説明

シールド線

【課題】シールド線の両端からドレン線を引き出してアース端子の接続を可能とする。
【解決手段】コア線11と電磁遮蔽性を有する編組スリーブ13との間に全長にわたって延在するドレン線12を挿入し、該ドレン線12は全長にわたって予めツヅラ折り15をなして屈折され或いは螺旋状に屈曲されており、該ドレン線12の伸長時の長さはシールド線10の全長Lよりも長くして余長を持たせ、所定長さに調尺切断されたシールド線10の両端から、前記ドレン線12の両端を引き出し可能な構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド線に関し、特に、ドレン線が挿入されているシールド線の電磁遮蔽性能の向上を図るものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に配索される信号線として、ノイズに対する遮蔽が要求される箇所にはシールド線が用いられている。このシールド線1として、通常、図8に示す編組シールド線が用いられている。該編組シールド線は絶縁被覆電線(コア線)2をシールド機能を有する編組チューブ3で被覆し、該編組スリーブ3を外被4で被覆している。
該編組シールド線1の加工手順は、調尺・切断したあと、図9(A)に示すように、先端から所要寸法だけ外被4を切断して編組スリーブ3とコア線2を露出させ、ついで、図9(B)に示すように、編組スリーブ3を軸線方向に切断してコア線2を引き出し、図9(C)に示すように、コア線2の先端に端子T1を圧着接続すると共に、編組チューブ3の撚って、その先端に端子T2をアース端子を圧着接続している。(特開平7−45311号公報等参照)
【0003】
【特許文献1】特開平7−45311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記加工方法によれば、編組スリーブ3からコア線2の引き出しが手作業で時間がかかる問題があると共に、編組スリーブをアース線として使用するため、シールドの無い部分が存在し、シールド性能が低下する問題がある。
また、ノイズの種類によっては、シールド線の長さ方向の両端からシールド層のアースをとることで効果的な遮蔽を行うことができる場合もあるが、その場合には、前記編組スリーブをアース線として利用すると、両端にシールドが無い部分が存在し、両端でシールド性能が低下する問題がある。
【0005】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、シールド層の両端でアース接続が容易にできると共に、両端のシールド性能を低下させず、優れた電磁遮蔽性能を有するシールド線の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、第1の発明として、芯線を絶縁被覆層で被覆している1本あるいは複数本のコア線と、該コア線を被覆している電磁遮蔽性を有する編組スリーブを備えたシールド線において、
前記コア線と編組スリーブとの間に全長にわたって延在するドレン線を挿入し、該ドレン線は全長にわたって予めツヅラ折りに屈折され或いは螺旋状に屈曲されており、該ドレン線の伸長時の長さはシールド線全長よりも長くして余長を持たせ、ドレン線をシールド線の両端から引き出し可能としていることを特徴とするシールド線を提供している。
【0007】
前記シールド線であれば、ドレン線を一端側から引き出しても、前記余長部分が伸長することにより、他端側でドレン線は引き込まれずにすむ。従って、他端側からもドレン線を同じように容易に引き出すことができるため、ドレン線の両端にアース接続することが可能となり、効果的に電磁遮蔽性能を高めることができる。
【0008】
前記ドレン線をツヅラ折りして設ける余長は、最大伸長時のドレン線の長さがシールド線の全長に対して120%〜200%となるように設定することが好ましい。これは、120%未満では、余長が短すぎて、一端側からドレン線を引き出したときに他端側が引き込まれてしまう可能性があり、200%を超えると、余長部が嵩高となり、シールド線の径が太くなってしまうことに因る。
【0009】
また、第2の発明として、芯線を絶縁被覆層で被覆している1本あるいは複数本のコア線と、該コア線を被覆している電磁遮蔽性を有する編組スリーブを備えたシールド線において、
前記コア線と編組スリーブとの間に全長にわたって直線状の第1のドレン線と、第2のドレン線を挿入し、シールド線の一端から前記第1のドレン線、他端から第2のドレン線を引き出し可能な構成としていることを特徴とするシールド線を提供している。
【0010】
このように連続しない2本のドレン線を挿入しておくことにより、一端側から第1のドレン線を引き出しても第2のドレン線には影響せず、該第2のドレン線を他端側から容易に引き出すことができる。従って、1本のシールド線に対して両端2箇所からアースをとることが可能となり、電磁遮蔽性能を効果的に高めることができる。
【0011】
前記シールド線は前記編組スリーブを被覆している絶縁樹脂からなる外被を備えている。
【0012】
また、前記シールド線の両端から引き出したドレン線の端末に、夫々アース接続用の端子を接続している。
あるいは、一端から引き出したドレン線の端末にアース端子を接続すると共に、他端から引き出したドレン線の端末にコネクタに挿入する端子を接続し、他のアース線と接続してもよい。
【0013】
前記シールド線からドレン線と共に引き出すコア線は、シールド線の長さ方向の端末で外被が所要長さ剥離されて編組スリーブが露出した状態で突出し、前記端末に端子接続された後に、コア線を前記突出させて編組スリーブで被覆していることが好ましい。
具体的には、外被から露出した編組スリーブを手繰り寄せることで内部のドレン線とコア線を露出させ、ドレン線とコア線の端末加工後に編組スリーブを元に戻すことにより、ドレン線とコア線の根元近傍まで編組スリーブで被覆することができる。
これにより、電磁遮蔽性能を有する編組スリーブから露出するコア線を最小化することができ、電磁遮蔽性能の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
上述したように、第1の発明によれば、シールド線の一端側からドレン線を引き出してもドレン線の余長部が伸長するだけであるため、他端側からもドレン線を引き出すことができる。
また、第2の発明においても、2本のドレン線がシールド線の全長にわたって挿入しているため、1本のドレン線をシールド線の一端から引き出して他端がシールド線内に引き込まれても、他のドレン線の先端はシールド線の他端に位置しているため、該他のドレン線をシールド線の他端から引き出すことができる。
従って、シールド線の両端からドレン線を引き出してアースをとることが可能となるため、電磁遮蔽性能を効果的に高めることができる。
また、外被から突出させたコア線の露出部を編組スリーブで被覆することにより、シールド層からの露出部分を小さくでき、電磁遮蔽性能の低下を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3に第一実施形態を示す。
シールド線10は、図1に示すように、2本のコア線11と、1本のドレン線12とを、電磁遮蔽性を有する金属編組スリーブ13で被覆し、該編組スリーブ13の外周を絶縁樹脂からなる外被14で被覆している。
前記コア線11は、芯線11aを絶縁被覆層11bで被覆した絶縁被覆電線である。
前記ドレン線12は、絶縁被覆されていない単芯線であり、図2に示すように、前記コア線11と前記編組スリーブ13との間に全長にわたって延在するように挿入され、該編組スリーブ13と接触させている。
【0016】
前記ドレン線12は、予め全長にわたってツヅラ折り15となるように加工している。このツヅラ折り15を最大に伸長させた状態におけるドレン線12の全長は、シールド線10の全長Lに対して120%〜200%の範囲内となるように設定している。
【0017】
次に、前記シールド線10の端末加工手順を説明する。
まず、図3(A)に示す所定長さに調尺切断したシールド線10の一端10aの外被14を、図3(B)に示すように所要長さ剥離する。
次いで、図3(C)に示すように、外被14より突出した編組スリーブ13を収縮させながら外被14側に手繰り寄せ、編組スリーブ13の先端からコア線11とドレン線12の一端12aとを突出させる。
次いで、コア線11を所要寸法引き出して、図3(D)に示すように、該コア線11の端末にコネクタ接続用の端子21を圧着接続すると共に、ドレン線12の一端12aにアース端子22を圧着接続する。
【0018】
前記アース端子22と接続するためにシールド線10の一端10aから引き出されたドレン線12は、図4(A)に示すように、ツヅラ折り15が引き出し方向に伸長することにより、該ドレン線12の他端12bをシールド線10の内部を引き込むことなく実現するため、ドレン線12の他端12bはシールド線10の他端10bの位置することとなる。
【0019】
シールド線10の他端10bにおいても、図3(E)に示すように、前記一端10aと同様の処理を行い、コア線11の端末にコネクタ接続用の端子21を接続すると共に、ドレン線12の他端12bにアース端子22を接続している。其の際、ドレン線12は、図4(B)に示すように、他端側においてもツヅラ折り15が伸長してドレン線12の他端12bを引き出すことができる。
【0020】
前記のように、シールド線10の両端から引き出されて端子21が接続されたコア線11には、図3(F)に示すように、手繰り寄せていた編組スリーブ13を伸ばして元に戻し、該編組スリーブ13でコア線11の露出部分を被覆している。
【0021】
このように、シールド線10は、ドレン線12にツヅラ折り15を形成していることにより、該ツヅラ折り15の伸長を利用して両端から引き出すことができ、ドレン線12の両端へのアース端子の接続が可能となり、電磁遮蔽性能を効果的に高めることができる。
【0022】
また、シールド層である編組スリーブ13の端末を従来のように皮剥ぎせず、手繰り寄せてドレン線12やコア線11を突出させ、端末に端子を接続後に編組スリーブ13を元に戻すことによって、コア線11の露出部分をより広範囲に被覆することができる。
【0023】
図5に前記第一実施形態の変形例を示す。
ドレン線12に余長を設ける方法として、ドレン線12を全長にわたって螺旋状に屈曲させ所謂カール電線状としている。この場合も、螺旋部の伸長を利用してドレン線12を両端から引き出すことができるため、シールド線10の両端からドレン線12を引き出してアース端子を接続することができる。
【0024】
図6および図7に本発明の第二実施形態を示す。
第二実施形態では、編組スリーブ13の内部に2本のコア線11と、第1ドレン線12−1と第2ドレン線12−2とからなう2本のドレン線を挿入している。
【0025】
第1ドレン線12−1と第2ドレン線12−2は、いずれも直線状の単芯線からなり、シールド線10の全長にわたってコア線11と編組スリーブ13との間に挿入し、いずれも編組スリーブ13に接触させている。
【0026】
第1ドレン線12−1は、図7に示すように、シールド線10の一端10aから引き出し、端末にアース端子22を接続している。このとき、他端側では第1ドレン線12−1が引き込まれて短くなるが、第2ドレン線12−2の端末は、第1ドレン線12−1の引き出しの影響を受けることなく、シールド線10の他端末10aの位置に切り揃えられたままとなる。これにより、シールド線10の他端10bから第2ドレン線12−2を容易に引き出すことができ、該他端末にもアース端子22を接続することができる。
なお、図7においてコア線11をシールド線10から引き出して、その端末に端子を接続する構成は前記第一実施形態と同様であり、図示を省略している。
【0027】
このように、本実施形態においても、シールド線10の両端からドレン線12−1、12−2を引き出し、それぞれに端子22を接続することができるため、1本のシールド線10に対して両端2箇所からアースをとることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第一実施形態に係るシールド線の斜視図である。
【図2】図1のシールド線の断面図である。
【図3】(A)〜(F)は、図1に示すシールド線の端末加工手順を示す図である。
【図4】(A)(B)はドレン線が引き出された時の状態を示す図面である。
【図5】第一実施形態の変形例を示す断面図である。
【図6】第二実施形態のシールド線を示す断面図である。
【図7】第二実施形態のシールド線のドレン線に端子を接続した状態の断面図である。
【図8】従来の編組シールド線を示す図面である。
【図9】(A)〜(C)編組シールド線の加工手順を示す図面である。
【符号の説明】
【0029】
10 シールド線
10a、10b 端部
11 コア線
12 ドレン線
12a 一端
12b 他端
13 編組スリーブ
14 外被
15 ツヅラ折り
16 熱収縮チューブ
21 端子
22 アース端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線を絶縁被覆層で被覆している1本あるいは複数本のコア線と、該コア線を被覆している電磁遮蔽性を有する編組スリーブを備えたシールド線において、
前記コア線と編組スリーブとの間に全長にわたって延在するドレン線を挿入し、該ドレン線は全長にわたって予めツヅラ折りに屈折され或いは螺旋状に屈曲されており、該ドレン線の伸長時の長さはシールド線全長よりも長くして余長を持たせ、ドレン線をシールド線の両端から引き出し可能としていることを特徴とするシールド線。
【請求項2】
芯線を絶縁被覆層で被覆している1本あるいは複数本のコア線と、該コア線を被覆している電磁遮蔽性を有する編組スリーブを備えたシールド線において、
前記コア線と編組スリーブとの間に全長にわたって直線状の第1のドレン線と、第2のドレン線を挿入し、シールド線の一端から前記第1のドレン線、他端から第2のドレン線を引き出し可能な構成としていることを特徴とするシールド線。
【請求項3】
前記編組スリーブを被覆している絶縁樹脂からなる外被を備えている請求項1または請求項2に記載のシールド線。
【請求項4】
前記シールド線の両端から引き出したドレン線の端末に夫々アース接続用の端子を接続している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシールド線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−198577(P2008−198577A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35540(P2007−35540)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】