説明

ジヒドロベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミド誘導体の新規結晶性水和物、非晶質体、多形体およびその調製プロセス



本発明は、2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミド(I)(ラジプロジル)の新規な結晶性水和物、非晶質および結晶性多形体に関する。これらの物質の調製プロセス、これらの物質を含む組成物およびその用途についても述べる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミド(I)(ラジプロジル)の新規な結晶性水和物、非晶質および結晶性多形体に関する。これらの物質の調製プロセス、これらの物質を含む組成物およびその用途についても述べる。
【背景技術】
【0002】
N−メチル−D−アスパルテート受容体はニューロンの細胞膜に埋め込まれたリガンド依存性カチオンチャンネルである。NMDA受容体の天然リガンドであるグルタメートによる過剰活性化は、細胞にカルシウム過負荷を導く。これによって細胞機能を変える細胞内事象のカスケードが引き起こされ最終的にニューロンの死に導く[TINS, 10, 299−302 (1987)]。NMDA受容体拮抗物質は、中枢神経系における主要な興奮性神経伝達因子であるグルタメートの過剰放出に伴う多くの疾患の治療に用いられる。さらに、NMDA受容体のNR2Bサブタイプ選択的拮抗物質は、非選択的NMDA受容体によって典型的に起きる有害な副作用、すなわち目眩、頭痛、幻覚、不快および認知および運動機能障害のような精神異常作用が少ないか無いと期待される。
【0003】
国際公開第2003/010159号パンフレットはNMDA受容体のNR2Bサブタイプ選択的拮抗物質として新規ピペリジン誘導体を開示している。特定のカルボン酸アミド誘導体の1つはラジプロジルとしても知られる2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド(I)であり、慢性神経因性疼痛の治療に用いられるきわめて有効なNMDA受容体NR2Bサブタイプ選択的拮抗物質である。ラジプロジルの構造式を下の式(I)に示す。
【0004】
【化1】

【0005】
本発明は2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミド(I)の固体状態での物性に関する。これらの性質はこの物質が固体状態で得られる条件を制御することによって影響される。固体状態の物性は、例えば、粉砕した個体の流動性を含む。流動性は医薬品に加工する際の物質の扱いの容易さに影響する。粉砕した化合物の粒子が互いにうまく流れない場合、製剤の専門家は錠剤またはカプセル製剤の開発においてコロイド状二酸化ケイ素、タルク、デンプンあるいは三塩基性リン酸カルシウムのような流動促進剤の使用を必要とすることを考慮しなければならない。
【0006】
医薬品のもう一つの重要な固体状態の性質は、水性流体中での崩壊速度である。患者の胃液中での活性成分の崩壊速度は経口投与された活性成分が患者の血流に達する速度の上限を与えることから、治療上重要である。崩壊速度はまたシロップ、エリキシル剤および他の液体医薬処方においても考慮が必要である。化合物の固体状態での形体はまたその圧密挙動および貯蔵安定性にも影響する。
【0007】
これらの実用上の物性は、物質の特定の多形相を決める単位格子における分子の配座および配向によって影響される。異なる結晶構造はその粉末X線回折(XRPD)パターンにおいて多かれ少なかれ特徴的な相対強度での特徴的な反射を有し、通常、多形相の明確な同定を可能にする。その修飾は非晶質物質あるいは他の修飾と異なる熱挙動を生じさせる。熱挙動は実験室で毛細管融点、熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)のような技術によって測定され、ある多形相を他と区別するために用いられる。特定の固相はまた固相核磁気共鳴(NMR)スペクトル、ラマンスペクトルおよび赤外(IR)スペクトルによって検出される異なるスペクトル特性を生じさせる。
【0008】
ある薬剤的観点からどの多形体が好ましいか決めるには、多形の多くの物理的、技術的および生物学的性質を比較しなければならない。調製の容易さ、濾過、化学的純度、安定性などのようなある特定の側面が重要な状況において1つの多形体が好ましいことが全く可能である。他の状況においては、より高い溶解度および/または優れた薬物動態に対して異なる多形体が好ましい。さらに、他の場合には、医薬品に導く製剤の観点からある特定の多形体が好ましい。
【0009】
薬剤的に有用な化合物の新規な多形体および溶媒和物の合成は医薬品の性能特性を改善する新しい機会を与える。それは製剤学者が、例えば、標的放出プロフィルあるいは他の望ましい特性をもつ薬物の製剤投与形体を設計するために使用できる材料の範囲を広げる。今や2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの新規多形体、水和物および非晶質体が合成された。
【0010】
ラジプロジルとしても知られる2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミド(I)の調製プロセスは国際公開第2003/010159号パンフレットの実施例3に述べられている。実施例3によれば、最終精製段階でクロロホルム:メタノール=19:1を溶離液としたカラムクロマトグラフィーが用いられ、その後に精製した残渣をジエチルエーテルで粉砕する。このやり方は融点が224−227℃とされる固形物を与える。
【発明の概要】
【0011】
本発明は2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミド(I)の新規な結晶性水和物、非晶質および結晶性多形に関する。これらの物質の調製プロセス、これらの物質を含む組成物およびその用途についても述べる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド無水物形体A(ラジプロジル無水物形体A)の紛末X線回折パターンを示す。
【図2】図2は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド無水物形体A(ラジプロジル無水物形体A)のFT−IRスペクトルを示す。
【図3】図3は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド無水物形体A(ラジプロジル無水物形体A)のFT−ラマンスペクトルを示す。
【図4】図4は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド無水物形体A(ラジプロジル無水物形体A)の熱重量分析曲線を示す。
【図5】図5は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド無水物形体A(ラジプロジル無水物形体A)の示差走査熱量測定トレースを示す。
【図6】図6は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド無水物形体B(ラジプロジル無水物形体B)の紛末X線回折パターンを示す。
【図7】図7は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド無水物形体B(ラジプロジル無水物形体B)のFT−IRスペクトルを示す。
【図8】図8は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド無水物形体B(ラジプロジル無水物形体B)のFT−ラマンスペクトルを示す。
【図9】図9は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド無水物形体B(ラジプロジル無水物 形体B)の熱重量分析曲線を示す。
【図10】図10は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド無水物形体B(ラジプロジル無水物形体B)の示差走査熱量測定トレースを示す。
【図11】図11は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド二水和物(ラジプロジル二水和物)の紛末X線回折パターンを示す。
【図12】図12は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド二水和物(ラジプロジル二水和物)のFT−IRスペクトルを示す。
【図13】図13は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド二水和物(ラジプロジル二水和物)のFT−ラマンスペクトルを示す。
【図14】図14は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド二水和物(ラジプロジル二水和物)の熱重量分析曲線を示す。
【図15】図15は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド二水和物(ラジプロジル二水和物)の示差走査熱量測定トレースを示す。
【図16】図16は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド一水和物(ラジプロジル一水和物)の紛末X線回折パターンを示す。
【図17】図17は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド一水和物(ラジプロジル一水和物)のFT−IRスペクトルを示す。
【図18】図18は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド一水和物(ラジプロジル一水和物)のFT−ラマンスペクトルを示す。
【図19】図19は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド一水和物(ラジプロジル一水和物)の熱重量分析曲線を示す。
【図20】図20は、2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド一水和物(ラジプロジル一水和物)の示差走査熱量測定トレースを示す。
【図21】図21は、非晶質2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド(非晶質ラジプロジル)の紛末X線回折パターンを示す。
【図22】図22は、非晶質2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド(非晶質ラジプロジル)のFT−IRスペクトルを示す。
【図23】図23は、非晶質2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド(非晶質ラジプロジル)のFT−ラマンスペクトルを示す。
【図24】図24は、非晶質2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド(非晶質ラジプロジル)の熱重量分析曲線を示す。
【図25】図25は、非晶質2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド(非晶質ラジプロジル)の示差走査熱量測定トレースを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミド(I)(ラジプロジル)の新規結晶性水和物、非晶質体および多形、およびその調製法に関する。
【0014】
多形とは元素または化合物が1つ以上の異なる結晶形に結晶化する能力である。ある化合物の異なる多形体は、一般に、構造および性質が2種の異なる化合物の結晶のように異なる。溶解度、融点、密度、硬度、結晶形、光学的および電気的性質、蒸気圧等、すべてが多形によって変わる。活性な薬剤成分や賦形剤のような製剤固体は一般に非常に多形修飾を形成しやすい。最終製品の生物学的利用率に寄与するいくつかの因子の中で、薬物自身の固有の溶解度および崩壊速度が主として重要である。患者の胃液中での活性成分の固有の溶解度および崩壊速度は、経口投与された活性成分が患者の血流に達する速度の上限を与えるので治療上重要である。溶解度および/または固有の崩壊速度が異なる多形体を選ぶことによって、薬物の実際の血中レベルを都合よくすることができる。崩壊速度はまた剤形の観点から考慮される。多形が異なると自由エネルギーが異なり従って溶解度が異なるので、溶解度は多形の状態に依存する。当業者は非晶質化合物は結晶形に比べエネルギーが高いため、一般に最大の溶解度および固有の崩壊速度を示し、従って非晶形の活性成分は生物学的利用性がよりよい速放性医薬品の処方として有利であることを知っている。非晶形に特有な1つの欠点は結晶形に比べて物理的安定性が低い、即ち非晶形は時がたてば結晶化しやすいことである。活性成分の安定な非晶形を作ることは新規な多形体を見出すことと同様に重要である。当業者は非晶形の安定性および他の固体状態の性質は調製プロセスに依ることを知っているだろう。
【0015】
多形相の様々な物理化学的性質はまた薬剤の処理および/または医薬品の製造に影響する。直接圧縮によって製造される医薬品にとって、活性成分の固体状態での性質は、特にそれが錠剤の大部分を構成する場合、医薬品の製造に対し重要であり得る。これらの性質はこの化合物が固形で得られる条件を制御することにより影響される。固体状態での性質は、例えば、粉砕した固体の流動性を含む。流動性は医薬品へと処理する間の材料の扱いの容易さに影響する。粉砕した化合物の粒子が互いにうまく流れない場合、製剤の専門家は錠剤またはカプセル製剤の開発においてコロイド状二酸化ケイ素、タルク、デンプンあるいは三塩基性リン酸カルシウムのような流動促進剤の使用を必要とすることを考慮しなければならない。
【0016】
薬物の多形相は、乾燥、粉砕、マイクロ化、湿式造粒、スプレードライ、および圧縮のような様々な製造プロセスに曝されると相変換を受け得る。湿度や温度のような環境条件への暴露もまた多形変換を導く。変換の程度は一般に多形の相対安定性、相変換の動力学的障壁、および負荷応力に依存する。それにもかかわらず、相変換は一般に、変換が製造プロセスの重要な変数がよく理解され制御されている確証された製造プロセスの一部として常に起こり、薬剤の生物学的利用率および生物学的同等性が立証されているならば、重大な懸念ではない。
【0017】
ある薬剤的観点からどの多形体が好ましいか決めるには、多形の多くの物理的、技術的および生物学的性質を比較しなければならない。調製の容易さ、濾過、化学的純度、安定性などのようなある特定の側面が重要な状況において1つの多形が好ましいことは全く可能である。他の状況においては、より高い溶解度および/または優れた薬物動態のために異なる多形が好ましい。さらに、他の場合には、医薬品に導く製剤の観点からある特定の多形が好ましい。
【0018】
化合物の薬剤的価値の観点から、それを極めて高純度で得ることが最も重要である。また、工業的スケールに容易に転換できるプロセスによって、特に急速な濾過及び乾燥が可能な形体で合成し得ることも重要である。上記の技術的および製品の品質の観点から、ある特定の多形が特定の合成経路によってこれらの要求を満たすまたとない機会を与える。従って、工業的スケールで急速に濾過及び乾燥できる極めて高純度の化合物を有利に与えるような適切な多形および結晶化プロセスを見出すことが薬剤的に要求される。
【0019】
他の状況では、より高い溶解度および/またはより優れた薬物動態のために異なる多形が好まれるだろう。薬剤的に有用な化合物の新規な多形および溶媒和物は医薬品の性能特性の改善に新しい機会を与える。それは製剤学者が、例えば、標的放出プロフィルあるいは他の望ましい特性をもつ薬物の製剤投与形体を設計するために使用できる材料の範囲を広げる。
【0020】
物質の特定の多形相を決定する単位格子中の分子の異なる配座および配向は、これらの相の固体状態での分析的性質を可能にする異なる物理的性質をもたらす。異なる結晶構造はその粉末X線回折パターンにおいて多かれ少なかれ特徴的な相対強度での特徴的な反射を有し、通常、多形相の明確な同定を可能にする。その修飾は非晶質物質あるいは他の修飾と異なる熱挙動を生じさせる。熱挙動は実験室で毛細管融点、熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)のような技術によって測定され、ある多形相を他と区別するために用いられる。特定の固相はまた固相核磁気共鳴(NMR)スペクトル、ラマンスペクトルおよび赤外(IR)スペクトルによって検出される異なるスペクトル特性を形成する。これらの分析技術は従って多形相を特徴づけるのに適している。
【0021】
上述の事実によって、薬剤化合物の多くの異なる性質に対して好都合な新しい多形相を見出す必要がある。
【0022】
2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミド(I) ラジプロジルの調製プロセスはWO/2003/010159の実施例3に述べられている。実施例3によれば、最終精製段階でクロロホルム:メタノール=19:1を溶離液としたカラムクロマトグラフィーが用いられ、その後に精製した残渣をジエチルエーテルで粉砕する。このやり方は融点が224−227℃とされる固形物を与える。製品の化学的純度は、ヒトに使用する製品の開発に要求される十分に高い品質で活性成分を得るために改善されなければならない。従って、化学的及び物理的に純粋な形体の新しい多形相および上で説明した様々な薬剤的理由に対して有利な新しい固体形に導く工業的プロセスを見出す必要がある。この必要性を解決するため、我々はラジプロジルの新しい多形相を見出すため徹底的な研究を行った。当業者は、ある化合物にどんな多形があるか、またどんなプロセスがその形成に導くかについて先験的知識は存在しないことを知っている。これは純粋に経験的なプロセスによって発見されるべきで、それが本発明の主題である。
【0023】
驚くべきことに我々はラジプロジルが多形を示しやすいことを見出した。我々は以下に詳述するようにいろいろなやり方で有利なラジプロジルの新規な多形および非晶質体を発見し徹底的に特性を明らかにした。我々または驚くべきことにラジプロジルが様々な化学量論数の水和物、例えばnが0.5、1、1.5、2に等しいラジプロジルnHOを形成することを見出した。
【0024】
ラジプロジル無水物形体A
本発明に従ってラジプロジルの無水物形体Aが有機溶媒または水混和性の有機溶媒から水を加えることにより生じることが見出された。ラジプロジル無水物形体Aの固体状態の特性化(XRPD、IR、ラマン、DSC、TG)をそれぞれ図1−5に示す。無水物形体Aは以下の固体状態の特徴の1つまたはそれ以上によって特徴付けられる:
【0025】
粉末X線回折パターンがほぼ図1に一致する;
(I) FT−IRスペクトルがほぼ図2に一致する;
(II) FT−ラマンスペクトルがほぼ図3に一致する;
(III) TGAサーモグラムがほぼ図4に一致する;
(IV) DSC出力がほぼ図5に一致する;
【0026】
ラジプロジル無水物形体Aの特徴的な回折およびスペクトルデータは次の通りである:
1. ラジプロジル無水物形体Aの特性XRPD反射は次の通りである:
7.8、22.0、23.7、27.0および27.6±0,2°θ
2. ラジプロジル無水物形体Aの特性IR吸収帯は次の通りである:
3295、2863、1852、1768、1058および635±4cm−1
3. ラジプロジル無水物形体Aの特性ラマン吸収帯は次の通りである:
3106、1680、1641、1470、1274および507±4cm−1
【0027】
ラジプロジル無水物形体Aは室温でこれまで発見された中で熱力学的に最も安定な形体であるという利点を有する。発見された他のすべての固体形は懸濁液で無水物形体Aに変換できる。この変換は無水エタノールまたはエタノール:水混合物中で数時間内におこる。このラジプロジル無水物形体Aの相対的安定性という利点は、活性成分の開発、同様に保存期間延長中に化学的にも物理的にも十分安定な投与形体の開発に好んで用いられる。無水物形体Aを加速安定性条件(25℃/75%RH;50℃;50℃/酸素;50℃/75%RH;50℃/90%RH;75℃;75℃/酸素)に10日間曝すことによって、出発物質と比較して化学的不純物の合計も物理的形態も変わらなかった。無水物形体Aのもう1つの技術的利点はこの形体は吸湿性でないことであり、高湿度条件(50℃/90%RH、10日間)に曝しても測定できる重量増加を示さなかった。物理的安定性と非吸水性によりこの多形相は湿式造粒のような処理中に活性成分が水に曝される投薬処方プロセスに特に有利である。
【0028】
ラジプロジル無水物形体B
本発明に従ってラジプロジル無水物形体Bは一水和物から、好ましくは130℃までの昇温によって生じることが見出された。ラジプロジル無水物形体BはTG、DSCサーモグラム、IRおよびラマンスペクトルにより、同様に粉末X線回折パターンによっても特徴付けられる(図6−10)。無水物形体Bは次の固体状態特性の1つまたはそれ以上によって特徴付けられる。
【0029】
(I) 粉末X線回折パターンがほぼ図6に一致する;
(II) FT−IRスペクトルがほぼ図7に一致する;
(III) FT−ラマンスペクトルがほぼ図8に一致する;
(IV) TGAサーモグラムがほぼ図9に一致する;
(V) DSC出力がほぼ図10に一致する;
【0030】
ラジプロジル無水物形体Bの特性回折およびスペクトルデータは次の通りである:
1. ラジプロジル無水物形体Bの特性XRPD反射は次の通りである:
5.4、12.9、16.9および21.0±0.2θ
2. ラジプロジル無水物形体Bの特性IR吸収帯は次の通りである:
3138、1752、809および559±4cm−1
3. ラジプロジル無水物形体Bの特性ラマン吸収帯は次の通りである:
2877、1684、1642、1545、1476および887±4cm−1
【0031】
ラジプロジル二水和物
本発明に従ってラジプロジル二水和物はラジプロジルの有機溶媒溶液をNaHCO稀薄水溶液に加えることにより生じることが見出された。逆の投与あるいは水素を含まないまたは水素を含む有機溶媒からの結晶化はラジプロジル無水物形体Aに導き意味がない。
ラジプロジル二水和物はカールフィッシャー水分およそ7−9%によって、TG、DSCサーモグラム、IRおよびラマンスペクトル、同様に粉末X線回折パターンによっても特徴付けられる。(図11−15)。
【0032】
二水和物は次の固体状態特性の1つまたはそれ以上によって特徴付けられる:
(I) 粉末X線回折パターンがほぼ図11に一致する;
(II) FT−IRスペクトルがほぼ図12に一致する;
(III) FT−ラマンスペクトルがほぼ図13に一致する;
(IV) TGAサーモグラムがほぼ図14に一致する;
(V) DSC出力がほぼ図15に一致する;
【0033】
ラジプロジル二水和物の特性回折およびスペクトルデータは次の通りである:
1. ラジプロジル二水和物の特性XRPD反射は次の通りである:
3.6、14.7、19.1、25.2および28.3±0.2θ
2. ラジプロジル二水和物の特性IR吸収帯は次の通りである:
3426、2950、1870、1776、1668および754±4cm−1
3. ラジプロジル二水和物の特性ラマン吸収帯は次の通りである:
3068、1772、1669、1641および1313±4cm−1
【0034】
今や、ラジプロジルの二水和物は特に安定でありそれゆえ大量生産および操作に適することが発見された。この形体は砕けた板状の習性を示し、急速濾過および乾燥を可能にし、最終的に非常に高純度の製品を与える、効率的、経済的で再現性のあるプロセスによって作ることができる。結晶性二水和物の特に有利な点は、ラジプロジルを最高の化学的純度で与えることで、それはこの固体形を人への投与形体中の活性成分としての使用に優れたものにする。二水和物のもう一つの本質的な価値はイヌで見られる無水物形体Aに比べてよりよい薬物動態プロフィルである。両形体とも無水活性物質として用量5mg/kgをイヌに投与し関連する薬物動態パラメーター(AUC、Cmax)を個々の動物の血漿プロフィルから計算した。動物は投与17時間前および投与6時間後に給餌した。投与後24時間までの試験試料中の血漿中濃度を確証したHPLC(UV) 法で測定した。二水和物の生物学的利用率(AUC24=4491ng/mlh、Cmax=395ng/ml)は無水物形体A(AUC24=1554ng/mlh、Cmax=125ng/ml)に比べよいことが見出された。これらの結果は二水和物が投与形体中の活性成分として特に有利であるという我々の発明を支持する。
【0035】
ラジプロジル一水和物
本発明に従ってラジプロジルの一水和物は水を5−10%含むアセトンから生じることが見出された。一水和物はラジプロジルのアセトン/水混合溶液を冷却することによって作られる。温度制御プログラムのため、結晶化は溶液を減圧下35−40℃で濃縮することによって始め、ついで20−25℃に冷却し、0−5℃で撹拌することによって結晶成長が完了する。
【0036】
一水和物はカールフィッシャー水分3−5重量%によって、TG、DSCサーモグラムおよびIRおよびラマンスペクトル、同様に粉末X線回折パターンによって特徴付けられる(図16−20)。
【0037】
一水和物は次の固体状態特性の1つまたはそれ以上によって特徴付けられる:
(I) 粉末X線回折パターンがほぼ図16に一致する;
(II) FT−IRスペクトルがほぼ図17に一致する;
(III) FT−ラマンスペクトルがほぼ図18に一致する;
(IV) TGAサーモグラムがほぼ図19に一致する;
(V) DSC出力がほぼ図20に一致する;
【0038】
ラジプロジル一水和物の特性回折およびスペクトルデータは次の通りである:
1. ラジプロジル一水和物の特性反射は次の通りである:
4.9、15.1、18.1、26.8および30.2±0.2θ
2. ラジプロジル一水和物の特性IR吸収帯は次の通りである:
3644、1836、1809、1789、1645および919±4cm−1
3. ラジプロジル一水和物の特性ラマン吸収帯は次の通りである:
2887、1642、1484、1295および726±4cm−1
【0039】
一水和物は二水和物に比べ大きな安定性を示す。二水和物は高温で比較的容易に脱水するが、一水和物はそのような条件で十分安定である。N雰囲気下50℃で二水和物は水和した水を2時間で失うが、一水和物は、しかしながら、同じ条件下で検出しうる重量損失を示さず、後者はその水和した水を安定に保つ。この一水和物の二水和物と比べた相対的安定性は昇温を含む製剤技術段階で有利である。一水和物の無水物形体Aを超える利点はそのより低い熱力学的安定性によるより大きな溶解性にあり、それは二水和物の場合のように薬物動態の面で好ましい。
【0040】
ラジプロジル非晶質体
本発明に従ってラジプロジルの非晶質体は二水和物を真空下または乾燥窒素下およそ100℃で乾燥することによって生じることが見出された。非晶質体はそのTG、DSCサーモグラムによって、IRおよびラマンスペクトル、同様に粉末X線回折パターンで反射がないことよって特徴付けられる(図21−25)。
【0041】
非晶質体は次の固体状態特性の1つまたはそれ以上によって特徴付けられる:
(I) 粉末X線回折パターンがほぼ図21に一致する;
(II) FT−IRスペクトルがほぼ図22に一致する;
(III) FT−ラマンスペクトルがほぼ図23に一致する;
(IV) DSC出力がほぼ図25に一致する;
【0042】
ラジプロジル非晶質体の特性回折およびスペクトルデータは次の通りである:
1. ラジプロジル非晶質体はXRPDパターンにおいて反射がない;
2. ラジプロジル非晶質体の特性IR吸収帯は次の通りである;
3275、1768、1685、1219および544±4cm−1
3. ラジプロジル非晶質体の特性ラマン吸収帯は次の通りである;
3071、1687、1640、1414、1280および852±4cm−1
【0043】
我々は非晶質体が最大の溶解性および崩壊速度を示し速放性投薬形体を作るのに好都合であることを見出した。発見した非晶質体の特に有利な点は、それが比較的安定であることである。それは通常の実験室の条件で数ヶ月間結晶化することなく貯蔵でき、安定な非晶質投与形体の開発に対しよい機会を与える。
配合
上述の固形のラジプロジル(無水物形体A、無水物形体B、二水和物、一水和物、非晶質体)は単独あるいは製剤の活性成分として投与できる。このように、本発明はまた、例えば、1つまたはそれ以上の受容しうる担体を含む、本発明の多形および溶媒和物の配合剤を含む。
【0044】
本発明による化合物の投与に適したさまざまな製剤を作るための方法について述べられた多くの標準的な参考文献が利用可能である。可能性のある処方および製剤の例は、例えば、薬剤添加剤ハンドブック、アメリカ薬学会(現行版);薬剤投与形体:錠剤(リーベルマン、ラックマンおよびシュワルツ編)現行版、マーセル・デッカー社刊、同様にレミントン薬剤学(アーサー・オソール編)、1553−1593(現行版)に含まれている。
【0045】
様々な固形のラジプロジル(無水物形体A、無水物形体B、二水和物、一水和物、非晶質体)の投与は、患者の要求、例えば、経口、経鼻、非経口(経皮、静脈内、筋肉内、胸骨内および点滴)、吸入、直腸内、経膣、局所および眼内投与によって遂行される。
【0046】
錠剤、ジェルキャップ、カプセル、カプレット、顆粒、トローチおよび原末を含む様々な経口投与形体が本発明の多形および溶媒和物の投与に用いられる。本発明の多形および溶媒和物は単独あるいは様々な薬剤的に許容される担体、稀釈剤(蔗糖、マンニトール、乳糖、デンプンのような)およびこれに限るものではないが懸濁剤、可溶化剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、保存料、着色剤、着香料、潤滑剤および同様のものを含む当技術分野で周知の添加剤との複合で投与できる。
【0047】
本発明の多形および溶媒和物の投与に、水および非水溶液、乳液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤を含む様々な経口投与液を用いることができる。そのような投与形体はまた水のような当技術分野で周知の適切な不活性稀釈剤および保存料、湿潤剤、甘味料、着香料のような当技術分野で周知の適切な添加剤、同様に本発明の化合物を乳化および/または懸濁するための試薬を含むことができる。本発明の多形および溶媒和物は、例えば静脈内に等張無菌溶液の形で注射してもよい。その他の製剤もまた可能である。
【0048】
本発明の多形および溶媒和物の直腸内投与のための坐薬は化合物をココアバター、サリチル酸塩およびポリエチレングリコールのような適切な添加剤と混合することによって作られる。経膣投与製剤は活性成分に加えて当技術分野で周知の適切な担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、泡沫、あるいはスプレー処方の形にできる。
【0049】
局所投与のための製剤組成物は、皮膚、眼、耳あるいは鼻への投与に適したクリーム、軟膏、塗布剤、ローション、乳液、懸濁液、ゲル、溶液、ペースト、粉末、スプレーおよびドロップの形にできる。局所投与はまた経皮パッチのような手段による経皮投与を含む。
【0050】
吸入投与に適したエアロゾル製剤もまた作ることができる。例えば、気道障害の治療に対し、本発明による化合物を粉末の形(例えば、微粉末)で、あるいは噴霧液または懸濁液の形で吸入によって投与することができる。エアロゾル製剤は許容できる高圧ガス中に入れることができる。
【0051】
ある実施例では、本発明は上述の2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミド(I)の個体形の何れか(ラジプロジル無水物形体A、無水物形体B、二水和物、一水和物および非晶質体)と薬剤として許容される担体からなる組成物を与える。
【0052】
本発明はまたNMDA受容体、例えばNR2B選択的NMDA受容体の調節を必要とする疾患の治療のための医薬品製造における本発明の化合物の使用を提供する。
【0053】
本発明はさらに上述の2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミド(I)の個体形の何れか(ラジプロジル無水物形体A、無水物形体B、二水和物、一水和物および非晶質体)の有効量の投与からなるNMDA受容体、例えばNR2B選択的NMDA受容体の調節を必要とする疾患を治療するための手段を提供する。
【0054】
さらなる実施例では、本発明はさらに上述のラジプロジルの個体形の何れか(ラジプロジル無水物形体A、無水物形体B、二水和物、一水和物および非晶質体)のNMDA受容体、例えばNR2B選択的NMDA受容体の調節を必要とする疾患の治療および/または予防のための医薬品製造における使用を提供する。
【0055】
NMDA拮抗体で有効に治療される疾患は、例えば、脳外傷[Neurol. Res., 21, 330−338 (1999)]または脊椎損傷[Eur. J. Pharmacol., 175, 165−74 (1990)]、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)関連神経損傷[Annu. Rev. Phrmacol. Toxicol., 1998; 38159−77]、筋委縮性側策硬化症[Neurol. Res., 21, 309−12 (1999)]、疼痛のオピオイド治療に対する耐性および/または依存[Brain Res., 731, 171−181 (1996)]、例えば、アルコール、オピオイドあるいはコカインによる離脱症候群[Drug and Alcohol Depend., 59, 1−5 (2000)、筋肉痙攣[Neurosci. Lett., 73, 143−148 (1987)、様々な原因による認知症[Expert Opin. Investig. Drugs, 9, 1397−406 (2000)を含む。NMDA拮抗物質はまたいかなる原因による脳虚血(例えば、脳卒中、心臓手術)にも、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病のような慢性神経変性疾患、疼痛(例えば、外傷後あるいは術後)および神経炎性疼痛または癌に関係した痛みのような慢性疼痛状態、癲癇、不安神経症、鬱病、片頭痛、精神病、低血糖症、網膜変性疾患(例えば、CMV網膜炎)、緑内障、喘息、耳鳴、アミノグリコシド抗生物質誘導難聴の治療にも有用である[Drug News Perspect 11, 523−569 (1998)および国際公開第00/00197号パンフレット]。
【0056】
従って、上述のラジプロジルの固体形(無水物形体A、無水物形体B、二水和物、一水和物および非晶質体)の何れも脳外傷または脊椎損傷、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)関連神経損傷、筋委縮性側策硬化症、疼痛のオピオイド治療に対する耐性および/または依存、例えば、アルコール、オピオイドあるいはコカインによる離脱症候群、虚血性CNS疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病のような慢性神経変性疾患、疼痛および神経炎性疼痛または癌に関係した痛みのような慢性疼痛状態、癲癇、不安神経症、鬱病、片頭痛、精神病、筋肉痙攣、様々な原因による認知症、低血糖症、網膜変性疾患、緑内障、喘息、耳鳴、アミノグリコシド抗生物質誘導難聴の治療に有益に用いられる。
【0057】
上述の2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの個体形(ラジプロジル無水物形体A、無水物形体B、二水和物、一水和物および非晶質体)の何れも通常、例えば、0.1mgとおよそ100mgの間、例えば、およそ0.1mgとおよそ50mgの間のようにおよそ0.01mgとおよそ200mgの間の日用量(成人患者に対して)で投与される。
【0058】
上述の2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの個体形(ラジプロジル無水物形体A、無水物形体B、二水和物、一水和物および非晶質体)の何れも1日1ないし4回、例えば、1日1回、1日2回のように投与できる。上述のラジプロジルの固体形(無水物形体A、無水物形体B、二水和物、一水和物および非晶質体)は連続治療の間、例えば1週間またはそれ以上、適切に投与できる。
【0059】
適用した測定条件:
粉末X線回折測定はCuKα放射を反射配置で用いるPANalytical X’PertPRO回折計で加速電圧40kV、陽極電流40mA、2−40°2θの範囲にわたり走査速度0.02°2Θ/sで、試料ホルダーを1回転/sで回転して行われた。
【0060】
FT−IRスペクトルはThermo Nicolet 6700 FT−IR分光計を用いてKBrペレットで4000−400cm−1の範囲でスペクトル分解能4cm−1、累積走査100回で測定した。
【0061】
FT−ラマン測定は1064nmで動作するNd:YAGレーザーおよび室温DTGS検出器を備えたパーキンエルマー社のスペクトラム2000FT−ラマン分光計で行った。照射ビームの出力は300mWに設定、適用した走査回数は3500−200cm−1の範囲でスペクトル分離能4cm−1で50回とした。
【0062】
DSC測定はRCSユニットを備えたTAインストルメント社のDSC Q1000で実施した。温度およびエンタルピー補正はインジウムおよびスズ標準を用いて行った。蓋のないアルミニウムの皿に10K/分の加熱速度で高純度窒素を50ml/分の流速でパージした。
【実施例】
【0063】
以下の実施例は本発明の単なる例示であり、本開示を読むことによって当業者には本発明に包含される多くの変形や同等物が明らかになるので、決して本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0064】
2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド無水物形体A
[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−オキソ酢酸(11.8g, 0.045mol)、HBTU((O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウム ヘキサフルオロ−ホスフェート)、16.85g(0.045mol)、トリエチルアミン(4.55g(6.24ml, 0.045mol))、およびジメチルホルムアミド(100ml)の撹拌混合物に6−アミノ−3H−ベンゾオキサゾール−2−オン(5.6g, 0.037mol)を加えた。溶液を室温で2時間撹拌し、ついで8%NaHCO溶液(136ml)を滴下した。反応混合物を4時間撹拌し、沈殿した結晶を濾過、水(2×150ml)で洗浄、50℃で乾燥して標記の粗化合物15gを得た。
粗生成物を加熱アセトン(300ml)と水(20ml)の混合物に溶解し、150mlまで蒸発し冷却して標記化合物10.4gを得た。水分(カール−フィッシャー):0%、融点:224−225℃。
XRPD反射測定:7.8, 12.2, 13.8, 15.0, 16.7, 17.5, 18.7, 19.1, 22.0, 23.7, 27.0, 27.6および29.0±0.2°2θ。
IRスペクトル吸収帯測定:3295, 2915, 2863, 1852, 1768, 1677, 1639, 1617, 1506, 1448, 1305, 1214, 1058, 964, 926, 816, 708, 635, 496±4cm−1
ラマンスペクトル吸収帯測定:3106, 3073, 2954, 2946, 2865, 1680, 1641, 1533, 1470, 1452, 1314, 1274, 1243, 1101, 968, 882, 850, 711, 639, 603, 507±4cm−1
【実施例2】
【0065】
2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド無水物形体A
実施例1で得られた2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド(1g)をジメチルホルムアミド(10ml)に溶解した。この溶液に5%NaHCO水溶液(10ml)を撹拌しながら加えた。さらに1時間後、沈殿した結晶を濾過、水(7ml)で2回洗浄、50℃で乾燥して0.4gの無水物を得た。水分(カール−フィッシャー):0.81%、融点:223−225℃。
XRPD反射測定:7.8, 12.2, 13.8, 15.0, 16.7, 17.5, 18.7, 19.1, 22.0, 23.7, 27.0, 27.6および29.0±0.2°2θ。
IRスペクトル吸収帯測定:3295, 2915, 2863, 1852, 1768, 1677, 1639, 1617, 1506, 1448, 1305, 1214, 1058, 964, 926, 816, 708, 635, 496±4cm−1
ラマンスペクトル吸収帯測定:3106, 3073, 2954, 2946, 2865, 1680, 1641, 1533, 1470, 1452, 1314, 1274, 1243, 1101, 968, 882, 850, 711, 639, 603, 507±4cm−1
【実施例3】
【0066】
2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド無水物形体A
2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド二水和物(3g)をアセトン(60ml)と水(4ml)の混合物中に還流下で溶解し、ついで35mlまで蒸発し、20℃で0.5時間、5℃で1時間冷却撹拌し、標記の無水物1.90gを得た。水分(カール−フィッシャー):0%、融点:223−224℃。
XRPD反射測定:7.8, 12.2, 13.8, 15.0, 16.7, 17.5, 18.7, 19.1, 22.0, 23.7, 27.0, 27.6および29.0±0.2°2θ。
IRスペクトル吸収帯測定:3295, 2915, 2863, 1852, 1768, 1677, 1639, 1617, 1506, 1448, 1305, 1214, 1058, 964, 926, 816, 708, 635, 496±4cm−1
ラマンスペクトル吸収帯測定:3106, 3073, 2954, 2946, 2865, 1680, 1641, 1533, 1470, 1452, 1314, 1274, 1243, 1101, 968, 882, 850, 711, 639, 603, 507±4cm−1
【実施例4】
【0067】
2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド二水和物
[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−オキソ酢酸(11.8g, 0.045mol)、HBTU((O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウム ヘキサフルオロ−ホスフェート)、16.85g(0.045mol)、トリエチルアミン(4.45g(6.24ml, 0.045mol))、およびジメチルホルムアミド(100ml)の撹拌混合物に6−アミノ−3H−ベンゾオキサゾール−2−オン(5.6g, 0.037mol)を加えた。溶液を室温で2時間撹拌し、ついで8%NaHCO溶液(136ml)を滴下した。反応混合物を4時間撹拌し、沈殿した結晶を濾過、水(150ml)で2回洗浄した。湿生成物(45g, 標記無水化合物含有率33%)をアセトン(300ml)に溶解し1%NaHCO溶液(200ml)とアセトン(80ml)の混合物に10℃以下で滴下した。混合物を1時間撹拌、水(70ml)で3回洗浄、50℃で乾燥して二水和物8.5gを得た。水分(カール−フィッシャー):8.3%、融点:224−225℃。
XRPD反射測定:3.6, 7.2, 10.8, 12.5, 14.6, 15.3, 16.1, 17.4, 19.0, 19.5, 21.3, 22.6, 24.0, 25.2, 26.1および28.3±0.2°2θ。
IRスペクトル吸収帯測定:3426, 3335, 2950, 1870, 1776, 1668, 1633, 1593, 1509, 1447, 1221, 1197, 968, 939, 852, 815, 754±4cm−1
ラマンスペクトル吸収帯測定:3068, 2952, 2855, 1772, 1669, 1641, 1504, 1458, 1337, 1313, 1160, 1105, 964, 850, 707, 676, 638, 299±4cm−1
【実施例5】
【0068】
2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド二水和物
実施例1で得られた2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド(1g)とジメチルスルホオキシド(2ml)を5%NaHCO水溶液(30ml)に滴下した。1時間撹拌後、沈殿した結晶を水(30ml)に懸濁、さらに1時間撹拌し、水(7ml)で2回洗浄、50℃で乾燥して二水和物0.95gを得た。水分(カール−フィッシャー):8.3%、融点:(106)−224−225℃、純度99.5%(HPLC)。
XRPD反射測定:3.6, 7.2, 10.8, 12.5, 14.6, 15.3, 16.1, 17.4, 19.0, 19.5, 21.3, 22.6, 24.0, 25.2, 26.1および28.3±0.2°2θ。
IRスペクトル吸収帯測定:3426, 3335, 2950, 1870, 1776, 1668, 1633, 1593, 1509, 1447, 1221, 1197, 968, 939, 852, 815, 754±4cm−1
ラマンスペクトル吸収帯測定:3068, 2952, 2855, 1772, 1669, 1641, 1504, 1458, 1337, 1313, 1160, 1105, 964, 850, 707, 676, 638, 299±4cm−1
【実施例6】
【0069】
2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド二水和物
実施例1で得られた2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド(1g)とジメチルスルホオキシド(10ml)を5%NaHCO水溶液(10ml)に撹拌しながら加えた。さらに1時間後、沈殿した結晶を濾過し、水(7ml)で2回洗浄、50℃で乾燥して二水和物0.50gを得た。水分(カール−フィッシャー):8.47%、融点:(106)−222−224℃。
XRPD反射測定:3.6, 7.2, 10.8, 12,5, 14.6, 15.3, 16.1, 17.4, 19.0, 19.5, 21.3, 22.6, 24.0, 25.2, 26.1および28.3±0.2°2θ。
IRスペクトル吸収帯測定:3426, 3335, 2950, 1870, 1776, 1668, 1633, 1593, 1509, 1447, 1221, 1197, 968, 939, 852, 815, 754±4cm−1
ラマンスペクトル吸収帯測定:3068, 2952, 2855, 1772, 1669, 1641, 1504, 1458, 1337, 1313, 1160, 1105, 964, 850, 707, 676, 638, 299±4cm−1
【実施例7】
【0070】
2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド二水和物
実施例1で得られた2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド(1g)をジオキサン(20ml)に還流しながら溶解した。溶液を5%NaHCO水溶液(15ml)に20−22℃で撹拌しながら加えた。1時間後分離した結晶を濾過して標記の二水和物0.80gを得た。水分(カール−フィッシャー):8.45%、融点:(108)−222−224℃。
XRPD反射測定:3.6, 7.2, 10.8, 12.5, 14.6, 15.3, 16.1, 17.4, 19.0, 19.5, 21.3, 22.6, 24.0, 25.2, 26.1および28.3±0.2°2θ。
IRスペクトル吸収帯測定:3426, 3335, 2950, 1870, 1776, 1668, 1633, 1593, 1509, 1447, 1221, 1197, 968, 939, 852, 815, 754±4cm−1
ラマンスペクトル吸収帯測定:3068, 2952, 2855, 1772, 1669, 1641, 1504, 1458, 1337, 1313, 1160, 1105, 964, 850, 707, 676, 638, 299±4cm−1
【実施例8】
【0071】
2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド一水和物
実施例1で得られた2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド(5g)を混合溶媒(アセトン150mlおよび水9ml)に還流しながら溶解する。溶液をセライトを通して濾過し35−40℃に冷却する。溶液を減圧下40℃以下で30−35mlまで濃縮する。懸濁液を20−25℃で30分間、0−5℃で1時間振とうする。生成物を濾過し冷アセトン4mlで2回洗浄し50℃以下で乾燥して標記の一水和物3.2gを得る。水分(カール−フィッシャー):4.2%、融点:224−225℃。
XRPD反射測定:4.9, 9.8, 11.5, 15.1, 18.2, 20.0, 24.6, 25.3, 26.8および30.2±0.2°2θ。
IRスペクトル吸収帯測定:3644, 3358, 3157, 1836, 1809, 1789, 1645, 1621, 1594, 1508, 1230, 1158, 919, 758, 710, 542±4cm−1
ラマンスペクトル吸収帯測定:3072, 2950, 2887, 1642, 1597, 1504, 1484, 1456, 1415, 1336, 1295, 1102, 883, 848, 726, 639±4cm−1
【実施例9】
【0072】
2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド非晶質体
ガラス板上に均一に拡げた2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド二水和物5gを窒素気流下で100℃のオーブンに20分間置く。XRPDパターンに反射は無い。
IRスペクトル吸収帯測定:3275, 2919, 2854, 1768, 1685, 1623, 1508, 1446, 1219, 1157, 965, 928, 809, 758, 708, 544, 496±4cm−1
ラマンスペクトル吸収帯測定:3071, 2936, 1687, 1640, 1530, 1472, 1452, 1414, 1322, 1280, 1101, 968, 852, 710, 639, 388±4cm−1
【実施例10】
【0073】
2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド無水物形体B
ガラス板上に均一に拡げた2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド一水和物0.5gを窒素気流下で130℃のオーブンに5分間置く。
XRPD反射測定:5.4, 15.2, 16.5, 16.9, 19.3, 20.9, 26.2および26.7±0.2°2θ。
IRスペクトル吸収帯測定:3297, 3138, 2924, 1752, 1680, 1633, 1633, 1618, 1508, 1594, 1449, 1215, 1193, 1158, 965, 926, 809, 709, 559, 497±4cm−1
ラマンスペクトル吸収帯測定:3072, 2927, 2877, 1684, 1642, 1545, 1476, 1452, 1315, 1284, 1246, 1102, 967, 887, 854, 711, 639±4cm−1
【実施例11】
【0074】
2−[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド二水和物
[4−(4−フルオロベンジル)−ピペリジン−1−イル]−オキソ酢酸(7.5kg, 28mol)、HBTU((O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウム ヘキサフルオロ−ホスフェート)、10.3kg(28mol)、トリエチルアミン 2.9kg(3.9 l, 28mol)、およびジメチルホルムアミド(100 l)の撹拌混合物に6−アミノ−3H−ベンゾオキサゾール−2−オン(3.6kg, 24mol)を加えた。溶液を室温で2時間撹拌し、ついで8%NaHCO溶液(86 l)を徐々に加えた。混合物を4時間撹拌し、沈殿した結晶を濾過、90 lの水で2回洗浄した。湿生成物(18.5kg, 標記化合物乾燥含有率30%)をアセトン(170 l)に溶解し1%NaHCO(120 l)とアセトン(45 l)の混合物に10℃以下で徐々に加えた。混合物を1時間撹拌、水(45 l)で3回洗浄し、50℃で乾燥して二水和物5.1kgを得た。水分(カール−フィッシャー):8.2%、融点:(106)−224−225℃。純度:99.48%(HPLC)。
XRPD反射測定:3.6, 7.2, 10.8, 12.5, 14.6, 15.3, 16.1, 17.4, 18.1, 19.0, 19.5, 21.3, 22.6, 24.0, 25.2, 26.1および28.3±0.2°2θ。
IRスペクトル吸収帯測定:3426, 3335, 2950, 1870, 1776, 1668, 1633, 1593, 1509, 1447, 1221, 1197, 968, 939, 852, 815, 754±4cm−1
ラマンスペクトル吸収帯測定:3068, 2952, 2855, 1772, 1669, 1641, 1504, 1458, 1337, 1313, 1160, 1105, 964, 850, 707, 676, 638, 299±4cm−1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの
a) 粉末X線回折の特性反射がおよそ7.8、22.0、23.7、27.0および27.6±0.2°2θである;
b) 粉末X線回折パターンがほぼ図1に一致する;
c) FTラマン特性吸収帯がおよそ3106、1680、1641、1470、1274および507±4cm−1である;
d) FTラマンスペクトルがほぼ図3に一致する
の1つまたはそれ以上を与えることを特徴とする結晶性無水物形体A。
【請求項2】
請求項1で特徴付けられる結晶性無水物形体Aを少なくとも50%含むことを特徴とする固形の2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミド。
【請求項3】
2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの
a) 粉末X線回折の特性反射がおよそ5.4、12.9、16.9、および21.0±0.2°2θである;
b) 粉末X線回折パターンがほぼ図6に一致する;
c) FTラマン特性吸収帯がおよそ2877、1684、1642、1575、1476および887±4cm−1である;
d) FTラマンスペクトルがほぼ図8に一致する
の1つまたはそれ以上を与えることを特徴とする結晶性無水物形体B。
【請求項4】
請求項3で特徴付けられる結晶性無水物形体Bを少なくとも50%含むことを特徴とする固形の2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミド。
【請求項5】
nが0.5、1、1.5、2に等しい2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドnHOの結晶性水和物。
【請求項6】
2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの
a) 粉末X線回折の特性反射がおよそ3.6、14.7、19.1、25.2および28.3±0.2°2θである;
b) 粉末X線回折パターンがほぼ図11に一致する;
c) FTラマン特性吸収帯がおよそ3068、1772、1669、1641および1313±4cm−1である;
d) FTラマンスペクトルがほぼ図13に一致する
の1つまたはそれ以上を与えることを特徴とする結晶性二水和物。
【請求項7】
請求項6で特徴付けられる結晶性二水和物を少なくとも50%含むことを特徴とする固形の2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミド。
【請求項8】
2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの
a) 粉末X線回折の特性反射がおよそ4.9、15.1、18.1、26.8および30.2±0.2°2θである;
b) 粉末X線回折パターンがほぼ図16と一致する;
c) FTラマン特性吸収帯がおよそ2887、1642、1484、1295および726±4cm−1である;
d) FTラマンスペクトルがほぼ図18に一致する
の1つまたはそれ以上を与えることを特徴とする結晶性一水和物。
【請求項9】
請求項8で特徴付けられる結晶性一水和物を少なくとも50%含むことを特徴とする固形の2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミド。
【請求項10】
2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの
a) 典型的な‘ハロ’パターンのみで粉末X線回折反射を示さない;
b) FTラマン特性吸収帯がおよそ3071、1687、1640、1414、1280および852±4cm−1である;
d) FTラマンスペクトルがほぼ図23に一致する
の1つまたはそれ以上を与えることを特徴とする非晶質体。
【請求項11】
請求項10で特徴付けられる非晶質体を少なくとも50%含むことを特徴とする固形の2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミド。
【請求項12】
2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの水および水混和性有機溶媒の混合溶液を蒸発または冷却することを特徴とする請求項1で特徴付けられる2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの結晶性無水物形体Aの調製プロセス。
【請求項13】
水混和性有機溶媒がアセトンであることを特徴とする請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの水混和性有機溶媒溶液に稀薄NaHCO溶液を加えることを特徴とする請求項1に記載の2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの結晶性無水物形体Aの調製プロセス。
【請求項15】
水混和性有機溶媒がアセトンであることを特徴とする請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの結晶性一水和物を130℃まで加熱しついで室温に冷却することを特徴とする請求項3に記載の2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの結晶性無水物形体Bの調製プロセス。
【請求項17】
2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの水混和性有機溶媒溶液を稀薄NaHCO溶液に加えることを特徴とする請求項6に記載の2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの結晶性二水和物の調製プロセス。
【請求項18】
水混和性有機溶媒がアセトンであることを特徴とする請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
稀薄NaHCO溶液が25−30%のアセトンを含むことを特徴とする請求項17に記載のプロセス。
【請求項20】
還流している2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの5−10%の水を含むアセトン溶液をまず温度45から35℃に冷却し、ついで大気温度に、最終的に5から0℃に冷却することを特徴とする請求項8に記載の2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの結晶性一水和物の調製プロセス。
【請求項21】
2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの二水和物を真空または乾燥窒素気流下およそ100℃で乾燥することを特徴とする請求項10に記載の2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イル]−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル−アセトアミドの非晶質体の調製プロセス。
【請求項22】
活性成分として固形の
a) 請求項1に記載の無水物形体A
b) 請求項3に記載の無水物形体B
c) 請求項6に記載の二水和物
d) 請求項8に記載の一水和物
e) 請求項10に記載の非晶質体
またはその混合物を含む薬剤処方。
【請求項23】
請求項1ないし11の何れかに記載の結晶質体からなる医薬組成物。
【請求項24】
請求項1ないし11の何れかに記載の結晶質体および/または非晶質体をそれを必要とする患者に投与することからなるNMDA受容体調節を要する疾患の治療および/または予防法。
【請求項25】
NMDA受容体がNR2B選択的NMDA受容体であることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
NMDA受容体調節を要する疾患の治療および/または予防のための薬剤製造における請求項1ないし11の何れかに記載の結晶質体および/または非晶質体の利用。
【請求項27】
NMDA受容体がNR2B選択的NMDA受容体であることを特徴とする請求項26に記載の利用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2012−519680(P2012−519680A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552532(P2011−552532)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【国際出願番号】PCT/HU2010/000023
【国際公開番号】WO2010/100512
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(591180314)リヒター ゲデオン ニルバーノシャン ミーケデーレスベニュタールシャシャーグ (33)
【Fターム(参考)】