説明

ジルコニア−アルミナ・セラミック材料

ジルコニア、イットリウムおよびセリウムを含む第1の相、ここに、イットリウムおよびセリウムは0.15ないし0.5のモル比および5ないし15モル%の結合した量で存在し、アルミナを含む第2の相、および、金属アルミン酸塩小板を含む第3の相を含むセラミック材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニアおよびアルミナの両方を含むセラミック材料に関する。この材料は、例えばベアリングに適用することに有用となり得る。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ジルコニア(ZrO2)は3つの結晶学的形態を有する。その天然の結晶形態は単斜晶ジルコニアであり、それは1気圧において約1170℃の温度まで安定である。約1170℃ないし約2370℃での安定相は正方晶ジルコニアである。約2370℃よりも高温では、安定相は立方晶ジルコニアである。ジルコニアの異なる相は、例えばx−線回折のように当該技術分野でよく知られている技術によって同定し得る。例えば、米国特許第4316964号には、どのように27〜33°の2θスキャンを用いて単斜晶ジルコニア相に対する正方晶ジルコニア相の比を測定し、55〜62°のスキャンを用いて正方晶または立方晶のジルコニア構造を測定し得るかが記載されている。
【0003】
異なる相の結晶ジルコニアは、ジルコニアにある種の安定化元素を添加することによって安定化し得る。例えば、米国特許第4316964号には、ジルコニアをドーパントでドープした場合にどのようにして正方晶および立方晶相のジルコニアを室温でメタ−安定な形態で提供し得るかが記載されている。最も一般的な安定化元素には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ならびにセリウム(Ce)、イットリウム(Y)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ジスプロシウム(Dy)、チタン(Ti)およびハフニウム(Hf)のように希土類元素が含まれる。ジルコニアへのこれらの安定化元素の導入は、それを例えば安定化元素の酸化物と一緒に加熱することによって行い得る。したがって、例えば、CeO2、Y2O3、Ca2O3、Er2O3、Yb2O3・Dy2O3、TiO2、HfO2、MgOおよびCaOをジルコニアに添加し得る。典型的に、このような安定化は、ジルコニア中の安定化元素(または複数の元素)の固溶液の形成を生じる。
【0004】
異なる相の結晶質ジルコニアは異なる特性を示すことが知られている。例えば、正方晶ジルコニアは高い靱性を示すことが知られている。正方晶ジルコニアのこの靱性の1つの解釈は、クラックを形成した場合にクラック頂点のジルコニアが正方晶ジルコニアから単斜晶ジルコニアへの相転移を受けるということである。この相転移は典型的に約3ないし5%の体積の増加を伴う。この体積の増加は、ついでクラック拡大への駆動力を減じるように作用する圧縮応力を誘導する。この機構は「転移強化」と呼ばれ、WO 90/11980に記載されている。
【0005】
安定化した立方晶ジルコニアはクラッキングに付された場合と同様の効果を示し得ることも知られている。
【0006】
ジルコニアはそれ自体が有利な靱性特性を示し得るが、幾つかの適用については理想的な硬度を有していない。この硬度が欠如していることに鑑みて、アルミナがジルコニア材料に添加されている場合がある。アルミナおよびジルコニアを混合し、加熱すると、一般的にアルミナはジルコニアから分離したままとどまり、大部分、ジルコニアとの固溶液を形成しない。このアプローチの一例は、EP 1217235で採用されている。
【0007】
また、ジルコニアの靱性に寄与する機構は、上昇する温度において安定化ジルコニアがその機械的特性を保持する能力の低さにも寄与していると考えられている。詳細には、正方晶および立方晶相のジルコニアの安定性は温度上昇に伴って増大し、形成しているクラックの頂点において相転移が生じる傾向は温度上昇に伴って減少する。この熱的特徴の低い保持は、アルミナの添加によっても処理される。アルミナは周囲温度ではジルコニアよりも低い強度および靱性を有するが、上昇する温度においてはジルコニアよりも大きな程度でその強度および靱性を保持するからである。また、アルミナは、ジルコニアよりも高い熱導電率および低い熱膨張率を有し、これは熱衝撃を防ぐことを助ける。
【0008】
それとは別に、WO 90/11980には、例えば酸化ストロンチウム(SrO)のようにストロンチウムの酸化物として提供されるストロンチウムが、どのくらいアルミナ/ジルコニア混合物に溶解せず、その代わりに分離したアルミン酸ストロンチウム相を形成するかが記載されている。この分離相は、アルミン酸ストロンチウムの「小板」から形成される不連続相である。アルミン酸塩はSrO・6Al2O3として存在すると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ジルコニア、イットリウムおよびセリウムを含む第1の相、ここにイットリウムおよびセリウムは0.15ないし0.5のモル比および5ないし15モル%の結合した量で存在し、アルミナを含む第2の相、および金属アルミン酸塩小板を含む第3の相を含むセラミック材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
さらに本発明は、50ないし75重量%のジルコニアマトリクス、25ないし49.5重量%のアルミナ、0.5ないし5重量%の金属アルミン酸塩小板およびいずれかの不可避な不純物からなり、ここにジルコニアマトリクスは1ないし10モル%の量でイットリウムを含有するジルコニアおよび5ないし20モル%の量でセリウムを含有するジルコニアのコンポジットを含み、イットリウム含有ジルコニアおよびセリウム含有ジルコニアは1:3ないし1:1の重量比で存在するセラミック材料を提供する。
【0011】
さらに本発明は、ジルコニアおよびアルミナを含むセラミック材料の製造方法を提供し、該方法は:ジルコニア、アルミナおよび金属アルミン酸塩小板および/または金属アルミン酸塩小板前駆体を含むスリップをノズルを通して噴霧して液滴を形成し、これらの液滴を凍結乾燥または噴霧乾燥して小粒を形成し、小粒を圧縮してグリーンボディーを形成し、ついで、グリーンボディーを焼結することを含み、ここに金属アルミン酸塩小板がグリーンボディーの焼結の間に金属アルミン酸塩小板前駆体から形成される。
【0012】
さらに本発明は、内側リング、外側リングおよび内側リングと外側リングとの間の少なくとも1のローラー要素を含み、ここに少なくともローラー要素の転がり面が本明細書に定義するセラミック材料から形成され、内側リングおよび/または外側リングが:0.01-2重量%のC、0.6-10重量%のN、0.01-3.0重量%のSi、0.01-10.0重量%のMn、16-30重量%のCr、0.01-5.0重量%のMo、0.01-15.0重量%のV、0-5重量%のNi、0-5重量%のCo、0-5重量%のW、0-5重量%のTi、0-5重量%のZr、0-5重量%のAl、0-0.5重量%のSおよびいずれか不可避の不純物を一緒に含むバランスの鉄を含む鋼組成物製であるローラーベアリングを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の材料の例の微細構造を示す顕微鏡写真である。
【図2】図2は本発明の材料の例の微細構造を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、工学への応用に使用するための高性能セラミック材料に対する要望を認識している。詳細には、セラミック材料はベアリングコンポーネントのような高負荷の適用に有用である。
【0015】
現在、高性能工学応用に使用されている1の材料は窒化ケイ素である。しかしながら、本発明者らは、窒化ケイ素を使用することに関連するある種の欠点、すなわちその衝撃耐性ならびに水熱安定性および化学安定性を認識している。
【0016】
また、本発明者らは、ジルコニアを主成分とするセラミクスが窒化ケイ素を使用する幾つかの欠点を克服し得ることも認識している。しかしながら、本発明者らは、先行技術によって提唱されているジルコニア−アルミナ・セラミクスが高性能工学応用に望ましい物理学的特性のすべてを有し得ないことを見出した。
【0017】
例えば、イットリウム安定化正方晶ジルコニア(Y−TZP)およびアルミナのコンポジットが高性能工学応用に使用するために試験されている。本発明者らは、これらの材料が高性能工学応用に望まれる幾つかの有利な特性を示すことを見出している。しかしながら、本発明者らは、これらの材料が多湿環境、特に高温で性能低下を被ることを見出している。換言すれば、本発明者らは、これらの材料が低い水熱安定性を被る傾向があることを見出している。このことは、少なくとも部分的には、多湿環境におけるジルコニアの化学分解によって引き起こされ得る。
【0018】
これを、特性を表1に掲載する実施例1の組成物Aによって説明する。この例は、ジルコニアがイットリウムのみによって安定化されているジルコニア/アルミナコンポジットが望ましい水熱安定性および化学安定性を示し得ないことを示している。
【0019】
ついで、本発明者らは、材料を高性能工学応用に使用し得るように、ジルコニア−アルミナ・セラミック材料の組成物を選択して材料に望ましい物理学的特徴を付与し得ることを見出している。この組成物は水潤滑式ベアリングに使用するもののようなベアリングコンポーネントにおける使用に好適である。
【0020】
特に、本発明者らは、特定の量でイットリウムおよびセリウムの両方を含むジルコニアマトリクス中に金属アルミン酸塩小板を含むジルコニア−アルミナコンポジット材料が有利な特性を有することを見出している。この材料は、少なくとも3の相、すなわちジルコニアマトリクスの第1の相、アルミナの第2の相および金属アルミン酸塩小板の第3の相を含む。
【0021】
より詳細には、本発明のジルコニア−アルミナ・セラミック材料のジルコニアは、イットリウムおよびセリウムの両方を含む。イットリウムおよびセリウムは、好ましくはセラミック材料のジルコニア相(または複数の相)中に、0.15ないし0.5のモル比でセラミック材料中に含まれる。また、イットリウムおよびセリウムは、好ましくはセラミック材料のジルコニア相(または複数の相)中に、5ないし15モル%の結合した量で含まれ、ここに%は、ジルコニアのモルの総数とCeO2およびY2O3のモルの名目数(nominal number)との合計の比率として表す。これらの条件は、強度、硬度、化学的安定性および転がり特性を含む高性能工学材料に望ましい特性を有するセラミック材料の製造に有利であることが本発明者らによって見出されている。
【0022】
イットリウムおよびセリウムの結合したモル%は以下のように決定し得る:
【0023】
【数1】

この計算においては、イットリウムおよびセリウムはジルコニア中にその酸化物の形態で存在すると、名目上とっている。換言すれば、計算は酸化物ベースで行っている。
【0024】
本明細書中で用いる「セラミック」なる用語は、無機の非金属性固形物をいう。本明細書中で用いる「固体」、「液体」および「気体」なる用語は、別段指摘しない限り、25℃、1気圧での物の状態をいう。本発明のセラミック材料の非金属特性は、例えば、その低電気伝導率に反映されており、例えば好ましくは1010Ωmないし1015Ωmのような1010Ωm以上の電気抵抗を所有している。
【0025】
「ジルコニア」とは、その非ドープ形態で約1:2の酸素に対するジルコニアの化学量論(モル)比を有するジルコニウムの酸化物をいう。
【0026】
ジルコニアにはその化学量論形態でZrおよびOが含まれ、化学式ZrO2によって表し得る。安定化したジルコニアには、安定化元素が含まれる。これらの安定化元素はバルクZrO2の固溶液に溶解し得、それ自体、安定化元素がそれらの酸化物形態で存在すると考えることができる。これらの安定化元素はジルコニアの1またはそれを超える相、例えば正方晶相または立方晶相を安定化し得る。
【0027】
好ましくは、本発明で使用するジルコニアはイットリウムおよびセリウムで安定化された正方晶ジルコニアである。
【0028】
「マトリクス」なる用語は、その中に他の材料が分散している材料をいう。
【0029】
好ましくは、イットリウムおよびセリウムは0.2ないし0.5のモル比でジルコニアマトリクス中に含まれる。より好ましくは、イットリウムおよびセリウムは、約0.38のような0.3ないし0.45のモル比でジルコニアマトリクス中に含まれる。詳細には、本発明者らは、セリウムに対するイットリウムの比が増大した場合に、材料が強度、硬度および転がり特性のような高性能工学材料に望まれる特性の度合いがより大きくなることを見出している。しかしながら、セリウムに対するイットリウムの高い比は、水存在下におけるクラッキングに対する高い感受性のような低い環境特性を生じ得る。
【0030】
好ましくは、イットリウムおよびセリウムは約9モル%のような7モル%ないし12モル%の結合した量でジルコニアマトリクスに含まれ、これらの%はジルコニアのモルの総数とCeO2およびY2O3のモルの名目数との合計の比率として表している。本発明者らは、これらの量が、強度、硬度および転がり特性のような本発明の材料の有利な特性に寄与し得ることを見出している。
【0031】
好ましくは、イットリウムは、1.5ないし4モル%、より好ましくは約2.5モル%のような1ないし5モル%の量(0.5ないし2.5モル%のY2O3を含むジルコニアの当量)でジルコニアマトリクスに含まれる。これらのパーセンテージは、ジルコニアのモルの総数とCeO2およびY2O3のモルの名目数との合計の比率として表している。本発明者らは、これらの量が強度、硬度および転がり特性のような本発明の材料の有利な特性に寄与し得ることを見出している。
【0032】
好ましくは、セリウムは、5ないし10モル%、より好ましくは約7モル%のような3.5ないし13モル%の量でジルコニアマトリクス中に含まれる。本発明者らは、これらの量が強度、硬度および転がり特性のような本発明の材料の有利な特性に寄与することを見出している。
【0033】
好ましくは、ジルコニアは、ジルコニアが「転移強化」の利点をとり得るように立方晶または正方晶の形態で存在する。例えば、ジルコニアは、X−線回折によって測定して、0ないし5%のような、例えば2%以下、より好ましくは1%以下、例えば約0%で、単斜晶ジルコニアの不純な相を実質的に含まなくてもよい。より好ましくは、ジルコニアの靱性を増大するために、ジルコニアは正方晶形態で存在する。例えば、ジルコニアは、単斜晶ジルコニアまたは立方晶ジルコニアの不純物相を実質的に含まなくてもよい。したがって、ジルコニアの正方晶形態の相純度はX−線回折によって測定して95ないし100%、より好ましくは99%以上のような98%以上、例えば約100%とし得る。
【0034】
ジルコニアマトリクスは同一相中にイットリウムおよびセリウムの両方を含む単一の相から形成され得、あるいはコンポジットとして形成され得、その場合、イットリウムおよびセリウムはコンポジットマトリクスの別の相に含まれる。したがって、ジルコニアマトリクスはイットリウム−含有ジルコニアおよびセリウム−含有ジルコニアのコンポジットとし得る。
【0035】
ジルコニアマトリクスをコンポジットとして形成する場合、それには好ましくは少なくとも2の形態のジルコニア、すなわち(1)1ないし10モル%、好ましくは3ないし9モル%の量でイットリウムを含むジルコニア、および(2)5ないし20モル%、好ましくは8ないし16モル%の量でセリウムを含むジルコニア、が含まれる。例えば、マトリクスは、約1:2ないし約1:1、例えば約1:1.3のような約1:5ないし約2:1、好ましくは約1:3ないし約3:2の重量比でイットリウム−含有ジルコニアおよびセリウム−含有ジルコニアを含み得る。
【0036】
本発明のセラミック材料は、アルミナおよび金属アルミン酸塩小板の両方を含む。これらの2の相の存在は、走査型電子顕微鏡によって確認し得る。特に、金属アルミン酸塩小板の存在は、本発明の材料の靱性に寄与する。
【0037】
「アルミナ」なる用語は、アルミニウムの酸化物をいう。その化学量論的形態において、それは約2:3の酸素に対するアルミニウムの化学量論(モル)比を有し、化学式Al2O3によって表し得る。
【0038】
「金属アルミン酸塩」なる語は、Al2O3および金属を含む相をいう。金属アルミン酸塩は、例えば、化学式M(Al2O3x、式中xは約6のような約1ないし約10、またはMOy(Al2O3x、式中yは典型的には1、1.5または2のような約1ないし約3であり、xは前記定義に同じ、を有し得る。
【0039】
「小板」なる語は材料の不連続相をいう。小板は少なくとも1の寸法、好ましくは他の寸法よりも大きい2の寸法を有する。例えば、小板のアスペクト比は、少なくとも約1.5とし得る。好ましくは、アスペクト比は、約1.5ないし約10、例えば約2ないし約5とし得る。アスペクト比を得るために、小板の最小および最大の寸法を走査型電子顕微鏡によって測定し得る。詳細には、材料の断面の走査型電子顕微鏡像を撮り、断面に見える各小板の最大の寸法および最小の寸法を測定し得る。ついで、これらの測定した寸法の比を計算する。
【0040】
金属アルミン酸塩小板は、2ないし20モル%の量で金属または金属酸化物を含み得る(バランスは好ましくはAl2O3)。これらの量において、金属または金属酸化物は小板の安定な形成に寄与するのに有効となり得る。
【0041】
アルミナ小板中の金属または金属酸化物は、例えば、酸化ストロンチウムおよび/または酸化ランタンとし得る。好ましくは、小板はSrO・6Al2O3および/またはLa2O3・6Al2O3のようなアルミン酸ストロンチウムおよび/またはアルミン酸ランタンを含むか、またはそれらのみからなる。好ましくは、小板はヘキサアルミン酸ストロンチウムから形成される。この材料は本発明の材料の靱性に特に寄与するからである。
【0042】
金属アルミン酸塩小板は、好ましくは組成物の0.5ないし10重量%、より好ましくは2ないし8重量%、より好ましくは約6重量%の量で存在する。これらの量において、小板は、靱性の増大のような、本発明の材料に小板を含めることから生じる有利な特性に寄与して有効となり得る。
【0043】
加えて、または別法として、本発明の材料は、好ましくは材料の断面の走査型電子顕微鏡像で測定して0.5ないし10面積%の金属アルミン酸塩小板を含む。より好ましくは、材料は、約6面積%のような2ないし8面積%の小板を含む。これらの量の小板は本発明の材料の靱性に寄与すると考えられる。
【0044】
好ましくは、アルミナおよび金属アルミン酸塩小板は、2:1ないし20:1、より好ましくは3:1ないし10:1、より好ましくは約4.5:1の重量比で存在する。これらの比は、本発明の材料の有利な特性に寄与するのを助け得る。
【0045】
好ましくは、材料は重量の大部分のジルコニアを含む。好ましくは、材料はアルミナよりも多量のジルコニアを含む。好ましくは、材料は20ないし95重量%のジルコニアマトリクス、4.5ないし75重量%のアルミナおよび0.5ないし10重量%の金属アルミン酸塩小板を含む。より好ましくは、材料は、その製造から生じる不可避の不純物と一緒に、50ないし75重量%のジルコニア、25ないし49.5重量%のアルミナ、および0.5ないし5重量%の金属アルミン酸塩小板からなるかまたは実質的にのみからなる。これらの比率は、強度、硬度および転がり特性のような本発明の有利な特性に貢献し得る。
【0046】
ジルコニアマトリクス、アルミナおよび金属アルミン酸塩小板を含むのと同様に、材料は、他の相および不可避の不純物を含み得る。別法として、材料は、ジルコニア、アルミナおよびいずれか不可避の不純物のみから実質的になるものであってもよい。
【0047】
本発明の材料は、焼結に付された焼結材料の形態で存在し得る。焼結は、加熱によって粉体から一体的な固体を形成することが当該技術分野で知られている。
【0048】
本発明の材料は、焼結した場合、アルミナおよび金属アルミン酸塩小板が不連続相として分散している、セリウムおよびイットリウムの両方を含むジルコニアマトリクスを含むと考え得る。この微細構造の一例を図1および2に示す。
【0049】
好ましくは、走査型電子顕微鏡によって観察される材料の断面中の実質的にすべての粒子は、10μm以下、より好ましくは5μm以下の粒径を有する。したがって、好ましくは走査型電子顕微鏡によって観察される材料の断面中の粒子の少なくとも90面積%は10μm以下、より好ましくは5μm以下の粒径を有する。好ましくは、粒子の少なくとも95面積%がこれらの粒径を有し、より好ましくは約100%のような少なくとも98面積%がこれらの粒径を有する。詳細には、これらの粒径は、材料の有利な疲労−寿命挙動に寄与し得る。
【0050】
好ましい組成物は、
セリウム含有ジルコニアおよびイットリウム安定化ジルコニアを含むマトリクス、ここにセリウム含有ジルコニアは8ないし16モル%のセリウム含量を有し、かつ、材料の35ないし45重量%の量で存在し、および、ここにイットリウム含有ジルコニアは3.0ないし9.0モル%(すなわち、Y2O3酸化物ベースで1.5ないし4.5モル%)のイットリウム含量を有し、材料の25ないし35重量%の量で存在する、
20ないし30重量%のアルミナ、および
3ないし8重量%の金属アルミン酸塩小板
を含むセラミック材料を含む。
【0051】
さらなる好ましい組成物は、
セリウム含有ジルコニアおよびイットリウム安定化ジルコニアを含むマトリクス、ここにセリウム含有ジルコニアは約12モル%セリウムのセリウム含量を有し、かつ、材料の約39重量%の量で存在し、および、ここにイットリウム含有ジルコニアは約6モル%(すなわち、Y2O3酸化物ベースで3モル%)のイットリウム含量を有し、かつ、材料の約29.5重量%の量で存在し、
約24.6重量%のアルミナ、および
約5.7重量%の金属アルミン酸塩小板
を含むセラミック材料である。
【0052】
好ましくは、本発明のコンポジット材料は、それを高性能工学応用に使用することを許容する多数の特性を示す。本明細書に記載するすべての測定は、別段指摘しない限り25℃および1気圧の空気中で行い、ASTM F2094−06窒化ケイ素ボール規格に従って行う。
【0053】
詳細には、好ましくは、コンポジット材料は、1300MPaないし2500MPaのように1300MPa以上、より好ましくは1400MPaないし2000MPa、より好ましくは1500MPaないし1600MPaの強度(4点曲げ強度、ASTM C1161)を有する。この強度は、材料が、高い製造および応用信頼性を付与しつつ、コンポーネントにおいて一般的な高い応力レベルに耐えることを許容する。
【0054】
好ましくは、材料の破壊靱性(ASTM C1421)は、5ないし20MPam1/2、より好ましくは7.5ないし15MPam1/2、より好ましくは8ないし10MPam1/2のように5.0MPam1/2以上である。この靱性は高い欠陥耐性を与え、高い製造および応用信頼性を付与しつつ使用における極めて大きな機能不全を防ぐ。
【0055】
好ましくは、材料のHV10押込硬度は、1400ないし2000kg/m2、より好ましくは1500ないし1600kg/m2のように1200kg/m2以上である。この硬度は、例えば通常の石英粒子による粒子汚染に耐えることに寄与する。
【0056】
好ましくは、材料の弾性係数(EN 15335:2007)は、100ないし330MPa、より好ましくは200ないし300MPaのように330MPa以下である。この弾性係数により、ボールもしくはローラーまたは相対物(レースウェイ)における高いヘルツの接触応力を回避する。
【0057】
本発明の材料の製造に転じ、本発明のセラミック材料は多くの技術を用いて製造し得る。
詳細には、ジルコニアマトリクスは多数の経路によって形成し得る。例えば、非ドープジルコニアは、別にして提供し得、セリウム源およびイットリウム源と混合し、焼結温度まで加熱し得る。典型的なセリウムおよびイットリウム源はそれらの酸化物(CeO2およびY2O3)である。
【0058】
別法として、セリウム含有ジルコニアはイットリウム含有ジルコニアと混合して焼結温度まで加熱し得る。
【0059】
別法として、ジルコニアは酸化セリウムおよび酸化イットリウムの両方をすでに含有して提供し得る。
【0060】
金属アルミン酸塩小板は、多くの方法でも提供し得る。それは小板形態に予め成形して提供し得る。別法として、アルミナおよび金属源の混合物を提供し得る。ランタン源および/またはストロンチウム源のようにアルミナおよび金属源の混合物を提供し得る。典型的な金属源はその酸化物である。つぎに、アルミナおよび金属源を焼結温度まで加熱すると、イン・サイチュ(in situ)で小板が形成する。アルミナを含む金属源の加熱および、適用できる場合の、イットリウム源およびセリウム源を含むジルコニアの加熱は同時(すなわち、すべてのコンポーネントをプレミックスしておく)に行い得、または別々に行い、ついで合して再加熱し得る。
【0061】
いかなる経路を採ろうと、ジルコニア/アルミナ混合物は典型的に焼結温度に加熱する。典型的な焼結条件は、1450ないし1650℃のように1400ないし1700℃にて、例えば2ないし10時間のように0.5ないし20時間の焼結である。
【0062】
焼結した後、焼結材料は材料中のいずれの残存孔をも除去するために熱間静水圧加圧(HIP)に付し得る。詳細には、いずれかの残存多孔は強度および靱性の低下を生じ得る。したがって、HIP後に、材料の密度は、98ないし100%の材料の理論密度であり、より好ましくは99%以上およびより好ましくは99.5%以上の材料の理論密度である。
【0063】
熱間静水圧加圧の典型的な条件は、1400ないし1550℃、1ないし2barの圧力および0.5ないし10時間の処理(保圧)時間である。
【0064】
本発明者らは、本発明の材料を製造するための多くの製造技術が存在することを認識している。特に、本発明者らは、鋳込成形によって材料を製造している。しかしながら、本発明者らは、鋳込成形によって製造した場合に、残存孔が残り、大きな粒子ができるなど不均質な特徴が生成し、試験で非常に良好な結果が示されたり、低い結果が示される疲労寿命挙動における変動につながる。
【0065】
そこで、本発明者らは、造粒法がこれらの問題を克服することを見出した。その方法は:
未焼結材料を含むスリップをノズルを通して噴霧して液滴を形成し、
これらの液滴を凍結乾燥または噴霧乾燥して小粒を形成し、
小粒を圧縮してグリーンボディーを形成し、ついで
グリーンボディーを焼結する
ことを含む。
【0066】
この方法は本発明の組成物を用いる使用に特異的に適用されるが、アルミナ小板を含むもののように他のジルコニア−アルミナ材料と使用する場合にも有利な結果を有し得る。
【0067】
この方法で使用する未焼結出発材料には、ジルコニア、アルミナおよび金属アルミン酸塩小板および/または金属アルミン酸塩小板前駆体が含まれる。金属アルミン酸塩前駆体が提供される場合、アルミン酸塩小板はグリーンボディーの焼結の間にアルミン酸塩小板前駆体から形成される。好適な前駆体には、焼結して金属アルミン酸小板を形成する間にアルミナと反応すると考えられる酸化ストロンチウムおよび酸化ランタンが含まれる。その他には、例えば、加熱時にアルミナと以下の化学反応をするSrOZrO2
【0068】
【化1】

が含まれる。
【0069】
典型的に、グリーンボディーはその理論密度の約60%のように約40ないし80%の密度を有する。典型的に、焼結は1500ないし1600℃のように1400ないし1800℃の温度範囲で行い得る。典型的に、焼結は、2ないし10時間のように0.5ないし20時間の時間行い得る。焼結は空気中で行い得る。
【0070】
典型的に、最終生成物は材料の理論密度の約98ないし99%の密度を有する。ついで、後−HIPサイクルをコンポジットに適用して潜在的に残っている孔の閉鎖を確実にし得る。
【0071】
スリップキャスティング生成物(図1)と凍結−造粒生成物(図2)との間の微細構造の相違を図によって示す。これらの図は、どのようにして造粒方法が最終生成物に孔がなく、より精巧にされた小粒構造を生じるかを示している。
【0072】
さらに本発明は、少なくとも一部分が本発明のセラミック材料から形成された、ローラーベアリング用のベアリングコンポーネント、好ましくは転動体を提供する。
【0073】
ベアリングは、2の部品間に制限された相対運動を許容するデバイスである。ベアリングは多くの異なる型の機械で使用して、例えば乗り物のホイール、風車の羽根または洗浄機器のドラムのように回転コンポーネントを保持および支持し得る。転動体ベアリングには、内側および外側リングならびに複数の転動体(ボールまたはローラーベアリング)が含まれる。
【0074】
好ましくは、少なくともローラー要素(例えば、ボールまたはローラー)の転がり面は、本発明のセラミック材料から形成される。転がり面はトライボロジー表面または摩擦面という場合もある。使用する場合、転がり面は第2の面と接触し、ローラーベアリングが運転中の場合、ローラー表面の運動が接続している表面の運動を生じる。換言すれば、転がり面はローラーコンポーネントの機能表面のうちの1である。
【0075】
また、本発明は、このローラーコンポーネントを含むローラーベアリングも提供する。
本発明のローラーベアリングは、好ましくは滑らかにされている。好ましくは、滑剤は水が含まれるかまたは水のみからなる。特に、本発明者らは、本発明の組成物が水−潤滑化されたベアリングのように潤滑化されたベアリングに有利である水熱安定性および化学的安定性を示すことを見出した。
【0076】
好ましい形態において、本発明は、少なくともローラー要素(例えば、ボールまたはローラー)の転がり面が本発明のセラミック材料製である一方、内側リングおよび外側リングのうちの少なくとも1が以下の組成(重量%):
0.01-2のC
0.6-10のN
0.01-3.0のSi
0.01-10.0のMn
16-30のCr
0.01-5.0のMo
0.01-15.0のV
0-5のNi
0-5のCo
0-5のW
0-5のTi
0-5のZr
0-5のAl
0-0.5のS
およびいずれか不可避の不純物と一緒にバランスの鉄
を含む鋼組成物製である「ハイブリッド」ベアリングを提供する。
【0077】
本発明に係る「ハイブリッド」ベアリングに使用する鋼材料をさらに説明する。以下の文章においては、本発明の異なる態様をより詳細に規定する。そのように規定する各態様は、別段明らかに指摘しない限り、いずれか他の態様(または複数の態様)と結合し得る。特に、好ましいまたは有利であると示すいずれかの特徴は、好ましいまたは有利であると示すいずれか他の特徴(または複数の特徴)と結合し得る。
【0078】
本発明に係る「ハイブリッド」ベアリングに使用する鋼材料は、好ましくは0.05-1.5のC、より好ましくは0.1-1.2のC、いまだより好ましくは0.1-0.3のCを含む。
鋼材料は、好ましくは0.6-7のN、より好ましくは0.8-6のN、いまだより好ましくは1-5のNを含む。
鋼材料は、好ましくは0.05-2のSi、より好ましくは0.1-1のSi、いまだより好ましくは0.2-0.6のSiを含む。
鋼材料は、好ましくは0.05-2のMn、より好ましくは0.1-1のMn、いまだより好ましくは0.2-0.6のMnを含む。
鋼材料は、好ましくは17-25のCr、より好ましくは18-24のCr、いまだより好ましくは19-23のCrを含む。
鋼材料は、好ましくは0.05-4のMo、より好ましくは0.1-3のMo、いまだより好ましくは0.5-2のMoを含む。
鋼材料は、好ましくは0.5-14のV、より好ましくは1-12のV、いまだより好ましくは2-10のVを含む。
【0079】
Ni、Co、W、Ti、ZrおよびAlはすべて任意の合金元素である。合金のS含量は好ましくは0.5重量%を超えない。
【0080】
不可避の不純物は組成物の0.5重量%を超えて構成しそうではなく、好ましくは0.2重量%以下である。
【0081】
好ましい鋼組成物は以下のもの(重量%):
0.05-0.5のC(好ましくは0.1-0.3のC)
0.6-3のN(好ましくは1-2のN)
0.05-1のSi(好ましくは0.1-0.5のSi)
0.05-1のMn(好ましくは0.1-0.5のMn)
16-24のCr(好ましくは18-22のCr)
0.05-3のMo(好ましくは1-1.6のMo)
0.05-5のV(好ましくは1.5-4のV)
0-5のNi(好ましくは0-1のNi)
0-5のCo(好ましくは0-1のCo)
0-5のW(好ましくは0-1のW)
0-5のTi(好ましくは0-1のTi)
0-5のZr(好ましくは0-1のZr)
0-5のAl(好ましくは0-1のAl)
0-0.5のS(好ましくは0-0.2のS)
およびいずれか不可避の不純物と一緒にバランスの鉄
を含む。
【0082】
かかる鋼の好適な例はUDDEHOLM TOOLING ABから入手可能なVanax 35であり、それは0.2のC、1.6のN、0.3のSi、0.3のMn、20.0のCr、1.3のMoおよび2.8のV(重量%)を含む。
【0083】
もう1の好ましい鋼組成物は以下のもの(重量%):
0.05-0.5のC(好ましくは0.1-0.3のC)
2-6のN(好ましくは3-5のN)
0.05-1のSi(好ましくは0.1-0.5のSi)
0.05-1のMn(好ましくは0.1-0.5のMn)
17-25のCr(好ましくは19-23のCr)
0.05-3のMo(好ましくは1-1.6のMo)
6-12のV(好ましくは7-11のV)
0-5のNi(好ましくは0-1のNi)
0-5のCo(好ましくは0-1のCo)
0-5のW(好ましくは0-1のW)
0-5のTi(好ましくは0-1のTi)
0-5のZr(好ましくは0-1のZr)
0-5のAl(好ましくは0-1のAl)
0-0.5のS(好ましくは0-0.2のS)
およびいずれか不可避の不純物と一緒にバランスの鉄
を含む。
【0084】
かかる鋼の好適な例は、UDDEHOLM TOOLING ABから入手可能なVanax 75であり、それは0.2のC、4.0のN、0.3のSi、0.3のMn、21.0のCr、1.3のMoおよび9.0のV(重量%)を含む。
【0085】
本発明に係るベアリングに使用する鋼は、列挙した元素のみから実質的になり得る。したがって、必須であるこれらの元素に加えて、他の特定していない元素が組成物中に存在し得るが、但し、組成物の本質的な特性はそれらが存在することによって実質的に影響を受けないことは理解される。
【0086】
鋼は粉末冶金法によって製造し得る。かかる方法は鋼中の酸化物含有物の量を減少しないため有利である。粉末冶金製造は、好ましくは霧化ガスとしての窒素と一緒に鋼溶融物を霧化したガスを含み、これによって、特定の最小含量の窒素、粉体の固相窒化につづく熱間静水圧加圧による強化が鋼合金に付与される。鋼はこの状態または最終的な寸法に鋳造/転造した後に使用し得る。方法には、硬化およびテンパリングも含まれ得る。本明細書に記載する鋼ならびにその好適な熱処理および製造方法はWO 2007/024192に記載されている。
【0087】
本発明の材料の好適な応用には、転動体、カムフォロア、ボールバルブ、ゲートバルブ、股関節置換器具(hip replacement)および関節置換器具(joint replacement)、歯牙および骨置換器具の材料が含まれる。特に、本発明は、体液、前処理工程(例えば、滅菌)、水または滑剤のように加工媒体によって促進される腐蝕応力クラッキングに付される環境に好適である。
【0088】
実施例
実施例および裏付けとして提供する多数の実験結果に参照して、本発明を説明する。
【0089】
実施例1
表1に詳記する組成物は、鋳込成型、焼結条件下の加熱(空気中、1520℃)、ついで熱間静水圧加圧(HIP)に付すことによって形成した。それらの特性を多くの基準に対して試験し、特に、材料が以下の特性を示すか否かを試験した:
1. 強度(MPa):窒化ケイ素セラミックボール用のASTM F2094−06標準規格による4点曲げ試験、常温(約20℃)におけるアドバンストセラミックスの曲げ強度のC1161試験方法によって測定;
2. 圧痕靭性(MPam1/2):窒化ケイ素セラミックボール用のASTM F2094−06標準規格、常温におけるアドバンストセラミックスの破壊靱性決定用の1421試験方法によって測定;
3. HV10硬度(kg/mm2):窒化ケイ素セラミックボール用のASTM F 204−06標準規格、アドバンストセラミックスのビッカース押込み硬度用のC1327試験方法によって測定;
4. 弾性係数(MPa):共振ビーム法による測定、欧州規格EN15335:2007 高度な技術セラミック−セラミック複合体−2000℃までの共振ビーム法による弾性特性;
5. 水と蒸気の抵抗、特に300°C、86bar、オートクレーブ中で9日間試験した;
6. 強酸および塩基に対する化学的耐性、37重量%のHCl、50重量%のH2SO4および50重量%のH3PO4、および10MのNaOH、各々70℃にて30日間、別々に試験した;
7. 油中の低圧転がり接触疲労抵抗:2.0GPa下で油中のPolymet転がり接触疲労試験により試験した;
8. 油中の高圧転がり接触疲労抵抗:4.5GPa接触圧力下で油中のPolymet転がり接触疲労試験により試験した;
9. 水中の転がり接触疲労抵抗:4.5GPa接触圧力下で脱イオン水を使用して、Polymet転がり接触疲労試験により試験した。
【0090】
これらの基準に対する試料の特性を表1に掲載する:
【0091】
【表1】

【0092】
イットリウム含有ジルコニア/アルミナコンポジットが有利な熱水または化学的抵抗特性を示し得ないことは、表1の組成物Aから明らかである。
【0093】
WO 90/11980で提案された型のセリウム含有ジルコニアおよびストロンチウム含有アルミナが高性能工学材料に望ましい有利な転がり特性を示さないことも、表1の組成物Bから明らかである。
【0094】
実施例2
表2に詳述する組成物は、鋳込み成形し、焼結条件(空気中、1520℃)下で加熱し、ついでHIPに付すことによって形成した。それらの特性を試験し、表2に示す。
【0095】
【表2】

【0096】
表2は、イットリウム含有ジルコニアへのセリウム含有ジルコニア出発材料の割合の置換が靭性の大幅な損失なしにジルコニア−アルミナコンポジットの強度の大幅な増大を生じることを示している。
【0097】
実施例3
表3に詳述する組成物は、鋳込み成形し、焼結条件(空気中、1520°C)下で加熱し、ついでHIPに付すことによって形成した。ついで、それらの特性を試験し、以下の表3に示す。
【0098】
【表3】

【0099】
表3は、イットリウム含有ジルコニアでのアルミナの割合の置換が靭性の大幅な損失なしにジルコニア-アルミナコンポジットの強度の大幅な増大を生じることを示している。
【0100】
実施例4
"E1"として表4に詳述する化学組成物は、ノズルを通して噴霧して液滴を形成した。ついで、液滴は凍結乾燥して小粒を形成した。ついで、小粒を圧縮してグリーンボディーを形成し、それを空気中、1520℃にて焼結し、ついでHIPに付した。ついでその特性を試験し、以下の表4に示す。
【0101】
【表4】

【0102】
E2が同じ化学組成を有するにもかかわらずE1に比べてどのくらい転がり接触疲労抵抗試験でより良好だったことは特に注記しておく。特性におけるこの改善は、微細構造における変化を伴っていた。特に、実施例E2の微細構造を電子顕微鏡によって実施例E1の微細構造と比較し、その結果を図1および図2に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニア、イットリウムおよびセリウムを含む第1の相、ここに、イットリウムおよびセリウムは0.15ないし0.5のモル比および5ないし15モル%の結合した量で存在し、
アルミナを含む第2の相、および
金属アルミン酸塩小板を含む第3の相
を含むセラミック材料。
【請求項2】
第1の相および第2の相が3:1ないし1:1の重量比で存在する請求項1記載のセラミック材料。
【請求項3】
第2の相および第3の相が2:1ないし20:1の重量比で存在する請求項1または2記載のセラミック材料。
【請求項4】
材料が50ないし75重量%の第1の相、25ないし49.5重量%の第2の相および0.5ないし5重量%の第3の相を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載のセラミック材料。
【請求項5】
金属アルミン酸塩小板が、アルカリ土類アルミン酸塩および/またはランタノイドアルミン酸塩を含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載のセラミック材料。
【請求項6】
50ないし75重量%のジルコニアマトリクス、
25ないし49.5重量%のアルミナ、
0.5ないし5重量%の金属アルミン酸塩小板、および
いずれかの不可避な不純物からなり、ここに、ジルコニアマトリクスが、1ないし10モル%の量でイットリウムを含むジルコニアおよび5ないし20モル%の量でセリウムを含むジルコニアのコンポジットを含み、イットリウム含有ジルコニアおよびセリウム含有ジルコニアが1:5ないし2:1の重量比で存在するセラミック材料。
【請求項7】
金属アルミン酸塩小板がアルミン酸ストロンチウムおよび/またはアルミン酸ランタン、好ましくはストロンチウム六アルミン酸塩(SrO・6Al2O3)を含む請求項1ないし6のいずれか1項に記載のセラミック材料。
【請求項8】
第1の相がイットリウム含有ジルコニアおよびセリウム含有ジルコニアのコンポジットである請求項1ないし7のいずれか1項に記載のセラミック材料。
【請求項9】
ジルコニアおよびアルミナを含むスリップをノズルを通して噴霧して液滴を形成し、
液滴を凍結乾燥または噴霧乾燥して小粒を形成し、
小粒を圧縮してグリーンボディーを形成し、ついで
グリーンボディーを焼結することを含み、
ここに、ジルコニアが0.15ないし0.5のモル比でかつ5ないし15モル%の結合した量でイットリウムおよびセリウムを含み、スリップが、さらに、アルミン酸塩小板および/またはグリーンボディーを焼結する間にアルミン酸小板を形成するアルミナ小板前駆体を含む、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のセラミック材料の製造方法。
【請求項10】
ジルコニア、アルミナおよび金属アルミン酸塩小板および/または金属アルミン酸塩小板前駆体を含むスリップをノズルを通して噴霧して液滴を形成し、
液滴を凍結乾燥または噴霧乾燥して小粒を形成し、
小粒を圧縮してグリーンボディーを形成し、ついで
グリーンボディーを焼結することを含み、ここに、金属アルミン酸塩小板がグリーンボディーの焼結の間に金属アルミン酸塩小板前駆体から形成される、ジルコニアおよびアルミナを含むセラミック材料の製造方法。
【請求項11】
スリップが、イットリウム含有ジルコニアおよびセリウム含有ジルコニアを含み、ここに、イットリウム含有ジルコニアおよびセリウム含有ジルコニアが0.15ないし0.5のイットリウムおよびセリウムの量のモル比に対する相対量で提供される請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
請求項9ないし11のいずれか1項に記載の方法によって得ることができるセラミック材料。
【請求項13】
少なくとも一部分が請求項1ないし8または請求項12のいずれか1項に記載のセラミック材料から形成されるローラーベアリング用、好ましくは転動体用のベアリングコンポーネント。
【請求項14】
ローラーコンポーネントの転がり面が請求項1ないし8または請求項12のいずれか1項に記載のセラミック材料から形成される請求項14記載のベアリングコンポーネント。
【請求項15】
請求項13または14記載のローラーコンポーネントを含むローラーベアリング。
【請求項16】
内側リング、外側リングおよび内側リングと外側リングの間の少なくとも1のローラー要素を含み、ここに、少なくともローラー要素の転がり面が請求項1ないし8または請求項12のいずれか1項に記載のセラミック材料から形成され、内側リングおよび/または外側リングが:
0.01-2重量%のC、
0.6-10重量%のN、
0.01-3.0重量%のSi、
0.01-10.0重量%のMn、
16-30重量%のCr、
0.01-5.0重量%のMo、
0.01-15.0重量%のV、
0-5重量%のNi、
0-5重量%のCo、
0-5重量%のW、
0-5重量%のTi、
0-5重量%のZr、
0-5重量%のAl、
0-0.5重量%のS
およびいずれか不可避の不純物と一緒に含むバランスの鉄を含む鋼組成物製であるローラーベアリング。
【請求項17】
ローラーベアリングが、好ましくは水によって滑らかにされている請求項16記載のローラーベアリング。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−531374(P2012−531374A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518022(P2012−518022)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004702
【国際公開番号】WO2011/000390
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(391031465)アクチボラゲット エス ケイ エフ (12)
【氏名又は名称原語表記】AKTIE BOLAGET SKF
【Fターム(参考)】