説明

ジヒドロ−ジベンゾ(A)アントラセンの誘導体および選択的エストロゲン受容体モジュレータとしてのその使用

本発明は、式(I):
【化1】


[式中、R1は、−H、−OH、−O(C1−C4アルキル)、−OCOC6H5、−OCO(C1−C6アルキル)または−OSO2(C2−C6アルキル)であり;
R0、R2およびR3は、それぞれ独立して−H、−OH、−O(C1−C4アルキル)、−OCOC6H5、−OCO(C1−C6アルキル)、−OSO2(C2−C6アルキル)またはハロであり;
R4は、1−ピペリジニル、1−ピロリジニル、メチル−1−ピロリジニル、ジメチル−1−ピロリジニル、4−モルホリノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノまたは1−ヘキサメチレンイミノであり;
nは、2または3であり;
Xは、−S−または−HC=CH−であり;そして、
Yは、−O−、−S−、−NH−、−NMe−または−CH2−である]
で示される化合物、またはその製薬的に許容可能な塩;その医薬組成物(所望により、エストロゲンおよびプロゲスチンと併用する);エストロゲン欠乏と関連する疾患を抑制する方法;および、内生エストロゲンに対する異常な生理学的反応と関連する疾患を抑制する方法、を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の背景]
本発明は、ジヒドロ−ジベンゾアントラセンおよびその誘導体、それらの化合物を含む組成物、選択的エストロゲン受容体モジュレータとしてのそれらの使用、ならびに骨喪失、心血管疾患、乳癌および子宮癌の抑制におけるそれらの使用に関する。
【0002】
閉経、女性における生殖期から非生殖期への移行は、月経の停止により特徴付けられ、平均50歳で起こる。閉経後の状態は、循環する性ホルモンの濃度の変化により特徴付けられ、その最も劇的な変化は、17β−エストラジオールの血中濃度の閉経前の値の10%未満への減少である。臨床的および疫学的研究は、閉経後の状態が多くの慢性疾患、特に骨粗鬆症および心血管疾患に関する重要な危険因子であることを示している。女性の現在の寿命が約80年である事実を考慮すると、女性はその人生のおよそ3分の1を閉経後の状態で過ごすこととなる。このことは、女性の健康における閉経後の状態の慢性的な影響の可能性が、平均寿命が著しく短かった今世紀初めよりも今日、より高いことを意味する。
【0003】
骨粗鬆症は、単位体積あたりの正味の骨量の低下により特徴付けられる疾患の群を示す。この骨量の低下およびそれによる骨折の結果は、身体に十分な構造的支持を提供するための骨格の不全である。閉経後骨粗鬆症の影響を最も受けやすい骨組織は、骨梁である。この組織は、しばしば海綿骨または網状骨と呼称され、特に骨の末端近く(関節近く)および脊椎の椎骨内に集中している。骨梁組織は、相互に連結した小さな骨様構造、ならびに骨の外側表面および中心軸を形成するより硬く密度の高い皮質組織により特徴付けられる。この相互に連結した骨梁網は、外側の皮質構造に側壁保持を与え、そして全体構造の生体力学的強度に極めて重要である。
【0004】
月経の停止に続いて、ほとんどの女性が、3〜6年以内に骨の骨梁部分にて骨量の約20%〜60%を失う。この急速な低下は一般に、骨吸収と骨形成の増加に関連する。しかし、吸収周期がより優勢であり、その結果正味の骨量の低下を生じる。
【0005】
閉経後骨粗鬆症にて、最初に正味の吸収および骨梁の低下があり、それが骨不全および骨折を導く。閉経後の女性における骨梁の低下を考慮に入れると、ほとんどの一般的な骨折が、例えば脊椎、首などの骨梁支持体に依存度が高い骨、ならびに例えば大腿骨および前腕骨などの体重支持骨と関連することは、驚くべきことではない。実際、股関節骨折、コリーズ骨折(collies fracture)および脊椎粉砕骨折が、閉経後骨粗鬆症の顕著な特徴である。
【0006】
この疾患に苦しんでいる女性は、アメリカ合衆国だけで推定2500万人存在する。骨粗鬆症の結果は、個人的に有害であり、また、その慢性性および広範かつ長期の支援(入院および在宅看護)の必要性による大きな経済的損失の要因にもなる。このことは特に、より高齢の患者に当てはまる。さらに、骨粗鬆症は一般に、生命に危険を及ぼす病状として考えられないとしても、20%〜30%の死亡率が、高齢の女性における股関節骨折と関連している。この死亡率の高い割合は、閉経後骨粗鬆症と直接的に関連しうる。
【0007】
心血管疾患は、女性の主な死亡原因である。男性と比較して、閉経前の女性は、心血管疾患から比較的保護されている;しかしながら、この保護は、閉経以降徐々に失われていく。血清脂質を制御するエストロゲンの能力の性質は、あまり理解されていないが、エストロゲンが、過度のコレステロールを除去するために作用する肝臓中の低密度脂質(LDL)受容体を上方制御し得ることを、証拠が示唆している。さらに、エストロゲンがコレステロールの生合成に影響を及ぼし、その他に心血管の健康に有益な効果をもたらすと考えられる。
【0008】
現在、閉経後の状態にてエストロゲン濃度の減少により生じる障害の処置のための1つの一般的に認められた方法は、エストロゲン補充療法である。前記治療を、エストロゲンのみを投与する形式、いわゆる反対のない(unopposed)エストロゲン補充療法(ERT)、またはエストロゲンとプロゲスチンを併用する形式、いわゆるホルモン補充療法(HRT)にて行うことができる。しかしながら、胸部や子宮への副作用と関係のある、閉経後の女性におけるエストロゲンの長期投与には多くの障害が伴う。ERTを行っている女性は、使用から3〜6年後に不使用者の3〜6倍高い割合で子宮内膜癌を患い;ERTの開始から10年後には、危険率は10倍に増加する。
【0009】
これらのERTの悪影響に対抗するため、複合ホルモン補充療法(HRT)によるエストロゲンと共にプロゲスチンの同時投与が用いられる。プロゲスチンは、子宮の刺激を抑える働きをし、そのため子宮癌の危険を減少させる。
これら既知の、疑われるまたは懸念されるエストロゲン治療の不利益のため、長期的エストロゲン補充療法の処方および患者のコンプライアンスは悪かった。米国にてERTまたはHRTを受けている閉経後の女性のうち、40パーセント未満が1年以上治療を継続すると推測されている。
【0010】
結果として、理想的な薬理学的プロフィールを有する閉経後治療薬の開発が必要とされている:例えば、乳房および子宮へのエストロゲンの副作用を生じることなく、骨格組織および心臓血管系へのエストロゲンの有益な効果を生じる薬物。そのようなエストロゲン・プロフィールを有する薬物は、エストロゲンが産する副作用の組織における作用を回避または弱くすると同時に、任意の組織におけるエストロゲン欠乏の影響を反転する。選択的エストロゲン受容体モジュレータまたは「SERM」なる用語を、この組織選択的プロフィールを有するそのような化合物に用いた。「SERM」は、例えば、乳房または子宮などの組織の再構成におけるエストロゲン・アンタゴニズムおよび/または最小の(すなわち、臨床的に重要でない)アゴニズムと共に、1つまたはそれ以上の所望の標的組織、例えば骨、肝臓などにてエストロゲン・アゴニズムを生じる化合物と定義される。
【0011】
[発明の概要]
本発明は、式:
【化1】

[式中、R1は、−H、−OH、−O(C1−C4アルキル)、−OCOC6H5、−OCO(C1−C6アルキル)または−OSO2(C2−C6アルキル)であり;
R0、R2およびR3は、それぞれ独立して−H、−OH、−O(C1−C4アルキル)、−OCOC6H5、−OCO(C1−C6アルキル)、−OSO2(C2−C6アルキル)またはハロであり;
R4は、1−ピペリジニル、1−ピロリジニル、メチル−1−ピロリジニル、ジメチル−1−ピロリジニル、4−モルホリノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノまたは1−ヘキサメチレンイミノであり;
nは、2または3であり;
Xは、−S−または−HC=CH−であり;そして、
Yは、−O−、−S−、−NH−、−NMe−またはCH2−である]
で示される化合物または、その製薬的に許容可能な塩を提供する。
【0012】
第2の態様にて、本発明は、治療的に有効量の式(I)の化合物のみ、またはエストロゲンあるいはプロゲスチンとの組合せ、および製薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。
【0013】
さらなる態様にて、本発明は、骨喪失、例えば、骨粗鬆症;心血管疾患、例えば高血圧症、血栓症および血清コレステロール低下症を含むエストロゲン欠乏症候群の緩和のために、本発明の化合物を使用する医療方法を提供する。
【0014】
本発明の医療方法の別の態様にて、本発明の化合物は、子宮筋腫疾患または子宮線維症、子宮内膜症およびエストロゲン依存性癌を含む、内生エストロゲンに対する異常な生理学的反応と関連する病状の処置に用いられる。
またさらなる態様にて、本発明は、式(I)の化合物の合成に用いられる化学中間体に関する。
【0015】
[発明の詳しい説明]
本明細書に記載の化合物の説明に用いた一般用語は、それらの通常の意味を有する。例えば、「C1−C6アルキル」は、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、n−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシルなどの部分を含む、炭素原子数1〜6の直鎖、分岐または環状の脂肪族鎖を示す。同様に、「C1−C4アルキル」は、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、n−ブチル、シクロプロピルなどの部分を含む、炭素原子数1〜4の直鎖、分岐または環状の脂肪族鎖を示す。同じように、用語「C1−C4アルコキシ」は、酸素分子を介して結合したC1−C4アルキル基を示し、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシなどの部分を含む。
【0016】
用語「NMe」は、メチルアミノを示す。用語「ハロ」は、ブロモ、クロロ、フルオロおよびヨードを示す。
本明細書に用いた、用語「立体異性体(stereoisomer)」は、同じ原子が同じ結合により結合して構成されているが、互換性のない異なる三次元構造を有する化合物を示す。その三次元構造は、立体配置と呼ばれている。本明細書にて用いた、用語「鏡像異性体(enantiomer)」とは、分子をもう1つの鏡像と重ね合わせることのできない、2つの立体異性体を示す。用語「キラル中心」とは、4つの異なる基が結合している炭素原子を示す。本明細書にて用いた、用語「ジアステレオマー」とは、鏡像異性体でない立体異性体を示す。さらに、1つのキラル中心のみで異なる立体構造を有する2つのジアステレオマーを、本明細書にて「エピマー」と示す。用語「ラセミ化合物(racemate)」、「ラセミ混合物」または「ラセミ体(racemic modification)」とは、等量の鏡像異性体の混合物を示す。
【0017】
本明細書に用いた用語「鏡像異性体濃縮(enantiomeric enrichment)」とは、他方と比較して一方の鏡像異性体の量の増加を意味する。達成された鏡像異性体濃縮を表す簡便な方法としては、以下の方程式を用いて見出される鏡像体過剰率または「ee」という概念がある:
【表1】

[式中、E1は、第1の鏡像異性体の量であり、E2は、第2の鏡像異性体の量である]。従って、2つの鏡像異性体が50:50の初期比率、例えばラセミ混合物で存在し、そして70:30の最終割合を産するために十分な鏡像異性体濃縮が達成された場合、第1の鏡像異性体についての前記「ee」は40%である。また一方で、最終割合が90:10である場合、第1の鏡像異性体についての前記「ee」は80%である。「ee」は90%より大きいことが好ましく、95%より大きいことが最も好ましく、99%より大きいことが特に好ましい。鏡像異性体濃縮は、標準的な技術および方法、例えばキラルカラムを用いたガスクロマトグラフィーまたは高性能液体クロマトグラフィーを用いて当業者により容易に測定される。鏡像異性体対を分離するのに必要な、適当なキラルカラム、溶離剤および条件の選択は、十分に当業者の知識の範囲内である。さらに、式Iの化合物の特定の立体異性体および鏡像異性体は、周知の技術および手法、例えばJ. Jacquesらの「Enantiomers、Racemates、and Resolutions」、John Wiley and Sons社、1981、およびE.L. ElielとS.H.Wileの「 Stereochemistry of Organic Compounds」(Wiley−Interscience 1994)、および1998年4月29日刊行の欧州特許出願番号EP−A−838448に記載のような方法を用いて当業者により製造することができる。光学分割の例は、再結晶化技術およびキラルクロマトグラフィーを含む。
【0018】
本発明の化合物のいくつかは、1つまたはそれ以上のキラル中心を有し、様々な立体異性体配置で存在しうる。これらのキラル中心の結果として、本発明の化合物は、ラセミ化合物、鏡像異性体の混合物および個々の鏡像異性体、ならびにジアステレオマーおよびジアステレオマーの混合物として生じる。そのようなラセミ化合物、鏡像異性体およびジアステレオマーは全て、本発明の範囲内である。
【0019】
本明細書に用いた、用語「R」および「S」は、一般に有機化学で用いられ、キラル中心の特定の配置を意味する。用語「R(rectus)」は、優先順位の一番低い基に向かって結合する方向に見て、基の優先順位の関係(最高〜下から2番目まで)が右回りであるキラル中心の配置を示す。用語「S(sinister)」は、優先順位の一番低い基に向かって結合する方向に見て、基の優先順位の関係(最高〜下から2番目まで)が左回りであるキラル中心の配置を示す。基の優先順位は、それらの原子番号に基づく(原子番号が減少する順)。優先順位の部分一覧および空間的配置の考察が「Nomenclature of Organic compounds:Principles and Practice」(J.H. Fletcherら、eds.、1974)の103−120頁に盛り込まれている。
【0020】
記号:
【化2】

は、紙面から前方に突き出た結合を示す。
記号:
【化3】

は、紙面から後方に突き出た結合を示す。
記号:
【化4】

は、原子の空間的配置が定義されていない結合を示す。
【0021】
本明細書に用いた、用語「エストロゲン」は、エストロゲン活性を有するステロイド化合物、例えば、17β−エストラジオール、エストロン、複合型エストロゲン(プレマリン、Premarin(登録商標))、ウマ・エストロゲン 17a−エチニルエストラジオールなどを含む。本明細書に用いた、用語「プロゲスチン」は、プロゲステロン活性を有する化合物、例えば、プロゲステロン、ノルエチルノドレール(norethylnodrel)、ノンゲストレール(nongestrel)、メゲストロール・アセテート、ノルエチンドロンなどを含む。
【0022】
好ましい本発明の化合物は、Yが−O−である式Iの化合物を含む。
あるR3およびR4基もまた、好ましい特性を示す。例えば、R4が、1−ピロリジニル、1−ヘキサメチレンイミノまたは1−ピペリジニルである式Iの化合物が好ましい。好ましい1−ピロリジニル、1−ヘキサメチレンイミノまたは1−ピペリジニル化合物のさらに好ましいサブグループは、R0、R1、R2およびR3が、それぞれ独立して−H、−OHまたは−OCH3である前記化合物を含む。
【0023】
式Iの化合物の遊離塩基型または遊離酸型を、本発明の方法にて用いることができるが、製薬的に許容可能な塩型を製造し使用することが好ましい。故に、本発明の方法にて用いられる前記化合物は、様々な有機的および無機的な酸ならびに塩基と共に製薬的に許容可能な酸または塩基付加塩を形成し、製薬化学にてしばしば用いられる生理学的に許容可能な塩を含む。そのような塩は、また、本発明の一部である。例えば塩化水素塩、臭化水素塩、ヨウ化水素塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩などを含む塩類を形成するために、一般的な無機酸を用いる。有機酸、例えば、脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシ・アルカン酸およびヒドロキシ・アルカン二酸(hydroxyalkandioic acid)、芳香族酸、脂肪族スルホン酸および芳香族スルホン酸から誘導される塩を用いることもできる。従って、そのような製薬的に許容可能な塩には、酢酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o−アセトキシ安息香酸塩、ナフタレン−2−安息香酸塩、臭化物、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、b−ヒドロキシ酪酸塩、ブチン−1,4−二酸塩、ヘキシン−1,4−二酸塩、カプリン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩、イソニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、プロピオール酸塩(propiolate)、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、ピロ硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−ブロモフェニルスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酒石酸塩(tartarate)などが含まれる。好ましい塩は、塩酸塩およびシュウ酸塩である。
【0024】
製薬的に許容可能な付加塩を形成するために用いられる塩基は、一般的な無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ炭酸塩または重炭酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどである。さらに、有機塩基を、例えばアルキルアミン、例えばトリアチルミン、ジメチルアミン、i−プロピルアミンなどの付加塩を形成するために利用してもよい。
【0025】
製薬的に許容可能な酸または塩基付加塩は、一般に、式Iの化合物と等モルまたは過剰量の酸あるいは塩基を反応することにより形成される。前記反応物は一般に、相互溶媒、例えばジエチルエーテルまたは酢酸エチル中で結合される。前記塩は通常、約1時間〜10日以内に溶液から沈殿し、ろ過により分離可能であるか、または溶媒を常法により取り除くことにより単離することができる。
【0026】
本発明の範囲内にあると考えられる化合物の具体例は、以下の化合物:
11−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−6,11−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,3−d]チオフェン−3−オール;
11−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−6,11−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,3−d]チオフェン−3,8−ジオール;
11−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−6,11−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,3−d]チオフェン−3,10−ジオール;
11−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−6,11−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,3−d]チオフェン−3,9−ジオール;
10−フルオロ−12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3−オール;
12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3,10−ジオール;
12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3,9−ジオール;
12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3,11−ジオール;
12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3,8−ジオール
およびその製薬的に許容可能な塩を含むが、それらに限定されない。
【0027】
式(I)の化合物は、当業者が熟知し理解している方法および技術を用いることにより製造することができる。Xが−S−である式(I)の化合物を製造するための一般的な合成スキームを、スキームAに示した(ここに全ての置換基は、他に特に記載がない限り前段にて定義したものである)。
【化5】

【0028】
スキームA中、R0a、R1a、R2aおよびR3aは、それぞれ独立して−Hまたは−OPgであり、ここでPgはヒドロキシ保護基であり、さらに、R2aおよびR3aはハロであってよい。式(2)、(3)の化合物にて(以下参照)、Pg保護基であるR1a、R2aおよびR3aは、T. Greeneらの「Protective Groups in Organic Synthesis」第2版、John Wiley & Sons,Inc.、New York、1991、の第3章143〜170頁に教示されている型のフェノール保護基である。好ましい保護基は、アルキルエーテル基であり、メチルを有する基が特に好ましい。
【0029】
スキームA、工程1にて、式(2)のジメチルアミノベンゾチオフェンと安定に保護したハロゲン化ベンジルマグネシウムをグリニャール条件下で反応することにより、式(3)の(2−ベンジル−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−(4−置換−フェニル)−メタノンを製造する(ここに、Pgはフェノール保護基、例えばメチルまたはベンジルエーテルである)。グリニャール反応とは、ゴッドフリー(Godfrey)により教示される型の反応である(米国特許第5,420,349号)。
【0030】
例えば、ジメチルアミノベンゾチオフェン(2)を、無水条件下で適当な非プロトン性有機溶媒、例えば無水テトラヒドロフラン中、適当な塩化ベンジルマグネシウムと反応させる。前記塩化ベンジルマグネシウムは、約1.1〜約3当量のジメチルアミノベンゾチオフェン(2)に対し過剰モルで反応帯中に存在することが好ましい。前記反応を、約1〜約12時間の間、適当な温度、好ましくは室温で行う。次に、反応を、陽子源(proton source)、例えば重炭酸ナトリウムまたはメタノールでクエンチする。溶媒を除去し、生じた混合物を本技術分野にて周知の技術により抽出、濃縮および精製することが可能である。粗(2−ベンジル−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−(4−置換−フェニル)−メタノン(3)生成物は、さらなる精製なしに用いることができる。
【0031】
適当なジメチルアミノベンゾチオフェン(2)は、本技術分野にて知られている(Greseらの、J.Med.Chem.40(2)、146−147(1997)、1995年11月14日発行の米国特許第5,466,810号、1995年5月30日発行の米国特許第5,420,349号、1998年8月11日発行の米国特許第5,792,870号および1996年9月10日発行の米国特許第5,554,755号)か、あるいは本技術分野にて周知の技術および方法により製造される。
【0032】
スキームA、工程2にて、(2−ベンジル−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−(4−置換−フェニル)−メタノン(3)を適当な還元剤で還元することにより、(2−ベンジル−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−(4−置換−フェニル)−メタノール(4)を製造する。
【0033】
例えば、(2−ベンジル−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−(4−置換−フェニル)−メタノン(3)を、過剰量の適当な還元剤、例えば、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化リチウムアルミニウム(LAH)、水素化アルミニウムまたはボラン・硫化ジメチル複合体と接触させる。前記反応は、好適な溶媒、例えばテトラヒドロフランまたはジエチルエーテル中にて行う。前記反応は通常、0℃〜溶媒の還流温度にて行う。一般的に、前記反応には、約15分〜約36時間を要する。(2−ベンジル−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−(4−置換−フェニル)−メタノール(4)を、本技術分野にて周知の技術、例えば抽出、蒸発、粉末化、クロマトグラフィーおよび再結晶化により、単離および精製することができる。
【0034】
スキームA、工程3にて、 (2−ベンジル−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−(4−置換−フェニル)−メタノール(4)を酸触媒環化することにより、式(IA)の環化生成物を製造する。
【0035】
例えば、(2−ベンジル−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−(4−置換−フェニル)−メタノール(4)を、好適な溶媒または溶媒混合液、例えば、テトラヒドロフランおよび水で希釈し、次に好適な酸、例えば塩酸を加える。その後、反応混合液を約5〜30分間穏やかに加熱し、好適な有機溶媒、例えば塩化メチレンで希釈し、好適な塩基、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは重炭酸カリウムでクエンチする。式(IA)の環化生成物を、本技術分野にて周知の技術、例えば抽出、蒸発、粉末化、クロマトグラフィーおよび再結晶化により、単離および精製することができる。
【0036】
式(IA)の化合物について、R0、R1、R2および/またはR3としてヒドロキシ基が望ましい場合、式(IA)の化合物を、好適な脱保護剤、例えばBBr3またはナトリウム・エタンチオラート(NaSEt)で脱保護する。BBr3反応は、適当な有機溶媒、例えばジクロロメタンまたはジクロロエタン中にて行うことが都合良く、一方、NaSEt反応は、DMF、THFまたはN−メチルピロリジノン(NMP)中にて行うことが都合良い。前記反応を水でクエンチし、適当な有機溶媒、例えば塩化メチレンで希釈する。R0、R1、R2および/またはR3がヒドロキシである脱保護した生成物を、本技術分野にて周知の技術、例えば抽出、蒸発、粉末化、クロマトグラフィーおよび再結晶化により、単離および精製することができる。
【0037】
言い換えれば、ワンポット環化/脱保護変換を、式(4)の化合物をBBr3に供することにより達成することができる。前記反応は、好適な有機溶媒、例えばジクロロメタンまたはジクロロエタン中にて行うことが都合良い。R0、R1、R2および/またはR3がヒドロキシである式(IA)の脱保護した生成物を、本技術分野にて周知の技術、例えば抽出、蒸発、粉末化、クロマトグラフィーおよび再結晶化により、単離および精製することができる。
【0038】
Xが−CH=CH−である式(I)の化合物を製造する一般的な合成スキームを、スキームBに示した(ここで全ての置換基は、他に特に記載がない限り上記の定義のものである)。
【0039】
【化6】

スキームBにおいて、R0a、R1a、R2aおよびR3aは、それぞれ独立して−または−OPgであり、ここで、Pgはヒドロキシ保護基であり、さらに、R2aおよびR3aはハロであってよい。式(5)、(6)の化合物にて(以下参照)、Pg保護基であるR0a、R1a、R2aおよびR3aは、フリーデルクラフト・アセチル化反応(Friedel−Crafts acylation reaction)の条件に耐えうるフェノール保護基であり、それらはT. Greeneらの「Protective Groups in Organic Synthesis」第2版、John Wiley & Sons,Inc.(ニューヨーク市)、1991、第3章143−170頁に教示のある形である。好ましい保護基は、アルキルエーテル基であり、メチルを有するものが特に好ましい。
【0040】
活性基Aは、フリーデルクラフト・アセチル化反応を行うことを目的として酸を活性化することが当業者によく知られている基から選択され、それは、酸ハロゲン化物、例えばフッ化物、塩化物および臭化物;酸無水物とC1−C6アルカン酸の混合物;C1−C6アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、過フッ素C1−C6アルカン酸、C1−C6アルキルカーボネート、アリールカーボネートなどを含む。好ましい式(8a)の化合物は、Aがハロゲンであり、より好ましくは塩素である。
【0041】
スキームB、工程1にて、式(5)の置換ナフチルと式(5a)の置換ベンゾイル誘導体のフリーデルクラフト・アセチル化を行うことにより、式(6)の置換ナフチル・メタノンを製造する。
【0042】
例えば、(5)と(5a)のアセチル化反応を、ルイス酸触媒の存在下に不活性の有機溶媒中で行う。適当な溶媒は、ハロゲン化した炭化水素、例えばジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどを含む。溶媒の量は厳密ではないが、一般に反応成分の効率の良い混合を可能にするために十分な量である。(5)と(5a)のフリーデルクラフト・アセチル化反応に適当なルイス酸触媒には、無水アルミニウム、ホウ素、またはハロゲン化亜鉛が含まれ、塩化アルミニウムを有するものが好ましい。反応の温度および時間は、反応溶媒、ルイス酸触媒および活性基Aの選択に依存して変わるであろう。一般に、反応を、周囲温度より低い温度または周囲温度〜溶媒の還流温度より低い温度または溶媒の還流温度にて行う。反応時間は、数分から約48時間の間で変化する。完了までの反応の経過を、例えば、反応の過程における反応混合液のアリコート(aliquot)の薄層クロマトグラフィー分析などの周知の技術により追跡することができる。
【0043】
一般に、前記反応は、それぞれ等量の化合物(5)に1.0〜1.5当量の化合物(5a)を用いて行い、反応経過中、反応を完了させるために必要なより多くの活性化ベンゾイル化合物を添加する。用いたルイス酸触媒の量は、約0.1〜約5当量の範囲である。式(6)の置換ナフチルメタノンは、本技術分野にて周知の技術、例えば抽出、蒸発、粉末化、クロマトグラフィーおよび再結晶化により、単離および精製することができる。
【0044】
適当な式(5a)の置換ベンゾイル誘導体を、その適当な安息香酸誘導体から本明細書に記載のようにして製造することが可能であり(米国特許第5,962,475号に同様に記載)、その開示事項は参照により本明細書に組み込まれる。式(5a)の化合物の適当な安息香酸誘導は、米国特許第4,418,068号、米国特許第5,631,369号および米国特許第5,852,193号に記載されており、その開示事項は参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
スキームB、工程2にて、式(6)の置換ナフチルメタノンの選択的脱保護により、式(7)の2−ヒドロキシ−6−置換−ナフタレン−1−イル−メタノンを製造する。
【0046】
例えば、式(6)のナフチルメタノンを脱メチル化試薬、例えば、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、または三ヨウ化ホウ素と一緒に、あるいはAlCl3と一緒に反応させる。前記反応は、脱メチル化されるメトキシ基1モル当たり1モルまたはそれ以上モルの試薬と一緒に、不活性雰囲気下、例えば窒素下にて行う。この反応に適当な溶媒は、脱メチル化反応を通して不活性なままの溶媒または溶媒の混合液である。ハロゲン化溶媒、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレン、または芳香族溶媒、例えばベンゼンまたはトルエンが好ましい。本発明のこの反応に用いる温度は、脱メチル化反応の完了をもたらすために十分なものであるべきである。しかし、所望のメトキシ基の脱メチル化反応の選択性を最大にし、かつ非所望の生成物、とりわけ過剰な脱メチル化反応により生じるジヒドロキシ類似体の形成を避けるために0℃以下の温度に維持することが望ましい。好ましい反応条件下にて、選択的に脱アルキル化した生成物は、約1〜24時間反応液を撹拌した後に形成されるだろう。反応をクエンチした後、式(7)の2−ヒドロキシ−6−置換−ナフタレン−1−イル−メタノンを、本技術分野にてよく知られている技術、例えば抽出、蒸発、粉末化、クロマトグラフィーおよび再結晶化により、単離および精製することができる。
【0047】
スキームB、工程3にて、式(7)の2−ヒドロキシ−6−置換−ナフタレン−1−イル−メタノンのヒドロキシ基を適当な活性基に変換することにより、式(8)の2−L−置換−6−置換−ナフタレン−1−イル−メタノンを製造する。
【0048】
適当な活性基であるL1は、パラジウムで触媒されるカップリング条件に適用可能なものであり、式:
【化7】

(8a)
[式中、Halはハロ基、好ましくはクロロである]
で示されるベンジル化したハロゲン化物により置換されうる。適当な活性基、L1は、ブロモ、ヨードを含み、最も好ましくはトリフルオロメタンスルホネートである。
【0049】
例えば、L1がトリフルオロメタンスルホネートである化合物は、式(7)の適当な2−ヒドロキシ−6−置換−ナフタレン−1−イル−メタノンと過剰モルのトリフルオロメタン塩化スルホニルを接触させることにより形成される。反応は、好適な溶媒、例えばジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、ベンゼンまたはピリジン中にて行う。前記反応は、本発明の好適な塩基、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチル・アミンまたはピリジンの存在下にて行う。一般に反応を−20℃〜50℃の温度で行う。一般に、反応には30分〜24時間を要する。生成物を、本技術分野にてよく知られている技術、例えば抽出、蒸発、粉末化、クロマトグラフィーおよび再結晶化により、単離および精製することができる。
【0050】
スキームB、工程4にて、標準パラジウムを介したカップリング方法を用いて(例えば、Knochelらの、Org. Lett.1999、1、1323を参照)、式(8)の2−L−置換−6−置換−ナフタレン−1−イル−メタノンを式(8a)のベンジル化ハロゲン化物とカップリングさせることにより、式(9)の[6−置換−2−(置換−ベンジル)−ナフタレン−1−イル]−[4−置換−フェニル]−メタノンを製造することができる。
【0051】
例えば、不活性溶媒、例えばトルエン、N−メチルピロリジノン/トルエン、または1,2−ジメトキシエタン中、パラジウム触媒および適当な塩基の存在下に、わずかに過剰量の2−アルコキシベンジル亜鉛ハロゲン化物(8a)を、それぞれ当量の式(8)の2−L−置換−6−置換−ナフタレン−1−イル−メタノンと一緒に添加する。様々なパラジウム触媒が、そのようなカップリング反応を促進するが、選択される触媒は通常反応特異的である。本反応にはビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム−Pd(dba)2触媒の使用が、好ましい。添加剤としてのテトラブチルアンモニウム・ヨウ化物(Bu4NI)は、同様のカップリング反応で収率および反応時間の改善を示した(Knochel et al. Org. Lett. 1999、1、1323)。この工程にて用いる反応温度は、カップリング反応を完了するために十分でなければならない。通常、約2〜約8時間の間反応混合液を穏やかに加熱することが、適当である。生成物(9)を、本技術分野にてよく知られている技術、例えば抽出、蒸発、粉末化、クロマトグラフィーおよび再結晶化により、単離および精製することができる。
【0052】
式(8a)の化合物は、商業的に利用可能であるか、または当業者によく知られている方法により商業的に利用可能な化合物から誘導される[例えば、Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, Fourth Edition,3−16, (J. March, ed., John Wiley & Sons, Inc. 1992)を参照]。
【0053】
スキームB、工程5にて、[6−置換−2−(置換−ベンジル)−ナフタレン−1−イル]−[4−置換−フェニル]−メタノン(9)を、スキームA、工程2に示す方法により適当な還元剤で還元することにより、[6−置換−2−(置換−ベンジル)−ナフタレン−1−イル]−[4−置換−フェニル]−メタノール(10)を製造する。
【0054】
スキームB、工程6にて、[6−置換−2−(GH−ベンジル)−ナフタレン−1−イル]−[4−置換−フェニル]−メタノール(11)の、スキームA、工程3に示す方法に従う酸触媒による環化により、式(IB)の環化生成物を製造する。
【0055】
R0、R1、R2および/またはR3が、ヒドロキシ基であることが望ましい場合、式(IB)の化合物を、上記のスキームAに記載の方法により脱保護し、単離および精製することができる。
あるいは、ワンポット環化反応を、BBR3を用いて、上記のスキームAに記載のように行うことができる。
【0056】
R0、R1、R2および/またはR3が、−OC(O)(C1−C6アルキル)または−OC(O)C6H5基であることが望ましい場合、式Iのモノ−、ジ−、トリ−またはテトラヒドロキシ化合物を、塩化アシル、臭化物、シアン化物またはアジ化物等の薬剤、あるいは適当な無水物もしくは混合無水物と一緒に反応させる。前記反応は、塩基性溶媒、例えばピリジン、ルチジン、キノリンまたはイソキノリン中、あるいは4級アミン溶媒、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、メチルピペリジン等中にて容易に行うことができる。前記反応はまた、少なくとも1つの等量の酸スカベンジャー(acid scavenger)、例えば4級アミンを添加し、不活性溶媒、例えば酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、ジメトキシエタン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトンなどの中で行うことができる。所望であれば、アシル化触媒、例えば4−ジメチルアミノピリジンまたは4−ピロリジノピリジン(4-pyrrolidinopyridine)を用いることができる。例えば、Haslamらの、tetrahedron、36:2409−2433 (1980)を参照。
【0057】
上記のR0、R1、R2および/またはR3基を供するアシル化反応は、しばしば不活性雰囲気下、例えば窒素ガス下にて約−25℃〜約100℃の範囲の適度な温度で行われる。しかしながら、通常、周囲温度が反応に適している。
【0058】
ヒドロキシ基のそのようなアシル化はまた、不活性な有機溶媒またはニート(neat)中において適当なカルボン酸の酸触媒反応により行うことができる。酸触媒、例えば硫酸、ポリリン酸、メタンスルホン酸などが用いられる。
【0059】
上記のR0、R1、R2および/またはR3基はまた、適当な酸の活性エステル、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、アシルイミダゾール、ニトロフェノール、ペンタクロロフェノール、N−ヒドロキシスクシニミドおよび1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾールなどの既知の試薬により形成されるエステルを形成することにより供し得る。例えば、Bull. Chem. Soc. Japan、 38:1979 (1965)およびChem.Ber.、788および2024(1970)を参照。
【0060】
R0、R1、R2および/またはR3が、−OSO2(C4−C6アルキル)である化合物が望ましい場合、適当なモノ−、ジ−またはトリヒドロキシ開始化合物を、KingおよびMonoirの、J. Am. Chem. Soc.、97:2566−2567 (1975)に教示のように、例えば適当なスルホン酸の誘導体、例えば塩化スルホニル、臭化物、またはスルホニルアンモニウム塩などと反応させる。前記モノ−、ジ−、トリ−またはテトラヒドロキシ化合物を、また、適当な無水スルホン酸と反応させてもよい。そのような反応は、酸ハロゲン化物などとの反応についての上記の説明したような条件下にて行うことができる。
【0061】
式(I)の化合物を、R0、R1、R2および/またはR3が、異なる生物学的保護基または、好ましくは、同じ生物学的保護基であるように製造することができる。好ましい保護基としては、−CH3、−C(O)C(CH3)3、−C(O)C6H5および−SO2(CH2)3CH3が含まれる。
【0062】
式(5a)の化合物(ここに、Yは−S−、−NH−、−NMe−または−CH2−である)は、当業者によく知られている方法により同様に製造することができる。例えば、式(5a)の化合物の前段階の合成を、C.R. Schmidt et al.、 Bioorg. Med. Chem. Lett. 9 (1999) 523−528に教示のように行うことができる。
【0063】
すべての溶媒はACS級であり、供給された状態で用いた。すべての試薬は、商業的に利用可能であり、他に特記しない限りさらに精製することなく用いた。LCMSデータを、Hewlett Packard 1100シリーズの装置で記録した。35℃でWaters Symmetry C18 2.1×50mmカラムを用い、2分間かけて5%アセトニトリル−95%水(0.05% TFA)〜95%アセトニトリル−5%水(0.05% TFA)で処理し、3分間保持する方法を用いた。1H NMRスペクトルを、他に特記しない限り、Varian 300 分光計で300MHzにて記録した。
【0064】
製造例1
(2−ベンジル−6−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノン
【化8】

臭化ベンジルマグネシウム(1.5mL、3M)を、室温(r.t.)で (2−ジメチルアミノ−6−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノン(1.0g、2.28mmol)のTHF(10mL)中撹拌溶液に添加した。30分間混合液を撹拌し、飽和NaHCO3でクエンチした。反応混合液をCH2Cl2で希釈し、水および塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過および濃縮した。粗生成物を、さらなる精製なしに用いた。
【0065】
製造例2
(2−ベンジル−6−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノール
【化9】

室温で粗(2−ベンジル−6−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノンをTHF(10 mL)中に溶解した。撹拌しながら、LAH溶液(1M/THF 3mL)を滴下添加した。撹拌を20分間継続し、NaHCO3水溶液でクエンチした。反応混合液をCH2Cl2で希釈し、水および塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過および濃縮した。粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(0−5%(MeOH中2M NH3)/CH2Cl2)で精製し、(2−ベンジル−6−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノール(755 mg、84%、2工程)を得た。
1H NMR:(CDCl3、300 MHz) δ7.58 (d、J=8.5 Hz、1H)、7.17−7.30 (m、7H)、6.77−6.83 (m、3H)、6.25 (s、1H)、4.25 (s、2H)、4.02 (t、J=6.2 Hz、2H)、3.78 (s、3H)、3.20 (br. s、1H)、2.70 (t、J=6.2 Hz、2H)、2.47 (br. s、4H)、1.56−1.63 (m、4H)、1.40−1.47 (m、2H)
【0066】
実施例1
11−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−6,11−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,3−d]チオフェン−3−オール・トリフルオロ酢酸
【化10】

BBr3(15μL)を、 (2−ベンジル−6−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノール(100 mg、0.21 mmol)のCH2Cl2(2.5 mL)中撹拌溶液に添加した。室温で30分間撹拌し、メタノールおよび臭素スカベンジャーとして作用する2−メチル−1−ブテンでクエンチした。SCXカラムに粗生成物を添加し、MeOHで洗浄し、1M NH3/MeOHで抽出した。生成物を、分離(分取)用HPLCにより精製し、11−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−6,11−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,3−d]チオフェン−3−オールのトリフルオロ酢酸塩(73mg、65%)を得た。
1H NMR:(CD3OD、300MHz) δ7.25−7.34 (m、3H)、7.13−7.20 (m、4H)、6.82 (d、J=8.8Hz、2H)、6.70 (dd、J=8.8、2.2Hz、2H)、5.38 (t、J=6.2Hz、1H)、4.38 (dd、J=20.9Hz、3.7Hz、 1H)、4.12−4.23 (m、3H)、3.53 (br. d、J=11.7Hz、2H)、3.44 (t、J=4.8Hz、2H)、2.97 (br. t、J=12.1Hz、2H)、1.66−1.92 (m、5H)、1.45−1.55 (m、1H)
LCMS:3.016分;m/z=456(M+H)+−TFA
【0067】
実施例2
11−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−6,11−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,3−d]チオフェン−3,8−ジオール・トリフルオロ酢酸
【化11】

標記化合物を、上述の実施例1にて説明したと同様の方法を用いて、臭化ベンジルマグネシウムの代わりに商業的に利用可能な3−メトキシベンジルマグネシウム塩化物を用いて製造した。
1H NMR:(CD3OD、300MHz) δ 7.29(d、J=8.8Hz、1H)、7.12−7.16(m、3H)、7.07 (d、J=8.4Hz、1H)、6.80 (d、J=8.8Hz、2H)、6.67−6.72 (m、2H)、6.61 (dd、J=8.4、2.6Hz、1H)、5.24 (t、J=3.0Hz、1H)、4.30 (dd、J=20.9、3.3Hz、1H)、4.19 (t、J=5.1Hz、2H)、4.06 (dd、J=20.9、2.9Hz、1H)、3.51 (br. d、J=11.7Hz、2H)、3.41 (t、J=4.8Hz、2H)、2.94 (br. t、J=12.5Hz、2H)、1.67−1.90 (m、5H)、1.44−1.53 (m、1H)
LCMS: 2.70分; m/z=472 (M+H)+−TFA
【0068】
実施例3
11−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−6,11−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,3−d]チオフェン−3,10−ジオール・トリフルオロ酢酸
【化12】

標記化合物を、上述の実施例1にて説明したと同様の方法を用いて、臭化ベンジルマグネシウムの代わりに商業的に利用可能な3−メトキシベンジルマグネシウム塩化物を用いて製造した。
1H NMR:(CD3OD、300MHz) δ 7.49 (d、J=8.8Hz、1H)、7.26 (d、J=8.8Hz、2H)、7.15 (d、J=2.2Hz、1H)、7.03 (t、J=7.7Hz、1H)、6.74−6.84 (m、4H)、6.63 (d、J=7.7Hz、1H)、5.62 (br. s、1H)、4.37 (dd、J=20.5、2.6Hz、1H)、4.09−4.21 (m、3H)、3.51 (br. d、J=12.1Hz、2H)、3.41 (t、J=4.8Hz、2H)、2.94 (br. t、J=12.1Hz、2H)、1.66−1.93 (m、5H)、1.44−1.53 (m、1H)
LCMS: 2.87分; m/z=472 (M+H)+−TFA
【0069】
実施例4
11−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−6,11−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,3−d]チオフェン−3,9−ジオール
【化13】

標記化合物を、上述のスキーム1にて説明したと同様の方法を用いて、臭化ベンジルマグネシウムの代わりに商業的に利用可能な4−メトキシベンジルマグネシウム塩化物を用いて製造した。
1H NMR:(CD3OD、300MHz) δ 7.31 (d、J=8.8Hz、1H)、6.98−7.20 (m、4H)、6.84 (d、J=8.8Hz、2H)、6.63−6.74 (m、3H)、5.29 (br. s、1H)、4.23−4.30 (m、2H)、4.08 (d、J=20.5Hz、2H)、3.45−3.60 (m、4H)、2.95−3.06 (m、2H)、1.71−1.92 (m、5H)、1.48−1.5 (m、1H)
【0070】
製造例3
(2,6−ジメトキシ−ナフタレン−1−イル)−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノン
【化14】

撹拌棒、温度プローブおよびN2ラインを備えた乾燥丸底フラスコ中にて、周囲温度でCH2Cl2(5容積当量)中に2,6−ジメトキシナフタレン(1.0当量)を溶解した。溶液を氷浴中にて0℃に冷却し、4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−ベンゾイル・塩化物(1.1当量)を添加した。塩化アルミニウム(2.0当量)を添加した。反応を完了させることが決定すれば、1N NaOHでゆっくり反応をクエンチし、水およびCH2Cl2を添加して希釈する。水層をCH2Cl2(1×20mL)で洗浄した。有機抽出物を合し、ブラインで洗浄し、乾燥した(Na2SO4)。粗生成物をメタノールから再結晶化し、(2,6−ジメトキシ−ナフタレン−1−イル)−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノンを得た(平均収率68%)。
【0071】
製造例4
(2−ヒドロキシ−6−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノン
【化15】

均圧付加漏斗(pressure equalizing addition funnel)、撹拌棒およびN2源を備えた三つ口丸底フラスコ中にて、CH2Cl2(10容積当量)中に(2,6−ジメトキシ−ナフタレン−1−イル)−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノンを溶解した。氷/塩水浴中でフラスコを冷却し、CH2Cl2(1.2当量)に1.0M BCl3溶液を滴下添加した。反応溶液が濃紅色に変化し、温度が最初に5℃上昇した。1時間以内にすべての開始物質がなくなった(TLC(1:1、エーテル:石油エーテル)により測定)。反応をメタノール(5当量)でクエンチし、室温まで温めた。有機溶液をCH2Cl2(1容積当量)で希釈し、1.0M NaHCO3溶液(5 容積当量)を添加し、1時間撹拌した。水層と有機層を分離した。水層をCH2Cl2(1容積)で洗浄し、有機層を合し、飽和NH4Clで洗浄し、Na2SO4で乾燥した。生成物をカラムクロマトグラフィー(50/1 シリカゲル)によりCH2Cl2/ヘキサン(3/1)で精製し、(2−ヒドロキシ−6−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノンを得た(代表的な収率87 %)。
【0072】
製造例5
トリフルオロメタンスルホン酸 6−メトキシ−1−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−ベンゾイル]−ナフタレン−2−イルエステル
【化16】

撹拌棒およびN2源を備えた三つ口丸底フラスコにて、CH2Cl2(10容積)中に(2−ヒドロキシ−6−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノンを溶解し、氷/塩水浴中で0℃に冷却した。ピリジン (1.3当量)を添加した。トリフルオロメタンスルホニル塩化物(1.2当量)を、15分かけてシリンジを通して添加した。黄色スラリーが、この添加でオレンジに変化した。15分後に、HPLC分析により反応の完了を確認した。反応をH2O(10 容積)でクエンチし、1N HCl (5 容量)で洗浄し、1.0N NaHCO3で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。濃縮後、きれいな黄色泡状物としてトリフルオロ−メタンスルホン酸 6−メトキシ−1−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−ベンゾイル]−ナフタレン−2−イルエステルを、定量的収率にて得た。生成物をさらなる精製無しに用いた。
【0073】
製造例6
[2−(4−フルオロ−ベンジル)−6−メトキシ−ナフタレン−1−イル]−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノン
【化17】

4−フルオロベンジル亜鉛・塩化物(0.5 M/THF 4mL)を、室温でトリフルオロメタンスルホン酸 6−メトキシ−1−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−ベンゾイル]−ナフタレン−2−イル エステル (525 mg)、Pd(dba)2(68 mg)、dppf (66 mg)およびBu4NI (1.1g)のTHF/NMP(2mL/1.5mL)中撹拌溶液に加えた。混合液を2時間加熱還流し、水でクエンチした。混合液をCH2Cl2で希釈し、水およびブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過および濃縮した。粗生成物をSCXカートリッジに充填し、MeOHで洗浄し、生成物を2M NH3/MeOHで抽出した。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(0−5% (MeOH中2M NH3/CH2Cl2))で精製し、[2−(4−フルオロ−ベンジル)−6−メトキシ−ナフタレン−1−イル]−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノンを得た(380mg、78%)。
【0074】
製造例7
[2−(4−フルオロ−ベンジル)−6−メトキシ−ナフタレン−1−イル]−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノール
【化18】

LAH溶液(2mL、1M/THF)を、室温で[2−(4−フルオロ−ベンジル)−6−メトキシ−ナフタレン−1−イル]−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノン(380mg)のTHF(5mL)中撹拌溶液に添加した。混合液を1時間加熱還流し、室温に冷却し、NaHCO3水溶液でクエンチした。混合液をCH2Cl2で希釈し、水およびブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過および濃縮し、[2−(4−フルオロ−ベンジル)−6−メトキシ−ナフタレン−1−イル]−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノールを得た。生成物をさらなる精製無しに用いた。
【0075】
実施例5
10−フルオロ−12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3−オール
【化19】

BBr3(0.3mL)を、CH2Cl2(10mL)中にて粗[2−(4−フルオロ−ベンジル)−6−メトキシ−ナフタレン−1−イル]−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノールに添加した。室温で1時間撹拌し、MeOHおよび2−メチル−2−ブテンでクエンチした。粗生成物をSCXカートリッジに充填し、MeOHで洗浄し、2M NH3/MeOHで抽出した。生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(0−5% (MeOH中2M NH3/CH2Cl2))で精製し、10−フルオロ−12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3−オールを得た(258mg、72%、2工程)。
1H NMR:(CD3OD、300MHz) δ 7.97(d、J=9.2Hz、1H)、7.57 (d、J=8.4Hz、1H)、7.35 (d、J=8.4Hz、1H)、7.21−7.30 (m、2H)、7.11 (d、J=2.6Hz、1H)、7.04 (dd、J=8.8、2.6Hz、1H)、6.98 (d、J=8.8Hz、2H)、6.97 (dt、J=8.8、2.6Hz、1H)、6.63 (d、J=8.8Hz、2H)、5.89 (s、1H)、3.86−4.09 (m、2H)、3.88 (t、J=5.5Hz、2H)、2.60 (t、J=5.5Hz、2H)、2.42 (br. s、4H)、1.50−1.60 (m、4H)、1.35−1.42 (m、2H)
LCMS: 3.24分; m/z=468 (M+H)+
ラセミ体である10−フルオロ−12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3−オールをキラルHPLCによりその鏡像異性体に分離し、実施例6および実施例7の化合物を得た。
【0076】
実施例8
12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3,10−ジオール
【化20】

標記化合物を、上記の実施例5にて説明したと同様の方法を用いて、4−フルオロベンジル亜鉛塩化物のかわりに商業的に利用可能な4−メトキシベンジル亜鉛塩化物を用いて製造した。
粗生成物を分取HPLCにより精製し、12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3,10−ジオールのトリフルオロ酢酸塩を得た。
1H NMR:(CD3OD、300 MHz) δ 7.97 (d、J=9.2Hz、1H)、7.54 (d、J=8.4Hz、1H)、7.33 (d、J=8.4Hz、1H)、6.96−7.12 (m、6H)、6.61−6.67 (m、3H)、5.82 (s、1H)、3.85−4.06 (m、4H)、3.39 (br. d、J=12.1Hz、2H)、3.25 (t、J=5.1Hz、2H)、2.74−2.83 (m、2H)、1.61−1.81 (m、5H)、1.35−1.43 (m、1H)。
LCMS:2.80分; m/z=466 (M+H)+−TFA
【0077】
実施例9
12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3,9−ジオール
【化21】

標記化合物を、上記の実施例5にて説明したと同様の方法を用いて、4−フルオロベンジル亜鉛塩化物のかわりに商業的に利用可能な3−メトキシベンジル亜鉛塩化物を用いて製造した。粗生成物を分取HPLCにより精製し、12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3,9−ジオールのトリフルオロ酢酸塩を得た。
1H NMR:(CD3OD、300 MHz) δ 7.98 (d、J=9.2Hz、1H)、7.55 (d、J=8.4Hz、1H)、7.34 (dd、J=8.4、2.9Hz、2H)、7.12 (d、J=2.6Hz、1H)、6.99−7.05 (m、3H)、6.74 (d、J=2.2Hz、1H)、6.67 (app. d、J=8.8Hz、3H)、5.84 (s、1H)、3.85−4.10 (m、4H)、3.41 (br. d、J=11.7Hz、2H)、3.26−3.32 (m、2H)、2.81 (br. t、J=12.1Hz、2H)、1.61−1.83 (m、5H)、1.26−1.45 (1H)
LCMS: 2.77分; m/z=466 (M+H)+−TFA
【0078】
ラセミ体である12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3,9−ジオールをキラルHPLCによりその鏡像異性体に分離し、実施例10および実施例11の化合物を得た。
【0079】
実施例12
12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3,11−ジオール
【化22】

標記化合物を、上記の実施例5にて説明したと同様の方法を用いて、4−フルオロベンジル亜鉛塩化物のかわりに商業的に利用可能な3−メトキシベンジル亜鉛塩化物を用いて製造した。粗生成物を分取HPLCにより精製し、12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3,11−ジオールのトリフルオロ酢酸塩を得た。
1H NMR:(CD3OD、300MHz) δ 8.05 (d、J=9.2Hz、1H)、7.6(d、J=8.4Hz、1H)、7.38 (d、J=8.4Hz、1H)、7.11−7.18 (m、3H)、6.97−7.08 (m、3H)、6.81 (d、J=7.3Hz、1H)、6.72 (d、J=8.8Hz、2H)、6.40 (s、1H)、4.17 (t、J=5.1Hz、2H)、3.98 (ABq、J=18.7Hz、2H)、3.49(br. d、J=7.0Hz、2H)、3.39 (t、J=4.8Hz、2H)、2.92 (br. t、J=12.5Hz、2H)、1.64−1.89 (m、5H)、1.43−1.50 (m、1H)。
LCMS:2.88分; m/z=466 (M+H)+−TFA
【0080】
実施例13
12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7、12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3、8−ジオール
【化23】

標記化合物を、上記の実施例5にて説明したと同様の方法を用いて、4−フルオロベンジル亜鉛塩化物のかわりに商業的に利用可能な2−メトキシベンジル亜鉛塩化物を用いて製造した。
1H NMR:(CD3OD、300 MHz) δ 7.95 (d、J=9.2Hz、1H)、7.52 (d、J=8.4Hz、1H)、7.36 (d、J=8.4Hz、1H)、7.11 (d、J=2.6Hz、1H)、6.93−7.03 (m、5H)、6.64 (t、J=4.4Hz、1H)、6.48 (d、J=8.4Hz、2H)、5.80 (s、1H)、4.28 (d、J=20.2Hz、1H)、3.82 (d、J =19.8Hz、1H)、3.70 (t、J=5.5Hz、2H)、2.55 (t、J=5.5Hz、2H)、2.39 (br. s. 4H)、1.47 (m、4H)、1.34 (br. s、2H)
LCMS: 2.83分; m/z=466 (M+H)+
【0081】
生物学的検査法
一般的調製方法
1ウェル当たり0.025μCiの3H−エストラジオール(118 Ci/mmol、1 mCi/mlにてNEN #NET517)、10ng/ウェルのERアルファ受容体またはERベータ受容体(PanVera社)を用いて、50mM Hepes、pH 7.5、1.5mM EDTA、150mM NaCl、10% グリセロール、1mg/ml オボアルブミンおよび5mM DTTを含む緩衝液中で、競合結合分析を行った。競合化合物を、10の異なる濃度で添加した。非特異的結合を、1μMの17β−エストラジオールの存在下にて測定した。結合反応液(140μl)を、室温で4時間インキュベートし、次に冷DCC緩衝液70μlを各反応液に添加した(DCC緩衝液は、分析緩衝液50ml当たり、活性炭0.75g (Sigma)およびデキストラン0.25g(ファルマシア)を含む)。プレートを、オービタルシェーカー(orbital shaker)上にて4℃で8分間混合した。次に、プレートを4℃で10分間、3,000rpmにて遠心した。混合液のアリコート120μlを、他の96ウェルの白色平底プレート(Coster)に移し、Wallac Optiphase「Hisafe 3」シンチレーション液175μlを各ウェルに添加した。プレートを密封し、オービタルシェーカー上で勢いよく振とうした。2.5時間インキュベーション後、Wallac Microbetaカウンター中にてプレートを読み取った。データを、10μMにおけるIC50および阻害%の測定に用いた。3H−エストラジオールのKdを、ERアルファ受容体およびERベータ受容体に対する飽和結合により測定した。化合物のIC50値を、Cheng−Prusoff式を用いてKiに変換し、飽和結合解析によりKdを測定した。
【0082】
イシカワ・ヒト子宮内膜腫瘍細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS) (V/V) (Gibco BRL)を補ったMEM (Earleの塩およびL−グルタミン入りの最小必須培地、Gibco BRL、Gaithersburg、MD)中にて維持した。分析の1日前に、成長培地を分析培地である、5%デキストランコート活性炭で処理したウシ胎児血清(DCC−FBS) (Hyclone、Logen、UT)、L−グルタミン(2mM)、MEMピルビン酸ナトリウム(1 mM)、HEPES (N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸]2mM)、すべてGibco BRL)を補ったDMEM/F−12 (3:1) (ダルベッコの修飾イーグルス培地:栄養混合物F−12、3:1混合物、フェノール・レッドなし、Gibco BRL)に変換した。一晩インキュベーション後、イシカワ細胞をCa+2およびMg+2 (Gibco BRL)なしのダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水液(1×) (D−PBS)ですすぎ、0.25%トリプシン/EDTA、フェノール・レッドなし (Gibco BRL)で3分間インキュベーションによりトリプシン処理した。細胞を分析培地に再懸濁し、250,000細胞/mlとした。100μl培地中の約25,000細胞を、平底96ウェル・ミクロカルチャー・プレート(Costar 3596)に添加し、24時間37℃で5% CO2 加湿インキュベーター中にてインキュベートした。次の日、化合物の連続希釈液を、分析培地にて製造した(分析中終濃度の6倍)。前記解析をデュアル・モード、アゴニスト・モードおよびアンタゴニスト・モードで行った。アゴニスト・モードについて、プレートに25μl/ウェルの分析培地を入れ、次に25μl/ウェルの希釈した化合物を入れた(終濃度の6倍)。アンタゴニスト・モードについて、プレートに25μl/ウェルの6nM E2 (β−エストラジオール、シグマ、セントルイス、 MO) を入れ、次に25μl/ウェルの希釈した化合物を入れた(終濃度の6倍)。37℃で5%CO2 加湿インキュベーター中にてさらに48時間インキュベーション後、培地をウェルから吸引し、100μlの新鮮な分析培地を各マイクロカルチャーに添加した。化合物の連続希釈液を製造し、上記のように細胞に添加した。37℃で5% CO2 加湿インキュベーター中にてさらに72時間インキュベーション後、前記分析を培地の除去によりクエンチし、プレートをダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水液(1×) (D−PBS) (Gibco BRL)で2度すすいだ。プレートを5分間乾燥し、少なくとも1時間−70℃で冷凍した。その後、プレートをフリーザーから出し、室温で溶解した。各ウェルに対し、100μlの1−Step(登録商標)PNPP (Pierce Chemical Company、 Rockford、 IL)を添加した。インキュベーションの20分後、分光光度計で405nmにてプレートを読み取った。データを、線形補間法にあてはめ、EC50値(アゴニスト・モードに関して)またはIC50値(アンタゴニスト・モードに関して)を得た。アゴニスト・モードについて、各化合物の%効率をタモキシフェンに対する応答に対して算出した。アンタゴニスト・モードについて、各化合物の%効率をE2 (1nM)のみに対して算出した。
【0083】
MCF−7乳腺癌細胞(ATCC HTB 22)を、10%ウシ胎児血清(FBS) (V/V)、L−グルタミン(2mM)、ピルビン酸ナトリウム(1mM)、HEPES((N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸]10mM)、非必須アミノ酸(0.1mM)およびペニシリン・ストレプトマイシン(1×)を補ったMEM(最小必須培地、フェノール・レッドなし、Gibco BRL)中にて維持した。分析の7日前に、MCF−7細胞を、10%FBSの代わりに10%デキストランコート活性炭で処理したウシ胎児血清(DCC−FBS)分析培地を補った維持培地と同様の分析培地に移した。MCF−7細胞を、10×トリプシンEDTA(フェノール・レッドなし、Gibco BRL)を用いてフラスコからはがし、(Ca++/Mg++なしのHBSS (フェノール・レッドなし))で1倍希釈した。細胞を、分析培地中にて80,000細胞/mlに調製した。約8,000細胞(100μl)を、96ウェル Cytostar T シンチレーション・プレート (アマシャム)中各ウェルに添加し、転移後24時間37℃で5% CO2 加湿インキュベーター中にてインキュベートし、細胞を接着させ、そして平衡化した。薬剤の連続希釈液を、分析培地中4倍の最終所望濃度で製造した。薬剤希釈液の50μlアリコート(4倍最終分析濃度)を、デュプリケイトでウェルに移し、次にアゴニスト・モードについては50μl分析培地、アンタゴニスト・モードについては40pMのE2を加え、最終容量200μlとした。各アゴニスト・プレートについて、基底レベル(培地)および最大刺激レベル(1μM E2を用いて)を測定した。各アンタゴニスト・プレートについて、基底レベル(培地)およびE2 (10pM)のみの対照を測定した。37℃で5% CO2 加湿インキュベーター中にてさらに48時間経過後、0.01μCiの 14C−チミジン(52 mCi/mmol、50μCi/μl、アマシャム)を含む20μlの分析培地を、各ウェルに添加した。プレートを同じインキュベーター中で一晩インキュベートし、その後Wallac Microbetaカウンターにて数えた。データを、アンタゴニスト・モードに関して1μMにおけるIC50および阻害%を測定するため平均化した。アゴニスト・モードに関して、EC50および最大E2刺激の割合(%)ならびに最大刺激の濃度を計算した。
【表2】

【0084】
一般的なラット調整方法
75日齢(他に特記しない限り)のメスのSprague Dawleyラット(体重200〜225g)を、Charles River研究室(Portage、MI)から入手した。前記動物は、Charles研究室にて両側卵巣摘除(OVX)されるか、または疑手術(sham)を施され、その1週間後に出荷されたものである。到着時に、それらを1ケージ当たり3または4匹ずつで金属製の掛けケージ中、飼料(カルシウム含有量約0.5%)および水を自由に摂取しうる状態で1週間飼育した。室温を、40%の最小相対湿度で22.2℃±1.7℃に維持した。部屋の光周期を、明期12時間と暗期12時間とした。
【0085】
投与レジメン組織収集:1週間の順応期間後(すなわち、OVX後2週間)、式(I)の化合物(「F−I」)の毎日投与を開始した。17α−エチニルエストラジオールまたはF−Iを、他に特記しない限り、1%カルボキシメチルセルロース中の懸濁液として、または20%シクロデキストリン中に溶解して経口的に与えた。動物に、4日間毎日投与した。投与レジメンの後に、動物の体重を測定し、ケタミン(ketamine):キシラジン(Xylazine)(2:1、v:v)混合物で麻酔し、血液試料を心臓穿刺により収集した。その後、動物をCO2で窒息状態にし、子宮を正中切開により採取し、湿潤子宮重量を測定した。17α−エチニルエストラジオールは、Sigma Chemical Co.、St. Louis、MOから入手した。
【0086】
心血管疾患/高脂血症
上記の血液試料を、室温で2時間で凝固させ、血清を3000rpmで10分間の遠心にて得た。血清コレステロールを、Boehringer Mannheim 診断 高性能コレステロール分析器を用いて測定した。簡単に言えば、前記コレステロールを、コレスト−4−エン−3−オンおよび水素ペルオキシドに酸化した。その後、過酸化水素を、ペルオキシダーゼ存在下でフェノールおよび4−アミノフェナゾンと反応させ、p−キノンイミン・色素(500nmで分光光度的に読み取られる)を製造した。その後、コレステロール濃度を、標準曲線に対して測定した。全体の分析を、Biomek Automated Workstationを用いて自動で行った。
【0087】
子宮好酸球のペルオキシダーゼ(EPO)分析
上で得た子宮を、酵素分析の時まで4℃で維持した。その後、子宮を0.005% トリトンX−100を含む50容量の 50 mM トリス緩衝液 (pH8.0)中にてホモジナイズした。トリス緩衝液中0.01% 水素ペルオキシドおよび10mM O−フェニレンジアミン(終濃度)の添加後、吸光度の増加を450nmで1分間モニターした。子宮中の好酸球の存在は、化合物のエストロゲン活性を示す。15秒間隔の最大速度を、最初の、反応曲線の直線部から測定した。
【0088】
骨喪失(骨粗鬆症)の阻害試験方法
上述の一般的な調製方法の後、ラットを35日間毎日処置し(各処置群につき6匹)、36日目に二酸化炭素窒息により犠牲にした。35日間とは、本明細書にて記載したように測定した骨密度における最大減少を考慮するのに十分な日数である。犠牲の時、他の組織なしに子宮を採取し解剖し、そして完全な卵巣摘除に随伴するエストロゲン欠乏を確認するために、湿潤重量を測定する前に液体内容物を除いた。子宮重量は、卵巣摘除に対応して、通常約75%減少していた。その後、子宮を10%中性緩衝化ホルマリンに置換し、組織学的分析を行った。
【0089】
右の大腿骨を切除し、デジタル化X線を発生させ、骨幹端部を画像分析プログラム(NIHイメージ)により分析した。これら動物の頸骨の近位局面を、定量的コンピュータ断層撮影により、スキャンした。上記の方法に従い、20%ヒドロキシプロピル β−シクロデキストリン中のF−Iまたはエチニル エストラジオール(EE2)を、試験動物に経口的に投与した。F−Iは、エストロゲンまたはプロゲスチンと組合せても有用である。
【0090】
子宮線維症試験方法
試験1: 子宮線維症を有する3〜20人の女性に、F−Iを投与した。投与した化合物の量は、0.1〜1000mg/日であり、投与期間は、3ヶ月である。投与期間および投与の停止後3ヶ月までの期間中、子宮線維症への影響について前記女性達を観察した。
試験2: 試験1と同様の方法を用いた。ただし、投与期間は6ヶ月。
試験3: 試験1と同様の方法を用いた。ただし、投与期間は1年。
試験4: 性的に成熟したメスのモルモットにおける平滑筋腫の誘導に、長期のエストロゲン刺激を用いた。動物に、2〜4ヶ月間または腫瘍発生までの間注入により1週間に3〜5回エストラジオールを投与した。F−Iまたは賦形剤からなる処置剤を、3〜16週間毎日投与し、その後、動物を犠牲にし、子宮を採取し、腫瘍退化について分析した。
試験5: ヒト平滑筋腫由来の組織を、性的に成熟し、去勢したメスのヌードマウスの腹腔および/または子宮筋層に移植した。移植した組織の増殖を誘導するため、外生エストロゲンを供給した。いくつかの場合では、採取した腫瘍細胞を移植前にin vitroで培養した。F−Iまたは賦形剤からなる処置剤を、3〜16週間毎日胃洗浄により供給し、移植片を摘出し、増殖または退化について測定した。犠牲の時に、子宮を採取し、臓器の状態を評価した。
試験6: ヒト子宮線維腫由来の組織を採取し、第一次の形質転換していない培養物としてin vitroで維持した。手術標本を滅菌メッシュまたはふるいに強引に通すか、あるいは周囲の組織を除いてほぐし、単一細胞の懸濁液を製造した。細胞を、10%血清および抗生物質を含む培地中にて維持した。エストロゲン存在下または不存在下での成長率を測定した。細胞を、補体成分C3を製造する能力、および成長因子ならびに成長ホルモンに対する応答について分析した。プロゲスチン、GnRH、F−Iおよび賦形剤で処置した後の増殖反応について、In vitroで培養物を分析した。ステロイドホルモン受容体の濃度を毎週に評価し、重要な細胞特性がin vitroで維持されるかどうかを測定した。5〜25人の患者由来の組織を用いた。
試験7: 平滑筋腫由来のELT 細胞系のエストロゲン刺激による増殖を阻害するF−Iの能力を、実質的に引用により本明細書に包含される教示であるFuchs−Youngらの「Inhibition of Estrogen−Stimulated Growth of Uterine Leiomyomas by Selective Estrogen Receptor Modulatars」、Mol. Car.、17(3):151−159 (1996)の記載と同様にして測定した。
【0091】
子宮内膜症試験方法
試験1: 12〜30匹の大人のCD株のメスのラットを、試験動物として用いた。それらを、同じ数の3つのグループに分けた。すべての動物の発情周期をモニターした。発情前期のある日、それぞれのメスに外科手術を行った。各グループ中のメスから、左の子宮角を取り、小さな四角形に切断し、その四角形を、腸間膜血流に隣接する様々な部位にゆるく縫合した。さらに、グループ2のメスは、卵巣を取り除いた。手術の翌日から、グループ1および2の動物に14日間水を腹腔内投与し、一方、グループ3の動物に同じ期間体重1キログラム当たり1.0mgのF−Iを腹腔内投与した。14日間の処置後、それぞれのメスを犠牲にし、可能な場合は子宮内膜移植片、副腎、残存している子宮および卵巣を取り出し、組織学的検査用に調製した。卵巣および副腎の重さを測った。
【0092】
試験2: 12〜30匹の大人のCD株のメスのラットを、試験動物として用いた。それらを、同じ数の2つのグループに分けた。すべての動物の発情周期をモニターした。発情前期のある日、それぞれのメスに外科手術を行った。各グループのメスから、左の子宮角を取り、小さな四角形に切断し、その四角形を、腸間膜血流に隣接する様々な部位にゆるく縫合した。手術後約50日に、グループ1の動物に21日間水を腹腔内投与し、一方、グループ2の動物に同じ期間体重1キログラム当たり1.0mgのF−Iを腹腔内投与した。21日間の処置後、それぞれのメスを犠牲にし、子宮内膜移植片および副腎を取り出し、重さを測定した。前期移植片を、増殖の兆候について測定した。発情周期をモニターした。
【0093】
試験3: 子宮内膜組織のオートグラフを、ラットおよび/またはウサギにおける子宮内膜症の誘導に用いた。生殖的に成熟期にあるメスの動物に、両方の卵巣摘出を施し、その後特定かつ一定のホルモン濃度を供するために、エストロゲンを体外から供給した。自己の子宮内膜組織を、5〜150匹の動物の腹膜に移植し、移植した組織の増殖を誘発するためにエストロゲンを供給した。本発明の化合物からなる処置剤を、3〜16週間毎日胃洗浄により供し、移植片を取り出し、増殖または退化について測定した。犠牲の時に、無傷の子宮角を採取し、子宮内膜の状態を評価した。
【0094】
試験4: ヒト子宮内膜病変由来の組織を、性的に成熟し去勢したメスのヌードマウスの腹膜に移植した。移植した組織の増殖を誘発するために、外生エストロゲンを供した。いくつかの場合に、採取した子宮内膜細胞を、移植前にin vitroで培養した。F−Iからなる処置剤を、3〜16週間毎日胃洗浄により供し、移植片を取り出し、増殖または退化について測定した。犠牲の時に、子宮を採取し、無傷の子宮内膜の状態を評価した。
【0095】
試験5: ヒト子宮内膜病変由来の組織を採取し、第一次の形質転換していない培養物としてin vitroで維持した。手術による標本を滅菌メッシュまたはふるいに強引に通すか、あるいは周囲の組織を除いてほぐし、単一の細胞懸濁液を製造した。細胞を、10%血清および抗生物質を含む培地中にて維持した。エストロゲンの存在下または不存在下での成長率を測定した。細胞を、補体成分C3を製造する能力、および成長因子ならびに成長ホルモンに対する応答について分析した。プロゲスチン、GnRH、F−Iおよび賦形剤で処置した後の増殖反応について、In vitroで培養物を評価した。ステロイドホルモン受容体の濃度を、週に1度評価し、重要な細胞特性がin vitroで維持されるかどうかを測定した。5〜25人の患者由来の組織を用いた。
【0096】
式(I)の化合物のエストロゲンとの併用
閉経間近の女性および閉経後の女性は、しばしばホルモン補充療法(HRT)を受け、循環する内生エストロゲンの低下に関連する負の影響、例えば身体のほてりに対処している。しかしながら、HRTは、子宮癌および乳癌を含む任意の癌の危険性の増加に関連している。F−Iを、これらの危険性を抑制するためにHRTと併用することができる。
【0097】
乳癌の防止
本発明はまた、新たな(de novo)乳癌の発達の危険にある受益者にF−Iを投与することにも関する。本明細書に用いた用語「新たな(de novo)」とは、最初に、正常な乳腺細胞の、癌あるいは悪性細胞への形質転換または変性がないことを意味する。そのような形質転換は、同一細胞または娘細胞の段階で、進化の過程を経て起こるか、または単独で重要な現象として生じる。この新たな過程は、初代の腫瘍部位から新規の位置への転移、移植、またはすでに形質転換した細胞あるいは悪性細胞の拡散とは異なる。
【0098】
乳癌が発生する危険性の見あたらない人は、新たな乳癌が発生しうる人であり、上記の通常の危険性の疾患可能性の証拠または疑いがなく、かつ疾患を有するという診断を今までに受けたことがない人である。乳癌の発達をもたらす最も高い危険因子は、たとえ、寛解期にその存在の証拠がなくとも、疾患に罹患していた既往歴または従前における疾患の発生である。
【0099】
発癌性物質N−ニトロソ−N−メチル尿素の投与によるラットにおける乳腺腫瘍の誘発は、乳癌研究のよく許容されている動物モデルであり、化学抗癌剤の効果を分析するために適当であることが分かっている。
2つの別々の研究にて、55日齢のメスのSprague−Dawleyラットに、様々な量のF−I、(Z)−2−[4−(1,2−ジフェニル−1−ブテニル)フェノキシ]−N,N−ジメチルエタンアミン塩基(タモキシフェン塩基)または対照を、混合した食事を自由に摂取させる前の1週間の間、体重1キログラム当たり50mgのN−ニトロソ−N−メチル尿素を静脈投与(研究1)または腹腔内投与(研究2)した。
【0100】
研究1にて、60mg/kgの餌および20mg/kgの餌の飼料投与量は、試験動物の体重1kg当たり概算3mgおよび1mg比較投与量に相当する。
研究2にて、20、6、2および0.6mg/kgの餌の飼料投与量は、試験動物の体重1kg当たり概算1、0.3、0.1および0.03mg比較投与量に相当する。
ラットを毒性の兆候について観察し、体重を測定し、1週間に1度腫瘍形成について触診した。前記動物を、13週(研究1)または18週(研究2)後に犠牲にし、解剖して腫瘍を確認し、重さを量った。
【0101】
治療方法の使用および投与量
本発明はまた、エストロゲン欠乏に関連する疾患を抑制する方法、および式Iの化合物を用いる上述の方法を含む内生エストロゲンに対する異常な生理学的反応と関連する疾患を抑制する方法を提供し、所望により有効量のエストロゲンまたはプロゲスチンを患者に投与することを含む。これらの処置は、本発明の化合物がエストロゲンおよびプロゲスチンの望まない副作用を抑制している間に、患者がそれぞれの医薬の利点を受けうるため、特に骨粗鬆症を処置するためおよび血清コレステロールを低下させるために有用である。以下の、閉経後の試験におけるこれらの併用療法の活性は、併用療法が女性の閉経後症候群の症状を緩和するのに有用であることを示す。
【0102】
様々な形態のエストロゲンおよびプロゲスチンが、商業的に利用可能である。エストロゲンに基づく薬物としては、例えば、エチニルエストロゲン(0.01−0.03 mg/日)、メストラノール(0.05−0.15mg/日)、および複合型エストロゲン・ホルモン、例えばプレマリン(Premarin,登録商標)(Wyeth−Ayerst;0.3−2.5 mg/日)が含まれる。プロゲスチンに基づく薬物としては、例えば、メドロキシプロゲステロン、例えばプロベラ(Provera,登録商標)(Upjohn;2.5−10mg/日)、ノルエチルノドレール(norethylnodrel)(1.0−10.0mg/日)、およびノンエチンドロン(nonethindrone)(0.5−2.0mg/日)が含まれる。好ましいエストロゲンに基づく化合物は、プレマリン(登録商標)であり、ノルエチルノドレール(norethylnodrel)およびノンエチンドロンがプロゲスチンに基づく薬物として好ましい。
【0103】
それぞれのエストロゲンおよびプロゲスチンに基づく薬物を投与する方法は、本技術分野にて知られている方法と同じである。本発明の多くの方法に関して、式Iの化合物を1日に1〜3回継続的に投与する。ただし、周期的な治療は、特に子宮内膜症の処置に有用であり得るか、または疾患の痛みの発作に即時に用いることができる。再狭窄の場合には、治療は、医療処置、例えば血管形成手術後の短い間隔(1〜6ヶ月)に限られるかもしれない。
【0104】
本明細書にて用いた用語「患者」とは、エストロゲン欠乏に関連する疾患を抑制する必要のある、または内生エストロゲンに対する異常な生理学的反応に関連する疾患を抑制する必要のある、温血動物あるいは哺乳動物を示す。モルモット、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ハムスターおよびヒトを含む霊長類が、前記用語の意味における患者の例であると解される。好ましい患者としては、ヒトが含まれる。最も好ましい患者としては、閉経後の女性が含まれる。
【0105】
本明細書にて用いた用語「抑制」とは、防止、予防、抑止、および(病状の)進行または重症度の遅延、停止または反転、ならびに既存の特性を検査することおよび/または処置することを含む、その一般的に許容される意味を含むと定義される。本方法は、必要に応じて医学的治療および/または予防的治療を共に含む。
【0106】
用語「エストロゲン欠乏」とは、最適濃度のエストロゲンが不存在な状態を示す意味である。この濃度は、組織の機能に依存して、組織ごとに異なる。故に、いくつかの場合には、エストロゲン欠乏は、エストロゲンが全くないことであり、一方、他の場合には、エストロゲン欠乏は、適切な組織機能にとって低すぎるエストロゲン濃度を意味しうる。ヒト女性にて、エストロゲン欠乏の2つの最も一般的な原因は、閉経および卵巣摘除であるが、他の状態が原因となりうる。エストロゲン欠乏は、骨粗鬆症および心血管系への影響、例えば高脂血症、大動脈の平滑筋細胞の増殖(再狭窄)、一酸化窒素生成の減少(高血圧)および酵素PAI−1(プラズミノーゲン活性阻害剤−1)の製造の減少、すなわち血栓症を含む状態を誘導しうる。
【0107】
閉経に関連する他の病状(例えば尿失禁、膣の乾燥、自己免疫疾患の兆候の増加、および皮膚の色調の喪失)の減少または改良は、また、式Iの化合物を投与することによっても達成される。
それらの実用性に加えて、閉経後のエストロゲン欠乏に関連する状態の処置にて、本発明の化合物はまた、閉経前および閉経後の両方の組織における内生エストロゲンに対する異常な応答に関連する疾患状態の処置にも有用である。
【0108】
組織における内生エストロゲンに対する異常な細胞応答に関連する病理学的状態の一例は、エストロゲン依存性乳癌である。エストロゲン依存性乳房腫瘍細胞はエストロゲンの存在下に増殖し、この疾患の処置は、これらの細胞にエストロゲンのすべての作用を停止することである。
【0109】
他のエストロゲン依存性の病状は、子宮線維症(子宮筋腫疾患)である。特に、子宮線維症は、子宮の壁の繊維組織に欠損のある状態である。この状態は、女性における月経困難症および不妊症の原因である。この状態の正確な原因は、ほとんど不明であるが、証拠が、エストロゲンに対する繊維性組織の不適切な応答であることを示している。子宮線維症の最も一般的な処置は、コストがかかり、かつ合併症、例えば腹部癒着および感染症の形成などを生じる場合もある外科的手術を伴う。
【0110】
この範疇に入るさらに他の疾患は子宮内膜症であり、激しい痛みを伴う厳しい月経困難症の状態、子宮内膜塊または腹膜腔における内出血であり、しばしば不妊症を導く。この状態の症状の原因は、ホルモンによる制御に不適切に反応する、不適切な組織に位置する異所性の子宮内膜増殖であるように思われる。
【0111】
本明細書にて用いた用語「治療的有効量」とは、本明細書に記載した様々な病状の症状を緩和することが可能な本発明の化合物の量を意味する。本発明により投与される化合物の特定の投与量は、もちろん、例えば、投与される化合物、投与の経路、患者の状態および処置される病状を含むその件を取り巻く特定の環境により測定されうる。ヒトに用いる典型的な日用量は、約1mg〜約600 mg/日の本発明の化合物の無毒の投与濃度を含みうる。好ましい日用量は、一般に、約15mg〜約300mg/日であり得る。最も好ましい投与量範囲は、20mg〜約100mgを1日に1度から3度投与する範囲であり得る。
【0112】
本発明の化合物は、経口的、直腸的、皮下的、静脈内、筋肉内および経鼻的を含む様々な経路により投与することができる。これらの化合物は、投与の前に、主治医により決定されうる選択の剤形化されることが好ましい。故に、本発明の他の態様は、有効量の式Iの化合物、またはその製薬的に許容可能な塩を含み、所望によれば有効量のエストロゲンまたはプロゲスチンおよび製薬的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物である。
【0113】
そのような剤形中に全活性成分は、剤形の重量の0.1%〜99.9%含まれる。「製薬的に許容可能な」とは、担体、希釈剤、賦形剤および塩が、剤形の他の成分と互換性を有しており、その受益者に有害でないことを意味する。
【0114】
本発明の医薬製剤は、周知、かつ容易に入手可能な成分を用いて本技術分野にて知られている方法により製造することができる。例えば、式Iの化合物(エストロゲンまたはプロゲスチンと一緒に、または無しで)を、一般的な賦形剤、希釈剤または担体と一緒に製剤化することが可能であり、錠剤、カプセル、懸濁液、粉剤などに製剤化することができる。そのような剤形に適当な賦形剤、希釈剤および担体の例としては、以下が含まれる:充填剤および増量剤、例えばデンプン、糖、マンニトールおよびケイ酸誘導体;結合剤、例えばカルボキシメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、アルギネート、ゼラチンおよびポリビニル−ピロリドン;保湿剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えばカルシウム炭酸塩および重炭酸ナトリウム;緩溶解剤(agents for retarding dissolution)、例えばパラフィン;吸収促進剤、例えば4級アンモニウム化合物;界面活性剤、例えばセチルアルコール、グリセロールモノステアリン酸;吸着担体、例えばカオリンおよびベントナイト;そして、潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに固形ポリエチルグリコール。
【0115】
前記化合物はまた、簡便な経口投与用のエリキシル剤または溶液、または非経口的投与、例えば、筋肉内、皮下または静脈経路に適当な溶液として製剤化され得る。さらに、前記化合物は、持続放出投与剤形などとしての剤形化によく適している。剤形は、活性成分のみを放出する構成、または好ましくは特定の生理学的位置に、可能な限り時間をかけて放出する構成であり得る。前記コーティング、エンベロープおよび保護マトリックスは、例えば、高分子物質またはワックスから作製され得る。
【0116】
式Iの化合物のみ、または本発明の医薬と組合せた式Iの化合物は、一般的に、便利な剤形にて投与されうる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

[式中、R1は、−H、−OH、−O(C1−C4アルキル)、−OCOC6H5、−OCO(C1−C6アルキル)または−OSO2(C2−C6アルキル)であり;
R0、R2およびR3は、それぞれ独立して−H、−OH、−O(C1−C4アルキル)、−OCOC6H5、−OCO(C1−C6アルキル)、−OSO2(C2−C6アルキル)またはハロであり;
R4は、1−ピペリジニル、1−ピロリジニル、メチル−1−ピロリジニル、ジメチル−1−ピロリジニル、4−モルホリノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノまたは1−ヘキサメチレンイミノであり;
nは、2または3であり;
Xは、−S−または−HC=CH−であり;そして、
Yは、−O−、−S−、−NH−、−NMe−または−CH2−である]
で示される化合物、またはその製薬的に許容可能な塩。
【請求項2】
式:
【化2】

[式中、R1が、−H、−OH、−O(C1−C4アルキル)、−OCOC6H5、−OCO(C1−C6アルキル)または−OSO2(C2−C6アルキル)であり;
R2およびR3が、それぞれ独立して−H、−OH、−O(C1−C4アルキル)、−OCOC6H5、−OCO(C1−C6アルキル)、−OSO2(C2−C6アルキル)またはハロであり;
R4が、1−ピペリジニル、1−ピロリジニル、メチル−1−ピロリジニル、ジメチル−1−ピロリジニル、4−モルホリノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノまたは1−ヘキサメチレンイミノであり;
nが、2または3であり;
Xが、−S−または−HC=CH−であり;そして、
Yが、−O−、−S−、−NH−、−NMe−または−CH2−である]
で示される請求項1の化合物、またはその製薬的に許容可能な塩。
【請求項3】
Yが−O−である、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
nが2である、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
R1が−OHまたは−OCH3である、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
R1が−OHである、請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
R4が1−ピペリジニルまたは1−ピロリジニルである、請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
R4が1−ピペリジニルである、請求項1〜7のいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
R0、R2およびR3のうち2つが−Hである、請求項1〜8のいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
R0、R2およびR3のうち2つが−Hであり、他が−OHである、請求項1〜8のいずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
R0、R2およびR3がすべて−Hである、請求項1〜9のいずれか1項記載の化合物。
【請求項12】
Xが−S−である、請求項1〜11のいずれか1項記載の化合物。
【請求項13】
Xが−HC=CH−である、請求項1〜12のいずれか1項記載の化合物。
【請求項14】
該化合物が、
11−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−6,11−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,3−d]チオフェン−3−オール;
11−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−6,11−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,3−d]チオフェン−3,8−ジオール;
11−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−6,11−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,3−d]チオフェン−3,10−ジオール;
11−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−6,11−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,3−d]チオフェン−3,9−ジオール;
10−フルオロ−12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3−オール;
12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3,10−ジオール;
12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3,9−ジオール;
12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3,11−ジオール;
12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3,8−ジオール;
からなる群から選択される請求項1記載の化合物、またはその製薬的に許容可能な塩。
【請求項15】
該化合物が、12−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−7,12−ジヒドロ−ベンゾ[a]アントラセン−3,9−ジオールである請求項1記載の化合物、またはその製薬的に許容可能な塩。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項記載の化合物、またはその製薬的に許容可能な塩、および所望により有効量のエストロゲンおよびプロゲスチンを、製薬的に許容可能な塩、希釈剤または賦形剤と一緒に含有する医薬組成物。
【請求項17】
治療有効量の請求項1〜15のいずれか1項記載の化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む、エストロゲン欠乏と関連する疾患を抑制する方法。
【請求項18】
該患者がヒトである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
該患者が閉経後の女性である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
該疾患が骨喪失である、請求項17〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
該疾患が心血管疾患である、請求項17〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
治療有効量の請求項1〜15のいずれか1項記載の化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む、内生エストロゲンに対する異常な生理学的反応と関連する疾患を抑制する方法。
【請求項23】
該患者がヒトである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
該患者が閉経後の女性である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
内生エストロゲンに対する異常な生理学的反応と関連する前記疾患が、エストロゲン依存性癌である、請求項22〜24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
該癌が乳癌である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
内生エストロゲンに対する異常な生理学的反応と関連する前記疾患が、子宮内膜症である、請求項22〜24のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
内生エストロゲンに対する異常な生理学的反応と関連する前記疾患が、子宮線維症である、請求項22〜24のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
式:
【化3】

[式中、R1aは−Hまたは−Opg(ここで、Pgはヒドロキシ保護基)であり;
R0a、R2aおよびR3aは、独立してR1aまたはハロであり;
R4は、1−ピペリジニル、1−ピロリジニル、メチル−1−ピロリジニル、ジメチル−1−ピロリジニル、4−モルホリノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノまたは1−ヘキサメチレンイミノであり;
nは、2または3であり;そして、
Yは、−O−、−S−、−NH−、−NMe−または−CH2−である]
で示される化合物、またはその製薬的に許容可能な塩。
【請求項30】
該化合物が、(2−ベンジル−6−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノンである請求項29記載の化合物、またはその製薬的に許容可能な塩。
【請求項31】
式:
【化4】

[式中、R1aは、−Hまたは−Opg(ここで、Pgはヒドロキシ保護基)であり;
R0a、R2aおよびR3aは、独立してR1aまたはハロであり;
R4は、1−ピペリジニル、1−ピロリジニル、メチル−1−ピロリジニル、ジメチル−1−ピロリジニル、4−モルホリノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノまたは1−ヘキサメチレンイミノであり;
nは、2または3であり;そして、
Yは、−O−、−S−、−NH−、−NMe−または−CH2−である]
で示される化合物、またはその製薬的に許容可能な塩。
【請求項32】
該化合物が、(2−ベンジル−6−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノールである請求項31記載の化合物、またはその製薬的に許容可能な塩。
【請求項33】
式:
【化5】

[式中、R1aは−Hまたは−Opg(ここで、Pgはヒドロキシ保護基)であり;
R0a、R2aおよびR3aは、独立してR1aまたはハロであり;
R4は、1−ピペリジニル、1−ピロリジニル、メチル−1−ピロリジニル、ジメチル−1−ピロリジニル、4−モルホリノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノまたは1−ヘキサメチレンイミノであり;
nは、2または3であり;そして、
Yは、−O−、−S−、−NH−、−NMe−または−CH2−である]
で示される化合物、またはその製薬的に許容可能な塩。
【請求項34】
該化合物が、[2−(4−フルオロ−ベンジル)−6−メトキシ−ナフタレン−1−イル]−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノンである請求項33記載の化合物、またはその製薬的に許容可能な塩。
【請求項35】
式:
【化6】

[式中、R1aは−Hまたは−Opg(ここで、Pgはヒドロキシ保護基)であり;
R0a、R2aおよびR3aは、独立してR1aまたはハロであり;
R4は、1−ピペリジニル、1−ピロリジニル、メチル−1−ピロリジニル、ジメチル−1−ピロリジニル、4−モルホリノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノまたは1−ヘキサメチレンイミノであり;
nは、2または3であり;そして
Yは、−O−、−S−、−NH−、−NMe−または−CH2−である]
で示される化合物、またはその製薬的に許容可能な塩。
【請求項36】
該化合物が、[2−(4−フルオロ−ベンジル)−6−メトキシ−ナフタレン−1−イル]−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−メタノールである請求項35記載の化合物、またはその製薬的に許容可能な塩。
【請求項37】
薬剤を製造するための請求項1〜15のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項38】
エストロゲン欠乏と関連する疾患を抑制するための薬剤を製造するための請求項1〜15のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項39】
該疾患が骨喪失である、請求項38記載の使用。
【請求項40】
該疾患が心血管疾患である、請求項38記載の使用。
【請求項41】
内生エストロゲンに対する異常な生理学的反応と関連する疾患を抑制する薬剤を製造するための請求項1〜15のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項42】
該疾患がエストロゲン依存性癌である、請求項41記載の使用。
【請求項43】
該癌が乳癌である、請求項42記載の使用。
【請求項44】
内生エストロゲンに対する異常な生理学的反応と関連する前記疾患が、子宮内膜症である、請求項41記載の使用。
【請求項45】
内生エストロゲンに対する異常な生理学的反応と関連する前記疾患が、子宮線維症である、請求項41記載の使用。
【請求項46】
活性成分として請求項1〜15のいずれか1項記載の化合物を含む、エストロゲン欠乏と関連する疾患を抑制するための医薬組成物。
【請求項47】
活性成分として請求項1〜15のいずれか1項記載の化合物を含む、内生エストロゲンに対する異常な生理学的反応と関連する疾患を抑制するための医薬組成物。


【公表番号】特表2006−508066(P2006−508066A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539841(P2004−539841)
【出願日】平成15年9月22日(2003.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/026304
【国際公開番号】WO2004/029047
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(590005922)イーライ・リリー・アンド・カンパニー (15)
【氏名又は名称原語表記】ELI LILLY AND COMPANY
【Fターム(参考)】