説明

ジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体、該誘導体を有効成分とする医薬、及び該誘導体の製造方法

【課題】新規なジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体、及び該誘導体を有効成分とする医薬、及び、多工程を要せず環境への負荷が少ないジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体の製造法の提供。
【解決手段】新規なジヒドロキシボリル基含有ジヒドロキシピリミジン−2−オン(又は、チオケトン)誘導体、ジヒドロキシボリル基含有1,4−ジヒドロピリジン誘導体及びジヒドロキシボリル基含有ジヒドロピラノ[2,3−c]ピラゾール化合物、該化合物を有効成分とする癌治療薬、並びに、該化合物の多成分原料からのワンポット合成法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体、該誘導体を有効成分とする医薬、及び該誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ酸基 [RB(OH)2] やホウ酸エステル基 [RB(OR’)2] を含む化合物は近年、鈴木-宮浦クロスカップリング(Miyaura, N.; Suzuki, A. Chem. Rev. 1995, 95, 2457-2483.)や分子認識センサー(Soya,G.; Aaron, M.; Marilyn, M, O.; Christine, M,. B.; Lacie, C, H.; Sulolit, P, R, A.; Wessling.; Bakthan, S. J. Am. Chem. Soc. 2007. 129, 1278-1286.)としてそれらの有用性が注目されている。興味深いことにジヒドロキシボリル基 [-B(OH)2] を持つホウ素化合物は様々な生物活性があることが分かってきている。例えば、下記式:
【0003】
【化1】


で表されるホウ酸誘導体中、ホウ素アミノ酸誘導体(A)はhuman arginase IIに対して強い阻害活性を有する(Evis, C, D, M.; Colleluori, F, A, E.; Hyunshun, S.; Soo, W, K.; Noel N, K.; Abdulmaged, M, T.; David E. A.; David, W, C.; Biochemistry 2003. 42, 8445-8451.)。またα-アミノホウ酸はセリンプロテアーゼ阻害作用を示すものが知られており(Wenqian, Y.; Xingming, G.; Binghe, W.; Medicinal Research Reviews, 2003. 23, 346-367.)、例えばホウ素化合物(B)は血液凝固に関係するプロテアーゼのトロンビンに対して強い阻害活性を示す(Kettner, C.; Mersinger, L.; Knabb, R. J. BioChem. 1990. 265, 18289-18297.)。ホウ素化合物Bortezomib (C) はVelcadeの名で市販されており、26 S プロテアソームを強く選択的に阻害するため、抗がん剤として臨床で使用されている(Popat, U.; Carrum, G.; Heslop, H,E.Cancer Treat. Rev. 2003. 29, 3-10.)。ホウ素化合物(D)はleucyl-tRNA synthetaseを阻害する薬効範囲の広い抗真菌剤である(Fernando, L, Rock.; Weimin, M..; Anya, Y.; Mikhail T.; Thibaut, C.; Huchen Z.; Yong-Kang, Z.; Vincent, H.; Tsutomu, A.; Stephen, J, B.; Jacob J, P.; Lucy, S.; Susan, A, M.; Stephen, J, B.; Stephen C. Science. 2007. 316, 1759-1761.)。
【0004】
この様なジヒドロキシボリル基を含むホウ素化合物の生理活性発現には、ホウ素原子自体の性質も関係している。ホウ素は空の2p軌道を有するため、下記式に示すようにドナー分子の陰性原子と共有結合により相互作用することができる。
【0005】
【化2】

【0006】
このためホウ素化合物は水素結合と共有結合による標的分子との強い相互作用が可能であり、新たな生理活性発現が期待できる。さらに薬剤への好ましい水溶性の付与も予想される。
しかしながら、このように生理活性の発現が期待できるにもかかわらずジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体の製造例は少なく、また、既知の製造法は多工程を要し、環境への負荷が大きい触媒を用いるなど、問題点が多い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Miyaura, N.; Suzuki, A. Chem. Rev. 1995, 95, 2457-2483.
【非特許文献2】Soya,G.; Aaron, M.; Marilyn, M, O.; Christine, M,. B.; Lacie, C, H.; Sulolit, P, R, A.; Wessling.; Bakthan, S. J. Am. Chem. Soc. 2007. 129, 1278-1286.
【非特許文献3】Evis, C, D, M.; Colleluori, F, A, E.; Hyunshun, S.; Soo, W, K.; Noel N, K.; Abdulmaged, M, T.; David E. A.; David, W, C.; Biochemistry 2003. 42, 8445-8451.
【非特許文献4】Wenqian, Y.; Xingming, G.; Binghe, W.; Medicinal Research Reviews, 2003. 23, 346-367.
【非特許文献5】Kettner, C.; Mersinger, L.; Knabb, R. J. BioChem. 1990. 265, 18289-18297.
【非特許文献6】Popat, U.; Carrum, G.; Heslop, H,E.Cancer Treat. Rev. 2003. 29, 3-10.
【非特許文献7】Fernando, L, Rock.; Weimin, M..; Anya, Y.; Mikhail T.; Thibaut, C.; Huchen Z.; Yong-Kang, Z.; Vincent, H.; Tsutomu, A.; Stephen, J, B.; Jacob J, P.; Lucy, S.; Susan, A, M.; Stephen, J, B.; Stephen C. Science. 2007. 316, 1759-1761.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、新規なジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体、及び該誘導体を有効成分とする新規な医薬を提供するものである。本発明はまた、多工程を要せず、環境への負荷が少なく、および出発原料が安価で入手容易なジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体の製造法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、
<1>
ジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物であって、
該化合物が式:
【化3】

、式:
【化4】

または式:
【化5】

[式中、Rはハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルアミノ基、ハロゲン原子を有していてよい炭素数6〜16のアリール基、またはハロゲン原子を表し、R、RおよびRは、それぞれ独立にハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜16のアリール基を表し、Rはハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルキルオキシ基(但し、Xが酸素原子のときは、エトキシ基ではない。)、ハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキルアミノ基、またはハロゲン原子を有していてよい炭素数6〜16のアリール基を表し、Xは酸素もしくは硫黄原子を表し、nは0、または1〜4の整数を表す。]で表される化合物1、7または10である、ジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物;
【0010】
<2>
化合物1が、式1w:
【化6】

で表される化合物1wである、<1>に記載のジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物;
【0011】
<3>
<1>または<2>に記載のジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物を有効成分とする、癌治療薬;
【0012】
<4>
<1>または<2>に記載のジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物1または1wの製造方法であって、ホルミルフェニルボロン酸誘導体4、β−ジケトン誘導体3および(チオ)尿素2からなる3成分を、
反応式(1):
【化7】

[式中、R、R、R、Xおよびnは、前記と同義である。]、
に従ってワンポット反応させる工程を含んでなる、ジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物1または1wの製造方法;
【0013】
<5>
反応式(1)が、反応式(1−1):
【化8】

であり、得られる生成物1が1wである、<4>に記載の製造方法;
【0014】
<6>
<1>に記載のジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物7の製造方法であって、ホルミルフェニルボロン酸誘導体4、3−アミノクロトン酸エステル5およびβ−ケトエステル誘導体6からなる3成分を、
反応式(2):
【化9】

[式中、R、R、Rおよびnは、前記と同義である。]、
に従ってワンポット反応させる工程を含んでなる、ジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物7の製造方法。
【0015】
<7>
<1>に記載のジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物10の製造方法であって、ホルミルフェニルボロン酸誘導体4、β−ケトエステル誘導体6、マロノニトリル8およびヒドラジン9からなる4成分を、
反応式(3):
【化10】

[式中、R、R、Rおよびnは、前記と同義である。]、
に従ってワンポット反応させる工程を含んでなる、ジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物10の製造方法、等を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、新規なジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体、及び該誘導体を有効成分とする新規な癌治療薬等の医薬を得ることができる。本発明は、多工程を要せず、環境への負荷が少なく、および出発原料が安価で入手容易なジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体の製造法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の新規なジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体であるジヒドロキシボリル基含有ジヒドロピリミジン−2−オン(又は、チオン)誘導体1:
【化11】

において、Xは酸素又は硫黄原子である。ヒドロキシボリル基−B(OH)の結合位置は、ジヒドロピリミジノン(または、ジヒドロピリミジン−チオン)基が結合した位置に対してオルト、メタ、またはパラのいずれかの位置であってよい。
【0018】
置換基Rは、ハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルアミノ基、ハロゲン原子を有していてよい炭素数6〜16のアリール基、またはハロゲン原子を表す。nは0又は1〜4のいずれかの整数である。ハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキル基のハロゲン原子は特に制限はないが、例えば、フッ素または塩素原子である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、n−ヘプチル、2−メチルヘキシル、5−メチルヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、5−エチルヘキシル、n−ノニル、2−メチルオクチル、n−デシル、2−エチルオクチルなどが挙げられる。ハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキルオキシ基もしくはアルキルアミノ基としては、例えば、前記アルキル基に対応するアルキルオキシ基もしくはアルキルアミノ基が挙げられる。ハロゲン原子の置換位置や置換数は特に制限はない。
ハロゲン原子を有していてよい炭素数6〜16のアリール基のハロゲン原子は特に制限はないが、例えば、フッ素または塩素原子である。炭素数6〜16のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アンスラニル基、アルキル基置換フェニル基、アルキル基置換ナフチル基、アルキル基置換インデニル基、アルキル基置換アンスラニル基などが挙げられる。ハロゲン原子の置換位置や置換数は特に制限はない。
自体としてのハロゲン原子としては特に制限はないが、例えば、フッ素、塩素、臭素原子などが挙げられる。
【0019】
化合物1におけるRは、ハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜16のアリール基を表し、ハロゲン原子としては特に制限はないが、例えば、フッ素または塩素原子である。
炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、n−ヘプチル、2−メチルヘキシル、5−メチルヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、5−エチルヘキシル、n−ノニル、2−メチルオクチル、n−デシル、2−エチルオクチルなどが挙げられる。好ましくは、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、トリフルオロメチルなどである。
ハロゲン原子を有していてよい炭素数6〜16のアリール基のハロゲン原子は特に制限はないが、例えば、フッ素または塩素原子である。炭素数6〜16のアリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル、インデニル、アンスラニル、アルキル置換フェニル、アルキル置換ナフチル、アルキル置換インデニル、アルキル置換アンスラニルなどが挙げられる。ハロゲン原子の置換位置や置換数は特に制限はない。ハロゲン原子を有していてよい炭素数6〜16のアリール基の好ましい例は、例えば、フェニル、アルキル置換フェニルなどである。
【0020】
化合物1におけるRはハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルキルオキシ基(特にメトキシ基)(但し、Xが酸素原子のときは、エトキシ基ではない。)、ハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキルアミノ基、またはハロゲン原子を有していてよい炭素数6〜16の(ヘテロ)アリール基を表す。
ハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキル基のアルキル基の例としては、Rにおける例と同様なアルキル基が挙げられる。
炭素数1〜10のアルキルオキシ基としては、Rにおける例と同様なアルキル基に対応するアルキルオキシ基が挙げられ、例えば、メトキシ、エトキシ(但し、Xが酸素原子のときは、エトキシ基ではない。)、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ等のアルキルオキシ基、特に好ましくは、メトキシ基が挙げられる。Xが酸素原子のときは、エトキシ基ではない。例えば、式:
【化12】

及び、式:
【化13】

で表される化合物は既知であり、含まない。
ハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキルアミノ基としては、Rにおける例と同様なアルキルアミノ基が挙げられる。
ハロゲン原子を有していてよい炭素数6〜16の(ヘテロ)アリール基の例としては、Rにおける例と同様なアリール基に加えて、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基等のヘテロアリール基が挙げられる。
【0021】
これらジヒドロキシボリル基含有ジヒドロピリミジン−2−オン(又は、チオン)誘導体1の具体例を表1に示す:
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
【表4】

【0025】
上記表中、好ましいジヒドロキシボリル基含有ジヒドロキシピリミジン−2−オン(又は、チオケトン)誘導体として、例えば下式:
【化14】

で表される1wが挙げられる。
【0026】
本発明の新規なジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体である下式:
【化15】

で表されるジヒドロキシボリル基含有1,4−ジヒドロピリジン誘導体7におけるヒドロキシボリル基−B(OH)の結合位置は、ジヒドロピリジル基が結合した位置に対してオルト、メタ、またはパラのいずれかの位置であってよい。置換基Rとしては、前記の化合物1におけるRと同様な置換基が挙げられる。nは0又は1〜4のいずれかの整数である。
【0027】
置換基R及びRは、それぞれ独立にハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜16のアリール基を表す。ハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキル基としては、ハロゲン原子としては特に制限はないが、例えば、フッ素または塩素原子である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、n−ヘプチル、2−メチルヘキシル、5−メチルヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、5−エチルヘキシル、n−ノニル、2−メチルオクチル、n−デシル、2−エチルオクチルなどが挙げられる。好ましくは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチルなどである。ハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜16のアリール基とのハロゲン原子は特に制限はないが、例えば、フッ素または塩素原子である。炭素数6〜16のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アンスラニル基、アルキル基置換フェニル基、アルキル基置換ナフチル基、アルキル基置換インデニル基、アルキル基置換アンスラニル基などが挙げられる。ハロゲン原子の置換位置や置換数は特に制限はない。
【0028】
これらジヒドロキシボリル基含有1,4−ジヒドロピリジン誘導体7の具体例を表2に示す:
【表5】

【0029】
本発明の新規なジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体である下式:
【化16】

で表されるジヒドロキシボリル基含有ジヒドロピラノ[2,3−c]ピラゾール化合物10における置換基Rはハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルアミノ基、ハロゲン原子を有していてよい炭素数6〜16のアリール基、またはハロゲン原子を表す。R1の例としては、前記化合物1及び7における置換基Rと同様な置換基が挙げられる。ヒドロキシボリル基−B(OH)の結合位置は、ジヒドロピラノ[2,3-c]ピラゾール基が結合した位置に対してオルト、メタ、またはパラのいずれかの位置であってよい。nは0又は1〜4のいずれかの整数である。
化合物10の好ましい例として、下式:
【化17】

で表される化合物10aが挙げられる。
【0030】
次に、本発明のジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体を有効成分とする新規な医薬について説明する。
本発明のジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体は、特に、ヒト癌細胞の増殖抑制効果を示すことが見出された。本発明のジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体は、特に、ヒト子宮頸部癌細胞HeLa.S3細胞株に対する細胞増殖抑制試験において抑制効果を示した。特に優れた細胞増殖抑制効果を示した誘導体の例としては、下式:
【化18】

で表される化合物1wが挙げられる。
【0031】
次に、本発明のジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体の製造方法について説明する。
ジヒドロキシボリル基含有ジヒドロピリミジン−2−オン(又は、チオン)誘導体1または1wは、ホルミルフェニルボロン酸誘導体4、β−ジケトン誘導体3および(チオ)尿素2からなる3成分を、
反応式(1):
【化19】

[式中、R、R、R、Xおよびnは、前記と同義である。]
に従ってワンポット反応で合成することができる。
【0032】
化合物1の内、特に化合物1wは以下の反応式(1−1):
【化20】

に従ってワンポット反応で合成することができる。
【0033】
従来、ジヒドロキシボリル基を含まない含窒素複素環誘導体の合成では、促進剤としてHCl等のプロトン酸やBF3・OEt2, FeCl3, LaCl3・7H2O, La(OTf)3, Yb(OTf)3, ZrCl4, BiCl3, Mn(OAc)3, LiClO4等のルイス酸の様な酸触媒が必要であると云われてきた(Adibi, H.; Heshmat, A,S.; Mojtaba, B. Catalysis Communications. 2007. 8. 2119-2124、及びBose, D, S.; Liyakat, F.; Hari, B, M. J. Org. Chem. 2003. 68 , 587-590.)。
【0034】
しかしながら、驚くべきことに、本発明におけるジヒドロキシボリル基含有ジヒドロピリミジン−2−オン(又は、チオン)誘導体1又は1wの合成においては、これら酸触媒が存在するとむしろ副反応が生起して副生物が増えること、従って、触媒を何ら用いることなく、出発原料の3成分を単に混合して所定時間、撹拌混合反応するだけで化合物1が選択性よくワンポット反応で得られることを見いだした。このことは、原料の1つであるホルミルフェニルボロン酸誘導体4のジヒドロキシボリル基がルイス酸的機能を果たしたためではないかと推定されるが、本発明はこの機構に囚われるものではない。
【0035】
本発明の(1)式または(1−1)式による3成分のワンポット反応において、各成分の混合順序は特に問題とはならない。通常は溶媒の存在下、3成分を混合後、所定の反応温度で撹拌下反応を継続する。各成分の混合比は、ホルミルフェニルボロン酸誘導体4の利用率を主体に置くならば、ホルミルフェニルボロン酸誘導体4が1モルに対して、β−ジケトン誘導体3および(チオ)尿素2はそれぞれ独立に、通常1〜2モルの範囲、好ましくは、1.1〜1.6モル、より好ましくは、1.2〜1.4モルの範囲である。
本発明の製造方法では、ワンポット反応工程で極性有機溶媒を使用するのが好ましい。この極性溶媒は、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のプロトン性極性溶媒又はアセトニトリル、プロピオニトリル、メチレンジクロリド、エチレンジクロリド等の非プロトン性極性有機溶媒が用いられる。中でもアセトニトリル、プロピオニトリル、メタノール及びエタノール等が好ましい。これらの極性有機溶媒は、原料及び生成物を溶解するのに適しており、反応が均一系で効率よく進行するのを促進する。極性有機溶媒の使用量は、所定の反応温度において全ての原料を均一に溶解する程度以上の量で用いることが好ましく、通常、出発原料および生成物の合計100重量部に対して300〜5,000重量部、好ましくは500〜4,000重量部、より好ましくは1,000〜3,000重量部の範囲である。
【0036】
本発明の製造方法は、反応容器を窒素等の不活性ガスで置換して、反応容器中に極性有機溶媒を仕込み、攪拌下、反応原料のホルミルフェニルボロン酸誘導体4、β−ジケトン誘導体3および(チオ)尿素2からなる3成分を添加して攪拌混合する。次いで所定温度で所定時間、攪拌しつつ反応を継続する。ここで、溶媒、反応基質の添加順序に特に制限はない。反応温度は通常25℃〜200℃、好ましくは40℃〜150℃、特に好ましくは50℃〜100℃である。溶媒の沸点付近の反応温度で反応することも好ましく、反応温度が一定に保たれるメリットがある。例えば、アセトニトリルを溶媒とする場合、その沸点である82℃付近での反応が好ましい。反応時間は反応温度や反応基質の濃度にもよるが、通常15分〜72時間、好ましくは5時間〜60時間、特に好ましくは10時間〜50時間であり、反応の終了を薄層クロマトグラフ(TLC)、ガスクロマトグラフ(GC)または液体クロマトグラフ(LC)等で確認した後に、溶媒を濃縮して、蒸留水を加えて結晶を析出させる。結晶を炉別して、蒸留水、エーテルで結晶を洗う。これを少量のメタノールに溶かし、シリカゲルカラム (CHCl3 : MeOH=19 : 1)により精製して乾燥させると結晶としてジヒドロキシボリル基含有ジヒドロピリミジン−2−オン(又は、チオン)誘導体1を得ることが出来る。
【0037】
得られた生成物は、IRスペクトル:日本分光FT/IR−460Plus(実施例中の吸収波長はcm−1で示した。)、1H、又は13C−NMRスペクトル:日本電子 JMTC−400/54/SS 400MHz(特に明記しない限り、内部標準としてTMSを用いた。)、融点(測定装置はBUCHI Melting Point B-545)等によって構造を特定した。
【0038】
ジヒドロキシボリル基含有1,4−ジヒドロピリジン誘導体7は、以下の反応式(2):
【化21】

[式中、R、R、Rおよびnは、前記と同義である。]
に従って、ホルミルフェニルボロン酸誘導体4、3−アミノクロトン酸エステル5およびβ−ケトエステル誘導体6からなる3成分をワンポット反応することによって合成することができる。(2)式による3成分のワンポット反応において、各成分の混合順序は特に問題とはならない。通常は溶媒の存在下、3成分を混合後、所定の反応温度で撹拌下反応を継続する。各成分の混合比は特に制限はないが、ホルミルフェニルボロン酸誘導体4の利用率を主体に置くならば、例えば、各成分が等モル付近の場合に生成物7の収率は良好となる。具体的には、ホルミルフェニルボロン酸誘導体4が1〜1.3モルに対して、3−アミノクロトン酸エステル5が0.8〜1.2モル、および(チオ)尿素2が0.8〜1.1モル、より好ましくは、ホルミルフェニルボロン酸誘導体4が1〜1.2モルに対して、3−アミノクロトン酸エステル5が0.8〜1.1モル、および(チオ)尿素2が0.8〜1.0モル、より好ましくは、例えば、ホルミルフェニルボロン酸誘導体4が1〜1.1モルに対して、3−アミノクロトン酸エステル5が0.9〜1.0モル、および(チオ)尿素2が0.8〜0.95モルの範囲である。
【0039】
用いる溶媒は、(1)式の場合と同様に、極性有機溶媒を使用するのが好ましい。この極性溶媒は、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のプロトン性極性溶媒又はアセトニトリル、プロピオニトリル、メチレンジクロリド、エチレンジクロリド等の非プロトン性極性有機溶媒が用いられる。中でもメタノール、エタノール、2−プロパノール等が好ましい。反応温度は(1)式の場合と同様に、反応温度は通常25℃〜200℃、好ましくは40℃〜150℃、特に好ましくは50℃〜100℃である。溶媒の沸点付近の反応温度で反応することも好ましく、反応温度が一定に保たれるメリットがある。例えば、2−プロパノールを溶媒とする場合、その沸点である82℃付近での反応が好ましい。反応時間は反応温度や反応基質の濃度にもよるが、通常15分〜72時間、好ましくは5時間〜60時間、特に好ましくは10時間〜50時間であり、反応の終了を薄層クロマトグラフ(TLC)、ガスクロマトグラフ(GC)または液体クロマトグラフ(LC)等で確認した後に、溶媒を濃縮して、蒸留水を加えて結晶を析出させる。結晶を炉別して、蒸留水、エーテルで結晶を洗う。これを少量のメタノールに溶かし、シリカゲルカラム (CHCl3 : MeOH=19 : 1)により精製して乾燥させると結晶としてジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体(化合物7)を得ることが出来る。生成物の分析は反応式(1)と同様に行って、生成物を特定する。
【0040】
ジヒドロキシボリル基含有ジヒドロピラノ[2,3−c]ピラゾール化合物10は、以下の反応式(3):
【化22】

【0041】
この種の反応に対して、Yuriらが、芳香族アルデヒド、ヒドラジン、マロノニトリル、アセト酢酸エチルの4成分をワンポットで縮合させる反応による合成法を開発している(Yuri, M, L.; Alexander, A, S.; Lyudmila, A, R.; Anatoliy, M, S. J. Comb. Chem. 2009, 11, 914-919.)。しかしながら、ホウ酸基含有成分を用いた例は報告されておらず、また、トリエチルアミン、ピリジンの2種類の塩基を縮合促進剤として使用することが必要であるために、反応条件は塩基性となり得る。そうすると、酸性成分のジヒドロキシボリル基−B(OH)がそれら塩基成分と反応してしまい、全体反応が進行しない可能性が高い。ところが、驚くべきことには、アルコール溶媒中、縮合促進剤としてのトリエチルアミン、ピリジンの2種類の塩基の存在下にワンポット反応させることによって、ジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物10が高い収率で得られることを見いだした。
【0042】
この(3)式による4成分間のワンポット反応において、各成分の混合順序は特に問題とはならない。通常は溶媒の存在下、4成分を混合後、所定の反応温度で撹拌下反応を継続する。各成分の混合比は特に制限はないが、ホルミルフェニルボロン酸誘導体4の利用率を主体に置くならば、例えば、ホルミルフェニルボロン酸誘導体4が1モルに対して、他の各成分がそれぞれ独立に0.8〜2.0モル、好ましくは、1.0〜1.5モル、より好ましくは1.1〜1.2モルの範囲を選ぶことができる。塩基としてのトリエチルアミン及びピリジンは、それぞれ独立に、ホルミルフェニルボロン酸誘導体4が1モルに対して、上記と同様な範囲のモル量を選ぶことができる。
【0043】
用いる溶媒は、(1)式の場合と同様に、極性有機溶媒を使用するのが好ましい。この極性溶媒は、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のプロトン性極性溶媒又はアセトニトリル、プロピオニトリル、メチレンジクロリド、エチレンジクロリド等の非プロトン性極性有機溶媒が用いられる。中でもメタノール、エタノール、2−プロパノール等が好ましい。反応温度は(1)式の場合と同様に、反応温度は通常25℃〜200℃、好ましくは40℃〜150℃、特に好ましくは50℃〜100℃である。溶媒の沸点付近の反応温度で反応することも好ましく、反応温度が一定に保たれるメリットがある。例えば、エタノールを溶媒とする場合、その沸点である73℃付近での反応が好ましい。反応時間は反応温度や反応基質の濃度にもよるが、通常15分〜24時間、好ましくは30分〜12時間、より好ましくは45分〜5時間程度であり、反応の終了を薄層クロマトグラフ(TLC)、ガスクロマトグラフ(GC)または液体クロマトグラフ(LC)等で確認した後に、溶媒を濃縮して、蒸留水を加えて結晶を析出させる。結晶を炉別して、蒸留水、エーテルで結晶を洗う。これを少量のメタノールに溶かし、シリカゲルカラム (CHCl3 : MeOH=19 : 1)により精製して乾燥させると結晶としてジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体(化合物7)を得ることが出来る。生成物の分析は反応式(1)と同様に行って、生成物を特定する。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
生成物は、IRスペクトル:日本分光FT/IR−460Plus(実施例中の吸収波長はcm−1で示した。)、1H、又は13C−NMRスペクトル:日本電子 JMTC−400/54/SS 400MHz(特に明記しない限り、内部標準としてTMSを用いた。)、融点(測定装置はBUCHI Melting Point B-545)によって化学構造を特定した。
【0045】
実施例1
反応式:
【化23】

に従って、ジヒドロキシボリル基含有ジヒドロピリミジン−2−オン(又はチオン)誘導体1−1を以下の様にして合成した。
25mlの二口フラスコに、下式:
【0046】
【化24】

に示すホルミルフェニルホウ酸誘導体(4−1、4−2又は4−3;各1mmol)のいずれか一種、β-ケトエステル(又はβ-ジケトン、又はβ-ケトアミド:1.24mmol)、尿素(又はチオ尿素:1.24mmol)及び乾燥アセトニトリル(5ml)を加え、窒素気流下、アセトニトリル還流下で表3に示す各々の時間反応させた。
TLCにより反応の終了を確認した後、溶媒を濃縮して、蒸留水を加えて結晶を析出させた。結晶を炉別して、蒸留水、エーテルで結晶を洗った。これを少量のメタノールに溶かし、シリカゲルカラム(溶出溶媒:CHCl:MeOH=19:1)により精製して乾燥させると結晶としてジヒドロピリミジン−2−オン(又は、チオン)誘導体のジヒドロキシボリル誘導体である、ジヒドロキシボリル基含有ジヒドロピリミジン−2−オン(又はチオン)誘導体1−1を得た。得られた生成物は、IR、NMR、融点により化学構造を特定した。得られた結果を表3(3−1〜3−4)に示す。収率はホルミルフェニルホウ酸誘導体に対する単離収率(%)である。
【0047】
【表6】

【0048】
化合物分析データ(1):ジヒドロキシボリル基含有ジヒドロピリミジン−2−オン(又はチオン)誘導体

【化25】

1c: 表3−1、No. 3 (74 % yield) ; 白色結晶 ; mp 201.2 ℃.
Rf = 0.38.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.23 (s, 3H, CH3), 3.51 (s, 3H,OCH3), 5.13 (d, 1H, J =3.17 Hz, CH), 7.176 (d, 2H, J =8.05 Hz, Ph), 7.65-7.74 (m, 3H, Ph and NH), 8.02 (br s, 2H, B(OH)2), 9.18 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 17.9, 50.9, 53.9, 99.0, 125.3 (2×C), 133.2, 134.4 (2×C), 144.9, 145.3, 165.6, 174.3.
IR (KBr) : 3273, 2954, 2360, 1694, 1434, 1340, 1237, 1098.
【0049】
【化26】

1d: 表3−1、No. 4 (64 % yield) ; 白色結晶 ; mp 198.6 ℃.
Rf = 0.59.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.24 (s, 3H, CH3), 3.50 (s, 3H, OCH3), 5.13 (br s, 1H, CH), 7.16-7.35 (m, 2H, Ph), 7.58-7.80 (m, 3H, Ph and NH), 8.02 (br s, 2H, B(OH)2), 9.16 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 17.9, 50.8, 54.2, 99.1, 126.2, 127.5, 128.2, 132.2, 133.1, 143.7, 148.5, 152.1, 165.9.
【0050】
【化27】

1e: 表3−1、No. 5 (48 % yield) ; 白色結晶 ; mp 192.4 ℃.
Rf = 0.38.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.27 (s, 3H, CH3), 3.43 (s, 3H, CH3), 5.44 (br s, 1H, CH), 7.09 (br s, 1H, NH), 7.14-7.48 (m, 4H, Ph), 8.21 (br s, 2H, B(OH)2), 9.25 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 17.8, 50.8, 53.8, 99.4, 125.7, 126.5, 129.7, 133.1, 135.5, 148.3, 148.5, 151.5, 165.8.
【0051】
【化28】

1f: 表3−1、No. 6 (80 % yield) ; 淡黄結晶 ; mp 205.4 ℃.
Rf = 0.39.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.09 (s, 3H, CH3), 2.27 (s, 3H, CH3), 5.25 (s, 1H, CH), 7.19 (d, 2H, J =7.56 Hz, Ph), 7.71 (d, 2H, J =7.56 Hz, Ph), 7.80 (br s, 1H, NH), 8.00 (br s, 2H, B(OH)2), 9.16 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 19.0, 30.3, 53.9, 109.6, 125.5 (2×C), 133.3, 134.4 (2×C), 145.9, 148.1, 152.1, 194.3.
IR (KBr) : 3275, 2938, 2410, 1695, 1608, 1563, 1412, 1348, 1243.
【0052】
【化29】

1g: 表3−1、No. 7 (74 % yield) ; 淡黄結晶 ; mp 189.8 ℃.
Rf = 0.42.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.07 (s, 3H, CH3), 2.28 (s, 3H, CH3), 5.23 (d, 1H, J =3.17 Hz, CH), 7.20-7.36 (m, 2H, Ph), 7.62-7.74 (m, 2H, Ph), 7.79 (br s, 1H, NH), 8.25 (br s, 2H, B(OH)2), 9.16 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 16.5, 55.2, 107.3, 119.7, 123.4, 125.4, 128.6, 134.4, 135.3, 139.0, 144.7, 165.0, 194.8.
【0053】
【化30】

1h: 表3−1、No. 8 (51 % yield) ; 黄色結晶 ; mp 199.8 ℃.
Rf = 0.45.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.01 (s, 3H, CH3), 2.31 (s, 3H, CH3), 5.53 (d, 1H, J =2.44 Hz, CH), 7.12 (br s, 1H, NH), 7.18 (d, 1H, J =7.80 Hz, Ph), 7.23 (t, 1H, J =7.32 Hz, Ph), 7.34 (t, 1H, J =7.56 Hz, Ph), 7.51 (d, 1H, J=7.32 Hz), 8.40 (br s, 2H, B(OH)2), 9.23 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 18.9, 30.2, 54.3, 109.3, 125.7, 126.6, 129.9, 132.6, 133.8, 147.5, 148.3, 151.3, 194.8.
【0054】
【化31】

1i: 表3−1、No. 9 (53 % yield) ; 白色結晶 ; mp 214.3 ℃.
Rf = 0.27.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.02 (s, 3H, CH3), 5.40 (d, 1H, J =2,20 Hz, CH), 6.98 (t, 1H, J =7.32 Hz, Ph), 7.16-7.28 (m, 4H, NH Ph), 7.46-7.60 (m, 3H, NH Ph), 7.71 (d, 2H, J =7.81 Hz, Ph), 7.97 (br s, 2H, B(OH)2), 8.68 (br, s, 1H, NH), 9.54 (br, s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 17.0, 55.1, 105.4, 119.6, 123.1 (2×C), 125.2 (2×C), 128.5 (2×C), 131.7, 134.3 (2×C), 138.2, 139.2, 146.0, 152.6, 165.3.
IR (KBr) : 3306, 3141, 2926, 2361, 1695, 1631, 1372, 1329, 1247, 1112.
【0055】
【表7】

【0056】
化合物分析データ(2):ジヒドロキシボリル基含有ジヒドロピリミジン−2−オン(又はチオン)誘導体(2)

【化32】

1j: 表3−1、No. 10 (70 % yield) ; 白色結晶 ; mp 216.6 ℃.
RF = 0.37.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.03 (s, 3H, CH3), 5.39 (s, 1H, CH), 6.98 (t, 1H, J =7.07 Hz, Ph), 7.10-7.40 (m, 4H, Ph), 7.42-7.60 (m, 3H, Ph), 7.66 (d, 1H, J =6.34 Hz, Ph), 7.73 (br s, 1H, NH), 7.98 (br s, 2H, B(OH)2), 8.67 (br s, 1H, NH), 9.50 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 17.1, 55.6, 105.6, 119.7 (2×C), 123.1, 127.4, 128.2 (2×C), 128.5, 132.4, 133.2, 134.8, 138.0, 139.2, 143.3, 152.5, 165.4.
【0057】
【化33】

1k: 表3−2、No. 11 (18 % yield) ; 白色結晶 ; mp165.5 ℃.
Rf = 0.43.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.12 (s, 3H, CH3), 5.53 (d, 1H, J =2.44 Hz, CH), 6.90-7.02 (m, 2H, NH Ph), 7.10-7.30 (m, 4H, Ph), 7.37 (t, 1H, J =6.82 Hz, Ph), 7.46 (d, 3H, J=8.29 Hz, Ph and NH), 8.43 (br s, 2H, B(OH)2), 8.77 (br s, 1H, NH), 9.47 (br , 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 17.4, 54.7, 105.0, 120.0 (2×C), 123.1, 126.5, 126.7, 128.4 (2×C), 128.5, 129.7, 133.7, 138.9, 139.5, 147.3, 151.6, 165.5.
【0058】
【化34】

1l: 表3−2、No. 12 (24 % yield) ; 橙色結晶 ; mp 193.7 ℃.
Rf = 0.46.
1H (400 MHz, DMSO) : 1.97 (s, 3H, CH3), 5.30 (d, 1H, J =2.93 Hz, CH), 7.15 (d, 2H, J =8.05 Hz, Ph), 7.36-7.54 (m, 5H, Ph), 7.69 (d, 2H, J =8.05 Hz), 7.77 (br s, 1H, NH), 7.99 (br s, 2H, B(OH)2), 9.14 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 18.5, 55.3, 109.5, 125.2 (2×C), 127.8(2×C), 128.6 (2×C), 130.3, 131.5, 134.3 (2×C), 141.0, 145.2, 146.0, 152.3, 194.4.
IR (KBr) : 3275, 2938, 2410, 1695, 1608, 1563, 1412, 1348, 1243.
【0059】
【化35】

1m: 表3−2、No. 13 (19 % yield) ; 橙色結晶 ; mp 187.1 ℃.
Rf = 0.46.
1H (400 MHz, DMSO) : 1.65 (s, 3H, CH3), 5.30 (d, 1H, J =2.93 Hz, CH), 7.18-7.29 (m, 2H, Ph), 7.36-7.54 (m, 5H, Ph), 7.60-7.68 (m, 2H, Ph), 7.73 (br s, 1H, NH), 8.02 (br s, 2H B(OH)2), 9.11 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 18.5, 55.7, 109.6, 127.5, 127.8 (2×C), 128.2 , 128.6 (2×C), 131.51,
132.3, 133.2, 134,6, 141.1, 143.2, 144.8, 152.1, 194.4.
【0060】
【化36】

1n: 表3−2、No. 14 (64 % yield) ; 白色結晶 ; mp 214.4 ℃.
Rf = 0.24.
1H (400 MHz, DMSO) : 1.98 (s, 3H, CH3), 2.50 (s, 3H, CH3), 5.19 (s, 1H, CH), 7.13-7.30 (m, 2H, Ph), 7.34-7.48 (m, 2H, NH and Ph), 7.59-7.70 (m, 2H, NH and Ph), 7.96 (br s, 2H, B(OH)2), 8.47 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 16.4, 25.8, 55.2, 105.1, 127.3, 128.2, 132.4, 133.0, 137.0, 140.7, 143.2, 152.7, 166.8.
【0061】
【化37】

1o: 表3−2、No. 15 (11 % yield) ; 白色結晶 ; mp 205.1 ℃.
Rf = 0.45.
1H (400 MHz, DMSO) : 0.88 (s, 3H, CH3), 0.99 (t, 6H, J =7.32 Hz, CH3), 1.30 (s, 3H, CH3), 2.58 (quintet, 1H, J =6.83 Hz, CH), 4.23 (s, 1H, CH), 5.39 (s, 1H, CH), 7.13 (d, 2H, J =7.56 Hz, Ph), 7.72 (d, 2H, J=7.32 Hz, Ph), 7.98 (br s, 1H, NH), 8.03 (br s, 2H, B(OH)2), 11.25 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 18.7, 18.9, 22.1, 27.5, 36.8, 50.2, 61.6, 94.0, 126.7 (2×C), 133.9 (2×C), 134.5, 141.1, 150.9, 161.3, 205.6.
IR (KBr) : 3345 ; 2971, 2993, 2360, 1688, 1650, 1587, 1455, 1373, 1261.
【0062】
【化38】

1r: 表3−2、No. 18 (19 % yield) ; 白色結晶 ; mp 186,5 ℃.
Rf = 0.46.
1H (400 MHz, DMSO) : 1.09 (t, 3H, J =7.07 Hz, CH2CH3), 2.28 (s, 3H, CH3), 4.00 (q, 2H, J =7.07 Hz, CH2CH3), 5.10-5.22 (m, 1H, CH), 7.16 (d, 2H, J =8.05 Hz, Ph), 7.72 (d, 2H, J =8.05 Hz, Ph), 8.05 (br s, 2H, B(OH)2), 9.61 (br s, 1H, NH), 10.29 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 14.0, 17.2, 53.2, 59.6, 100.7, 125.4 (2×C), 134.3 (2×C), 136.9, 145.0, 145.1, 165.1, 174.3.
【0063】
【表8】

【0064】
化合物分析データ(3):ジヒドロキシボリル基含有ジヒドロピリミジン−2−オン(又はチオン)誘導体(3)
【化39】

1s: 表3−3、No. 19 (13 % yield) ; 白色結晶 ; mp 170.3 ℃.
Rf = 0.72 (クロロホルム:メタノール=4:1).
1H (400 MHz, DMSO) : 1.16 (t, 3H, J =7.07 Hz, CH2CH3), 2.36 (s, 3H, CH3), 4.05 (q, 2H, J =6.83 Hz, CH2CH3), 5.19-5.26 (m, 1H, CH), 7.30 (d, 1H, J =7.56 Hz, Ph), 7.37 (t, 1H, J =7.32 Hz, Ph), 7.73 (br s, 1H, NH) 7.60 (d, 1H, J =7.07 Hz, Ph), 8.15 (br s, 2H, B(OH)2), 9.67 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 14.1, 17.3, 54.6, 59.7, 100.9, 127.8, 128.5, 132.6, 133.6, 134.6, 142.6, 145.0, 165.3, 174.1.
IR (KBr) ; 3280, 2981, 2929, 2360, 1693, 1653, 1568, 1433, 1370, 1337, 1185.
【0065】
【化40】

1t: 表3−3、No. 20 (2 % yield) ; 白色結晶 ; mp 181.1 ℃.
Rf = 0.65.
1H (400 MHz, DMSO) : 1.00 (t, 3H, J =7.07 Hz, CH2CH3), 2.30 (s, 3H, CH3), 3.80-4.25 (m, 2H, CH2CH3), 5.48 (s, 1H, CH), 7.18 (d, 1H, J =7.81 Hz, Ph), 7.23 (t, 1H, J =7.31 Hz, Ph), 7.36 (t, 1H, J =7.32 Hz, Ph), 7.47 (d, 1H, J =7.32 Hz, Ph), 8.32 (br s, 2H, B(OH)2), 8.94 (br s, 1H, NH), 10.28 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 14.2, 17.3, 54.2, 59.8, 101.5, 126.3, 127.1, 130.1, 133.7, 135.0, 144.9, 147.1, 165.4, 173.6.
【0066】
【化41】

1u: 表3−3、No. 21 (22 % yield) ; 白色結晶 ; mp 181.7 ℃.
Rf = 0.56.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.28 (s, 3H, CH3), 3.54 (s, 3H, CH3), 5.59 (d, 1H, J =3.42 Hz, CH), 7.16 (d, 2H, J =7.32 Hz, Ph), 7.72 (d, 2H, J =7.32 Hz, Ph), 8.02 (br s, 2H, B(OH)2), 9.65 (br s, 1H, NH), 10.33 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 17.2, 51.1, 100.4, 100.6, 125.4 (2×C), 134.4 (2×C) , 134.5, 144.9, 145.3, 165.1, 174.3.
IR (KBr) : 3323, 3008, 2952, 2360, 1696, 1670, 1570, 1433, 1342, 1180, 1115.
【0067】
【化42】

1v: 表3−3、No. 22 (25 % yield) ; 白色結晶 ; mp 197.8 ℃.
Rf = 0.52.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.30 (s, 3H, CH3), 3.52 (s, 3H, CH3), 5.15 (d, 1H, J =3.66 Hz, CH), 7.23 (d, 1H, J =7.81 Hz, Ph), 7.30 (t, 1H, J =7.32 Hz, Ph), 7.64 (br s, 1H, NH), 7.69 (d, 1H, J =7.32 Hz, Ph), 8.05 (br s, 2H, B(OH)2), 9.63 (br s, 1H, NH), 10.30 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 17.3, 51.1, 54.3, 100.3, 127.6, 128.3, 132.3, 133.6, 134.6, 145.3, 165.7, 174.0.
【0068】
【化43】

1w: 表3−3、No. 23 (22 % yield) ; 白色結晶 ; mp 196.4 ℃.
Rf = 0.52.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.30 (s, 3H, CH3), 3.45 (s, 3H, OCH3), 5.44 (s, 1H, CH), 7.20 (d , 1H, J =7.81 Hz, Ph), 7.24 (t, 1H, J =7.32, Ph), 7.37 (t, 1H, J =7.32 Hz, Ph), 7.43 (d, 1H, J =7.32 Hz), 8.25 (br s, 2H, B(OH)2), 9.00 (br s, 1H, NH), 10.36 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 17.0, 51.0, 54.0, 101.1, 126.2, 126.8, 129.8, 133.0, 135.4, 144.8, 147.0, 165.5, 173.5.
【0069】
【化44】

1x: 表3−3、No. 24 (38 % yield) ; 黄色結晶 ; mp 212.6 ℃.
Rf = 0.49.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.14 (s, 3H, CH3), 2.32 (s, 3H, CH3), 5.28 (d, 1H, J =3.66 Hz, CH), 7.14 (d, 2H, J =7.81 Hz, Ph), 7.72 (d, 2H, J =7.56 Hz, Ph), 8.03 (br s, 2H, B(OH)2), 9.71 (br s, 1H, NH), 10.24 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 18.3, 30.5, 53.9, 110.5, 125.7 (2×C), 126.6, 128.7, 134.5 (2×C), 144.6, 174.2, 195.0.
IR (KBr) : 3377, 2929, 2360, 1609, 1569, 1412, 1362, 1180.
【0070】
【表9】

【0071】
化合物分析データ(4):ジヒドロキシボリル基含有ジヒドロピリミジン−2−オン(又はチオン)誘導体(4)

【化45】

1y: 表3−4、No. 25 (44 % yield) ; 黄色結晶 ; mp 188.7 ℃.
Rf = 0.64.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.11 (s, 3H, CH3), 2.33 (s, 3H, CH3), 5.26 (d, 1H, J =3.66 Hz, CH), 7.24-7.38 (m, 2H, Ph), 7.65 (br s, 1H, NH), 7.69 (d, 1H, J =7.32 Hz, Ph), 8.05 (br s, 2H, B(OH)2), 9.71 (br s, 1H, NH), 10.22 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 18.2, 30.3, 54.3, 110.2, 127.7, 128.5, 131.1, 132.6, 133.5, 141.8, 144.4, 173.8, 194.8.
【0072】
【化46】

1z: 表3−4、No. 26 (21 % yield) ; 黄色結晶 ; mp 186.6 ℃.
Rf = 0.68.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.05 (s, 3H, CH3), 2.34 (s, 3H, CH3), 5.58 (d, 1H, J =3.17 Hz, CH), 7.15 (d, 1H, J =7.80 Hz, Ph), 7.25 (dt, 1H, J =0.98, 7.32 Hz, Ph), 7.37 (dt, 1H, J=1.46 , 7.56 Hz, Ph), 7.53 (dd, 1H, J=1.46, 7.32 Hz, Ph), 8.46 (br, s, 2H, B(OH)2), 9.03 (br s, 1H, NH), 10.29 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 18.7, 30.4, 54.5, 102.3, 126.2, 126.9, 133.0, 133.5, 144.8, 147.0, 173.5, 194.6.
【0073】
【化47】

1aa: 表3−4、No. 27 (29 % yield) ; 薄緑結晶 ; mp 213.8 ℃.
Rf = 0.41.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.05 (s, 3H, CH3), 5.39 (d, 1H, J =1.95 Hz), 7.01 (t, 1H, J =7.31 Hz, Ph), 7.12-7.30 (m, 4H, Ph), 7.53 (d, 2H, J =7.80 Hz, Ph), 7.73 (d, 2H, J =7.80 Hz, Ph), 8.04 (br s, 2H, B(OH)2), 9.43 (br s, 1H, NH), 9.74 (br s, 1H, NH), 9.99 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 16.5, 55.2, 107.3, 119.7 (2×C), 123.4, 125.4 (2×C), 128.6 (2×C), 133.6, 134.4 (2×C), 135.3, 139.0, 144.7, 165.0, 174.2.
【0074】
【化48】

1bb: 表3−4、No. 28 (36 % yield) ; 薄緑結晶 ; mp 216.8 ℃.
Rf = 0.51.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.06 (s, 3H, CH3), 5.38 (d, 1H, J =3.62 Hz, CH), 7.00 (t, 1H, J =7.31 Hz, Ph), 7.12-7.40 (m, 4H, Ph), 7.51 (d, 1H, J =7.80 Hz, Ph), 7.60-7.80 (m, 2H, Ph), 8.00 (br s, 2H, B(OH)2), 9.38 (br s, 1H, NH), 9.68 (br s, 1H, NH), 9.93 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 16.4, 55.6, 107.3, 119.7 (2×C), 123.3, 127.6, 128.3 (2×C), 128.5, 132.6, 133.4, 134.5, 135.2, 138.9, 142.0, 165.0, 173.9.
【0075】
【化49】

1cc: 表3−4、No. 29 (20 % yield) ; 薄緑結晶 ; mp 217.6 ℃.
Rf = 0.50.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.14 (s, 3H, CH3), 5.71 (br s, 1H, CH), 6.98 (t, 1H, J =7.31 Hz, Ph), 7.15-7.29 (m, 4H, Ph), 7.42 (d, 1H, J =3.90Hz, Ph), 7.44-7.53 (m, 4H, Ph), 8.49 (br s, 2H, B(OH)2), 8.81 (br s, 1H, NH), 9.65 (br s, 1H, NH), 10.04(br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 16.8, 54.8, 106.9, 119.6, 119.8 (2×C),123.4, 127.0, 128.6 (2×C), 130.0, 133.9, 135.1, 136.3, 138.8, 146.1, 165.0, 172.9.
【0076】
実施例2
反応式:
【化50】

に従って、ジヒドロキシボリル基含有1,4−ジヒドロピリジン誘導体7−1を以下の様にして合成した。
25mlの二口フラスコに、ホルミルフェニルホウ酸誘導体(4−1、4−2又は4−3;各1.1mmol)、β-ケトエステル(0.9mmol)、3−アミノクロトン酸メチル(1mmol)、乾燥2−プロパノール(5ml)を加え、窒素気流下、2−プロパノール還流温度下で表4に示す各々の時間反応させた。
TLCにより反応の終了を確認した後、溶媒を濃縮して、蒸留水を加えて結晶を析出させた。結晶を炉別して、蒸留水及びエーテルで結晶を洗った。これを少量のメタノールに溶かし、シリカゲルカラム(溶出溶媒:CHCl:MeOH=19:1)により精製して乾燥させると結晶としてジヒドロキシボリル基含有1,4−ジヒドロピリジン誘導体7−1を得た。得られた生成物は、IR、NMR、融点により化学構造を特定した。得られた結果を表4に示す。収率はホルミルフェニルホウ酸誘導体に対する単離収率(%)である。
【0077】
【表10】

【0078】
化合物分析データ:ジヒドロキシボリル基含有1,4−ジヒドロピリジン誘導体

【化51】

7a: 表4、No. 1 (75 % yield) ; 白色結晶 ; mp 168.3 ℃.
Rf = 0.40.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.24 (s, 6H, CH3), 3.52 (s, 6H, OCH3), 4.86 (s, 1H, CH), 7.07 (d, 2H, J =8.05 Hz, Ph), 7.59 (d, 2H, J =8.05 Hz, Ph), 7.89 (br s, 2H, B(OH)2), 8.85 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 18.2 (2×C), 38.6, 50.7 (2×C), 101.5, 126.1 (2×C), 133.9, 134.0 (2×C), 145.7 (2×C), 149.60 (2×C), 167.4 (2×C).
【0079】
【化52】

7b: 表4、No. 2 (69 % yield) ; 薄緑結晶 ; mp 175.4 ℃.
Rf = 0.40.
1H (400 MHz, DMSO) : 1.11 and 1.12 (each t, total 3H, J =7.07 Hz, CH2CH3), 2.23 and 2.24 (each s, total 6H, CH3),3.51 and 3.52 (each s, total 6H, OCH3), 3.94-4.02 (m, 2H, CH2CH3), 4.81-4.89 (m, 1H, CH), 7.05-7.12 (m, 2H, Ph),7.59 (d, 2H, J =8.05 Hz, Ph), 7.89 (br, s, 2H, B(OH)2), 8.81 and 8,86(each br s, total 1H, NH)
13C (136MHz, DMSO) : 14.3, 18.3, 18.3, 50.7, 50.7, 59.1, 101.5, 126.2, 126.4 (2×C), 133.9 (2×C), 134.0, 145.4, 145.8, 149.7, 167.0, 167.5.
IR (KBr) : 3322, 3106, 2981, 2950, 2567, 1705, 1662, 1492, 1368, 1218, 1119.
【0080】
【化53】

7c: 表4、No. 3(80 % yield) ; 白色結晶 ; mp 168.0 ℃.
Rf = 0.30.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.24 (s, 6H, CH3), 3.52 (s, 6H, OCH3), 4.87 (s, 1H, CH), 7.08-7.20 (m, 2H, Ph), 7.52 (t, 1H, J=3.90 Hz, Ph), 7.56 (s, 1H, Ph), 7.92 (br s, 2H, B(OH)2), 8.84 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 18.3 (2×C), 38.6, 50.7 (2×C), 101.7, 127.0, 129.0, 131.8, 133.0, 133.8, 145.6 (2×C), 146.8 (2×C), 167.5 (2×C).
【0081】
【化54】

7d: 表4、No. 4 (53 % yield) ; 薄緑結晶 ; mp 180.4 ℃.
Rf = 0.35.
1H (400 MHz, DMSO) : 0.89-1.20 (m, 3H, CH2CH3), 2.00-2.32 (m, 6H, CH3), 3.50 and 3.52 (each s, total 3H, OMe), 3.73-4.20 (m, 2H, CH2CH3), 4.75-4.83 (m, 1H, CH), 7.14 (d, 2H, J =5.12 Hz, Ph), 7.52 (t, 1H, J=4.15 Hz, Ph), 7.57 (d, 1H, J=9.51 Hz, Ph), 7.80-8.02 (m, 2H, B(OH)2), 8.70-8.90 (m, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 14.2 (2×C), 18.3 (2×C), 50.6, 59.0, 101.6, 126.9, 129.2, 131.8, 133.0, 133.2, 133.3, 145.6 (2×C), 147.0, 167.0, 167.5.
【0082】
【化55】

7e: 表4、No. 5 (30 % yield) ; 白色結晶 ; mp 186.2 ℃.
Rf = 0.31.
1H (400 MHz, DMSO) : 2.24 (s, 6H, CH3), 3.53 (s, 6H, CH3), 5.00 (s, 1H, CH), 6.99-7.10 (m, 1H, Ph), 7.23 (d, 2H, J =3.90 Hz, Ph), 7.28 (d, 1H, J =7.32 Hz, Ph), 8.15 (br s, 2H, B(OH)2), 8.89 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 18.6 (2×C), 38.1, 51.1 (2×C), 103.1, 125.2, 128.1, 129.6, 132.1, 134.8, 145.8 (2×C), 152.4 (2×C), 168.6 (2×C).
IR (KBr) : 3459, 3323, 1658, 1488, 1437, 1348, 1224, 1124.
【0083】
【化56】


7f: 表4、No. 6 (23 % yield) ; 薄緑結晶 ; mp 189.7 ℃.
Rf = 0.35.
1H (400 MHz, DMSO) : 1.14 and 1.15 (each t, total 3H, J =7.07 Hz, CH2CH3), 2.23 and 2.25 and, 2.27 (each s, total 6H, CH3), 3.51 and 3.53 (each s, total 3H, OCH3), 3.96-4.06 (m, 2H, CH2CH3), 5.01 (s, 1H, CH), 6.96-7.10 (m, 1H, Ph), 7.15-7.35 (m, 3H, Ph), 8.10-8.26 (m, 2H, B(OH)2), 8.82-8.94 (m, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 14.1, 18.4, 18.6, 50.9, 51.1, 59.7, 103.1, 125.1, 128.1, 129.6, 132.2, 145.4, 145.5, 145.7, 152.5, 168.0, 168.2, 168.6.
【0084】
実施例3
反応式:
【化57】


に従って、ジヒドロキシボリル基含有ジヒドロピラノ[2,3−c]ピラゾール化合物10aを以下の様にして合成した。
25mlの二口フラスコに、4−ホルミルフェニルホウ酸誘導体(4−3;1mmol、0.149g)、95%ヒドラジン (1.1mmol、0.054ml)、アセト酢酸エチル (1.1mmol、0.143g)、マロノニトリル(1mmol、0.66g)、トリエチルアミン(1.1mmol、0.028ml)、エタノール(4ml)を加え、還流下で1時間 反応させた。TLCより反応の終了を確認した後、溶媒を濃縮して、蒸留水を加えて結晶を析出させる。結晶を炉別して、蒸留水、エーテルで結晶を洗い、黄色結晶としてホウ素含有6−アミノ2,4−ジヒドロピラノ-[2,3−c]ピラゾール−5−カルボニトリル(10a)を収率56%で得た。収率はホルミルフェニルホウ酸誘導体に対する単離収率(%)である。
得られた生成物10aの、IR、NMR及び融点のデータを以下に示す。

mp 232-235 (decomp.) ; Rf = 0.51.
1H (400 MHz, DMSO) : 1.76 (s, 3H, CH3), 4.57 (s, 1H, CH), 6.88 (br s, 2H, B(OH)2), 7.12 (d, 2H, J =8.05 Hz, Ph), 7.72 (d, 2H, J =8.05 Hz, Ph), 8.00 (br s, 2H, B(OH)2), 12.09 (br s, 1H, NH).
13C (136MHz, DMSO) : 9.8, 36.3, 57.0, 97.6, 120.9, 126.6 (2×C), 134.4 (2×C), 134.6, 135.7, 146.3, 154.8, 160.9.
IR (KBr) : 3220, 2978, 2868, 2195, 1638, 1600, 1490, 1393, 1175, 1067, 978.
【0085】
実施例4
ヒト子宮頸部癌細胞HeLa.S3細胞株を用いて、ジヒドロキノキサリン誘導体の細胞増殖阻害活性を検定した。得られた結果を表5−1〜5−6に示す。
表中、IC50は50%増殖阻害に至る基質濃度を示し、T/C(%)は30μM投与での処理癌細胞の平均直径の対照癌細胞の平均直径に対する比率(%)を示す。
【0086】
【表11】

【0087】
【表12】

【0088】
【表13】

【0089】
【表14】

【0090】
【表15】

【0091】
【表16】

【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によるジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体は、医薬(例えば、癌治療薬)、農薬または機能性材料等として、またはそれらの中間体や鈴木-宮浦クロスカップリング反応用素材として利用することができる。また、本発明の製造方法は、多成分間のワンポット反応によるジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環誘導体の簡便な製造方法として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物であって、
該化合物が式:
【化1】

、式:
【化2】

または式:
【化3】

[式中、Rはハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルアミノ基、ハロゲン原子を有していてよい炭素数6〜16のアリール基、またはハロゲン原子を表し、R、RおよびRは、それぞれ独立にハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜16のアリール基を表し、Rはハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルキルオキシ基(但し、Xが酸素原子のときは、エトキシ基ではない。)、ハロゲン原子を有していてよい炭素数1〜10のアルキルアミノ基、またはハロゲン原子を有していてよい炭素数6〜16のアリール基を表し、Xは酸素もしくは硫黄原子を表し、nは0、または1〜4の整数を表す。]で表される化合物1、7または10である、ジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物。
【請求項2】
化合物1が、式1w:
【化4】

で表される化合物1wである、請求項1に記載のジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物を有効成分とする、医薬。
【請求項4】
請求項1または2に記載のジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物1または1wの製造方法であって、ホルミルフェニルボロン酸誘導体4、β−ジケトン誘導体3および(チオ)尿素2からなる3成分を、
反応式(1):
【化5】

[式中、R、R、R、Xおよびnは、前記と同義である。]、
に従ってワンポット反応させる工程を含んでなる、ジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物1の製造方法。
【請求項5】
反応式(1)が、反応式(1−1):
【化6】

であり、得られる生成物1が1wである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物7の製造方法であって、ホルミルフェニルボロン酸誘導体4、3−アミノクロトン酸エステル5およびβ−ケトエステル誘導体6からなる3成分を、
反応式(2):
【化7】

[式中、R、R、Rおよびnは、前記と同義である。]、
に従ってワンポット反応させる工程を含んでなる、ジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物7の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物10の製造方法であって、ホルミルフェニルボロン酸誘導体4、β−ケトエステル誘導体6、マロノニトリル8およびヒドラジン9からなる4成分を、
反応式(3):
【化8】

[式中、R、R、Rおよびnは、前記と同義である。]、
に従ってワンポット反応させる工程を含んでなる、ジヒドロキシボリル基含有含窒素複素環化合物10の製造方法。

【公開番号】特開2012−36131(P2012−36131A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178622(P2010−178622)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年2月10日、公立大学法人大阪府立大学主催の「大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 応用生命科学専攻 生物情報科学分野 修士論文発表会」において文書をもって発表
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】