説明

シール材、その製造方法並びにそのシール材を用いた固体酸化物形燃料電池

【課題】より広い温度域で融着できるシール材及びその製造方法並びにそのシール材を用いた固体酸化物形燃料電池を提供する。
【解決手段】アルカリ含有非晶質シリカ粒子をみず供給後に300℃以上500℃以下に加熱することにより発泡させる脱炭素処理により炭素含有量C/Siが低下されたアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を含有する、シール材とし、該シール材は固体酸化物形燃料電池の多孔質基材及び緻密質基材をそれぞれシールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材及びその製造方法並びにそのシール材を用いた固体酸化物形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の作動温度である500℃以上800℃以下の温度範囲で使用可能なガスシール材として、ソーダガラスやマイカ等のガラスおよびセラミックス系シール材が検討されている(特許文献1)。また、水ガラス等を主成分とする液体シール材も検討されている(特許文献2)
【0003】
しかしながら、これらのシール材は、いずれも良好な絶縁性と確実なシール性とを兼ね備えてはいなかった。例えば、ガラスおよびセラミックス系シール材では柔軟性に乏しく、相手材の表面形状によってシール性が低下することがある。例えば、ソーダガラスでは高温において比較的導電性を有してしまうという問題があり、さらに500℃付近で亀裂が入ってしまい、シール性を損なうという問題があった。また、マイカや結晶ガラスによるシール材については、シール性に課題があった。さらに、接着剤等の液体シール材では、緻密基材へのシールでは問題がないが、多孔質基材については、液体シール材の基材への染み込みのために、シール性を保持するのは難しかった。
【0004】
そこで、本発明者らは、ナトリウム含有単分散球状粒子の合成方法(非特許文献1)を利用し、このような球状粒子を高温での絶縁性シール材への適用を検討した(特許文献3)。
【特許文献1】特開2004−39573号公報
【特許文献2】特開2001−319670号公報
【特許文献3】特開2008−10191号公報
【非特許文献1】S. Suda, et al., J. Non-Cryst. Solids, 321, 3-9 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シール材は、通常、シールすべき部位にシール材料を配し、その後、シール部位を加熱することにより、シール材をシール部位に固着させてシールする。しかしながら、上記特許文献1〜3のいずれのシール材も、シール部をシール可能な温度(シール材融着温度)は、シール材の溶融温度に依存し、それぞれの溶融温度近傍の極めて狭い範囲内に限定されていた。シール材融着用温度が限定されているということは、シール時の温度制御を極めて正確に行う必要があり、シール性を低下させるおそれがあった。また、相手材の耐熱性や材質、さらには、他のシール材との併用等に幅広く対応してシール性を確保する観点から、より幅のあるシール材融着温度を有するシール材が求められていた。
【0006】
さらに、上記特許文献3に記載のシール材は、シール部位に融着後、500℃を大きく下回ると亀裂等によりシール性を確保できなかった。SOFC等においては、突発的にあるいは必要に応じて作動温度を下回る温度になる場合もあり、そのような場合のシール性も確保しておく必要があった。
【0007】
そこで、本発明は、より広い温度域で融着できるシール材、その製造方法並びに当該シール材を備えたSOFCを提供することを一つの目的とする。また、本発明は、さらに、例えば、SOFCの作動温度域よりも低い温度域でもシール性を発揮するシール材を提供することを他の一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、シール材の溶融性をコントロールして溶融温度を低下させるべく種々の検討をしたところ、シール材の作製時においてある処理を実施することで溶融温度を低下させることができるという知見を得た。また、当該処理により溶融温度が低下したシール材は、また、そのガラス転移温度以下の温度でもシール性を発揮できるという知見を得た。本発明者らは、これらの知見に基づき、本発明を完成した。本発明によれば、以下の手段が提供される。
【0009】
本発明によれば、脱炭素処理により炭素含有量C/Siが低下されたアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を含有する、シール材が提供される。このシール材において、前記脱炭素処理は、前記アルカリ含有非晶質シリカ粒子を水供給後に加熱により発泡させることを含むことができる。また、前記炭素含有量C/Siは、0.015以下であることが好ましい。このシール材は、さらに、アルカリ金属を実質的に含有しない非晶質シリカ粒子を含有することができる。また、前記アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子のアルカリ金属/Siのモル比であるアルカリ金属含有量が0.40以上0.85以下であることが好ましい。さらに、前記アルカリ金属はナトリウムを含んでいることが好ましい。本発明のシール材は、溶融温度が780℃以下であることが好ましく、また、室温以上800℃以下においてシール性を有することが好ましい。
【0010】
本発明のシール材は、脱炭素処理により炭素含有量C/Siが0.015以下に低下されたアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子と、アルカリ金属を実質的に含有しない非晶質シリカ粒子と、を含有し、シール材の融着温度が770℃以上850℃以下であることが好ましい。
【0011】
本発明のシール材は、成形体、粉末、スラリー、ペースト、ゾル及びゲルから選択されるいずれかであることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、シール材の製造方法であって、アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を準備する工程と、前記アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子に水を供給し加熱に伴う発泡により脱炭素する工程と、前記脱炭素後の前記アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を用いて前記シール材を作製する工程と、を備える、製造方法が提供される。本発明の製造方法においては、前記脱炭素工程は、300℃以上500℃以下に加熱することを含むことができ、また、前記アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子の炭素含有量C/Siが、0.015以下となるように実施することもできる。
【0013】
また、前記シール材作製工程は、前記脱炭素後のアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子と前記アルカリ金属非含有非晶質シリカ粒子とを混合後、前記シール材を作製することを含むものであってもよい。
【0014】
本発明によれば、固体酸化物形燃料電池であって、上記いずれかに記載のシール材によるシール部位を備える、電池が提供される。前記シール材は前記固体酸化物形燃料電池の多孔質基材及び緻密質基材をそれぞれシールするものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のシール材は、脱炭素処理により炭素含有量C/Siが低下されたアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を含有している。脱炭素処理済みのアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を用いることにより、従来に比較してより広い温度域のシール材融着温度を有するシール材となっている。本発明によれば従来の加湿処理に比較すると、最終的に得られるシール材の溶融温度を低下させ、これによりシール材の融着温度を低下させることができる。また、シール材の溶融温度を超えても気泡による気孔の形成が抑制されるため、気孔によりシール性が阻害されない範囲で、シール材の溶融温度を超えてシール材融着温度範囲を確保することができる。さらに意外なことに、ガラス転移温度以下の温度であっても、シール性を確保する物性を維持し、室温〜シール材融着温度域(800℃程度)の広い温度域でのシール性を発揮することができる。
【0016】
以上のことから、本発明のシール材は、シール材の融着温度に自由度が向上し、かつ広い温度域でシール性を発揮可能となっている。したがって、作動温度が800℃以下の固体酸化物形燃料電池におけるシール材として用いることができる。また、SOFCに適用した場合、室温から800℃までの広い温度環境下でシール性を発揮するため、SOFCの故障、点検等の非作動時における低温時においてもシール材として機能し、再び作動温度でもシール性を発揮可能である。
【0017】
あくまで推論であって本発明を拘束するものではないが、従来(特許文献3)に記載の加湿処理に比較して、本発明の脱炭素処理によれば、被シール面の凹凸にも適切に追従可能な粘性、可塑性、可撓性若しくは柔軟性が向上されるとともにそのコントロールが容易となる。本発明の脱炭素処理は、シール材の状態でなく、アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子粉末に対して直接実施し、加湿処理よりもさらに均一に脱炭素処理が可能となることによるものであると考えられる。以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
(シール材)
本発明のシール材は、室温(0℃)以上800℃以下の環境下でのシール性に優れており、こうした温度環境用のシール材として用いることができる。したがって、500℃以上800℃以下で作動するSOFCのシール材として好ましく適用される。なお、適用されるSOFCは、平板型のほか、円筒型、自立型、支持膜型、一体積層型などの形態を全て含むものである。本発明のシール材は、例えば、SOFCのセパレーター相互間、電池とセパレーター間及び燃料極や空気極である電極間などのシール部位をシールすることができる。特に、後述するように異なるアルカリ金属含有量のシリカ粒子を含むシール材の場合には、電極などの多孔質基材、好ましくは、気孔率が20%程度以上の多孔質基材のシール材として好ましい。多孔質基材は、好ましくは気孔率が30%以上である。
【0019】
(シール材の組成)
本発明のシール材は、アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を含有している。アルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウムなどのアルカリ金属から選択される1種又は2種以上であればよい。シール性を発揮させるためのシール材の溶融温度を考慮するとナトリウムを含むことが好ましい。アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子の形態は、球状、不定形状、薄片状等特に限定しないが、好ましくは球状である。球状であるとバインダ等と混合したときに流動性に優れたスラリーを合成できるからである。また、アルカリ金属含有シリカ粒子の平均粒子径は、0.1μm以上0.8μm以下であることが好ましい。この範囲であると粒子径のそろったアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子が合成できるからである。また、0.1μm未満であると粒子同士が凝集してしまい単分散球状粒子の合成が難しく、0.8μm以上であると粒子径分布が広くなるあるいはバイモーダルな分布となるからである。なお、平均粒子径は走査型電子顕微鏡により測定することができる。
【0020】
アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子の合成方法は特に限定しないが、S. Suda, et al., J. Non-Cryst. Solids, 321, 3-9 (2003)に記載のゾルゲル方法又はこれに準じた方法を用いることができる。例えば、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)などの金属アルコキシドのエタノール溶液、あるいは当該エタノール溶液に対して必要に応じ分散剤としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などの高分子のエタノール溶液とを混合した混液を撹拌しつつ、NaOHのエタノール・水混液を添加して、縮合反応を生じさせ、適宜エタノールなどの有機溶媒を添加して固液分離後、固形分を乾燥することによってアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を得ることができる。こうして得られるアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子は、非晶質シリカ粒子の中にアルカリ金属を均質に含有させることができるという特徴を有する。
【0021】
(脱炭素処理)
アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子は、炭素処理により炭素含有量C/Siが低下されたアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を含んでいることが好ましい。炭素処理により当該炭素処理前よりも炭素含有量が低下された当該非晶質シリカ粒子を用いることで、シール材の溶融温度が低くなり、また、シール材の粘性等が低下するなどの特性変化が得られる。
【0022】
脱炭素処理は、例えば、以下の方法により実施できる。まず、アルカリ含有非晶質シリカ粒子に水を供給し加水分解処理を行う。シリカ粒子には、残存アルコキシル基が含まれており、これらのアルコキシル基が加水分解されアルコールとシラノール基とが生成すると考えられる。温度は、特に限定しないが、10℃以上75℃以下程度とすることができる。アルカリ含有非晶質シリカ粒子に対する水の供給量は、アルカリ含有非晶質シリカ粒子の重量に対して、1.5倍以上3.0倍以下の水量が望ましい。1.5倍以下の水量では、アルカリ含有非晶質シリカ粒子の分散性が不十分であり、溶液の粘性が高くなるため、加水分解処理の促進を妨げる。また、水と接触させる時間は、特に限定しないが、12時間以上48時間以下程度とすることができ、多くは24時間程度である。アルカリ含有非晶質シリカ粒子は、加水分解中は継続して攪拌するのが好ましい。
【0023】
後段で説明するように、異なる濃度のアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を用いるときには、これらを合わせて脱炭素処理してもよいし、個々に行ってもよい。また、シール材にアルカリ金属非含有非晶質シリカ粒子を用いるときには、当該非晶質シリカ粒子を混合した状態で脱炭素処理をしてもよい。なお、アルカリ金属非含有非晶質シリカ粒子の脱炭素処理は、乾式法(600℃まで昇温後、12時間保持する加熱処理)により行うことができるため、当該非晶質シリカ粒子については、湿式法に基づく水供給による加水分解処理及び低温加熱処理による脱炭素処理を必ずしも行わなくてもよい。
【0024】
次いで、加水分解処理後のアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子処理液を、加熱し、発泡させる。この処理は、加水分解処理で生じたアルコール等の炭素成分を二酸化炭素等として発泡により除去するものであると考えられる。加熱温度は、発泡状態が得られる温度であればよいが、200℃以上、より好ましくは、250℃以上、さらに好ましくは300℃以上とする。また、上限は500℃以下とすることが好ましい。
【0025】
発泡処理は、加熱により発泡が開始し、発泡がおおよそ収まるまで実施することが好ましい。さらに好ましくは、初期の発泡が終了後も、発泡温度近傍で加熱を継続する。こうすることで、初期昇温時の急激な発泡では完了していない発泡状態の小さい部分の炭素除去の促進となるからである。追加の加熱時間は、おおよそ数時間から20時間程度とすることができる。
【0026】
こうした脱炭素処理は、アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子の炭素含有量C/Siを指標として実施することができる。例えば、炭素含有量が、0.015以下となるように実施することができる。炭素含有量は、溶融温度制御に有効なパラメータであるからである。炭素含有量は、炭素分析装置により測定することができる。また、Si含有量は、EDS(エネルギー分散型X線分光法)を用いた元素分析により、組成分析結果(例えば、Na/Si=0.6)を取得し、この組成分析結果から、0.6Na2O・SiO2といった組成式を取得し、この分子量からSiモル数を算出することができる。
【0027】
アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子においては、アルカリ金属含有量(アルカリ金属/Siのモル比)が0.40以上0.85以下の範囲とすることができる。この範囲であると、均質な非晶質シリカ粒子を合成しやすく、アルカリ金属/Siのモル比は、0.85を超えると非晶質シリカ粒子の表面やそのほかの部分にアルカリ金属塩が析出してしまい、均質な非晶質シリカ粒子を合成しにくくなるからである。より好ましくは、0.40以上0.75以下の範囲で調整することができる。アルカリ金属含有量により溶融温度を調整でき、例えば、ナトリウム含有量が高いと溶融温度が低くなる。また、ナトリウム含有量を増大させるとシールの絶縁性が低下する。
【0028】
アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子は、単独のアルカリ金属を粒子中に有するアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を用いてもよいし、2種以上のアルカリ金属を一つの粒子に含むアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を用いてもよいし、2種以上のアルカリ金属を異なる粒子中に含む混合粒子を用いてもよい。
【0029】
また、異なるアルカリ金属含有量の非晶質シリカ粒子を用いることができる。異なるアルカリ金属含有量の非晶質シリカ粒子を用いることで、溶融温度の調節が容易となり、また、アルカリ金属含有量の異なるシリカ粒子が接触して高濃度アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子中のアルカリ金属が低濃度アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子の二酸化ケイ素と反応することで局所的に溶融温度を下げて、後者の表面および表面近傍のみを溶融することによって、たとえば、多孔質基材に対して、充填材と溶融材を兼ね備えることができる。
【0030】
異なるアルカリ金属含有量の非晶質シリカ粒子を用いる場合、少なくともアルカリ金属含有量が0.40以上0.85以下のアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子と、アルカリ金属含有量が0.40未満であるアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子とを含むことが好ましい。こうした2種類の濃度のアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を含むことができ、溶融温度について大きな局所的変化を生じさせることができる。好ましくは、高濃度アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子は、アルカリ金属含有量が0.50以上であり、さらに好ましくは0.60以上である。
【0031】
低濃度アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子のアルカリ金属含有量は、0.20以下であり、さらに好ましくは0である。なお、アルカリ金属含有量が0であるときは、アルカリ金属を実質的に含有しないアルカリ金属非含有非晶質シリカ粒子に相当する。好ましい組み合わせは、高濃度非晶質アルカリ金属含有シリカ粒子のアルカリ金属含有量が約0.60であり、低濃度アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子の金属含有量が0である(アルカリ金属非含有非晶質シリカ粒子である)。
【0032】
高濃度アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子と低濃度アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子との配合比率は、得ようとする溶融性能に応じて設定することができるが、高濃度および低濃度アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子(アルカリ金属非含有非晶質シリカ粒子を含む。)の全量100質量部に対して10質量部以上40質量部以下の範囲で低濃度アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を配合することが好ましい。当該配合比率は、特に、アルカリ金属がナトリウムの場合において好ましい。より好ましくは、高濃度および低濃度アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子の全量に対して10質量部以上30質量部以下の範囲で低濃度アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を配合する。
【0033】
シール材は、多孔質基材に対しては充てん材としての機能を発揮できることが好ましく、緻密質基材に対しては溶融材としての機能を発揮できることが好ましいが、本発明のシール材が異なるアルカリ金属含有量の非晶質シリカ粒子を用いる場合、一つのシール材でこうした2種類の機能を同時に実現し、多孔質基材にも緻密質基材にも同時にシール性を発揮できる。なお、多孔質基材には、相対的にアルカリ金属濃度の低いシール材(アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子が少ないまたは低濃度アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を用いる)を適用することが好ましく、緻密基材には、アルカリ金属濃度が高いシール材(アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子が多いまたは高濃度アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を用いる)を適用するようにしてもよい。例えば、多孔質基材と緻密質基材との間をシールする場合には、これらを組み合わせたシール材としてもよく、異なる濃度のシート体を積層するなどしてアルカリ金属濃度について傾斜組成を有するようにしてもよい。
【0034】
アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子の組成及びアルカリ金属非含有非晶質シリカ粒子の配合により、シール材の熱的特性(溶融温度)や動的粘弾性を制御することが可能である。本発明によれば、脱炭素処理によって、非晶質シリカ粒子等に由来する炭素が低減されているため、かかる熱的特性及び動的粘弾性のコントロールが容易になったと考えられる。
【0035】
(シール材の形態)
本発明のシール材は、各種形態を採ることができる。すなわち、こうしたアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を含んで成形されたシート成形体などの成形体、アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を含む粉末、アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を含むスラリー、アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を含むゾル、アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を含むゲル、アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を含むペーストなどの形態が挙げられる。こうした各種形態のシール材は、アルカリ金属含有シリカ粒子のみから構成されていてもよいし、適当な媒体やバインダ等を用いて構成されていてもよい。例えば、媒体としては、水、エタノールなどのアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、エーテル及びこれらの2種類以上の混液等を用いることができる。また、バインダとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、等を用いることができる。なかでも、PVBを用いることが得られたシート成形体等のシール材に含まれる非晶質シリカ粒子濃度やシート成形体等の柔軟性などの観点から好ましい。
【0036】
本発明のシール材のシール材融着温度(下限)は、示差走査熱分析測定により測定できる溶融温度に基づいて取得できる。当該溶融温度以上でシール材を融着できることがわかる。また、動的粘弾性挙動を熱機械分析により測定することにより得られる貯蔵弾性率の低下によっても、適切なシール材融着温度を確認できる。本発明のシール材は、意外にも、溶融温度以上の温度で、動的粘弾性挙動が変動し貯蔵弾性率が大きく変化する。すなわち、貯蔵弾性率(あるいはtanδ)がシールが可能な温度域では、貯蔵弾性率が温度上昇に対して急速に低下し、この変化が粘性的要素を反映する損失弾性率の増加と対応して、損失正接:tanδが、貯蔵弾性率の低下と同じ温度域で上昇する。
【0037】
一般的にシール材は、溶融温度近傍をシール材の融着温度とするが、本発明のシール材によれば、シール溶融温度を低減できるため、シール材融着温度が低減されている。また、これにより、相手材等の耐熱性や他のシール材の溶融温度に応じてシール材融着のための温度を容易に確保できる。
【0038】
また、本発明のシール材は、溶融温度近傍以上の所定温度域をシール材融着温度とすることができる。本発明のシール材はアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子において脱炭素処理済みであり炭素含有量が低減されているため、溶融温度を超えても気泡の発生が抑制されている。このため、溶融温度を超えて一定範囲の温度域でシール材を融着することができる。
【0039】
本発明のシール材は、好ましくは溶融温度が780℃以下である。当該範囲であると、相手材及び併用する他のシール材の選択自由度が向上し、シール融着時における他の部材への温度による悪影響も低減できる。
【0040】
本発明のシール材融着温度は770℃以上とすることが好ましい。より好ましくは、シール材融着温度として770℃以上850℃以下とする。850℃は、融着シール層中の気泡量が低減された有効シール層を維持できる上限温度である。こうしたシール材融着温度域は、脱炭素処理により炭素含有量C/Siが0.015以下に低下されたアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子と、アルカリ金属を実質的に含有しない非晶質シリカ粒子を用いることによって得られやすい。
【0041】
本発明のシール材は、また、室温以上800℃以下においてシール性を有することができる。すなわち、一旦シール材として融着後、室温程度の低温域に冷却した状態でもシール性を発揮でき、再び500℃以上に加熱しても、シール性を発揮できる。こうした特性は、シール材の信頼性を確保する点で重要である。こうした特性は、脱炭素処理により炭素含有量C/Siが0.015以下に低下されたアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子と、アルカリ金属を実質的に含有しない非晶質シリカ粒子を用いることによって得られやすい。
【0042】
(シール材の製造方法)
本発明のシール材の製造方法は、アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を準備する工程と、前記アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子に水を供給し加熱に伴う発泡により脱炭素する工程と、前記脱炭素後の前記アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を用いて前記シール材を作製する工程と、を備えることができる。アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子の準備工程は、アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を合成する工程であってもよいし、アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を合成以外の方法で入手する工程であってもよい。
【0043】
脱炭素工程は、既に説明した態様で実施することができる。本発明における脱炭素工程によれば、最終的に得られるシール材において予想外の熱的特性と動的粘弾性を得ることができる。
【0044】
アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を含むシール材の調製は、既述したシール材の各種形態に応じて異なる。シート成形体などの成形体の場合には、アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子と適当なバインダ及び媒体等を混合してスラリー等としてドクターブレード等によりシート化し、乾燥することにより得ることができる。成形により付与する三次元形態や二次形態は任意である。また、粉末の場合には、必要あれば適当な基材とともにあるいはアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子のみを混合することにより得ることができる。スラリーは、アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子と適当なスラリー用基材や媒体とともに混合することにより得ることができる。ゾルは、適当な粒子径のアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を媒体に分散させることにより得ることができ、ゲルはこうしたゾルを乾燥等することにより得ることができる。
【0045】
成形体、ペースト、スラリー等については適宜乾燥することができる。なお、必要に応じて、特許文献3に記載の加湿処理を行うことができる。加湿処理については既に述べた通りである。なお、こうした加湿処理は、後述するようにSOFCのシール構造を構築時においてその場で行ってもよい。
【0046】
(本シール材によりシールされたSOFCの製造方法及びSOFCのシール方法)
本発明のSOFCの製造方法及び本発明のシール材を用いたSOFCのシール方法は、SOFCのシール部位にシール材を供給する工程と、該供給したシール材を溶融して前記シール部位をシールする工程とを備えることができる。
【0047】
まず、SOFCの単位セルの構築及び積層にあたり、シールが必要な箇所(シール部位)に本発明のシール材を供給する。本発明のシール材は、シート成形体であれば、シール部位に沿って密着させ又は挟持等させることができる。ペーストやスラリー、ゲル及びゾル等の流動性を有する形態の場合、塗布等を採用できる。なお、粘度を低くすることにより噴霧することも可能である。また、粉末形態の場合には、懸濁液や他の流動性形態とし後、塗布や噴霧等の方法で付与すればよい。成形体やペースト等の形態のシール材にあっては、適宜予め加湿処理した加湿処理体をシール部位に供給することができるが、シール部位に供給後、その場で加湿処理をしてもよい。
【0048】
既述したように、電極などの多孔質基材のシール部位においては、異なる濃度でアルカリ金属を含有した非晶質シリカ粒子を用いたシール材を供給することが好ましい。こうしたシール材を供給し、後段工程で溶融してシールすることにより、多孔質基材にシール材が過度に浸透してシール部位に空隙(直径10μm以上の気孔)を生じさせることもなく良好にシールすることができる。特に、気孔率20%以上、より好ましくは30%以上の多孔質電極におけるシール部位に適用することが有効である。
【0049】
この後、シール材の溶融温度以上であって相手材あるいは併用する材の上限温度以下の温度でSOFCを加熱処理することで、シール材を全体あるいは部分溶融させてシール部位をシールさせる。この加熱処理は、SOFCの運転時において実施してもよいし、SOFCの運転に先立って別個の加熱処理として行ってもよい。以上の工程により、本シール材によってシールされたSOFCを得ることができる。
【0050】
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0051】
(ナトリウム含有非晶質シリカ粒子の調製)
770℃以上850℃以下で融着するシート成形体の前駆体として、S.Suda,et al.,J.Non−Cryst.Solids,321,3−9(2003)に記載の方法に準じて、ナトリウムを含有する非晶質シリカ球状粒子(NS粒子)をゾルゲル法で合成した。即ち、TEOS:37.295gと0.3mass% のHPCのアルコール溶液309.093gを混合して混合液A及び、10M NaOH水溶液19.240gとエタノール308.040gとイオン交換水16.257gを混合して混合液Bを調製した。混合液A を50℃の温水中で30分間撹拌し、混合液Bを1時間かけて徐々に滴下混合した。その後、室温にて30分間放冷した。放冷後の混合液の半量ずつを、4000rpm(20g)で30分間遠心分離後、上清液を除去して遠沈物にエタノール200mlを加えて、更に4000rpmで30分間遠心分離後、上清液を除去した遠沈物をビーカーに移し、50℃の真空乾燥機中で20時間乾燥した。
【0052】
NS粒子の水含浸処理は、真空乾燥後のNS粒子とイオン交換水の重量比が1.0:1.5になるように調製し、NS粒子をイオン交換水中で混合した。ボールミルを用いて、24時間攪拌混合させ、加水分解処理を十分に行った。その後、水含浸処理後の低粘度の溶液を約60g秤量後、アルミナ製容器へ移し、低温加熱処理を行った。この低温加熱処理は、200℃/hの昇温速度で300℃まで加熱した。この昇温過程において、200〜250℃まで加熱処理が進行した段階で、溶液の発泡が激しくなるため、先端が鋭利な刃物等を用いて、気泡を破裂させ発泡を促進する処理を行った。この発泡除去処理を行った後、300℃で12時間保持した。この低温加熱処理は、300℃〜500℃の温度範囲で行うことができ、12時間保持することで、炭素含有量をC/Si=0.013まで低減できた。この結果は、特開2008−10191号公報の加湿処理体C/Si=0.015と比較して炭素含有量が同程度以下であり、加湿処理と同様のカーボン除去効果があることが分かった。このように低温加熱及び発泡除去処理を行うことで、加湿処理を行わなくてもシール性及び絶縁性を保持したシール材を合成できた。低温加熱・発泡除去処理後の粉砕は、遊星ボールミルを90分間行い、比表面積1.7〜1.9m/gを有する微粉末を作製した。
【0053】
(非晶質シリカ粒子の調製)
NS粒子に対してフィラーとしての機能を求める非晶質シリカ粒子(S粒子)もゾルゲル法で合成した。初めにTEOS:70gとエタノール:325gを混合し、5分間攪拌後、3%アンモニア水溶液:140gを添加し、攪拌を続けた。1時間の攪拌後、1回目の遠心分離を30分間行った。遠心分離後、上清液を除去して遠沈物にエタノール50mlを加え、遠沈物の洗浄を行った。洗浄完了後、2回目の遠心分離を30分間行った。遠心分離完了後、上清液を除去した遠沈物をビーカーに移し、50℃の真空乾燥機中で20時間乾燥した。真空乾燥後の粉末は、遊星ボールミルで7分間粉砕した。粉砕が完了した微粉末の脱脂処理として、200℃/hの昇温速度で600℃まで加熱後、12時間保持する熱処理を行った。
【0054】
(シール材の製造方法)
次に、仕込み組成がNa/Si=0.8(実際のNa/Si比は0.6程度)のNS粒子とS粒子を用いてシート成形体を作製した。ここで、NS粒子とS粒子を重量比80:20で溶媒(エタノールと3−メトキシ−1−ブタノール)に混合し、分散剤(無水マレイン酸)、結合剤(ポリビニルブチラール)、可塑剤(フタル酸ベンジルブチル)を添加してスラリー調製を行った。スラリー調製後、真空脱泡処理を5分間行った。真空脱泡処理後のスラリー粘度は、約1500mPa・s(シェアレート:1.75s−1)であった。この粘度のスラリー調製液を用いて、ドクターブレード法によりシート成形を行った。シート成形後、40℃で乾燥してエタノールを除去した後、さらに70℃で乾燥した試料をシート成形体とした。
【0055】
この絶縁性シートの熱的挙動を解析するため、示差走査熱分析測定を行った結果を図1に示す。絶縁性シートは、ガラス転移温度(473±3.0℃)以上で非晶質領域から過冷却融液に変化するステップ状転移が観察された。また、770℃付近から過冷却融液から安定融液に変化する溶融点(771±2.0℃)が観察された。即ち、この絶縁性シートは、770℃以上の温度領域で安定融液となり、対象材料へ融着シール層を形成できることが分かる。
【実施例2】
【0056】
絶縁性シートを800℃で融着したシール材の動的粘弾性挙動を熱機械分析で測定した結果を図2に示す。「実施例1」の示差走査熱分析と比較した場合、動的粘弾性測定は、二次相転移や僅かな軟化挙動の解析に優れている。本融着シール材に荷重0.05N±0.02Nを周期的に与え、周波数0.1Hzで動的粘弾性挙動を測定した。本融着シール材は600℃付近から僅かな軟化挙動により、貯蔵弾性率の低下が観察された。この弾性的特性を示す貯蔵弾性率の低下に伴い、粘性的特性を反映する損失弾性率の上昇から、損失正接:tanδがピークを有している。また、溶融点に相当する770℃から貯蔵弾性率の著しい低下が観察された。即ち、「実施例1」で行った示差走査熱分析の結果からも明らかなように、この絶縁性シートの融着温度領域は、770℃以上が適切であることが動的粘弾性挙動からも分かる。
【実施例3】
【0057】
融着シール材の高温領域でのガスシール性の定量的評価には、差圧式のガス透過係数評価装置を使用した。透過係数測定用試料は、5.0mmφの穴をもつ厚さ2.0mmの銀板と多孔質基材であるLSCF(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8)の間に熱圧着した絶縁シートを装着し、融着処理を行うことで作製した。ここで、融着温度は780℃、800℃、850℃の3条件で実施した。所定の温度で融着処理後、測定用ガスホルダーに試料をセットし、融着材の両端の圧力差を151.3±2.0kPaに保持した。室温〜600℃まで透過係数測定を行い、銀板中央の穴を透過するガス透過量をガスクロマトグラフィーで検出した。融着温度ごとの窒素透過係数の結果を図3に示す。この窒素透過係数は、P=10−14.2〜10−14.9(kmol m (smkPa)−1)の範囲内であり、これは1.0μL/min以下のガス透過量に相当する。即ち、この透過係数測定結果から、本融着シール材は、溶融点:770℃以上850℃以下の融着温度領域で、高いガス遮蔽性を有するシール材を提供できることが分かる。また、900℃で融着処理を行った試料を用いて透過係数測定を実施した場合、多孔質基材に対して十分なシール層を形成できず、室温でP=10−11.0(kmolm(s mkPa)−1)以上(1.0mL/min以上)のガス透過量であった。
【0058】
一方、本融着シール材との比較のため、特開2008−10191に記載の方法で加湿処理体を作製し、800℃で融着処理を行った試料の透過係数測定を実施した。この試料の透過係数測定を実施したが、室温でP=10−10.0(kmol m (s mkPa)−1)以上(10mL/min以上)であり、ガスシール性を確認することはできなかった。このことから、加湿処理体は500℃以上800℃以下の温度領域でシール材を適用することは可能であるが、室温以上800℃以下の温度領域には、本融着シール材が適していることが分かる。
【実施例4】
【0059】
600℃以上の高温下でのガスシール性の確認には、ガスリーク試験装置を使用した。この試験装置は、融着シール材とバックグラウンド(密封材)を同じ電気炉内に挿入でき、融着温度:800℃に保持した後、室温に降温せずに、初期差圧の変化を計測することでガスシール性を評価できる。多孔質基材を対象材料として、本融着シール材の800℃でのガスリーク試験結果を図4に示す。この結果より、バックグラウンドと本融着シール材との初期差圧は約86.5kPaに維持されたまま、高いガスシール性が保持されていることが分かる。「実施例3」では、室温〜600℃の温度範囲において、高いガスシール性を有することが明らかとなっている。また、本試験結果と併せて評価することで、本融着シール材の適用温度範囲は、室温〜800℃まで高いガスシール性を有することが分かる。
【実施例5】
【0060】
融着温度:800℃,850℃,900℃の場合に緻密質及び多孔質基材へ融着処理を行った場合の断面SEM観察像を図5に示す。800℃では融着シール層に気泡はほとんど見られず、緻密質も多孔質基材表面も隙間なくシール層が形成されていることが分かる。また、850℃では、融着シール層に気泡が僅かに見られるが、気泡同士がつながっておらず、融着シール層を著しく妨げていないことが分かる。
【0061】
一方、900℃で融着処理を行った場合、融着シール層の気泡が大きく、陥没が生じていた。これは緻密質と多孔質基材間に実質的な融着シール層を形成するのが困難であり、ガス遮蔽能が不完全であることが分かる。この断面観察結果に基づくガス遮蔽能の不完全性は、「実施例3」の透過係数測定の結果からも明らかである。即ち、融着温度範囲は溶融点:770℃以上850℃以下が適切であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】示差走査熱分析測定を行った結果を示す図である。
【図2】800℃で融着したシール材の動的粘弾性挙動を熱機械分析で測定した結果を示す図である。
【図3】融着温度ごとの窒素透過係数の結果を示す図である。
【図4】多孔質基材を対象材料として、本融着シール材の800℃でのガスリーク試験結果を示す図である。
【図5】融着温度:800℃,850℃,900℃の場合に緻密質及び多孔質基材へ融着処理を行った場合の断面SEM観察像を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱炭素処理により炭素含有量C/Siが低下されたアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を含有する、シール材。
【請求項2】
前記脱炭素処理は、前記アルカリ含有非晶質シリカ粒子を水供給後に加熱により発泡させることを含む、請求項1に記載のシール材。
【請求項3】
前記炭素含有量C/Siは、0.015以下である、請求項1又は2に記載のシール材。
【請求項4】
さらに、アルカリ金属を実質的に含有しない非晶質シリカ粒子を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のシール材。
【請求項5】
前記アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子のアルカリ金属/Siのモル比であるアルカリ金属含有量が0.40以上0.85以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のシール材。
【請求項6】
前記アルカリ金属はナトリウムを含む、請求項1〜5のいずれかに記載のシール材。
【請求項7】
溶融温度が780℃以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のシール材。
【請求項8】
室温以上800℃以下においてシール性を有する、請求項1〜7のいずれかに記載のシール材。
【請求項9】
脱炭素処理により炭素含有量C/Siが0.015以下に低下されたアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子と、
アルカリ金属を実質的に含有しない非晶質シリカ粒子と、
を含有し、
シール材の融着温度が770℃以上850℃以下である、シール材。
【請求項10】
前記シール材は、成形体、粉末、スラリー、ペースト、ゾル及びゲルから選択されるいずれかである、請求項1〜9のいずれかに記載のシール材。
【請求項11】
シール材の製造方法であって、
アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を準備する工程と、
前記アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子に水を供給し加熱に伴う発泡により脱炭素する工程と、
前記脱炭素後の前記アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子を用いて前記シール材を作製する工程と、
を備える、製造方法。
【請求項12】
前記脱炭素工程は、300℃以上500℃以下に加熱することを含む、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記脱炭素工程は、前記アルカリ金属含有非晶質シリカ粒子の炭素含有量C/Siが、0.015以下となるように実施する、請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記シール材作製工程は、前記脱炭素後のアルカリ金属含有非晶質シリカ粒子と前記アルカリ金属非含有非晶質シリカ粒子とを混合後、前記シール材を作製することを含む、請求項11〜13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
固体酸化物形燃料電池であって、
請求項1〜10のいずれかに記載のシール材によるシール部位を備える、電池。
【請求項16】
前記シール材は前記固体酸化物形燃料電池の多孔質基材及び緻密質基材をそれぞれシールする、請求項15に記載の固体酸化物形燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−20964(P2010−20964A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178961(P2008−178961)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「セラミックスリアクター開発」/革新的部材産業創出プログラム/新エネルギー技術開発プログラムにおける委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000173522)財団法人ファインセラミックスセンター (147)
【Fターム(参考)】