことができる。
【0083】
複数の引抜きブラケット70は固定環状部材45の環状フランジ45aに径方向外側へ張出すように取付けられ、複数の引抜きブラケット70に複数の引抜きジャッキ71の後端部が夫々連結保持されている。レール72は、前部環状部材3の直ぐ後側から後方へ延びるように敷設され、このレール72に載せられた搬送台車73には、カッター支持機構8とカッター駆動機構9を保持する機構保持構造74が設けられている。
【0084】
搬送台車73が前部環状部材3の直ぐ後側に位置した状態で、カッター支持機構8をカッター駆動機構9と共に後側へ引抜くが、この場合、引抜きジャッキ71が伸長駆動されることで、前部環状部材3の前面部に対して引抜きブラケット70を後方へ押し、次に、引抜きジャッキ71が退入駆動されることで、前部環状部材3の前面部と引抜きジャッキ71との間に生じる隙間に動力伝達部材75を継足し、この引抜きジャッキ71の進退と動力伝達部材75の継足しを繰返し行って、図11に示すように、カッター支持機構8をカッター駆動機構9と共に後側へ引抜いて取外していく。
【0085】
後側へ引き抜かれたカッター支持機構8とカッター駆動機構9は、搬送台車73に載置されて機構保持構造74で保持され、この状態で、図12に示すように、搬送台車73がレール72上を推進用のジャッキ76を用いて後方へ移動駆動されて、カッター支持機構8とカッター駆動機構9が後方へ搬送され、このカッター支持機構8とカッター駆動機構9は再利用されることになる。
【0086】
以上説明したシールド掘進機1及びその解体方法の効果について説明する。
カッター機構5を、その後端部に設けた可動隔壁26を介してカッター支持機構8で回転可能に支持し、可動隔壁26を介してカッター駆動機構9で回転駆動し、可動隔壁26の外周側部分を固定隔壁25の前側に位置させて、可動隔壁26の外周側部分と固定隔壁25との間を環状シール12でシールして、連結支持機構14により、シールド掘進機1の掘進動作時には、可動隔壁26の外周側部分と固定隔壁25とを連結解除して、固定隔壁25に対して可動隔壁26を回転可能な状態に保持し、シールド掘進機1の解体時には、環状シール12により可動隔壁26の外周側部分と固定隔壁25との間をシールした状態で、可動隔壁26の外周側部分と固定隔壁25とを連結して、カッター機構5を可動隔壁26を介して前部環状部材3に固定支持できる。
【0087】
従って、連結支持機構14によりカッター機構5を前部環状部材3に固定支持した状態で、可動隔壁26からカッター支持機構8を分離して、カッター機構5を支持するものをカッター支持機構8から前部環状部材3へ移行し、また、前部環状部材3からカッター支持機構8を分離して、カッター支持機構8をカッター駆動機構9と共に前部環状部材3に対して後側へ取外して解体でき、その際、チャンバ6内の掘削土及びカッターヘッド30の前方の地山が改良(地盤改良)されていない状態で、チャンバ6側の土水圧を可動隔壁26を含む隔壁7で確実に受止めることができ、環状シール12により可動隔壁26の外周側部分と固定隔壁25との間をシールした状態であるため、チャンバ6内の土砂や泥水等が胴部材2内の隔壁7よりも後側に侵入することを防止できる。
【0088】
つまり、シールド掘進機1が掘進完了位置に到達してから、地盤改良と並行して、カッター支持機構8及びカッター駆動機構9を取外して解体でき、この解体を簡単に且つ確実に且つ安全に行うことができ、地盤改良の完了後、前部環状部材3、可動隔壁26、カッター機構5等の解体を順調に行うことができるので、シールド掘進機1の解体に要する時間、つまりトンネル工事全体の工期を極力短縮できる。
【0089】
可動隔壁26を円板状に形成したので、隔壁7の構造を簡単化し、シールド掘進機1の解体時には、連結支持機構14により可動隔壁26の外周側部分と固定隔壁25とを連結するだけで、隔壁7によりチャンバ6側の土水圧を確実に受止めて、カッター支持機構8とカッター駆動機構9とを解体可能な状態にすることができる。
【0090】
次に、実施例1を部分的に変更した実施例2,3について説明する。但し、実施例1と基本的に同じものには同一符号を付して適宜説明を省略する。
【実施例2】
【0091】
図13〜図15に示すように、実施例2のシールド掘進機1Aでは、隔壁7Aが、固定隔壁25と、リング状に形成された可動隔壁80と、円板状に形成された中心側固定隔壁81とからなる。可動隔壁80は、カッター機構5(複数のビーム31)の後端部に連結されて設けられ、可動隔壁80の外周側部分が固定隔壁25の内周側部分の前側に位置し、実施例1と同様に、環状シール12により可動隔壁80の外周側部分と固定隔壁25との間がシールされ、連結支持機構14により、シールド掘進機1の掘進動作時には固定隔壁25に対して可動隔壁80が回転可能な状態に保持されるとともに、シールド掘進機1の解体時には可動隔壁80の外周側部分と固定隔壁25とが連結される。
【0092】
可動隔壁80は胴部材2の1/3程度の内径を有し、中心側固定隔壁81は、その外周側部分が可動隔壁80の内周側部分の前側に位置して隔壁7Aの中心側部分を形成し且つ固定環状部材45に固定リング部材82を介して固定解除可能に固定されている。固定リング部材82は前大径リング部82aと後小径リング部82bとを有し、この前大径リング部82aと後小径リング部82bとが、夫々、可動リング部材46とリングギヤ47とに僅かな隙間を空けて挿通されている。
【0093】
固定リング部材82の前端部が中心側固定隔壁81に複数の締結具(図示略)により固定され、固定リング部材82の後端部が固定環状部材45に複数の締結具(図示略)により固定されている。可動リング部材46と前大径リング部82aとの間と、可動リング部材46と固定環状部材45との間は、夫々、環状のシール部材83,84によりシールされている。但し、これらシール部材83,84は省略することが可能である。尚、実施例1において、可動リング部材46と固定環状部材45との間を環状のシール部材でシールしてもよい。
【0094】
さて、このシールド掘進機1Aは、中心側固定隔壁81の外周側部分と可動隔壁80の内周側部分との間をシールする環状シール85と、シールド掘進機1Aの掘進動作時には、中心側固定隔壁81を固定環状部材45に固定した状態で、中心側固定隔壁81に対して可動隔壁80を回転可能な状態に保持するとともに、シールド掘進機1Aの解体時には、中心側固定隔壁81の外周側部分と可動隔壁80の内周側部分とを連結して、中心側固定隔壁81を固定環状部材45から固定解除した状態で可動隔壁80に支持可能な第2の連結支持機構86を備えている。
【0095】
環状シール85は、実施例1と同様に、シール保持部材87で保持され、そのシール保持部材87は、中心側固定隔壁81の外周側部分の後面に固定された内周側シール保持部材と外周側シール保持部材とからなる。第2の連結支持機構86は、連結支持機構14と同様の構造であり、その詳細な説明は省略する。
【0096】
このシールド掘進機1Aによれば、可動隔壁80をリング状に形成し、外周側部分が可動隔壁80の前側に位置して隔壁7Aの中心側部分を形成し且つ固定環状部材45に固定解除可能に固定された円板状の中心側固定隔壁81を備えたので、カッターヘッド30と対向して一体的に回転する可動隔壁80の面積を小さくし、カッターヘッド30と対向する固定隔壁25及び中心側固定隔壁81の面積を大きくして、チャンバ6内に回収された掘削土がカッターヘッド30と可動隔壁80との間に残留して供回りすることを極力防止でき、故に、チャンバ6内の掘削土の攪拌能力も高まって、チャンバ6内の掘削土を円滑に排出でき、掘削能力の低下を防止できる。
【0097】
第2の連結支持機構86により、シールド掘進機1Aの掘進動作時には、中心側固定隔壁81を固定環状部材45に固定した状態で、中心側固定隔壁81に対して可動隔壁80を回転可能な状態に保持し、シールド掘進機1Aの解体時には、中心側固定隔壁81の外周側部分と可動隔壁80とを連結して、中心側固定隔壁81を固定環状部材45から固定解除した状態で可動隔壁80に支持できるので、シールド掘進機1Aの解体時には、連結支持機構14により可動隔壁80の外周側部分と固定隔壁25とを連結するとともに、第2の連結支持機構86により、中心側固定隔壁81の外周側部分と可動隔壁80とを連結することで、隔壁7Aによりチャンバ6側の土水圧を確実に受止めて、カッター支持機構8とカッター駆動機構9とを解体可能な状態にすることができる。
【0098】
尚、シールド掘進機1Aを解体する場合には、固定リング部材82を中心側固定隔壁81から固定解除して、この固定リング部材82をカッター支持機構8及びカッター駆動機構9と共に後側へ取外すことができる。尚、中心側固定隔壁81は、その外周側部分が可動隔壁80の内周側部分の後側に位置するように構成してもよい。
【実施例3】
【0099】
図16〜図18に示すように、実施例3のシールド掘進機1Bは、可動隔壁26Bの中心部分に貫通状に固定された筒部材90と、筒部材90に挿通された取付基部91aと取付基部91aの前端部に固定されてチャンバ6内に配置された翼部91bとを有するアジテータ91と、筒部材90とアジテータ91の取付基部91aとの間をシールするシール部材92と、アジテータ91の取付基部91aを固定環状部材45に固定解除可能に固定する第1アジテータ固定機構93と、筒部材90にアジテータ91の取付基部91aを固定して、アジテータ91の取付基部91aを固定環状部材45から固定解除した状態で筒部材90に支持可能な第2アジテータ固定機構94とを備えている。
【0100】
筒部材90は可動隔壁26Bに後方突出状に固定され、アジテータ91の取付基部91aは筒状に形成されて筒部材90よりも後方へ少し突出し、この取付基部91aにロータリージョイント95が挿通され、また、ロータリージョイント95は、アジテータ91の翼部91bにも挿通され、その前端部がカッターヘッド30に接続されている。
【0101】
第1アジテータ固定機構93においては、アジテータ91の取付基部91aの後端部にフランジ93aが設けられ、このフランジ93aに後方広がりテーパ状の連結リング部材93bの前端部が複数の締結具(図示略)で固定されるとともに、連結リング部材93bの後端部が固定環状部材45に複数の締結具(図示略)により固定され、シールド掘進機1Bの掘進動作時には、第1アジテータ固定機構93による固定が維持され、シールド掘進機1Bの解体時には、第1アジテータ固定機構93による固定が解除される。
【0102】
第2アジテータ固定機構94においては、複数のL形固定具94aが設けられ、これらL形固定具94aが係合可能に、アジテータ91の取付基部91aのフランジ93aの少し前側部分に係合凹部94bが形成され、シールド掘進機1Bの掘進動作時には、第2アジテータ固定機構94による固定が解除され、シールド掘進機1Bの解体時には、第2アジテータ固定機構94による固定が行われる。
【0103】
第2アジテータ固定機構94による固定については、先ず、筒部材90に対してアジテータ91の取付基部91aが径方向から複数の締結具(図示略)により固定され位置決めされてから、複数のL形固定具94aが筒部材90の外周面に後方突出状に固定され、各L形固定具94aの後方且つ径方向中心側へ突出した突出部94a1がアジテータ91の取付基部91aの係合凹部94b係合される。
【0104】
このシールド掘進機1Bによれば、アジテータ91の翼部91bをチャンバ6内に固定的に配置でき、このアジテータ91の翼部91bにより、チャンバ6内に回収されカッターヘッド30と可動隔壁26Bとの間に残留して供回りする掘削土を掻き落とすことができ、チャンバ6内の掘削土の攪拌能力も高まって、チャンバ6内の掘削土を円滑に排出でき、掘削能力の低下を防止できる。
【0105】
シールド掘進機1Bの解体時には、第2アジテータ固定機構94により、筒部材90にアジテータ91の取付基部91aを固定することで、アジテータ91の取付基部91aを固定環状部材45から固定解除した状態で筒部材90に支持でき、つまり、隔壁7によりチャンバ6側の土水圧を確実に受止めて、カッター支持機構8とカッター駆動機構9とを解体可能な状態にすることができる。尚、シールド掘進機1Bを解体する場合には、連結リング部材93bの前端部を筒部材90から固定解除することで、この連結リング部材93bをカッター支持機構8及びカッター駆動機構9と共に後側へ取外すことができる。
【0106】
尚、その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を付加して実施可能であり、本発明のシールド掘進機及びその解体方法については、泥水式シールド掘進機、土圧式シールド掘進機、等々の種々のシールド掘進機とその解体方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】実施例1のシールド掘進機の断面図である。
【図2】シールド掘進機の正面図である。
【図3】シールド掘進機の背面図である。
【図4】シールド掘進機の連結支持機構を含む要部の断面図である。
【図5】連結支持機構の位置合わせ時の断面図である。
【図6】連結支持機構の固定ナット部材操作時の断面図である。
【図7】連結支持機構の押込みボルト操作時の断面図である。
【図8】連結支持機構のボルト部材操作時の断面図である。
【図9】連結支持機構の締結ナット部材操作時の断面図である。
【図10】シールド掘進機のカッター支持機構等の解体準備時の断面図である。
【図11】シールド掘進機のカッター支持機構等の解体時の断面図である。
【図12】カッター駆動機構等の解体搬送時の断面図である。
【図13】実施例2のシールド掘進機の断面図である。
【図14】可動隔壁と中心側固定隔壁の正面図である。
【図15】シールド掘進機の連結支持機構を含む要部の断面図である。
【図16】実施例3の可動隔壁の正面図である。
【図17】シールド掘進機の連結支持機構を含む要部の断面図である。
【図18】図17の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0108】
1,1A,1B シールド掘進機
2 胴部材
3 前部環状部材
5 カッター機構
6 チャンバ
7,7A 隔壁
8 カッター支持機構
9 カッター駆動機構
10 第1反力受け
11 第2反力受け
12,85 環状シール
13 シール保持部材
14 連結支持機構
25 固定隔壁
26,26B,80 可動隔壁
30 カッターヘッド
45 固定環状部材
46 可動リング部材
47 リングギヤ
48 ピニオン
49 モータ
57 内周側シール保持部材
58 外周側シール保持部材
60 ネジ穴部
61 ボルト部材
62 ボルト貫通孔
64 固定ナット部材
67 締結ナット部材
86 第2の連結支持機構
90 筒部材
91 アジテータ
91a 取付基部
91b 翼部
92 シール部材
93 第1アジテータ固定機構
94 第2アジテータ固定機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部材と、胴部材の前端側に配設されたカッターヘッドを有するカッター機構と、胴部材の前端部分内側のチャンバの後端を仕切る隔壁とを備えたシールド掘進機において、
前記胴部材の内面に外周部が固着され、前面部に前記隔壁の外周側部分を形成する固定隔壁を有する前部環状部材と、
前記カッター機構の後端部に設けられ、外周側部分が固定隔壁の前側に位置して前記隔壁の中央側部分の少なくとも一部を形成する可動隔壁と、
前記前部環状部材の内周部に内嵌状に後側へ取外し可能に装着され、カッター機構を可動隔壁を介して回転可能に支持するカッター支持機構と、
前記カッター支持機構に装備され、カッター機構を可動隔壁を介して回転駆動するカッター駆動機構と、
前記可動隔壁の外周側部分と固定隔壁との間をシールする環状シールと、
前記シールド掘進機の掘進動作時には固定隔壁に対して可動隔壁を回転可能な状態に保持するとともに、シールド掘進機の解体時には可動隔壁の外周側部分と固定隔壁とを連結してカッター機構を前部環状部材に固定支持する連結支持機構と、
を備えたことを特徴とするシールド掘進機。
【請求項2】
前記カッター支持機構は、前部環状部材の内周部に内嵌され固定解除可能に固定された固定環状部材と、この固定環状部材に回転自在に内嵌支持され且つ可動隔壁に固定解除可能に固定された可動リング部材とを有し、
前記カッター駆動機構が、可動リング部材の後端部に連結されたリングギヤと、このリングギヤに噛合する複数のピニオンと、固定環状部材に固定されて複数のピニオンを夫々回転させる複数のモータとを有することを特徴とする請求項1に記載のシールド掘進機。
【請求項3】
前記カッター機構からカッター支持機構の可動リング部材を介して固定環状部材に伝わる回転方向及び後方向きの反力を前部環状部材で受止め可能に、固定環状部材の外周部を前部環状部材の内周部に連結解除可能に連結する複数の第1反力受けを周方向適当間隔おきに設けたことを特徴とする請求項2に記載のシールド掘進機。
【請求項4】
前記カッター機構からカッター支持機構の可動リング部材を介して固定環状部材に伝わる後方向きの反力を前部環状部材で受止め可能に、固定環状部材の後端部に後側から当接して前部環状部材の内周部に連結解除可能に連結される複数の第2反力受けを周方向適当間隔おきに設けたことを特徴とする請求項3に記載のシールド掘進機。
【請求項5】
前記連結支持機構は、
前記可動隔壁の外周側部分に周方向適当間隔おきに配設されて後方向開放状に形成された複数のネジ穴部と、
前記固定隔壁に複数のネジ穴部の配置と対応する周方向適当間隔おきに配設され且つ固定隔壁に挿通状に装着された複数のボルト部材であって、夫々、固定隔壁に対して前方へ非突出状に保持されるとともに固定隔壁の後側から操作されて前方へ突出しネジ穴部に螺合される複数のボルト部材と、
を有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のシールド掘進機。
【請求項6】
前記連結支持機構は、
前記各ボルト部材に固定隔壁の後側において外嵌状に螺合された締結ナット部材であって、ボルト部材がネジ穴部に螺合された状態で、固定隔壁の後側から操作されて可動隔壁をボルト部材を介して固定隔壁に締結する締結ナット部材を有することを特徴とする請求項5に記載のシールド掘進機。
【請求項7】
前記可動隔壁の後面に固着されて環状シールを保持する環状のシール保持部材を有し、
前記シール保持部材に複数のネジ穴部に夫々連通する複数のボルト貫通孔が形成されたことを特徴とする請求項6に記載のシールド掘進機。
【請求項8】
前記シール保持部材は、環状シールを径方向内外から挟持する内周側シール保持部材と外周側シール保持部材とからなり、
前記複数のボルト貫通孔が内周側シール保持部材に形成されたことを特徴とする請求項7に記載のシールド掘進機。
【請求項9】
前記連結支持機構は、
前記各ボルト部材が挿通され且つ固定隔壁に挿通状に螺合された固定ナット部材であって、固定隔壁に前方へ非突出状に保持されるとともに固定隔壁の後側から操作されて前方へ突出しシール保持部材に押圧される固定ナット部材を有することを特徴とする請求項7に記載のシールド掘進機。
【請求項10】
前記可動隔壁が円板状に形成されたことを特徴とする請求項5に記載のシールド掘進機。
【請求項11】
前記可動隔壁がリング状に形成され、
外周側部分が可動隔壁の前側又は後側に位置して前記隔壁の中心側部分を形成し且つ固定環状部材に固定解除可能に固定された円板状の中心側固定隔壁と、
前記シールド掘進機の掘進動作時には、中心側固定隔壁を固定環状部材に固定した状態で、中心側固定隔壁に対して可動隔壁を回転可能な状態に保持するとともに、シールド掘進機の解体時には、中心側固定隔壁の外周側部分と可動隔壁とを連結して、中心側固定隔壁を固定環状部材から固定解除した状態で可動隔壁に支持可能な第2の連結支持機構と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載のシールド掘進機。
【請求項12】
前記可動隔壁の中心部分に貫通状に固定された筒部材と、
前記筒部材に挿通された取付基部と取付基部の前端部に固定されてチャンバ内に配置された翼部とを有するアジテータと、
前記筒部材とアジテータの取付基部との間をシールするシール部材と、
前記アジテータの取付基部を固定環状部材に固定解除可能に固定する第1アジテータ固定機構と、
前記筒部材にアジテータの取付基部を固定して、アジテータの取付基部を固定環状部材から固定解除した状態で筒部材に支持可能な第2アジテータ固定機構と、
を備えたことを特徴とする請求項10に記載のシールド掘進機。
【請求項13】
請求項1のシールド掘進機を解体するシールド掘進機の解体方法であって、
前記シールド掘進機が所定の掘進完了位置に到達してから、環状シールで可動隔壁の外周側部分と固定隔壁との間がシールされた状態で、連結支持機構により可動隔壁の外周側部分と固定隔壁とを連結して、カッター機構と可動隔壁を前部環状部材に固定支持する連結支持工程と、
次に、前記カッター支持機構を可動隔壁から分離するとともに、前部環状部材からカッター支持機構を分離する分離工程と、
次に、前記前部環状部材に対してカッター支持機構をカッター駆動機構と共に後側へ取外す取外工程と、
を備えたことを特徴とするシールド掘進機の解体方法。
【請求項14】
少なくとも前記連結支持工程以降の工程と並行して実行され、隔壁の前方において地盤改良材を注入し、チャンバ内の掘削土及びカッターヘッドの前方の地山を改良する地盤改良工程を備えたことを特徴とする請求項13に記載のシールド掘進機の解体方法。
【請求項15】
前記地盤改良工程の後、前部環状部材と可動隔壁とカッター機構とを解体する最終解体工程を備えたことを特徴とする請求項14に記載のシールド掘進機の解体方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−68231(P2009−68231A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236728(P2007−236728)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【出願人】(303057365)株式会社間組 (138)
【Fターム(参考)】