説明

ジスキネジア関連障害の治療

本明細書中で開示するのは、低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療する方法、および、治療上有効量の本発明の化合物を投与することを含むスキネジアから回復させる方法である。さらに、本発明は、その治療における医薬の製造における前記化合物の使用および医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、低いジスキネジア(dyskinesia)誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療する方法、および、治療上有効量の本明細書中で開示する化合物を投与することを含むジスキネジアから回復させる方法に関する。さらに、本発明は、同疾患、または、ハンチントン舞踏病など他の運動障害の治療における医薬の製造における前記化合物の使用および医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病(PD)の対症治療におけるドパミン補充剤(dopamine−replacing agent)の使用は、疑いの余地なく、患者のクオリティー・オブ・ライフの向上に成功を収めてきている。長年にわたり使用されており依然としてPD治療のゴールド・スタンダードであるLドパは、運動の緩慢さ(運動緩徐)、硬直および/または振戦を特徴とするPDの運動症状を緩和する。Lドパは、生体内代謝されて(bio−metabolized)ドパミン(DA)となるプロドラッグとして作用することは理解される。次いでDAは脳内のドパミン受容体を活性化するが、これらの受容体は2つのクラス、すなわちD1受容体およびD2受容体に分けられる。D1受容体は、D受容体およびD受容体に分けることができ、D2受容体は、D受容体、D受容体およびD受容体に分けることができる。しかし、ドパミン補充療法(dopamine−replacement therapy)は、特に長期の治療後には制限を有する。Lドパの投与に対する継続期間の応答は、年を経るにつれ進行性に短くなり、患者が薬物に応答する期間は、さまざまな副作用の出現により複雑になる。
【0003】
この副作用はジスキネジアとして現れることがあり、患者がドパミン補充療法(dopamine replacement therapy)を受けている場合、または患者が療法を受けていない場合でも、そのいずれにおいても見られることがある。ジスキネジアは、異常な不随意運動障害である。この異常な運動は、舞踏病(顔、腕、脚または胴体に影響を及ぼす不随意、急速、不規則、痙攣性の運動)、バリスム(舞踏病に似ているが、より激しく強力な性質を有する不随意運動)、ジストニー(持続的な筋収縮で、通常、ねじるような反復性の運動または異常な姿勢もしくは体位が生じる)および/またはアテトーシス(反復性で不随意の、ゆっくりとした、くねるような、のたうつような運動であり、手において特に激しい)として現れることがある。
【0004】
PDに苦しむ患者は、ジスキネジアを伴う「オン」期間と、患者が重度にパーキンソン病症状を呈する「オフ」期間とを繰り返すことがある。疾患の経過を通じLドパが依然として有効な抗パーキンソン病剤であるという事実にも関わらず、結果としてPD患者は、深刻な身体的障害を経験することがある(Obesoら、Neurology、2000、55、S13〜23頁(非特許文献1))。ブロモクリプチン、リスリド、プラミペキソール、ロピニロールおよびペルゴリドなどのドパミン作動薬は、とりわけ中〜重度のPDにおいてはLドパより有効性が低い。しかし、その副作用プロファイルは、Lドパのものとは異なる。DA作動薬が実際にLドパよりジスキネジアを引き起こしにくいことは注目に値するが、これはジスキネジアを有するPD患者に限られた価値であり、その理由は、PD患者の多くは中〜重度のPDを有することからLドパの有効性を必要とするからである。
【0005】
基底核の機能不全に由来するジスキネジアおよび他の運動障害は、大きな社会経済的重要性を有する。ジスキネジアを防止および/または治療する薬剤を開発するために多くの試みがなされてきたが、そのような試みは、限られた成功しか収めていない。したがって、ジスキネジアを治療する新規の薬剤を提供する必要がある。
【0006】
ラットにおけるパーキンソン症候群の6−ヒドロキシドパミン(6−OHDA)病変モデルは、前臨床レベルでのPDの調査において、また、新規の治療選択肢の評価用に、貴重な手段となっている(Schwarting and Huston、Prog. Neurobiol.、1996、50、275〜331頁(非特許文献2))。最も広く使用される6−OHDAパラダイムの1つは、ドパミン作動性の黒質線条体経路の不連続性の変性を有するラットにおける回転行動の評価である(Ungerstedt and Arbuthnott、Brain Res.、1970、24、485頁(非特許文献3))。このモデルにおいては、6−OHDAは、黒質線条体経路、線条体または内側前脳束(MFB)中に片側性に注入され、ドパミン作動性の黒質線条体系間に機能的な不均衡をもたらす。ドパミンに代謝される前駆体Lドパおよびドパミン作動薬アポモルヒネなどドパミン受容体を直接刺激する薬物を投与すると、6−OHDAが注入されている側の半身から離れた側で回転行動が生じる。
【0007】
運動関連の欠損に加え、6−OHDAモデルは、PDの他の特徴を再現するためにも使用できる。線条体中またはMFB中のいずれかに6−OHDAを注射し、Lドパで長期的に処置したラットにおいて、感作性の回転行動ならびに異常な不随意運動(AIM)が両方とも生じることが観察されていることから、さらにLドパ誘導性ジスキネジアの試験用の動物モデルともなっている(Lundbladら、Eur. J Neurosci.、2002、15、120〜132頁(非特許文献4)))。長期的な処置の間、このモデルにおいては、LドパはAIMの漸次的な発症を誘導するが、ブロモクリプチンはこれを誘導しない。こうした観察に基づき、6−OHDAで病変を生じさせたラットは、パーキンソン病のジスキネジアと本質的な機能的類似性を共有する運動欠損(motor deficit)を呈し、ジスキネジア用の治療を提供するための治療の可能性の評価に使用できると受け取られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1274411号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Obesoら、Neurology、2000、55、S13〜23頁
【非特許文献2】Schwarting and Huston、Prog. Neurobiol.、1996、50、275〜331頁
【非特許文献3】Ungerstedt and Arbuthnott、Brain Res.、1970、24、485頁
【非特許文献4】Lundbladら、Eur. J Neurosci.、2002、15、120〜132頁
【非特許文献5】Stocchi and Olanow、Neurology、2004、2004、62、S56〜S63頁
【非特許文献6】Hilaryら、Journal of Neurology、2004、251、11、1370〜1374頁
【非特許文献7】Journal of Pharmaceutical Science、1977、66、2〜19頁
【非特許文献8】「SMART and SAINT, Area Detector Control and Integration Software」、Version 5.054、Bruker Analytical X-Ray Instruments Inc.、Madison、USA (1998)
【非特許文献9】Sheldrick、「SADABS, Program for Empirical Correction of Area Detector Data」、Version 2.03、University of Goettingen、ドイツ(2001)
【非特許文献10】Sheldrick、「SHELXTL, Structure Determination Programs」、Version 6.12、Bruker Analytical X-Ray Instruments Inc.、Madison、USA、(2001)
【非特許文献11】Taberら、J. Am. Chem. Soc.、124(42)、12416頁、(2002)
【非特許文献12】Setlerら、Eur. J. Pharmacol.、1978、50(4)、419頁
【非特許文献13】Ungerstedtら、「Advances in Dopamine Research」、(Kohsaka編)、Pergamon Press、1982、Oxford、219頁
【非特許文献14】Arnt and Hyttel、Psychopharmacology、1985、85(3)、346頁
【非特許文献15】Sonsallaら、J. Pharmacol Exp. Ther.、1988、247(1)、180頁
【非特許文献16】Lundbladら、Eur. J Neurosci.、15、120頁、(2002)
【非特許文献17】Smithら、Mov. Disord.、2002、17(5)、887頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ジスキネジアおよび他の関連運動障害を治療するための新しい治療薬を同定する試みにおいて、出願人らは、驚くべきことに、強力なD1/D2作動薬としての(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール[本明細書中では化合物10と呼ぶ]、(6aR,10aR)−7−n−プロピル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザシクロペンタ[a]アントラセン[本明細書中では化合物11と呼ぶ]および(4aR,10aR)−1−n−プロピル−2,3,4,4a,5,7,8,9,10,10a−デカヒドロ−1H−ベンゾ[g]キノリン−6−オン[本明細書中では化合物12と呼ぶ]が、片側性の6−OHDA病変を有するラットにおいて好ましいプロファイルを有することを見出した。これらの化合物は、Lドパおよびアポモルヒネより少ないジスキネジアを誘導し、プラミペキソールにより例証されるように、D2作動薬より有効にLドパ誘導性ジスキネジアを減少させる。したがって、化合物10、11および12は、ジスキネジアの誘導という点だけでなく、ジスキネジアの回復用の薬物として、その両方の点でもLドパ様の有効性と好ましいプロファイルとを有する第1のPD薬となる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、同定された前述の化合物は、ジスキネジア、および、ハンチントン舞踏病など他の関連運動障害を治療するために使用できると期待される。さらに、本発明は、対応するラセミ・トランス混合物の使用を企図する。本発明は、さらに、治療上有効量の前記化合物を投与することを含む、低いジスキネジア誘導プロファイルでパーキンソン病を治療する方法を提供する。一態様では、このパーキンソン病の治療は、Lドパ治療と同様に有効である。さらに提供されるのは、前記化合物およびその医薬組成物を投与することを含む、ジスキネジアから回復させる方法またはパーキンソン病を治療する方法である。
【0012】
本発明の一態様は、低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療するための医薬の製造における(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩の使用に関する。
【0013】
別の態様は、低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療するための医薬の製造におけるラセミ・トランス−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールの使用に関する。
【0014】
本発明の独立の一態様は、パーキンソン病を治療する医薬の製造における(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩の使用に関する。
【0015】
別の態様は、パーキンソン病を治療するための医薬の製造におけるラセミ・トランス−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールの使用に関する。
【0016】
本発明の独立の一態様は、ジスキネジアから回復させるための医薬の製造における(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩の使用に関する。
【0017】
別の態様は、ジスキネジアから回復させるための医薬の製造におけるラセミ・トランス−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールの使用に関する。
【0018】
別の態様は、低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療するための、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩を含む医薬組成物に向けたものである。
【0019】
本発明の独立の態様は、低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療するための医薬の製造における、ラセミ・トランス−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールを含む医薬組成物に関する。
【0020】
別の態様は、治療上有効量の(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩を投与することを含む、低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療する方法に向けたものである。
【0021】
独立の一態様は、治療上有効量のラセミ・トランス−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールを投与することを含む、低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療する方法に関する。
【0022】
別の態様は、治療上有効量の(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩を投与することを含むジスキネジアから回復させる方法に向けたものである。
【0023】
また別の態様は、治療上有効量のラセミ・トランス−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩を投与することを含むジスキネジアから回復させる方法に向けたものである。
【0024】
本発明の一態様は、低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療するための医薬の調製における(6aR,10aR)−7−n−プロピル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザシクロペンタ[a]アントラセンまたは薬学上許容可能なその塩の使用に関する。
【0025】
本発明の独立の一態様は、ジスキネジアから回復させるための医薬の調製における(6aR,10aR)−7−n−プロピル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザシクロペンタ[a]アントラセンまたは薬学上許容可能なその塩の使用に関する。
【0026】
別の態様は、低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療するための、(6aR,10aR)−7−n−プロピル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザシクロペンタ[a]アントラセンまたは薬学上許容可能なその塩を含む医薬組成物に向けたものである。
【0027】
本発明の独立の態様は、低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療するための医薬の調製における、(6aR,10aR)−7−n−プロピル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザシクロペンタ[a]アントラセンまたは薬学上許容可能なその塩を含む医薬組成物に関する。
【0028】
別の態様は、治療上有効量の(6aR,10aR)−7−n−プロピル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザシクロペンタ[a]アントラセンまたは薬学上許容可能なその塩を投与することを含む、低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療する方法に向けたものである。
【0029】
別の態様は、治療上有効量の(6aR,10aR)−7−n−プロピル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザシクロペンタ[a]アントラセンまたは薬学上許容可能なその塩を投与することを含むジスキネジアから回復させる方法に向けたものである。
【0030】
本発明の一態様は、低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療するための医薬の調製における(4aR,10aR)−1−n−プロピル−2,3,4,4a,5,7,8,9,10,10a−デカヒドロ−1H−ベンゾ[g]キノリン−6−オンまたは薬学上許容可能なその塩の使用に関する。
【0031】
本発明の独立の一態様は、パーキンソン病を治療するための医薬の調製における(4aR,10aR)−1−n−プロピル−2,3,4,4a,5,7,8,9,10,10a−デカヒドロ−1H−ベンゾ[g]キノリン−6−オンまたは薬学上許容可能なその塩の使用に関する。
【0032】
また別の態様は、ジスキネジアから回復させるための医薬の調製における(4aR,10aR)−1−n−プロピル−2,3,4,4a,5,7,8,9,10,10a−デカヒドロ−1H−ベンゾ[g]キノリン−6−オンまたは薬学上許容可能なその塩の使用に関する。
【0033】
別の態様は、低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療するための、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−2,3,4,4a,5,7,8,9,10,10a−デカヒドロ−1H−ベンゾ[g]キノリン−6−オンまたは薬学上許容可能なその塩を含む医薬組成物に向けたものである。
【0034】
本発明の独立の態様は、低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療するための医薬の調製における、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−2,3,4,4a,5,7,8,9,10,10a−デカヒドロ−1H−ベンゾ[g]キノリン−6−オンまたは薬学上許容可能なその塩を含む医薬組成物に関する。
【0035】
別の態様は、治療上有効量の(4aR,10aR)−1−n−プロピル−2,3,4,4a,5,7,8,9,10,10a−デカヒドロ−1H−ベンゾ[g]キノリン−6−オンまたは薬学上許容可能なその塩を投与することを含む、低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療する方法に向けたものである。
【0036】
別の態様は、治療上有効量の(4aR,10aR)−1−n−プロピル−2,3,4,4a,5,7,8,9,10,10a−デカヒドロ−1H−ベンゾ[g]キノリン−6−オンまたは薬学上許容可能なその塩を投与することを含むジスキネジアから回復させる方法に向けたものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】化合物ent−10の結晶構造を示す図である。「重い」臭素原子の異常散乱により絶対配置を決定した。
【図2】hDをトランスフェクトしたCHO−Ga16細胞中での、ドパミンによる細胞内Ca2+放出の濃度依存刺激についての用量応答曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の化合物は、2つのキラル中心(以下の式においてで示す)を有する。
【0039】
【化1】

【0040】
本発明の化合物は、2つの異なるジアステレオマー体、すなわちシス異性体およびトランス異性体の形で存在でき、その両方とも、2つのエナンチオマー体の形で存在できる。本発明は、トランス・ラセミ体および(4aR,10aR)エナンチオマーのみに関する。
【0041】
【化2】

【0042】
前述のように、本発明は、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール(本明細書中では「化合物10」と呼ぶ)が、6−OHDAで病変を生じさせたラットにおいてLドパ/ベンセラジドおよびアポモルヒネにより誘導されたジスキネジアから回復させたという発見に基づく。対応するトランス・ラセミ体も本発明の範囲内にある。
【0043】
加えて、本発明の化合物は、2つのキラル中心(以下の式においてで示す)を有する。
【0044】
【化3】

【0045】
本発明の化合物は、2つの異なるジアステレオマー体、すなわちシス異性体およびトランス異性体の形で存在でき、その両方とも、2つのエナンチオマー体の形で存在できる。本発明は、トランス・ラセミ体および(6aR,10aR)エナンチオマーのみに関する。
【0046】
【化4】

【0047】
前述のように、本発明は、(6aR,10aR)−7−n−プロピル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザシクロペンタ[a]アントラセン(本明細書中では「化合物11」と呼ぶ)が、6−OHDAで病変を生じさせたラットにおいてLドパ/ベンセラジドおよびアポモルヒネにより誘導されたジスキネジアから回復させたという発見に基づく。
【0048】
さらに、本発明は、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−2,3,4,4a,5,7,8,9,10,10a−デカヒドロ−1H−ベンゾ[g]キノリン−6−オン(本明細書中では化合物12と呼ぶ)が、片側性の6−OHDA病変を有するラットにおいて好ましいプロファイルを有するという発見に基づく。この化合物は、Lドパおよびアポモルヒネより少ないジスキネジアを誘導し、プラミペキソールにより例証されるように、D2作動薬より有効にLドパ誘導性ジスキネジアを減少させる。
【0049】
本発明を以下により詳細に説明するが、この説明は、本発明が実行される可能性のある全ての異なる方式または本発明に加えてもよい全ての特徴の詳細な目録であることを意図したものではない。
【0050】
定義
本明細書中で使用する場合、「ジスキネジア(dyskinesia)」は、基底核として公知の脳領域の障害を伴う異常な不随意運動を特徴とする状態を指す。ジスキネジアは、パーキンソン病(最も一般的な基底核疾患)の治療の合併症である「Lドパ誘導性ジスキネジア」である場合がある。ジスキネジアは、2つの形態、すなわち、舞踏病およびジストニーの形態で身体的に現れる可能性がある。舞踏病は、体の一部から別の部分へ伝わる、不随意、連続的、無目的、突然、急速、短時間、非持続性および不規則な運動から成る。ジストニーは、ねじるような反復性の運動または異常な姿勢の原因となる持続的な筋収縮を指す。
【0051】
「治療する(こと)」または「治療」は、疾患または障害を、物理的(例えば、認識できる症状の安定化)、生理学的(例えば、物理的パラメーターの安定化)のいずれかまたは両方で阻害すること、および、患者に認識できない可能性がある少なくとも1つの物理的パラメーターを阻害することを指す。さらに、「治療する(こと)」または「治療」は、ある疾患もしくは障害が顕在化するまたはその素因がある可能性のある患者において、当該患者が該疾患もしくは障害の症状を未だ経験しないもしくは示さない場合であっても、該疾患もしくは障害の発症または少なくともその症状を遅らせることを指す。
【0052】
「治療上有効量」は、疾患または障害を治療するために患者に投与した際、該疾患または障害の当該治療に影響するのに十分な化合物の量を指す。「治療上有効量」は、化合物、疾患または障害およびその重症性、ならびに、治療されることになる患者の年齢および体重により変動すると考えられる。
【0053】
本明細書中で使用する場合、語句「低いジスキネジアプロファイルを維持しながら」は、連続的なドパミン作動性の刺激により治療を受けている患者において見られるようなジスキネジアプロファイルを指す。連続的なドパミン作動性の刺激を含む治療は、Stocchi and Olanow、Neurology、2004、2004、62、S56〜S63頁(非特許文献5)およびHilaryら、Journal of Neurology、2004、251、11、1370〜1374頁(非特許文献6)に記載されている。
【0054】
本明細書中で使用する場合、強力なD1/D2作動薬としての(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールは、化合物10と呼ばれる。
【0055】
本明細書中で使用する場合、(6aR,10aR)−7−n−プロピル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザシクロペンタ[a]アントラセンは、化合物11と呼ばれる。
【0056】
本明細書中で使用する場合、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−2,3,4,4a,5,7,8,9,10,10a−デカヒドロ−1H−ベンゾ[g]キノリン−6−オンは本明細書中では化合物12と呼ばれる。
【0057】
化合物10、11または12は、単独療法(すなわち化合物単独の使用)として、組成物が原因のジスキネジー性副作用を防止するための該組成物の補助剤として(例えば、パーキンソン症候群の患者を治療するために投与されるLドパもしくはアポモルヒネの補助剤として)ジスキネジアを治療するために使用してもよく、または、代替的に、同化合物は、同様にジスキネジアを低下させる他の治療(例えば、オピオイド受容体拮抗薬、(α2−アドレナリン作動性受容体拮抗薬、カンナビノイドCBI拮抗薬、NMDA受容体拮抗薬、コリン作動性受容体拮抗薬、ヒスタミンH3受容体作動薬および淡蒼球/視床下核病変/深部脳刺激)と組み合わせて投与してもよい。
【0058】
本発明は、さらに、治療上有効量の化合物10、11もしくは12または薬学的なその塩を投与することを含む、Lドパまたはドパミン作動薬により誘導されるジスキネジアを減少させながらのパーキンソン病の治療における併用的、独立的または逐次的な使用に関する。
【0059】
一実施形態では、ジスキネジアは基底核関連の運動障害に関連するものである。
【0060】
別の実施形態では、ジスキネジアはパーキンソン病に関連するものである。
【0061】
一実施形態は、特発性パーキンソン病または脳炎後パーキンソン症候群に関連するジスキネジアに関する。
【0062】
一実施形態では、ジスキネジアは、パーキンソン病におけるオフ期ジストニー(off−dystonia)に伴うものである。
【0063】
独立の一実施形態では、ジスキネジアは、パーキンソン病を治療するための治療剤の副作用として生じる。
【0064】
また別の実施形態では、ジスキネジアはドパミン補充療法に関連するものである。一実施形態では、ドパミン補充療法用の薬剤は、ロチゴチン、ロピニロール、プラミペキソール、カベルゴリン、ブロモクリプチン、リスリド、ペルゴリド、Lドパおよびアポモルヒネから成る群から選択される。
【0065】
一実施形態では、ジスキネジアはLドパの反復投与の結果として生じる。
【0066】
前述のように、本発明は、低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療するための医薬の調製における化合物10、11もしくは12または薬学上許容可能なその塩を含む医薬組成物、および、低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療するための医薬の調製におけるラセミ・トランス−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールを含む医薬組成物を提供する。
【0067】
一実施形態では、該医薬組成物はMAO−B阻害薬をさらに含む。
【0068】
一実施形態では、該MAO−B阻害薬はセレギンである。独立の一実施形態では、該MAO−B阻害薬はラサギリンである。
【0069】
別の実施形態では、本発明は、治療上有効量の化合物10、11もしくは12または薬学的に許容可能なその酸付加塩と、1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体、希釈剤および賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0070】
本発明の特定の一実施形態では、哺乳動物はヒト対象である。
【0071】
化合物10、11または12の治療上有効量は、遊離塩基としての前述の化合物10、11または12の1日用量として計算した場合、適切には0.01〜125mg/日の間、より適切には0.05〜100mg/日の間、例えば、好ましくは0.1〜50mg/日の間である。
【0072】
特定の一実施形態では、化合物10、11または12の1日用量は1.0〜10mg/日の間である。
【0073】
別の実施形態では、化合物10、11または12の1日用量は約1.0mg/日未満である。
【0074】
独立の一実施形態では、化合物10、11または12の1日用量は約0.10mg/日である。
【0075】
さらなる一実施形態では、本発明は、0.001mg〜125mgの化合物10、11または12を含む経口製剤を提供する。
【0076】
さらなる一実施形態では、本発明は、0.001mg〜0.100mgの化合物10、11または12を含む経口製剤を提供する。
【0077】
さらなる一実施形態では、本発明は、0.01mg〜1.0mgの化合物10、11または12を含む経口製剤を提供する。
【0078】
さらなる一実施形態では、本発明は、0.10mg〜10mgの化合物10、11または12を含む経口製剤を提供する。
【0079】
薬学上許容可能な塩
化合物10、11または12は、多種多様な有機酸および無機酸と共に薬学上許容可能な酸付加塩を形成する。そのような塩も本発明の一部である。化合物10、11または12の薬学上許容可能な酸付加塩は、当技術分野で周知のように、薬学上許容可能な酸から形成される。そのような塩としては、Journal of Pharmaceutical Science、1977、66、2〜19頁(非特許文献7)に掲載されている薬学上許容可能な塩が挙げられ、当業者に公知である。そのような塩の形成に使用される典型的な無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、次リン酸、メタリン酸、ピロリン酸などが挙げられる。脂肪族のモノカルボン酸およびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸およびヒドロキシアルカンジオン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族のスルホン酸などの有機酸から誘導される塩も使用できる。したがって、そのような薬学上許容可能な塩としては、以下が挙げられる:塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、硝酸塩、酢酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o−アセトキシ安息香酸塩、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、α−ヒドロキシ酪酸塩、ブチン−1,4−ジカルボン酸塩、ヘキシン−1,4−ジカルボン酸塩、カプリン酸塩、カプリル酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩、イソニコチン酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、テラフタル酸塩(teraphthalate)、プロピオール酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−ブロモベンゼンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エチルスルホン酸塩、2−ヒドロキシエチルスルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、ナフタレン−1,5−スルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酒石酸塩など。
【0080】
医薬組成物
固体の医薬組成物の調製の方法も、当技術分野で周知である。したがって、錠剤は、活性成分を通常の佐剤、増量剤および希釈剤と混合し、次いで、簡便な打錠機でこの混合物を圧縮することにより調製できる。佐剤、増量剤および希釈剤の例は、微晶性セルロース、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、乳糖、マンニトール、ソルビトール タルカム、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、乳糖、ゴムなどを含む。活性成分と適合することを条件に、着色剤、アロマ、保存剤など任意の他の佐剤または添加物を使用してもよい。
【0081】
とりわけ、本発明による錠剤製剤は、慣用的な佐剤または希釈剤との混合物における化合物10、11または12を直接圧縮することにより調製できる。あるいは、化合物10、11または12の湿った粒状物または溶融した粒状物(場合により慣用的な佐剤または希釈剤との混合物における)を錠剤の圧縮用に使用してもよい。
【0082】
注射剤用の化合物10、11または12の溶液は、活性成分と使用可能な添加物とを、注射剤用の溶媒、好ましくは滅菌水の一部に溶解し、溶液を所望の体積に調節し、溶液を滅菌し、適当なアンプルまたはバイアル中に充填することにより調製してもよい。等張化剤、保存剤、酸化防止剤、可溶化剤など、当技術分野において慣用的に使用される任意の適当な添加物を加えてもよい。
【実施例】
【0083】
実験の部
大気圧光イオン化を装備したPE Sciex API 150EX装置および島津LC−8A/SLC−10A LCシステムでLC/MS分析データを入手した。UV(254nm)およびELSDトレースを積分することにより、純度を決定した。MS装置は、APPIイオン源を装備したPeskier(API)製のもので、正イオン・モードで運転した。UVトレースの保持時間(RT)を、分単位で表す。溶媒Aは、水中の0.05%TFAから成るものであり、溶媒Bは、アセトニトリル中の0.035%TFAおよび5%水から成るものであった。いくつか異なる方法を用いた:
方法25:API 150EXおよび島津LC10AD/SLC−10A LCシステム。カラム:dC−18 4.6×30mm、3μm(Atlantis、Waters)。カラム温度:40℃。勾配:イオン対形成を用いた逆相。流速:3.3mL/分。注入体積:15μL。勾配:A中の2%Bから100%Bに2.4分かけてから、A中の2%Bを0.4分間。合計通液時間:2.8分。
方法14:API 150EXおよび島津LC8/SLC−10A LCシステム。カラム:C−18 4.6×30mm、3.5μm(Symmetry、Waters)。カラム温度:室温。勾配:イオン対形成を用いた逆相。流速:2mL/分。注入体積:10μL。勾配:A中の10%Bから100%Bに4分かけてから、A中の10%Bを1分間。合計通液時間:5分。
【0084】
X線結晶構造の決定を以下のように実施した。クライオストリーム窒素ガス冷却システムを用いて、化合物の結晶を120Kに冷却した。CCD面積高感度検出器付きのSiemens SMARTプラットフォーム回折計でデータを収集した。直接法により構造を解析し、全てのデータのFに対する全行列最小二乗法により精密化した。構造中の水素原子は、電子密度差マップ中で見出すことができた。水素以外の原子を異方的に精密化した。全ての水素原子は、O−H=0.84Å、C−H=0.99〜1.00Å、N−H=0.92〜0.93Åのライディング・モデル(riding model)を用いた算出位置にあった。全ての水素原子について、熱パラメーターを固定した[U(H)=結合している原子については1.2U]。Flack x−パラメーターは0.0(1)〜0.05(1)の範囲であり、絶対構造が正しいことが示唆される。データ収集、データ整理および吸収に用いたプログラムは、SMART、SAINTおよびSADABSであった[「SMART and SAINT, Area Detector Control and Integration Software」、Version 5.054、Bruker Analytical X-Ray Instruments Inc.、Madison、USA (1998)(非特許文献8)、Sheldrick、「SADABS, Program for Empirical Correction of Area Detector Data」、Version 2.03、University of Goettingen、ドイツ(2001)(非特許文献9)を参照のこと]。構造解析および分子グラフィックスには、プログラムSHELXTL[Sheldrick、「SHELXTL, Structure Determination Programs」、Version 6.12、Bruker Analytical X-Ray Instruments Inc.、Madison、USA、(2001)(非特許文献10)を参照のこと]を使用した。
【0085】
本発明の化合物の合成(化合物10および11)
Taberら、J. Am. Chem. Soc.、124(42)、12416頁、(2002)(非特許文献11)に記載されている要領で調製した、合成が文献中に記載されている化合物1から開始して、本明細書に記載する要領で8つのステップで化合物8を調製できる。この材料を、本明細書に記載のようにキラルSFCにより分離すると、化合物9およびent−9を得ることができる。Boc−保護基の開裂後、還元的アミノ化を用いて、窒素原子上にn−プロピル基を導入することができる。その結果得られる遮蔽されたカテコールアミンを48%HBrで処理することにより、またはBBrと反応させることにより、標準条件下で脱保護すると、化合物10およびent−10を得ることができる。塩基の存在下での10とCHClBrまたは関連試薬とのさらなる反応を適用して本発明の化合物(化合物11)を得ることができる。
【0086】
【化5】

【0087】
化合物10およびent−10の合成。
7−ヨード−1,2,6−トリメトキシナフタレン(化合物2)。
【0088】
【化6】

【0089】
乾燥THF(200mL)中の化合物1(26.2g、Taberら、J. Am. Chem. Soc.、124(42)、12416頁、(2002)(非特許文献11)に記載されている要領で調製)の撹拌溶液に、アルゴン下、−78℃でs−ブチルリチウム(1.2M、シクロヘキサン中、110mL)をゆっくり加えた。この溶液を−78℃で3時間撹拌した。乾燥THF(50mL)中のヨウ素溶液(30.5g)を10分間にわたり加えた。次に、その結果得られた混合物を−78℃でさらに10分間撹拌した。飽和NHCl(100mL)、水(240mL)およびEtO(240mL)を加えることにより反応混合物をクエンチした。有機層を10%亜硫酸ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)させてから真空中で濃縮した。粗材料を蒸留により精製して、未反応の出発物質を除去した。残留物をシリカゲル・クロマトグラフィー(EtOAc/ヘプタン)によりさらに精製すると不純な固形材料が生成し、これをEtOAc/ヘプタンからの沈殿により精製すると、11.46gの化合物2が得られた。
【0090】
(E/Z)−3−(3,7,8−トリメトキシナフタレン−2−イル)−アクリロニトリル(化合物3)。
【0091】
【化7】

【0092】
マイクロ波反応器用バイアルに入った乾燥アセトニトリル(10.7mL)中の化合物2(3.41g)の懸濁液に、アクリロニトリル(1.19mL)、Pd(OAc)(73mg)およびトリエチルアミン(1.48mL)を加えた。バイアルを密封し、この混合物をマイクロ波照射下で145℃にて40分間加熱した。この手順をさらに2回実施した(合計10.23gの化合物5を用いた)。未精製の反応混合物を合わせ、触媒を濾過により除去し、真空中で濾液を濃縮した。残留物をEtO(300mL)と2M HCl(150mL)との間で分離した。有機層をブライン(100mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)させてから真空中で濃縮した。粗材料(7.34g)をシリカゲル・クロマトグラフィー(EtOAc/ヘプタン)により精製すると、オレフィン異性体の混合物としての5.23gの化合物3が生成した。
【0093】
3−(3,7,8−トリメトキシナフタレン−2−イル)−プロピオニトリル(化合物4)。
【0094】
【化8】

【0095】
化合物3(5.23g)をCHCl(15mL)および99%EtOH(100mL)に溶解した。10%Pd/C(0.8g)を加え、Parr振とう器を用いて水素圧3バール下で45分間この溶液を水素化した。触媒を濾過により除去し、濾液は小プラウ(plough)のシリカゲル(溶出剤:99%EtOH)を通過させた。収量:白色の固体物としての4.91gの化合物4。
【0096】
[3−(3,7,8−トリメトキシ−1,4−ジヒドロナフタレン−2−イル)プロピル]カルバミン酸t−ブチルエステル(化合物5)。
【0097】
【化9】

【0098】
化合物4(5.0g)を99%EtOH(150mL)に溶解し、この混合物を窒素雰囲気下で加熱して還流させた。ナトリウム金属(5g)を小さな塊の状態で3時間にわたり加えた。この混合物をさらに2時間還流させてから、室温で2日間撹拌した。次に、この混合物を再び加熱して還流させ、さらなるナトリウム金属(3.68g)を加え、この混合物を一晩還流させた。氷/水浴で冷却した後、固形の塩化アンモニウム(20g)および水(25mL)を加えることにより反応をクエンチした。その結果得られた混合物を濾過し、真空中で濾液を濃縮した。残留物をジエチルエーテル(50mL)と水(50mL)との間で分離した。水層を37%HClで中和させ、ジエチルエーテルで抽出した(2×50mL)。有機抽出物を合わせたものをブライン(50mL)で洗浄し、乾燥(MgSO)させてから真空中で濃縮すると、油が得られた。この材料をTHF(50mL)に溶解し、室温にてBocO(2.34g)およびEtN(1.78mL)で処理した。6日後、揮発性物質を真空中で除去し、残留物をシリカゲル・クロマトグラフィー(EtOAc/ヘプタン)により精製した。これにより不純な化合物5(1.52g)が得られた。
【0099】
ラセミ6,7−ジメトキシ−2,3,4,4a,5,10−ヘキサヒドロ−ベンゾ[g]キノリンヒドロクロリド(化合物6)。
【0100】
【化10】

【0101】
化合物5(先のステップからの1.52g)をMeOH(20mL)に溶解した。37%HCl(3.5mL)を加え、この混合物を4時間還流させた。共沸的に水を除去するためにトルエンを用い、真空中で揮発性物質を除去した。これにより、不純な化合物6(0.89g)が黄色の油として得られた。
【0102】
ラセミ・トランス−6,7−ジメトキシ−3,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロ−2H−ベンゾ[g]キノリン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(化合物8)。
【0103】
【化11】

【0104】
化合物6(0.89g)をMeOH(10mL)に溶解し、NaCNBH(0.19g)を加えた。この反応物を室温で一晩撹拌した。粗混合物を氷/水浴で冷却してから、これをEtO(1mL)中の2M HClでクエンチした。この混合物をEtO(50mL)、水(50mL)および2M NaOH(10mL)の間で分離した。水層をジエチルエーテルで抽出した(3×50mL)。有機層を合わせたものを乾燥(MgSO)させてから真空中で濃縮すると、不純な遊離アミン(化合物7)が得られた。この材料をTHF(25mL)に溶解し、BocO(0.68g)およびEtN(0.86mL)で室温にて1時間処理した。粗混合物を真空中で濃縮し、残留物をシリカゲル・クロマトグラフィー(EtOAc/ヘプタン)により精製すると、わずかに不純な1.18gのラセミ化合物8が得られた。
【0105】
ラセミ・トランス−6,7−ジメトキシ−3,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロ−2H−ベンゾ[g]キノリン−1−カルボン酸t−ブチルエステルのエナンチオマーのSFC分離(化合物9およびent−9)。
【0106】
【化12】

【0107】
Chiralcel OD 21.2×250mmカラムを装備したBerger SFCマルチグラムII装置でのキラルSFCを用いて、化合物8(19.7g)をそのエナンチオマーに分離した。溶媒系:CO/EtOH(85:15)、方法:一定勾配、流速50mL/分。UV230nm検出により画分収集を実施した。早く溶出してくるエナンチオマー(4aR,10aRエナンチオマー、化合物9):9.0gの白色の固形物。遅く溶出してくるエナンチオマー(4aS,10aSエナンチオマー、化合物ent−9):8.1gの白色の固形物。
【0108】
(4aS,10aS)−6,7−ジメトキシ−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリンヒドロクロリド(化合物ent−9’)。
【0109】
【化13】

【0110】
化合物ent−9(0.52g)をMeOH(15mL)に溶解し、EtO(7.5mL)中の5M HClで室温にて2時間処理した。この混合物を真空中で濃縮し、固形物を真空中で乾燥させると、化合物ent−9’が白色の固形物として得られた。LC/MS(方法14):室温、1.31分。
【0111】
(4aR,10aR)−1−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールヒドロブロミド(化合物10)。
【0112】
【化14】

【0113】
化合物9(0.5g)を99%EtOH(5mL)に溶解し、EtO(4mL)中の2M HClで室温にて一晩処理した。粗混合物を真空中で濃縮し、残留物をEtOAcと10%水性NaOH(5mL)との間で分離した。水層をEtOAcで抽出し、有機層を合わせたものをブラインで洗浄し、乾燥(MgSO)させ、真空中で濃縮した。残留物を99%EtOH(5mL)に溶解し、プロピオンアルデヒド(0.52mL)、NaCNBH(0.45g)およびAcOH(3滴)で、室温にて一晩処理した。粗混合物を飽和水性NaHCO(12.5mL)、水(12.5mL)およびEtOAc(2×25mL)の間で分配した。有機層を合わせたものをブラインで洗浄し、乾燥(MgSO)させ、真空中で濃縮した。残留物をシリカゲル・クロマトグラフィー(MeOH/EtOAc)により精製した。得られた中間体を、マイクロ波条件下で、48%HBr(3mL)で150℃にて1時間処理してから、粗混合物を4℃で一晩保管した。沈殿した材料を濾過により単離し、真空中で乾燥させた。化合物10の収量:固形物として103mg。LC/MS(方法25):室温0.77分。
【0114】
(4aS,10aS)−1−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールヒドロブロミド(化合物ent−10)。
【0115】
【化15】

【0116】
化合物10について記載した手順は、化合物ent−9’(0.5g、還元的アミノ化ステップの前にEtOAcと10%水性NaOHとの間で分離することによりHCl塩を遊離させた)からの出発に従った。化合物ent−10の収量:固形物として70mg。LC/MS(方法25):室温0.70分。化合物ent−10の小量試料をMeOHに溶解し、ゆっくり室温で2カ月にわたり結晶化させた。形成された白色の結晶を回収し、X線分析にかけた(図1を参照のこと)。X線結晶学により化合物ent−10の絶対配置を決定し、化合物9および10、ひいてはその誘導体の立体化学の明確な測定を可能にした。
【0117】
(6aR,10aR)−7−n−プロピル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザシクロペンタ[a]アントラセンヒドロクロリド(化合物11)。
【0118】
【化16】

【0119】
化合物10(7.80g)、CsCO(18.6g)、CHBrCl(2.2mL)およびDMF(180mL)をアルゴン雰囲気下で1時間、100℃に加熱した。未精製の反応混合物を分液漏斗に加えて氷/水(300mL)で希釈した。その結果得られる混合物をEtOで抽出した(3×300mL)。有機層を合わせたものをブライン(200mL)で洗浄し、乾燥(MgSO)させてから真空中で濃縮した。残留物をシリカゲル・クロマトグラフィー(EtOAc/MeOH)により精製すると薄い赤色の固形物が得られ、これをMeOH(25mL)に溶解し、EtO(20mL)中の2M HClおよびEtO(100mL)を加えることにより、塩酸塩として沈殿させた。沈殿生成物を濾過により単離し、真空中で乾燥させた。化合物11の収量:5.1g。LC/MS(方法111):室温0.70分。ELSD100%。UV97.0%。MH:274.0。
【0120】
(4aR,10aR)−n−1−プロピル−2,3,4,4a,5,7,8,9,10,10a−デカヒドロ−1H−ベンゾ[g]キノリン−6−オン(化合物12)
欧州特許第1274411号(特許文献1)に記載されている要領で化合物12の合成を調製でき、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。化合物12は、前記の特許において(−)−GMC6650と呼ばれている。
【0121】
実験の部
【0122】
例1
化合物11および12は、in−vivo投与すると、化合物10のカテコール含有活性代謝物に転換する。
【0123】
【化17】

【0124】
この活性代謝物(すなわち化合物10)は、in−vitroにおいてD1受容体およびD2受容体の両方で強力な作動薬として機能することが見出された。以下でより詳細に考察するように、in−vivo実験から得られたデータは、この活性代謝物は他のドパミン作動薬より優れたプロファイルを有し、Lドパ/アポモルヒネ治療で見られる有効性と同等であることを示す。
【0125】
例2
化合物10の薬理学的試験
cAMPアッセイ
本化合物が、ヒトの組換えD受容体を安定に発現するCHO細胞においてD受容体介在性のcAMP形成を刺激または阻害するいずれかの能力を次のように測定した。細胞を96ウェル・プレート中に、11000細胞/ウェルの濃度で実験の3日前に播種した。実験当日、PBS(リン酸緩衝生理食塩水))中の予熱したG緩衝液(1mM MgCl、0.9mM CaCl、1mM IBMX(3−i−ブチル−1−メチルキサンチン)中で細胞を1回洗浄し、30nM A68930と、G緩衝液(アンタゴニズム)中で希釈した試験化合物、またはG緩衝液(アゴニズム)中で希釈した試験化合物との混合物100マイクロLを加えることにより、アッセイを開始した。
【0126】
細胞を37℃で20分間インキュベートし、100マイクロLのS緩衝液(0.1M HClおよび0.1mM CaCl)を加えることにより反応を停止させ、プレートを4℃で1時間置いた。68マイクロLのN緩衝液(0.15M NaOHおよび60mM NaOAc)を加え、プレートを10分間振盪させた。60マイクロlの反応物を、40マイクロLの60mM酢酸ナトリウム、pH6.2を含有するcAMP FlashPlates(DuPont、NEN)に移し、100マイクロLのICミックス(50mM酢酸ナトリウム、pH6.2、0.1%アジ化ナトリウム、12mM CaCl、1%BSA(ウシ血清アルブミン)および0.15マイクロ−Ci/mLの125I−cAMP)を加えた。4℃での18時間のインキュベーションに次いでプレートを1回洗浄し、Wallac TriLux計数器で計数した。化合物10は、このアッセイにおいてD作動薬として作用することが実証された。
【0127】
cAMPアッセイ
本化合物が、ヒトD受容体でトランスフェクトしたCHO細胞においてD受容体介在性のcAMP形成阻害を刺激または阻害するいずれかの能力を次のように測定した。細胞を96ウェル・プレート中に、8000細胞/ウェルの濃度で実験の3日前に播種した。実験当日、予熱したG緩衝液(PBS中の1mM MgCl、0.9mM CaCl、1mM IBMX)中で細胞を1回洗浄し、G緩衝液(アンタゴニズム)中の、1マイクロMキンピロール、10マイクロMフォルスコリンおよび試験化合物の混合物100マイクロl、または、G緩衝液(アゴニズム)中の10マイクロMフォルスコリンおよび試験化合物を加えることにより、アッセイを開始した。
【0128】
細胞を37℃で20分インキュベートし、100マイクロlのS緩衝液(0.1M HClおよび0.1mM CaCl)を加えることにより反応を停止させ、プレートを4℃で1時間置いた。68マイクロLのN緩衝液(0.15M NaOHおよび60mM酢酸ナトリウム)を加え、プレートを10分間振盪させた。60マイクロLの反応物を、40マイクロLの60mM NaOAc、pH6.2を含有するcAMP FlashPlates(DuPont、NEN)に移し、100マイクロLのICミックス(50mM NaOAc、pH6.2、0.1%アジ化ナトリウム、12mM CaCl、1%BSAおよび0.15マイクロ−Ci/mlの125I−cAMP)を加えた。4℃での18時間のインキュベーションに次いでプレートを1回洗浄し、Wallac TriLux計数器で計数した。化合物10は、このアッセイにおいてD作動薬として作用することが実証された。
【0129】
アッセイ
hDでトランスフェクトしたCHO−Ga16細胞におけるドパミンによる細胞内Ca2+放出の濃度依存刺激。細胞にカルシウム指示色素フルオロ−4を1時間載せた。カルシウム応答(蛍光変化)をFLIPR(蛍光定量的な画像化プレート・リーダー)により2.5分間モニターした。2つ組のウェルのピーク応答(EC50)を各データ点について平均し、薬物濃度と共にプロットした(ドパミンについては図2を参照のこと)。化合物10はこのアッセイにおいてD作動薬として作用することが実証された。
【0130】
6−OHDAラット・モデル
ドパミン作動薬は、D1受容体、D2受容体のいずれか、またはその両方で活性を有する場合がある。両方の受容体タイプを刺激し回転を誘導する能力について化合物を評価するために、片側性の6−OHDA病変を有するラットにおける回転応答を用いることができる(Ungerstedt and Arbuthnott、Brain Res.、1970、24、485頁(非特許文献3)、Setlerら、Eur. J. Pharmacol.、1978、50(4)、419頁(非特許文献12)およびUngerstedtら、「Advances in Dopamine Research」、(Kohsaka編)、Pergamon Press、1982、Oxford、219頁(非特許文献13))。6−OHDA(6−ヒドロキシドパミン)は、神経生物学者が実験動物の脳内において注射部位でドパミン作動性ニューロンを選択的に殺すために使用する神経毒である。6−OHDAモデルにおいては、黒質線条体のドパミン細胞は、黒質の前面に位置する内側前脳束中に6−OHDAを注射することにより脳の一側(片側)上で破壊される。この片側性の注射がアポモルヒネなどのドパミン作動薬による刺激と合わさると、脳の一側のみが刺激されることから回転行動が誘導されることになる。実験は、当該化合物について回転を誘導する最小有効用量(MED)を決定することから成る。一旦MEDを決定したら、第2の実験を実施して、ネモナプリド遮断を克服するための、化合物のMED(MEDネモナプリド)を決定した。ネモナプリドは、D2受容体を遮断するD2拮抗薬であることから、観察されるいずれの回転もD1受容体での活性に依存することになろう。最後に、一旦MEDネモナプリドがわかったら、MEDネモナプリド用量を用い、D1拮抗薬SCH23390単独、D2拮抗薬ネモナプリド単独の効果を、最後に、SCH23390とネモナプリドとを用いた併用処置の効果を観察する第3の実験を行う。この第3の実験は、両方の受容体での化合物の活性を確認するものであるが、その理由は、いずれかの拮抗薬単独では試験化合物により誘導される回転応答を部分的に阻害することができるだけであるのに対し、併用処置ではラットにおける全ての回転が完全に遮断されるからである[Arnt and Hyttel、Psychopharmacology、1985、85(3)、346頁(非特許文献14)およびSonsallaら、J. Pharmacol Exp. Ther.、1988、247(1)、180頁(非特許文献15)]。このモデルを、D1/D2混合作動薬の原理実証用化合物としてアポモルヒネを使用して検証した。
【0131】
このモデルにおいて、化合物10は、D1/D2比率が約2〜4(これに対しアポモルヒネの場合は比率が約3)である「アポモルヒネ」様のプロファイルを有する。さらに、観察された作用の継続期間は、この化合物については約18時間であり、これは、Lドパ/アポモルヒネで見られる継続期間より有意に長い。D1成分は、プラミペキソールおよびロチゴチンにより例証されたようにはD2作動薬については観察できなかった。
【0132】
優越性モデル
アポモルヒネおよびLドパは、重度のドパミン枯渇のマウスモデルにおいて運動欠損(motility deficit)から回復させることが可能である。アポモルヒネおよびLドパは両方ともドパミンのD1受容体およびD2受容体を刺激する。D2受容体での作動薬であるプラミペキソールは、このモデルにおいては効果がない。
【0133】
実験を次のように実施した:MPTP(2×15mg/kg、皮下)でそれまでに処置を受け安定な病変を発症したマウスを使用し、ビヒクル処置したマウスを正常対照とする。MPTP(1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン)は、脳の黒質中のあるニューロンを殺すことによりパーキンソン病の永久的な症状を引き起こす神経毒である。サルおよびマウスにおける疾患を試験するためにMPTPを使用する。実験当日、マウスをAMPT(250mg/kg、皮下)で処置してからホームケージに1.5時間戻し、その後マウスを運動ユニット(motility unit)中の個々のケージ内に置いた。AMPT(α−メチル−p−チロシン)は、脳のカテコールアミン活性(この場合、特にドパミン・レベル)を一時的に低下させる薬物である。AMPT注射の3時間後、化合物10で運動欠損の救済を試み、さらに1.5時間活性を記録した。救済処置後に収集した最初の30分のデータには「ノイズが含まれて(contaminated)」いたが、これは、ビヒクル対照におけるレベル増加により明らかなように、取扱いおよび注射で動物にストレスがかかっていたことによるものであり、このため、記録されたデータの最後の1時間を用いてデータを分析した。多様なドパミン作動性化合物を、このモデルにおいて生じた運動欠損から回復させる能力について試験した。Lドパ/ベンセラジドおよびアポモルヒネの両方は、マウスにおいて用量依存的な形で運動力を回復した。ベンセラジドは、血液脳関門を通過できないDOPAデカルボキシラーゼ阻害薬であり、脳外でのLドパのドパミンへの代謝を防止するために使用される。これに対し、D2作動薬であるプラミペキソールおよびブロモクリプチンは、マウスにおける運動力を回復しなかった。
【0134】
このモデルを使用して、化合物10は、D2作動薬に勝るLドパおよびアポモルヒネと同様の優越性を呈するか否かを評価した。化合物10について用量応答実験を実施したところ、内因性ドパミンの重度の枯渇により誘導された運動性低下障害から回復させる用量依存的な傾向が見られた。このモデルにおけるアポモルヒネ、プラミペキソールおよび化合物10の効果を直接比較する最終実験を実施し、化合物10は、処置したMPTPマウスにおいて運動力を回復でき、プラミペキソールより優れていたことを確認した。
【0135】
未投薬の6−OHDAラットを用いたジスキネジアモデルの誘導
片側性の6−OHDA病変を有する20匹のオスのSprague Dawleyラットを使用して、化合物10(皮下投与、n=7、第1群)によるジスキネジアの誘導を、Lドパ/ベンセラジド(6mg/kg / 15mg/kg、皮下、n=7、第2群)およびアポモルヒネ(1mg/kg、皮下、n=6、第3群)との比較で試験した。ベンセラジドは、血液脳関門を通過できないDOPAデカルボキシラーゼ阻害薬であり、脳外でのLドパのドパミンへの代謝を防止するために使用される。6−OHDAの手術後3週間、同側性の旋回を誘導する2.5mg/kgアンフェタミンにより誘導された回転応答について動物を試験した(アンフェタミンは、病変が生じていない側の無傷のニューロンを介して脳内のドパミンレベルを増加させる結果、脳の有病変側で主に作用するLドパおよびアポモルヒネなどの直接作動薬に対する動物の応答とは対照的に、動物を逆方向に回転させる)。この試験に含めた全ての動物は、60分に350回転超という基準を満たした。次に、アンフェタミンに対する動物の回転応答について群をバランスさせながら、3つの処置群にラットをランダムに割り付けた。
【0136】
実際のジスキネジア実験の間、ラットに1日1回試験化合物を皮下注射し、注射後3時間観察した。先に記載したとおりの異常不随意運動尺度(AIMS)(Lundbladら、Eur. J Neurosci.、15、120頁、(2002)(非特許文献16))を用い、ジスキネジアの存在について各動物を20分毎に1分間、3時間にわたり観察した。ラットに連続14日間薬物を投与し、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、8日目、10日目および12日目に評点付けを行った。二元配置反復測定ANOVAにより、有意な処置効果、時間効果および処置×時間の相互作用(treatment by time interaction)があったことが明らかになった(全てのケースにおいてp<0.001)。Holm−Sidak法を用いた事後比較により、化合物10で処置された動物は、Lドパまたはアポモルヒネのいずれかで処置された動物(評点は約70)と比較して有意に少ないジスキネジアを有した(評点は約30)ことが示される。Lドパ処置群とアポモルヒネ処置群との間に差はなかった。この実験後、アポモルヒネ群およびLドパ群において見られたジスキネジアの重症性に例Iがどのように影響するかを確認するために、全てのラットに15日目〜19日目に化合物10の皮下注射を行った。実験の19日目(化合物10については5日に相当する)にジスキネジアの評点付けを実施した。データから、Lドパおよびアポモルヒネにより誘導されたジスキネジアが、化合物10により誘導されたジスキネジアのレベル程度まで部分的に回復したことが示された(化合物10は、処置の12日後に観察された評点約30と比較して、第1群においてジスキネジアの増加を引き起こさなかった)。
【0137】
ジスキネジアラット・モデル
独立のジスキネジア試験は、プラミペキソールまたは化合物10のいずれかを用いてのLドパ誘導性ジスキネジアの回復を検討するものであった。簡潔に言えば、18匹の動物をLドパ/ベンセラジド(1kg当たり6mg/15mg、皮下)で7日間処置した。動物を1日目、3日目および5日目に観察し、AIMSの評点付けを行った。次に、5日目の評点を用いて動物を動物6匹ずつ3つの群に分けた。第1群は毎日Lドパ処置を続けた。第2群は化合物10(皮下投与)で処置した。第3群はプラミペキソール(0.16mg/kg、皮下)で処置した。処置は10日間毎日続け、ジスキネジアの量を1日目、5日目、9日目および10日目に評点付けした。二元配置反復測定分散分析により、化合物10で処置された動物は、プラミペキソール群およびLドパ/ベンセラジド群のいずれより有意に少ないジスキネジアを有したことが示唆される。プラミペキソール群は、Lドパ/ベンセラジド群より有意に少ないジスキネジアを有した。したがって、化合物10は、Lドパにより誘導されたジスキネジアからの回復に関し、プラミペキソールに勝る優れたプロファイルを有した。
【0138】
MPTP処置した普通のマーモセットにおける抗パーキンソン病効果
この実験は、MPTP処置した6匹のマーモセットを用いて行った(1日2.0mg/kg、最長で連続5日間、滅菌済の0.9%生理食塩溶液に溶解)。全ての動物は、それまでに、ジスキネジアを誘導するために、最長30日間毎日投与されるLドパ(12.5mg/kg、経口、+カルビドパ12.5mg/kg、経口)で処置しておいた。試験に先立ち、全ての対象は、基本的な自発運動の顕著な低下、運動の協調不足、異常な、および/または硬直した姿勢、機敏性の低下および頭部のチェック運動(checking movement)など安定な運動欠損を呈した。試験化合物のいずれかの前にドンペリドンを60分投与した。ドンペリドンは、悪心および嘔吐を抑制する抗ドパミン作動薬である。ケージ内に戦略的に置かれた8つの赤外線ビームから成る8つの光電性のスイッチから成る試験用ケージを用いて自発運動を評価し、ビームの妨害を1回として記録する。次に、時間区分当たりのビームの回数の合計数を時間の経過に従いプロットするか、または、総合的な活動について曲線下面積(AUC)として示す。処置について知らされていない、訓練を受けた観察者により、運動障害の評価を実施した。
【0139】
これまでに記載されているように、Lドパ(12.5mg/kg、経口)は自発運動を増加させ、運動障害から回復させた(Smithら、Mov. Disord.、2002、17(5)、887頁(非特許文献17))。この挑戦のために選んだ用量は、この薬物の用量応答曲線の最高用量である。化合物10(皮下投与)は、自発運動の用量依存的な増加および運動障害からの回復をもたらし、Lドパ(12.5mg/kg、経口)の場合より大きい応答をもたらす傾向があった。 試験化合物は両方とも、Lドパと比較して運動障害からの持続的な回復をもたらし、Lドパ同様に有効であった。化合物10は、Lドパと比較して運動障害からの持続的な回復をもたらし、Lドパ同様に有効であった。
【0140】
例3
化合物11の薬理学的試験
cAMPアッセイ
本化合物が、ヒトの組換えD受容体を安定に発現するCHO細胞においてD受容体介在性のcAMP形成を刺激または阻害するいずれかの能力を次のように測定した。細胞を96ウェル・プレート中に、11000細胞/ウェルの濃度で実験の3日前に播種した。実験当日、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)中の予熱したG緩衝液(1mM MgCl、0.9mM CaCl、1mM IBMX(3−i−ブチル−1−メチルキサンチン))中で細胞を1回洗浄し、30nM A68930と、G緩衝液(アンタゴニズム)中で希釈した試験化合物、またはG緩衝液(アゴニズム)中で希釈した試験化合物との混合物100マイクロLを加えることにより、アッセイを開始した。
【0141】
細胞を37℃で20分間インキュベートし、100マイクロLのS緩衝液(0.1M HClおよび0.1mM CaCl)を加えることにより反応を停止させ、プレートを4℃で1時間置いた。68マイクロLのN緩衝液(0.15M NaOHおよび60mM NaOAc)を加え、プレートを10分間振盪させた。60マイクロlの反応物を、40マイクロLの60mM酢酸ナトリウム、pH6.2を含有するcAMP FlashPlates(DuPont、NEN)に移し、100マイクロLのICミックス(50mM酢酸ナトリウム、pH6.2、0.1%アジ化ナトリウム、12mM CaCl、1%BSA(ウシ血清アルブミン)および0.15マイクロ−Ci/mLの125I−cAMP)を加えた。4℃での18時間のインキュベーションに次いでプレートを1回洗浄し、Wallac TriLux計数器で計数した。本活性代謝物または化合物10は、このアッセイにおいてD作動薬であることが見出された。
【0142】
cAMPアッセイ
本化合物が、ヒトD受容体でトランスフェクトしたCHO細胞においてD受容体介在性のcAMP形成阻害を刺激または阻害するいずれかの能力を次のように測定した。細胞を96ウェル・プレート中に、8000細胞/ウェルの濃度で実験の3日前に播種した。実験当日、予熱したG緩衝液(PBS中の1mM MgCl、0.9mM CaCl、1mM IBMX)中で細胞を1回洗浄し、G緩衝液(アンタゴニズム)中の、1マイクロMキンピロール、10マイクロMフォルスコリンおよび試験化合物の混合物100マイクロl、または、G緩衝液(アゴニズム)中の10マイクロMフォルスコリンおよび試験化合物を加えることにより、アッセイを開始した。
【0143】
細胞を37℃で20分インキュベートし、100マイクロlのS緩衝液(0.1M HClおよび0.1mM CaCl)を加えることにより反応を停止させ、プレートを4℃で1時間置いた。68マイクロLのN緩衝液(0.15M NaOHおよび60mM酢酸ナトリウム)を加え、プレートを10分間振盪させた。60マイクロLの反応物を、40マイクロLの60mM NaOAc、pH6.2を含有するcAMP FlashPlates(DuPont、NEN)に移し、100マイクロLのICミックス(50mM NaOAc、pH6.2、0.1%アジ化ナトリウム、12mM CaCl、1%BSAおよび0.15マイクロ−Ci/mlの125I−cAMP)を加えた。4℃での18時間のインキュベーションに次いでプレートを1回洗浄し、Wallac TriLux計数器で計数した。本活性代謝物または化合物10は、このアッセイにおいてD作動薬であることが見出された。
【0144】
アッセイ
hDでトランスフェクトしたCHO−Ga16細胞におけるドパミンによる細胞内Ca2+放出の濃度依存刺激。細胞にカルシウム指示色素フルオロ−4を1時間載せた。カルシウム応答(蛍光変化)をFLIPR(蛍光定量的な画像化プレート・リーダー)により2.5分間モニターした。2つ組のウェルのピーク応答(EC50)を各データ点について平均し、薬物濃度と共にプロットした。本活性代謝物または化合物10は、このアッセイにおいてD作動薬であることが見出された。
【0145】
6−OHDAラット・モデル
ドパミン作動薬は、D1受容体、D2受容体のいずれか、またはその両方で活性を有する場合がある。両方の受容体タイプを刺激し回転を誘導する能力について化合物を評価するために、片側性の6−OHDA病変を有するラットにおける回転応答を用いることができた[Ungerstedt and Arbuthnott、Brain Res.、24、485頁、(1970)(非特許文献3)、Setlerら、Eur. J. Pharmacol.、50(4)、419頁、(1978)(非特許文献12)およびUngerstedtら、「Advances in Dopamine Research」、(Kohsaka編)、Pergamon Press、1982、Oxford、219頁(非特許文献13)]。6−OHDA(6−ヒドロキシドパミン)は、神経生物学者が実験動物の脳内において注射部位でドパミン作動性ニューロンを選択的に殺すために使用する神経毒である。6−OHDAモデルにおいては、黒質線条体のドパミン細胞は、黒質の前面に位置する内側前脳束中に6−OHDAを注射することにより脳の一側(片側)上で破壊される。この片側性の注射がアポモルヒネなどのドパミン作動薬による刺激と合わさると、脳の一側のみが刺激されることから回転行動が誘導されることになる。実験は、当該化合物について回転を誘導する最小有効用量(MED)を決定することから成る。一旦MEDを決定したら、第2の実験を実施して、ネモナプリド遮断を克服するための、化合物のMED(MEDネモナプリド)を決定する。ネモナプリドは、D2受容体を遮断するD2拮抗薬であることから、観察されるいずれの回転もD1受容体での活性に依存することになろう。最後に、一旦MEDネモナプリドがわかったら、MEDネモナプリド用量を用い、D1拮抗薬CH23390単独、D2拮抗薬ネモナプリド単独の効果を、最後に、SCH23390とネモナプリドとを用いた併用処置の効果を観察する第3の実験を行う。この第3の実験は、両方の受容体での化合物の活性を確認するものであるが、その理由は、いずれかの拮抗薬単独では試験化合物により誘導される回転応答を部分的に阻害することができるだけであるのに対し、併用処置ではラットにおける全ての回転が完全に遮断されるからである[Arnt and Hyttel、Psychopharmacology、85(3)、346頁、(1985)(非特許文献14)およびSonsallaら、J. Pharmacol Exp. Ther.、247(1)、180頁、(1988)(非特許文献15)]。このモデルを、D1/D2混合作動薬の原理実証用化合物としてアポモルヒネを使用して検証した。
【0146】
このモデルにおいては、本活性代謝物または化合物10および化合物11は、D1/D2比率が約2(これに対しアポモルヒネの場合は比率が約3)である「アポモルヒネ」様のプロファイルを有する。さらに、観察された作用の継続期間は、この化合物については約18時間であり、これは、Lドパ/アポモルヒネで見られる継続期間より有意に長い。D1成分は、プラミペキソールおよびロチゴチンにより例証されたようにはD2作動薬については観察できなかった。
【0147】
優越性モデル
アポモルヒネおよびLドパは、重度のドパミン枯渇のマウスモデルにおいて運動欠損(motility deficit)から回復させることが可能である。アポモルヒネおよびLドパは両方とも、ドパミンのD1受容体およびD2受容体を刺激する。D2様受容体での作動薬であるプラミペキソールは、このモデルにおいては効果がない。
【0148】
実験を次のように実施した:MPTP(2×15mg/kg、皮下)でそれまでに処置を受け安定な病変を発症したマウスを使用し、ビヒクル処置したマウスを正常対照とした。MPTP(1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン)は、脳の黒質中のあるニューロンを殺すことによりパーキンソン病の永久的な症状を引き起こす神経毒である。サルおよびマウスにおける疾患を試験するためにMPTPを使用する。実験当日、マウスをAMPT(250mg/kg、皮下)で処置してからホームケージに1.5時間戻し、その後マウスを運動ユニット(motility unit)中の個々のケージ内に置いた。AMPT(α−メチル−p−チロシン)は、脳のカテコールアミン活性(この場合、特にドパミン・レベル)を一時的に低下させる薬物である。AMPT注射の3時間後、本活性代謝物または化合物10で運動力欠損の救済を試み、さらに1.5時間活性を記録した。救済処置後に収集した最初の30分のデータには「ノイズが含まれて(contaminated)」いたが、これは、ビヒクル対照におけるレベル増加により明らかなように、取扱いおよび注射で動物にストレスがかかっていたことによるものであり、このため、記録されたデータの最後の1時間を用いてデータを分析した。多様なドパミン作動性化合物を、このモデルにおいて生じた運動欠損を回復する能力について試験する。Lドパ/ベンセラジドおよびアポモルヒネは両方とも、マウスにおいて用量依存的な形で運動力を回復した。ベンセラジドは、血液脳関門を通過できないDOPAデカルボキシラーゼ阻害薬であり、脳外でのLドパのドパミンへの代謝を防止するために使用される。これに対し、D2作動薬であるプラミペキソールおよびブロモクリプチンは、マウスにおいて運動力を回復しなかった。
【0149】
このモデルを使用して、本活性代謝物または化合物10は、D2作動薬に勝るLドパおよびアポモルヒネと同様の優越性を呈するか否かを評価した。用量応答実験を実施したところ、内因性ドパミンの重度の枯渇により誘導された運動性低下障害から回復する用量依存的な傾向が見られた。アポモルヒネ、プラミペキソールおよび化合物10の効果を直接比較する最終実験を実施した。化合物10は、処置したMPTPマウスにおいて運動力を回復でき、プラミペキソールより優れていることが確認された。
【0150】
ジスキネジアラット・モデル
文献(Lundbladら、Eur. J Neurosci.、2002、15、120頁(非特許文献16))中で報告されているジスキネジアラット・モデルを使用して、ジスキネジアに関する本活性代謝物対Lドパ/ベンセラジドの効果を調べ、ジスキネジアを「パーキンソン病症状を呈する」ラットにおける異常な不随意運動(AIM)として評価した。
【0151】
試験デザイン
試験を通して、動物には1日1回t=−20分、0〜180分でLドパ/ベンセラジド(6mg/kgおよび15mg/kg、皮下)または本活性代謝物(化合物10)(B群)を投与した。ジスキネジアについて動物を評点付けした。1〜14日目:全ての動物にLドパ/ベンセラジド(A群)または本活性代謝物(化合物10)(B群)を投与した。
【0152】
1日目、3日目、5日目、8日目および12日目に、先に記載したとおりの異常不随意運動尺度(AIMS)(Lundbladら、Eur. J Neurosci.、2002、15、120頁(非特許文献16))を用いてジスキネジアを記録することによるAIM評点法(AIM−scoring)により、動物を評点付けした。15〜26日目:A群の動物を、Lドパ/ベンセラジドの代わりに試験薬で処置した(B群として)。15日目、16日目、17日目、19日目、22日目、24日目および26日目:AIM評点法により、動物を評点付けした。
【0153】
6−OHDAラットにおけるLドパ誘導性ジスキネジアからの回復
処置の8日後、A群の動物のジスキネジア評点は10〜12であり、この数値は12日目まで一定であった。これに対し、B群の動物は有意に少ないジスキネジアを有した(評点は2〜4)。B群については、ジスキネジアの度合いは試験の間中変化しなかった。A群の動物をLドパ/ベンセラジドから試験薬に変更させた後、この群の動物のジスキネジアレベルは、他方の群の動物について観察されたレベルまで徐々に低下した。したがって、化合物11は、Lドパより有意に少ないジスキネジアを誘導し、Lドパにより誘導されるジスキネジアを減少させることができた。
【0154】
MPTP処置した普通のマーモセットにおける抗パーキンソン病効果
この実験は、MPTP処置した6匹のマーモセットを用いて行った(1日2.0mg/kg、最長で連続5日間、滅菌済の0.9%生理食塩溶液に溶解)。全ての動物は、それまでに、ジスキネジアを誘導するために、最長30日間毎日投与されるLドパ(12.5mg/kg、経口、+カルビドパ12.5mg/kg、経口)で処置しておいた。試験に先立ち、全ての対象は、基本的な自発運動の顕著な低下、運動の協調不足、異常な、および/または硬直した姿勢、機敏性の低下および頭部のチェック運動(checking movement)など安定な運動欠損を呈した。試験化合物のいずれかの前にドンペリドンを60分投与した。ドンペリドンは、悪心および嘔吐を抑制する抗ドパミン作動薬である。ケージ内に戦略的に置かれる8つの赤外線ビームから成る8つの光電性のスイッチから成る試験用ケージを用いて自発運動を評価し、ビームの妨害を1回として記録する。次に、時間区分当たりのビームの回数の合計数を時間の経過に従いプロットするか、または、総合的な活動について曲線下面積(AUC)として示す。処置について知らされていない、訓練を受けた観察者により、運動障害の評価を実施した。
【0155】
これまでに記載されているように、Lドパ(12.5mg/kg、経口)は自発運動を増加させ、運動障害を回復した(Smithら、Mov. Disord.、2002、17(5)、887頁(非特許文献17))。この挑戦のために選んだ用量は、この薬物の用量応答曲線の最高用量である。化合物11(経口投与)ならびに化合物10(皮下投与)は自発運動の用量依存的な増加および運動障害からの回復をもたらし、こうした増加および回復はLドパ(12.5mg/kg、経口)の場合より大きい応答で生じる傾向があった。試験化合物は両方とも、Lドパと比較して運動障害からの持続的な回復をもたらし、Lドパ同様に有効であった。
【0156】
in vitro肝細胞アッセイ
凍結保存したオスのラットの肝細胞プール(Sprague Dawley)、および、10名のドナー(男女)に由来するヒト肝細胞プールをIn Vitro Technologies Inc.、BA、USAから購入した。細胞を水浴中で37℃にて解凍し、生細胞を計数し、各ウェルがラットおよびヒトの肝細胞についてそれぞれ250,000細胞/mLおよび500,000細胞/mLを含有する96ウェル・プレート中の5mM Hepes緩衝液を添加したダルベッコ改変イーグル培地(高グルコース)中の合計100マイクロLに播種した。インキュベーションは、プレ・インキュベーションの15分後に開始し、ラットについては0分、5分、15分、30分および60分時点、ならびに、ヒト肝細胞については0分、30分、60分、90分および120分時点で停止させた。インキュベーションは、10%1M HClを含有する等体積の氷冷のアセトニトリルを加えることにより停止させた。遠心分離に次ぎ、20マイクロLの上清をHPLCカラムAtlantis、dC18、3マイクロm、150×内径2.1mm(Waters、MA、USA)上に注射した。移動相は以下の組成を有した:A:5%アセトニトリル、95%HO、3.7ml/l 25%NH水溶液、1.8mL/Lギ酸。移動相B:100%アセトニトリルおよび0.1%ギ酸。流速は0.3ml/分であった。勾配は0%〜75%B、5分〜20分で運転し、Q−TOFマイクロ質量分析計(Waters、MA、USA)を用いて溶出液を分析した。生成物/代謝産物の形成を、精密質量測定、および、合成した標準との比較により確認すると、一致する保持時間が得られた。このアッセイにおいては、化合物11が化合物10に代謝されることが実証された。
【0157】
例4
化合物12の薬理学的試験
cAMPアッセイ
本化合物が、ヒトの組換えD受容体を安定に発現するCHO細胞においてD受容体介在性のcAMP形成を刺激または阻害するいずれかの能力を次のように測定した。細胞を96ウェル・プレート中に、11000細胞/ウェルの濃度で実験の3日前に播種した。実験当日、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)中の予熱したG緩衝液(1mM MgCl、0.9mM CaCl、1mM IBMX(3−i−ブチル−1−メチルキサンチン))中で細胞を1回洗浄し、30nM A68930と、G緩衝液(アンタゴニズム)中で希釈した試験化合物、またはG緩衝液(アゴニズム)中で希釈した試験化合物との混合物100マイクロLを加えることにより、アッセイを開始した。
【0158】
細胞を37℃で20分間インキュベートし、100マイクロLのS緩衝液(0.1M HClおよび0.1mM CaCl)を加えることにより反応を停止させ、プレートを4℃で1時間置いた。68マイクロLのN緩衝液(0.15M NaOHおよび60mM NaOAc)を加え、プレートを10分間振盪させた。60マイクロlの反応物を、40マイクロLの60mM酢酸ナトリウム、pH6.2を含有するcAMP FlashPlates(DuPont、NEN)に移し、100マイクロLのICミックス(50mM酢酸ナトリウム、pH6.2、0.1%アジ化ナトリウム、12mM CaCl、1%BSA(ウシ血清アルブミン)および0.15マイクロ−Ci/mLの125I−cAMP)を加えた。4℃での18時間のインキュベーションに次いでプレートを1回洗浄し、Wallac TriLux計数器で計数した。本活性代謝物(すなわち化合物10)は、このアッセイにおいてD作動薬であることが見出された。
【0159】
cAMPアッセイ
本化合物が、ヒトD受容体でトランスフェクトしたCHO細胞においてD受容体介在性のcAMP形成阻害を刺激または阻害するいずれかの能力を次のように測定した。細胞を96ウェル・プレート中に、8000細胞/ウェルの濃度で実験の3日前に播種した。実験当日、予熱したG緩衝液(PBS中の1mM MgCl、0.9mM CaCl、1mM IBMX)中で細胞を1回洗浄し、G緩衝液(アンタゴニズム)中の、1マイクロMキンピロール、10マイクロMフォルスコリンおよび試験化合物の混合物100マイクロl、または、G緩衝液(アゴニズム)中の10マイクロMフォルスコリンおよび試験化合物を加えることにより、アッセイを開始した。
【0160】
細胞を37℃で20分インキュベートし、100マイクロlのS緩衝液(0.1M HClおよび0.1mM CaCl)を加えることにより反応を停止させ、プレートを4℃で1時間置いた。68マイクロLのN緩衝液(0.15M NaOHおよび60mM酢酸ナトリウム)を加え、プレートを10分間振盪させた。60マイクロLの反応物を、40マイクロLの60mM NaOAc、pH6.2を含有するcAMP FlashPlates(DuPont、NEN)に移し、100マイクロLのICミックス(50mM NaOAc、pH6.2、0.1%アジ化ナトリウム、12mM CaCl、1%BSAおよび0.15マイクロ−Ci/mlの125I−cAMP)を加えた。4℃での18時間のインキュベーションに次いでプレートを1回洗浄し、Wallac TriLux計数器で計数した。本活性代謝物(すなわち化合物10)は、このアッセイにおいてD作動薬であることが見出された。
【0161】
アッセイ
hDでトランスフェクトしたCHO−Ga16細胞におけるドパミンによる細胞内Ca2+放出の濃度依存刺激。細胞にカルシウム指示色素フルオロ−4を1時間載せた。カルシウム応答(蛍光変化)をFLIPR(蛍光定量的な画像化プレート・リーダー)により2.5分間モニターした。2つ組のウェルのピーク応答(EC50)を各データ点について平均し、薬物濃度と共にプロットした(ドパミンについては図1を参照のこと)。本活性代謝物(すなわち化合物10)は、このアッセイにおいてD作動薬であることが見出された。
【0162】
6−OHDAラット・モデル
ドパミン作動薬は、D1受容体、D2受容体のいずれかまたは両方で活性を有する場合がある。両方の受容体タイプを刺激し回転を誘導する能力について化合物を評価するために、片側性の6−OHDA病変を有するラットにおける回転応答を用いることができる[Ungerstedt and Arbuthnott、Brain Res.、24、485頁、(1970)(非特許文献3)、Setlerら、Eur. J. Pharmacol.、50(4)、419頁、(1978)(非特許文献12)およびUngerstedtら、「Advances in Dopamine Research」、(Kohsaka編)、Pergamon Press、1982、Oxford、219頁(非特許文献13)]。6−OHDA(6−ヒドロキシドパミン)は、神経生物学者が実験動物の脳内において注射部位でドパミン作動性ニューロンを選択的に殺すために使用する神経毒である。6−OHDAモデルにおいては、黒質線条体のドパミン細胞は、黒質の前面に位置する内側前脳束中に6−OHDAを注射することにより脳の一側(片側)上で破壊される。この片側性の注射がアポモルヒネなどのドパミン作動薬による刺激と合わさると、脳の一側のみが刺激されることから回転行動が誘導されることになる。実験は、当該化合物について回転を誘導する最小有効用量(MED)を決定することから成る。一旦MEDを決定したら、第2の実験を実施して、ネモナプリド遮断を克服するための、化合物のMED(MEDネモナプリド)を決定する。ネモナプリドは、D2受容体を遮断するD2拮抗薬であることから、観察されるいずれの回転もD1受容体での活性に依存することになろう。最後に、一旦MEDネモナプリドがわかったら、MEDネモナプリド用量を用い、D1拮抗薬SCH23390単独、D2拮抗薬ネモナプリド単独の効果を、最後に、SCH23390とネモナプリドとを用いた併用処置の効果を観察する第3の実験を行う。この第3の実験は、両方の受容体での化合物の活性を確認するものであるが、その理由は、いずれかの拮抗薬単独では試験化合物により誘導される回転応答を部分的に阻害することができるだけであるのに対し、併用処置ではラットにおける全ての回転が完全に遮断されるからである[Arnt and Hyttel、Psychopharmacology、1985、85(3)、346頁(非特許文献14)およびSonsallaら、J. Pharmacol Exp. Ther.、1988、247(1)、180頁(非特許文献15)]。このモデルを、D1/D2混合作動薬の原理実証用化合物としてアポモルヒネを使用して検証した。
【0163】
このモデルにおいては、化合物10および12は、D1/D2比率が約2〜4(これに対しアポモルヒネの場合は比率が約3)である「アポモルヒネ」様のプロファイルを有する。さらに、観察された作用の継続期間は、この化合物については約18時間であり、これは、Lドパ/アポモルヒネで見られる継続期間より有意に長い。D1成分は、プラミペキソールおよびロチゴチンにより例証されたようにはD2作動薬については観察できなかった。
【0164】
優越性モデル
アポモルヒネおよびLドパは、重度のドパミン枯渇のマウスモデルにおいて運動欠損から回復することが可能である。アポモルヒネおよびLドパは両方とも、D1受容体およびD2受容体を刺激する。D2受容体での作動薬であるプラミペキソールは、このモデルにおいては効果がない。
【0165】
実験を次のように実施した:MPTP(2×15mg/kg、皮下)でそれまでに処置を受け安定な病変を発症したマウスを使用し、ビヒクル処置したマウスを正常対照とした。MPTP(1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン)は、脳の黒質中のあるニューロンを殺すことによりパーキンソン病の永久的な症状を引き起こす神経毒である。サルおよびマウスにおける疾患を試験するためにMPTPを使用する。実験当日、マウスをAMPT(250mg/kg、皮下)で処置してからホームケージに1.5時間戻し、その後マウスを運動ユニット中の個々のケージ内に置いた。AMPT(α−メチル−p−チロシン)は、脳のカテコールアミン活性(この場合、特にドパミン・レベル)を一時的に低下させる薬物である。AMPT注射の3時間後、化合物10で運動力欠損の救済を試み、さらに1.5時間活性を記録した。救済処置後に収集した最初の30分のデータには「ノイズが含まれて」いたが、これは、ビヒクル対照におけるレベル増加により明らかなように、取扱いおよび注射で動物にストレスがかかっていたことによるものであり、このため、記録されたデータの最後の1時間を用いてデータを分析した。多様なドパミン作動性化合物を、このモデルにおいて生じた運動欠損から回復させる能力について試験した。Lドパ/ベンセラジドおよびアポモルヒネは両方とも、マウスにおいて用量依存的な形で運動力を回復した。ベンセラジドは、血液脳関門を通過できないDOPAデカルボキシラーゼ阻害薬であり、脳外でのLドパのドパミンへの代謝を防止するために使用した。これに対し、D2作動薬であるプラミペキソールおよびブロモクリプチンは、マウスにおいて運動力を回復しなかった。
【0166】
このモデルを使用して、化合物10は、D2作動薬に勝るLドパおよびアポモルヒネと同様の優越性を呈するか否かを評価した。用量応答実験を実施したところ、内因性ドパミンの重度の枯渇により誘導された運動性低下障害から回復させる用量依存的な傾向が見られた。アポモルヒネ、プラミペキソールおよび化合物10の効果を直接比較する最終実験を実施した。化合物10は、処置したMPTPマウスにおいて運動力を回復でき、プラミペキソールより優れていることが確認された。
【0167】
ジスキネジアラット・モデル
文献(Lundbladら、Eur. J Neurosci.、2002、15、120頁(非特許文献16))中で報告されているジスキネジアラット・モデルを使用して、ジスキネジアに関する化合物12対Lドパ/ベンセラジドの効果を調べ、ジスキネジアを「パーキンソン病症状を呈する」ラットにおける異常な不随意運動(AIM)として評価した。
【0168】
試験デザイン
試験を通して、動物には1日1回t=−20分、0〜180分でLドパ/ベンセラジド(6mg/kgおよび15mg/kg、皮下)または化合物12(B群)を投与した。ジスキネジアについて動物を評点付けした。1〜14日目:全ての動物にLドパ/ベンセラジド(A群)または化合物12(B群)を投与した。
【0169】
1日目、3日目、5日目、8日目および12日目に、先に記載したとおりの異常不随意運動尺度(AIMS)を用いてジスキネジアを記録することによるAIM評点法により、動物を評点付けした。15〜26日目:A群の動物を、Lドパ/ベンセラジドの代わりに化合物12で処置した(B群として)。15日目、16日目、17日目、19日目、22日目、24日目および26日目:AIM評点法により動物を評点付けした。
【0170】
結果
処置の8日後、A群の動物のジスキネジア評点は70〜80であり、この数値は15日目まで一定であった。これに対し、B群の動物は有意に少ないジスキネジアを有した(評点は10〜25)。B群については、ジスキネジアの度合いは試験の間中変化しなかった。A群の動物をLドパ/ベンセラジドから化合物12に10日間変更させた後、この群の動物のジスキネジアレベルは、30〜35の評点まで徐々に低下した。したがって、化合物12は、Lドパより有意に少ないジスキネジアを誘導し、Lドパにより誘導されるジスキネジアを減少させることができた。
【0171】
MPTP処置した普通のマーモセットにおける抗パーキンソン病効果
この実験は、MPTP処置した6匹のマーモセットを用いて行った(1日2.0mg/kg、最長で連続5日間、滅菌済の0.9%生理食塩溶液に溶解)。全ての動物は、それまでに、ジスキネジアを誘導するために、最長30日間毎日投与されるLドパ(12.5mg/kg、経口、+カルビドパ12.5mg/kg、経口)で処置しておいた。試験に先立ち、全ての対象は、基本的な自発運動の顕著な低下、運動の協調不足、異常な、および/または硬直した姿勢、機敏性の低下および頭部のチェック運動など安定な運動欠損を呈した。試験化合物のいずれかの前にドンペリドンを60分投与した。ケージ内に戦略的に置かれる8つの赤外線ビームから成る8つの光電性のスイッチから成る試験用ケージを用いて自発運動を評価し、ビームの妨害を1回として記録する。次に、時間区分当たりのビームの回数の合計数を時間の経過に従いプロットするか、または、総合的な活動について曲線下面積(AUC)として示す。処置について知らされていない、訓練を受けた観察者により、運動障害の評価を実施した。
【0172】
これまでに記載されているように、Lドパ(12.5mg/kg、経口)は自発運動を増加させ、運動障害から回復させた(Smithら、Mov. Disord.、2002、17(5)、887頁(非特許文献17))。この挑戦のために選んだ用量は、この薬物の用量応答曲線の最高用量である。化合物12(経口投与)ならびに化合物10(経口投与)は自発運動の用量依存的な増加および運動障害からの回復をもたらし、こうした増加および回復はLドパ(12.5mg/kg、経口)の場合より大きい応答で生じる傾向があった。試験化合物は両方とも、Lドパと比較して運動障害からの持続的な回復をもたらし、Lドパ同様に有効であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療するための医薬の製造における、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩の使用。
【請求項2】
ジスキネジアから回復させるための医薬の製造における、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩の使用。
【請求項3】
低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療するための医薬の製造における、(6aR,10aR)−7−n−プロピル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザシクロペンタ[a]アントラセンまたは薬学上許容可能なその塩の使用。
【請求項4】
ジスキネジアから回復させるための医薬の製造における、(6aR,10aR)−7−n−プロピル−6,6a,7,8,9,10,10a,11−オクタヒドロ−1,3−ジオキサ−7−アザシクロペンタ[a]アントラセンまたは薬学上許容可能なその塩の使用。
【請求項5】
低いジスキネジア誘導プロファイルを維持しながらパーキンソン病を治療するための医薬の製造における、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−2,3,4,4a,5,7,8,9,10,10a−デカヒドロ−1H−ベンゾ[g]キノリン−6−オンまたは薬学上許容可能なその塩の使用。
【請求項6】
ジスキネジアから回復させるための医薬の製造における、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−2,3,4,4a,5,7,8,9,10,10a−デカヒドロ−1H−ベンゾ[g]キノリン−6−オンまたは薬学上許容可能なその塩の使用。
【請求項7】
前記ジスキネジアが大脳基底核関連の運動障害に関連するものである、請求項1〜6のいずれか一つに記載の使用。
【請求項8】
前記ジスキネジアがパーキンソン病に関連するものである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記ジスキネジアが特発性パーキンソン病または脳炎後パーキンソン症候群に関連するものである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記ジスキネジアがパーキンソン病におけるオフ期ジストニー(off−dystonia)に関連するものである、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記ジスキネジアが、パーキンソン病を治療するための治療剤の副作用として生じる、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記ジスキネジアがドパミン補充療法に関連するものである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記ドパミン補充療法の薬剤が、ロチゴチン、ロピニロール、プラミペキソール、カベルゴリン、ブロモクリプチン、リスリド、ペルゴリド、Lドパおよびアポモルヒネから成る群から選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記ジスキネジアがLドパの反復投与の結果として生じる、請求項13に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−519157(P2012−519157A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551409(P2011−551409)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/DK2010/050051
【国際公開番号】WO2010/097092
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】