説明

ジウレタン構造を有する化合物、該化合物からなる帯電防止剤及び該化合物を含有してなる熱可塑性樹脂組成物

【課題】耐フォギング性に優れるだけでなく帯電防止剤としても優れており、少ない添加量で持続性のある帯電防止効果を熱可塑性樹脂に付与することができる新規な化合物を提供する
【解決手段】下記一般式(I)で表されるジウレタン構造を有することを特徴とする化合物;但し、一般式(I)中のR及びRは、同一でも異なっていてもよいアルキル基、Aはジイソシアネート化合物の残基を表し、n及びmは、同一でも異なっていてもよい2〜30の数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジウレタン構造を有する新規な化合物に関し、特に、耐フォギング性に優れると共に少ない添加量で持続性のある帯電防止効果を発揮する、ジウレタン構造を有する新規な化合物、該化合物からなる帯電防止剤、及び該化合物を含有する熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、軽量で加工が容易であるのみならず、用途に応じて基材を設計することができる等の優れた特性を有しているため、現代では欠かすことのできない重要な素材である。また、熱可塑性樹脂は電気絶縁性に優れるという特性があるため、電気製品のコンポーネント等に頻繁に利用されている。しかし、熱可塑性樹脂はあまりにも絶縁性が高いため、摩擦等により帯電するという問題がある。
【0003】
そして、帯電した熱可塑性樹脂は周囲の埃やチリを引き付けるため、樹脂成形品の外観を損ねるという問題が生ずる。又、電子製品の中でも、例えばコンピューター等の精密機器は、帯電により回路が正常に働くことができなくなる場合がある。更に、電撃による問題も存在する。樹脂から人体に対して電撃が発生すると人に不快感を与えるだけでなく、可燃性気体や粉塵のあるところでは、爆発事故を誘引する可能性もある。
【0004】
このような問題を解消するために、従来から、合成樹脂には帯電を防止する処理がなされている。最も一般的な帯電防止処理方法は、合成樹脂に帯電防止剤を加える方法である。このような帯電防止剤には、樹脂成形体表面に塗布する塗布型のものと、樹脂を加工成形する際に添加する練り込み型のものとがあるが、塗布型のものは持続性に劣る上、表面に大量の有機物が塗布されるために、その表面に触れたものが汚染されるという問題があった。
【0005】
かかる観点から、従来、主として練り込み型の帯電防止剤が検討されており、例えば、フェノール樹脂類似の構造を有するポリアルキレングリコール誘導体が提案されている(特許文献1及び2)。これらの練り込み型帯電防止剤は、樹脂の表面にブリードして帯電防止効果を発揮するものであるが、摩擦や水洗などにより樹脂の表面から徐々に取り除かれるため、帯電防止効果の持続性が不十分であるという欠点があった。又、帯電防止剤と樹脂との相溶性が良くない場合は、内部の帯電防止剤が遅滞なく樹脂表面にブリードするため、数日から数週間で効果が無くなったり、添加量が多くないと十分な帯電防止効果が得られなかったりするという欠点もあった。
【0006】
また帯電防止剤として、分子構造中にウレタン結合を有する共重合体が既に提案されている(特許文献3)。しかしながらこの場合も、帯電防止効果の持続性は満足いくものではなく、また添加量が多くないと十分な帯電防止効果が得られないという問題があった。
【0007】
更に、熱可塑性樹脂を自動車内装材に使用した場合には、帯電防止剤の耐フォギング性が悪いと、夏場の炎天下で自動車内の温度が上昇して帯電防止剤成分が気散したとき等に、自動車のガラスが曇るという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−34330号公報
【特許文献2】特開2002−60734号公報
【特許文献3】特開2001−26130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の第1の目的は、耐フォギング性に優れると共に、少ない添加量で熱可塑性樹脂に持続性のある帯電防止効果を付与することのできる、新規な化合物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、少ない添加量で熱可塑性樹脂に持続性のある帯電防止効果を付与することのできる帯電防止剤を提供することにある。
更に本発明の第3の目的は、持続的な帯電防止効果を有する樹脂成型品を得るに適した熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の諸目的を達成すべく鋭意検討した結果、ジウレタン構造を有する新規な化合物が帯電防止性能に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、下記一般式(I)で表されることを特徴とする新規化合物、該化合物からなる帯電防止剤、及び該化合物を含有してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。

但し、上式中のR及びRは、同一でも異なっていてもよいアルキル基、Aはジイソシアネート化合物の残基を表し、n及びmは、同一でも異なっていてもよい2〜30の数を表す。
【0011】
本発明においては、前記Aがm−キシリレンジイソシアネートの残基であることが好ましく、この場合の化合物は下記一般式(II)で表される。


【0012】
また本発明においては、前記Aがイソホロンジイソシアネートの残基であることが好ましく、この場合の化合物は下記一般式(III)で表される。

【0013】
また本発明においては、前記Aが2,4−トリレンジイソシアネートの残基であることが好ましく、この場合の化合物は下記一般式(IV)で表される。

【0014】
また本発明においては、前記Aがジシクロヘキシルメタン4,4−ジイソシアネートの残基であることが好ましく、この場合の化合物は下記一般式(V)で表される。

【発明の効果】
【0015】
本発明の化合物は耐フォギング性に優れるだけでなく帯電防止剤としても優れており、少ない添加量で持続性のある帯電防止効果を熱可塑性樹脂に付与することができる化合物であるので、持続性に優れた帯電防止性能を有する熱可塑性樹脂組成物を提供することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の化合物は下記一般式(I)で表されるが、これは文献未載の新規化合物である。

但し、上式中のR及びRは、同一でも異なっていてもよいアルキル基、Aはジイソシアネート化合物の残基を表し、n及びmは、同一でも異なっていてもよい2〜30の数を表す。
【0017】
前記一般式(I)におけるR及びRのアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2級ブチル、3級ブチル、ペンチル、イソペンチル、2級ペンチル、3級ペンチル、ヘキシル、2級ヘキシル、ヘプチル、2級ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、2級オクチル、ノニル、2級ノニル、デシル、2級デシル、ウンデシル、2級ウンデシル、ドデシル、2級ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、2級トリデシル、テトラデシル、2級テトラデシル、ヘキサデシル、2級ヘキサデシル、ステアリル、イコシル、ヘニコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、ヘキサコシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシル、トリアコンシル、2−ブチルオクチル、2−ブチルデシル、2−ヘキシルオクチル、2−ヘキシルデシル、2−オクチルデシル、2−ヘキシルドデシル、2−オクチルドデシル、2−デシルテトラデシル、2−ドデシルヘキサデシル、2−ヘキサデシルオクタデシル、2−テトラデシルオクタデシル、モノメチル分枝−イソステアリル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、メチルシクロヘキシル等の基が挙げられる。
【0018】
上記アルキル基の中でも、熱可塑性樹脂に使用した場合の帯電防止付与効果及びその持続性を重視する場合には、R及びRとして、炭素原子数が12以上のアルキル基を選択することが好ましい。
【0019】
一般式(I)におけるAは、ジイソシアネート化合物の残基を表す。この場合のジイソシアネート化合物とは、分子内に二つのイソシアネート基を有する化合物であり、下記一般式(VI)で表すことができる。下記一般式(VI)中のAは二価の有機基であり、前記一般式(I)のAに対応する。

【0020】
上記のジイソシアネート化合物としては、例えば、p−フェニレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物;1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0021】
一般式(I)におけるn及びmは、同一でも異なっていてもよい2〜30の数であるが、熱可塑性樹脂に使用した場合の帯電防止付与効果及びその持続性の点から、それぞれ5〜25であることが好ましく、10〜20であることがより好ましい。
【0022】
本発明の一般式(I)で表される帯電防止剤として有用な新規化合物の具体例としては、下記の化合物No.1〜No.8で表される化合物が挙げられるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。下記化合物No1〜No.8におけるR及びR並びにn及びmは、一般式(I)におけるそれらと同様である。
【0023】

【0024】

【0025】

【0026】

【0027】

【0028】

【0029】

【0030】

【0031】
本発明においては、一般式(I)で表される新規な化合物の中でも、特に熱可塑性樹脂に使用した場合の帯電防止付与効果及びその持続性を重視する場合には下記一般式(II)〜(V)で表される化合物であることが好ましい。
【0032】
一般式(II):Aはm−キシリレンジイソシアネートの残基;

【0033】
一般式(III):Aはイソホロンジイソシアネートの残基;


【0034】
一般式(IV):前記Aは2,4−トリレンジイソシアネートの残基;

【0035】
一般式(V):Aはジシクロヘキシルメタン4,4−ジイソシアネートの残基;

【0036】
一般式(II)〜(V)におけるR及びRとしては、熱可塑性樹脂に使用した場合の帯電防止付与効果及びその持続性の観点から、特に、炭素原子数が12以上のアルキル基が好ましい。また、n及びmは5〜25の数であることが好ましく、特に10〜20の数であることが好ましい。
【0037】
本発明の化合物の製造方法としては、例えば、前記一般式(VI)で表されるジイソシアネート化合物(OCN−A−NCO)のイソシアネート基と、下記一般式(VII)で表される少なくとも一種のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルの水酸基を付加反応させる方法がある。

【0038】
ここで、前記一般式(VI)中のAは二価の有機基であって、前記一般式(I)〜(V)中のAに対応し、前記一般式(VII)中のRは、一般式(I)〜(V)中のR又はRに対応するアルキル基、qは、前記一般式(I)〜(V)中のn又はmに対応する2〜30の数である。
【0039】
一般式(VI)の化合物と一般式(VII)の化合物の反応時の仕込み比は、一般式(VI)の化合物のイソシアネート基1等量に対し、一般式(VII)の化合物の水酸基が、2.0〜2.1等量となるようにすればよいが、特に2.0当量反応させることが好ましい。上記の反応は、一般式(VI)の化合物と一般式(VII)の化合物を、反応容器中で、窒素雰囲気下、反応温度80℃〜140℃で、2〜6時間程度反応させればよい。
【0040】
反応の進行状況は、反応物のFT−IR測定によってイソシアネート基のピーク(N=C=O伸縮振動 約2300〜2200cm−1)の減少とウレタン結合のピーク(N−H伸縮振動 約3500〜3250cm−1、C=O伸縮振動 約1750〜1700cm−1)の生成を確認することによって把握することができる。また、反応の終点はイソシアネート基の前記ピークの消失によって確認することができる。
【0041】
上記反応には溶媒を使用してもしなくてもよい。溶媒を使用する場合には、一般式(VI)の化合物や一般式(VII)の化合物と副反応を起こすことのない、公知の有機溶媒の中から適宜選択して使用すればよいが、一般式(VII)の化合物を過剰に使用して溶媒の代わりとすることも可能である。
【0042】
本発明の化合物は帯電防止能を有するので、特に帯電防止剤として好ましく使用することができる。特に熱可塑性樹脂の帯電防止剤として、塗布型、練り込み型のいずれにも好適に使用することができるが、樹脂を加工成形する際に添加する練り込み型として使用することが特に好ましい。
【0043】
本発明の化合物は、熱可塑性樹脂に少量練り込むだけで、優れた帯電防止効果を持続させることができるので、帯電防止剤として有用であり、このようにして得られた、本発明の化合物含有熱可塑性樹脂組成物は、帯電防止された樹脂成型物を得るのに有用である。
【0044】
本発明の化合物を含有させてなる本発明の熱可塑性樹脂組成物に使用することのできる熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリブテン、ポリ−3−メチルペンテン等のα−オレフィン重合体又はエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂及びこれらの共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−シクロヘキシルマレイミド共重合体等の含ハロゲン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、スチレン及び/又はα−メチルスチレンと他の単量体(例えば、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル、ブタジエン、アクリロニトリル等)との共重合体(例えば、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、耐熱ABS樹脂等)、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等の直鎖ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、ポリカプロラクタム及びポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド、ポリカーボネート、ポリカーボネート/ABS樹脂、分岐ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、繊維素系樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂及びこれらのブレンド物を挙げることができる。
【0045】
本発明の化合物は、更に、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム等のエラストマーに添加することもできるので、本発明で使用する熱可塑性樹脂にはこれらのエラストマーも包含させるものとする。しかしながら、本発明においては、これらの熱可塑性樹脂の中でも、特にポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。
【0046】
本発明の化合物を帯電防止剤として使用する場合には、熱可塑性樹脂100質量部に対して本発明の化合物を0.01〜20質量部配合することが好ましく、0.05〜15質量部配合することが好ましいが、最も好ましい配合量は1〜10質量部である。この場合の配合方法は特に限定されず、例えば、ロール混練り、バンパー混練り、押し出し機、ニーダー等の、通常使用されている方法を用いて混合・練りこみし、配合すればよい。
【0047】
本発明の帯電防止剤は、そのまま熱可塑性樹脂に添加しても良いが、必要に応じて担体に含浸させてから添加しても良い。担体に含浸させる好ましい場合は、本発明の帯電防止剤が常温で液体の場合である。担体に含浸させるには、そのまま加熱混合しても良いが、必要に応じて、有機溶媒で希釈してから担体に含浸させ、その後溶媒を除去する方法でもよい。
【0048】
上記担体としては、合成樹脂のフィラーや充填剤として知られているもの、常温で固体の難燃剤及び光安定剤が好ましい。このような担体の具体例としては、例えば、ケイ酸カルシウム粉、シリカ粉、タルク粉、アルミナ粉、酸化チタン粉、これら担体の表面を化学修飾したもの、下記に挙げる難燃剤や酸化防止剤の中で固体のもの等が挙げられる。本発明においては、これらの担体の中でも担体の表面を化学修飾したものを使用することが好ましく、シリカ粉の表面を化学修飾したものを使用することがより好ましい。また、担体の平均粒径は0.1〜100μmであることが好ましく、0.5〜50μmであることがより好ましい。
【0049】
本発明の帯電防止剤は、熱可塑性樹脂に配合する、上記したいわゆる練り込み型としての使用以外に、熱可塑性樹脂成形品の表面に塗布する塗布型として使用することもできる。塗布する場合には、各種溶剤に溶解させた溶液として塗布すればよい。
【0050】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等を更に添加することができ、これにより本発明の熱可塑性樹脂組成物を安定化することができる。
【0051】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6―ジ第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。これらのフェノール系酸化防止剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部であることが好ましく、特に0.05〜5質量部であることが好ましい。
【0052】
前記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。これらのリン系酸化防止剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.001〜10質量部であることが好ましく、特に0.05〜5質量部であることが好ましい。
【0053】
前記チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類、及びペンタエリスリトールテトラ(β−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。これらのチオエーテル系酸化防止剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.001〜10質量部であることが好ましく、特に0.05〜5質量部であることが好ましい。
【0054】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−(ベンゾトリアゾリル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β、β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン等のトリアリールトリアジン類が挙げられる。これらの紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.001〜30質量部であることが好ましく、特に0.05〜10質量部であることが好ましい。
【0055】
前記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノ−ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8−12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられる。これらのヒンダードアミン系光安定剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.001〜30質量部であることが好ましく、特に0.05〜10質量部であることが好ましい。
【0056】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、帯電防止性を更に向上させるために、必要に応じて、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、界面活性剤、本発明の化合物とは異なる高分子帯電防止剤等を添加してもよい。
【0057】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸等の、炭素数1〜20のモノカルボン酸若しくはジカルボン酸;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の炭素数1〜20のスルホン酸;又はチオシアン酸等の有機酸の塩、塩酸、臭化水素酸等のハロゲン化水素酸、過塩素酸、硫酸、リン酸等の無機酸の塩が挙げられる。本発明においてはこれらの内、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のハロゲン化物、酢酸カリウム等の酢酸塩、及び、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩を使用することが好ましい。
【0058】
これらのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.001〜3質量部であることが好ましく、0.01〜2質量部であることが特に好ましい。
【0059】
前記界面活性剤としては、非イオン性、アニオン性、カチオン性及び両性の界面活性剤を使用することができる。
上記非イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキシド付加物、脂肪酸エチレンオキシド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤;ポリエチレンオキシド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビット又はソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミンの脂肪族アミド等の、多価アルコール型非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0060】
前記アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等のカルボン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;高級アルコールリン酸エステル等のリン酸エステル等が挙げられる。
【0061】
前記カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0062】
前記両性界面活性剤としては、例えば、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0063】
本発明においては、前記した界面活性剤の中でもアニオン性界面活性剤を使用することが好ましく、特に、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩などのスルホン酸塩を使用することが好ましい。
【0064】
これらの界面活性剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの界面活性剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.001〜5質量部であることが好ましく、0.01〜3質量部であることが特に好ましい。
【0065】
前記高分子帯電防止剤としては、例えば、ポリエーテルエステルアミド等の公知の高分子帯電防止剤を使用することができる。上記ポリエーテルエステルアミドとしては、例えば、特開平7−10989号公報に記載されたビスフェノールAのポリオキシアルキレン付加物からなるポリエーテルエステルアミドが挙げられる。また、WO00/47652号公報に記載されたブロックポリマーのような、ポリオレフィンブロックと親水性ポリマーブロックの結合単位が2〜50の繰り返し構造を有するブロックコポリマーを使用することもできる。
【0066】
これらの高分子帯電防止剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0〜40質量部であることが好ましく、5〜20質量部であることが特に好ましい。
【0067】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の帯電防止剤と他成分、又は熱可塑性樹脂との相溶性を向上させる観点から、必要に応じて更に相溶化剤を添加しても良い。このような相溶化剤としては、例えば、特開平3−258850に記載された、カルボキシ基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基又はポリオキシアルキレン基等の極性基を有する変性ビニル共重合体;特開平6−345927に記載された、ポリエーテルエステルアミドとスルホ基を有する変性ビニル重合体、及び、ポリオレフィン部分と芳香族ビニル重合体部分を有するブロック共重合体等が挙げられる。
【0068】
これらの相溶化剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1〜15質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることが特に好ましい。
【0069】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、p−第三ブチル安息香酸アルミニウム、芳香族リン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール類等の造核剤、本発明の化合物以外の帯電防止剤、金属石鹸、ハイドロタルサイト、トリアジン環含有化合物、金属水酸化物、リン酸エステル系難燃剤、縮合リン酸エステル系難燃剤、ホスフェート系難燃剤、無機リン系難燃剤、(ポリ)リン酸塩系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、シリコン系難燃剤、三酸化アンチモン等の酸化アンチモン、その他の無機系難燃助剤、その他の有機系難燃助剤、充填剤、顔料、滑剤、発泡剤等を添加してもよい。
【0070】
上記トリアジン環含有化合物としては、例えば、メラミン、アンメリン、ベンズグアナミン、アセトグアナミン、フタロジグアナミン、メラミンシアヌレート、ピロリン酸メラミン、ブチレンジグアナミン、ノルボルネンジグアナミン、メチレンジグアナミン、エチレンジメラミン、トリメチレンジメラミン、テトラメチレンジメラミン、ヘキサメチレンジメラミン、1,3−ヘキシレンジメランミン等が挙げられる。
【0071】
前記金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、キスマー5A(水酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0072】
前記リン酸エステル系難燃剤の例としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリスイソプロピルフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、t-ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(t-ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス-(t-ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス-(イソプロピルフェニル)ホスフェート等が挙げられる。
【0073】
前記、縮合リン酸エステル系難燃剤の例としては、1,3−フェニレン ビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレン ビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。
【0074】
前記(ポリ)リン酸塩系難燃剤の例としては、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸ピペラジン、ピロリン酸メラミン、ピロリン酸ピペラジン等の(ポリ)リン酸のアンモニウム塩やアミン塩が挙げられる。
【0075】
前記その他の無機系難燃助剤としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、タルク、モンモリロナイト等の無機化合物、及びその表面処理品が挙げられる。その具体例としては、例えば、TIPAQUER−680(酸化チタン:石原産業(株)製の商品名)、キョーワマグ150(酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製の商品名)、DHT−4A(ハイドロタルサイト:協和化学工業(株)製の商品名)、アルカマイザー4(亜鉛変性ハイドロタルサイト:協和化学工業(株)製の商品名)、等の種々の市販品を挙げることができる。
【0076】
前記、その他の有機系難燃助剤としては、例えば、ペンタエリスリトールが挙げられる。
【0077】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、通常合成樹脂に使用される添加剤、例えば、架橋剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、発泡剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で、更に配合することができる。
【0078】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形することにより、熱可塑性樹脂成形体を得ることができる。成形方法は、特に限定されるものではなく、押し出し加工、カレンダー加工、射出成形、ロール成形、圧縮成形、ブロー成形等が挙げられ、適宜、樹脂板、シート、フィルム、繊維、異形品等の、種々の形状の成形品を製造することができ、これらの成形体は、帯電防止能とその持続性に優れる。
【0079】
本発明の熱可塑性樹脂組成物及びその成形体は、電気・電子・通信、農林水産、鉱業、建設、食品、繊維、衣類、医療、石炭、石油、ゴム、皮革、自動車、精密機器、木材、建材、土木、家具、印刷、楽器等の幅広い産業分野に使用することができる。具体的には、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、電話機、複写機、ファクシミリ、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、カード、ホルダー、文具等の事務用品、OA機器、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、コタツ等の家電機器、TV、VTR、ビデオカメラ、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレーヤー、スピーカー、液晶ディスプレー等のAV機器、コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、LED封止材料、電線、ケーブル、トランス、偏向ヨーク、分電盤、時計等の電気・電子部品及び通信機器等に用いられる。
【0080】
更に、本発明の熱可塑性樹脂組成物及びその成形体は、座席(詰物、表地等)、ベルト、天井張り、コンパーチブルトップ、アームレスト、ドアトリム、リアパッケージトレイ、カーペット、マット、サンバイザー、ホイルカバー、マットレスカバー、エアバック、絶縁材、吊り手、吊り手帯、電線被覆材、電気絶縁材、塗料、コーティング材、上張り材、床材、隅壁、カーペット、壁紙、壁装材、外装材、内装材、屋根材、デッキ材、壁材、柱材、敷板、塀の材料、骨組及び繰形、窓及びドア形材、こけら板、羽目、テラス、バルコニー、防音板、断熱板、窓材等の自動車、車両、船舶、航空機、建物、住宅及び建築用材料や土木材料、衣料、カーテン、シーツ、不織布、合板、合繊板、絨毯、玄関マット、シート、バケツ、ホース、容器、眼鏡、鞄、ケース、ゴーグル、スキー板、ラケット、テント、楽器等の生活用品、スポーツ用品等に使用される。
【0081】
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。尚、以下の実施例等における%及びppmは、特に記載が無い限り質量基準である。
【0082】
〔製造例1〕
200mlの三つ口フラスコに、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル(HO−(CHCHO)15−C1837)76g(0.083モル)とm−キシリレンジイソシアネート7.8g(0.0415モル)を、窒素雰囲気下、120℃で4時間反応させた。FT−IRによりイソシアネート基のピーク(約2250cm−1)の消失を確認した後、60℃まで冷却し、次いでアルミホイル製のバット上に回収して白色個体の試験化合物−1を得た(収率95%)。
【0083】
得られた化合物−1について行ったFT−IR測定及びH−NMR測定の分析結果を下記に示す。下記結果から、得られた試験化合物−1は下記の構造式を有する本発明の化合物であると同定された。
FT−IR測定結果(cm−1): 3340、2854、1720、1110
H−NMR測定結果(CDCl溶媒)
(ケミカルシフト(ppm);多重度;プロトン数):
(7.3-7.2;m;4H)、(4.35;dd;2H)、(4.25;m;2H)、(3.72;dd;4H)、(3.7-3.5;m;112H)、(3.44;t;4H)、(1.59;t;4H)、(1.25;m;58H)、(0.88;t;6H)
【0084】

【0085】
〔製造例2〕
200mlの三つ口フラスコに、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル(HO−(CHCHO)15−C1837)65g(0.071モル)とイソホロンジイソシアネート7.9g(0.0355モル)を、窒素雰囲気下、120℃で4時間反応させた。FT−IRによりイソシアネート基のピーク(約2250cm−1)の消失を確認した後、60℃まで冷却し、次いでアルミホイル製のバット上に回収して白色個体の試験化合物−2を得た(収率97%)。
【0086】
得られた化合物−2について行ったFT−IR測定及びH−NMR測定の分析結果を下記に示す。下記結果から、得られた試験化合物−2は下記の構造式を有する本発明の化合物であると同定された。
FT−IR測定結果(cm−1): 3340、2854、1720、1110
H−NMR測定結果(CDCl溶媒)
(ケミカルシフト(ppm);多重度;プロトン数):
(4.2;m;4H)、(3.8−3.6;m;112H)、(3.57;t;4H)、(3.53;m;1H)、(3.44;t;4H)、(2.92;d;2H)、(1.81;s;2H)、(1.70;m;2H)、(1.57;m;4H)、(1.25;m;60H)、(1.06;s;6H)、(0.92;s;3H)、(0.88;t;6H)
【0087】

【0088】
〔製造例3〕
200mlの三つ口フラスコにポリオキシエチレンモノステアリルエーテル(HO−(CHCHO)15−C1837)65g(0.071mol)と2,4−トリレンジイソシアネート6.2g(0.0355mol)を、窒素雰囲気下、120℃で4時間反応させた。FT−IRによりイソシアネート基のピーク(約2250cm−1)の消失を確認した後、60℃まで冷却してサンプル瓶に回収し、白色状ワックスの試験化合物−3を得た(収率95%)。
【0089】
得られた試験化合物−3について行ったFT−IR測定及びH−NMR測定の分析結果を下記に示す。下記結果から、得られた試験化合物−3は下記の構造式を有する本発明の化合物であると同定された。
FT−IR測定結果(cm−1):3300、2860、1730、1110
H−NMR測定結果(CDCl溶媒)
(ケミカルシフト(ppm);多重度;プロトン数):
(7.83;m;1H)、(7.21;m;1H)、(7.07;d;1H)、(4.30;m;4H)、(3.74;m;4H)、(3.7−3.5;m;112H)、(3.44;t;4H)、(2.19;s;3H)、(1.59;t;4H)、(1.25;m;60H)、(0.88;t;6H)
【0090】

【0091】
〔製造例4〕
200mlの三つ口フラスコにポリオキシエチレンモノステアリルエーテル(HO−(CHCHO)15−C1837)65g(0.071mol)とジシクロヘキシルメタン4,4'-ジイソシアナート10.3g(0.0355mol)を、窒素雰囲気下、120℃で4時間反応させた。FT−IRによりイソシアネート基のピーク(約2250cm−1)の消失を確認した後、60℃まで冷却してアルミホイル製のバット上に回収し、白色固体の試験化合物−4を得た(収率96%)。
【0092】
得られた試験化合物−4について行ったFT−IR測定及びH−NMR測定の分析結果を下記に示す。下記結果から、得られた試験化合物−4は下記の構造式を有する本発明の化合物であると同定された。
FT−IR測定結果(cm−1):3340、2854、1720、1110
H−NMR測定結果(CDCl溶媒)
(ケミカルシフト(ppm);多重度;プロトン数):
(4.20;m;4H)、(3.7−3.55;m;112H)、(3.58;m;4H)、(3.44;t;4H)、(1.98;m;2H)、(1.78;m;2H)、(1.71;m;2H)、(1.65;m;2H)、(1.55;m;8H)、(1.25;m;60H)、(1.07;m;6H)、(0.97;m;2H)、(0.88;t;6H)
【0093】

【0094】
〔製造例5〕
200mlの三つ口フラスコにポリオキシエチレンモノステアリルエーテル(HO−(CHCHO)20−C1837)76g(0.066mol)とm−キシリレンジイソシアネート6.3g(0.033mol)を、窒素雰囲気下、120℃で4時間反応させた。FT−IRによりイソシアネート基のピーク(約2250cm−1)の消失を確認した後、60℃まで冷却してアルミホイル製のバット上に回収し、白色固体の試験化合物−5を得た(収率95%)。
【0095】
得られた試験化合物−5について行ったFT−IR測定及びH−NMR測定の分析結果を下記に示す。下記結果から、得られた試験化合物−5は下記の構造式を有する本発明の化合物であると同定された。
FT−IR測定結果(cm−1):3340、2854、1720、1110
H−NMR測定結果(CDCl溶媒)
(ケミカルシフト(ppm);多重度;プロトン数):
(7.3―7.2;m;4H)、(4.35;dd;2H)、(4.25;m;2H)、(3.72;dd;4H)、(3.7−3.5;m;156H)、(3.44;t;4H)、(1.59;t;4H)、(1.25;m;60H)、(0.88;t;6H)
【0096】

【0097】
〔実施例1〜2、比較例1〜4〕
下記の条件で、本発明の試験化合物-1を用いて試験片を作製し、下記の条件で性能評価を行った結果を、表1及び2に示した。また比較品−1として、グリセリンモノステアレート(商品名リケマールS−100 理研ビタミン(株)製)、比較品−2としてポリエーテルエステル型帯電防止剤(三洋化成(株)製:商品名ペレスタット300)を用いて同様に評価した。結果を合わせて表1及び2に示す。
【0098】
<試験片作製条件>
表1及び2に記載した配合量に基づいてブレンドしたポリプロピレン樹脂組成物を、(株)池貝製2軸押出機(PCM30,60mesh入り)を用い、200℃、6kg/時間で造粒し、得られたペレットを200℃でプレス成形して試験片(100mm×100mm×1mm)を得た。
【0099】
<表面固有抵抗値(SR値)>
得られた試験片について、成形加工後直ちに25℃で湿度60%の条件下に保存し、成形加工の2日後、1週間後及び2週間保存後に、同じ雰囲気下で、アドバンテスト社製のR8340抵抗計を用いて、印加電圧100V、印加時間1分の条件で、表面固有抵抗値(Ω/□)を測定した。測定は5点について行った。その平均値を表1及び2に示す。
【0100】
<対拭取り性評価試験>
上記で得られた試験片の表面を、ウエスで50回乾拭きし、25℃で湿度60%の条件下に2時間保存した後、同雰囲気下にて、アドバンテスト社製のR8340抵抗計を用いて、印加電圧100V、印加時間1分の条件で、表面固有抵抗値(Ω/□)を測定した。測定は5点について行った。その平均値を表1及び2に示す。
【0101】
<フォギング性評価試験>
上記で得られたペレットをサンプル瓶に入れて上部をガラス板で蓋をし、120℃のオイルバス中で1時間加熱した。なお、ガラス板は氷水で冷却した。1時間後にガラス板のヘイズ値を測定し、ペレットからの気散の程度を比較した。結果を表1及び2に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
〔実施例3〜5〕
試験化合物-1の代わりに試験化合物-3〜5を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で各試験片を作製し、性能評価を行った。結果を表3に示す。
【0105】
【表3】


〔実施例6、比較例5〜6〕
【0106】
<試験片作製条件>
表4に記載した配合量に基づいてブレンドしたポリプロピレン樹脂組成物を、(株)池貝製2軸押出機(PCM30,60mesh入り)を用い、200℃、6kg/時間で造粒し、得られたペレットを200℃で射出成形して試験片(100mm×100mm×1mm)を得た。
得られた各試験片について、実施例1と同様にして性能評価を行った。結果を表4に示す。
【0107】
【表4】

【0108】
表1〜4の結果から明らかなように、比較例の場合には、何れも実施例の場合に比較して初期帯電防止性(2日後)及び耐拭き取り性に劣り、特に、比較品−1を使用した比較例1及び3の場合には、揮発し易いために耐フォギング性にも劣ることが確認された。これに対し、本発明の化合物は帯電防止剤として優れていること、及び、この化合物を含有する熱可塑性樹脂成形体の帯電防止性能の持続性が良好であることも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の新規化合物は帯電防止剤として優れているだけでなく、繁用の熱可塑性樹脂に好適に使用することができるので、産業上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるジウレタン構造を有することを特徴とする化合物;

但し、上式中のR及びRは、同一でも異なっていてもよいアルキル基、Aはジイソシアネート化合物の残基を表し、n及びmは、同一でも異なっていてもよい2〜30の数を表す。
【請求項2】
前記Aがm−キシリレンジイソシアネートの残基である、下記一般式(II)で表される請求項1に記載された化合物;

【請求項3】
前記Aがイソホロンジイソシアネートの残基である、下記一般式(III)で表される請求項1に記載された化合物;

【請求項4】
前記Aが2,4−トリレンジイソシアネートの残基である、下記一般式(IV)で表される請求項1に記載された化合物;

【請求項5】
前記Aがジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネートの残基である、下記一般式(V)で表される請求項1に記載された化合物;

【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載された化合物からなることを特徴とする帯電防止剤。
【請求項7】
請求項6に記載された帯電防止剤を含有してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−168760(P2011−168760A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85043(P2010−85043)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】