説明

ジャーナル空気軸受およびジャーナル空気軸受の設置方法

【課題】ジャーナル空気軸受(10)の圧力を均衡化させる。
【解決手段】エアサイクルマシン(30)の回転シャフト(26)のための例示的なジャーナル空気軸受(10)は、回転シャフト(26)を収容するように設けられたトップフォイル(14)と、トップフォイル(14)の径方向外側に位置する中間フォイル(18)と、を含む。ジャーナルスリーブ(34)が、中間フォイル(18)の径方向外側に設けられている。トップフォイル(14)と中間フォイル(18)は、トップフォイル(14)の径方向内側の第1の位置と、中間フォイル(18)の径方向外側の第2の位置との間で流体を連通させるように設けられた開口部を定める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体力学式流体フィルムジャーナル軸受またはフォイル軸受とも呼ばれるジャーナル空気軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ジャーナル空気軸受は、航空機のエアサイクルマシンのシャフトなどの回転する構成要素を支持する。典型的なジャーナル空気軸受装置は、トップフォイル、中間フォイルおよびバンプフォイルを含む。これらのフォイルは、ジャーナルスリーブに収容され、回転する構成要素の周りに巻き付けられている。トップフォイルは、他のフォイルよりも回転する構成要素に近接する。ジャーナル空気軸受は、空気などの流体を使用して回転中に構成要素を支持する。構成要素の回転時には、トップフォイルと回転する構成要素との間に、ほぼあるいは全く接触がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ジャーナル空気軸受には、構成要素の回転軸に対して径方向に延在する成形されたキーを含むものがある。成形キーは、ジャーナルスリーブのスロットに受け入れられる。成形キーは、スロットの端部に接触して構成要素に対するフォイルの回転を制限する。回転時に構成要素を支持する流体は、成形キーに設けられたクリアランスを通って連通する。構成要素を支持する流体は、回転時に加圧される。流体の圧力は、スロットに対する周方向位置によって変化する。圧力の変化によって、構成要素が不安定になるおそれがある。従来技術では、流体の圧力は、典型的に成形キーから約180°の位置で最大になる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
エアサイクルマシンの回転シャフトのための例示的なジャーナル空気軸受は、回転シャフトを収容するように設けられたトップフォイルと、トップフォイルの径方向外側に位置する中間フォイルと、を含む。ジャーナルスリーブが、中間フォイルの径方向外側に設けられている。トップフォイルと中間フォイルは、トップフォイルの径方向内側の第1の位置と、中間フォイルの径方向外側の第2の位置と、の間で流体を連通させるように設けられた開口部を定める。
【0005】
例示的なジャーナル空気軸受装置のフォイル装置は、回転シャフトに面するように設けられた内側面を有するトップフォイルと、トップフォイルの外側面に向かって径方向内側に付勢されるように設けられた中間フォイルと、を含む。トップフォイルは、互いに周方向に離間された中断部を内側面に含む。これらの中断部は、トップフォイルと回転シャフトとの間における流体圧力の増大を減少させるように設けられている。
【0006】
ジャーナル軸受をエアサイクルマシンに設置する例示的な方法は、回転シャフトとフォイル軸受との間の流体を加圧し、圧力を第1の位置で解放するとともに、圧力を第2の位置で解放することを含む。第2の位置は、第1の位置から周方向に離間されている。
【0007】
開示された実施例の上述および他の特徴は、以下の実施形態および以下に簡単に説明する図面により最もよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】エアサイクルマシンの回転シャフトを支持する例示的なジャーナル空気軸受装置の説明図である。
【図2】図1のジャーナル空気軸受装置のトップフォイルと中間フォイルを巻き付けられていない状態で示す平面図である。
【図3】図2のトップフォイルと中間フォイルの円筒状の取り外された状態を示す斜視図である。
【図4】図2のトップフォイルと中間フォイルの円筒状の取り外された状態を示す別の斜視図である。
【図5】図1のジャーナル空気軸受装置の円筒状の取り外された状態を示す斜視図である。
【図6】別の例示的なジャーナル空気軸受装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照すると、例示的なジャーナル空気軸受装置10は、トップフォイル14、中間フォイル18およびバンプフォイル22を含む。例示的なジャーナル空気軸受装置10は、エアサイクルマシン30のシャフト26を回転可能に支持している。他の例では、ジャーナル空気軸受10は、ターボ圧縮機、機室空気圧縮機、ラム空気ファンなどの他の航空機補機で使用される。
【0010】
軸受装置10とシャフト26は、ジャーナルスリーブ34に収容される。成形されたキー38が、シャフト26に対して径方向に延在する。成形キー38は、ハウジングボア36に収容されるジャーナルスリーブ34に画成されたスロット42に受け入れられる。Oリングが、ハウジングボア36内でジャーナルスリーブ34を保持するために使用される。シャフト26が回転すると、成形キー38がスロット42と接触し、軸受装置10がシャフト26と共に回転するのを防ぐ。
【0011】
この例では、トップフォイル14と中間フォイル18は、第1の端部44と第2の端部45とを有する単一片である。成形キー38は、トップフォイル14と中間フォイル18とを連結する。他の例では、トップフォイル14は中間フォイル18とは別に設けられる。
【0012】
設置状態では、トップフォイル14と中間フォイルは、それぞれシャフト26の周りに巻き付けられる。バンプフォイル22もシャフト26の周りに巻き付けられる。バンプフォイル22は、トップフォイル14と中間フォイル18の径方向外側に位置する。バンプフォイル22は、中間フォイル18をトップフォイル14に向かって付勢し、シャフト26に対する中間フォイル18およびトップフォイル14の位置を保持する。
【0013】
この例では、空気などの冷却流体が、バンプフォイル22と中間フォイル18との間に定められたチャネル46を通って連通する。冷却流体は、さらに、バンプフォイル22とジャーナルスリーブ34の間に定められたチャネル50を通って連通する。チャネル46,50を通って連通する冷却流体は、軸受装置10から熱エネルギを取り除く。
【0014】
流体は、間隙52を通ってトップフォイル14とシャフト26の間の領域に連通する。シャフト26の回転により、空気などの流体がトップフォイル14とシャフト26の間の領域で加圧される。加圧された流体は、シャフト26から径方向に離れるようにトップフォイル14を付勢する。これにより、シャフト26は、トップフォイル14とシャフト26との間の加圧空気に支持された状態で回転する。シャフト26が運転速度で回転しているときには、トップフォイル14とシャフト26との間に、ほぼあるいは全く接触がない。シャフト26は、エアサイクルマシン30の運転時に回転する。
【0015】
図1を引き続き参照しつつ、図2〜図5を参照すると、複数のスロット54がトップフォイル14に設けられており、複数のボア58が中間フォイル18に設けられている。トップフォイル14と中間フォイル18がシャフト26の周りに巻き付けられると、スロット54はボア58と周方向で一致する。
【0016】
スロット54とボア58は、トップフォイル14とシャフト26の間の流体をチャネル46に連通させる通路を提供する。このように流体をシャフトから離れるように連通させることにより、トップフォイル14とシャフト26との間の圧力がいくらか解放される。
【0017】
スロット54とボア58によって提供される連絡通路は、チャネル46と周方向で一致し、シャフト26とトップフォイル14の間の流体をチャネル46に容易に連通させる。
【0018】
例示的な軸受装置10に関連して、3つの圧力プロファイルつまり圧力降下がある。成形キー38がそのうち1つの圧力プロファイルを定める。スロット54の群とボア58の群が他の2つの圧力プロファイルを定める。
【0019】
この例では、スロット54の群およびボア58の群の一方が、成形キー38から時計回りで周方向に120°離間されている。また、スロット54の群およびボア58の群の他方が、成形キー38から半時計回りで周方向に120°離間されている。3つの圧力プロファイルを周方向に分散させることにより、シャフト26にかかる力が均衡化されてシャフト26の偏心変位が減少する。他の例では、スロット54およびボア58の追加の群が使用される。このような例では、スロット54およびボア58のそれぞれの群は、互いから周方向に90°あるいは72°離間させることができる。
【0020】
複数のボア58は、異なる直径を有するボアを含む。この例では、比較的大きいボアの直径は約0.105インチ(2.67mm)であり、比較的小さいボアの直径は約0.050インチ(1.27mm)である。すなわち、比較的大きいボアの直径は、比較的小さいボアの直径の約2倍である。
【0021】
この例では、複数のスロット54は、それぞれ約0.060インチ(1.52mm)の幅を有し、約0.410インチ(10.41mm)の長さを有する。複数のスロット54は、シャフト26の回転軸Xと整列しており、トップフォイル14の端部から約0.150インチ(3.81mm)離間されている。
【0022】
この例では、複数のスロット54に含まれる各々のスロットは、複数のボア58に含まれる単一の比較的大きいボアおよび2つの比較的小さいボアと周方向で一致している。単一の比較的大きいボアは、軸方向で2つの比較的小さいボアの間に位置する。比較的大きいボアの直径はスロットの幅よりも大きいので、比較的大きいボアはスロットの両端部と重なる。比較的小さいボアは、直径がスロットの幅よりも小さく、かつスロット内で周方向に中心づけられているので、スロットの両端部とは重ならない。
【0023】
スロット54およびボア58は、開口部または中断部の一種として示されているが、他の種類の開口部を使用してチャネル46への流体連絡通路を提供することもできる。さらに、他の例は、トップフォイル14と中間フォイル18の両方を貫通しない特徴部を含みうる。例えば、図6を参照すると、中断部62はトップフォイル14aのみに設けられており、中間フォイル18aには開口部が設けられていない。中断部62は、シャフト26とトップフォイル14aの間の圧力を解放するが、チャネル46への連絡通路の一部を構成しない。中断部62は、圧力降下を提供し、シャフト26とトップフォイル14aの間の流体の流れを撹拌する。
【0024】
例示的な中断部62は、十分に圧力を解放するように(図1〜図5の)スロット54の3倍の幅を有する。他の例は、スロット54の2倍の幅を有する中断部など、異なる幅を有する中断部62を含む。中間フォイル18aに開口部が設けられていない場合には、中断部62は十分に圧力を解放するように典型的にスロット54よりも広い幅を有する必要がある。
【0025】
この例では、トップフォイル14aの径方向に延びる端部66が中断部62を定めている。端部66は、中断部62に流入する流体の流れを制御するために丸くなっている。
【0026】
例示的な中断部62は、トップフォイル14aの内側面70から外側面74まで延びる。他の例では、中断部62はトップフォイル14aの全体を通って延びない。
【0027】
上述の説明は例示的なものであり、限定的なものではない。当業者に明らかとなる開示された実施例の変更および改良は、本開示内容の趣旨から必ずしも逸脱するものではない。よって、本開示内容に与えられる法的保護の範囲は、以下の請求項の検討によってのみ判断される。
【符号の説明】
【0028】
10…ジャーナル空気軸受装置
14…トップフォイル
18…中間フォイル
22…バンプフォイル
26…シャフト
30…エアサイクルマシン
34…ジャーナルスリーブ
36…ハウジングボア
38…成形キー
42…スロット
44…第1の端部
45…第2の端部
46,50…チャネル
52…間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転シャフトを収容するように設けられたトップフォイルと、
トップフォイルの径方向外側に位置する中間フォイルと、
中間フォイルの径方向外側に位置するジャーナルスリーブと、を有し、
トップフォイルと中間フォイルとが、トップフォイルの径方向内側の第1の位置と、中間フォイルの径方向外側の第2の位置と、の間で流体を連通させるように設けられた開口部を定めていることを特徴とするエアサイクルマシンの回転シャフト用のジャーナル空気軸受。
【請求項2】
ジャーナルスリーブの径方向内側に位置し、トップフォイルの少なくとも一部分を回転シャフトの外側面に対して付勢するように設けられたバンプフォイルを含むことを特徴とする請求項1記載のジャーナル空気軸受。
【請求項3】
前記開口部は、バンプフォイルと中間フォイルとの間に定められるキャビティに流体を連通させるように設けられており、前記キャビティは、回転シャフトの回転軸と整列する方向に冷却空気を連通させるように設けられていることを特徴とする請求項2記載のジャーナル空気軸受。
【請求項4】
前記開口部は、トップフォイルを中間フォイルに連結する成形キーから周方向に離間されており、この成形キーは、径方向に延在するとともに回転軸に対するトップフォイルの回転を防止するように設けられていることを特徴とする請求項1記載のジャーナル空気軸受。
【請求項5】
回転シャフトは、航空機のエアサイクルマシンに設けられていることを特徴とする請求項1記載のジャーナル空気軸受。
【請求項6】
トップフォイルは、中間フォイルと連結されていることを特徴とする請求項1記載のジャーナル空気軸受。
【請求項7】
前記開口部は、トップフォイルに設けられ、中間フォイルに設けられた少なくとも1つのボアと周方向で一致する第1のスロットと、トップフォイルに設けられ、中間フォイルに設けられた少なくとも1つのボアと周方向で一致する第2のスロットと、を含むことを特徴とする請求項1記載のジャーナル空気軸受。
【請求項8】
回転シャフトに面するように設けられた内側面を有するトップフォイルと、
トップフォイルの外側面に向かって径方向内側に付勢されるように設けられた中間フォイルと、を有し、
トップフォイルは、内側面に複数の中断部を含み、これらの中断部は互いに周方向に離間しているとともに、トップフォイルと回転シャフトとの間における流体圧力の増大を減少させるように設けられていることを特徴とするジャーナル空気軸受のフォイル装置。
【請求項9】
トップフォイルを中間フォイルに連結する成形キーを含み、この成形キーは、回転シャフトに対するジャーナル空気軸受フォイルの回転を制限するように設けられていることを特徴とする請求項8記載のジャーナル空気軸受のフォイル装置。
【請求項10】
少なくとも1つの中断部は、成形キーから周方向に離間されていることを特徴とする請求項9記載のジャーナル空気軸受のフォイル装置。
【請求項11】
少なくとも1つの中断部は、成形キーから周方向に120°離間された第1の開口部の配列と、第1の開口部から120°離間された第2の開口部の配列と、を含むことを特徴とする請求項9記載のジャーナル空気軸受のフォイル装置。
【請求項12】
前記複数の中断部は、回転シャフトの回転軸と整列する少なくとも1つのスロットを含むことを特徴とする請求項8記載のジャーナル空気軸受のフォイル装置。
【請求項13】
ジャーナル空気軸受は、流体フィルムジャーナル空気軸受であることを特徴とする請求項8記載のジャーナル空気軸受のフォイル装置。
【請求項14】
前記複数の中断部は、前記内側面から前記外側面に延びる少なくとも1つの流体連絡通路の一部を構成することを特徴とする請求項8記載のジャーナル空気軸受のフォイル装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの流体連絡通路は、回転シャフトの回転軸と整列するようにトップフォイルに設けられた少なくとも1つのスロットと、中間フォイルに設けられた少なくとも1つのボアと、を含むことを特徴とする請求項14記載のジャーナル空気軸受のフォイル装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つのボアは、第1のボアの群と第2のボアの群とを含み、第1のボアの群および第2のボアの群は、少なくとも1つの第1のボアと複数の第2のボアとをそれぞれ含み、第1のボアは第2のボアよりも直径が大きいことを特徴とする請求項15記載のジャーナル空気軸受のフォイル装置。
【請求項17】
第1のボアの直径は前記スロットの幅よりも大きく、第2のボアの直径は前記スロットの幅よりも小さいことを特徴とする請求項16記載のジャーナル空気軸受のフォイル装置。
【請求項18】
第1のボアの群と第2のボアの群とは、2つの第2のボアの間で軸方向に配置された1つの第1のボアをそれぞれ含むことを特徴とする請求項16記載のジャーナル空気軸受のフォイル装置。
【請求項19】
エアサイクルマシンの回転シャフトにジャーナル空気軸受のトップフォイルを設け、トップフォイルは開口部を含み、
トップフォイルの径方向外側に中間フォイルを設け、中間フォイルは開口部を含み、
トップフォイルと中間フォイルの径方向外側にバンプフォイルを巻き付けて、バンプフォイルと中間フォイルとの間にチャネルを形成し、
トップフォイルの開口部と中間フォイルの開口部を通って、回転シャフトと前記チャネルとの間で流体を連通させる通路を定めることを含むことを特徴とするエアサイクルマシンへのジャーナル空気軸受の設置方法。
【請求項20】
径方向に延在するとともに回転シャフトに対するトップフォイルの回転を防止するように設けられた成形キーによって、トップフォイルを中間フォイルに連結し、
成形キーを使用して、トップフォイルの開口部と中間フォイルの開口部とを周方向で一致させることをさらに含むことを特徴とする請求項19記載のジャーナル空気軸受の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−31995(P2012−31995A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163784(P2011−163784)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】