説明

ジャー炊飯器

【課題】水の沸点以上の高温蒸気を利用して炊飯性能を向上させる炊飯器において、鍋内に蒸気を供給中であることを必要最小限の期間だけ使用者に知らしめ、使い勝手を損なうことなく、かつ使用者が誤って蓋体を開けてしまうことを防止するジャー炊飯器を提供することを目的とする。
【解決手段】蒸気供給中の旨を表示する表示手段6を備え、表示手段6は鍋温度検知手段4が所定の温度を検出した後、過熱蒸気供給手段3の蒸気発生部3aが加熱を始めて所定時間経過してから表示するよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯後、自動的に炊飯されたご飯の温度を60〜72℃ 前後に保持すべく制御する保温に移行するジャー炊飯器に関し、特に、保温性能を向上させるために、過熱蒸気を利用したジャー炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のジャー炊飯器は、保温において、所定時間間隔で通常の保温されている温度より高い温度となるよう鍋を加熱するとともに鍋内に過熱蒸気を供給し、水分の蒸発やご飯の黄変や乾燥を防止し、保温性能を向上するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は特許文献1に記載された従来のジャー炊飯器を示すものである。図8に示すように、鍋1と、鍋1を加熱する誘導加熱コイル13と、鍋の温度を検知するサーミスタ14と、鍋1の開口部を覆う蓋体12と、水タンク11と、水タンク11を加熱する水タンク誘導加熱コイル15と、水タンク11を加熱することにより発生する蒸気を100℃以上に過熱し鍋1内へ供給するヒータを有した蒸気経路16と、マイクロコンピュータを実装し保温経過時間を計時できる制御回路30とで構成し、保温において、使用者の食事パターンに基づいた所定時間間隔で、誘導加熱コイル13で所定時間加熱するとともに水タンク11、水タンク誘導加熱コイル15、蒸気経路16により鍋1内に過熱蒸気を供給するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−230434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来の構成のジャー炊飯器では、過熱蒸気を供給中に使用者が誤って蓋体を開けてしまうと、過熱蒸気が鍋外に流出してしまい、上記の効果がなくなって保温性能の向上が望めないという課題がある。ここで、水タンクへの加熱を始めたときに蒸気供給の旨を表示するようにし、使用者にこの表示を視認させ、蓋体を開けないよう促すという構成をすることが考えられる。しかし、このとき、蒸気供給の旨を表示しているときは、逆に蓋体が開けられないことを指すので、使用者は保温されているご飯を取り出したくても表示の継続中は取り出せなくなり、使い勝手が低下するという課題が発生する。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、鍋内に蒸気を供給中であることを必要最小限の期間だけ使用者に知らしめ、使い勝手を損なうことなく、かつ使用者が誤って蓋体を開けてしまうことを防止するジャー炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、鍋を加熱する加熱手段と、水を加熱し蒸気を発生させる蒸気発生部と該蒸気発生部からの蒸気を100℃以上の過熱蒸気となるよう加熱する蒸気加熱部を有し前記鍋内に過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給手段と、前記鍋内の温度を検出する鍋温度検知手段と、前記鍋温度検知手段からの信号を受け、前記加熱手段と前記過熱蒸気供給手段を制御する制御手段と、蒸気供給中の旨を表示する表示手段とを備え、前記表示手段は前記鍋温度検知手段が所定の温度を検出した後、前記過熱蒸気供給手段の蒸気発生部が加熱を始めて所定時間経過してから表示するよう構成したものである。
【0008】
これにより、表示手段は鍋温度検知手段が所定の温度を検出した後、過熱蒸気供給手段の蒸気発生部が加熱を始めて所定時間経過してから表示するようにしたので、保温中のご飯が通常の保温温度より高い温度に到達し、その後過熱蒸気供給手段により鍋内に過熱蒸気を供給する頃合いに表示手段がその旨を表示するので、真に過熱蒸気の効果が得られる期間のみに絞って使用者にその旨を知らしめることができるので、使い勝手を損なうことなく、かつ使用者が誤って蓋体を開けてしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のジャー炊飯器は、鍋内に蒸気を供給中であることを過熱蒸気供給中の必要最小限の期間だけ使用者に知らしめることができ、使い勝手を損なうことなく、かつ使用者が誤って蓋体を開けてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1および3におけるジャー炊飯器のブロック図
【図2】本発明の実施の形態1〜4におけるジャー炊飯器の断面図
【図3】本発明の実施の形態1〜4におけるジャー炊飯器の制御手段5の保温動作フローチャート
【図4】本発明の実施の形態1、3、4におけるジャー炊飯器の表示手段6の動作フローチャート
【図5】本発明の実施の形態2におけるジャー炊飯器のブロック図
【図6】本発明の実施の形態2におけるジャー炊飯器の表示手段6の動作フローチャート
【図7】本発明の実施の形態4におけるジャー炊飯器のブロック図
【図8】従来のジャー炊飯器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、被調理物を入れる鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、水を加熱し蒸気を発生させる蒸気発生部と該蒸気発生部からの蒸気を100℃以上の過熱蒸気となるよう加熱する蒸気加熱部を有し前記鍋内に過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給手段と、前記鍋内の温度を検出する鍋温度検知手段と、前記鍋温度検知手段からの信号を受け、前記加熱手段と前記過熱蒸気供給手段を制御する制御手段と、蒸気供給中の旨を表示する表示手段とを備え、前記表示手段は前記鍋温度検知手段が所定の温度を検出した後、前記過熱蒸気供給手段の蒸気発生部が加熱を始めて所定時間経過してから表示するよう構成したものであり、表示手段は鍋温度検知手段が所定の温度を検出した後、過熱蒸気供給手段の蒸気発生部が加熱を始めて所定時間経過してから表示するようにしたものである。
【0012】
これによって、保温中のご飯が通常の保温温度より高い温度に到達し、その後過熱蒸気供給手段により鍋内に過熱蒸気を供給する頃合いに表示手段がその旨を表示するので、真に過熱蒸気の効果が得られる期間のみに絞って使用者にその旨を知らしめることができるので、使い勝手を損なうことなく、かつ使用者が誤って蓋体を開けてしまうことを防止することができる。
【0013】
第2の発明は、被調理物を入れる鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、水を加熱し蒸気を発生させる蒸気発生部と該蒸気発生部からの蒸気を100℃以上の過熱蒸気となるよう加熱する蒸気加熱部を有し前記鍋内に過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給手段と、前記鍋内の温度を検出する鍋温度検知手段と、前記鍋温度検知手段からの信号を受け、前記加熱手段と前記過熱蒸気供給手段を制御する制御手段と、蒸気供給中の旨を表示する表示手段とを備え、前記表示手段は前記鍋温度検知手段が所定の温度を検出した後、前記過熱蒸気供給手段の蒸気発生部及び蒸気加熱部が加熱を始めて所定時間経過してから表示するよう構成したものである。
【0014】
これによって、表示手段は鍋温度検知手段が所定の温度を検出した後、過熱蒸気供給手段の蒸気発生部及び蒸気加熱部が加熱を始めて所定時間経過してから表示するようにしたので、保温中のご飯が通常の保温温度より高い温度に到達し、その後過熱蒸気供給手段により鍋内に過熱蒸気を供給する頃合いに表示手段がその旨を表示するので、真に過熱蒸気の効果が得られる期間のみに絞って使用者にその旨を知らしめることができるので、使い勝手を損なうことなく、かつ使用者が誤って蓋体を開けてしまうことを防止することができる。
【0015】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、表示手段は蒸気供給中の旨の表示の際、点滅動作をするよう構成したものであり、使用者は離れた位置からでも蒸気供給中の旨の視認を促して見落とし等を防止することができる。
【0016】
第4の発明は、特に、第1または第2の発明において、表示手段が蒸気供給中の旨の表示を始めたとき、時間表示を開始する時間表示手段を備えたものであり、表示手段が蒸気供給中の旨の表示を始めたとき、時間表示手段は時間表示を行うので、それがあとどれくらいの期間続くのか使用者に知らせることができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるジャー炊飯器のブロック図を示すものであり、図2は、同ジャー炊飯器の断面図を示すものである。
【0019】
図1に示すように、本発明の実施の形態1におけるジャー炊飯器は、鍋1、この鍋1を加熱する加熱手段2、蒸気を発生させる蒸気発生部3aとこの蒸気発生部3aから発生した蒸気を過熱する蒸気加熱部3bからなる過熱蒸気供給手段3、鍋1の温度を検知する鍋温度検知手段4、鍋温度検知手段4が検知する鍋温度を入力し加熱手段2および過熱蒸気供給手段3を制御する制御手段5、蒸気供給中の旨を表示する表示手段6とにより構成している。
【0020】
図2に示すように、炊飯器本体10は、磁性体製の鍋1を着脱自在に収納するとともに、磁性体製の水タンク11を着脱自在に収納している。鍋1は米や水を入れるもので、加熱手段2により加熱される。炊飯器本体10には、その上面を覆う蓋体12を開閉自在に設置している。
【0021】
また、炊飯器本体10には、鍋1を誘導加熱する誘導加熱コイル13、鍋1の温度を検知するサーミスタ14、水タンク誘導加熱コイル15、水タンク11の着脱を検知する着脱検知スイッチ22、水タンク11の温度を検知するサーミスタ23などを設けている。蓋体12は、マイクロコンピュータやLED素子などを実装した制御回路30と、磁性体製の加熱板18と、この加熱版18を加熱する鍋開口部誘導加熱コイル19と、加熱板18の温度を検知するサーミスタ20とを有している。サーミスタ20は加熱板18に当設して設けている。
【0022】
加熱手段2は、誘導加熱コイル13と、インバータ回路(図示せず)により構成し、誘導加熱コイル13にインバータ回路が高周波電流を供給することで、火力自在に鍋1を加熱するようにしている。
【0023】
蒸気発生部3aは、水タンク11、水タンク誘導加熱コイル15、この水タンク誘導加熱コイル15に高周波電流を供給するインバータ回路(図示せず)により加熱し、水タンク11内の水は沸騰することにより蒸気が発生するように構成している。水タンク11と鍋1の上面の一部は、蓋体12内に設けた蒸気経路16によって接続されている。蒸気経路16の鍋1上面の開口部を蒸気孔17とする。
【0024】
水タンク11内で発生した蒸気は蒸気経路16を通って、蒸気孔17より鍋1内へと送られる。図示していないが、蒸気経路16にはヒータを設けており、この蒸気経路16を通過する蒸気は、このヒータにより、100℃を超える温度に過熱されている(以下、過熱蒸気と呼ぶ)。このように、蒸気経路16と蒸気孔17とにより、図1に示す過熱蒸気供給手段3の蒸気加熱部3bを構成している。
【0025】
着脱検知スイッチ22は、マイクロスイッチであり、水タンク11と当接するよう配置しており、水タンク11が炊飯器本体10内に装着されているときはオン信号を出力し、取り外されているときは、オフ信号を出力するようにしている。着脱検知スイッチ22の信号は、制御回路30上のマイクロコンピュータ(以下、マイクロコンピュータと単に呼ぶ)に入力するようにしている。
【0026】
次に、図1に示す鍋温度検知手段4は、鍋1の温度を検知(以下、鍋温度と呼ぶ)するもので、炊飯器本体10に設けたサーミスタ14により構成している。具体的には、鍋1の温度変化によりサーミスタ14の抵抗値が変化するので、その抵抗変化分を抵抗分圧により電圧値に置き換え、制御回路30上のAD変換器に入力し、このAD変換器の変換結果をマイクロコンピュータが判定することで、鍋温度の検知を行っている。サーミスタ20による加熱板温度検知、サーミスタ23によるタンク温度検知(以下、タンク温度と呼ぶ)も同様に行っている。
【0027】
制御手段5は、炊飯開始スイッチ(図示せず)からの炊飯開始要求信号を受け、鍋温度検知手段4の鍋温度を入力し、加熱手段2と過熱蒸気供給手段3を制御している。制御手段5は、制御回路30に実装したタイマ機能やROM内蔵のマイクロコンピュータであり、炊飯開始要求信号を受け、ROM上に記録している炊飯シーケンスの情報に従い、鍋温度検知手段4が検知する鍋温度が所定の温度カーブを描くよう、加熱手段2と過熱蒸気供給手段3の制御をしている。
【0028】
制御手段5の実施する炊飯シーケンスには、米に水を吸水させる浸漬工程、強い火力で炊上げる炊上げ工程、鍋温度検知手段4による鍋1のドライアップ検知後に弱い火力で蒸らす蒸らし工程の3工程のほか浸漬工程と炊上げ工程との間に水タンク11内の水温を上昇させる予熱工程により構成されている。
【0029】
蒸らし工程では、過熱蒸気供給手段3により、鍋1の上方に過熱蒸気を投入し、鍋1上部の米の火力不足を補うよう制御している。さらに蒸らし工程は炊飯終了し、自動で保温の動作をするようにしている。
【0030】
表示手段6は、光で表示するもので、制御回路30上のLED素子をマイクロコンピュータが制御するように構成している。
【0031】
上記構成において制御手段5と表示手段6の保温における動作(マイクロコンピュータ)を図3と図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0032】
図3は、本発明の第1の実施の形態におけるジャー炊飯器の制御手段5の保温動作のフローチャートである。図3において、ステップS1で炊飯が終了すると、ステップS2以降へと進み、保温動作を始める。まず、ステップS2では60℃温調工程となり、鍋温度が60℃となるように加熱手段2の火力を制御する。
【0033】
続くステップS3では、保温開始からの経過時間(以下、保温経過時間と呼ぶ)が4時間または8時間が経過したか判定を行い、経過していればステップS4へ進み、経過していなければステップS13へ進む。このように60℃温調工程では、所定のタイミングが保温経過時間に到達するまで、ご飯を60℃の比較的低めの保温状態で保持し、ご飯の劣化を抑える。
【0034】
ステップS4では、温度上昇工程となり鍋温度が60℃より高い温度となるよう加熱手段2の火力を制御する。続くステップS5では、鍋温度が80℃に到達したかどうかを判定し、到達していればステップS6へと進み、到達していなければステップS4へと戻る。このように温度上昇工程では、鍋温度が80℃に到達するように加熱するものである。
【0035】
ステップS6では、殺菌加熱工程となり、鍋温度が80℃となるように加熱手段2の火力を制御する。続くステップS7では、殺菌加熱工程開始から10分経過したかどうかを判定し、経過していればステップS8へ進み、経過していなければステップS6へ戻る。このように殺菌加熱工程では、鍋温度が80℃の状態を10分間維持し、ご飯の温度を比較的高温で保つことで、60℃温調工程でご飯内に若干繁殖した雑菌を加熱殺菌する。
【0036】
ステップS8では、空検知工程となり、加熱手段2による加熱の火力は殺菌加熱工程の火力より低下させ、蒸気発生部3aである水タンク11を水タンク誘導加熱コイル15により加熱する。このときの火力は水タンク11内の水が所定の水量以上ある場合、10分でタンク温度が90℃に到達しない程度の火力としている。
【0037】
続くステップS9で、空検知工程開始から10分経過したかどうかを判定し、経過していればステップS10へ進み、経過していなければステップS8へ戻る。ステップS10では、タンク温度が90℃に到達したかを判定し、到達していればステップS2の60℃温調工程へ戻り、到達していなければステップS11へ進む。このように空検知工程では、水タンク11を所定の火力で10分間加熱し、10分後にタンク温度を判定することで、ステップS11へ進むかどうかを判定している。
【0038】
すなわち、ここでは所定の水量以上あれば10分でタンク温度が90℃にならない火力で加熱しているので、90℃に到達する状況は所定の水量未満であるときということになり、この90℃以上になっていることを検知することで水タンク11内の水不足、または空検知ができるわけである。本実施例では、水タンク11内の水不足、または空のときは、過熱蒸気を鍋1内へ供給できないため、その後の過熱蒸気を供給する工程をスキップし、60℃温調工程へ戻すようにしている。
【0039】
ステップS11では、加湿工程となり、水タンク11を水タンク誘導加熱コイル15により加熱し水タンク11内の水を沸騰させて蒸気を発生させ、そして蒸気加熱部3bである蒸気経路16のヒータ(図示せず)を通電する。続くステップS12では、加湿工程開始から3分経過したかどうかを判定し、経過していればステップS2へ進み、経過していなければステップS11へ戻る。このように加湿工程では、水タンク11内の水を沸騰させて蒸気を発生させ、かつ発生した蒸気を蒸気経路16のヒータで過熱し、鍋1内へ供給している。
【0040】
さて、ステップS3で保温経過時間が4時間または8時間が経過したか判定を行い、経過していなければステップS13へ進んでいる。このステップS13では、さらに保温経過時間を判定し、2時間または6時間が経過したかを判定し、経過していればステップS14へ、経過していなければステップS16へ進む。ステップS14では、容器殺菌工程となり、蒸気発生部3aである水タンク11を水タンク誘導加熱コイル15により、タンク温度が95℃となるよう温調加熱する。続くステップS15で、容器殺菌工程開始から10分経過したかどうかを判定し、経過していればステップS2へ進み、経過していなければステップS14へ戻る。このように容器殺菌工程では、タンク温度が95℃の状態を10分間維持し、水容器11内の水を高温で保つことで、水容器11内の加熱殺菌を行っている。
【0041】
ステップS13から分岐したステップS16では、保温経過時間が12時間を経過したかどうかを判定し、経過していなければステップS2へ戻り、経過していればステップS17へ進む。ステップS17では、72℃温調工程となり、鍋温度が72℃となるように加熱手段2の火力を制御する。このように保温経過時間が12時間に到達すると、72℃温調工程となり、ご飯を雑菌の繁殖しない72℃の温度で保つようにしている。
【0042】
以上のように、保温は開始から12時間までは鍋温度を60℃で保つ60℃温調工程、それ以降は72℃で保つ72℃温調工程を実施する。また12時間以内であっても保温経過が2時間または6時間時は水タンク11内の加熱殺菌を行う容器殺菌工程を実施する。さらに4時間または8時間経過時には、鍋1の温度を上昇させる温度上昇工程、鍋1内のご飯の加熱殺菌を行う殺菌加熱工程、水タンク11内の水量を判定する空検知工程、鍋1内に過熱蒸気を供給する加湿工程を行うものである。
【0043】
次に図4のフローチャートを用いて、保温中の表示手段6の動作を説明する。表示手段6は制御回路30上のLED素子(以下、LEDと呼ぶ)をマイクロコンピュータで制御するよう構成している。まず、ステップS20でLEDを消灯する。続くステップS21では、鍋温度が80℃に到達したかどうかを判定し、到達していなければステップS20へ戻り、到達していればステップS22へ進む。
【0044】
ステップS22では、水タンク11が水タンク誘導加熱コイル15により加熱されているかの判定を行い、加熱されていればステップS23へ進み、加熱されていなければステップS22へ戻る。ステップS23では、マイクロコンピュータ内蔵のタイマを使用して、タイマ計時を開始する。続くステップS24では、このタイマカウント値の判定を行い、11分が経過していればステップS25へ進み、経過していなければステップS24へと戻る。
【0045】
ステップS25では、タイマカウント値を0クリアし、ステップS26へ進む。
【0046】
ステップS26では、水タンク11が水タンク誘導加熱コイル15により加熱中かどうかの判定を行い、加熱中であればステップS27へ進み、加熱中でなければ、ステップS28へ進む。ステップS27では、LEDを点灯させ、ステップS25へと戻る。ステップS28では、タイマカウント値の判定を行い、10秒が経過したかどうかの判定を行う。10秒経過していなければステップS26へ戻り、経過していればステップS20となる。
【0047】
以上のように、本実施の形態においては、鍋温度80℃到達後、蒸気発生部3aである水タンク11への加熱開始から所定時間(本実施の形態では11分)経過して水タンク11への加熱が行われているならば、表示手段6であるLEDを点灯表示でき、さらにその後水タンク11への加熱の停止(本実施の形態では10秒間の加熱停止)を検知すると、LED表示を止めるものである。使用者は該表示を確認することで、鍋1内への過熱蒸気供給中の旨を知ることができ、この間蓋体12を開けないことで、過熱蒸気が鍋1外に流出してしまうことを防止できる。
【0048】
ここで、本実施の形態のジャー炊飯器において、表示手段6が図4のステップS24で11分経過を判定している理由を説明する。表示手段6は図4のステップS21で鍋温度が80℃に到達したかを、まず判定している。これは、図3で示す制御手段5の保温動作において鍋温度が80℃に到達するのは、温度上昇工程から殺菌加熱工程に移行したことを指している。
【0049】
さらに、その後のステップ22で水タンク11が加熱開始するまで待機しているが、これは殺菌加熱工程後の水タンク11への加熱なので、これは空検知工程に状態が移行し、水タンク11の加熱が始まったことを指している。そして、このタイミングからタイマ計時を開始し、ステップS24でタイマカウント値が11分経過かどうかを判定しているのだが、これは空検知工程の所要時間10分が経過し、さらに加湿工程が始まって1分が経過した時点を指している。
【0050】
つまりは、加湿工程が始まって以降、鍋1内へ過熱蒸気が供給されるが、該工程開始当初から100℃を超える過熱蒸気が蒸気孔17から鍋1内へ供給されるわけではなく、ある程度のタイムラグが存在する。本実施の形態では、加湿工程開始から1分経過で、過熱蒸気が鍋1内へ供給されることを想定しているので、加湿工程が始まって1分経過した時点を目標にLEDを点灯させるようにしている。
【0051】
また、ここで表示手段6による表示の妥当性を考える。図3の保温動作のフローチャートにおいて、水タンク11の加熱が行われる工程は、空検知工程、加湿工程、容器殺菌工程の3工程である。このうち、過熱蒸気を鍋1内に供給する工程は加湿工程だけであり、その他の2工程では供給しない。
【0052】
よって、加湿工程の実施中のみ、表示手段6により表示を行いたいわけだが、加湿工程実施中は、前述の通り、工程開始から1分経過して表示を行う。空検知工程は、水タンク11への加熱が始まってタイマ計時が11分経過するのを待つので、該工程実施中は表示しない。
【0053】
さらに容器殺菌工程は、鍋温度が80℃に到達する条件が前の工程にはないので表示しない。ゆえに加湿工程の過熱蒸気を供給中のみに絞って表示できる。
【0054】
また、加湿工程での表示後も水タンク11への加熱が停止すれば10秒後に表示を止めている。ここで10秒としているのは、蒸気発生部3aが停止後も、予熱により短時間ではあるが過熱蒸気が鍋1内に供給されるためである。以上より、表示手段6は該当の工程でのみ表示を行い、表示後も適切に条件を検知し表示を止めるので表示は妥当であり、鍋1内に過熱蒸気が供給される最小限の時間、表示することが可能となっている。
【0055】
なお、本実施の形態のジャー炊飯器において、表示手段6はLED素子で構成しているが、これはLCD表示素子やブザーなどでも良い。要は蒸気供給中の旨を使用者に知らせる構成が出来ればよい。
【0056】
(実施の形態2)
図2は本発明の第2の実施の形態におけるジャー炊飯器の断面図、図3は本発明の第2の実施の形態におけるジャー炊飯器の制御手段5の保温動作フローチャート、図5は、本発明の第2の実施の形態におけるジャー炊飯器のブロック図を示すものである。
【0057】
図5のブロック図は、図1に示す本発明の実施の形態1のジャー炊飯器のブロック図と比較し、蒸気加熱部3bの制御情報が表示手段6に作用するようにした点が相違する。他の構成は、本発明の実施の形態1のジャー炊飯器と同じである。
【0058】
上記構成において、表示手段6の動作を図6の本発明の実施の形態2におけるジャー炊飯器の表示手段6の動作フローチャートを用いて説明する。なお、本発明の実施の形態1と動作が同じ箇所は、同一番号を付し説明を省略する。
【0059】
図6のフローチャートは、図4のフローチャートのステップS23とS24の替わりに、ステップS30〜S32を実施するようにしている。ステップS22で、水タンク11が水タンク誘導加熱コイル15により加熱されているかの判定を行い、加熱されていればステップS30へ進む。
【0060】
ステップS30では、さらに蒸気加熱部3bである蒸気経路16のヒータが加熱しているかどうか判定する。加熱していればステップS31へ進み、加熱していなければステップS30へと戻る。ステップS31では、マイクロコンピュータ内蔵のタイマを使用して、タイマ計時を開始する。続くステップS32では、このタイマカウント値の判定を行い、1分が経過していればステップS25へ進み、経過していなければステップS32へと戻る。
【0061】
以上のように、本実施の形態においては、鍋温度80℃到達後、蒸気発生部3aである水タンク11への加熱が開始され、さらに蒸気加熱部3bである蒸気経路16のヒータが加熱開始されてから所定時間(本実施の形態では1分)経過して、水タンク11への加熱が行われているならば、表示手段6であるLEDを点灯表示でき、さらにその後水タンク11への加熱の停止(本実施の形態では10秒間の加熱停止)を検知すると、LED表示を止めるものである。使用者は該表示を確認することで、鍋1内への過熱蒸気供給中の旨を知ることができ、この間蓋体12を開けないことで、過熱蒸気が鍋1外に流出してしまうことを防止できる。
【0062】
ここで、本実施の形態のジャー炊飯器において、表示手段6が図6のステップS32で1分経過を判定している理由を説明する。表示手段6は図6のステップS21で鍋温度が80℃に到達したかを、まず判定している。これは、図3で示す制御手段5の保温動作において鍋温度が80℃に到達するのは、温度上昇工程から殺菌加熱工程に移行したことを指している。さらにその後のステップ22で水タンク11が加熱開始するまで待機しているが、これは殺菌加熱工程後の水タンク11への加熱なので、これは空検知工程に状態が移行し、水タンク11の加熱が始まったことを指している。
【0063】
次にステップS30で蒸気経路16のヒータが加熱開始するまで待機しているが、これは加湿工程に移行したことを指している。そして、このタイミングからタイマ計時を開始し、ステップS32でタイマカウント値が1分経過かどうかを判定しているのだが、これは加湿工程が始まって1分が経過した時点を指している。
【0064】
つまりは、加湿工程が始まって以降、鍋1内へ過熱蒸気が供給されるが、該工程開始当初から100℃を超える過熱蒸気が蒸気孔17から鍋1内へ供給されるわけではなく、ある程度のタイムラグが存在する。本実施の形態では、加湿工程開始から1分経過で、過熱蒸気が供給されるとしているので、加湿工程が始まって1分経過した時点を目標にLEDを点灯させるようにしている。
【0065】
(実施の形態3)
図1は本発明の第3の実施の形態におけるジャー炊飯器のブロック図、図2は本発明の第3の実施の形態におけるジャー炊飯器の断面図、図3は本発明の第3の実施の形態におけるジャー炊飯器の制御手段5の保温動作フローチャート、図4は本発明の第3の実施の形態におけるジャー炊飯器の表示手段6の動作フローチャートである。
【0066】
図1に示す表示手段6は、表示の際、すなわちLED点灯の際は点滅動作するよう構成している。他の構成は上記実施の形態1と同じである。
【0067】
以上のように構成することで、本実施の形態においては、視認性が向上し、使用者はジャー炊飯器から離れた場所にいても、この点滅表示を確認することで、現在スチーム投入中であることを認知できる。
【0068】
(実施の形態4)
図2は本発明の第4の実施の形態おけるジャー炊飯器の断面図、図3は本発明の第4の実施の形態におけるジャー炊飯器の制御手段5の保温動作フローチャート、図4は本発明の第4の実施の形態におけるジャー炊飯器の表示手段6の動作フローチャート、図7は、本発明の第4の実施の形態におけるジャー炊飯器のブロック図を示すものである。
【0069】
図7のブロック図は、図1に示す本発明の実施の形態1のジャー炊飯器のブロック図と比較し、時間の表示を行う時間表示手段7を備え、この時間表示手段7は表示手段6が蒸気供給中の旨の表示を始めたとき、時間表示を開始するように構成したことが相違する。他の構成は、本発明の実施の形態1のジャー炊飯器と同じである。
【0070】
時間表示手段7は、図2のジャー炊飯器の断面図において、制御回路30上に実装しているLCD表示素子である。このLCD表示素子は、マイクロコンピュータに内蔵しているLCDドライバにより駆動制御される。このLCD表示素子は、時間表示が可能で、表示手段6が蒸気供給中の旨の表示を始めたときに蒸気供給終了までの残時間である「120秒」の表示を始めるようにし、以降1秒ごとに減算表示するようにしている。
【0071】
以上のように構成することで、使用者は表示手段6が蒸気供給中の旨の表示を確認したとき、時間表示手段7の表示を合せて確認することで、蒸気供給終了まで、どれだけの時間待てば蓋体12を開けられるのか認識することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明にかかるジャー炊飯器は、鍋内に蒸気を供給中であることを過熱蒸気供給中の必要最小限の期間だけ使用者に知らしめることができ、使い勝手を損なうことなく、かつ使用者が誤って蓋体を開けてしまうことを防止することができるので、過熱蒸気または過熱スチームを使用した調理機器の用途に有効である。
【符号の説明】
【0073】
1 鍋
2 加熱手段
3 過熱蒸気供給手段
3a 蒸気発生部
3b 蒸気加熱部
4 鍋温度検知手段
5 制御手段
6 表示手段
7 時間表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を入れる鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、水を加熱し蒸気を発生させる蒸気発生部と該蒸気発生部からの蒸気を100℃以上の過熱蒸気となるよう加熱する蒸気加熱部を有し前記鍋内に過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給手段と、前記鍋内の温度を検出する鍋温度検知手段と、前記鍋温度検知手段からの信号を受け、前記加熱手段と前記過熱蒸気供給手段を制御する制御手段と、蒸気供給中の旨を表示する表示手段とを備え、前記表示手段は前記鍋温度検知手段が所定の温度を検出した後、前記過熱蒸気供給手段の蒸気発生部が加熱を始めて所定時間経過してから表示するよう構成したジャー炊飯器。
【請求項2】
被調理物を入れる鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、水を加熱し蒸気を発生させる蒸気発生部と該蒸気発生部からの蒸気を100℃以上の過熱蒸気となるよう加熱する蒸気加熱部を有し前記鍋内に過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給手段と、前記鍋内の温度を検出する鍋温度検知手段と、前記鍋温度検知手段からの信号を受け、前記加熱手段と前記過熱蒸気供給手段を制御する制御手段と、蒸気供給中の旨を表示する表示手段とを備え、前記表示手段は前記鍋温度検知手段が所定の温度を検出した後、前記過熱蒸気供給手段の蒸気発生部と蒸気加熱部が加熱を始めて所定時間経過してから表示するよう構成したジャー炊飯器。
【請求項3】
表示手段は蒸気供給中の旨の表示の際、点滅動作をするようにした請求項1または2に記載のジャー炊飯器。
【請求項4】
表示手段が蒸気供給中の旨の表示を始めたとき、時間表示を開始する時間表示手段を備えた請求項1または2に記載のジャー炊飯器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate