説明

シール組立体の改良

真空ポンプに用いられる静止用シール装置の保護のためのシール組立体。シール組立体は、互いに密封的に連結される少なくとも2つの部品と、これら2つの部品相互間に係合してこれら2つの部品相互間におけるポンプへの流体の出入りを阻止するOリングシールと、流体チャネルとを有する。流体チャネルは、Oリングシールの平面内に位置し、Oリングシールとプロセスガス流路との間に設けられている。流体チャネルは、装置の使用中にバリヤガスを送る経路となる。チャネルは、バリヤガスの外部源に連結可能であり、ポンプの押退け容積部と流体連通している出口を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール組立体に関し、特に真空ポンプ、特に多段無潤滑式(乾式)真空ポンプに用いられるシール組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
真空チャンバ内においてオイルフリーであり、したがって例えば半導体産業に見受けられるようなクリーンな環境で有用な真空ポンプが知られている。かかる製造環境においては、潤滑油が真空チャンバ内に存在していると、これら潤滑油は潜在的にプロセスチャンバ内へ戻るが、そうする際に製造中の製品の汚染を生じさせる場合がある。かかる乾式真空ポンプは、各真空チャンバ内に互いに噛み合うロータを用いる通常は多段の容量形(又は容積形)ポンプである。ロータは、各チャンバ内の同一プロフィールタイプを有する場合があり、或いはプロフィールは、チャンバごとに様々である場合がある。
【0003】
ルーツ(Roots )型の装置又はノーゼイ(Northey )(「クロー」)型の装置のいずれにおいても、各チャンバは典型的には、2つの別々に機械加工されたステータ部品から形成され、ロータ部品は、これらステータ部品相互間に形成されたキャビティ内に位置している。ポンプからのプロセスガスの漏れを阻止すると共に周囲空気がポンプに入るのを阻止するために2つのステータ部品相互間に密封手段を設けることが必要である。典型的には、この密封機能を果たすためにOリングが設けられる。しかしながら、プロセスガスの性質が過酷で腐食性であれば、これらOリングは、容易に攻撃され、頻繁に交換の必要があり、かくしてプロセス全体について費用のかかる点検整備のための停止時間が生じる。さらに、ステータの接触面は、腐食を生じる場合があり、これが原因となってこれら表面に異常が生じる場合があり、その結果ポンプケースの歪みが生じる場合がある。この歪みが原因となって回転部品と静止部品との間の隙間が減少し、それによりポンプの機械的信頼性に悪影響が生じる場合がある。
【0004】
有害/腐食性ガス状物質のうちの幾分かがOリング部品に達するのを阻止することにより静的密封機構を保護するよう機械的バリヤを導入する従来型システムが知られている。しかしながら、この機械的バリヤを形成するために選択される材料とプロセスガスの適合性又は両立性を達成しなければならない。さらに、かかる機械的バリヤの存在により追加の複雑さがシステムに加わり、かかる機械的バリヤは一般に、ステータの接触面を保護することはない。
【0005】
本発明の目的は、密封機構及びステータの接触面を保護する別法としての単純な手段を提供することにより上述の問題を解決することを目的としている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、真空ポンプに用いられる静的シール装置、すなわち、静止用シール装置の保護のためのシール組立体であって、互いに密封的に連結される少なくとも2つの部品と、2つの部品相互間に嵌まっていて、これら2つの部品相互間におけるポンプへの流体の出入りを阻止するOリングシールと、Oリングシールの平面内に位置すると共にOリングシールとプロセスガス流路との間に設けられた流体チャネルとを有し、流体チャネルは、使用中、バリヤ流体を送る経路となる形態を有し、チャネルは、バリヤ流体の外部源に連結可能な入口及び真空ポンプの押退け容積部と流体連通している出口を有する、シール組立体が提供される。
【0007】
流体チャネルをステータ部品のうちの一方又は両方に設けるのがよく、かかる流体チャネルは、キャビティに向かう半径方向漏れを促進する側方チャネルを含むのがよい。Oリングシールをエラストマー材料で作るのがよく、かかるOリングシールを流体チャネル内に設けるのがよい。複数のステータ部品を有し、ステータ部品の各対がこれらステータ部品の間にキャビティを形成するよう互いに対して位置決めされた真空ポンプを提供できる。プロセスガスは、使用中、このキャビティを通過することができる。隣り合うステータ部品相互間に流体密シールとなる本発明のシール組立体を設けるのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、乾式ポンプの1つの段から取り出したステータ部品1の表面を示している。第2のステータ部品(図示せず)の表面は、第1のステータ部品1の対応の表面3に接触し、キャビティ2がこれら部品相互間に形成されている。このキャビティ2は、ポンプを組み立てたときにロータ部品(図示せず)を収容するために形成される。かかるポンプは代表的には、数個のかかる段を有し、各段のキャビティ2は、段間(インターステージ)孔9を介して次の段と連通している。
【0009】
この種の従来型ポンプの場合と同様、Oリングシール4がキャビティの周囲に沿ってぐるりと設けられている。このシール4は、隣り合うステータ部品相互間の流体密シールとなり、ポンプの使用中、プロセスガスがキャビティ2から逃げ出るのを阻止すると共に周囲空気がキャビティに入らないようにしている。しかしながら、これらプロセスガスは特に攻撃性が強い場合があり、Oリングシール4とステータ部品の接触面3の両方の損傷を容易に生じさせる場合がある。
【0010】
本発明のこの実施形態では、Oリング4は、エラストマー材料で作られていて、溝5内に納められている。この溝は、ステータ部品の表面3に機械加工されている。追加のチャネル6が、ステータ部品1の接触面3に形成されている。このチャネル6は、Oリング溝5とキャビティ2との間に配置されていて、使用中プロセスガスを通過させる。
【0011】
ポンプには代表的にはパージガスが供給され、このパージガスは、所与の条件下で非反応性であるよう選択され、これは例えば窒素である。このパージガスは、ポンプ内のプロセスガスを希釈してプロセスガスの部分圧力を凝縮が生じ始める場合のある飽和値以下に維持するのに役立つ。かかる凝縮を阻止することが望ましい。というのは、この凝縮は、ポンプ部品の腐食の原因となる場合があり、或いは別の例として、ロータ部品とステータ部品との間の隙間内に生じる堆積物の原因となる場合があるからである。かかる効果により、公差に悪影響が及ぶ場合があるのでポンプの信頼性が低下し、極端な場合には、特に或る程度の運転停止後のポンプの再始動の際に焼付きが生じる場合がある。或るポンプでは、かかるパージガスは、段間孔9(図1に示す)を介してパージ流体入口7を通ってキャビティ2内に直接導入されてプロセスガスと混じり合う。このパージガスは代表的には、プロセスガスよりも高い圧力状態にあり、したがってそれほど抵抗を受けないでキャビティ2内へ流入する。
【0012】
本発明では、この従来型のパージ流体入口7は、プラグ又は栓10(図1に示す)を用いて遮断され、別のパージ流体入口7aが設けられている。高圧のパージガスが使用中孔8を通って流体チャネル6に流れてバリヤガスとして働く。このバリヤガスは、流体チャネル6に沿って両方向に流れて孔8を介してこのチャネルから出て段間孔9内に流れ、それによりポンプ排出機構内で従来のパージ機能を果たす。使用中、このバリヤガスは、チャネル6に沿って流れて、プロセスガスがOリングシール4に至る度合いを最小限に抑える障害物となる。このバリヤガスの圧力が高いことにより、バリヤガスチャネル6から生じる僅かな予想されるレベルの漏れがチャネルからキャビティ2に向かって流れる傾向を持つようになる。バリヤガスとパージガスは同一源からの同一物質なので、ポンプの性能に対するこの漏れの影響は無視できる。
【0013】
バリヤガスとプロセスガスとの間の圧力勾配は、プロセスガスがOリングシール4と接触するのを一段と阻止することになる。しかしながら、何らかの過渡的条件が生じた場合、望ましい圧力勾配が維持されない場合がある。かかる状況では、幾分かのプロセスガスがOリングシール4に触れる場合がある。これら条件下においては、バリヤガスは、潜在的に腐食性のプロセス流体を希釈してOリングシール4に対するその有害な影響を著しく軽減するようにするのに役立つ。さらに、かかる条件が生じてそれにより保護領域が汚染状態になる場合、バリヤガスは、いったん過渡的条件が無くなると、この領域をフラッシしてクリーンにするであろう。
【0014】
図2aは、本発明のポンプの一部を示している。この図は、多数のステータ部品1を一連のキャビティ2を形成するよう互いに隣接してどのように位置決めするかを示している。エラストマーシール4は、流体密シールとなるよう溝5内に設けられている。チャネル6は、キャビティ2とシール4との間の保護層となり、パージガスが使用中接触面3相互間の領域をフラッシできるようにするためにシール4の半径方向内方に位置決めされている。
【0015】
本発明の変形実施形態では、チャネル6と溝5を、チャネルが図2bに示すようにバリヤガスとOリングシール4の両方を受け入れるよう単一の特徴部の状態に組み合わせてもよい。
【0016】
従来型密封手段の機械的バリヤの製作に用いられる材料を当該ポンプが遭遇しがちな特に攻撃性のあるプロセスガスに適合させることが必要である。本明細書により提供させる非反応性ガスバリヤを用いることにより、互いに異なるプロセスガスとの広い範囲の適合性をこの選択機能が単純化させるよう達成できる。さらに、機械的バリヤを異なる組成のものに変えるためにはポンプの取外しが必要であるが、別のプロセスを実施しようとする場合、別の適合性のあるパージ/バリヤガスを代用することが容易である。確かに、この融通性は、別のパージガスへの切替えを必要の場合のある或る範囲の潜在的に不適合性の材料を用いる種々のプロセスにおいては、非常に効果的に利用できる。パージガスがバリヤガスとしても働くので、材料の選択は既に行われており、したがって適合性があるものと見なすことができる。
【0017】
従来型機械的バリヤは攻撃的なプロセスガスによって攻撃されるので、従来型バリヤの有効寿命は短い。これらバリヤ及びシールを交換するには、費用の高くつく製造プロセスの中断が行なわれる。しかしながら、本発明のバリヤガスは、常時補充され、かくしてポンプ排出装置についての点検整備のための休止の一因とはならない。
【0018】
本発明の別の利点は、隣り合うステータ部品の接触面を保護することにある。これら一般に金属の表面が攻撃性のあるプロセスガスに接触すると、腐食が生じることになる。腐食生成物が元の金属よりも多い量を占めるので、金属表面は腐食すると膨潤する。この増量により、隣り合うステータ部品が互いに分離する。横から見た場合(図2の場合のように)、外側ステータ部品のうちの一方がポンプハウジングに対して固定されていると仮定する。かかる腐食が生じると、隣接のステータ部品は、接触面に垂直な軸線に沿って第1のステータ部品から遠ざかることになる。この腐食がかかる接触面の全てで生じると、次々に位置するステータ部品の各々の生じる変位は、合算されることになる。その結果、第1の固定ステータ部品から見て遠くに位置するステータは、この腐食の効果に起因して、第1の固定ステータ部品の近くに位置するステータよりも大きく動く。ステータ部品が変位すると、これらステータ部品相互間に形成されたキャビティ2も又ずれて当初の固定ステータ部品から遠ざかる。しかしながら、ロータ部品は、この元の固定ステータ配置場所に対して動かない。これは、任意の単一のロータ部品を関連のキャビティの一方の側に相対的に変位させてロータ部品とその隣りのステータ部品との間の軸方向隙間が不均衡状態になるようにする効果を有している。極端な場合、ロータ部品とその関連のステータ部品との間の隙間は、ゼロにまで減少して2つの部品が互いに接触するようになる場合がある。かかる筋書きが生じる恐れは、運転停止期間後におけるポンプの再始動中に高くなる場合がある。
【0019】
従来型機械的バリヤは、エラストマーシールを保護するよう位置決めされており、かかる機械的バリヤは、隣り合うステータ部品の接触面に対しては何ら保護を与えない。本発明においてエラストマーシールを保護するために用いられるバリヤガスの幾分かの漏れは、これら接触面を横切って生じ、確かに図3に示すように、チャネル6は、かかる漏れを促進するよう例えば側方溝又はチャネル11を設けることにより一段と改造できる。接触面相互間でこの領域中にバリヤガスが存在することは、この領域中の攻撃的なプロセスガスの濃度を効率的に減少させ、それによりこれら接触面の腐食のレベルを軽減し、その結果ポンプの信頼性/寿命を向上させる。
【0020】
プロセスガスが特に攻撃的である例外的なほど過酷な環境では、Oリングシールの保護を一段と向上させるよう本発明を従来的機械的バリヤ装置又は別のガスバリヤと連続的に組み合わせるのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態の種々の部品を示すステータ部品の正面図である。
【図2a】本発明の一実施形態の概略側面図である。
【図2b】本発明の別の実施形態の概略側面図である。
【図3】本発明の別の実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプ用の静的シール装置の保護のためのシール組立体であって、
互いに密封的に連結される少なくとも2つの部品と、
これら2つの部品間において前記ポンプへの流体の出入りを阻止するように、前記2つの部品間に係合されたOリングシールと、
該Oリングシールの平面に位置し、前記Oリングシールとプロセスガス流路との間に配置された流体チャネルとを有し、該流体チャネルは、使用中、回送すべきバリヤ流体の経路をなす形態を有し、前記バリヤ流体の外部源に連結可能な入口と、前記真空ポンプの押退け容積部と流体連通している出口とを有する、
シール組立体。
【請求項2】
流体チャネルは、ステータ部品のうちの少なくとも1つに設けられている、請求項1記載のシール組立体。
【請求項3】
前記Oリングシールがエラストマー材料で作られている、請求項1又は2記載のシール組立体。
【請求項4】
前記Oリングシールは、流体チャネル内に設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシール組立体。
【請求項5】
前記流体チャネルは、使用中、キャビティに向かうバリヤガスの漏れを促進する側方チャネルを更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシール組立体。
【請求項6】
真空ポンプであって、
複数のステータ部品を有し、各対の前記ステータ部品が、これらのステータ部品間にキャビティを形成するように互いに対して位置決めされ、前記キャビティを、使用中、プロセスガスが通り、
隣接した前記ステータ部品間に流体密シールを提供するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシール組立体を有する、
真空ポンプ。

【図1】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−525467(P2006−525467A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506225(P2006−506225)
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001955
【国際公開番号】WO2004/099620
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(591004445)ザ ビーオーシー グループ ピーエルシー (59)
【Fターム(参考)】