ジャーナル軸受装置及びそれを用いた回転電機
【課題】軸安定性を確保しかつ、高周速化に伴って生じる可能性が高いエロージョンを防止できるジャーナル軸受装置を提供する。
【解決手段】上半軸受と下半軸受からなり、上記下半軸受の軸受幅方向中央に、周方向の溝を設けた二分割型ジャーナル軸受において、上記溝の終端を軸受荷重方向より回転方向側にし、かつ上記終端と上記下半軸受の水平面との間にランド部を設け、上記終端と上記下半軸受外部とを連通する流路を設けることにより達成できる。
【解決手段】上半軸受と下半軸受からなり、上記下半軸受の軸受幅方向中央に、周方向の溝を設けた二分割型ジャーナル軸受において、上記溝の終端を軸受荷重方向より回転方向側にし、かつ上記終端と上記下半軸受の水平面との間にランド部を設け、上記終端と上記下半軸受外部とを連通する流路を設けることにより達成できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンや発電機ロータ等の高速回転体を支承するジャーナル軸受装置とそれを用いた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蒸気タービンや発電機のロータ等の大型回転機械の軸を支持するには、油膜圧力により軸を支持するジャーナルすべり軸受が用いられる。これには、軸を支持することの他に、オイルウィップやオイルホワールなどの自励振動を抑制する能力が必要とされる。一方、周速の高い機械においては、エロージョンが生じる懸念があった。
【0003】
軸振動安定性に関して特許文献1では、上半軸受と下半軸受からなるジャーナル軸受において、軸受下半側の軸受幅方向中央に周方向の溝を設け、これにより軸受面圧を大きくし、軸の偏心量を大きくすることで、オイルウィップやオイルホワールなどの自励振動を抑制し、軸の安定性を向上させる構造が提案されている。
【0004】
エロージョン防止に関して特許文献2では、上半軸受と下半軸受からなるジャーナル軸受において、上半部と下半部の分割面の開口スパンを変更することで、圧力回復を抑え、また損傷が予測される位置を熱処理により硬化させることでエロージョンを防止する構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−064714号公報
【特許文献2】特開昭62−067325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のジャーナル軸受装置の縦断面図を図13に、図13中のA−A線に沿って分割した下半軸受1aの上面図を図14に示す。近年の、蒸気タービンの出力増加や、発電機の大容量化に伴う軸の大径化により、軸受は高周速条件で使用されるため、軸受内の潤滑油の流れが高速化し、その流れが上半軸受に衝突し、従来のジャーナル軸受装置ではエロージョンが起こりやすくなるという問題があった。また、図15に示すように軸安定性を確保するために設けられる下半軸受1aの軸方向中央の周方向溝では、溝内の流速が大きいため、エロージョンの発生する可能性は高いという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、軸安定性を確保しかつ、高周速化に伴って生じる可能性が高いエロージョンを防止できるジャーナル軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は上半軸受と下半軸受からなり、前記上半軸受と前記下半軸受との接合面の前記下半軸受の回転方向には、給油口が設けられ、前記下半軸受の軸方向中央に、周方向溝を設け、前記給油口と給油装置とを連通する給油管を設けた二分割型ジャーナル軸受において、前記周方向溝の終端を軸受荷重方向より回転方向側にし、かつ前記終端と前記下半軸受の水平面との間にランド部を設け、前記終端と前記下半軸受外部とを連通する流路を設けたものである。
【0009】
また、本発明は上半軸受と下半軸受からなり、前記上半軸受と前記下半軸受との接合面の前記下半軸受の回転方向には、給油口が設けられ、前記下半軸受の軸受幅方向中央に、周方向溝を設け、前記給油口と給油装置とを連通する給油管を設けた二分割型ジャーナル軸受において、前記周方向溝の終端を軸受荷重方向より回転方向側にし、かつ前記終端と前記下半軸受の水平面との間にランド部を設け、前記終端と前記給油管とを連通する流路を設けたものである。
【0010】
更に、本発明は上半軸受と下半軸受からなり、前記上半軸受と前記下半軸受との接合面の前記下半軸受の回転方向には、給油口が設けられ、前記下半軸受の軸受幅方向中央に、周方向溝を設け、前記給油口と給油装置とを連通する給油管を設けた二分割型ジャーナル軸受において、前記周方向溝の終端を軸受荷重方向より回転方向側にし、かつ前記終端と前記下半軸受の水平面との間にランド部を設け、前記終端と前記給油管とを連通し、かつ前記給油管とのなす角度が鋭角となる流路を設けたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軸安定性を向上させる溝の効果を保ちつつ、流速の大きい溝内の流れが、上半軸受に衝突しないためエロージョンを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の軸受幅中央での断面図である(実施例1)。
【図2】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の下半軸受1aの上面図である(実施例1)。
【図3】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の、下半軸受1aの軸受幅中央での断面拡大図である(実施例1)。
【図4】下半軸受1aに設けた周方向溝2内部の周方向の圧力分布図である。
【図5】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の、軸受幅中央での断面図である(実施例2)。
【図6】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の下半軸受1aの上面図である(実施例2)。
【図7】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の、軸受幅中央での断面拡大図(実施例2)。
【図8】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の、軸受幅中央での断面図である(実施例3)。
【図9】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の下半軸受1aの上面図である(実施例3)。
【図10】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の、軸受幅中央での断面拡大図である(実施例3)。
【図11】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の、加工方法に関する、軸受幅中央での断面拡大図である(実施例3)。
【図12】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置を設けた、回転電機の概略図である(実施例4)。
【図13】従来の、ジャーナル軸受装置の、軸受幅中央での断面図である。
【図14】従来の、ジャーナル軸受装置の下半軸受1aの上面図である。
【図15】従来の、ジャーナル軸受装置の軸受幅中央での拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のジャーナル軸受装置は、分割可能な上半軸受1b及び下半軸受1aからなり、これらの内周面と回転軸8の間に、潤滑油を供給して油膜を形成することにより回転自在に回転軸8を支持するようにしたものが前提である。
【実施例1】
【0014】
本発明の一実施例の構造について説明する。本発明の第一実施形態の縦断面図を図1に示し、図1のA−A′線に沿って分割した下半軸受1aの上面図を図2に示す。本実施例のジャーナル軸受装置は、負荷側の下半軸受1aに、潤滑油を供給するための給油管3と、潤滑油の一部を排出するための排油管4が設けられている。また、下半軸受1aの上半軸受1bとの合せ面近傍には、給油管3側と排油管4側に水平部7がそれぞれ設けてある。下半軸受1aの軸方向中央には、回転軸8の振動安定性を確保するため回転方向に沿って周方向溝2を設けている。この周方向溝2の終端9は、軸受荷重負荷位置より回転方向側にあり、またその終端9と給油管3側の水平部7の間にはランド部16を有している。終端9には穴5が設けてあって、その穴5から下半軸受1a外部へと連通するような流路6が設けられている。
【0015】
次に、本実施例の作用効果について図3、図4を用いて説明する。周方向溝2内とその終端9に設けてある穴5から下半軸受1a外部へ連通する流路6内の油の流れを図3に示す。周方向溝2内の流速の大きい潤滑油は、終端9を設けたことによりそこでせき止められ、エロージョン発生位置である上半軸受1bに到達しない。そのためエロージョンを回避することができる。
【0016】
次に周方向溝2内の圧力分布を図4に示す。図4に示すように、周方向溝2内を流れる油が終端9で留まると、終端9の圧力が大きくなり(図中点線)軸安定性を向上させる周方向溝2の効果を小さくしてしまうが、本実施例では、周方向溝2内の潤滑油は終端9に設けた穴5から流路6を通って軸受1外部へ排出されるため圧力が高くならない(図4中実線)。そのため、軸安定性を損なうことなくエロージョンを回避できる。
【実施例2】
【0017】
本発明の一実施例の構造について説明する。本発明の第二実施例の形態の縦断面図を図5に示し、図5のA−A′線に沿って分割した下半軸受1aの上面図を図6に示す。本実施例のジャーナル軸受装置は、負荷側の下半軸受1aに、潤滑油を供給するための給油管3と、潤滑油の一部を排出するための排油管4が設けられている。また、下半軸受1aの上半軸受1bとの合せ面近傍には、給油管3側と排油管4側に水平部7がそれぞれ設けてある。下半軸受1aの軸方向中央には、回転軸8の振動安定性を確保するため回転方向に沿って周方向溝2を設けている。この周方向溝2の終端9は、軸受荷重負荷位置より回転方向側にあり、またその終端9と給油管3側の水平部7の間にはランド部16を有している。終端9には穴5が設けてあって、その穴5から下半軸受1aに設けてある給油管3へ連通するような流路6が設けられている。
【0018】
次に、本実施例の作用効果について説明する。周方向溝2内とその終端9に設けてある穴5から給油管3へ連通する流路6内の油の流れを図7に示す。実施例1と同様、周方向溝2内の流速の大きい潤滑油は、終端9を設けたことによりそこでせき止められ、エロージョン発生位置である上半軸受1bに到達しない。また、周方向溝2内を流れる油が終端9で留まると、終端9の圧力が大きくなり軸安定性を向上させる周方向溝2の効果を小さくしてしまうが、本実施例においても、実施例1と同様で周方向溝2内の潤滑油は終端9に設けた穴5から流路6を通るため圧力が高くならない。さらに流路6を通った潤滑油は、給油管3に流れるため、給油量を増やす必要がなく、効率がよい。
【実施例3】
【0019】
本発明の一実施例の構造について説明する。本発明の第三実施例の形態の縦断面図を図8に示し、図8のA−A′線に沿って分割した下半軸受1aの上面図を図9に示す。本実施例のジャーナル軸受装置は、負荷側の下半軸受1aに、潤滑油を供給するための給油管3と、潤滑油の一部を排出するための排油管4が設けられている。また、下半軸受1aの上半軸受1bとの合せ面近傍には、給油管3側と排油管4側に水平部7がそれぞれ設けてある。下半軸受1aの軸幅方向中央には、回転軸8の振動安定性を確保するため回転方向に沿って周方向溝2を設けている。この周方向溝2の終端9は、軸受荷重負荷位置より回転方向側にあり、またその終端9と給油管3側の水平部7の間にはランド部16を有している。終端9には穴5が設けてあって、その穴5から下半軸受1aに設けてある給油管3へ連通するように流路6が設けられ、その流路6と給油管3のなす角度が鋭角となるようにしている。
【0020】
次に、本実施例の作用効果について説明する。周方向溝2内とその終端9に設けてある穴5から給油管3へ連通する流路6内の油の流れを図10に示す。実施例1及び実施例2と同様、周方向溝2内の流速の大きい潤滑油は、終端9を設けたことによりそこでせき止められ、エロージョン発生位置である上半軸受1bに到達しない。また、周方向溝2内を流れる油が終端9で留まると、終端9の圧力が大きくなり軸安定性を向上させる周方向溝2の効果を小さくしてしまうが、本実施例においても、実施例1、実施例2と同様で周方向溝2内の潤滑油は終端9に設けた穴5から流路6を通るため圧力が高くならない。また流路6を通った潤滑油が、給油管3に流れるため、給油量を増やす必要がなく、さらに流路6を通った潤滑油は、給油管を通る油と同じ方向に流れることから、しゅう動面へ供給される潤滑油の流速をあげることが可能になり、供給する油量を、より減らすことができる。
【実施例4】
【0021】
本発明の軸受装置を適用した、回転電機の具体例として蒸気タービンに適用した例を図12に示す。
【0022】
高圧タービン、中圧タービン、低圧タービンを有する蒸気タービン発電機においては、一般的に高圧タービンロータ12と中圧タービンロータ13と低圧タービンロータ14が存在し、これらのロータと発電機ロータ15が一本の軸に連結されている。そして、これらはそれぞれのロータの両端に軸受1を配置することで支えられることが一般的である。
【0023】
蒸気タービンにおいては、効率の向上のため、ロータ翼の長翼化に伴う軸径の増大により、周速が増してきているが、それに伴いエロージョン発生の可能性が大きくなる。そして定期点検等で、これらの軸受にエロージョン等が確認された場合には、それの補修または交換などにより、費用や時間がかかる。
【0024】
しかし、本発明の軸受を使用することで、従来よりもエロージョン発生率を低くすることが可能となり、補修の時間や費用を低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0025】
1 軸受
1a 下半軸受
1b 上半軸受
2 周方向溝
3 給油管
4 排油管
5 穴
6 流路
7 水平部
8 回転軸
9 終端
10 加工穴
11 ふた
12 高圧タービンロータ
13 中圧タービンロータ
14 低圧タービンロータ
15 発電機ロータ
16 ランド部
17 給油口
18 排油口
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンや発電機ロータ等の高速回転体を支承するジャーナル軸受装置とそれを用いた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蒸気タービンや発電機のロータ等の大型回転機械の軸を支持するには、油膜圧力により軸を支持するジャーナルすべり軸受が用いられる。これには、軸を支持することの他に、オイルウィップやオイルホワールなどの自励振動を抑制する能力が必要とされる。一方、周速の高い機械においては、エロージョンが生じる懸念があった。
【0003】
軸振動安定性に関して特許文献1では、上半軸受と下半軸受からなるジャーナル軸受において、軸受下半側の軸受幅方向中央に周方向の溝を設け、これにより軸受面圧を大きくし、軸の偏心量を大きくすることで、オイルウィップやオイルホワールなどの自励振動を抑制し、軸の安定性を向上させる構造が提案されている。
【0004】
エロージョン防止に関して特許文献2では、上半軸受と下半軸受からなるジャーナル軸受において、上半部と下半部の分割面の開口スパンを変更することで、圧力回復を抑え、また損傷が予測される位置を熱処理により硬化させることでエロージョンを防止する構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−064714号公報
【特許文献2】特開昭62−067325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のジャーナル軸受装置の縦断面図を図13に、図13中のA−A線に沿って分割した下半軸受1aの上面図を図14に示す。近年の、蒸気タービンの出力増加や、発電機の大容量化に伴う軸の大径化により、軸受は高周速条件で使用されるため、軸受内の潤滑油の流れが高速化し、その流れが上半軸受に衝突し、従来のジャーナル軸受装置ではエロージョンが起こりやすくなるという問題があった。また、図15に示すように軸安定性を確保するために設けられる下半軸受1aの軸方向中央の周方向溝では、溝内の流速が大きいため、エロージョンの発生する可能性は高いという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、軸安定性を確保しかつ、高周速化に伴って生じる可能性が高いエロージョンを防止できるジャーナル軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は上半軸受と下半軸受からなり、前記上半軸受と前記下半軸受との接合面の前記下半軸受の回転方向には、給油口が設けられ、前記下半軸受の軸方向中央に、周方向溝を設け、前記給油口と給油装置とを連通する給油管を設けた二分割型ジャーナル軸受において、前記周方向溝の終端を軸受荷重方向より回転方向側にし、かつ前記終端と前記下半軸受の水平面との間にランド部を設け、前記終端と前記下半軸受外部とを連通する流路を設けたものである。
【0009】
また、本発明は上半軸受と下半軸受からなり、前記上半軸受と前記下半軸受との接合面の前記下半軸受の回転方向には、給油口が設けられ、前記下半軸受の軸受幅方向中央に、周方向溝を設け、前記給油口と給油装置とを連通する給油管を設けた二分割型ジャーナル軸受において、前記周方向溝の終端を軸受荷重方向より回転方向側にし、かつ前記終端と前記下半軸受の水平面との間にランド部を設け、前記終端と前記給油管とを連通する流路を設けたものである。
【0010】
更に、本発明は上半軸受と下半軸受からなり、前記上半軸受と前記下半軸受との接合面の前記下半軸受の回転方向には、給油口が設けられ、前記下半軸受の軸受幅方向中央に、周方向溝を設け、前記給油口と給油装置とを連通する給油管を設けた二分割型ジャーナル軸受において、前記周方向溝の終端を軸受荷重方向より回転方向側にし、かつ前記終端と前記下半軸受の水平面との間にランド部を設け、前記終端と前記給油管とを連通し、かつ前記給油管とのなす角度が鋭角となる流路を設けたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軸安定性を向上させる溝の効果を保ちつつ、流速の大きい溝内の流れが、上半軸受に衝突しないためエロージョンを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の軸受幅中央での断面図である(実施例1)。
【図2】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の下半軸受1aの上面図である(実施例1)。
【図3】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の、下半軸受1aの軸受幅中央での断面拡大図である(実施例1)。
【図4】下半軸受1aに設けた周方向溝2内部の周方向の圧力分布図である。
【図5】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の、軸受幅中央での断面図である(実施例2)。
【図6】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の下半軸受1aの上面図である(実施例2)。
【図7】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の、軸受幅中央での断面拡大図(実施例2)。
【図8】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の、軸受幅中央での断面図である(実施例3)。
【図9】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の下半軸受1aの上面図である(実施例3)。
【図10】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の、軸受幅中央での断面拡大図である(実施例3)。
【図11】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置の、加工方法に関する、軸受幅中央での断面拡大図である(実施例3)。
【図12】本発明の実施例を備えたジャーナル軸受装置を設けた、回転電機の概略図である(実施例4)。
【図13】従来の、ジャーナル軸受装置の、軸受幅中央での断面図である。
【図14】従来の、ジャーナル軸受装置の下半軸受1aの上面図である。
【図15】従来の、ジャーナル軸受装置の軸受幅中央での拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のジャーナル軸受装置は、分割可能な上半軸受1b及び下半軸受1aからなり、これらの内周面と回転軸8の間に、潤滑油を供給して油膜を形成することにより回転自在に回転軸8を支持するようにしたものが前提である。
【実施例1】
【0014】
本発明の一実施例の構造について説明する。本発明の第一実施形態の縦断面図を図1に示し、図1のA−A′線に沿って分割した下半軸受1aの上面図を図2に示す。本実施例のジャーナル軸受装置は、負荷側の下半軸受1aに、潤滑油を供給するための給油管3と、潤滑油の一部を排出するための排油管4が設けられている。また、下半軸受1aの上半軸受1bとの合せ面近傍には、給油管3側と排油管4側に水平部7がそれぞれ設けてある。下半軸受1aの軸方向中央には、回転軸8の振動安定性を確保するため回転方向に沿って周方向溝2を設けている。この周方向溝2の終端9は、軸受荷重負荷位置より回転方向側にあり、またその終端9と給油管3側の水平部7の間にはランド部16を有している。終端9には穴5が設けてあって、その穴5から下半軸受1a外部へと連通するような流路6が設けられている。
【0015】
次に、本実施例の作用効果について図3、図4を用いて説明する。周方向溝2内とその終端9に設けてある穴5から下半軸受1a外部へ連通する流路6内の油の流れを図3に示す。周方向溝2内の流速の大きい潤滑油は、終端9を設けたことによりそこでせき止められ、エロージョン発生位置である上半軸受1bに到達しない。そのためエロージョンを回避することができる。
【0016】
次に周方向溝2内の圧力分布を図4に示す。図4に示すように、周方向溝2内を流れる油が終端9で留まると、終端9の圧力が大きくなり(図中点線)軸安定性を向上させる周方向溝2の効果を小さくしてしまうが、本実施例では、周方向溝2内の潤滑油は終端9に設けた穴5から流路6を通って軸受1外部へ排出されるため圧力が高くならない(図4中実線)。そのため、軸安定性を損なうことなくエロージョンを回避できる。
【実施例2】
【0017】
本発明の一実施例の構造について説明する。本発明の第二実施例の形態の縦断面図を図5に示し、図5のA−A′線に沿って分割した下半軸受1aの上面図を図6に示す。本実施例のジャーナル軸受装置は、負荷側の下半軸受1aに、潤滑油を供給するための給油管3と、潤滑油の一部を排出するための排油管4が設けられている。また、下半軸受1aの上半軸受1bとの合せ面近傍には、給油管3側と排油管4側に水平部7がそれぞれ設けてある。下半軸受1aの軸方向中央には、回転軸8の振動安定性を確保するため回転方向に沿って周方向溝2を設けている。この周方向溝2の終端9は、軸受荷重負荷位置より回転方向側にあり、またその終端9と給油管3側の水平部7の間にはランド部16を有している。終端9には穴5が設けてあって、その穴5から下半軸受1aに設けてある給油管3へ連通するような流路6が設けられている。
【0018】
次に、本実施例の作用効果について説明する。周方向溝2内とその終端9に設けてある穴5から給油管3へ連通する流路6内の油の流れを図7に示す。実施例1と同様、周方向溝2内の流速の大きい潤滑油は、終端9を設けたことによりそこでせき止められ、エロージョン発生位置である上半軸受1bに到達しない。また、周方向溝2内を流れる油が終端9で留まると、終端9の圧力が大きくなり軸安定性を向上させる周方向溝2の効果を小さくしてしまうが、本実施例においても、実施例1と同様で周方向溝2内の潤滑油は終端9に設けた穴5から流路6を通るため圧力が高くならない。さらに流路6を通った潤滑油は、給油管3に流れるため、給油量を増やす必要がなく、効率がよい。
【実施例3】
【0019】
本発明の一実施例の構造について説明する。本発明の第三実施例の形態の縦断面図を図8に示し、図8のA−A′線に沿って分割した下半軸受1aの上面図を図9に示す。本実施例のジャーナル軸受装置は、負荷側の下半軸受1aに、潤滑油を供給するための給油管3と、潤滑油の一部を排出するための排油管4が設けられている。また、下半軸受1aの上半軸受1bとの合せ面近傍には、給油管3側と排油管4側に水平部7がそれぞれ設けてある。下半軸受1aの軸幅方向中央には、回転軸8の振動安定性を確保するため回転方向に沿って周方向溝2を設けている。この周方向溝2の終端9は、軸受荷重負荷位置より回転方向側にあり、またその終端9と給油管3側の水平部7の間にはランド部16を有している。終端9には穴5が設けてあって、その穴5から下半軸受1aに設けてある給油管3へ連通するように流路6が設けられ、その流路6と給油管3のなす角度が鋭角となるようにしている。
【0020】
次に、本実施例の作用効果について説明する。周方向溝2内とその終端9に設けてある穴5から給油管3へ連通する流路6内の油の流れを図10に示す。実施例1及び実施例2と同様、周方向溝2内の流速の大きい潤滑油は、終端9を設けたことによりそこでせき止められ、エロージョン発生位置である上半軸受1bに到達しない。また、周方向溝2内を流れる油が終端9で留まると、終端9の圧力が大きくなり軸安定性を向上させる周方向溝2の効果を小さくしてしまうが、本実施例においても、実施例1、実施例2と同様で周方向溝2内の潤滑油は終端9に設けた穴5から流路6を通るため圧力が高くならない。また流路6を通った潤滑油が、給油管3に流れるため、給油量を増やす必要がなく、さらに流路6を通った潤滑油は、給油管を通る油と同じ方向に流れることから、しゅう動面へ供給される潤滑油の流速をあげることが可能になり、供給する油量を、より減らすことができる。
【実施例4】
【0021】
本発明の軸受装置を適用した、回転電機の具体例として蒸気タービンに適用した例を図12に示す。
【0022】
高圧タービン、中圧タービン、低圧タービンを有する蒸気タービン発電機においては、一般的に高圧タービンロータ12と中圧タービンロータ13と低圧タービンロータ14が存在し、これらのロータと発電機ロータ15が一本の軸に連結されている。そして、これらはそれぞれのロータの両端に軸受1を配置することで支えられることが一般的である。
【0023】
蒸気タービンにおいては、効率の向上のため、ロータ翼の長翼化に伴う軸径の増大により、周速が増してきているが、それに伴いエロージョン発生の可能性が大きくなる。そして定期点検等で、これらの軸受にエロージョン等が確認された場合には、それの補修または交換などにより、費用や時間がかかる。
【0024】
しかし、本発明の軸受を使用することで、従来よりもエロージョン発生率を低くすることが可能となり、補修の時間や費用を低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0025】
1 軸受
1a 下半軸受
1b 上半軸受
2 周方向溝
3 給油管
4 排油管
5 穴
6 流路
7 水平部
8 回転軸
9 終端
10 加工穴
11 ふた
12 高圧タービンロータ
13 中圧タービンロータ
14 低圧タービンロータ
15 発電機ロータ
16 ランド部
17 給油口
18 排油口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上半軸受と下半軸受からなり、前記上半軸受と前記下半軸受との接合面の前記下半軸受の回転方向には、給油口が設けられ、前記下半軸受の軸受幅方向中央に、周方向溝を設け、前記給油口と給油装置とを連通する給油管を設けた二分割型ジャーナル軸受において、前記周方向溝の終端を軸受荷重方向より回転方向側にし、かつ前記終端と前記下半軸受の水平面との間にランド部を設け、前記終端と前記下半軸受外部とを連通する流路を設けたことを特徴とするジャーナル軸受装置。
【請求項2】
上半軸受と下半軸受からなり、前記上半軸受と前記下半軸受との接合面の前記下半軸受の回転方向には、給油口が設けられ、前記下半軸受の軸受幅方向中央に、周方向溝を設け、前記給油口と給油装置とを連通する給油管を設けた二分割型ジャーナル軸受において、前記周方向溝の終端を軸受荷重方向より回転方向側にし、かつ前記終端と前記下半軸受の水平面との間にランド部を設け、前記終端と前記給油管とを連通する流路を設けたことを特徴とするジャーナル軸受装置。
【請求項3】
上半軸受と下半軸受からなり、前記上半軸受と前記下半軸受との接合面の前記下半軸受の回転方向には、給油口が設けられ、前記下半軸受の軸受幅方向中央に、周方向溝を設け、前記給油口と給油装置とを連通する給油管を設けた二分割型ジャーナル軸受において、前記周方向溝の終端を軸受荷重方向より回転方向側にし、かつ前記終端と前記下半軸受の水平面との間にランド部を設け、前記終端と前記給油管とを連通し、かつ前記給油管とのなす角度が鋭角となる流路を設けたことを特徴とするジャーナル軸受装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のジャーナル軸受装置を設けた回転電機。
【請求項1】
上半軸受と下半軸受からなり、前記上半軸受と前記下半軸受との接合面の前記下半軸受の回転方向には、給油口が設けられ、前記下半軸受の軸受幅方向中央に、周方向溝を設け、前記給油口と給油装置とを連通する給油管を設けた二分割型ジャーナル軸受において、前記周方向溝の終端を軸受荷重方向より回転方向側にし、かつ前記終端と前記下半軸受の水平面との間にランド部を設け、前記終端と前記下半軸受外部とを連通する流路を設けたことを特徴とするジャーナル軸受装置。
【請求項2】
上半軸受と下半軸受からなり、前記上半軸受と前記下半軸受との接合面の前記下半軸受の回転方向には、給油口が設けられ、前記下半軸受の軸受幅方向中央に、周方向溝を設け、前記給油口と給油装置とを連通する給油管を設けた二分割型ジャーナル軸受において、前記周方向溝の終端を軸受荷重方向より回転方向側にし、かつ前記終端と前記下半軸受の水平面との間にランド部を設け、前記終端と前記給油管とを連通する流路を設けたことを特徴とするジャーナル軸受装置。
【請求項3】
上半軸受と下半軸受からなり、前記上半軸受と前記下半軸受との接合面の前記下半軸受の回転方向には、給油口が設けられ、前記下半軸受の軸受幅方向中央に、周方向溝を設け、前記給油口と給油装置とを連通する給油管を設けた二分割型ジャーナル軸受において、前記周方向溝の終端を軸受荷重方向より回転方向側にし、かつ前記終端と前記下半軸受の水平面との間にランド部を設け、前記終端と前記給油管とを連通し、かつ前記給油管とのなす角度が鋭角となる流路を設けたことを特徴とするジャーナル軸受装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のジャーナル軸受装置を設けた回転電機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−104546(P2013−104546A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251211(P2011−251211)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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