ジョイスティックコントローラ
【課題】所望キックダウン特性を得るために時間と労力を要せず、操作体の操作方向の自由度が制約されることのない小型のジョイスティックコントローラを提供する。
【解決手段】ジョイスティックコントローラは、筐体と、回転中心を中心に傾斜回動可能なシャフトを有し、筐体に支持される操作体と、シャフトの回転中心の上に配置される第1のスプリングリターン機構部と、シャフトの回転中心の上でかつ第1のスプリングリターン機構部の上に配置される第2のスプリングリターン機構部と、シャフトの変位を検出する検出部と、を備える。シャフトの上部に配置される第2のスプリングリターン機構部により、調整に時間と労力を要すことなく、また、操作体の操作方向に制限を課することなく、所望のキックダウン特性を得ることができる。
【解決手段】ジョイスティックコントローラは、筐体と、回転中心を中心に傾斜回動可能なシャフトを有し、筐体に支持される操作体と、シャフトの回転中心の上に配置される第1のスプリングリターン機構部と、シャフトの回転中心の上でかつ第1のスプリングリターン機構部の上に配置される第2のスプリングリターン機構部と、シャフトの変位を検出する検出部と、を備える。シャフトの上部に配置される第2のスプリングリターン機構部により、調整に時間と労力を要すことなく、また、操作体の操作方向に制限を課することなく、所望のキックダウン特性を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作体であるシャフトの動きを検出し、それに応じて対象機器を制御するジョイスティックコントローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジョイスティックコントローラは、操作体であるシャフトの変位に応じて対象機器を制御できることから、様々な分野で使用されている。図7は、このような従来技術に係るジョイスティックコントローラの動作を示す断面図、図8は、従来技術に係るジョイスティックコントローラを示す斜視図、図9は、従来技術に係るジョイスティックコントローラのポテンショメータの出力特性を示す図である。
【0003】
図7に示される従来技術に係るジョイスティックコントローラ37は、筐体40と、筐体40に傾斜回動可能に支持される操作体50と、操作体50の変位を検出し、それに応じた電圧を出力する検出部60とを有する。
【0004】
操作体50は、操作体50に操作力を加えない状態で操作体50を直立させて保持し、操作体50に操作力を加えて変位した状態で、操作力を除くことにより操作体50をもとに戻すスプリングリターン機構部58を備える。ジョイスティックコントローラ37は、操作体50の変位に応じて、対象機器(図示せず)を制御することができる。
【0005】
このような従来技術に係るジョイスティックコントローラ37では、操作体50の変位に応じて操作体50に必要とされる操作力は、スプリングリターン用スプリング26のバネ定数に比例して操作体50の変位に応じて直線的に増加する。そして、図9に示されるように、検出部60は、操作体50の変位に応じて所定の範囲で直線的に増加する出力電圧を出力する。
【0006】
他方、ジョイスティックコントローラによって制御される対象機器について、対象機器の動作があるレベルまで達した際に、これ以上ジョイスティックコントローラの操作体を変位させる操作をすることにより、制御される対象機器に危険が生じる場合がある。このため、ある限界を超えて操作体を捜査すると、対象機器が危険状態に陥る場合があることを、操作者に注意喚起する必要がある。
【0007】
操作者に注意を喚起するためには、操作体の変位がある値を超えたところから操作体の操作力が大きくなり、操作体が重くなるキックダウン機構を備えるジョイスティックコントローラが適している。
【0008】
従来技術に係るキックダウン機構を備えるジョイスティックコントローラを図面に基づいて説明する。図10は、従来技術に係るキックダウン機構を備えるジョイスティックコントローラの動作を示す断面図、図11は、従来技術に係るキックダウン機構を備えるジョイスティックコントローラの動作を示す斜視図である。
【0009】
図10に示される従来技術に係るキックダウン機構を備えるジョイスティックコントローラ38は、図7に示されるジョイスティックコントローラ37と同様に、筐体40と、筐体40に傾斜回動可能に支持される操作体50と、操作体50の変位を検出し、それに応じた電圧を出力する検出部60とを有する。
【0010】
そして、ジョイスティックコントローラ38では、操作体50は、シャフト51とシャフト51を操作するための摘み52を備え、シャフト51は回転中心47を中心に回動して変位する。また、操作体50は、操作体50に操作力を加えない状態で操作体50を直立させて保持し、操作体50に操作力を加えて変位した状態で、操作力を除くことにより操作体50をもとの直立した状態に戻すスプリングリターン機構部58を備える。
【0011】
そして、図10に示されるジョイスティックコントローラ38は、キックダウン動作をするための複数枚の板バネ59をさらに備える。それらの複数枚の板バネ59として、例えば、4枚の板バネが使用される。操作体50を操作した際に4方向の操作端で、操作体50が筐体40の開口部の縁にあるストッパ45に当り、操作体50をさらに倒して変位させようとすると、板バネ59のバネ力により操作体50の操作感が重くなる。それらにより、ジョイスティックコントローラ38は、キックダウン動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−254567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来のジョイスティックコントローラでは、キックダウン動作をするための板バネを操作体のシャフトに配置するために、シャフトにある程度長いスペースを必要とする。このため、スプリングリターン機構部をシャフトの回転中心(動作支点)の下側に配置することが必要となり、全体としてシャフトが長大化し、このため、ジョイスティックコントローラが大型化していた。
【0014】
また、従来のジョイスティックコントローラでは、キックダウン動作を精度よく安定して実現するために、複数個の板バネの特性を揃える必要があった。そして、キックダウン動作の特性を変えようとする場合にも、複数個の板バネを交換し、併せて、複数個の板バネの特性を揃える必要があった。このため、キックダウン動作に必要とされるバネ力を得るために、時間と労力を要していた、
【0015】
更に、従来のジョイスティックコントローラでは、板バネの変位方向がストッパの縁部と直角になる。このため、板バネをストッパの縁部と平行に当接するために、筐体の開口部を方形にする必要があり、その結果、操作体の操作方向の自由度が制約されていた。
【0016】
本発明は、所望キックダウン特性を得るために時間と労力を要せず、操作体の操作方向の自由度が制約されることのない小型のジョイスティックコントローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明のジョイスティックコントローラは、筐体と、前記筐体に支持され、回転中心を中心に傾斜回動可能なシャフトを有する操作体と、前記シャフトの前記回転中心の上側に配置される第1のスプリングリターン機構部と、前記第1のスプリングリターン機構部の上側に配置される第2のスプリングリターン機構部と、前記筐体の内部で、かつ前記第1のスプリングリターン機構部の下側に設けられる、前記シャフトの変位を検出する検出部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、操作体のシャフトに備えるスプリングリターン機構部のスプリングバネの力でキックダウン動作を行うので、所望キックダウン特性を得るために時間と労力を要せず、操作体のシャフトの操作方向の自由度が制約されることのない小型のジョイスティックコントローラを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラの動作を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラの動作を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラの筐体を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラの操作体の詳細とその組み立てを示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラの検出部を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラのポテンショメータの出力特性を示す図である。
【図7】従来技術に係るジョイスティックコントローラの動作を示す断面図である。
【図8】従来技術に係るジョイスティックコントローラを示す斜視図である。
【図9】従来技術に係るジョイスティックコントローラのポテンショメータの出力特性を示す図であるである。
【図10】従来技術に係るキックダウン機構を備えるジョイスティックコントローラの動作を示す断面図である。
【図11】従来技術に係るキックダウン機構を備えるジョイスティックコントローラの動作を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラを図1〜図6に基づいて説明する。図1(a)〜(c)は、本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラの動作を説明するための断面図であり、図2は、図1(a)〜(c)に対応する斜視図である。
【0021】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラ1は、筐体10と、筐体10によって傾斜回動可能に支持される操作体20を備えている。そして、図1には図示されていないが、操作体20の変位を検出し、変位に応じた電気信号を出力する検出部30(図5参照)を有している。
【0022】
筐体10は、固定用フランジ11と、固定用フランジ11に設置される摺動用プレート12と、筐体ケース14とを有する。固定用フランジ11は、フランジ面に開口を有する。摺動用プレート12は、固定用フランジ11の開口と対応する位置に開口を有する。筐体ケース14は、ドーム形状に形成され、ドーム上部の固定用フランジ11の開口と対応する位置に開口を有する。それらの開口内に、操作体20が設置される。
【0023】
筐体ケース14は、その開口の縁辺部にストッパ15を備え、ストッパ15は、操作体20の動作の終端で操作体20を停止させる。ストッパ15は、筐体ケース14と一体に設けられても良く、筐体ケース14と別体で筐体ケース14に備えるようにしても良い。
【0024】
操作体20は、シャフト21と、操作者がシャフト21を操作しやすいようにシャフト21に取り付けられる摘み22とを有し、シャフト21は、回転中心17を中心に回動して変位する。また、操作体20は、下から上に、下部可動側スプリング受け23と、上部可動側スプリング受け24と、固定側スプリング受け25とを備える。
【0025】
さらに、操作体20は、下部可動側スプリング受け23と上部可動側スプリング受け24との間に下部リターン用スプリング26を備え、上部可動側スプリング受け24と固定側スプリング受け25との間に上部リターン用スプリング27を備える。
【0026】
そして、下部可動側スプリング受け23と、上部可動側スプリング受け24と、下部リターン用スプリング26とにより、下部スプリングリターン機構部28が構成される。また、上部可動側スプリング受け24と、固定側スプリング受け25と、上部リターン用スプリング27とにより、上部スプリングリターン機構部29が構成される。
【0027】
ジョイスティックコントローラ1は、操作者が摘み22を傾倒させて、回転中心17を動作の支点としてシャフト21を回動して変位させることにより動作する。
【0028】
図1(a)に示すように、操作者が摘み22を操作しないときは、下部リターン用スプリング26のバネの力で、下部可動側スプリング受け23が、摺動用プレート12に押し付けられる。このため、操作体20は、垂直に保持される。
【0029】
図1(b)に示すように、操作者が摘み22を傾動して、上部可動側スプリング受け24を筐体10の開口の縁辺部に設けられたストッパ15に押し付けると、下部可動側スプリング受け23が、摺動用プレート12に押し上げられ、下部リターン用スプリング26が押され圧縮される。
【0030】
図1(c)に示すように、操作者が摘み22を更に傾動して、筐体1の開口の縁辺部のストッパ15に押し上げられた上部可動側スプリング受け24を、ストッパ15の上に更に深く押し上げると、上部リターン用スプリング27が更に押され圧縮される。
【0031】
この際、操作者が摘み22を傾動させる操作力が、上部リターン用スプリング27について下部リターン用スプリング26より重くなるように、上部リターン用スプリング27と下部リターン用スプリング26を選定し、上部リターン用スプリング27と下部リターン用スプリング26のバネ力を調整する。
【0032】
従来のジョイスティックコントローラにおいて、キックダウン動作の特性を変えようとする場合には、複数個の板バネを交換し、併せて、複数個の板バネの特性を揃える必要があった。このため、キックダウン動作の特性を変えるために時間と労力を要していた。
【0033】
本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラでは、上部スプリングリターン機構部29が備える1個の上部リターン用スプリング27について必要とされるバネの力を計算し、所望のバネの力を有するリターン用スプリングと交換することにより、複雑な計算と調整をすることなく、所望のキックダウン特性を得ることが可能となる。
【0034】
従来のジョイスティックコントローラでは、板バネの変位方向がストッパの縁部と直角で、板バネがストッパの縁部と平行に当接する必要から、筐体の開口部を方形にする必要があり、操作体の操作方向の自由度が制約されていた。
【0035】
しかしながら、本発明のジョイスティックコントローラでは、上部スプリングリターン機構部29により、キックダウン動作を行う。したがって、図3に示されるように、筐体の開口部を方形に限らず、十字形、円形等とすることができ、操作体の操作方向の自由度の制約を解消することが可能となる。
【0036】
次に、図4に基づいて、本発明の実施形態例のジョイスティックコントローラの組み立て方法の1例について説明する。
図4に示されるように、まず固定用フランジ11の上に、筐体ケース14が取り付けられる。この筐体ケース14には、ストッパ15が設けられている。そして、下部可動側スプリング受け23(図1参照)が固定用フランジ11の摺動用プレート12(図1参照)に接触されてシャフト下部21aが仮固定される。
【0037】
続いて、シャフト下部21aの外側に下部リターン用スプリング26が挿入される。そして、シャフト下部21aの上にシャフト上部21bが挿入され、シャフト下部21aとシャフト上部21bとは、止めネジ36によって固定される。これにより、シャフト21が組み立てられる。
【0038】
上部可動側スプリング受け24、上部リターン用スプリング27及び固定側スプリング受け25が、シャフト上部21bに挿入され、止め輪37によって固定される。シャフト上部21bの先端に、摘み22が取り付けられる。これにより、操作体20(図1参照)が組み立てられ、組み立てられた操作体20は、筐体10により支持される。
【0039】
図5は、本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラの検出部30を示す図である。図5に示されるジョイスティックコントローラの検出部30は、操作体20のシャフト21と連結され、シャフト21の操作によりX−Y軸方向に揺動するアーム31と、アーム31の変位を検出するポテンショメータ32を有する。ポテンショメータ32は、X軸方向とY軸方向のそれぞれに1個ずつ設けられており、アーム31のX軸方向とY軸方向の揺動角を電気信号としてX軸、Y軸方向に独立に取り出すことができる。
【0040】
図6は、本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラのポテンショメータの出力特性を示す図である。図6では、アナログ出力電圧を例に、ポテンショメータの出力特性を示す。図6に示される例では、アーム31の通常の操作範囲が出力電圧20〜80%の範囲で設定され、キックダウン機構の稼働が出力電圧10〜20%及び80〜90%の範囲で設定される。
【0041】
本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラでは、キックダウン機構の稼働する出力範囲が、例えば、制御速度について操作者に注意を促す範囲として設定され、操作体20を操作する力が通常の操作範囲より重くなることで操作者に注意を促すようにする。
【0042】
ここで、電源線又は接地(GND)線が断線すると、出力電圧が0又は100%付近となるため、出力電圧の10〜90%の範囲を超える出力が検出された場合は、例えば、ポテンショメータの断線と判断し、出力電圧に応じて行われる制御動作を中止する。
【0043】
以上、本発明の実施形態例を説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変形例、応用例を含むことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0044】
1、37、38…ジョイスティックコントローラ、10、40…筐体、11…固定用フランジ、12、43…摺動用プレート、14、44…筐体ケース、15、45…ストッパ、17、47…回転中心、20、50…操作体、21、21a、21b、51…シャフト、22、52…摘み、23…下部可動側スプリング受け、24…上部可動側スプリング受け、25…固定側スプリング受け、26…下部リターン用スプリング、27…上部リターン用スプリング、28…下部スプリングリターン機構部、29…上部スプリングリターン機構部、30、60…検出部、31、61…アーム、32…ポテンショメータ、36…止めネジ、37…止め輪、53…可動側スプリング受け(従来例)、55…固定側スプリング受け(従来例)、56…リターン用スプリング(従来例)、58…スプリングリターン機構部(従来例)、59…板バネ、62…ポテンショメータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作体であるシャフトの動きを検出し、それに応じて対象機器を制御するジョイスティックコントローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジョイスティックコントローラは、操作体であるシャフトの変位に応じて対象機器を制御できることから、様々な分野で使用されている。図7は、このような従来技術に係るジョイスティックコントローラの動作を示す断面図、図8は、従来技術に係るジョイスティックコントローラを示す斜視図、図9は、従来技術に係るジョイスティックコントローラのポテンショメータの出力特性を示す図である。
【0003】
図7に示される従来技術に係るジョイスティックコントローラ37は、筐体40と、筐体40に傾斜回動可能に支持される操作体50と、操作体50の変位を検出し、それに応じた電圧を出力する検出部60とを有する。
【0004】
操作体50は、操作体50に操作力を加えない状態で操作体50を直立させて保持し、操作体50に操作力を加えて変位した状態で、操作力を除くことにより操作体50をもとに戻すスプリングリターン機構部58を備える。ジョイスティックコントローラ37は、操作体50の変位に応じて、対象機器(図示せず)を制御することができる。
【0005】
このような従来技術に係るジョイスティックコントローラ37では、操作体50の変位に応じて操作体50に必要とされる操作力は、スプリングリターン用スプリング26のバネ定数に比例して操作体50の変位に応じて直線的に増加する。そして、図9に示されるように、検出部60は、操作体50の変位に応じて所定の範囲で直線的に増加する出力電圧を出力する。
【0006】
他方、ジョイスティックコントローラによって制御される対象機器について、対象機器の動作があるレベルまで達した際に、これ以上ジョイスティックコントローラの操作体を変位させる操作をすることにより、制御される対象機器に危険が生じる場合がある。このため、ある限界を超えて操作体を捜査すると、対象機器が危険状態に陥る場合があることを、操作者に注意喚起する必要がある。
【0007】
操作者に注意を喚起するためには、操作体の変位がある値を超えたところから操作体の操作力が大きくなり、操作体が重くなるキックダウン機構を備えるジョイスティックコントローラが適している。
【0008】
従来技術に係るキックダウン機構を備えるジョイスティックコントローラを図面に基づいて説明する。図10は、従来技術に係るキックダウン機構を備えるジョイスティックコントローラの動作を示す断面図、図11は、従来技術に係るキックダウン機構を備えるジョイスティックコントローラの動作を示す斜視図である。
【0009】
図10に示される従来技術に係るキックダウン機構を備えるジョイスティックコントローラ38は、図7に示されるジョイスティックコントローラ37と同様に、筐体40と、筐体40に傾斜回動可能に支持される操作体50と、操作体50の変位を検出し、それに応じた電圧を出力する検出部60とを有する。
【0010】
そして、ジョイスティックコントローラ38では、操作体50は、シャフト51とシャフト51を操作するための摘み52を備え、シャフト51は回転中心47を中心に回動して変位する。また、操作体50は、操作体50に操作力を加えない状態で操作体50を直立させて保持し、操作体50に操作力を加えて変位した状態で、操作力を除くことにより操作体50をもとの直立した状態に戻すスプリングリターン機構部58を備える。
【0011】
そして、図10に示されるジョイスティックコントローラ38は、キックダウン動作をするための複数枚の板バネ59をさらに備える。それらの複数枚の板バネ59として、例えば、4枚の板バネが使用される。操作体50を操作した際に4方向の操作端で、操作体50が筐体40の開口部の縁にあるストッパ45に当り、操作体50をさらに倒して変位させようとすると、板バネ59のバネ力により操作体50の操作感が重くなる。それらにより、ジョイスティックコントローラ38は、キックダウン動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−254567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来のジョイスティックコントローラでは、キックダウン動作をするための板バネを操作体のシャフトに配置するために、シャフトにある程度長いスペースを必要とする。このため、スプリングリターン機構部をシャフトの回転中心(動作支点)の下側に配置することが必要となり、全体としてシャフトが長大化し、このため、ジョイスティックコントローラが大型化していた。
【0014】
また、従来のジョイスティックコントローラでは、キックダウン動作を精度よく安定して実現するために、複数個の板バネの特性を揃える必要があった。そして、キックダウン動作の特性を変えようとする場合にも、複数個の板バネを交換し、併せて、複数個の板バネの特性を揃える必要があった。このため、キックダウン動作に必要とされるバネ力を得るために、時間と労力を要していた、
【0015】
更に、従来のジョイスティックコントローラでは、板バネの変位方向がストッパの縁部と直角になる。このため、板バネをストッパの縁部と平行に当接するために、筐体の開口部を方形にする必要があり、その結果、操作体の操作方向の自由度が制約されていた。
【0016】
本発明は、所望キックダウン特性を得るために時間と労力を要せず、操作体の操作方向の自由度が制約されることのない小型のジョイスティックコントローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明のジョイスティックコントローラは、筐体と、前記筐体に支持され、回転中心を中心に傾斜回動可能なシャフトを有する操作体と、前記シャフトの前記回転中心の上側に配置される第1のスプリングリターン機構部と、前記第1のスプリングリターン機構部の上側に配置される第2のスプリングリターン機構部と、前記筐体の内部で、かつ前記第1のスプリングリターン機構部の下側に設けられる、前記シャフトの変位を検出する検出部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、操作体のシャフトに備えるスプリングリターン機構部のスプリングバネの力でキックダウン動作を行うので、所望キックダウン特性を得るために時間と労力を要せず、操作体のシャフトの操作方向の自由度が制約されることのない小型のジョイスティックコントローラを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラの動作を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラの動作を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラの筐体を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラの操作体の詳細とその組み立てを示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラの検出部を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラのポテンショメータの出力特性を示す図である。
【図7】従来技術に係るジョイスティックコントローラの動作を示す断面図である。
【図8】従来技術に係るジョイスティックコントローラを示す斜視図である。
【図9】従来技術に係るジョイスティックコントローラのポテンショメータの出力特性を示す図であるである。
【図10】従来技術に係るキックダウン機構を備えるジョイスティックコントローラの動作を示す断面図である。
【図11】従来技術に係るキックダウン機構を備えるジョイスティックコントローラの動作を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラを図1〜図6に基づいて説明する。図1(a)〜(c)は、本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラの動作を説明するための断面図であり、図2は、図1(a)〜(c)に対応する斜視図である。
【0021】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラ1は、筐体10と、筐体10によって傾斜回動可能に支持される操作体20を備えている。そして、図1には図示されていないが、操作体20の変位を検出し、変位に応じた電気信号を出力する検出部30(図5参照)を有している。
【0022】
筐体10は、固定用フランジ11と、固定用フランジ11に設置される摺動用プレート12と、筐体ケース14とを有する。固定用フランジ11は、フランジ面に開口を有する。摺動用プレート12は、固定用フランジ11の開口と対応する位置に開口を有する。筐体ケース14は、ドーム形状に形成され、ドーム上部の固定用フランジ11の開口と対応する位置に開口を有する。それらの開口内に、操作体20が設置される。
【0023】
筐体ケース14は、その開口の縁辺部にストッパ15を備え、ストッパ15は、操作体20の動作の終端で操作体20を停止させる。ストッパ15は、筐体ケース14と一体に設けられても良く、筐体ケース14と別体で筐体ケース14に備えるようにしても良い。
【0024】
操作体20は、シャフト21と、操作者がシャフト21を操作しやすいようにシャフト21に取り付けられる摘み22とを有し、シャフト21は、回転中心17を中心に回動して変位する。また、操作体20は、下から上に、下部可動側スプリング受け23と、上部可動側スプリング受け24と、固定側スプリング受け25とを備える。
【0025】
さらに、操作体20は、下部可動側スプリング受け23と上部可動側スプリング受け24との間に下部リターン用スプリング26を備え、上部可動側スプリング受け24と固定側スプリング受け25との間に上部リターン用スプリング27を備える。
【0026】
そして、下部可動側スプリング受け23と、上部可動側スプリング受け24と、下部リターン用スプリング26とにより、下部スプリングリターン機構部28が構成される。また、上部可動側スプリング受け24と、固定側スプリング受け25と、上部リターン用スプリング27とにより、上部スプリングリターン機構部29が構成される。
【0027】
ジョイスティックコントローラ1は、操作者が摘み22を傾倒させて、回転中心17を動作の支点としてシャフト21を回動して変位させることにより動作する。
【0028】
図1(a)に示すように、操作者が摘み22を操作しないときは、下部リターン用スプリング26のバネの力で、下部可動側スプリング受け23が、摺動用プレート12に押し付けられる。このため、操作体20は、垂直に保持される。
【0029】
図1(b)に示すように、操作者が摘み22を傾動して、上部可動側スプリング受け24を筐体10の開口の縁辺部に設けられたストッパ15に押し付けると、下部可動側スプリング受け23が、摺動用プレート12に押し上げられ、下部リターン用スプリング26が押され圧縮される。
【0030】
図1(c)に示すように、操作者が摘み22を更に傾動して、筐体1の開口の縁辺部のストッパ15に押し上げられた上部可動側スプリング受け24を、ストッパ15の上に更に深く押し上げると、上部リターン用スプリング27が更に押され圧縮される。
【0031】
この際、操作者が摘み22を傾動させる操作力が、上部リターン用スプリング27について下部リターン用スプリング26より重くなるように、上部リターン用スプリング27と下部リターン用スプリング26を選定し、上部リターン用スプリング27と下部リターン用スプリング26のバネ力を調整する。
【0032】
従来のジョイスティックコントローラにおいて、キックダウン動作の特性を変えようとする場合には、複数個の板バネを交換し、併せて、複数個の板バネの特性を揃える必要があった。このため、キックダウン動作の特性を変えるために時間と労力を要していた。
【0033】
本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラでは、上部スプリングリターン機構部29が備える1個の上部リターン用スプリング27について必要とされるバネの力を計算し、所望のバネの力を有するリターン用スプリングと交換することにより、複雑な計算と調整をすることなく、所望のキックダウン特性を得ることが可能となる。
【0034】
従来のジョイスティックコントローラでは、板バネの変位方向がストッパの縁部と直角で、板バネがストッパの縁部と平行に当接する必要から、筐体の開口部を方形にする必要があり、操作体の操作方向の自由度が制約されていた。
【0035】
しかしながら、本発明のジョイスティックコントローラでは、上部スプリングリターン機構部29により、キックダウン動作を行う。したがって、図3に示されるように、筐体の開口部を方形に限らず、十字形、円形等とすることができ、操作体の操作方向の自由度の制約を解消することが可能となる。
【0036】
次に、図4に基づいて、本発明の実施形態例のジョイスティックコントローラの組み立て方法の1例について説明する。
図4に示されるように、まず固定用フランジ11の上に、筐体ケース14が取り付けられる。この筐体ケース14には、ストッパ15が設けられている。そして、下部可動側スプリング受け23(図1参照)が固定用フランジ11の摺動用プレート12(図1参照)に接触されてシャフト下部21aが仮固定される。
【0037】
続いて、シャフト下部21aの外側に下部リターン用スプリング26が挿入される。そして、シャフト下部21aの上にシャフト上部21bが挿入され、シャフト下部21aとシャフト上部21bとは、止めネジ36によって固定される。これにより、シャフト21が組み立てられる。
【0038】
上部可動側スプリング受け24、上部リターン用スプリング27及び固定側スプリング受け25が、シャフト上部21bに挿入され、止め輪37によって固定される。シャフト上部21bの先端に、摘み22が取り付けられる。これにより、操作体20(図1参照)が組み立てられ、組み立てられた操作体20は、筐体10により支持される。
【0039】
図5は、本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラの検出部30を示す図である。図5に示されるジョイスティックコントローラの検出部30は、操作体20のシャフト21と連結され、シャフト21の操作によりX−Y軸方向に揺動するアーム31と、アーム31の変位を検出するポテンショメータ32を有する。ポテンショメータ32は、X軸方向とY軸方向のそれぞれに1個ずつ設けられており、アーム31のX軸方向とY軸方向の揺動角を電気信号としてX軸、Y軸方向に独立に取り出すことができる。
【0040】
図6は、本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラのポテンショメータの出力特性を示す図である。図6では、アナログ出力電圧を例に、ポテンショメータの出力特性を示す。図6に示される例では、アーム31の通常の操作範囲が出力電圧20〜80%の範囲で設定され、キックダウン機構の稼働が出力電圧10〜20%及び80〜90%の範囲で設定される。
【0041】
本発明の実施形態に係るジョイスティックコントローラでは、キックダウン機構の稼働する出力範囲が、例えば、制御速度について操作者に注意を促す範囲として設定され、操作体20を操作する力が通常の操作範囲より重くなることで操作者に注意を促すようにする。
【0042】
ここで、電源線又は接地(GND)線が断線すると、出力電圧が0又は100%付近となるため、出力電圧の10〜90%の範囲を超える出力が検出された場合は、例えば、ポテンショメータの断線と判断し、出力電圧に応じて行われる制御動作を中止する。
【0043】
以上、本発明の実施形態例を説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変形例、応用例を含むことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0044】
1、37、38…ジョイスティックコントローラ、10、40…筐体、11…固定用フランジ、12、43…摺動用プレート、14、44…筐体ケース、15、45…ストッパ、17、47…回転中心、20、50…操作体、21、21a、21b、51…シャフト、22、52…摘み、23…下部可動側スプリング受け、24…上部可動側スプリング受け、25…固定側スプリング受け、26…下部リターン用スプリング、27…上部リターン用スプリング、28…下部スプリングリターン機構部、29…上部スプリングリターン機構部、30、60…検出部、31、61…アーム、32…ポテンショメータ、36…止めネジ、37…止め輪、53…可動側スプリング受け(従来例)、55…固定側スプリング受け(従来例)、56…リターン用スプリング(従来例)、58…スプリングリターン機構部(従来例)、59…板バネ、62…ポテンショメータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に支持され、回転中心を中心に傾斜回動可能なシャフトを有する操作体と、
前記シャフトの前記回転中心の上側に配置される第1のスプリングリターン機構部と、
前記第1のスプリングリターン機構部の上側に配置される第2のスプリングリターン機構部と、
前記筐体の内部で、かつ前記第1のスプリングリターン機構部の下側に設けられる、前記シャフトの変位を検出する検出部と、
を備えることを特徴とするジョイスティックコントローラ。
【請求項2】
前記シャフトには、
前記回転中心の上側に、順次、下部可動側スプリング受けと、上部可動側スプリング受けと、固定側スプリング受けと、が設けられ、
前記下部可動側スプリング受けと前記上部可動側スプリング受けとの間には、下部リターン用スプリングが配置され、
前記上部可動側スプリング受けと前記固定側スプリング受けとの間に配置される上部リターン用スプリングとが配置される、ことを特徴とする請求項1記載のジョイスティックコントローラ。
【請求項3】
前記第1のスプリングリターン機構部は、
前記下部可動側スプリング受けと、前記上部可動側スプリング受けと、前記下部リターン用スプリングとによって構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のジョイスティックコントローラ。
【請求項4】
前記第2のスプリングリターン機構部は、
前記上部可動側スプリング受けと、前記固定側スプリング受けと、上部リターン用スプリングとによって構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のジョイスティックコントローラ。
【請求項5】
前記第2のスプリングリターン機構部により、前記操作体の操作力が大きくなるキックダウン動作を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のジョイスティックコントローラ。
【請求項6】
前記上部可動側スプリング受けが前記筐体に乗り上げて、前記上部リターン用スプリングを圧縮することにより、前記キックダウン動作を行うことを特徴とする請求項5に記載のジョイスティックコントローラ。
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に支持され、回転中心を中心に傾斜回動可能なシャフトを有する操作体と、
前記シャフトの前記回転中心の上側に配置される第1のスプリングリターン機構部と、
前記第1のスプリングリターン機構部の上側に配置される第2のスプリングリターン機構部と、
前記筐体の内部で、かつ前記第1のスプリングリターン機構部の下側に設けられる、前記シャフトの変位を検出する検出部と、
を備えることを特徴とするジョイスティックコントローラ。
【請求項2】
前記シャフトには、
前記回転中心の上側に、順次、下部可動側スプリング受けと、上部可動側スプリング受けと、固定側スプリング受けと、が設けられ、
前記下部可動側スプリング受けと前記上部可動側スプリング受けとの間には、下部リターン用スプリングが配置され、
前記上部可動側スプリング受けと前記固定側スプリング受けとの間に配置される上部リターン用スプリングとが配置される、ことを特徴とする請求項1記載のジョイスティックコントローラ。
【請求項3】
前記第1のスプリングリターン機構部は、
前記下部可動側スプリング受けと、前記上部可動側スプリング受けと、前記下部リターン用スプリングとによって構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のジョイスティックコントローラ。
【請求項4】
前記第2のスプリングリターン機構部は、
前記上部可動側スプリング受けと、前記固定側スプリング受けと、上部リターン用スプリングとによって構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のジョイスティックコントローラ。
【請求項5】
前記第2のスプリングリターン機構部により、前記操作体の操作力が大きくなるキックダウン動作を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のジョイスティックコントローラ。
【請求項6】
前記上部可動側スプリング受けが前記筐体に乗り上げて、前記上部リターン用スプリングを圧縮することにより、前記キックダウン動作を行うことを特徴とする請求項5に記載のジョイスティックコントローラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−211321(P2010−211321A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54200(P2009−54200)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000120489)栄通信工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000120489)栄通信工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
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