説明

ジェットグラウト式地盤改良工法およびジェットグラウト式地盤改良装置

【課題】歩止まりが良くて無駄な部分が無く、また造成時間、工期の短縮化を図れるジェットグラウト式地盤改良工法を提供する。
【解決手段】ジェットグラウト式地盤改良工法において、先ず、横断面形状がプレート状の超高圧噴射壁15を造成し、次いで、横断面形状が同じプレート状の超高圧噴射壁16を前記超高圧噴射壁15の厚み方向に積層するように造成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水壁や補強擁壁等の造成工事において、地盤の不均一性や土層の境界条件等に左右されにくい高圧噴流のエネルギーを利用して、硬化材を地盤中に高圧噴射混合・撹拌させることで地盤改良するジェットグラウト式の地盤改良工法および地盤改良装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジェットグラウト式地盤改良工法として、例えば、掘削ケーシングを地中の目標深さまで挿入して先行削孔を行い、その掘削ケーシングの中に噴射管ロッドを建て込み、その後前記掘削ケーシングを引き抜いて、前記噴射管ロッドの上部に組み付けたスイベルの超高圧硬化材入口から超高圧硬化材を、スイベルの圧縮空気入口から圧縮空気をそれぞれ圧入し、前記噴射管ロッドの下部に組み付けたモニター機構の硬化材噴射ノズルから前記超高圧硬化材を、前記硬化材噴射ノズルの周囲の圧縮空気噴射ノズルから前記圧縮空気をそれぞれ管半径方向外向きへ連続的に噴射させ、前記噴射管ロッドを360度あるいは180度回転ないし旋回駆動しながら引上げることにより、図9(a),(b)に示すように、地中に円柱状あるいは半円柱状の改良柱体21を造成し、そして複数の改良柱体21を次々に横に連続させて形成することにより、止水壁や補強擁壁等に利用できる超高圧噴射壁22を造成するという地盤改良工法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平4−48894号公報(第4図、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、円柱状や半円柱状の改良柱体21を連続して造成する上記ジェットグラウト式地盤改良工法では、図9(a),(b)に示すような止水壁や補強擁壁等の超高圧噴射壁22において、構造的な耐力を期待することのできるのは、符号Aで示した幅部分のみであり、斜線部分Bで示したように円弧状に張り出した部分には構造耐力を期待できないので、材料が無駄になるという欠点がある。
また、噴射管ロッドを360度あるいは180度大きく回転ないし旋回駆動しながら引上げるので、造成時間が長くかかり、また噴流液体の飛距離にも限界があるといった問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、上記のような、連続的に噴射する超高圧硬化材と圧縮空気の超高圧噴流で、その周囲の地盤を切削撹拌して造成するというジェットグラウト式地盤改良工法において、超高圧噴射壁の横断面形状をプレート状に、つまり超高圧噴射壁の厚み方向両側の壁面を平らに形成することにより歩止まりが良くて無駄な部分が無く、また噴射管ロッドを全く旋回させないか、旋回するにしても僅かに旋回させるだけで足りて引き上げられることにより造成時間、工期の短縮化、噴流液体の飛距離の延長化を図れるジェットグラウト式の地盤改良工法および地盤改良装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のジェットグラウト式地盤改良工法は、請求項1に記載のように、少なくとも2本の掘削ケーシングと、頭部に超高圧硬化材入口及び圧縮空気入口を有するスイベルを組み付け、先端部にモニター管の外周にモニター管の管軸芯を対称の中心とする点対称の配置関係にある2個の硬化材噴射ノズルを設けてあるモニター機構を組み付けてある少なくとも2本の噴射管ロッドとを用意し、
先ず、1本目の前記掘削ケーシングを地中の目標深さまで挿入して一つ目の先行削孔を形成し、前記1本目の掘削ケーシングの中に1本目の前記噴射管ロッドを建て込み、次いで、2本目の前記掘削ケーシングを1本目の掘削ケーシングにガイド装置を介して沿わせながら地中の目標深さまで挿入して二つ目の先行削孔を一つ目の先行削孔に隣接し並べて平行に形成し、2本目の掘削ケーシングの中に2本目の前記噴射管ロッドを建て込み、次いで、2本目の掘削ケーシングを引き抜いた後、2本目の噴射管ロッドをこのモニター管の前記2個の硬化材噴射ノズルから超高圧硬化材を、各硬化材噴射ノズルの周囲の圧縮空気噴射ノズルから圧縮空気をそれぞれ前記一つ目の先行削孔と二つ目の先行削孔の並び方向に対し交差する方向に連続的に噴射させながら引上げることにより、連続的に噴射する前記超高圧硬化材と前記圧縮空気の高圧噴流で地盤を切削攪拌して横断面形状がプレート状の超高圧噴射壁を造成し、次いで、1本目の掘削ケーシングを引き抜いた後、1本目の噴射管ロッドをこのモニター管の前記2個の硬化材噴射ノズルから超高圧硬化材を、各硬化材噴射ノズルの周囲の圧縮空気噴射ノズルから圧縮空気をそれぞれ前記2本目の噴射管ロッドのモニター管からの超高圧硬化材および圧縮空気の噴射方向と平行な方向に連続的に噴射させながら引上げることにより、連続的に噴射する前記超高圧硬化材と前記圧縮空気の高圧噴流で地盤を切削攪拌して横断面形状がプレート状の超高圧噴射壁を前記超高圧噴射壁の厚み方向に積層するように造成することに特徴を有するものである。
【0007】
上記ジェットグラウト式地盤改良工法の構成によれば、先ず1枚目の横断面形状がプレート状の超高圧噴射壁を造成し、次いで2枚目の横断面形状がプレート状の超高圧噴射壁を1枚目の超高圧噴射壁の厚み方向に積層することで少なくとも2枚の横断面形状がプレート状の超高圧噴射壁を厚み方向に一体的に積層するものであるから、この積層一体化した超高圧噴射壁は所定の壁厚を確保し得ながら、超高圧噴射壁の厚み方向両側の壁面を平らに形成することができ、これにより超高圧噴射壁の横断面形状全体が土圧や水圧の外力に抵抗することができる構造的な耐力として使えることができて無駄な部分が無くなる。
また、このような横断面形状がプレート状の超高圧噴射壁の造成に際しては噴射管ロッドを非旋回状態で、又は旋回させるにしてもわずかな揺動旋回角で揺動旋回しながら引上げることで足り、それだけ、噴射管ロッドを360度あるいは180度大きく回転ないし旋回駆動させながら引き上げるのに要する従来の造成時間に比べて著しく短時間で造成でき、また超高圧硬化材の飛距離を延ばすことができることになる。
【0008】
本発明のジェットグラウト式地盤改良装置は、請求項2に記載のように、地中の目標深さまで挿入して一つ目の先行削孔を形成する1本目の掘削ケーシングと、頭部に超高圧硬化材入口及び圧縮空気入口を有するスイベルを組み付け、先端部にモニター管の外周にモニター管の管軸芯を対称の中心とする点対称の配置関係にある2個の硬化材噴射ノズルを設けてあるモニター機構を組み付けてあって、前記1本目の掘削ケーシングの中に建て込まれる1本目の噴射管ロッドと、地中の目標深さまで挿入して二つ目の先行削孔を一つ目の先行削孔に隣接して平行に形成する2本目の掘削ケーシングと、2本目の掘削ケーシングを1本目の掘削ケーシングに平行に沿わせて挿入ガイドするように1本目の掘削ケーシングと2本目の掘削ケーシングとの間に設けたガイド装置と、前記1本目の噴射管ロッドと同一構成に構成されて前記2本目の掘削ケーシングの中に建て込まれる2本目の噴射管ロッドと、を備えていることに特徴を有するものである。
【0009】
上記ジェットグラウト式地盤改良装置の構成によれば、先ず、2本目の掘削ケーシングを引き抜いた後、2本目の噴射管ロッドをこのモニター管の2個の硬化材噴射ノズルから超高圧硬化材を、各硬化材噴射ノズルの周囲の圧縮空気噴射ノズルから圧縮空気をそれぞれ一つ目の先行削孔と二つ目の先行削孔の並び方向に対し交差する方向に連続的に噴射させながら引上げることにより、1枚目の横断面形状がプレート状の超高圧噴射壁を造成することができ、次いで、1本目の掘削ケーシングを引き抜いた後、1本目の噴射管ロッドをこのモニター管の2個の硬化材噴射ノズルから超高圧硬化材を、各硬化材噴射ノズルの周囲の圧縮空気噴射ノズルから圧縮空気をそれぞれ前記2本目の噴射管ロッドのモニター管からの超高圧硬化材および圧縮空気の噴射方向と平行な方向に引上げることにより、2枚目の横断面形状がプレート状の超高圧噴射壁を1枚目の超高圧噴射壁の厚み方向に積層することができて少なくとも2枚の横断面形状がプレート状の超高圧噴射壁を厚み方向に一体的に積層することができるものである。したがって、この積層一体化した超高圧噴射壁は所定の壁厚を確保し得ながら、超高圧噴射壁の厚み方向両側の壁面を平らに形成することができるため、横断面形状全体が構造的な耐力を期待することができて無駄な部分が無くなる。
また、このような横断面形状がプレート状の超高圧噴射壁の造成に際しては噴射管ロッドを非旋回状態で、又は旋回させるにしてもわずかな揺動旋回角で揺動旋回駆動しながら引上げることで足り、それだけ、噴射管ロッドを360度あるいは180度大きく回転ないし旋回させながら引き上げるのに要する従来の造成時間に比べて著しく短時間で造成でき、また超高圧硬化材の飛距離を延ばすことができることになる。
【0010】
請求項2記載のジェットグラウト式地盤改良装置は、請求項3に記載のように、前記ガイド装置が、1本目の掘削ケーシングおよび2本目の掘削ケーシングにそれぞれ摺動自在に外嵌できる二つの短円筒を眼鏡状に並べて繋ぎ部材で連結してなるという構成を採用することができる。これによると、2本目の掘削ケーシングを地中へ挿入するに際し1本目の掘削ケーシングに沿って平行に安定よく確実に摺動させることができ、一つ目の先行削孔と二つ目の先行削孔を平行に形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のジェットグラウト式の地盤改良工法および地盤改良装置によれば、歩止まりが良くて無駄な部分が無く、また造成時間、工期の短縮化、超高圧硬化材の飛距離の長大化を図れるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は本発明のジェットグラウト式地盤改良工法による作業工程における一つ目の先行削孔の工程図、(b)は1本目の噴射管ロッドの建て込み工程図である。
【図2】(a)は本発明のジェットグラウト式地盤改良工法による作業工程における二つ目の先行削孔の工程図、(b)は2本目の噴射管ロッドの建て込み工程図である。
【図3】(a)は、図2(b)における矢印Eから見て示す、1枚目の超高圧噴射壁の造成工程図、(b)は、図2(b)における矢印Eから見て示す、2本目の噴射管ロッドの引き抜き工程図である。
【図4】(a)は本発明のジェットグラウト式地盤改良工法に使用する噴射管ロッドのモニター機構の縦断面図、(b)は図4(a)におけるC−C線断面図、(c)は変形実施例を図4(b)に相応して示す断面図である。
【図5】(a)は本発明のジェットグラウト式地盤改良工法に使用するガイド装置の平面図、(b)は図5(a)におけるD−D線断面図である。
【図6】本発明のジェットグラウト式地盤改良工法による作業工程における二つ目の先行削孔工程の削孔状況を示す縦断面図である。
【図7】(a)は本発明のジェットグラウト式地盤改良工法に使用する噴射管ロッドの概略横断面図、(b)は噴射管ロッドの振れ止め部材の平面図である。
【図8】本発明のジェットグラウト式地盤改良工法による作業工程における一枚目の超高圧噴射壁および二枚目の超高圧噴射壁の噴射造成状況を示す横断面図である。
【図9】(a)(b)は従来例のジェットグラウト式地盤改良工法により得られる止水壁や補強擁壁の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。
【0014】
本発明のジェットグラウト式地盤改良工法の一実施例を図1〜図8を参照して、以下に工程順に説明する。
【0015】
(1)1本目の掘削ケーシングによる先行削孔工程
図1(a)に示すように、地上にボーリングマシンMを設置し、1本目の掘削ケーシング1による一つ目の先行削孔H1を水又はベントナイト泥水を噴出しながら目的の削孔深度まで行う。即ち、掘削ケーシング1の上端部に接続されたスイベル2の入口2aに水又はベントナイト泥水を供給し、掘削ケーシング1のメタルクラウン3を装着した下部先導管1aから前記水又はベントナイト泥水を吐出させ、掘削ケーシング1を旋回させながら下降させてメタルクラウン3で削孔することにより掘削ケーシング1を地中の所定の深さまで挿入する。
【0016】
(2)1本目の噴射管ロッドの建て込み工程
次いで、図1(b)に示すように、1本目の掘削ケーシング1内に1本目の噴射管ロッド4を所定の深さまで建て込む。
ここで使用される噴射管ロッド4は二重管ロッドからなり、図1(b)に示すように、その上端部には超高圧硬化材入口5a、圧縮空気入口5bを有するスイベル5が接続され、下端部には図4(a),(b)又は(c)に示すようなモニター機構7が接続される。モニター機構7はジェット通路7a及び圧縮空気通路7bを有する二重管構造であり、そのジェット通路7aの上端部は前記スイベル5の超高圧硬化材入口5aと、圧縮空気通路7bの上端部は前記スイベル5の圧縮空気入口5bとそれぞれ連通状態にあり、ジェット通路7aの下端部には2個の硬化材噴射ノズル7cが、圧縮空気通路7bの下端部には圧縮空気噴射ノズル7dがそれぞれ設けられる。2個の硬化材噴射ノズル7cは、モニター機構7のモニター管8の外周にモニター管8の管軸芯Oを対称の中心とする点対称の配置関係にあるように設けてある。圧縮空気噴射ノズル7dは硬化材噴射ノズル7cの周囲から圧縮空気を噴出するように形成されている。
【0017】
図7(a)に示すように1本目の噴射管ロッド4は外周面の相対向部位に平坦面4fを形成する等して横断面非円形に形成し、2個の硬化材噴射ノズル7cは平坦面4f上に対応するように配設することにより、2個の硬化材噴射ノズル7cが地中にあってもその2個の硬化材噴射ノズル7cからの超高圧硬化材の噴射方向が地上からでも一見して容易に確認できるようにしている。噴射管ロッド4をそのように横断面非円形状に形成すると振れを起こしやすいため、その振れ止めを講じる対策として、ボーリングマシンMの下側位置において図7(b)に示すような四角形枠状に組み立てた振れ止め部材9を設置し、この振れ止め部材9の四角形孔部9aに噴射管ロッド4を挿通させて該ロッド4の振れ止めを図っている。
なお、1本目の噴射管ロッド4の挿入後は、図2(a)に示すように1本目の掘削ケーシング1の開口上端をケーシング蓋10で塞ぐ。
【0018】
(3)2本目の掘削ケーシングによる先行削孔工程
一つ目の先行削孔H1の終了後は、ボーリングマシンMを移動し、図2(a)、図6に示すように、2本目の掘削ケーシング11で二つ目の先行削孔H2を水又はベントナイト泥水を噴出しながら目的の削孔深度まで一つ目の先行削孔H1と同じように行う。このとき、注目すべきは、2本目の掘削ケーシング11を1本目掘削ケーシング1に沿って平行に地中に挿入できるように、図6に示すように、1本目の掘削ケーシング1と2本目の掘削ケーシング11間にガイド装置12を設け、該ガイド装置12を介して2本目の掘削ケーシング11を1本目の掘削ケーシング1と平行に地中の所定深さまで挿入することで二つ目の先行削孔H2を一つ目の先行削孔H1と平行に隣接して施工する点である。
【0019】
ガイド装置12としては、例えば、図5(a),(b)に示すように、1本目の掘削ケーシング1および2本目の掘削ケーシング11にそれぞれ摺動自在に外嵌できる二つの短円筒12b、12aを眼鏡状に並べて繋ぎ部材12cで連結してなるものを採用する。使用に際しては、図6に示すように、予め一方の短円筒12aを2本目の掘削ケーシング11の先端のメタルクラウン3とこの上方に挿通固定したガイド装置押え13との間に遊動自在に挿通しておき、この2本目の掘削ケーシング11を地中に挿入するときに他方の短円筒12bを1本目の掘削ケーシング1に差し込み、2本目の掘削ケーシング11を地中へ挿入するに伴い他方の短円筒12bが1本目の掘削ケーシング1に沿って摺動するようにしたものである。ガイド装置12としては、上記のように1本目の掘削ケーシング1および2本目の掘削ケーシング11にそれぞれ摺動自在に外嵌できる二つの短円筒12b,12aを眼鏡状に並べて繋ぎ部材12cで連結してなるものとすることにより、2本目の掘削ケーシング11を地中へ挿入するに際し1本目の掘削ケーシング1に沿って平行に安定よく確実に摺動させることができるため、一つ目の先行削孔H1と二つ目の先行削孔H2を平行に形成することができる。しかし、ガイド装置12としては、必ずしもそのような構造に限定されるものではなく、その他に、図示省略するが、例えば、1本目の掘削ケーシング1または2本目の掘削ケーシング11の一方にガイド溝を設け、他方の2本目の掘削ケーシング11または1本目の掘削ケーシング1に前記ガイド溝に摺動自在なスライド突起又はスライド凸条を設けるものであってもよい。
【0020】
(4)2本目の噴射管ロッドの建て込み工程
二つ目の先行削孔H2の終了後は、図2(b)に示すように、2本目の掘削ケーシング11内に1本目の掘削ケーシング1と同じ構造の2本目の噴射管ロッド14を所定の深さまで建て込む。
【0021】
(5)2本目の掘削ケーシングの引き抜き工程
次いで、2本目の掘削ケーシング11を地上に引き抜く。この引き抜きに伴いガイド装置12が1本目の掘削ケーシング1から抜き出される。
【0022】
(6)水による噴射テスト工程
2本目の掘削ケーシング11の引き抜き後は、この二つ目の先行削孔H2内の噴射管ロッド14のモニター機構7の硬化材噴射ノズル7cから超高圧水を一つ目の先行削孔H1と二つ目の先行削孔H2の並び方向Xに対し交差する方向へ噴射させながら噴射テストを行う。噴射テストに異常がなければ、超高圧水をセメント系の超高圧硬化材に切り替えて超高圧噴射壁の造成を開始する。
【0023】
(7)1枚目の超高圧噴射壁の造成工程
1枚目の超高圧噴射壁15の造成に際しては、図3(a)に示すように、先ず、二つ目の先行削孔H2内の噴射管ロッド14を所定の引き上げ速度で、非旋回状態で又はわずかな揺動旋回角で揺動旋回しながら引き上げて行くと同時に、図8に示すように、超高圧硬化材を硬化材噴射ノズル7cから所定の吐出量および吐出圧で連続的に一つ目の先行削孔H1と二つ目の先行削孔H2の並び方向Xに対し交差する方向へ噴射させるとともに、圧縮空気を各圧縮空気噴射ノズル7dから噴射させ、その噴流Gで地盤を切削撹拌すると同時にその切削域に超高圧硬化材を充填して1枚目の横断面形状がプレート状(板状)の超高圧噴射壁15を造成する。造成後は、超高圧硬化材、圧縮空気の供給を停止して、2本目の噴射管ロッド14を地上に引き抜く。
【0024】
(8)1本目の掘削ケーシングの引き抜き工程
1枚目の超高圧噴射壁15の造成後には、図示省略するが、1本目の掘削ケーシング1を地上に引き抜く。
【0025】
(9)2枚目の超高圧噴射壁の造成工程
1本目の掘削ケーシング1の引き抜いた後は、この一つ目の先行削孔H1内の噴射管ロッド4を所定の引き上げ速度で、非旋回状態で又はわずかな揺動旋回角で揺動旋回しながら引き上げて行くと同時に、図8に示すように、超高圧硬化材を硬化材噴射ノズル7cから所定の吐出量および吐出圧で連続的に一つ目の先行削孔H1と二つ目の先行削孔H2の並び方向Xに対し交差する方向に噴射させるとともに、圧縮空気を圧縮空気噴射ノズル7dから噴射させ、その噴流Gで地盤を切削撹拌すると同時にその切削域に超高圧硬化材を充填して前記超高圧噴射壁15の壁厚方向に2枚目の横断面形状がプレート状の超高圧噴射壁16を積層状に造成して、造成を完了する(図8参照)。造成完了後は、超高圧硬化材、圧縮空気の供給を停止して、図3(b)に示すように、1本目の噴射管ロッド4を地上に引き抜く。
【0026】
(10)噴射管ロッドの洗浄・穴埋め工程
1本目および2本目の各噴射管ロッド4、14の引き抜き後は、各ロッド4、14内を清水で洗浄し、次の造成地点に移動させる。噴射管ロッド4、14の引き抜きにより超高圧噴射壁の上方に生じる穴17(図3(b)参照)は、排泥やモルタル等で穴埋めを行う。
【0027】
上記実施例では、止水壁や補強擁壁等に有効に利用できるように2枚の超高圧噴射壁15,16を壁厚方向に積層一体化するが、壁厚をより増厚させるために超高圧噴射壁を壁厚方向に3枚以上積層一体化するように造成するもよい。
【0028】
以上のような地盤改良工法は、上記のように、少なくとも、一つ目の先行削孔H1および二つ目の先行削孔H2をそれぞれ形成する2本の掘削ケーシング1,11と、頭部に超高圧硬化材入口5a及び圧縮空気入口5bを有するスイベル5を組み付け、先端部にモニター管8の外周にモニター管8の管軸芯Oを対称の中心とする点対称の配置関係にある2個の硬化材噴射ノズル7cを設けてあるモニター機構7を組み付けてあって、1本目の掘削ケーシング1の中に建て込まれる1本目の噴射管ロッド4、および1本目の噴射管ロッド4と同一構成に構成されて2本目の掘削ケーシング11の中に建て込まれる2本目の噴射管ロッド14と、2本目の掘削ケーシング11を1本目の掘削ケーシング1に平行に沿わせて挿入ガイドするガイド装置12と、を備えてなるジェットグラウト式地盤改良装置を使用することにより容易に実施することができる。
【0029】
1枚目の横断面形状がプレート状の超高圧噴射壁15に、少なくとも2枚目の同じく横断面形状がプレート状の超高圧噴射壁16を壁厚方向に積層一体化してなるものは、図8にみられるように、所定の壁厚を確保し得ながら、その厚み方向両側の壁面W1,W2を平らに形成することができ、これにより超高圧噴射壁15,16の横断面形状全体が土圧や水圧の外力に抵抗することができる構造的な耐力として使えることができて歩止まり良好で材料の無駄が無く経済的である。
【0030】
また、このような横断面形状がプレート状の超高圧噴射壁15,16の造成に際しては噴射管ロッド4,14を非旋回状態で、又は旋回させるにしてもわずかな揺動旋回角で揺動旋回しながら引上げることで足りるため、従来の造成時間に比べて著しく短時間で造成でき、また超高圧硬化材の飛距離を延ばすことができる。
【符号の説明】
【0031】
1 1本目の掘削ケーシング
4 1本目の噴射管ロッド
5 スイベル
5a 超高圧硬化材入口
5b 圧縮空気入口
7 モニター機構
7c 硬化材噴射ノズル
7d 圧縮空気噴射ノズル
8 モニター管
11 2本目の掘削ケーシング
12 ガイド装置
12a、12b 短円筒
12c 繋ぎ部材
14 2本目の噴射管ロッド
15 1枚目の超高圧噴射壁
16 2枚目の超高圧噴射壁
H1 一つ目の先行削孔
H2 二つ目の先行削孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本の掘削ケーシングと、頭部に超高圧硬化材入口及び圧縮空気入口を有するスイベルを組み付け、先端部にモニター管の外周にモニター管の管軸芯を対称の中心とする点対称の配置関係にある2個の硬化材噴射ノズルを設けてあるモニター機構を組み付けてある少なくとも2本の噴射管ロッドとを用意し、
先ず、1本目の前記掘削ケーシングを地中の目標深さまで挿入して一つ目の先行削孔H1を形成し、前記1本目の掘削ケーシングの中に1本目の前記噴射管ロッドを建て込み、次いで、2本目の前記掘削ケーシングを1本目の掘削ケーシングにガイド装置を介して沿わせながら地中の目標深さまで挿入して二つ目の先行削孔を一つ目の先行削孔に隣接し並べて平行に形成し、2本目の掘削ケーシングの中に2本目の前記噴射管ロッドを建て込み、次いで、2本目の掘削ケーシングを引き抜いた後、2本目の噴射管ロッドをこのモニター管の前記2個の硬化材噴射ノズルから超高圧硬化材を、各硬化材噴射ノズルの周囲の圧縮空気噴射ノズルから圧縮空気をそれぞれ前記一つ目の先行削孔と二つ目の先行削孔の並び方向に対し交差する方向に連続的に噴射させながら引上げることにより、連続的に噴射する前記超高圧硬化材と前記圧縮空気の高圧噴流で地盤を切削攪拌して横断面形状がプレート状の超高圧噴射壁を造成し、次いで、1本目の掘削ケーシングを引き抜いた後、1本目の噴射管ロッドをこのモニター管の前記2個の硬化材噴射ノズルから超高圧硬化材を、各硬化材噴射ノズルの周囲の圧縮空気噴射ノズルから圧縮空気をそれぞれ前記2本目の噴射管ロッドのモニター管からの超高圧硬化材および圧縮空気の噴射方向と平行な方向に連続的に噴射させながら引上げることにより、連続的に噴射する前記超高圧硬化材と前記圧縮空気の高圧噴流で地盤を切削攪拌して横断面形状がプレート状の超高圧噴射壁を前記超高圧噴射壁の厚み方向に積層するように造成することを特徴とする、ジェットグラウト式地盤改良工法。
【請求項2】
地中の目標深さまで挿入して一つ目の先行削孔を形成する1本目の掘削ケーシングと、
頭部に超高圧硬化材入口及び圧縮空気入口を有するスイベルを組み付け、先端部にモニター管の外周にモニター管の管軸芯を対称の中心とする点対称の配置関係にある2個の硬化材噴射ノズルを設けてあるモニター機構を組み付けてあって、前記1本目の掘削ケーシングの中に建て込まれる1本目の噴射管ロッドと、
地中の目標深さまで挿入して二つ目の先行削孔を一つ目の先行削孔に隣接して平行に形成する2本目の掘削ケーシングと、
2本目の掘削ケーシングを1本目の掘削ケーシングに平行に沿わせて挿入ガイドするように1本目の掘削ケーシングと2本目の掘削ケーシングとの間に設けたガイド装置と、
前記1本目の噴射管ロッドと同一構成に構成されて前記2本目の掘削ケーシングの中に建て込まれる2本目の噴射管ロッドと、
を備えていることを特徴とする、ジェットグラウト式地盤改良装置。
【請求項3】
前記ガイド装置が、1本目の掘削ケーシングおよび2本目の掘削ケーシングにそれぞれ摺動自在に外嵌できる二つの短円筒を眼鏡状に並べて繋ぎ部材で連結してなる、請求項2記載のジェットグラウト式地盤改良装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−83125(P2013−83125A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225197(P2011−225197)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(591141429)
【Fターム(参考)】