説明

ジルコニアを含有する複合セラミック材料

【課題】技術水準の1つ以上の欠点を回避し、かつ歯科用途および歯科手順に特に適したセラミック材料を提供すること。
【解決手段】(a)CeOを安定剤として含有するジルコニアをベースとする第一相、および(b)アルミン酸塩ベースの第二相、を含有する、複合セラミック材料。ある実施形態において、上記第一相の量は、全セラミック材料に基づいて50体積%より多く、好ましくは60体積%〜95体積%、そしてより好ましくは70体積%〜84体積%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用途に特に適している、ジルコニアを含有する複合セラミック材料、およびセラミック粉末組成物、ならびにこれらの調製方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジルコニアベースのセラミックは、多年にわたって、例えば、整形外科用移植物およびプロテーゼの構造材料として、ならびに歯科用インプラントおよび修復物のために、使用されている。このようなセラミックは代表的に、ジルコニアをその正方晶形態で含有し、これは、室温において準安定であるので、Yなどの安定剤を必要とする。
【0003】
部分的に安定化されたジルコニア(すなわち、イットリアで安定化された正方晶ジルコニア多結晶体(Y−TZP))をベースとするセラミック材料は、広く使用されており、そして一般に、好ましい機械特性(例えば、非常に高い曲げ強度)を有する。しかし、これらのセラミックは、4MPa・m0.5〜5MPa・m0.5の範囲の、比較的中度の破壊靱性(KIC)を示す。さらに、Y−TZP材料は、特に水の存在下または湿気の多い環境において、低温分解(LTD)(エージングともまた称される)の現象にさらされることが見出されている。
【0004】
異なる型のジルコニアセラミックは、セリアで安定化されたジルコニアセラミック(Ce−TZP)である。これらのセラミックは、Y−TZP材料より高い破壊靱性値を示し得るが、中度の曲げ強度のみを有し、従来のCe−TZPセラミックは一般に、700MPa以下の曲げ強度を示す。これは、多くの医療用途および歯科用途に不充分である。これらの用途は代表的に、少なくとも800MPaの曲げ強度を必要とする。
【0005】
なお別の型のセラミックは、いわゆるセラミックマトリックス複合材(CMC)であり、これらは、少なくとも2つの異なる結晶相を含有する。代表的な例は、ジルコニア強化アルミナ(ZTA)またはアルミナ強化ジルコニア(ATZ)であるが、他のマトリックス(例えば、SiCまたはSi)もまた、この型の材料として公知である。
【0006】
特許文献1は、少量のジルコニア相(Yにより安定化され得る)および多量の尖晶石相を含む、複合セラミック材料を開示する。
【0007】
非特許文献1は、Yで安定化された正方晶のジルコニア相およびMgAl相を含む、ナノ結晶複合材を記載する。しかし、この材料の全体的な機械特性は依然として、完全に満足なものではない。
【0008】
特許文献2は、8mol%〜12mol%のCeOおよび0.05mol%〜4mol% TiOで安定化されたジルコニアマトリックスからなり、そして第二の成分として、複合材の0.5体積%〜50体積%を占めるAlを有する、セラミックマトリックス複合材を記載する。特許文献3および特許文献4は、10mol%〜12mol%のCeOで安定化されたジルコニアの第一相、および第二相として20体積%〜60体積%または70体積%のAlを含有する、類似の複合材料を記載する。
【0009】
先行技術の、CeOで安定化されたジルコニアをベースとするセラミックマトリックス複合材の1つの特定の欠点は、それらの固有の色が、歯科用修復材料に対して認容不可能であることである。さらに、それらのレドックス反応に対する感受性に起因して、これらの材料は、低い酸素分圧における熱処理の際に、顕著な色不安定性を示す。例えば、このような材料をガラスセラミックで上張りする場合、焼成チャンバ内での減圧の付加(これは、均質な、密に焼結された層状材料を達成するために必要である)が色変化をもたらして、非常に好ましくない、緑色がかった外観を与える。
【0010】
さらに、上張り材料への充分に高い結合強度を達成する目的で、従来のCe−TZPセラミックフレーム枠を、上張り前に完全にブラストすることが必要であることが見出された。3Y−TZP歯科材料に関連する一般的な使用説明書と比較して、この手順は全く異なるので、混乱を招き得る。別の欠点は、先行技術の複合剤の調製において使用される組成物の低い湿潤性であり、これは、ガラスセラミックスラリーの、例えば上張りのための塗布を、かなり困難にする。従って、これらの材料は、多くの一般的な歯科用途、プロセスおよび材料に適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4880757号明細書
【特許文献2】米国特許第5728636号明細書
【特許文献3】欧州特許第1382586号明細書
【特許文献4】欧州特許第1580178号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Moritaら、Scripta Materialia,2005,53,1007−1012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、上記技術水準の1つ以上の欠点を回避すること、ならびに歯科用途および歯科手順に特に適したセラミック材料を提供することである。このような材料は、優れた機械特性(例えば、高い曲げ強度および高い破壊靱性)を示し、長期間の耐久性を示す(すなわち、低温分解(LTD)をほとんどまたは全く示さない)べきである。さらに、このセラミック材料は、自然な歯の色合いに合う固有の色を有するべきであり、そして一般的な歯科用途および歯科材料(例えば、ガラスセラミック型の上張り材料)と適合性であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
(a)CeOを安定剤として含有するジルコニアをベースとする第一相、および
(b)アルミン酸塩ベースの第二相、
を含有する、複合セラミック材料。
(項目2)
上記第一相の量が、全セラミック材料に基づいて50体積%より多く、好ましくは60体積%〜95体積%、そしてより好ましくは70体積%〜84体積%である、上記項目に記載の材料。
(項目3)
上記ジルコニアが、安定化ジルコニアの総量に基づいて4mol%〜18mol%、特に6mol%〜14mol%、そしてより好ましくは8mol%〜12mol%のCeOを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の材料。
(項目4)
上記第一相が、1.5μm未満、特に100nm〜900nm、そしてより好ましくは150nm〜800nmの平均顆粒サイズを有する顆粒、および/または100nm未満、特に10nm〜100nm未満、そしてより好ましくは20nm〜80nmの平均顆粒サイズを有する顆粒を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の材料。
(項目5)
上記第二相の量が、全セラミック材料に基づいて少なくとも0.1体積%、好ましくは少なくとも1体積%、より好ましくは少なくとも2体積%、より好ましくは5体積%〜40体積%、そして最も好ましくは16体積%〜30体積%である、上記項目のうちのいずれかに記載の材料。
(項目6)
上記アルミン酸塩が、ZnAl、MgAl、LaAlOおよびLaMgAl1119からなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の材料。
(項目7)
上記第二相が、1μm未満、特に100nm〜900nm、そしてより好ましくは150nm〜800nmの平均顆粒サイズを有する顆粒、および/または100nm未満、特に10nm〜100nm未満、そしてより好ましくは20nm〜80nmの平均顆粒サイズを有する顆粒を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の材料。
(項目8)
上記第二相の上記アルミン酸塩とは異なるアルミン酸塩をベースとする第三相をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の材料。
(項目9)
上記第三相が、1μm未満、特に100nm〜900nm、そしてより好ましくは150nm〜800nmの平均顆粒サイズを有する顆粒、および/または100nm未満、特に10nm〜100nm未満、そしてより好ましくは20nm〜80nmの平均顆粒サイズを有する顆粒を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の材料。
(項目10)
(a)CeOを安定剤として含有するジルコニア、および
(b)アルミン酸塩、
を含有する、セラミック粉末組成物。
(項目11)
上記項目に記載のセラミック粉末組成物を調製するためのプロセスであって、
(i)ジルコニウム、セリウム、アルミニウムおよび少なくとも1種のさらなる金属の塩を含有する水溶液を提供する工程;
(ii)塩基を添加して沈殿物を得る工程;ならびに
(iii)該沈殿物を乾燥および/またはか焼する工程、
を包含する、プロセス。
(項目12)
上記項目のうちのいずれかに記載の複合セラミック材料を調製するためのプロセスであって、
(i)上記項目に記載のセラミック粉末組成物を提供する工程;
(ii)必要に応じてセラミック体を形成する工程;および
(iii)該セラミック粉末組成物または該セラミック体を焼結する工程、
を包含する、プロセス。
(項目13)
上記項目のうちのいずれかに記載の複合セラミック材料を調製するためのプロセスであって、
(i)CeOを安定剤として含有するジルコニアを含有する第一のスラリー、アルミン酸塩を含有する第二のスラリー、および必要に応じて、該第二のスラリーの該アルミン酸塩とは異なるアルミン酸塩を含有する第三のスラリーを提供する工程;
(ii)該第一のスラリーを、該第二のスラリーおよび必要に応じて該第三のスラリーと混合して、混合スラリーを得る工程;
(iii)セラミック体を形成する工程;ならびに
(iv)該セラミック体を焼結する工程、
を包含する、プロセス。
(項目14)
上記焼結する工程が、1000℃〜1600℃、特に1100℃〜1550℃、より好ましくは1400℃〜1500℃、そして最も好ましくは1200℃〜1300℃の温度で、15分〜72時間、特に30分〜24時間、そしてより好ましくは2時間〜10時間の時間にわたって実施される、上記項目のうちのいずれかに記載のプロセス。
(項目15)
歯科材料として、特に、歯科用修復物、好ましくは歯科用フレーム枠、歯科用橋脚歯および歯科用インプラントの調製のため、または迅速な原型作製、立体リソグラフィーもしくはインクジェット印刷のための、上記項目のうちのいずれかに記載の複合セラミック材料、または上記項目のうちのいずれかに記載のセラミック粉末組成物の使用。
【0015】
上記目的は、請求項1〜9に記載の複合セラミック材料により解決される。本発明はさらに、請求項10に記載のセラミック粉末組成物、請求項11に記載のセラミック粉末組成物を調製するためのプロセス、請求項12〜14に記載の複合セラミック材料を調製するためのプロセス、および請求項15に記載の使用に関する。
【0016】
(摘要)
本発明は、
(a)CeOを安定剤として含有するジルコニアをベースとする第一相、および
(b)アルミン酸塩ベースの第二相、
を含有する、複合セラミック材料に関する。
【0017】
本発明はまた、セラミック粉末組成物、複合セラミック材料およびセラミック粉末組成物を調製するためのプロセス、ならびにこれらの使用に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、上記技術水準の1つ以上の欠点が回避され、かつ歯科用途および歯科手順に特に適したセラミック材料が提供される。本発明による材料は、優れた機械特性(例えば、高い曲げ強度および高い破壊靱性)を示し、長期間の耐久性を示す(すなわち、低温分解(LTD)をほとんどまたは全く示さない)。さらに、本発明によるセラミック材料は、自然な歯の色合いに合う固有の色を有し、そして一般的な歯科用途および歯科材料(例えば、ガラスセラミック型の上張り材料)と適合性である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、か焼後に得られた、共沈した粉末組成物のXRDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第一の局面において、本発明は、
(a)CeOを安定剤として含有するジルコニアをベースとする第一相、および
(b)アルミン酸塩ベースの第二相、
を含有する複合セラミック材料に関する。
【0021】
この複合セラミック材料は一般に、焼結されたセラミック材料である。代表的に、この材料は、CeOで安定化されたジルコニアをベースとする第一相をマトリックス相として含有する、セラミックマトリックス複合材である。この第一相の量は、全セラミック材料に基づいて50体積%より多く、好ましくは60体積%〜95体積%、そしてより好ましくは70体積%〜84体積%、好ましくは50重量%より多く、好ましくは70重量%〜98重量%、そしてより好ましくは75重量%〜84重量%であることが好ましい。
【0022】
このジルコニアは代表的に、主としてその正方晶形態にある。正方晶ジルコニアの含有量は、このセラミック複合材中の全ジルコニア体積に基づいて、90体積%より多く、特に少なくとも95体積%、より好ましくは少なくとも97体積%、そして最も好ましくは少なくとも99体積%であることが好ましい。
【0023】
このジルコニアは、好ましくは、安定化ジルコニアの総量に基づいて4mol%〜18mol%、好ましくは6mol%〜14mol%、より好ましくは8mol%〜12mol%のCeOを、安定剤として含有する。1つの実施形態によれば、このジルコニアは、安定化ジルコニアの総量に基づいて4mol%〜10mol%、好ましくは5mol%〜9.9mol%、より好ましくは5mol%〜9mol%、最も好ましくは6mol%〜8mol%のCeOを含有する。別の実施形態によれば、このジルコニアは、安定化ジルコニアの総量に基づいて6mol%〜18mol%、好ましくは8mol%〜16mol%、そしてより好ましくは10mol%〜12mol%のCeOを含有する。
【0024】
このジルコニアは、1種以上の添加剤(例えば、1種以上のさらなる安定剤および/または着色性酸化物)をさらに含有し得る。適切なさらなる添加剤としては、Y、Ti、Ca、Mg、Pr、Fe、Tb、MnおよびErの酸化物、特に、YおよびTiOが挙げられる。このジルコニアは、安定化ジルコニアの総量に基づいて0.001mol%〜1mol%、好ましくは0.005mol%〜0.5mol%、そしてより好ましくは0.01mol%〜0.1mol%のさらなる添加剤(特に、着色性酸化物)を含有することが好ましい。
【0025】
本発明による複合セラミック材料は一般に、マイクロメートル未満の規模の顆粒および/またはナノメートル規模の顆粒を含有する相を含有する。本明細書中で使用される場合、用語「マイクロメートル未満の規模(submicrometric)」とは、100nm〜1μmの平均顆粒サイズをいい、そして用語「ナノメートル規模(nanometric)」とは、100nm未満の平均顆粒サイズをいう。用語「平均顆粒サイズ」は、ISO規格定義DIN EN 623−3(2003−01)に従って定義される。平均顆粒サイズの決定は、研磨されて熱エッチングされたサンプルに対して行われ、そして少なくとも250個の顆粒の、合計少なくとも6つの視野での、少なくとも20個の顆粒を含むために充分な長さの線上での、無作為な測定方向を用いての、直線横断サイズの測定を包含する。
【0026】
本明細書中に記載される相のうちの1つ以上は、同じ組成を有するが平均顆粒サイズが異なる2つ以上の別々の相として存在し得る。例えば、第一相は、2つの別々の相として存在し得、これらの相のうちの1つは、マイクロメートル未満の規模の相であり、そしてこれらの相のうちの1つは、ナノメートル規模の相である。同様に、第二相および任意のさらなる相は、別々のマイクロメートル未満の規模の相およびナノメートル規模の相として存在し得る。相の粒子サイズ分布が少なくとも二モードである場合、この相は、同じ組成を有するが平均顆粒サイズが異なる2つ以上の別々の相として存在するとみなされる。
【0027】
本明細書中に記載される任意の相は、より大きい粒子を構成する別の相内で、顆粒内相および/または顆粒間相として存在し得る。本明細書中で使用される場合、用語「顆粒間相」とは、別の相の別々の顆粒間に位置する、(好ましくは、ナノメートル規模の)顆粒を有する相をいう。用語「顆粒内相」とは、別の相のより大きい顆粒内に位置する、(好ましくは、ナノメートル規模の)顆粒を有する相をいう。
【0028】
特定の実施形態によれば、第一相は、1.5μm未満、特に100nm〜900nm、そしてより好ましくは150nm〜800nmの平均顆粒サイズを有する顆粒、および/または100nm未満、特に10nm〜100nm未満、そしてより好ましくは20nm〜80nmの平均顆粒サイズを有する顆粒を含有する。
【0029】
本発明による複合セラミック材料は、アルミン酸塩ベースの第二相をさらに含有する。この第二相の量は、全セラミック材料に基づいて少なくとも0.1体積%、好ましくは少なくとも1体積%、より好ましくは少なくとも2体積%、より好ましくは5体積%〜40体積%、そして最も好ましくは16体積%〜30体積%、好ましくは少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも2重量%、より好ましくは2重量%〜30重量%、そして最も好ましくは16重量%〜25重量%であることが好ましい。
【0030】
用語「アルミン酸塩」とは、本明細書中で使用される場合、アルミニウムと少なくとも1種のさらなる金属とを含有する、混合酸化物をいう。このアルミン酸塩は代表的に、水を含まないアルミン酸塩である。好ましいアルミン酸塩は、MAlO、MAlO、MIIAl、MIIAl、MIIIAlO、MIIIIIAl1119の型のもの、およびこれらの混合物であり、ここでMは、一価金属であり、MIIは、二価金属であり、そしてMIIIは、三価金属である。適切な例としては、ZnAl、MgAl、LaAlOおよびLaMgAl1119が挙げられる。Al対他の金属の、5:1〜1:5、特に3:1〜1:3、そしてより好ましくは2:1〜1:2(例えば、2:1または1:1)のモル比を有するアルミン酸塩が、好ましい。
【0031】
好ましい実施形態によれば、このアルミン酸塩は、スピネル型アルミン酸塩であり、特に、MIIAlの型のものである。適切な例としては、ZnAlおよびMgAlが挙げられる。
【0032】
このアルミン酸塩は、CeOで安定化されたジルコニアより低い熱膨張係数(CTE)を示すことがさらに好ましい。このようなアルミン酸塩を第二相および必要に応じて第三相として含有する複合セラミック材料は、特に有利な機械特性を示すことが見出された。
【0033】
特定の実施形態によれば、この第二相は、1μm未満、特に100nm〜900nm、より好ましくは150nm〜800nmの平均顆粒サイズを有する顆粒、および/または100nm未満、特に10nm〜100nm未満、より好ましくは20nm〜80nmの平均顆粒サイズを有する顆粒を含有する。この第二相(特に、ナノメートル規模の第二相)は、顆粒内相および/または顆粒間相として存在し得る。
【0034】
このアルミン酸塩ベースの第二相は必要に応じて、さらなる成分を含有し得る。このアルミン酸塩の量は、この第二相の総重量に基づいて少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、そして最も好ましくは少なくとも99重量%であることが好ましい。
【0035】
この複合セラミック材料は、第二相のアルミン酸塩とは異なるアルミン酸塩をベースとする、任意の第三相をさらに含有し得る。好ましくは、この第三相の量は、全セラミック材料に基づいて少なくとも0.1体積%、好ましくは少なくとも0.5体積%、より好ましくは1体積%〜15体積%、最も好ましくは2体積%〜10体積%、好ましくは少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、より好ましくは1重量%〜15重量%、そして最も好ましくは2重量%〜10重量%である。好ましいアルミン酸塩は、第二相について上で定義されている。
【0036】
特定の実施形態によれば、この第三相は、1μm未満、特に100nm〜900nm、より好ましくは150nm〜800nmの平均顆粒サイズを有する顆粒、および/または100nm未満、特に10nm〜100nm未満、そしてより好ましくは20nm〜80nmの平均顆粒サイズを有する顆粒を含有する。この第三相(好ましくは、ナノメートル規模の第三相)は、顆粒内相および/または顆粒間相として存在し得る。
【0037】
アルミン酸塩ベースの第三相は、必要に応じて、さらなる成分を含有し得る。このアルミン酸塩の量は、第三相の総重量に基づいて少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、そして最も好ましくは少なくとも99重量%であることが好ましい。
【0038】
この複合セラミック材料は、必要に応じて、さらなるアルミン酸塩相および/または非アルミン酸塩相を含有し得る。
【0039】
本発明による複合セラミック材料は、驚くべきことに、有利な組み合わせを提供することが見出され、そして高い靱性と高い強度との両方を提供し、そして歯科用途に充分に適した色を有する。
【0040】
具体的には、この複合セラミック材料は代表的に、6MPa・m0.5〜20MPa・m0.5、好ましくは10MPa・m0.5〜20MPa・m0.5の範囲の破壊靱性、および600MPaより高い、好ましくは900MPaより高い二軸曲げ強度を提供する。
【0041】
この複合セラミック材料により示される色は一般に、自然な歯の色に近い。具体的には、この材料のa値は、−4.0以上、好ましくは−3.0以上、より好ましくは−2.0以上である。
【0042】
この複合セラミック材料は、低温分解(LTD)により本質的に影響を受けないことが、さらに見出された。具体的には、規格ISO 13356により規定された試験条件下(すなわち、134℃(±20℃)の水蒸気中で、2バールの圧力下で5時間にわたる加速されたエージング後)で測定された、正方晶から単斜晶への転換の程度は、充分に15体積%の限度未満である。好ましくは、ISO 13356の試験条件への曝露後の単斜晶含有量は、5体積%未満である。
【0043】
本発明の第一の局面による複合セラミック材料は、種々の方法により調製され得る。本発明の第一の局面による複合セラミック材料を調製する、特に簡便な方法は、特定のセラミック粉末組成物を出発材料として直接使用する。
【0044】
従って、第二の局面において、本発明は、
(a)CeOを安定剤として含有するジルコニアおよび
(b)アルミン酸塩、
を含有するセラミック粉末組成物に関する。
【0045】
このセラミック粉末組成物の好ましい実施形態は、特に、組成ならびに種々の相の存在および特性に関して、本発明の第一の局面による複合セラミック材料について記載されたとおりである。
【0046】
このセラミック粉末組成物は代表的に、マイクロメートル未満の規模の粒子および/またはナノメートル規模の粒子を含有する。好ましい組成物は、安定化ジルコニアの総量に基づいて4mol%〜10mol%、特に5mol%〜9.9mol%、より好ましくは5mol%〜9mol%、そして最も好ましくは6mol%〜8mol%のCeOを安定剤として含有する、ナノメートル規模のジルコニア粒子を含有する。30m/g〜100m/gの比表面積を有するナノメートル規模のジルコニア粒子を含有する組成物が、特に好ましい。驚くべきことに、このようなナノメートル規模のジルコニア粒子は、本質的に、または全体が正方晶形態であり得ることが見出された。一方で、約5m/g〜30m/g未満の比表面積を有する市販のCeO−TZP粉末(10Ce−TZPまたは12Ce−TZPなど)は常に、主要な正方晶形態以外に、ある程度の単斜晶含有量を示す。
【0047】
第三の局面において、本発明は、本発明の第二の局面によるセラミック粉末組成物を調製するためのプロセスに関し、このプロセスは、
(i)ジルコニウム、セリウム、アルミニウムおよび少なくとも1種のさらなる金属の塩を含有する水溶液を提供する工程;
(ii)塩基を添加して沈殿物を得る工程;ならびに
(iii)この沈殿物を乾燥および/またはか焼する工程、
を包含する。
【0048】
この少なくとも1種のさらなる金属は、この複合セラミック材料のアルミン酸塩の第二の金属、および必要に応じて第三の金属を表わす。好ましくは、この少なくとも1種のさらなる金属は、亜鉛である。適切な対イオンとしては、塩化物イオン、オキシ塩化物イオン、硝酸イオン、シュウ酸イオン、水酸化物イオンおよび炭酸イオンが挙げられ、塩化物イオンが好ましい。適切な塩の例としては、ZrCl、CeCl、AlCl、ZnCl、MgCl、LaClおよびZrOClが挙げられる。この塩基は、好ましくは、窒素含有塩基であり、特に、水性アンモニアであり、好ましくは20重量%〜35重量%、そしてより好ましくは25重量%〜30重量%の濃度を有する。
【0049】
代表的に、この塩基は、この塩の水溶液に、撹拌しながら、水酸化物の沈殿を起こす目的で、7.5〜10、特に7.7〜9、そしてより好ましくは8〜8.5のpHが達成されるまで、滴下される。最適なpH条件は、特定のアルミン酸塩の性質により変わり得る。形成する沈殿物は通常、この溶液から分離されて洗浄される。任意の遠心分離工程が、沈殿した水酸化物を濃縮するために使用され得、そしてこれらの乾燥を容易にし得る。次いで、沈殿した水酸化物は、特に100℃〜120℃の温度で12時間〜48時間乾燥させられ、必要に応じて粉砕され、そして最後に、特に500℃〜900℃の温度で1時間〜3時間、か焼される。
【0050】
上記プロセスは、多重共沈技術を提供し、少なくとも2つの異なる結晶相(すなわち、少なくともCeOで安定化されたジルコニア相およびアルミン酸塩相(例えば、ZnAl相))の、1回の加工工程での並行した共沈を可能にする。驚くべきことに、上記プロセスにおいて、セリウムイオンがジルコニウムイオンと共沈して第一相を形成し、一方で、少なくとも1種のさらなる金属のイオンがアルミニウムイオンと共沈して異なる第二相を形成することが見出された。具体的には、少なくとも1種のさらなる金属(例えば、亜鉛)が、ジルコニア相ではなくアルミン酸塩相に組み込まれるという知見は、ZrOがその結晶格子に任意の利用可能なイオンを組み込む一般的に高い傾向を考慮すると、全く予測不可能であった。従って、本発明のこの局面による多重共沈技術は、本発明の第一の局面による複合セラミック材料の調製に直接適したセラミック粉末組成物を、金属塩の1つの溶液から出発する1回の共沈工程で調製することを可能にする。
【0051】
第四の局面において、本発明は、本発明の第一の局面による複合セラミック材料の調製のためのプロセスに関し、このプロセスは、
(i)本発明の第二の局面によるセラミック粉末組成物を提供する工程;
(ii)必要に応じて、セラミック体を形成する工程;および
(iii)このセラミック粉末組成物またはこのセラミック体を焼結する工程、
を包含する。
【0052】
1つの実施形態によれば、このセラミック粉末組成物は、例えば、乾式プレスおよび/または冷間静水圧プレスによって、このセラミック体を形成するために直接使用され得る。好ましい実施形態によれば、このセラミック粉末組成物は、顆粒(特に、噴霧乾燥された顆粒)の形態で使用される。あるいは、このセラミック粉末組成物は、以下により詳細に記載されるような水性スラリーの形態で使用され得る。
【0053】
第五の局面において、本発明は、本発明の第一の局面による複合セラミック材料の調製のための代替のプロセスに関し、このプロセスは、
(i)CeOを安定剤として含有するジルコニアを含有する第一のスラリー、アルミン酸塩を含有する第二のスラリー、および必要に応じて、この第二のスラリーのアルミン酸塩とは異なるアルミン酸を含有する第三のスラリーを提供する工程;
(ii)この第一のスラリーを、この第二のスラリーおよび必要に応じて第三のスラリーと混合して、混合スラリーを得る工程;
(iii)セラミック体を形成する工程;および
(iv)このセラミック体を焼結する工程、
を包含する。
【0054】
各スラリーは、20重量%〜80重量%、特に30重量%〜70重量%、そしてより好ましくは35重量%〜65重量%の固体含有量を有することが好ましい。各スラリーは、5体積%〜60体積%、特に10体積%〜50体積%、そしてより好ましくは15体積%〜55体積%の固体含有量を有することもまた好ましい。スラリーは、分散剤をさらに含有し得る。適切な分散剤としては、ポリアクリル酸アンモニウム(例えば、Darvan 821A(R.T.Vanderbilt Company Inc.,USA))、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、クエン酸三アンモニウムおよびポリカルボン酸が挙げられる。分散剤は代表的に、このスラリーの重量に基づいて0.1重量%〜10重量%、特に0.3重量%〜9重量%、そしてより好ましくは0.5重量%〜7重量%の量で使用される。各スラリーのpHは、8〜13、特に9〜12、そしてより好ましくは10〜11に、独立して調整される。好ましくは、それぞれのスラリーのpH値の差は、0〜3、特に0.5〜2.5、そしてより好ましくは1〜2である。第四級有機アンモニウムヒドロキシド(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH))が、pH調整のために特に有用である。
【0055】
各スラリーは、好ましくは、混合前に粉砕されて、粒子サイズを減少させられる。これらのスラリーは、CeOで安定化されたジルコニア対アルミン酸塩の意図された比を有する混合スラリーを与えるために適切な量で混合される。この混合スラリーは、さらに粉砕されて、粒子サイズを減少させられ得る。
【0056】
ある量の消泡剤が、この混合スラリーに添加され得る。適切な消泡剤としては、アルキルポリアルキレングリコールエーテル(例えば、Contraspum K 1012(Zschimmer & Schwarz,Germany))が挙げられる。最後に、この混合スラリーは、減圧下で脱気され得る。
【0057】
驚くべきことに、著しく異なる化学的性質にもかかわらず、上記プロセスにおいて使用される別々のスラリーは、互いに適合性であるように安定化および調節され得、そして本発明の第一の局面による複合セラミック材料の調製において使用する準備ができた混合スラリーを得るために、直接混合され得ることが見出された。
【0058】
本発明の第五の局面によるプロセスにおいて使用するための、CeOで安定化されたジルコニアおよびアルミン酸塩は、市販で入手されてもよく、種々の方法に従って調製されてもよい。
【0059】
1つの実施形態によれば、アルミン酸塩は、アルミニウムの塩、ならびに少なくとも1種のさらなる金属(このアルミン酸塩の第二の金属および必要に応じて第三の金属を表わす)の塩を含有する水溶液から、塩基を添加して沈殿物を得ることにより調製され得る。適切な対イオンとしては、塩化物イオンおよび硝酸イオンが挙げられ、塩化物イオンが好ましい。適切な塩の例としては、AlCl、ZnCl、MgClおよびLaClが挙げられる。この塩基は、好ましくは水性アンモニアであり、好ましくは、20重量%〜35重量%、そしてより好ましくは25重量%〜30重量%の濃度を有する。代表的に、この塩基は、この塩の水溶液に、撹拌しながら、8〜12まで、特に9〜11までのpHで滴下されて、水酸化物の沈殿を起こす。最適なpH条件は、特定のアルミン酸塩の性質によって変わり得る。形成された水性ゲル沈殿物は、この溶液から分離されて洗浄される。次いで、これらの水酸化物は乾燥させられ、粉砕され、そして最後にか焼される。
【0060】
別の実施形態によれば、アルミン酸塩は、アルミニウムの前駆化合物と、金属(このアルミン酸塩の第二の金属および/または必要に応じて第三の金属を表わす)の前駆化合物との混合物の熱処理によって、調製され得る。適切な前駆化合物としては、炭酸塩、酸化物、水酸化物、混合酸化物/水酸化物、およびこれらの水和物が挙げられる。前駆化合物の例は、AlOOH・HO、MgCO、ZnOおよびLaである。前駆体は、回転ミル内で混合され得、引き続いて、遠心ミル内で乾式粉砕され得る。得られた活性化粉末は、好ましくは1200℃〜2000℃、そしてより好ましくは1500℃〜1700℃の温度で熱処理され得、そして最後に、粉砕され得、デアグロメレーションされ得、そしてふるい分けされ得る(好ましくは、90μm未満)。好ましくは、得られたアルミン酸塩粉末は、1μm未満のd50値までさらに粉砕される。
【0061】
本発明の第四の局面および第五の局面によるプロセスにおいて、セラミック体の形成は、種々の方法を使用して行われ得る。好ましくは、噴霧乾燥された顆粒を得るために水性スラリーが使用され、これらの顆粒が引き続いて、例えば乾式プレスおよび/または冷間静水圧プレスによって、セラミック体を形成するために使用される。あるいは、水性スラリーは、例えば、スリップ注型技術、フィルタープレスまたは迅速な原型作製技術(例えば、インクジェット印刷または立体リソグラフィー)を使用してセラミック体を形成するために使用され得る。
【0062】
形成後、このセラミック体は代表的に、結合剤を除去され、そして予備焼結される。結合剤の除去は代表的に、450℃〜700℃の範囲の温度で実施される。この結合剤を除去されたセラミック体は、理論密度(T.D.)の約45%〜約60%の範囲の密度を有することが好ましい。
【0063】
予備焼結条件は、通常、工具の過度な磨耗なしで短時間内で、所望の形状に容易な様式でさらに機械加工することを可能にする硬度を得るように、適合されるべきである。代表的に、予備焼結後の硬度は、HV2.5(2.5kgの負荷を使用したビッカース硬度)として測定される、300MPa〜1000MPa、好ましくは500MPa〜700MPaの範囲であるべきである。予備焼結は一般に、700℃〜1200℃の範囲の温度で実施される。正確な温度および保持時間は、所望の硬度を提供する目的で、組成および顆粒サイズに対して適合されるべきである。
【0064】
最後の焼結前に、この予備焼結されたセラミック体(具体的には、セラミックブランク)は、例えば、粉砕または研削によって、特に、CAD/CAM技術を使用する機械加工によって、またはホットプレスによって、所望の幾何学的形状に形作られ得る。
【0065】
焼結は、従来の焼結炉内で実施され得る。適切な焼結条件としては、1000℃〜1600℃、好ましくは1100℃〜1550℃での温度で、15分〜72時間、特に30分〜24時間、より好ましくは2時間〜10時間での焼結が挙げられる。1200℃〜1300℃の焼結温度が、ナノメートル規模の粒子を含有する相を有する複合材のために特に好ましい。1400℃〜1500℃の焼結温度が、マイクロメートル未満の規模の粒子を含有する相を有する複合材のために特に好ましい。
【0066】
好ましい方法は、1100℃〜1500℃までの約1K/分〜40K/分の加熱速度、約2時間〜10時間の休止時間、および約2K/分〜10K/分の冷却速度を使用する。最終複合セラミック材料は、理論密度の95%より高い、特に97%より高い、そしてより好ましくは98%より高い密度を有することが好ましい。驚くべきことに、本発明の複合セラミック材料の焼結は、従来のジルコニアセラミック(例えば、3Y−TZP)と比較して、かなり低い温度で達成され得る。
【0067】
本発明の第一の局面による複合セラミック材料は、好ましくは、セラミックブランクまたはセラミック体の形態であり、これらのセラミックブランクまたはセラミック体は、予備焼結された状態で、例えば、粉砕または研削によって、好ましくは、CAD/CAM技術を使用する機械加工によって、歯科用修復物に形作られ得る。
【0068】
本発明はまた、本発明の第一の局面による複合セラミック材料または本発明の第二の局面によるセラミック粉末組成物の、歯科材料としての使用、特に、歯科用修復物(好ましくは、歯科用フレーム枠、歯科用橋脚歯および歯科用インプラントであり、特に、高靱性の枠および橋脚歯)の調製のための使用に関する。このような歯科用修復物は、とりわけ、複数の焼成にわたって色安定性を維持すること、および(例えば、ガラスセラミックなどの上張り材料に対する)良好な湿潤性を提供することにより特徴付けられる。
【0069】
別の局面において、本発明は、本発明の第一の局面による複合セラミック材料または本発明の第二の局面によるセラミック粉末組成物の、迅速な原型作製、立体リソグラフィーまたはインクジェット印刷のための使用に関する。
【0070】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明される。
【実施例】
【0071】
他に示されない限り、以下の測定方法を実施例全体にわたって使用した。
【0072】
(色測定)
色測定を、Konica−Minolta CM3700d分光光度計を使用して実施した。光学値L、aおよびbを、規格DIN 5033またはDIN6174に従って決定した。CR値(これは、不透明度の尺度である)を、規格BS 5612に従って決定した。20mmの直径および2mmの高さを有し、研磨表面(1000グリッドのSiC紙)を有するサンプルを、測定のために使用した。
【0073】
(破壊靱性)
破壊靱性を、KIC(臨界応力強度因子)として、Zwick Universal Testing Machine ZHUO.2を使用して、196Nの負荷を与えるVickers圧子を用いて決定した。亀裂の長さを、光学顕微鏡法により測定した。破壊靱性を、Niiharaの式に従って計算した。ビッカース硬度を、HV20(20kgの負荷を使用するビッカース硬度)として推定した。13mmの直径および約5mmの高さを有するディスクを、研削し、そして異なるダイヤモンドスラリーで0.5μmまで研磨して、平行な表面を得た。
【0074】
(曲げ強度)
曲げ強度を、ISO6872に従って、二軸サンプル(直径13mm、高さ1.2mm)を使用して測定した。サンプルを900℃/2hで予備焼結し、SiC紙(1000グリッド)を使用して予備研削した。最終焼結工程後、これらのサンプルを焼結したままで測定した。
【0075】
(熱膨張係数(CTE))
CTEを、規格ISO6872:2008に従って、焼結したサンプルを使用して、Netzsch DIL 402C膨張計を用いて、20℃〜700℃の範囲で、5K/分の加熱速度で測定した。サンプルの幾何学的形状は、規格に従った。
【0076】
(低温分解(LTD))
LTDを、規格ISO13356に従って、二軸強度決定について記載されたように調製されたサンプルに対して測定した。標本をオートクレーブ(圧力2bar、蒸気134±2℃)内で、5時間にわたって試験した。単斜晶改変の体積分率の変化を、X線回折により決定した。
【0077】
(実施例1)
セラミック粉末組成物を調製するための1工程プロセスを使用する2つの結晶相(8Ce−TZP/ZnAl)からなるCMC
(セラミック粉末組成物)
8Ce−TZPおよびZnAlを含有するセラミック粉末組成物を、前駆体の溶液からの共沈により調製した。ZrCl(254.16g)、CeCl・7HO(35.34g)、AlCl・6HO(129.83g)およびZnCl(36.64g)を脱イオン水に溶解させた。アンモニア(28体積%水溶液)を、オーバーヘッド撹拌棒で激しく撹拌しながら、8のpHに達するまで穏やかに添加した。
【0078】
沈殿した水酸化物を分離し、そして脱イオン水、および続いてエタノールで繰り返しすすいだ。遠心分離工程を与えて、この水酸化物を濃縮し、その乾燥を容易にした。遠心分離を、Allegra 25R装置(Beckman−Coulter製)で4000rpmで10分間実施した。遠心分離後に得られた濃縮物を、110℃の炉内で24時間乾燥させ、次いで、Retsch KM100装置内で、汚染を防止するためにジルコニアミルを使用して0.5時間粉砕し、そして最後に、700℃で2時間か焼した。最後に、このか焼した粉末組成物を、ジルコニアミル内で0.5時間の2回目の粉砕に供した。
【0079】
得られたセラミック粉末組成物の化学組成は、67.2重量%のZrO(HfOを含み、これは、ZrOとHfOとの総重量に基づいて5重量%までの量で、ZrOと一緒に存在し得る)、8.15重量%のCeOおよび24.65重量%のZnAlに対応した。
【0080】
か焼後に得られた、共沈した粉末組成物をまた、X線回折により、Bruker D8装置を使用して分析した。図1は、対応するXRDパターンを示す。
【0081】
図1から見られ得るように、この粉末組成物は本質的に、2つの異なる結晶相(すなわち、正方晶のCe−TZPおよびZnAl)を含んだ。セリウムのみがジルコニア結晶の格子に組み込まれたことが見られ、亜鉛は実質的に見られなかった。従って、驚くべきことに、この共沈は、2つの別々の結晶相の形成を直接もたらした。
【0082】
(セラミック調製物)
上で調製されたセラミック粉末組成物(100g)を、pH9の水(0.096l)中に、4gの市販のポリアクリル酸アンモニウム塩(Darvan 821A)と一緒に分散させ、摩損により6時間粉砕した。
【0083】
得られたスラリーを50℃で24時間乾燥させた。弱く凝集した粉末が得られ、この粉末を手で砕いた。ダイプレス装置および型を使用して、50MPaの圧力を加えて、16mmの直径および5.5mmの厚さを有するディスクを調製した。このディスクを密封した減圧パッケージに入れ、そして冷間静水圧プレス装置で、350MPaの圧力下で処理した。得られたペレットを1250℃で10時間、空気中で焼結した。
【0084】
中間セラミックおよび最終セラミックの幾何密度を決定するために、調製したディスクを、ダイプレス後および冷間静水圧プレス後に測定した。ASTM C373−88(2006)に記載されるアルキメデス法を使用して、焼結体の密度を測定した。結果を以下に示す。ここで用語「幾何」とは、密度を推定するためのディスクの寸法の測定値をいい、そして用語「ASTMC373」とは、ASTM C373−88(2006)に記載されるようなアルキメデス法をいう:
加工工程 密度(%TD)
ダイプレス 32.5(幾何)
冷間静水圧プレス(CIP) 45(幾何)
最終焼結 95(ASTMC373)。
【0085】
密度測定の結果は、一軸ダイプレスから冷間静水圧プレスへの異なる調製工程中の密度の増加を反映する。理論密度の45%までの密度の増加は、理論密度の95%までの密度を最終焼結工程において得ることを可能にした。
【0086】
複合セラミック材料の形態を、XRDにより決定した。得られたXRDスペクトルは、この材料が、正方晶の結晶を主要結晶相として含有することを実証する。このXRDデータに基づいて、単斜晶含有量は、2体積%未満であると推定された。従って、この複合セラミック材料において見出される結晶相は、本質的に、正方晶のCeOで安定化されたジルコニアおよびZnAlのみである。
【0087】
両方の相が、50nm〜500nmの顆粒サイズを有し、平均顆粒サイズは155±35nmであることが見出された。これらの相は、互いの内部に均質に分布していた。
【0088】
この複合セラミック材料は、10.8±0.4GPaのビッカース硬度を有した。この値に基づいて、破壊靱性は、14.1±0.8MPa・m0.5であることが決定された。これらの測定を、1つのサンプルに対して10回の押込みで繰り返して、10.5±0.1GPaの硬度(13.8±1.4MPa・m0.5の破壊靱性に対応する)を見出した。このような高い破壊靱性が200nm未満の平均顆粒サイズを有するセラミック材料において見出されることは、この型の複合材料については驚くべきことである。
【0089】
熱膨張係数(CTE)を、100℃〜600℃の範囲で、NETZSCH DIL 402C膨張計を使用して決定し、11.5×10−6−1のCTEを見出した。このサンプルの幾何学的形状は、歯科用規格ISO 6872:2008に従った。
【0090】
目視調査すると、この複合セラミック材料は、自然な歯の色に近く適合する色を有することがわかった。これとは異なり、Daiichi製の市販の素材から調製された、従来の12Ce-TZPセラミックは、暗黄色を示すことがわかった。
【0091】
表1は、従来の12Ce-TZPセラミックと比較した、実施例1において得られた複合セラミック材料の色特性を示す。
【0092】
【表1】

(実施例2)
前駆体溶液からの沈殿によるアルミン酸塩出発粉末の調製
(実施例2A:MgAl
MgCl・6HO(29.47g)およびAlCl・6HO(70g)を3lの脱イオン水に、磁気撹拌棒で撹拌しながら溶解して、約3.5のpHを有する水溶液を得た。アンモニア(28体積%水溶液)を、撹拌を続けながら、11のpHに達するまで滴下して、水性ゲルを沈殿させた。このゲル沈殿物を単離し、そして塩化物イオンの完全な除去を行う目的で、硝酸銀溶液との接触の際に洗浄濾液がもはや沈殿を起こさなくなるまで、脱イオン水で洗浄した。このゲル沈殿物を80℃で24時間乾燥させ、1分間粉砕し、そしてふるい分けした(90μm未満)。最後に、得られた粉末を800℃で1時間か焼して、MgAlの出発粉末を得た。
【0093】
(実施例2B:ZnAl
実施例2Aについて記載された手順に一般的に従うが、ZnCl(18.59g)およびAlCl・6HO(65.85g)を出発材料として使用して、アンモニアの量を9のpHを与えるように調節して、最終か焼を700℃で2時間実施して、ZnAlの出発粉末を得た。
【0094】
(実施例2C:LaMgAl1119
実施例2Aについて記載された手順に一般的に従うが、LaCl・6HO(21.31g)、MgCl・6HO(12.23g)およびAlCl・6HO(110.12g)を出発材料として使用して、アンモニアの量を9.5のpHを与えるように調節して、LaMgAl1119の出発粉末を得た。
【0095】
(実施例2D:LaAlO
実施例2Aについて記載された手順に一般的に従うが、LaCl・6HO(50g)およびAlCl・6HO(49.22g)を出発材料として使用して、アンモニアの量を10のpHを与えるように調節して、LaAlOの出発粉末を得た。
【0096】
(実施例3)
前駆体の熱処理によるアルミン酸出発粉末の調製
(実施例3A:MgAl
MgCO(65.73g)およびAlOOH・HO(107.5g)を回転ミル内で20分間混合し、引き続いて遠心ミル内で150rpmで10分間乾燥粉砕した。得られた活性化粉末を1600℃で6時間熱処理し、そして最後に、砕き、デアグロメレーションし、そしてふるい分けした(90μm未満)。得られた粉末は、約5μmのd50値を有した(これらの粒子のうちの50体積%が5μm未満の粒子サイズを有することを意味する)。この粉末をさらに粉砕して、1μm未満のd50値を有するMgAlの出発粉末を得た。
【0097】
(実施例3B:ZnAl
実施例3Aについて記載された手順に一般的に従うが、ZnO(44.39g)およびAlOOH・HO(83.42g)を出発物質として使用して、ZnAlの出発粉末を得た。
【0098】
(実施例3C:LaMgAl1119
実施例3Aについて記載された手順に一般的に従うが、La(21.31g)、MgCO(12.23g)およびAlOOH・HO(110.12g)を出発物質として使用して、LaMgAl1119の出発粉末を得た。
【0099】
(実施例4)
複合セラミック材料のスラリー調製
(実施例4A)
15重量%のMgAlを含む8Ce−TZP(8mol%のCeOで安定化されたジルコニア)のセラミックマトリックス複合材
マトリックススラリー:
72gのナノメートル規模の8Ce−TZP粉末(約55m/gの比表面積を有する)を、113.5mlの脱イオン水中で4時間粉砕して(750rpm、500gのジルコニアビーズ)、15nm〜20nmの平均顆粒サイズを得た。4.5gのDarvan 821A(R.T.Vanderbilt Company Inc.,USA)を分散剤として添加した。そのpHを、2gの1.0Mテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を使用して約9に調整した。
【0100】
第二の成分のスラリー:
33.3gの市販のMgAl粉末(Nanostructured & Amorphous Materials Inc.,USA)を162mlの脱イオン水中で1時間粉砕した(750rpm、500gのジルコニアビーズ)。1.8gのDarvan 821Aを分散剤として添加した。そのpHを、数滴の1.0Mテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を使用して、約10まで調整した。
【0101】
75.2gの第二の成分のスラリーを上記マトリックススラリーと混合した。数滴のContraspum K1012(Zschimmer & Schwarz,Germany)を添加し、そしてこれらのスラリーをさらに30分間混合し、次いで、減圧下で脱気した。
【0102】
5mlの得られた混合スラリーを、16mmの直径を有する金属型枠に満たし、そして液圧フィルタープレスユニットを使用して、60MPaの負荷で一軸プレスした。次いで、これらのサンプルを注意深く12時間乾燥させ、そして200MPaの負荷を使用して、冷間静水圧プレス(CIP)プロセスによりさらに濃密化した。
【0103】
濃密化後、サンプルの結合剤を500℃で30分間(加熱速度1K/分)除去し、そして最後に、1200℃で2時間焼結した。
【0104】
得られたセラミックマトリックス複合材のXRD分析は、正方晶のジルコニア相およびMgAl相を示した。驚くべきことに、このジルコニアは、全体が正方晶ジルコニアからなることが見出された。この複合材は、理論密度の96%の密度を有し、そしてアイボリー色であった。
【0105】
(実施例4B)
12重量%のMgAlを含む10Ce−TZP(10mol%のCeOで安定化されたジルコニア)からなるセラミックマトリックス
マトリックススラリー:
100gの市販のナノメートル規模の10Ce−TZP粉末(Daiichi,Japan)を90mlの脱イオン水中で4時間粉砕した(750rpm、700gのジルコニアビーズ)。6.25gのDarvan 821Aを分散剤として添加した。そのpHを、3.75gの1.0Mテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を使用して約10に調整した。
【0106】
第二の成分のスラリー:
MgAlの第二の成分のスラリーを、実施例4Aに記載されるように調製した。
【0107】
80.8gの第二の成分のスラリーを上記マトリックススラリーと混合した。数滴のContraspum K1012を添加し、そしてこれらのスラリーをさらに30分間混合し、次いで、脱気した。得られた混合スラリーは、約40重量%の固体含有量を有した。この混合スラリーを、実施例4Aに記載されるように、フィルタープレスおよび冷間静水圧プレスによって濃密化した。
【0108】
濃密化後、サンプルの結合剤を500℃で30分間(加熱速度1K/分)除去し、そして最後に、1400℃で2時間焼結した。
【0109】
得られたセラミックマトリックス複合材のXRD分析は、正方晶ジルコニア相およびMgAl相を示した。この複合材は、理論密度の97%の密度を有し、そしてアイボリー色であった。
【0110】
(実施例4C)
20重量%のLaMgAl1119を含む10Ce−TZP(10mol%のCeOで安定化されたジルコニア)からなるセラミックマトリックス
マトリックススラリー:
10Ce−TZPのマトリックススラリーを、実施例4Bに記載されるように調製した。
【0111】
第二の成分のスラリー:
65gのか焼したLaMgAl1119粉末を、35mlの脱イオン水中で4時間粉砕した(750rpm、460gのジルコニアビーズ)。0.23gのDarvan 821Aを分散剤として添加した。そのpHを、3.2gの1.0Mテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いて約12に調整した。
【0112】
40gの第二の成分のスラリーを上記マトリックススラリーと混合した。数滴のContraspum K1012を添加し、そしてこれらのスラリーをさらに30分間混合し、次いで、脱気した。得られた混合スラリーは、約52重量%の固体含有量を有した。この混合スラリーを、実施例4Aに記載されるように、フィルタープレスおよび冷間静水圧プレスによって濃密化した。
【0113】
濃密化後、サンプルの結合剤を500℃で30分間(加熱速度1K/分)除去し、そして最後に、1400℃で2時間焼結した。
【0114】
得られたセラミックマトリックス複合材のXRD分析は、正方晶のジルコニア相およびLaMgAl1119相を示した。この複合材は、理論密度の97%の密度を有し、そしてアイボリー色であった。
【0115】
(実施例4D)
20重量%のLaMgAl1119を含む12Ce−TZP(12mol%のCeOで安定化されたジルコニア)からなるセラミックマトリックス
マトリックススラリー:
100gの市販の12Ce−TZP粉末(Daiichi,Japan)を、42.5mlの脱イオン水中で4時間粉砕した(750rpm、500gのジルコニアビーズ)。3.75gのDarvan 821Aを分散剤として添加した。そのpHを、3.75gの1.0Mテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いて約10に調整した。
【0116】
第二の成分のスラリー:
LaMgAl1119の第二の成分のスラリーを、実施例4Cに記載されるように調製した。
【0117】
40gの第二の成分のスラリーを上記マトリックススラリーと混合した。数滴のContraspum K1012を添加し、そしてこれらのスラリーをさらに30分間混合し、次いで、脱気した。得られた混合スラリーは、約52重量%の固体含有量を有した。この混合スラリーを、実施例4Aに記載されるように、フィルタープレスおよび冷間静水圧プレスによって濃密化した。
【0118】
濃密化後、サンプルの結合剤を500℃で30分間(加熱速度1K/分)除去し、そして最後に、1500℃で30分間焼結した。
【0119】
得られたセラミックマトリックス複合材のXRD分析は、正方晶のジルコニア相およびLaMgAl1119相を示した。この複合材は、理論密度の97.8%の密度を有し、そしてアイボリー色であった。
【0120】
ビッカース硬度は、測定すると11700MPaであった。破壊靱性は、6.4MPa・m0.5であった。曲げ強度は、測定すると640±90MPaであった。
【0121】
光学値は、L=94.81、a=−1.36、b=9.23およびCR=99.93%であった。100℃〜600℃の範囲で測定したCTEは、12.5×10−6/Kであった。
【0122】
(実施例4E)
2.5重量%のMgAlを含む12Ce−TZP(12mol%のCeOで安定化されたジルコニア)からなるセラミックマトリックス
マトリックススラリー:
12Ce−TZPのマトリックススラリーを、実施例4Dに記載されるように調製した。
【0123】
第二の成分のスラリー:
MgAlの第二の成分のスラリーを、実施例4Aに記載されるように調製した。
【0124】
16gの第二の成分のスラリーを上記マトリックススラリーと混合した。数滴のContraspum K1012を添加し、そしてこれらのスラリーをさらに30分間混合し、次いで、脱気した。得られた混合スラリーは、約54重量%の固体含有量を有した。この混合スラリーを、実施例4Aに記載されるように、フィルタープレスおよび冷間静水圧プレスによって濃密化した。
【0125】
濃密化後、サンプルの結合剤を500℃で30分間(加熱速度1K/分)除去し、そして最後に、1500℃で30分間焼結した。
【0126】
得られたセラミックマトリックス複合材のXRD分析は、正方晶のジルコニア相およびMgAl相を示した。この複合材は、理論密度の98.5%の密度を有し、そして黄色がかった色であった。
【0127】
ビッカース硬度は、測定すると10300MPaであった。破壊靱性は、9.0MPa・m0.5であった。曲げ強度は、測定すると950±35MPaであった。光学値は、L=93.22、a=−3.01、b=13.91およびCR=99.70%であった。100℃〜600℃の範囲で測定したCTEは、12.96×10−6/Kであった。
【0128】
(実施例4F)
6重量%のMgAlおよび2重量%のLaAlOを含む12Ce−TZP(12mol%のCeOで安定化されたジルコニア)からなるセラミックマトリックス
マトリックススラリー:
12Ce−TZPのマトリックススラリーを、実施例4Dに記載されるように調製した。
【0129】
第二の成分のスラリー:
MgAlの第二の成分のスラリーを、実施例4Aに記載されるように調製した。
【0130】
第三の成分のスラリー:
72gの市販のLaAlO粉末(Treibacher Industrie AG,Austria)を、114.2mlの脱イオン水中で4時間粉砕した(750rpm、500gのジルコニアビーズ)。1.8gのDarvan 821Aを分散剤として添加した。そのpHを、4.0gの1.0Mテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を使用して10に調整した。
【0131】
40gの第二の成分のスラリーおよび6.0gの第三の成分のスラリーを上記マトリックススラリーと混合した。数滴のContraspum K1012を添加し、そしてこれらのスラリーをさらに30分間混合し、次いで、脱気した。得られた混合スラリーは、約54重量%の固体含有量を有した。この混合スラリーを、実施例4Aに記載されるように、フィルタープレスおよび冷間静水圧プレスによって濃密化した。
【0132】
濃密化後、サンプルの結合剤を500℃で30分間(加熱速度1K/分)除去し、そして最後に、1500℃で30分間焼結した。
【0133】
得られたセラミックマトリックス複合材のXRD分析は、正方晶のジルコニア相、MgAl相およびLaAlO相を示した。この複合材は、理論密度の98%の密度を有し、そして黄色であった。
【0134】
実施例1および4A〜4Fに従って得られたセラミックマトリックス複合材の特性を、表2に要約する。
【0135】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)CeOを安定剤として含有するジルコニアをベースとする第一相、および
(b)アルミン酸塩ベースの第二相、
を含有する、複合セラミック材料。
【請求項2】
前記第一相の量が、全セラミック材料に基づいて50体積%より多く、好ましくは60体積%〜95体積%、そしてより好ましくは70体積%〜84体積%である、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記ジルコニアが、安定化ジルコニアの総量に基づいて4mol%〜18mol%、特に6mol%〜14mol%、そしてより好ましくは8mol%〜12mol%のCeOを含有する、請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
前記第一相が、1.5μm未満、特に100nm〜900nm、そしてより好ましくは150nm〜800nmの平均顆粒サイズを有する顆粒、および/または100nm未満、特に10nm〜100nm未満、そしてより好ましくは20nm〜80nmの平均顆粒サイズを有する顆粒を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の材料。
【請求項5】
前記第二相の量が、全セラミック材料に基づいて少なくとも0.1体積%、好ましくは少なくとも1体積%、より好ましくは少なくとも2体積%、より好ましくは5体積%〜40体積%、そして最も好ましくは16体積%〜30体積%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の材料。
【請求項6】
前記アルミン酸塩が、ZnAl、MgAl、LaAlOおよびLaMgAl1119からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の材料。
【請求項7】
前記第二相が、1μm未満、特に100nm〜900nm、そしてより好ましくは150nm〜800nmの平均顆粒サイズを有する顆粒、および/または100nm未満、特に10nm〜100nm未満、そしてより好ましくは20nm〜80nmの平均顆粒サイズを有する顆粒を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の材料。
【請求項8】
前記第二相の前記アルミン酸塩とは異なるアルミン酸塩をベースとする第三相をさらに含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の材料。
【請求項9】
前記第三相が、1μm未満、特に100nm〜900nm、そしてより好ましくは150nm〜800nmの平均顆粒サイズを有する顆粒、および/または100nm未満、特に10nm〜100nm未満、そしてより好ましくは20nm〜80nmの平均顆粒サイズを有する顆粒を含有する、請求項8に記載の材料。
【請求項10】
(a)CeOを安定剤として含有するジルコニア、および
(b)アルミン酸塩、
を含有する、セラミック粉末組成物。
【請求項11】
請求項10に記載のセラミック粉末組成物を調製するためのプロセスであって、
(i)ジルコニウム、セリウム、アルミニウムおよび少なくとも1種のさらなる金属の塩を含有する水溶液を提供する工程;
(ii)塩基を添加して沈殿物を得る工程;ならびに
(iii)該沈殿物を乾燥および/またはか焼する工程、
を包含する、プロセス。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合セラミック材料を調製するためのプロセスであって、
(i)請求項10に記載のセラミック粉末組成物を提供する工程;
(ii)必要に応じてセラミック体を形成する工程;および
(iii)該セラミック粉末組成物または該セラミック体を焼結する工程、
を包含する、プロセス。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合セラミック材料を調製するためのプロセスであって、
(i)CeOを安定剤として含有するジルコニアを含有する第一のスラリー、アルミン酸塩を含有する第二のスラリー、および必要に応じて、該第二のスラリーの該アルミン酸塩とは異なるアルミン酸塩を含有する第三のスラリーを提供する工程;
(ii)該第一のスラリーを、該第二のスラリーおよび必要に応じて該第三のスラリーと混合して、混合スラリーを得る工程;
(iii)セラミック体を形成する工程;ならびに
(iv)該セラミック体を焼結する工程、
を包含する、プロセス。
【請求項14】
前記焼結する工程が、1000℃〜1600℃、特に1100℃〜1550℃、より好ましくは1400℃〜1500℃、そして最も好ましくは1200℃〜1300℃の温度で、15分〜72時間、特に30分〜24時間、そしてより好ましくは2時間〜10時間の時間にわたって実施される、請求項12または13に記載のプロセス。
【請求項15】
歯科材料として、特に、歯科用修復物、好ましくは歯科用フレーム枠、歯科用橋脚歯および歯科用インプラントの調製のため、または迅速な原型作製、立体リソグラフィーもしくはインクジェット印刷のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合セラミック材料、または請求項10に記載のセラミック粉末組成物の使用。

【図1】
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【公開番号】特開2011−225567(P2011−225567A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91459(P2011−91459)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(505247661)イフォクレール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト (5)
【Fターム(参考)】