説明

スイッチ、およびスイッチにおける気密検査方法

【課題】本体ケースを破壊せずに気密の検査を行えるようにする。
【解決手段】極盤2の周壁22にカバー3を接合して形成された本体ケース4の内部で、可動接点70が、本体ケース4で回動可能に支持された可動盤5に設けられて、可動盤5の回動位置に応じて可動接点70と固定接点21とが接離するインヒビタスイッチ1において、可動盤5は、端部51aが極盤2の支持穴23の底23aに当接し、端部51bがカバー3を貫通して本体ケース4の外部に位置する軸部51を備え、軸部51には、端部51bから軸方向に延びる軸孔54と、軸孔54と本体ケース4の内部空間Sとを連通する切欠き55とが設けられており、軸部51の端部51bには、軸部51を回動させるアーム6が接合されて、軸孔54の端部51bにおける開口がアーム6の基部61で封止された構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体ケースの気密の検査が可能なスイッチ、およびスイッチにおける気密の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接点などの保護のために本体ケースの気密の保持が必要なスイッチとして、例えば車両用の自動変速機に設けられてシフトレバーの選択レンジを検出するインヒビタスイッチがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−306292号公報
【0004】
特許文献1に開示されたインヒビタスイッチは、固定接点を有する極盤にカバーを接合して形成された本体ケースを備えており、この本体ケースの内部では、本体ケースで回動可能に支持された可動盤に、可動接点が設けられている。
可動盤は、シフトレバーの操作に連動して回動するように構成されており、可動盤の回動位置に応じて、可動接点が接触する固定接点が切り換えられて、接触する固定接点に応じた信号がインヒビタスイッチから出力されるようになっている。
このインヒビタスイッチから出力される信号は、図示しない制御装置(例えば自動変速機の制御装置)などでシフトレバーの選択レンジの特定に用いられ、特定された選択レンジに基づいて自動変速機の制御が実施される。
【0005】
ここで、例えば車両に搭載されたインヒビタスイッチは、水分やホコリなどとの接触機会の多い環境下で使用されることが多く、本体ケース内に水やホコリなどの異物が侵入すると、可動接点と固定接点との接触不良やショート、そしてこれら接点の劣化などが生じる虞がある。
【0006】
そのため、特許文献1に開示されたような従来例にかかるインヒビタスイッチでは、異物の侵入を阻止するために、極盤とカバーとの接合部にパッキンなどを介在させて、本体ケースの気密が確保されるようにしており、さらに、インヒビタスイッチの組み立て後に、本体ケースの気密を検査している。
【0007】
この気密の検査では、一般に、本体ケースに孔を開け、開けた孔から本体ケース内に空気を供給しながらインヒビタスイッチを水没させて、極盤とカバーとの接合部などから空気漏れが有るか否かに基づいて、本体ケースの気密が確保されているかを確認している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、この検査方法の場合、本体ケースに孔を開けているために、検査に用いたインヒビタスイッチは、破棄されていた。さらに、本体ケースに穴を開けて検査をするため、抜き取り検査しか行うことができず、組み立てられたインヒビタスイッチの総てについて気密の検査を行うことができなかった。
【0009】
そのため、気密の保持が必要な本体ケースを備えるスイッチにおいて、本体ケースに穴などを開けて破壊することなく気密の検査を行えるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、固定接点を有する極盤にカバーを接合して形成された本体ケースの内部で、可動接点が、本体ケースで回動可能に支持された可動盤に設けられて、可動盤の回動位置に応じて可動接点と固定接点とが接離するスイッチにおいて、可動盤は、少なくとも一端が本体ケースを貫通して前記本体ケースの外部に位置する軸部を備え、軸部に、一端から軸方向に延びる軸孔と、軸孔と本体ケースの内部とを連通する連通口とを設けて、軸孔の一端における開口を封止部材で封止した構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、封止部材が軸部に接合される前の本体ケースでは、本体ケースの内部と外部とが、軸部の軸孔と連通口とを介して連通している。
よって、軸孔と連通口とを、従来のスイッチで気密を検査する際に本体ケースに開けていた孔の代わりとして利用できるので、本体ケースを破壊することなく気密の検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係るスイッチの分解斜視図である。
【図2】実施形態に係るスイッチの平面図である。
【図3】実施形態にかかるスイッチの断面図である。
【図4】スイッチの組み立てと、気密の検査とを説明するフローチャートである。
【図5】スイッチの組み立て時の本体ケースの気密の検査を説明する図である。
【図6】組み立てられたスイッチの気密の検査を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るスイッチの実施の形態として、車両に搭載されてシフトレバーの選択レンジの検出に用いられるインヒビタスイッチを例に挙げて説明する。
【0014】
図1に示すように、インヒビタスイッチ1は、極盤2の固定接点21(21a〜21e)の領域を囲む周壁22にカバー3を接合して形成された本体ケース4を備えており、この本体ケース4の内部では、本体ケース4で軸線X周りに回動可能に支持された可動盤5に、可動接点70が設けられている。
【0015】
可動盤5の軸部51の端部51b側は、本体ケース4の外部において、図示しないシフトレバーの操作に連動して可動盤5を回動させるアーム6と連結しており、可動盤5が、シフトレバーの操作に連動して回動すると、可動接点70が接触する固定接点21(21a〜21e)が、可動盤5の回動位置に応じて切り換えられるようになっている。
【0016】
極盤2は、耐熱性に優れた非導電性の樹脂材料から一体に形成されている。周壁22は、固定接点21(21a〜21e)の領域を囲むようにカバー3側に延出して設けられており、周壁22の延出高さは、全周に亘って同じ高さとされている。この周壁22のカバー3側の上端22aは、カバー3が載置されて接合される接合面とされている。
【0017】

図2は、インヒビタスイッチ1の平面図であり、図3の(a)は、図2におけるA−A線断面図であり、(b)は、(a)におけるB−B線断面図である。
図1および図3に示すように、極盤2の周壁22で囲まれた略扇形状の領域内では、扇の扇頂に相当する位置の近傍に、後記する可動盤5の軸部51を回動可能に支持する支持穴23と、支持穴23を囲む支持壁24が設けられており、支持壁24は、カバー3側の上方に軸線Xに沿って延出している。
【0018】
図1に示すように、固定接点21(21a〜21e)は、可動盤5の回動軸Xから径方向外側に所定距離離間した位置に、支持壁24の外周に沿ってそれぞれ異なる長さで延びている。実施の形態では、固定接点21aおよび固定接点21b、固定接点21c、そして固定接点21dおよび固定接点21eは、それぞれ、回動軸Xを中心とした半径が異なる仮想円上に位置するように設けられている。
これら固定接点21(21a〜21e)は、極盤2の内部に設けられた導電板(図示せず)を介して、コネクタ部25の図示しない端子と接続している。
【0019】
極盤2は、耐熱性に優れた非導電性の樹脂材料から形成されている。
図3に示すように、可動盤5は、一方の端部51bがカバー3を貫通して本体ケース4の外部に位置すると共に、他方の端部51aが支持穴23の底23aに当接した軸部51と、本体ケース4内で軸部51から回動軸(軸線)Xに直交する径方向に延びる延出部52とを備えており、これらは一体に成形されている。
延出部52では、その先端側の固定接点21(21a〜21e)との対向面に、可動接点70とスプリング71とを保持する保持部53が設けられている。
実施の形態では、延出部52には、可動接点70が2つ、軸部51から見て径方向に並んで設けられており、これら可動接点70は、それぞれスプリング71により付勢されて、極盤2の固定接点21が設けられた底面2aに当接している。
【0020】
軸部51は、軸方向(軸線X方向)に伸びる軸孔54が内部に形成された円筒形状の部材であり、軸孔54は、軸部51の一方の端部51bから他方の端部51aまでの軸方向の全長に亘って形成されている。
円筒形状の軸部51の径方向の厚みは、軸方向の全長に亘って略均一な厚みとされており、これにより、軸部51の強度が確保されると共に、軸方向から見た軸部51の外周の形状が略真円状になるようにされている。
【0021】
軸部51の端部51a側には、図3の(b)に示すように、軸部51を厚み方向(径方向)に貫通する切欠き55が設けられており、切欠き55は、軸部51の端部51aから端部51b側に向かって、軸部51の軸線Xに沿って設けられている。図3の(a)に示すように、切欠き55の深さh1は、支持穴23の底23aから支持壁24の上端までの高さHよりも高く設定されており、軸孔54と本体ケース4の内部空間Sとが、切欠き55を介して互いに連通している。
【0022】
図1および図2に示すように、カバー3は、平面視において略扇形状の板状部材であり、耐熱性に優れた非導電性の樹脂材料から形成されている。
カバー3は、その周縁を極盤2の周壁22に載置させた状態で設けられており、カバー3の周縁と周壁22との接触部分は、レーザ溶着により接合されている。
【0023】
図3に示すように、カバー3では、有底円筒形状のアーム取付部31が、極盤2の支持穴23に対応する位置に、底部32を極盤2の底面2a側に突出させて設けられている。
アーム取付部31は、後記するアーム6の基部61を挿入可能な内径を有しており、底部32の中央には、可動盤5の軸部51を挿通させる挿通孔32aが設けられている。
【0024】
底部32における極盤2の底面2a側の下面では、挿通孔32aに挿通した可動盤5の軸部51を囲む囲繞壁33が、挿通孔32aの周縁から可動盤5側に延出して形成されており、囲繞壁33の先端33aは、可動盤5の延出部52のカバー3側の上面に当接している。
【0025】
アーム取付部31の底部32には、ゴム製のO−リング67が内嵌して取り付けられている。
O−リング67は、挿通孔32aを貫通した可動盤5の軸部51に外挿された状態で、軸部51と挿通孔32aとの間の隙間Cを塞いでおり、かかる隙間Cを介した本体ケース4の内部(内部空間S)と外部との連通を防止して、本体ケース4の気密を確保している。
【0026】
アーム取付部31内で本体ケース4の外部に露出する軸部51の端部51bには、可動盤5に回転を伝達するアーム6が接合されている。
【0027】
アーム6は、耐熱性に優れた非導電性の樹脂材料から形成されている。
図2に示すように、アーム6は、平面視において略円形の基部61と、基部61から径方向に延びる腕部65とを備えており、腕部65の先端側には、基部61から見て径方向に延びる長穴66が設けられている。
【0028】
図3に示すように、長穴66は、腕部65を厚み方向に貫通して設けられている。
インヒビタスイッチ1が設置された状態において、長穴66には、シフトレバーから延びるハーネスにリンクを介して接続されたレバー(図示せず)が挿入され、シフトレバーが操作されると、長穴66に挿入されたレバーにより、アーム6の先端側が回動軸X周りに回動して(図2参照)、アーム6が連結する可動盤5の軸部51が回動軸X周りに回動するようになっている。
【0029】
アーム6の基部61では、軸部51との対向面に、軸部51に外嵌する筒状の外嵌部62が設けられている。外嵌部62は、軸部51の外径D1よりも若干大きい内径D2を有しており、基部61の外周縁から軸線Xに沿って軸部51側に延びている。
外嵌部62の延出高さh2は、アーム6が軸部51に取り付けられた状態において、外嵌部62の先端部62aが、O−リング67をアーム取付部31の底部32に押しつけた状態となるように設定されている。
軸部51と挿通孔32aとの間の隙間Cを介した本体ケース4の内部と外部との連通をO−リング67で防止して、組み立て後のインヒビタスイッチ1において、本体ケース4の気密を確保するためである。
【0030】
アーム6の基部61では、外嵌部62とは反対側に円筒穴63が設けられており、円筒穴63は、軸部51の外径D1と略同じ内径で形成されて、軸線X上で軸部51と同軸に設けられている。
【0031】
アーム6の基部61の軸部51側の面61aは、軸部51の端部51bに軸方向から当接しており、面61aと端部51bとの接触部分は、レーザ溶着により接合されている。
【0032】
以下、かかる構成のインヒビタスイッチ1の組み立てと、組み立て時に行われる気密検査とを、図4のフローチャートを参照して説明する。
図5は、アーム6が軸部51に接合される前の半製品の本体ケース4における気密の検査を説明する図である。
図6は、組み立て後のインヒビタスイッチ1における気密の検査を説明する図である。
【0033】
ステップ101において、カバー3のアーム取付部31にO−リング67を取り付けたのち、ステップ102において、極盤2とカバー3と可動盤5とを組み付けて、本体ケース4を組み立てる。
【0034】
具体的には、可動盤5の延出部52の保持部53にスプリング71を介在させて可動接点70を取り付けたのち、可動盤5の軸部51の端部51aを、極盤2の支持穴23に挿入して、可動盤5を極盤2に組み付ける。そして、O−リング67が取り付けられた状態のカバー3の挿通孔32aに、可動盤5の軸部51の端部51b側が挿入されるように、カバー3を極盤2に組み付けて、本体ケース4を組み立てる。
【0035】
ステップ103において、カバー3の周縁と周壁22との接触部分をレーザ溶着により接合する。これにより、カバー3の周縁と周壁22との接触部分が溶融されて互いに接合された半製品の本体ケース4(接点筐体)が形成される。
【0036】
ステップ104において、本体ケース4の気密を検査する(検査方法1)。
具体的には、図5に示すように、カバー3のアーム取付部31内で露出している可動盤5の軸部51に、図示しないエアコンプレッサから伸びるホース80が接続されたジョイント部材81を外嵌し、ジョイント部材81の先端部81aで、O−リング67をアーム取付部31の底部32に押しつけた状態で保持する。
そして、エアコンプレッサからの空気を軸孔54、切り欠き55を介して本体ケース4内に供給しながら(圧力を印加しながら)、本体ケース4を水没させ、この状態において、カバー3の周縁と周壁22とのレーザ溶着により接合された部分(レーザ溶着部)や、O−リング67による封止部(可動盤5の軸部51とカバー3の挿通孔32aとの隙間C)から、エア漏れが生じているか否かを目視で確認する。
【0037】
ステップ105において、エア漏れが確認された場合、ステップ109において、レーザ溶着部と、O−リング67による封止部のうちの何れからエア漏れが生じているのかを確認する。
実施の形態の場合、半製品の本体ケース4においてエア漏れが生じる可能性があるのは、レーザ溶着部と、O−リング67による封止部のうちの何れかであるからである。
【0038】
そして、ステップ110において、レーザ溶着部からのエア漏れであると確認されると、ステップ111において、カバー3の周縁と周壁22との接触部分のレーザ溶着を再度実施する。そして、前記したステップ104の本体ケース4の気密の検査を、再度実施する。
【0039】
一方、ステップ110において、レーザ溶着部からのエア漏れではなく、O−リング67による封止部からのエア漏れであると確認されると、ステップ112において、O−リング67の取り付け直しを実施する。例えばO−リング67が捩れた状態で取り付けられていると、かかる部分からエア漏れが生じるからである。なお、O−リング67を別のものに交換するようにしても良い。そして、前記したステップ104の本体ケース4の気密の検査を、再度実施する。
【0040】
ステップ104の本体ケース4の気密の検査を実施し、ステップ105においてエア漏れが確認されなかった場合には、ステップ106において、アーム6を可動盤5の軸部51にレーザ溶着により接合して、インヒビタスイッチ1を形成する。
具体的には、アーム6の基部61を、可動盤5の軸部51に軸方向から取り付けて、軸部51の端部51bにおける軸孔54の開口を基部61の面61aで封止したのち、基部61の面61aと軸部51の端部51bとの接触部分を、レーザ溶着により接合する。
【0041】
ステップ107において、インヒビタスイッチ1の気密の検査、具体的には形成されたインヒビタスイッチ1において、本体ケース4の気密が確保されているか否かの検査を実施する(検査方法2)。
アーム6の基部61と可動盤5の軸部51とのレーザ溶着による接合が不十分である場合には、形成後のインヒビタスイッチ1における本体ケース4の気密が確保されないからである。
【0042】
具体的には、図6に示すように、同一容積の検査用密閉容器を2つ用意し、一方の容器(検査容器A)に検査対象のインヒビタスイッチ1を配置し、他方の容器(ブランク検査容器B)に気密漏れの無いことが確認されているインヒビタスイッチ1Bをブランクとして配置する。そして、共通の真空ポンプPを用いて、検査容器Aとブランク検査容器Bの内部を減圧する。この際、検査容器Aおよびブランク検査容器Bと真空ポンプPとの間に圧力差計85を介在させておき、圧力差計85により、検査容器Aとブランク検査容器Bとの間の圧力差を測定し、圧力差が所定の閾値範囲内にあるか否かに基づいて、検査対象のインヒビタスイッチ1の本体ケース4からのエア漏れの有無を判定する。
【0043】
ここで、実施の形態では、差圧式のリークテスター(株式会社コスモ計器製:LZ−1500系)を圧力差計として採用している。
【0044】
検査対象のインヒビタスイッチ1において、アーム6の基部61と可動盤5の軸部51とのレーザ溶着による接合が十分である場合には、本体ケース4の内部の空気もまた真空ポンプPにより吸引されて、本体ケース4からのエア漏れが発生する。
かかる場合、本体ケース4内から吸引された空気の分だけ、検査容器Aとブランク検査容器Bとの間の圧力差が大きくなる。
【0045】
よって、実施の形態では、本体ケースからのエア漏れがない別のインヒビタスイッチを検査容器A内に配置して圧力差を測定した際の結果から、閾値となる圧力差(△Pth)を決定し、決定した閾値の圧力差(△Pth)よりも、検査対象のインヒビタスイッチ1を検査容器A内に配置して測定した圧力差(△P)のほうが大きい場合(△Pth<△P)に、検査対象のインヒビタスイッチ1において本体ケース4からのエア漏れがあると判定し、大きくない場合(△Pth≧△P)に、エア漏れがないと判定している。
【0046】
ステップ108において、エア漏れが有ると判定された場合には、ステップ113において、可動盤5の軸部51とアーム6の基部61との接触部分のレーザ溶着を再度実施する。
このステップ107、108と、ステップ113の処理は、エア漏れが有ると判定されなくなるまで実施される。
【0047】
そして、ステップ108において、エア漏れが無いと判定された場合には、エア漏れ検査を終了し、インヒビタスイッチ1の組み立てと、気密検査とを終了する。
【0048】
ここで、実施の形態におけるアーム6が、発明における封止部材に相当し、実施の形態における切欠き55が、発明における連通口に相当し、実施の形態におけるO−リング67が、発明におけるリング状の弾性部材に相当し、実施の形態における外嵌部62が、発明における周壁部に相当する。
【0049】
以上の通り、実施の形態では、固定接点21(21a〜21e)を有する極盤2の周壁22の上端22aにカバー3の周縁を接合して形成された本体ケース4の内部で、可動接点70が、本体ケース4で回動可能に支持された可動盤5の延出部52に設けられて、可動盤5の回動位置に応じて可動接点70と固定接点21(21a〜21e)とが接離するインヒビタスイッチ1において、可動盤5は、一方の端部51bがカバー3を貫通して本体ケース4の外部に位置すると共に、他方の端部51aが極盤2の支持穴23の底23aに当接した軸部51を備え、軸部51には、端部51bから軸方向に延びる軸孔54と、軸孔54と本体ケース4の内部空間Sとを連通する切欠き55とが設けられており、軸部51の端部51bには、軸部51を回動させるアーム6が接合されて、軸部51の端部51bにおける軸孔54の開口がアーム6の基部61で封止された構成とした。
これにより、アーム6が軸部51に接合される前の半製品の本体ケース4では、本体ケース4の内部と外部とが、軸部51の軸孔54と切欠き55とを介して連通しているので、軸孔54と切欠き55とを、従来のスイッチで気密を検査する際に本体ケースに開けていた孔の代わりとして利用できる。よって、本体ケースを破壊することなく気密の検査を行うことができる。
さらに、気密の検査のために本体ケースに孔を開けて破壊する必要がないので、少なくとも従来破棄されていた本体ケースの分だけ、歩留まりが向上し、作製コストの低減も可能になる。また、孔を開けないので、気密の検査もより簡単に行うことができ、検査効率も向上する。さらに、半製品の本体ケースの総てについて気密の検査を行うことができるので、不良品率が低く信頼性の高いインヒビタスイッチ(スイッチ)を提供できる。
【0050】
さらに、カバー3の挿通孔32aを挿通して本体ケース4の外部に位置する軸部51の端部51b側には、カバー3のアーム取付部31に取り付けられたO−リング67が外挿されており、アーム6の基部61は、軸部51に外嵌する筒状の外嵌部62を有しており、アーム6は、外嵌部62とアーム取付部31の底部32との間にO−リング67を挟み込んで、軸部51と挿通孔32aとの間の隙間CをO−リング67で塞いだ状態で、軸部51に接合される構成とした。
これにより、本体ケース4の内部と外部との隙間Cを介した連通が、O−リング67で防止されるので、組み立て後のインヒビタスイッチ1において、本体ケース4内の気密を確保できる。
【0051】
また、カバー3の周縁と極盤2の周壁22との接合、およびアーム6の基部61と軸部51の端部51bとの接合は、レーザ溶着により行われる構成とした。
これにより、半製品の本体ケース4や、組み立て後のインヒビタスイッチ1における気密の検査において、接合部分からのエア漏れが確認された場合には、レーザ溶着を再度実施してエア漏れを修復することができるので、歩留まりが向上する。
また、レーザ溶着の場合、接合の不良箇所を何度でも繰り返して再溶着することが可能なので、気密の漏れがない半製品の本体ケース4やインヒビタスイッチ1を確実に作製することができる。よって、従来のスイッチのように、気密が確保されないインヒビタスイッチ1が得られて、これを破棄する必要が生じない。さらに、レーザ溶着によりカバー3の周縁と極盤2の周壁22とを接合すると、レーザ溶着による接合は、接合強度が高く気密の保持を確実に行えるので、カバー3と周壁22との接合部にパッキンなどの気密を保持するための部材を介在させる必要がない。よって、パッキンを省略することができ、かかる場合にはパッキンを用いない分だけ部品点数が少なくなるので、インヒビタスイッチ1の作製コストを低減できる。
【0052】
さらに、実施の形態では、アーム6が軸部51に接合される前の半製品の本体ケース4において、本体ケース4の外部に位置する軸部51の端部51bにおける軸孔54の開口から、本体ケース4の内部にエア(空気)を供給し、カバー3の周縁と極盤2の周壁22との接合部(レーザ溶着部)と、O−リング67による封止された隙間Cからのエアの漏出を確認する第1の確認ステップと、第1の確認ステップでエアの漏出が確認されなかった本体ケースの軸部51にアーム6を接合して得られたインヒビタスイッチ1を、気密検査用の容器A内に配置すると共に、エアの漏れがない比較用のインヒビタスイッチ1Bを、気密検査用の容器Aと同一容積の比較用の容器B内に配置し、気密検査用の容器A内のエアと、比較用の容器B内のエアとを、共通の真空ポンプPを用いて排出させて減圧しながら、気密検査用の容器Aと比較用の容器Bとの圧力差を、圧力差計85で測定し、圧力差に基づいて、インヒビタスイッチ1の本体ケース4内の気体が、軸部51とアーム6との接合部から漏出しているか否かを確認する第2の確認ステップと、を有する気密の検査方法で、インヒビタスイッチ1の本体ケース4の気密を検査するようにした。
これにより、インヒビタスイッチ1の組み立ての途中において、本体ケース4の気密が確保されなくなる可能性のある工程(カバー3と極盤2の周壁22との接合、O−リング67の取り付け、可動盤5の軸部とアーム6との接合)の後に、気密の検査が行われて、本体ケース4からのエア漏れの有無が確認される。
そして、エア漏れが確認された場合には、エア漏れが確認されなくなるまで、問題となった工程が繰り返し行われるので、インヒビタスイッチ1の組み立てが完了したのちに気密の検査を行う従来の場合に比べて、インヒビタスイッチ1の不良率を低減でき、廃棄されるインヒビタスイッチ1や構成部品の数を減らすことができる。
また、組み立てられたインヒビタスイッチの総てについて、少なくとも2回、気密の検査が行われるので、インヒビタスイッチに対する信頼性がより向上する。
特に、レーザ溶着により接合を行うことで、従来の超音波溶着で接合を行う場合のように、接合する部分にパッキンを介在させる必要が無いので、部品点数を減らすことができる。また、レーザ溶着は、振動を与えることなく短時間で行えると共に、接合部に接着剤を介在させる必要がないので、作業コストおよび作製コストの低減が可能となる。そして、レーザ溶着により接合した部分は、接合強度が高いので、カバー3と極盤2の周壁22とを接合するために、ネジなどの他の締結部品を用いる必要がないので、部品点数の削減が可能になる。
【0053】
実施の形態では、半製品の本体ケース4にエアを印加しながら本体ケース4を水没させて、本体ケース4からのエア漏れの有無に基づいて、気密を検査したが、半製品の本体ケース4に検査用の流体(例えば、検査用オイル)を注入して、注入した流体の本体ケース4からの漏れの有無に基づいて気密を検査するようにしても良い。
【0054】
また、実施の形態では、カバー3のアーム取付部31にO−リング67を設けたが、軸部51と挿通孔32aとの隙間Cを塞いで本体ケース4の気密を確保できる部材であれば、オイルシールやXリングなどの他のゴムシール部材が設けられていても良い。
【0055】
さらに、実施の形態では、カバー3と極盤2の周壁22との接合、そしてアーム6の基部61と軸部51との接合を、レーザ溶着により行う場合を例示したが、本体ケース4の気密を確保できるのであれば、振動溶着や超音波溶着により行うことや、ネジ、リベット、接着剤などを用いて接合するようにしても良い。
【0056】
また、実施の形態では、軸部51の端部51aに設けた切欠き55により、軸部51の軸孔54と本体ケース4の内部空間Sとを連通させたが、切欠き55の代わりに軸部51を厚み方向に貫通する貫通孔を設けて、軸孔54と内部空間Sとを連通するようにしても良い。
【0057】
また、実施の形態では、可動盤5における軸部51の一方の端部51bが、カバー3を貫通して本体ケース4の外部に位置し、他方の端部51aが、極盤2の支持穴23の底23aに当接して設けられている場合を例示したが、軸部51の一方の端部51bが、カバー3に当接して設けられて、他方の端部51aが、極盤2を貫通して本体ケース4の外部に位置するように設けられていても良い。かかる場合、少なくとも軸孔54を、軸部51の端部51aから軸方向に延びるように設けることで、前記実施の形態の場合と同様の効果が奏されることになる。
【0058】
さらに、軸部51の一方の端部51bと他方の端部51aの両方が、本体ケース4の外部に位置するように、それぞれカバー3と極盤2とを貫通して設けられていても良い。かかる場合、軸部51の軸方向に延びる軸孔54を、アーム6が接合される方の端部(端部51aまたは端部51b)から、アーム6が接合されない方の端部(端部51bまたは端部51a)に向けて形成し、軸孔54をアーム6が接合されない方の端部(端部51bまたは端部51a)まで貫通しないように設けることが好ましい。なお、軸孔54をアーム6が接合されない方の端部(端部51bまたは端部51a)まで貫通させた場合には、かかる端部における軸孔54の開口を封止するキャップなどの封止部材を設けることが好ましい。
このようにすることによっても、前記実施の形態の場合と同様の効果が奏されることになる。
【0059】
また、軸部51の端部51bにおける開口は、必ずしもアーム6の基部61で封止される必要はなく、アーム6とは別に用意されたキャップなどの封止部材を端部51bに接合/嵌合して、開口が封止部材により封止されるようにしても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 インヒビタスイッチ
2 極盤
3 カバー
4 本体ケース
5 可動盤
6 アーム(封止部材)
21(21a〜21e) 固定接点
22 周壁
23 支持穴
24 支持壁
25 コネクタ部
31 アーム取付部
32 底部
32a 挿通孔
33 囲繞壁
51 軸部
51a 端部
51b 端部
52 延出部
54 軸孔
55 切欠き(連通口)
61 基部
62 外嵌部
63 円筒穴
65 腕部
66 長穴
67 O−リング(リング状の弾性部材)
70 可動接点
71 スプリング
80 ホース
81 ジョイント部材
85 圧力差計
P 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を有する極盤にカバーを接合して形成された本体ケースの内部で、可動接点が、前記本体ケースで回動可能に支持された可動盤に設けられて、前記可動盤の回動位置に応じて前記可動接点と前記固定接点とが接離するスイッチにおいて、
前記可動盤は、少なくとも一端が前記本体ケースを貫通して前記本体ケースの外部に位置する軸部を備え、
前記軸部に、前記一端から軸方向に延びる軸孔と、前記軸孔と前記本体ケースの内部とを連通する連通口とを設けて、前記軸孔の前記一端における開口を封止部材で封止したことを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
前記本体ケースの外部において前記軸部には、リング状の弾性部材が外挿されており、
前記封止部材は、前記軸部に外嵌する周壁部を有しており、前記周壁部と前記本体ケースとの間に前記弾性部材を挟み込んだ状態で、前記軸部に接合されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ。
【請求項3】
前記封止部材は、前記軸部に接合されて前記軸部を回動させるアームであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスイッチ。
【請求項4】
前記接合は、レーザ溶着により行われることを特徴とする請求項1から請求項3のうちの何れか一項に記載のスイッチ。
【請求項5】
請求項1から請求項3のうちの何れか一項に記載のスイッチにおける気密検査方法であって、
前記開口が前記封止部材で封止される前の前記本体ケースにおいて、
前記開口から、前記本体ケースの内部に流体を供給し、前記本体ケースからの前記流体の漏出の有無を確認する第1の確認ステップと、
前記第1の確認ステップで前記流体の漏出が確認されなかった本体ケースにおいて、前記開口を前記封止部材で封止して得られたスイッチを、気密検査用の容器内に配置すると共に、
前記流体の漏れがない比較用のスイッチを、前記気密検査用の容器と同一容積の比較用の容器内に配置し、
前記気密検査用の容器内の気体と、前記比較用の容器内の気体とを、共通のポンプを用いて排出させて減圧しながら、前記気密検査用の容器と前記比較用の容器との圧力差を測定し、前記圧力差に基づいて、前記本体ケース内の気体が、前記軸部と前記アームとの接合部から漏出しているか否かを確認する第2の確認ステップと、を有することを特徴とする気密検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−257785(P2010−257785A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106973(P2009−106973)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(390001236)ナイルス株式会社 (136)
【Fターム(参考)】