説明

ジピリダモール持続放出製剤及びそれを調製のための方法

本発明は、ジピリダモール及び医薬として許容されるカルボン酸の持続放出製剤を含んでなり、当該製剤が約1.5mmから約3mmの直径を有する錠剤固形形態であるジピリダモール製剤を対象とする。任意に、当該製剤は、即時放出アセチルサリチル酸製剤を更に含んで成ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2006年2月9日付けで出願された米国特許仮出願第60/772,257号の利益を主張するものであり、引用文献により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ジピリダモールの持続放出製剤及びアスピリンの即時放出製剤の医薬製剤、並びにそれを製造する方法を包含する。
【背景技術】
【0003】
ジピリダモール(2,6−ビス−(ジエタノールアミノ)−4,8−ジピペリジノ−(5,4−d)−ピリミジン)は、抗血栓作用及び抗凝集作用を有する活性物質として臨床的に用いられる。
【0004】
ジピリダモールの投与の持続放出製剤は、1日あたりの投与回数の減少を促進する利点を明らかに有し、これはより良い服薬指導をもたらすだろう。これは、長期間にわたる薬物治療に関して重要である。別の利点は、吸収の遅延が血中のより均一な濃度をもたらすことが報告されており、それにより血中濃度のピークを回避又は最小にし(これは、有害な副作用を明らかに引き起こし得る)、活性物質の治療量以下の濃度を回避する(これは、長い投与間隔の間の即時形態により生じ得る)ことである。言い換えれば、調製物の安全性、適合性、及び有効性は増大し得る。ジピリダモールの持続放出製剤の明確な利点により、このような製剤を開発するための努力が以前からなされてきた。
【0005】
しかし、ジピリダモールの物理的及び生化学的特性は、持続放出製剤の典型的な開発に完全に不適切であるようである。ジピリダモールの生物学的な半減期は比較的短く、血中の現存濃度はすぐに下がると報告されており、血中の均一なジピリダモール濃度は、活性物質が常に吸収される場合にのみ明らかに得ることができる。ジピリダモールは、酸性の範囲においてのみ水性媒体に可溶性であると報告されている;より具体的には、pH4を超えると、この物質は水中で実質的に不溶性である。これは、ジピリダモールは、上部消化管中でのみ溶出することができ、その後吸収され、一方、腸内領域で生じる高いpH値では、それは不溶性であり、吸収されないことを意味するようである。
【0006】
米国特許第4,367,217号(「‘217特許」)は、ジピリダモールとカルボン酸が、本質的に腸液中で可溶性の酸不溶性ラッカーから成る透析膜で囲まれた球状粒子中に共に混合された組成物を開示する。‘217特許は、「総投与量が何百もの独立した、小さな持続放出製剤に分割されると、この持続放出製剤の統計学的に均質で、概して一貫した胃腸管の通過が提供される。」ことを教示する。‘217特許は、続けて、「pH勾配における相違及び個々の患者の胃腸の運動のジピリダモールの血中濃度の挙動への効果は、それにより大部分が補われること」及び「放出の特定のpH依存性制御の原理の認識は、ジピリダモールの場合において、丸い顆粒又はペレットなどの球状粒子の使用を必要とすること」を説明する。
【0007】
阻害物質であるアセチルサリチル酸が、ヒト血小板の凝集を妨げることが知られている。アセチルサリチル酸が、血小板中の酵素シクロオキシゲナーゼを阻害し、それにより、凝集を促進するトロンボキサンA2の生合成を阻害することが報告されてきた。投与量が増大すると、アセチルサリチル酸の抗血栓作用が増大し、同時に、血管壁のシクロオキシゲナーゼへのその阻害効果も増大し、これは、間接的に凝集阻害物質プロスタサイクリンの合成に負の影響を有する。最も低い可能な投与量のアセチルサリチル酸を用いることが示唆されてきた。Lancet,III(1979)1213,Prostaglandins and Medicine 4(1980)439を参照のこと。一方で、プロスタサイクリン及びトロンボキサンの生合成が既に阻害されていても、投与量が増大すると、アセチルサリチル酸の抗血栓作用は増大するので、より高い投与量を用いることが推奨されてきた。Prostaglandins,Leukotrienes and Medicine 12(1983)を参照のこと。
【0008】
米国特許第4,694,024号(「‘024特許」)は、「驚いたことに」、特定の順序においてある時間間隔でのジピリダモール及びO−アセチルサリチル酸の、連続的なある時間間隔での投与は、「血液機能の低下又は血液の構成要素の障害により引き起こされる又は特徴付けられる疾患の治療において、極めて大きな改善」をもたらすことが見出されたことを開示する。‘024特許は、本発明の生成物の組み合わせが、最初に、すなわちアセチルサリチル酸の前に、ピリミドピリミジン構成要素[ジピリダモール]が放出(生物学的に利用可能)するのを可能にすると述べている。これは、ピリミドピリミジン、例えばジピリダモール、及びアセチルサリチル酸の同時投与が、アセチルサリチル酸の単独の投与において得られるよりも、わずかに強力な作用をもたらすだけであるという観察に基づいていた。更に、‘024特許は、「治療効果は、本発明の組み合わせにおける相対的なアセチルサリチル酸の重量含有率を2以上の値(例えば、ジピリダモール対アスピリンの比が1:2)まで増大させることにより、更に増大し得ない」と述べている。
【0009】
米国特許第6,015,577号は、「ジピリダモール及び/又はモピダモール又はその生理学的に許容される塩及びアセチルサリチル酸又はその生理学的に許容される塩の組み合わせであって、2つの構成要素を4.5超、好ましくは5超の重量比で含み、胃腸管において同時に2つの構成要素を放出する組み合わせは、凝固を顕著に減少又は妨げ、同時に自然の血栓溶解を通して生じるよりもより速く存在する任意の凝血塊を溶解する」ことを開示する。‘577特許は、「多くの場合において、第一にアセチルサリチル酸が放出され、その後胃腸管中で後の段階においてピリミド−ピリミジンが放出された場合に、有利であり得る」ことも述べている。本発明のジピリダモール顆粒を調製するために、ジピリダモールを、例えば有機性食用酸、例えばフマル酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸又はリンゴ酸と共に、且つ結合剤及び/又は接着剤、例えばポリビニルピロリドンと共に混合し、その後、潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムを添加し、当該混合物を、例えばローラー圧縮機を用いて圧縮し、その後、例えば隣接するスクリーニング装置を有する乾燥造粒装置を用いて、顆粒へと粉砕する。
【0010】
現在、胃の酸性に耐え、腸の塩基性環境において放出することのできる遅延放出ジピリダモール製剤の開発に努力が向けられている。本発明は、単独又は即時放出アセチルサリチル酸製剤との併用における、そのような製剤を提供する。本発明の投与形態は、少なくとも、本発明のジピリダモール製剤が圧縮錠剤、好ましくは小型錠剤の形態であって、顆粒、球状粒子又は他の類似のものではなく、好ましくは、錠剤が別々に処理したジピリダモールとカルボン酸の混合物から構成されるという点で、米国特許第4,367,217号及び同第6,015,577号に記載されたものと著しく異なる。
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本発明の1つの実施態様は、ジピリダモール及び医薬として許容されるカルボン酸の持続放出製剤を含んでなり、当該持続放出製剤が約1.5mmから約3mmの直径を有する錠剤固形形態であるジピリダモール製剤を包含する。ジピリダモール製剤は、即時放出アセチルサリチル酸製剤を更に含んで成ることができ、ここで、当該アセチルサリチル酸製剤は、即時放出コーティングでコーティングされる。
【0012】
本発明の別の実施態様は、ジピリダモール、少なくとも1つの医薬として許容される賦形剤、及び少なくとも1つのカルボン酸の持続放出製剤;並びに、アセチルサリチル酸、及び少なくとも1つの医薬として許容される賦形剤の即時放出製剤(ここで、当該持続放出製剤は小型錠剤の形状に製剤化され、当該持続放出製剤と即時放出製剤はカプセル中で混合される)を含んでなる、ジピリダモール製剤を包含する。持続放出製剤は、ジピリダモールの放出を制御する持続放出コーティングを有することができる。
【0013】
好ましくは、ジピリダモール製剤中で、小型錠剤は、約1.5mmから約3mmの直径を有する。より好ましくは、小型錠剤は、約1.8mmから約2.2mmの直径を有する。
【0014】
ジピリダモール製剤中で、カルボン酸のジピリダモールに対する比率は、重量で約1:10から約10:1であることができる。持続放出コーティングは、小型錠剤の約10重量%から約20重量%の量で存在することができる。好ましくは、持続放出コーティングは、小型錠剤の約13重量%から約15重量%の量で存在する。
【0015】
更に別の実施態様において、装置USP(例えば、装置USP I(バスケット))中で、900mlの0.1NのHCl中で1時間混合した後に、製剤のジピリダモールの約20重量%から約35重量%が溶出する。或いは、装置USP(例えば、装置USP I(バスケット))中で、900mlの0.1NのHCl中で1時間、及び900mlのpH5.5のリン酸緩衝液中で1時間混合した後に、製剤のジピリダモールの約45重量%から約55重量%が溶出する。
【0016】
本発明の別の実施態様は、ジピリダモール及び少なくとも1つのカルボン酸を混合すること、好ましくは、ジピリダモール及びカルボン酸は、混合の前に別々の顆粒として別々に製剤化される;当該混合物を小型錠剤へと成形すること;当該小型錠剤を持続放出コーティングでコーティングすること;サリチル酸の即時放出製剤を製剤化すること;及び、コーティングした小型錠剤と即時放出製剤を混合すること、を含んで成るジピリダモール製剤を製造するための方法を包含する。コーティングした小型錠剤と即時放出製剤は、カプセル中で混合することができる。当該方法において、持続放出コーティングは、小型錠剤の約10重量%から約20重量%の量で存在する。好ましくは、持続放出コーティングは、小型錠剤の約13重量%から約15重量%の量で存在する。小型錠剤は、約1.5mmから約3mmの直径を有し、好ましくは、小型錠剤は約1.8mmから約2.2mmの直径を有する。
【0017】
好ましくは、ジピリダモール又は酸の少なくとも1つを造粒し、一方、他のものは粉末形態であることができる。より好ましくは、両方を造粒し、最も好ましくは、それぞれのジピリダモール又は酸を別々に造粒する。
【0018】
好ましくは、ジピリダモールを含んで成る顆粒は、少なくとも約70重量%、より好ましくは少なくとも約80重量%、最も好ましくは少なくとも約90重量%の量でジピリダモールを含む。好ましくは、酸を含んで成る顆粒は、少なくとも約70重量%、より好ましくは少なくとも約80重量%、最も好ましくは少なくとも約90重量%の量でカルボン酸を含む。
【0019】
本発明の実施態様によると、ジピリダモール及び/又は酸の顆粒は、少なくとも1つの充填剤及び少なくとも1つの結合剤も含む。他の賦形剤、例えば可塑剤及び潤滑剤を、製剤中で用いることもできる。更なる賦形剤は、顆粒中又は顆粒外に存在することができる。
【0020】
好ましい実施態様によると、酸を含む顆粒は、ジピリダモールを含む顆粒と混合する前にコーティングされる。別の好ましい実施態様によると、ジピリダモールを含む顆粒は、酸を含む顆粒と混合する前にコーティングされる。好ましくは、両方の構成要素の顆粒は、それらが錠剤へと形成される前に混合される前にコーティングされる。適切なコーティングとしては、水溶性物質、例えばPVP、HPMC、又はOpadry(登録商標)が挙げられる。特に好ましいコーティングは、Opadry(登録商標)又はSepiflim(登録商標)である。Opadry(登録商標)は、ヒプロメロース、ポリエチレングリコール、タルク及び二酸化チタンから構成されるコーティング分散液を調製するための、Colorconから入手可能な市販の粉末混合物である。Sepiflim(登録商標)LPグレードは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、及びステアリン酸から構成され、SEPPIC Inc.(Fairfield、New Jersey 07004)により製造される。酸を含む顆粒をコーティングするのに用いる分散液は、好ましくは、コーティング物質の有機溶液又は分散液である。好ましくは、溶液は、エタノール又はイソプロピルアルコールである。
【0021】
更に別の実施態様は、ジピリダモール製剤を製造するための方法を包含し、ここで、装置USP(例えば、装置USP I(バスケット))中で、900mlの0.1NのHCl中で1時間混合した後に、カプセルのジピリダモールの約20%から約35%が溶出する。或いは、装置USP(例えば、装置USP I(バスケット))中で、900mlの0.1NのHCl中で1時間、及び900mlのpH5.5のリン酸緩衝液中で1時間混合した後に、カプセルのジピリダモールの約45重量%から約55重量%が溶出する。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、ジピリダモール及び医薬として許容されるカルボン酸の持続放出製剤を含んでなり、当該持続放出製剤が約1.5mmから約3mmの直径を有する錠剤固形形態である製剤を包含する。この製剤は、即時放出アセチルサリチル酸製剤を更に含んで成ることができ、ここで、当該アセチルサリチル酸製剤は、即時放出コーティングでコーティングされる。
【0023】
理論に制限される訳ではないが、本発明の製剤は、貯蔵中に時間とともに分解することが知られている、ジピリダモールの安定性を促進するために、ジピリダモールとアセチルサリチル酸製剤を別々に保持すると考えられる。特に、持続放出製剤は、有機酸が胃腸環境でジピリダモールの溶出を促進するように、ジピリダモールと少なくとも1つの有機酸を混合する。
【0024】
別の実施態様において、本発明は、ジピリダモール、少なくとも1つの医薬として許容される賦形剤、及び少なくとも1つのカルボン酸の持続放出製剤(ここで、持続放出製剤は、小型錠剤の形状で製剤化される);並びに、アセチルサリチル酸、及び少なくとも1つの医薬として許容される賦形剤の即時放出製剤(ここで、当該持続放出製剤と即時放出製剤はカプセル中で混合される)を含んでなる製剤を包含する。任意に、持続放出製剤のジピリダモール及び有機酸は、一緒に又は別々に造粒することができる。この製剤は、ジピリダモールの放出を遅延させるコーティングを有する、持続放出製剤をコーティングすることを更に含んで成ることができる。
【0025】
別段断りのない限り、本明細書中で用いる場合、用語「小型錠剤」は、約1.5mmから約3mmの直径を有する錠剤の形状の製剤を指す。好ましくは、用語「小型錠剤」は、約1.8mmから約2.2mmの直径を有する錠剤を指す。
【0026】
更に別の実施態様において、本発明は、ジピリダモール及び少なくとも1つのカルボン酸の持続放出製剤を製剤化すること;当該持続放出製剤を小型錠剤へと成形すること;サリチル酸の即時放出製剤を製剤化すること;及び、持続放出製剤と即時放出製剤を混合すること、を含んで成る、製剤を製造するための方法を包含する。任意に、持続放出製剤及び即時放出製剤を、カプセル中に混合する。
【0027】
持続放出製剤のジピリダモールは、ジピリダモール又はその任意の医薬として許容される塩であることができる。適切なジピリダモールとしては、塩、溶媒、無水物、水和物、多形体、又は非晶質形体が挙げられるが、これらに限定されない。ジピリダモールは、顆粒又は粉末形態であることができる。造粒する場合、ジピリダモールは、顆粒の少なくとも約70重量%の量で存在する。好ましくは、ジピリダモールは、顆粒の約少なくとも80重量%の量、より好ましくは少なくとも90重量%の量で存在する。
【0028】
ジピリダモールは、4超のpHでは実質的に不溶性であるが、6〜7のpHを有する人工的な腸液を用いたインビトロでの放出試験は、ジピリダモールが、コーティングした持続放出製剤から拡散することを示した。有機酸は、持続放出製剤中に浸透した後、腸液を緩衝する。持続放出製剤を囲む腸液にもかかわらず、酸性媒体は、持続放出製剤中に現れる。このようにして、ジピリダモールは溶出して、外に拡散することができ、ジピリダモールが吸収されると、より多くが、継続して腸管内に放出する。
【0029】
典型的には、本発明の製剤中で用いられる有機酸は、親水性であり、ジピリダモールが可溶性であるpHを保持することができる。好ましくは、pHは約4又はそれ未満である。例えば、親水性の酸としては、少なくとも1つのヒドロキシル基及び/又はカルボニル基を有するものが挙げられる。典型的には、有機酸は、約4.2又はそれ未満のpKaを有する。好ましい有機酸としては、カルボン酸、例えばフマル酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸、又はリンゴ酸が挙げられるが、これらに限定されない。有機酸は、ジピリダモールを溶出することのできるpHを保持するのに十分な量で存在する。典型的には、持続放出製剤中で、有機酸のジピリダモールに対するモル比は、重量で、約10:1から約1:10である。或いは、持続放出製剤中で、酸のジピリダモールに対する比率は、約1:2から約2:1である。好ましくは、酸の量の比率は、持続放出製剤の約30重量%から約60重量%である。
【0030】
有機酸は、顆粒の形態であることができる。顆粒として存在する場合、有機酸は、顆粒の少なくとも約70重量%の量で存在する。好ましくは、有機酸は、顆粒の少なくとも約80重量%の量、より好ましくは少なくとも約90重量%で存在する。有機酸は、以下で説明するもののような、少なくとも1つの賦形剤と混合することができる。
【0031】
ジピリダモールの顆粒及び/又は有機酸の顆粒から構成される本発明の錠剤は、持続放出コーティングを有することができる。持続放出コーティングは、ジピリダモール及び/又は有機酸の放出を遅延又は「遅らせる」コーティングである。好ましくは、持続放出コーティングは、胃の胃液中での溶出に抵抗するポリマーに基づき、腸内で通常見出されるpHにおいてより可溶性である。これらのポリマーは、腸に到達する前に活性物質の溶出を妨げるのに通常用いられるので、腸溶性(コーティング)ポリマーとしばしば呼ばれる。本発明の組成物中で、腸溶性ポリマーは、持続放出コーティングを形成するのに用いられ、特定の量の活性物質は胃で溶出し、腸に到達すると、規定された速度で放出し続ける。好ましくは、酸性条件でも、コーティングが、例えば胃の酸性条件でも錠剤から規定された量の薬剤が放出するのを可能にするのに十分な「薄さ」であるように、錠剤上に堆積させるコーティングの量を制御することにより、これは達成される。最も好ましくは、持続放出コーティングは、2つ以上の腸溶性ポリマーであって、各々が溶出し始める特徴的なpHを有するものを混合するものであるだろう。典型的には、持続放出コーティングは、メタクリルポリマー、可塑剤、水、及びアンモニアの溶液、好ましくは強いアンモニア溶液を含んで成る。1つの実施態様において、強いアンモニア溶液は、27.0%以上で31.0%(w/w)以下のNH3を含むNH3の溶液である(USP23を参照のこと)。持続放出コーティングとしては、医薬製剤中で用いられる既知の持続放出ポリマー及び疎水性剤が挙げられるが、これらに限定されない。しかし、より好ましい持続放出コーティングは、腸溶性コーティングポリマーであり、例えば、少なくとも1つのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(Eudragit(登録商標)S)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸塩、セルロース酢酸塩フタル酸塩、エチルセルロースフタル酸塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロースコハク酸塩、又はセルロース酢酸塩コハク酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい持続放出コーティングは、クエン酸トリエチルで可塑化した、Eudragit(登録商標)S−100(メタクリル酸コポリマー、Type B NF)とEudragit(登録商標)L−100(メタクリル酸コポリマー、Type A NF)の混合物を含んで成る。
【0032】
ジピリダモール製剤に適用する持続放出コーティングの量は、ジピリダモールの溶出及び放出に必要とする時間に依存するだろう。小型錠剤及び1:1:1の重量比のEudragit(登録商標)S−100、クエン酸トリエチル、及びEudragit(登録商標)L−100のコーティングを用いる場合、コーティングの典型的な量は、小型錠剤の約10重量%から約20重量%である。好ましくは、持続放出コーティングの量は、小型錠剤の約13重量%から約17重量%である。
【0033】
用いる賦形剤及びその量の選択は、当業界で知られた標準的な手順及び参考資料を考慮して、経験豊富な製剤科学者により容易に決定され得る。
【0034】
本発明の製剤中で用いられる賦形剤としては、結合剤、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、着色剤、着香料、可塑剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
製剤に適した結合剤としては、アカシア、アルギン酸、カルボマーコポリマー、カルボマーインターポリマー、コポビドン、微結晶性セルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グルコース(液体)、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、マルトース、メチルセルロース、酸化ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポビドン、デンプン、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい結合剤としては、ポリビニルピロリドン又はコポビドンが挙げられる。典型的には、結合剤は、小型錠剤の約4重量%の量で存在する。
【0036】
製剤中で用いられる適切な賦形剤としては、微結晶性セルロース(アビセル)、ラクトース、リン酸カルシウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
製剤中で用いられる適切な潤滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ナトリウムステアリルフマル酸塩、ステアリン酸、タルク、又はステアリン酸亜鉛が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸が挙げられる。典型的には、潤滑剤は、小型錠剤の約1.2重量%の量で存在する。アセチルサリチル酸顆粒中では、潤滑剤は、アセチルサリチル酸製剤の約2重量%の量で存在する。
【0038】
製剤中で用いられる適切な崩壊剤としては、アルギン酸、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、マルトース、ポラクリリンカリウム、ナトリウムデンプングリコール酸塩、又はデンプンが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、崩壊剤は、クロスポビドンである。典型的には、崩壊剤は、アセチルサリチル酸製剤の約2重量%の量で存在する。
【0039】
製剤中で用いられる適切な希釈剤としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性及び/又は三塩基性)、硫酸カルシウム、微結晶性セルロース、デキストレート、デキストリン、デキストロース賦形剤、フルクトース、ダオリン(daolin)、ラクチトール、ラクトース(無水物及び/又は一水和物)、マルトース、マンニトール、微結晶性セルロース、ソルビトール、デンプン、又はスクロースが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、希釈剤は、ラクトース又は微結晶性セルロースである。希釈剤は、小型錠剤の約12重量%の量で存在する。或いは、希釈剤は、アセチルサリチル酸製剤の約36重量%の量で存在する。
【0040】
製剤中での使用に適した可塑剤としては、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、ヒマシ油、ジアセチル化モノグリセリド、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、グリセリン、ポリエチレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリブチル、又はクエン酸トリエチルが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、可塑剤は、クエン酸トリエチルである。典型的には、可塑剤は、持続放出コーティングの約27重量%の量で存在する。
【0041】
製剤中での使用に適した流動促進剤としては、タルク、カオリン、モノステアリン酸グリセロール、ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、又は二酸化チタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
即時放出製剤は、薬理学的に許容される塩の形態であり得るアセチルサリチル酸を含む。アセチルサリチル酸の薬理学的に許容される塩は、薬理学的に許容される陽イオン、例えば金属陽イオン、アンモニウム、アミン陽イオン、又は4級アンモニウム陽イオンによるものである。金属陽イオンとしては、アルカリ金属、例えばリチウム、ナトリウム及びカリウム、アルカリ土類金属、例えばマグネシウム及びカルシウムが挙げられるが、これらに限定されない。他の金属、例えばアルミニウム、亜鉛、又は鉄の陽イオン形態を使用することもできる。薬理学的に許容されるアミン陽イオンとしては、1級、2級、又は3級アミンのものが挙げられるが、これらに限定されない。アミン陽イオンとしては、アルキルアミン、例えばメチル−、ジメチル−、トリメチル−、エチル−、ジブチル−、トリイソプロピル−、N−メチルヘキシル−、ベンジル−、β−フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、モノ−、ジ−、及びトリエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、又はN−ブチルエタノールアミンが挙げられる。他の適切なアミン塩としては、リジン及びアルギニンの塩基性アミン塩が挙げられる。適切な薬理学的に許容される4級アンモニウム陽イオンの例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、又はベンジルトリメチルアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
即時放出コーティングは、直ちに溶出してアセチルサリチル酸を放出するコーティングを含み、例えばHPMC、MCC及びステアリン酸から構成されるSEPPIC Inc.(Fairfield,NJ 07004)により市販されているSepifilm(登録商標)LPグレードなどの湿度感受性固形粒子のフィルムコーティングのための胃可溶性組成物が挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、即時放出コーティングは、アセチルサリチル酸製剤の約2重量%から約5重量%の量で存在する。好ましくは、即時放出コーティングは、アセチルサリチル酸製剤の約3重量%から約4重量%の量で存在する。
【0044】
最終的な製剤中で、ジピリダモールのアセチルサリチル酸に対する重量比は、典型的には約8から約1である。例えば、1つの実施態様において、ジピリダモールは、200mgで存在し、アセチルサリチル酸は、25mgで存在する。本発明の範囲から逸脱しないが、その比率が異なる場合には、それは着目のアセチル酸の投与と組み合わせた新規のジピリダモール製剤である。
【0045】
本発明は、ジピリダモール及び少なくとも1つの結合剤及び/又は他の賦形剤を、混合物へと混合すること;当該混合物を、第一の造粒溶液を用いて湿式造粒すること;ジピリダモール顆粒を乾燥及び製粉すること;少なくとも1つの有機酸を少なくとも1つの賦形剤(例えば、結合剤)と混合すること;当該混合物を、第二の造粒溶液を用いて湿式造粒すること;有機酸顆粒を乾燥及び製粉すること;ジピリダモール顆粒と有機酸顆粒を混合し、当該混合物を小型錠剤へと圧縮すること、を含んで成る、ジピリダモールの持続放出製剤を製造するための方法も包含する。任意に、当該方法は、顆粒を混合する前に、ジピリダモール顆粒を持続放出コーティングによりコーティングすることを更に含んで成る。任意に、当該方法は、顆粒を混合する前に、有機酸顆粒を持続放出コーティングによりコーティングすることを更に含んで成る。或いは、ジピリダモール顆粒及び/又は有機酸顆粒は、即時放出コーティングを有することができる。当該方法は、好ましくは腸溶性ポリマーに基づいた持続放出コーティングにより小型錠剤をコーティングすることを更に含んで成ることができる。
【0046】
当該方法は、アセチルサリチル酸と少なくとも1つの希釈剤、崩壊剤、又は潤滑剤を混合すること;当該混合物を錠剤へと圧縮すること;当該錠剤を、即時放出コーティングでコーティングすること;及び、小型錠剤とコーティングしたアセチルサリチル酸製剤の混合物でカプセルを充填することを更に含んで成ることができる。
【0047】
当業者は、全く又はほとんど実験をせずに、成分を混合又は成分を湿式造粒するための方法、パラメーター、及び装置を容易に決定することができる。当業者は、当業界で市販されている装置を用いて、乾燥及び製粉段階を実施するための条件を決定することもできるだろう。当業者が知っているように、成分の量、温度、及び/又は湿気の量などの条件は、特に当該方法を実施するのに必要な条件に影響を及ぼすだろう。例えば、有機酸と医薬として許容される賦形剤の混合は、高せん断混合器を用いて実施することができる。
【0048】
コーティング方法は、顆粒又は錠剤をコーティングするのに一般的に用いられる装置を用いて実施することができる。例えば、コーティングは、ボトムスプレーWursterシステムを用いるGlatt流動床コーティング機を用いて実施することができる。
【0049】
第一及び第二の造粒溶媒は、好ましくは、任意にその中に結合剤を溶解している、水、エタノール、又はイソプロパノールの少なくとも1つを含む。典型的には、結合剤が造粒溶媒中で用いられる場合、結合剤は、水及び/又はエタノール中に溶解される。造粒溶媒中で用いられる適切な結合剤は、上記のものである。好ましくは、造粒溶液中で用いられる結合剤は、ポリビニルピロリドン又はコポビドンの少なくとも1つである。
【0050】
本発明のカプセルの溶出試験は、腸溶性コーティング拡散層でコーティングした小型錠剤の形態のジピリダモールが、市販されているジピリダモールペレット(Boehringer IngelheimのAggrenox(登録商標))と生物学的に同等であることを実証した。本発明の試料中のジピリダモールは、小型錠剤の形態であった。対照的に、市販されている試料のジピリダモールは、ペレットの形態であった。
【0051】
例えば、本発明の小型錠剤で充填されたカプセルを、ジピリダモールの溶出について試験した。当該方法は、装置USP I(バスケット)を用いて、100rpmの速度において、900mlの0.1NのHCl中の第一の溶剤(I)中で1時間混合し;溶出溶剤の試料は、1時間で取り、分析した;pH5.5の900mlのリン酸緩衝液中の第二の溶剤(II)中で1から7時間混合した。溶出溶剤の試料は、1、2、5、及び7時間で取り、分析した。
【0052】
持続放出コーティングでコーティングした小型錠剤の形態の本発明のジピリダモールは、市販されているジピリダモールペレットと類似の溶出プロファイルを有した。持続放出コーティングの13重量%を有する錠剤中に溶解されたジピリダモールのパーセント量は、溶剤(I)中で28%、溶剤(II)中で49%(1+1時間)、63%(2+1時間)、83%(4+1時間)、及び89%(7+1時間)であった。対照的に、Aggrenox(登録商標)から溶出したジピリダモールのパーセント量は、溶剤(I)中で21%、溶剤(II)中で48%(1+1時間)、63%(2+1時間)、84%(5+1時間)、及び90%(7+1時間)であった。実施例2は、溶出試験の結果を更に概説する。
【0053】
本発明の組成物を用いて製造されたハードカプセルは、Aggrenox(登録商標)と生物的に同等であることが見出された。小型錠剤の13重量%(試験A)及び17重量%(試験B)の量で持続放出コーティングによりコーティングしたジピリダモール小型錠剤を用いて製造した本発明のハードカプセルの薬物動態を、Aggrenox(登録商標)のものと比較した。対象を、絶食状態又は給餌した後のいずれかにおいて試験した。試験A/Aggrenox(登録商標)の錠剤のCmaxの比率は、90.77(絶食)及び105.74(給餌)であり、AUCの結果の比率は、101.66(絶食)及び84.85(給餌)であった。試験B/Aggrenox(登録商標)の錠剤のCmaxは、85.36(絶食)及び92.32(給餌)であり、AUCは、95.96(絶食)及び88.78(給餌)であった。
【0054】
本発明を、特定の好ましい実施態様に関して説明したが、他の実施態様は、明細書を考慮することにより、当業者に対して明らかとなるだろう。ジピリダモール持続放出製剤及び即時放出アスピリン製剤及びそれらを製造する方法について詳細に説明する以下の実施例を参照することにより、本発明を更に規定する。多くの変更(物質及び方法の双方)は、本発明の範囲から逸脱することなく実施することができることは、当業者に明らかだろう。
【実施例】
【0055】
実施例1:ジピリダモール小型錠剤(1カプセルあたり200mgのジピリダモール)
高せん断混合器中で、ジピリダモール(200mg/72個の小型錠剤)及び微結晶性セルロース(Avicel(登録商標)PH101、10mg/72個の小型錠剤)を混合することにより、ジピリダモール顆粒を調製し、その後、コポビドン(Plasdone(登録商標)S−630、10mg/72個の小型錠剤)及びアルコールの造粒溶液を用いて湿った顆粒を調製した。湿ったジピリダモール顆粒を、流動床乾燥器中で乾燥し、その後製粉した。
【0056】
高せん断混合器中で、酒石酸(214mg/72個の小型錠剤)及び微結晶性セルロース(Avicel(登録商標)PH101、10mg/72個の小型錠剤)を、コポビドン(Plasdone(登録商標)S−630、10mg/72個の小型錠剤)及びアルコールの造粒溶液と混合することにより、酒石酸顆粒を調製した。湿った酒石酸顆粒を、流動床乾燥器中で乾燥し、その後製粉した。
【0057】
ジピリダモール顆粒(220mg/72個の小型錠剤)、酒石酸顆粒(234mg/72個の小型錠剤)、Avicel(登録商標)PH102(40mg/72個の小型錠剤)、及びステアリン酸マグネシウム(6mg/72個の小型錠剤)を、ブレンダー中で混合した。その後、この混合物を、ロータリー錠剤圧縮機を用いて、1.8から2.2mmの直径を有する小型錠剤へと圧縮した。
【0058】
別に、腸溶性ポリマーに基づいた持続放出コーティング分散液を、タルク(22.4mg/72個の小型錠剤)、Eudragit(登録商標)S−100(メタクリル酸コポリマー、Type B NF、32.5mg/72個の小型錠剤)、クエン酸トリエチル(32.6mg/72個の小型錠剤)、Eudragit(登録商標)L−100(メタクリル酸コポリマー、Type A NF、32.5mg/72個の小型錠剤)、精製水、及び強いアンモニア溶液USPを混合することにより製造した。
【0059】
この小型錠剤を、腸溶性ポリマーに基づいた持続放出コーティングによりコーティングした。コーティングしていない中心と比較して、異なるパーセンテージのコーティングw/wを有する試料を取った。表1の結果を参照のこと。
【0060】
アセチルサリチル酸(25mg/錠剤)、ラクトース(17.5mg/錠剤)、微結晶性セルロース(Avicel PH 102、5.5mg/錠剤)、ステアリン酸(1mg/錠剤)、及びクロスポビドン(1mg/錠剤)を混合することにより、アセチルサリチル酸錠剤を調製した。この混合物を、4から8mmの直径を有する錠剤へと圧縮した。別に、Sepifilm LP761(2mg/錠剤)及び精製水を混合することにより、即時放出コーティングを製造し、これを、アセチルサリチル酸錠剤をコーティングするのに用いた。
【0061】
カプセルNo.0又は00を、25mgのアセチルサリチル酸を有する錠剤及び70から74個のジピリダモールの小型錠剤で充填した。カプセルは、1つのカプセルあたり25mgのアセチルサリチル酸及び200mgのジピリダモールの量の多数の錠剤で充填することができる。
【0062】
実施例2:カプセル溶出試験
実施例1の充填したカプセルを、ジピリダモール持続放出小型錠剤の溶出に関して試験した。この方法は、装置USP I(バスケット)を用い、100rpmの速度において、900mlの0.1NのHCl−溶剤(I)中で1時間混合し、溶出溶剤の試料を1時間で取り、分析し、その後、pH5.5の900mlのリン酸緩衝液−溶剤(II)中で1から7時間で行った。溶出溶剤の試料を、1、2、5、及び7時間で取り、分析した。
【0063】
表1は、200mgのジピリダモールを含むハードゼラチンカプセル対Boehringer Ingelheimにより製造されたAggrenox(登録商標)カプセルに関する溶出プロファイルを概説する。本発明の試料中のジピリダモールは、小型錠剤の形態である。対照的に、市販の試料のジピリダモールは、ペレットの形態である。
【0064】
【表1】

【0065】
腸溶性コーティング拡散層でコーティングした小型錠剤の形態のジピリダモールは、ジピリダモールペレットと同様の溶出プロファイルを有する。ハードゼラチンカプセルとAggrenoxの生物学的同等性試験の結果を、表2において概説する。試験のハードカプセルは、小型錠剤の13重量%(試験A)及び17重量%(試験B)の量において腸溶性コーティングでコーティングしたジピリダモール小型錠剤を有した。
【0066】
【表2】

【0067】
腸溶性コーティング拡散層でコーティングした小型錠剤の形態のジピリダモールは、市販のジピリダモールペレット(Boehringer IngelheimのAggrenox)と生物学的に同等であった。従って、溶出プロファイルに戻ると、900mlの0.1NのHCl中で1時間後に、約10重量%から約32重量%のジピリダモールが溶出することがわかる。そして、その後の時間において、pH5.5の900mlのリン酸緩衝液中で、約28%から約55%のジピリダモールが溶出する。溶出速度と生物学的試験の結果の間に相関関係は存在するが、厳密な一致が存在しないことは理解することができ、従って、限界が考慮されなければならない。
【0068】
以上のように、本発明の組成物の溶出プロファイルは、ジピリダモール錠剤上のコーティング組成物の重量パーセントを調節することにより、有効に調節することができる。同様に、例示されていないが、本発明の組成物の溶出プロファイルは、用いる異なるポリマー間の比率を調節すること、並びに用いるポリマーのグレードを変えることにより、有効に調節することができることを、当業者は理解するだろう。
【0069】
実施例3:コーティングした顆粒から構成されるジピリダモール錠剤を基にする
ジピリダモール持続放出小型錠剤は、顆粒を製造することにより製造される。この顆粒は、高せん断混合器中で、ジピリダモール(200mg/72個の小型錠剤)とAvicel(登録商標)PH101(10mg/72個の小型錠剤)を混合することにより製造する。顆粒は、この混合物を、Plasdone(登録商標)S−630(10mg/72個の小型錠剤)及び水のアルコール溶液と混合することにより調製する。湿った顆粒を、流動床乾燥器中で乾燥し、製粉する。その後、この顆粒を、Sepifilm LP761(22mg/72個の小型錠剤)及び水、エタノール、又はイソプロパノールのコーティング懸濁液でコーティングする。
【0070】
別に、コーティングした酒石酸顆粒を、高せん断混合器中で、酒石酸(214mg/72個の小型錠剤)とAvicel(登録商標)PH101(10mg/72個の小型錠剤)を混合することにより製造する。顆粒は、この混合物を、Plasdone(登録商標)S−630(10mg/72個の小型錠剤)及びアルコールのアルコール溶液と混合することにより調製する。湿った顆粒を、流動床乾燥器中で乾燥し、製粉する。その後、この顆粒を、Sepifilm LP761(24mg/72個の小型錠剤)及び水、エタノール、又はイソプロパノールのコーティング懸濁液でコーティングする。
【0071】
コーティングしたジピリダモール顆粒(242mg)、コーティングした酒石酸顆粒(258mg)、Avicel(登録商標)PH102、及びステアリン酸マグネシウム(6mg)を、ブレンダー中で混合することにより、小型錠剤を製造する。この混合物を、ロータリー錠剤圧縮機を用いて、約1.8mmから約2.2mmの直径を有する小型錠剤へと圧縮する。この混合物は、コーティングしたジピリダモール顆粒及びコーティングしていない酒石酸顆粒;コーティングしていないジピリダモール顆粒及びコーティングした酒石酸顆粒;又は、コーティングしたジピリダモール顆粒及びコーティングした酒石酸顆粒から製造することができる。
【0072】
小型錠剤は、持続放出コーティングを用いてコーティングする。持続放出コーティングは、タルク(22.4mg/72個の小型錠剤)、Eudragit(登録商標)S−100(32.5mg/72個の小型錠剤)、クエン酸トリエチル(32.6mg/72個の小型錠剤)、Eudragit(登録商標)L−100(32.5mg/72個の小型錠剤)、精製水、及び強いアンモニア溶液から製造する。
【0073】
アセチルサリチル酸の錠剤は、以下のようにして製造することができる。アセチルサリチル酸(アスピリン)(25mg)、ラクトース(17.5mg)、Avicel(登録商標)PH102(5.5mg)、ステアリン酸(1mg)、及びクロスポビドン(1mg)を混合し、約4mmから約8mmの直径を有する錠剤へと圧縮する。その後、錠剤を、Sepifilm LP761(2mg)及び精製水から作られた混合物によりコーティングする。
【0074】
カプセルNo.0又は00は、1個のアセチルサリチル酸錠剤及び70から74個のジピリダモールの小型錠剤で充填することができる。各カプセルは、200mgのジピリダモールを有するだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジピリダモール及び医薬として許容されるカルボン酸の持続放出製剤を含んでなり、当該製剤が約1.5mmから約3mmの直径を有する小型錠剤固形形態であるジピリダモール製剤。
【請求項2】
持続放出コーティングを更に含んで成る、請求項1に記載のジピリダモール製剤。
【請求項3】
即時放出アセチルサリチル酸製剤を更に含んで成り、当該アセチルサリチル酸製剤が、即時放出コーティングでコーティングされる、請求項1に記載のジピリダモール製剤。
【請求項4】
ジピリダモール、少なくとも1つの医薬として許容される賦形剤、及び少なくとも1つのカルボン酸を有する持続放出製剤;及び
アセチルサリチル酸及び少なくとも1つの医薬として許容される賦形剤を有する即時放出製剤
を含んで成り、当該持続放出製剤は小型錠剤の形状に製剤化され、当該持続放出製剤と即時放出製剤はカプセル中で混合される、請求項3に記載のジピリダモール製剤。
【請求項5】
持続放出製剤が、ジピリダモールの放出を制御する持続放出コーティングを有する、請求項4に記載のジピリダモール製剤。
【請求項6】
小型錠剤が、約1.8mmから約2.2mmの直径を有する、請求項4に記載のジピリダモール製剤。
【請求項7】
カルボン酸のジピリダモールに対する比率が、重量で約1:10から約10:1である、請求項1に記載のジピリダモール製剤。
【請求項8】
錠剤へと製剤化する前に、カルボン酸及びジピリダモールを造粒する、請求項7に記載のジピリダモール製剤。
【請求項9】
錠剤へと製剤化する前に、カルボン酸及びジピリダモールを別々に造粒する、請求項7に記載のジピリダモール製剤。
【請求項10】
錠剤へと製剤化する前に、カルボン酸を含む顆粒及びジピリダモールを含む顆粒のいずれか又は双方をコーティングする、請求項9に記載のジピリダモール製剤。
【請求項11】
コーティングが水溶性物質である、請求項10に記載のジピリダモール製剤。
【請求項12】
コーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、及びステアリン酸を有する、請求項11に記載のジピリダモール製剤。
【請求項13】
コーティングが、有機溶液又は分散液である、請求項12に記載のジピリダモール製剤。
【請求項14】
持続放出コーティングが、小型錠剤の約10重量%から約20重量%の量で存在する、請求項4に記載のジピリダモール製剤。
【請求項15】
持続放出コーティングが、1:1:1の重量比のメタクリル酸コポリマー、Type B NF;クエン酸トリエチル;及びメタクリル酸コポリマー、Type A NFを有し、当該コーティングが、小型錠剤の約13重量%から約17重量%の量で存在する、請求項4に記載のジピリダモール製剤。
【請求項16】
装置USP I中で、900mlの0.1NのHCl中で1時間混合した後に、製剤のジピリダモールの約10重量%から約32重量%が溶出する、請求項14に記載のジピリダモール製剤。
【請求項17】
装置USP I中で、900mlの0.1NのHCl中で1時間、及び900mlのpH5.5のリン酸緩衝液中で1時間混合した後に、製剤のジピリダモールの約28重量%から約55重量%が溶出する、請求項14に記載のジピリダモール製剤。
【請求項18】
ジピリダモール及び少なくとも1つのカルボン酸を混合すること;
当該混合物を小型錠剤へと成形すること;
当該小型錠剤を持続放出コーティングでコーティングすること;
サリチル酸の即時放出製剤を製剤化すること;及び
コーティングした小型錠剤と即時放出製剤を混合すること、
を含んで成る、ジピリダモール製剤を製造するための方法。
【請求項19】
ジピリダモール及び少なくとも1つのカルボン酸を造粒する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ジピリダモール及び少なくとも1つのカルボン酸を、混合前に別々に造粒する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
ジピリダモール顆粒及びカルボン酸顆粒のいずれか又は双方を、混合前にコーティングする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
コーティングが、PVP、HPMC、及びポリエチレングリコールから成る群から選択される少なくとも1つの水溶性物質を有し、更に任意にタルク及び/又は二酸化チタンを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
コーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、及びステアリン酸の組み合わせである、請求項21に記載のジピリダモール製剤を製造するための方法。
【請求項24】
コーティングした小型錠剤及び即時放出製剤を、カプセル中に混合する、請求項18に記載のジピリダモール製剤を製造するための方法。
【請求項25】
持続放出コーティングが、小型錠剤の約10重量%から約20重量%の量で存在する、請求項18に記載のジピリダモール製剤を製造するための方法。
【請求項26】
持続放出コーティングが、1:1:1の重量比のメタクリル酸コポリマー、Type B NF;クエン酸トリエチル;及びメタクリル酸コポリマー、Type A NFを有する、請求項18に記載のジピリダモール製剤を製造するための方法。
【請求項27】
持続放出コーティングが、約13重量%から約17重量%の量で存在する、請求項26に記載のジピリダモール製剤を製造するための方法。
【請求項28】
小型錠剤が、約1.5mmから約3mmの直径を有する、請求項18に記載のジピリダモール製剤を製造するための方法。
【請求項29】
小型錠剤が、約1.8mmから約2.2mmの直径を有する、請求項18に記載のジピリダモール製剤を製造するための方法。
【請求項30】
装置USP I中で、900mlの0.1NのHCl中で1時間混合した後に、カプセルのジピリダモールの約10重量%から約32重量%が溶出する、請求項24に記載のジピリダモール製剤を製造するための方法。
【請求項31】
装置USP I中で、900mlの0.1NのHCl中で1時間、及び900mlのpH5.5のリン酸緩衝液中で1時間混合した後に、カプセルのジピリダモールの約28重量%から約55重量%が溶出する、請求項24に記載のジピリダモール製剤を製造するための方法。

【公表番号】特表2008−534681(P2008−534681A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505296(P2008−505296)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/005187
【国際公開番号】WO2007/092026
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】