説明

ジアミノオキシダーゼ含有医薬組成物

本発明は、ジアミノオキシダーゼを含有する、医薬組成物、栄養補助食品用組成物および化粧品用組成物、ならびにその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒスタミン誘発性疾患および病態の治療および/または予防のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒスタミン(1H-イミダゾール-4-エチルアミン)は、ヒスチジンの酵素的脱炭酸により形成され、従って111 Daの分子量を有する塩基性生体アミンである。
【0003】
有機体において、ヒスタミンは実質的に偏在して存在する。これはヒト自体によって生成し、マスト細胞および好塩基球の異染顆粒中に不活性な形態にて貯蔵されており、これは即時放出可能である。最高ヒスタミン濃度は肺にて測定される。その放出後、ヒスタミンは、サイトカインとの相互作用によることも多い、多数の生理的および病態生理学的過程のための極めて強力なメディエーターである。
【0004】
さらに一方、ヒスタミンはまた、吸入により、または経口的に、例えばチーズ、ワイン、缶詰の魚およびザウアークラウトなどのヒスタミン含有食品を摂取することにより、体外から体内に得ることもできる。
【0005】
ヒトおよび動物の体内のそれぞれにおけるヒスタミンの最も重要な機能および効果は、以下のとおりである:
1)毛細血管の希釈、毛細血管の透過性の増大および血圧の低下。
2)平滑筋、すなわち肺における気管支筋の収縮。
3)増大した胃酸分泌の誘発。
4)心拍数の増大。
5)ヒスタミンはアレルギー性即時型反応のメディエーターであり、アレルギー性鼻炎(花粉症)および気管支喘息などのアレルギー性疾患における最も重要なメディエーターである。
6)さらに、ヒスタミンはじんま疹(発疹)の古典的な誘因であり、薬物アレルギーまたは過敏症に重要な役割を果たす。
【0006】
高濃度の遊離性循環ヒスタミンは、頭痛、鼻づまりまたは鼻水、呼吸管の閉塞、頻脈ならびに期外収縮、さらに軟便から下痢まで引き起こしうる胃腸の不快感、および低血圧などの望ましくない効果を開始する。まぶたが膨潤することが多く、ときにはじんま疹様発疹も見られる。さらに、肌が紅潮し、血圧が低下し、気管支痙攣が起こりうる。次の表は血中ヒスタミン濃度の作用としての症状を示す。
【表1】

【0007】
哺乳動物の有機体において、ヒスタミンは二つの酵素により分解される:ジアミノオキシダーゼ(DAO, EC 1.4.3.6)およびヒスタミン-N-メチルトランスフェラーゼ(NMT, EC 2.1.1.8)(Mizugushi et al., 1994)。DAOはヒスタミンのイミダゾールアセトアルデヒドへの酸化的脱アミノ化を触媒し;NMTはN-メチル-ヒスタミンへのN-メチル化を触媒する。
【0008】
両方の分解経路は有機体に不可欠であり:DAOは例えば食物により胃腸管中に吸収されたヒスタミンを除去し、NMTは神経系においてヒスタミン感作性シグナル伝達を制御する(Kitanaka et al., 2002)。
【0009】
食物とともに摂取されたヒスタミンを腸から血液循環内に得ることを阻止することがDAOの主な目的である。この保護機序が不具合であれば、極端な場合にはアナフィラキシー性ショックを引き起こしうる(Taylor 1986, Nilsson et al., 1996)。DAOは分泌タンパク質であり、従って細胞外的に作用し、一方、N-メチル-トランスフェラーゼはサイトゾルに排他的に活性である(Kufner et al., 2001)。
【0010】
ヒスタミンに加えて、さらに生体アミン、例えばプトレッシン、スペルミジンおよびカダベリンを分解することができ、例えばブタ腎臓から回収することができる、天然DAOは、ホモ二量体銅含有糖タンパク質であり、ここに、そのサブユニットはジスルフィド結合により連結している。DAOは、約182 kDaの分子量を有し(Kluetz and Schmidt, 1997; Rinaldi et al., 1982)、約11%の炭水化物部を有する(Shah and Ali, 1988)。酵素は銅含有アミノオキシダーゼのクラスに属し、次の一般反応式により、第一級アミンのアルデヒド、アンモニアおよび過酸化水素への酸化的脱アミノ化を触媒する(Bachrach 1985):
RCH2NH2+H2O+O2=>RCHO+NH3+H22
(ここに、R残基はアミノ基を含む)。
【0011】
銅含有アミノオキシダーゼの特性は、保存チロシン残基の翻訳後改変により形成される活性中心におけるトパキノン(topaquinone)である(James et al., 1990, James et al., 1992; Mu et al., 1992)。
【0012】
DAOは主に、小腸、肝臓、腎臓および血液中の白血球に見られる。妊娠中の対象において、DAOはさらに、胎盤中にて形成される。妊娠中の対象は、妊娠していない対象よりも約500〜1000倍高い血中DAOレベルを有する。DAOは連続的に生成し、腸管腔中に分泌される。それゆえ、健康なヒトにおいて、ヒスタミン豊富な食物は大部分、腸内においてすでにヒスタミンから遊離している。残ったヒスタミンは、腸粘膜を通過するときに、そこに存在するDAOにより分解される。ヒスタミンはイミダゾール-アセトアルデヒドに分解され、さらに、イミダゾール-アセト酢酸に分解される。DAOの共同因子は、6-ヒドロキシドーパであり、おそらくピリドキサルホスフェート、ビタミンB6である。DAOは、種々の物質、すなわち生体アミン、アルコールおよびその分解生成物アセトアルデヒド、および種々の医薬により阻害されうる敏感な酵素である。神経組織において、今までのところ、DAO活性を検出することはできなかった。
【0013】
すでに先に述べているとおり、外因性ヒスタミンは食物とともに摂取されるが、内因性ヒスタミンはまた、アレルギー反応により多種多様な障害も誘発しうる。その臨床的価値に関して、減少したDAO活性に基づく少なくとも3種類のヒスタミン過敏症が指摘されている:
− ほとんどのヒトは先天性DAO欠乏を有さず、DAOも失わない。
− 腸粘膜の感染症の間、一時的なDAO欠乏が起こりうる。感染症が治癒したとき、DAO活性もまた正常に戻る。
− 種々の活性阻害物質を投与するとき、外因的にDAO活性の減少を引き起こしうる。それらの中には、主としてアルコールおよびその分解生成物、アセトアルデヒド、アミン豊富ないくつかの食品、および多くの医薬が挙げられる。
【0014】
すべての場合において、最初に記載される症状は、大体強く生じており、たいていの場合、容易に帰属できない。酵素の機能活性の急速な解明は、急速かつ単純な療法および適当な食餌計画の提供を可能にする。
【0015】
ヒスタミン過敏症の発症についての多くの理由は、多くの化学物質と比較した酵素の敏感性である。そのうちの多くは異なる医薬にて生じる。最も重要なDAO阻害剤は、アクリフラビン、ジアゼパム、N-メチル-N-ホルミルヒドラジン、b-アミノプロピオニトリル、ジマプリット、O-メチルヒドロキシルアミン、アグマンチン(agmantine)、エタノール(10%)、パージリン、アルドメット、フロセミド、フェナミル(Phenamil)、アミロリド、グアナベンズ、フェネルジン、アミノグアニジン、グアンファシン、フェンホルミン、アミトリプチリン(Amitryptiline)、グアニジン、フェニプラジン(phenyprazine)、アモジアキン、ハロペリドール、プロメチアジン、アンセリン、ハイアミン1622、プロプラノロール、アジリジニル-アルキル-アミン、ヒドロキシクロロキン、B1 ピリミジン、ヒドロキシルアミン、キナクリン、ブリマミド(Burimamide)、インプロミジン、セミカルバジド、カダベリン、イミダゾール誘導体、チアミン、カルノシン、イプロニアジド、チオリダジン、クロロチアジド、イソカルボキサジド(isocarboxazide)、トラニルシプロミン(tranylcypramine)、クロルプロマジン、イソニアジド、トリメトプリム、シメチジン、メチアミド、トリプタミン、クロニジン、メトロニダゾール、チラミン、シアニド、ナズリニン(nazlinin)(アルカロイド)、ジアミン(ヒスタミンも同様)およびNt-メチル-ヒスタミンである。
【0016】
WO 02/43745において、ヒスタミン媒介疾患の治療のための植物由来のDAOの系統的使用が開示される。植物から直接単離されるDAOまたは酵素の投与は一般に、主にWO 02/43745に開示される豆科植物が高いアレルギー誘発可能性を有する事実を考慮して、植物においてアレルゲンが続発するため重大な問題である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
主にコルチゾンを含む市販の製剤の副作用を有さず、上述した先行文献にある欠点を除去する、ヒスタミン誘発性疾患および病態の治療用および予防用の組成物を提供することが本発明の目的である。個体の体内、特に腸管内における活性なジアミノオキシダーゼの濃度を増大し、それにより外因的に供給されている(例えば食物とともに)特にヒスタミンの分解を補助するか、または可能にすることが本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
それゆえ、本発明は、ジアミノオキシダーゼを含有するヒスタミン誘発性疾患の治療用医薬組成物(ここに、該組成物はヒドロゲル、胃液耐性ペレット、点滴剤、特に点眼剤および点鼻剤として、または錠剤としての、表皮投与、口腔投与、経口投与または舌下投与のための適用形態にて提供される)、ジアミノオキシダーゼを含有する、栄養補助食品用組成物(food supplement composition)、または食餌療法用食品(dietary foodstuff)および化粧品用組成物に関する。本発明による組成物において、ジアミノオキシダーゼはその活性な形態にて実質的に提供され、これは、例えばその補欠分子団(prosthetic group)に銅を含まず、少なくとも野生型の活性を示さない酵素は本発明による適用に適さないことを意味する。
【0019】
本発明による医薬組成物は、表皮投与、口腔投与、経口投与および舌下投与からなる群から選択される投与を可能にする医薬的な形態を含む。DAOの表皮投与は、これにより例えば肌とアレルゲンとの接触に起因するアレルギー反応をうまく治療することができるため、主に、ヒスタミン誘発性疾患または病態のそれぞれの場合に、それぞれ肌の表面または肌の最外層上にて有利である。同様に、ヒスタミンの放出により誘発されるじんま疹、アトピー性湿疹などの種々の疾患を引き起こす掻痒を停止させることができる。本発明による組成物の口腔および経口投与により、個体の胃腸管内にDAOを得、ヒスタミンを分解することによりそこにおけるヒスタミン誘発性疾病をうまく停止させるか、または治療することができる。胃に含まれる高酸がDAOの活性に消極的な効果を有するため、DAOの活性の範囲は主に、胃腸管に制限される。それゆえ、DAOを口腔または経口投与したときに、腸管に達するまで胃酸からDAOを保護することが必要である。しかし、DAOを舌下投与したとき、酵素は口腔粘膜により口中に素早く取り込まれ、血流中に供給される。このようにして、酵素を静脈内送達せずとも、または胃から腸に傷つけずに送達せずとも素早く、容易に血流中にDAOを伝達することができ、これは酵素の効果の急速な開始を遅らせる。
【0020】
医薬組成物は、ヒドロゲル、胃液耐性ペレット、点滴剤、特に点眼剤および点鼻剤、錠剤およびカプセルからなる群から選択される投与形態にて提供される。本発明により、先行文献にて知られている処理方法によりDAOを投与されるべき医薬形態に変換することができる。それゆえ、DAOを含有する医薬組成物はまた、一方で酵素を安定化させ、他方で酵素を対応する生薬(galenic)形態にするために用いられるさらなる成分も含有する。DAOはまたもちろん、酵素の活性がその所望の効果を広げないように酵素がこれらの活性物質のいずれかにより阻害されないかぎり、単一の投与形態または別々の形態にて、他の医薬的に活性な物質と一緒に投与することもできる。
【0021】
本発明によるヒドロゲル組成物を含むDAOは、好ましくは41 sec-1のせん断速度にて0.5〜5 cp(センチポアズ)、より好ましくは1〜2 cp、特に1.1〜1.6 cpの粘度を有し、ここに、測定は、先行文献にて知られている粘度計を用いて達成することができる。DAO含有ヒドロゲル組成物は、特にこれらの粘度範囲にて有利な性質(例えば主題の分配能力(topic distributing ability)、扱いやすさ)を有することを見出した。0.5 cpの低粘度において、ヒドロゲル組成物は、製剤のユーザーフレンドリーな扱いを可能にするためには薄すぎることが分かった。好ましくは、ポリアクリレート(例えばカルボポール)、セルロース誘導体、または改変セルロース、それぞれ、特にヒドロキシエチルセルロース(例えばナトロソル(Natrosol))、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシメチルセルロース、デンプンおよび改変デンプン、天然および合成ゴム、例えばトラガカント、グアー、カラギナン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、PVP、ポリビニルアルコールおよびその混合物がゲル化剤として用いられる。ゲル化剤として、特に好ましくは、ヒドロキシエチルセルロース(例えばナトロソル)が用いられ、特にNatrosol Type 250 HHRは低濃度にてすでに特に良い安定性を示す。ヒドロゲル組成物のpH、好ましくは7.0〜9.0、好ましくは7.2〜8.5、より好ましくは7.5〜8.0の範囲である。このpH範囲は、好ましくは緩衝液、特にBis/Tris緩衝液で調節され、ここに、さらなる塩(例えば20-300 mM、好ましくは50〜200 mM、特に100 mM, NaCl)は、DAO酵素活性および安定性を維持するために加えることができる。塩の全濃度が20 mM以下であるとき、DAOは活性の欠乏を引き起こしうる低い安定性を有する。
【0022】
さらに、保存剤もまた、本発明によるヒドロゲル組成物に加えることができ、保存剤は組成物における微生物の増殖を実質的に予防する。ここで重要なことは、その酵素活性が本発明の目的(ヒスタミンの分解)を達成するにはもはや十分でないように抗菌物質がDAO活性を阻害しないような保存剤を選択することである。DAOおよび保存剤とともに実行される活性試験により、そのような物質を同定することができる。好ましくは、クロルヘキシジン、パラベン(パラ-ヒドロキシ-安息香酸エステル、特にブチル、エチル、メチルまたはプロピルパラベン)、ベンゾエート(例えばNa-ベンゾエート)、ソルベート(例えばK-ソルベート)カーバメート(例えばヨードプロピニルブチルカーバメート)およびその組合せ(例えばロコソナール(Rokosonal)=Na-ベンゾエート、K-ソルベートおよびヨードプロピニル-ブチル-カーバメートの混合物)が保存剤として用いられる。特に好ましくは、ゲル化剤としてナトロソルを含み、保存剤としてロコソナールおよび/またはパラベンを含むヒドロゲル組成物である。もちろん、本発明により、例えば化粧品業界にて用いられる、香りのある芳香性の物質もまた、加えることができる。
【0023】
本発明のさらなる態様は、栄養補助食品用組成物、または胃液耐性ペレット、点滴剤または輸液として適合される食餌療法用食品(DFS)に関する。食物、栄養補助食品または食餌療法用食品を用いたDAOの口腔投与は、その活性を広げるべき体内の部分にて得るためにこの酵素を必要とする。ヒスタミンが胃腸管内にて重要な役割を果たすため、DAOが傷つかずに高酸を含む胃を通ることができるように適合または提供されることが必要である。この場合、DAOは好ましくは、胃酸耐性ペレットに加工される。
【0024】
pH3以下において、DAOは取り返しがつかないほどに損傷するので(胃におけるpHはpH2〜4の範囲である)、胃から腸管にDAOを運搬するためにはDAOが適当な投与形態(それぞれ、医薬組成物または栄養補助食品用組成物または食餌療法用食品)にて提供されることが必要である。本発明により、カプセル(例えばゼラチンカプセル)、および特に胃液耐性ペレットが、特に有利であることが分かった。DAOの活性が、投与された後、遅くとも15分、好ましくは遅くとも20分、特に遅くとも30分で開始するときに有利である。
【0025】
本発明により、「胃酸耐性」は、活性物質(例えばDAO)を保護することができるペレットの性質が、活性物質が最大でも50%、好ましくは最大でも40%、より好ましくは最大でも30%、最も好ましくは最大でも20%、特に最大でも10%の活性の損失を受けるように、胃液または胃液に相当する性質を有する溶液(例えば酸)の作用下において少なくとも10分、好ましくは少なくとも20分、より好ましくは少なくとも30分、特に少なくとも60分の一定時間そこに含まれることを示すものである。
【0026】
好ましくは20分後、特に30分後に、本発明によるペレットは、ペレットを製剤化するために用いられたDAO活性の少なくとも60%、特に少なくとも80%を腸内にて放出する。
【0027】
胃液耐性ペレットは、胃液耐性コーティングによりコーティングされたペレットであり、これは腸管に見られるようなpHにて溶解する。これは、そのようなコーティングが好ましくは少なくとも4のpHおよび最大でも10のpHにて溶解することを意味する。ユードラギット(Eudragit)、例えばメタクリル酸およびメタクリレートのアニオン性ポリマーに基づく胃液耐性コーティングは、官能基として−COOHを含み、pH 5.5〜pH 7の範囲にて溶解する。ユードラギットに代わるものとして、セラックまたはアセチル化デンプン(例えばアンプラック(Amprac)01)を用いることができる。先行技術にて知られている胃液耐性コーティングは異なる性質(例えばコーティングが溶解するpH、溶解速度)を有するため、コーティング物質はまた組み合わせることもできる。例えばセラックは良い酸耐性を示し、腸管において非常にゆっくりと溶解する。一方、アンプラック01は、腸環境にて素早く溶解し、十分に酸耐性ではない。物質の欠点を埋め合わせるために、例えば上記二物質は、セラック/アンプラック01の重量比、60-95/40-5、好ましくは70-90/30-10にて混合することができる。活性物質の放出速度における影響を有するさらなるパラメータは、胃液耐性ペレットの層厚さである。質量比として表される層厚さは、最終生成物の全質量の好ましくは5〜30%、より好ましくは10〜20%である。ペレットは、好ましくは0.5〜5 mm、特に0.7〜2 mmの平均直径を有する。そのようなサイズは、ペレットが胃を素早く通過することができる利点を有する。
【0028】
本発明の医薬組成物および栄養補助食品用組成物または食餌療法用食品のそれぞれにおいて用いることができる本発明のペレットの調製は、好ましくは組成物の成分、特に活性物質DAOの60℃までの熱的安定性を必要とする押し出し機を用いて達成される(Stricker Arzneiformenentwicklung, Springer Verlag 2003)。ペレットは、胃液耐性コーティングおよびDAOに加えてさらなる医薬添加物を含有することができる。例えば、微結晶性セルロース(例えばアビセル(Avicel))は、充填剤および膨潤剤として供される。セルロースは水に不溶であり、この形態にて結晶部および非晶質部の両方を有する。この組合せは、柔軟な変形能を生じ、これは十分高い力において不可逆的な形状変化が起こることを意味する。これは、押し出し機およびスフェロナイザー(spheronizer)におけるペレット化のための実質的な必須条件である。湿潤造粒(moist granulation)の間、微結晶性セルロースは大量の水を吸収し、これにより結合剤の添加もなしで容易に圧縮可能な粘性塊となる。本発明により、ペレットにおける微結晶性セルロースの量は、5〜70%、好ましくは10〜60%、さらにより好ましくは15〜50%の範囲であることができる。結合剤または充填剤として、スクロースを用いることができる。スクロースはマトリックスの溶解性を増大させ、したがって酵素の急速な放出を補助する。本発明により、スクロースは1〜40%、好ましくは5〜35%、さらにより好ましくは10〜30%の量でペレットに加えることができる。ヒドロキシプロピルセルロース(好ましくは0.5〜10%の量にて混合)はまた、結合剤として加えることもでき、細かい塵を防ぐために供される。さらに、ヒドロキシプロピルセルロースはペレットの強度を増大し、従ってまた、収率の改善に寄与する。トウモロコシデンプンは、本発明により充填剤および崩壊剤としてペレットに加えることができる(1〜30%の好ましい量にて)。水不溶性物質であるデンプンは大量の水を吸収することができ、従って理想的な崩壊剤である。クロスカルメロース(Na-CMC; Acdisol)は純粋な崩壊剤であり、これは好ましくは1%〜5%の量にて用いることができる。Acdisolの割合が高すぎると、それを丸めている間にすでにペレットの早期崩壊を引き起こすだろうし、従って逆効果である。クロスポビドン、架橋PVPは同様に水不溶性であり、崩壊剤としても供する。これは、そのポリマーの性質により、ペレットの生成中の改善されたラウンディング(rounding)に関与する(好ましくは0.5〜10%の量にて混合することができる)。ポビドンは水溶性添加剤であり、結合剤として供する。これらの異なる充填剤、崩壊剤および結合剤の組合せは、ペレットにおけるDAOの分子分散分布をもたらし、急速なバイオアベイラビリティーを確実にする。
【0029】
胃液耐性コーティングと活性物質を含むペレットとの間に、グリセロールおよび/またはタルカム(talcum)で作られた絶縁層を提供することができる。グリセロールは脱水素化、従って酵素の不活性化を防ぐために保湿剤として供する。
【0030】
ペレットの代わりとして、DAOはまた、カプセルにて胃から腸管に運搬することもできる。適切なカプセルは、例えばゼラチンカプセルまたはデンプンカプセルである。カプセルはまた、本発明によりペレットを含むこともできる。
【0031】
本発明のさらなる態様は、ジアミノオキシダーゼを含有する化粧品用組成物に関し、これは化粧品用投与形態、特にヒドロゲル、軟膏、噴霧剤または点滴剤として提供される。ヒスタミン放出が増大した場合、またはアレルゲン性物質と接触した場合(例えば接触アレルギーまたは神経皮膚炎の場合)には、体内反応は体の可視部位にて起こりうり、該反応は、化粧品用組成物にてDAOを投与することにより抑制することができる。DAOを含有する化粧品用組成物は、さらに、先行技術に知られている他の成分を含有することができ、これらは化粧品の製造に用いられる。ヒドロゲル含有化粧品用組成物は、本発明による医薬組成物のヒドロゲルと実質的に同じ性質を有し、実質的に同じ成分を含む。
【0032】
好ましくは、本発明による組成物に用いられるジアミノオキシダーゼは、非植物由来のものである。
【0033】
アレルゲンが実質的に外因性のヒスタミン放出を促進するので、医薬組成物および化粧品用組成物ならびに栄養補助食品および食餌療法用食品における非植物由来のDAOの使用は、植物に存在するアレルゲンがDAOの投与に悪影響を与えないという利点を有する。主に植物性物質がヒスタミン誘発性疾患に関与することが知られている。植物由来のDAO製剤からのアレルギー誘発性成分の完全な除去は、高い予備努力でのみ可能であるが、一方で非植物由来のものである本発明によるDAOはそのような植物アレルゲンを完全に含まない。
【0034】
本発明による「非植物由来」により、すべてのDAOは植物から回収されないが、動物の有機体または他の非植物の有機体からは回収されることが包含される。さらに、本発明によりこの定義は、細胞培養(動物、細菌、酵母など)において、またはいずれの種類の非植物の有機体においても、組換え的に調製されるすべてのDAOを含み、ここに、組換え的に調製されたDAOについてのDNAは、先行技術にて知られる方法により植物および/または動物の有機体から単離され、クローン化され、発現系にて発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
好ましくは、本発明に開示されるすべての組成物は、動物由来のジアミノオキシダーゼを含有する。動物DAOを用いることにより、これらの個体自体により産生されるDAOのグリコシル化、活性および特異性に関してこれらの個体自体により産生される酵素と非常に類似する酵素を有するヒトまたは動物体のそれぞれを提供することが可能である。さらに、DAOの産生から植物アレルゲンを完全に排除することが可能である。
【0036】
好ましくは、ジアミノオキシダーゼはブタ腎臓から回収される。ブタ腎臓は、主にその高含量のDAOにより特徴付けられる。酵素は、ブタ腎臓から先行技術にて知られている方法による単純な方法にて単離することができる。
【0037】
さらなる好ましい具体的態様によれば、本発明による組成物は、組換え由来のジアミノオキシダーゼを含有する。DAOの組換え産生により、大量の酵素を産生し、この酵素を高収率にて精製することが可能である。
【0038】
好ましくは、組換えジアミノオキシダーゼは、原核生物、好ましくは細菌、または真核生物、好ましくは動物もしくは酵母細胞培養にて発現し、上記で示される発現系から単離される。これらの発現系を用いて産生したDAOの精製は、先行技術にて知られている方法により達成され、DAOは細胞にて発現するか、または発現中の細胞から分泌されるかのいずれかである。その際に、該精製を単純化するために、ペプチド(例えばHisタグ)、ポリペプチドまたはタンパク質配列(例えばGSTタグ)を有するDAOを提供することもまた可能である。組換えDAOはさらに、このDAOの酵素活性が野生型DAOの酵素活性をしのぐような遺伝子工学的方法により改変することができる。
【0039】
本発明のさらなる態様は、ヒスタミン誘発性臨床像の治療のための医薬の製造のための本発明によるジアミノオキシダーゼの使用に関する。DAOは、ヒトおよび動物体におけるヒスタミンの分解に関与することが知られている。ヒスタミン誘発性疾患は、ジアミノオキシダーゼの不足もしくはDAOの阻害に起因する過剰のヒスタミン、または概して食物によって、もしくは例えばアレルゲンとの接触などのさらなる外部要因によっても引き起こされうるヒスタミン過剰によってもたらされるので、本発明のDAOの投与はそれ自体、これらの疾患または臨床像のそれぞれの治療に役立つ。
【0040】
本発明のさらなる態様は、じんま疹、特に慢性または急性じんま疹の治療のための医薬の製造のための本発明のジアミノオキシダーゼの使用に関する。じんま疹に伴うヒスタミンの放出は、結果として生じる浮腫とともに、静脈(venoles)の拡大および毛細血管の過剰な透過性を引き起こす。影響された肌領域へのDAOの投与により、影響された部位におけるヒスタミンを分解することができ、それによりじんま疹の掻痒を停止することが可能である。
【0041】
本発明のさらなる態様は、接触アレルギーの治療のための医薬の製造のための本発明のジアミノオキシダーゼの使用に関する。接触アレルギーは、アレルギー反応を引き起こす物質(アレルゲン)が肌に浸透することにより引き起こされる。この接触により放出されるヒスタミンを分解し、従ってヒスタミン誘発性臨床像をそれぞれ停止または緩和するために、DAOを投与する。
【0042】
本発明のさらなる態様により、本発明によるジアミノオキシダーゼは、アトピー性皮膚炎の治療のための医薬の製造に使用される。アトピー性皮膚炎は、神経皮膚炎という名でも知られているが、主に子供および若年成人に起こる、顕著な掻痒を伴う常習性の肌疾患である。この掻痒の原因は、肌の影響された部位におけるヒスタミンの過剰放出である。この場合においてもまた、DAOは、これらの領域におけるヒスタミンの軽減によるものであり、従ってアトピー性皮膚炎の症状をそれぞれ緩和するか、または予防することができる。
【0043】
さらなる態様によれば、本発明は、サバ中毒(scombrotoxism)の治療のための医薬の製造のための本発明のジアミノオキシダーゼの使用に関する。サバ中毒は、サバの亜種、例えばマグロの消費後のヒスタミン中毒である。コールドチェーンを遮断するとき、または産生を遅らせるとき、いわゆるスコンブロトキシン(scombrotoxin)はサバ科の魚(scombride)にて形成され、これはヒスタミン濃縮(enrichment)をもたらす。このヒスタミン中毒の結果は、すなわち発熱、吐き気、嘔吐、腹痛およびじんま疹である。この場合において、DAOは解毒剤として用いることができる。
【0044】
本発明のさらなる態様は、医薬もしくは栄養補助食品の製造または食餌療法用食品のため、または胃腸管からのヒスタミンの除去またはその軽減のそれぞれのための本発明のジアミノオキシダーゼの使用に関する。
【0045】
腸管におけるヒスタミンの軽減は、個体の体内へのヒスタミンの供給(外因性の供給、例えば食物による)が増大する場合、または例えば腸管におけるDAOの活性が部分的にもしくは完全に阻害されるか、または全く供されない場合にそれぞれ、特に重要である。従って、本発明の医薬、または栄養補助食品、または食餌療法用食品のそれぞれは、腸管におけるヒスタミンの分解に寄与する酵素学的に活性なDAOを供給するために供する。
【0046】
本発明のさらなる態様は、気管支系からのヒスタミンの除去のための医薬の製造のためのジアミノオキシダーゼの使用に関する。
【0047】
ヒスタミン放出物質、例えば花粉の、気管支系または肺への摂取はそれぞれ、顕著なアレルギー反応を引き起こし得る。放出されたヒスタミンを分解するために、本発明のDAOは、例えば気管支系または肺のそれぞれへ、吸入噴霧剤などにより導入することができる。
【0048】
本発明は、次の実施例によりさらに説明されるが、それらに制限されることはない。
【実施例】
【0049】
実施例:
実施例1
DAOをセルロース基盤のペレットにて積極的に安定化し、ペレットを胃液耐性コーティングでコーティングした。溶出試験において、70%を超える活性が1時間以内に周囲に放出されることを示すことができた。
【0050】
実施例2
さらに、酵素をヒドロゲル中にて安定化した。室温および37℃における保存により、4ヶ月以内において活性の減少は見られなかった。ヒスタミンによる刺激後の肌の小水疱および掻痒の発生は、ヒドロゲルの適用後数分で消失した。
【0051】
実施例3
ヒドロゲルにて安定化されたDAOを、計13人の人に試験した。アンケートと称して、接触アレルギー(n=5)、神経皮膚炎/皮膚病(n=6)および昆虫刺傷(n=2)によるストレス間で区別した。接触アレルギーの患者および神経皮膚炎の患者のすべてにおいて、陽性結果が証明され;昆虫刺傷の場合には、50%のボランティアが陽性結果を報告しうる。
【表2】

【0052】
ヒドロゲルの効果は最初の10分以内に発生し、該効果は平均して1時間以上続いた。
【表3】

繰り返し適用した場合に、不愉快な効果が報告されたボランティアはなかった。
本発明のヒドロゲルがその時に使用されるコルチゾン軟膏よりも有効であったことを二人の神経皮膚炎の患者が述べた。
【0053】
実施例4
胃液耐性ペレットは、80,000 U/mlの初期活性を有するDAO3%、微結晶性セルロース40%、スクロース20%、他の結合剤、充填剤および崩壊剤22%と、胃液耐性コーティング15%により製造した。ペレットからのDAOの放出は、活性アッセイを用いて180分間観察した。ここに、ペレットが溶解した溶液において、10分後にすでに40%のDAO活性、30分後に70%の活性、60分後に80%の活性および180分後に初めに用いられたDAO量の100%の活性が検出された。DAOの活性測定はAT 411688に記載されているとおりであったが、酵素活性を測定するために知られている他の方法もまた非常によく用いることができる。
【0054】
参考文献:
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物がヒドロゲルとして、胃液耐性ペレットとして、点滴剤、特に点眼剤および点鼻剤、または錠剤としての、表皮投与、口腔投与、経口投与または舌下投与に適用される形態にて提供されることを特徴とする、ジアミノオキシダーゼを含有するヒスタミン誘発性疾患の治療のための医薬組成物。
【請求項2】
ジアミノオキシダーゼを含有する、栄養補助食品用組成物。
【請求項3】
ジアミノオキシダーゼを含有する、食餌療法用食品。
【請求項4】
組成物が胃液耐性ペレット、点滴剤または輸液の形態にて提供されることを特徴とする、請求項2または3記載の組成物。
【請求項5】
ジアミノオキシダーゼを含有する、化粧品用組成物。
【請求項6】
組成物が特に、ヒドロゲル、軟膏、噴霧剤または点滴剤としての、化粧品用に適用される形態にて提供されることを特徴とする、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
ジアミノオキシダーゼが非植物由来であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
組成物が動物由来のジアミノオキシダーゼを含有することを特徴とする、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
ジアミノオキシダーゼがブタ腎臓に由来することを特徴とする、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
組成物が組換え型由来のジアミノオキシダーゼを含有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
組成物が原核生物、好ましくは細菌の、または真核生物、好ましくは動物もしくは酵母の、細胞培養から回収された組換えジアミノオキシダーゼを含有することを特徴とする、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
ヒスタミン誘発性臨床像の治療のための医薬の製造のためのジアミノオキシダーゼの使用。
【請求項13】
じんま疹、特に慢性および急性のじんま疹の治療のための医薬の製造のためのジアミノオキシダーゼの使用。
【請求項14】
接触アレルギーの治療のための医薬の製造のためのジアミノオキシダーゼの使用。
【請求項15】
アトピー性皮膚炎の治療のための医薬の製造のためのジアミノオキシダーゼの使用。
【請求項16】
サバ中毒の治療のための医薬の製造のためのジアミノオキシダーゼの使用。
【請求項17】
胃腸管からヒスタミンを除去するための医薬の製造のためのジアミノオキシダーゼの使用。
【請求項18】
気管支系からヒスタミンを除去するための医薬の製造のためのジアミノオキシダーゼの使用。

【公表番号】特表2008−505869(P2008−505869A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519799(P2007−519799)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053234
【国際公開番号】WO2006/003213
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(507008297)
【氏名又は名称原語表記】Albert MISSBICHLER
【Fターム(参考)】