説明

スイッチモジュール

【課題】スルーホールを設けなくてもメタルドームの押圧操作に応じたスイッチ信号を取得するスイッチモジュールを提供する。
【解決手段】基板10と、該基板10の一方主面側に実装されたメタルドーム50と、を備えるスイッチモジュール1であって、基板10の一方主面10Aに形成され、メタルドーム50の頭頂部50Aと対向する第1接点21と、メタルドーム50の押圧操作に応じたスイッチ信号が入力又は出力される接点電極22とを含む第1導電回路層20と、第1導電回路層20に積層され、第1接点21と接点電極22に対向する位置にそれぞれ開口部34,35を有する絶縁層30と、絶縁層30の主面に形成され、メタルドーム50の外縁部に接する第2接点41と第2接点41と接点電極21を接続する導通回路43を含む第2導電回路層40と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルドームを備えたスイッチモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術に関し、ベース基材の一方主面に、メタルドームが載置される環状の第1電極配線部とメタルドームの頭頂部と接触する第2電極配線部とを形成し、ベース基板の背面側の第2電極配線部に対向する位置にレーザー加工によってスルーホールを設け、このスルーホール部分を含む領域にベース基板の背面側から銀ペーストを印刷することにより、該スルーホールを通じてベース基板の表裏の配線を導通させるプリント配線板が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2003−36761号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基板にスルーホールを形成する工程は、位置合わせや削り屑の除去、さらにはめっき加工などの作業を伴うため、製造コストが上昇するという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、スルーホールを備えなくても、メタルドームの押圧操作に応じたスイッチ信号を取得できるスイッチモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板と該基板の一方主面側に実装されたメタルドームとを備えるスイッチモジュールであって、前記基板の一方主面に形成され、前記メタルドームの頭頂部と対向する第1接点と、前記メタルドームの押圧操作に応じたスイッチ信号が入力又は出力される接点電極とを含む第1導電回路層と、前記第1導電回路層に積層され、前記第1接点と前記接点電極に対向する位置にそれぞれ開口部を有する絶縁層と、前記絶縁層の主面に形成され、前記メタルドームの外縁部に接する第2接点と、当該第2接点と前記接点電極を接続する導通回路を含む第2導電回路層と、を有するスイッチモジュールを提供することにより、上記課題を解決する。
【0007】
上記発明において、前記第1導電回路層が前記第1接点及び前記接点電極と絶縁された信号回路を含み、前記導通回路が前記絶縁層を介して前記信号回路と交差するように構成することができる。
【0008】
上記発明において、前記第2導電回路層が前記第1接点を覆う保護層を含み、
この前記第2導電回路層をカーボンペーストから形成することができる。
【0009】
上記発明において、前記接点電極に対向する位置に設けられた開口部を、直径0.3mm以上の円形とすることができる。
【0010】
上記発明において、前記第1接点に対向する位置に設けられた前記開口部の内周縁が前記第1接点の外周縁よりも内側に位置するように構成することができる。
【0011】
上記発明において、前記第1導電回路層が、前記導通回路の下部であって、前記第1接点の周囲に形成された前記第1接点と同じ厚さのダミー回路を含むように構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、基板の一方主面にメタルドームの頭頂部と対向する第1接点とスイッチ信号が入出力される接点電極とを形成するとともに、基板に積層された絶縁層の上にメタルドームの外縁部に接する第2接点と、該第2接点と接点電極を接続する導通回路を形成したので、メタルドームを押すと、第1接点と第2接点が導通し、第1接点と接点電極が導通回路により同通して、スイッチ信号の入出力回路が形成される。その結果、スルーホールを設けなくてもメタルドームの押圧操作に応じたスイッチ信号を取得するスイッチモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスイッチモジュールが搭載された携帯電話の一例を示す図である。
【図2】図1に示す携帯電話のスイッチパネルの分解斜視図である。
【図3】図2のA部分を拡大して示す平面図である。
【図4】図3のIV-IV線に沿う断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るスイッチモジュールの製造工程図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るスイッチモジュールを示す拡大平面図(図2のA部分相当図)である。
【図7】図6のVII-VII線に沿う断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るスイッチモジュールを示す拡大平面図(図2のA部分相当図)である。
【図9】図8のIX-IX線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明に係る本実施形態のスイッチモジュールについて説明する。
【0015】
本実施形態のスイッチモジュールは、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルオーディオプレーヤ等の電子機器のスイッチ部分に用いられるモジュールである。本実施形態では、携帯電話のスイッチパネル101に本発明に係るスイッチモジュール1を適用した例を説明する。
【0016】
図1は本発明の第1実施形態に係るスイッチモジュールが搭載されたスイッチパネル101を備えた携帯電話の一例を示す図である。図2は、図1に示す携帯電話100のスイッチパネル101の分解斜視図である。
【0017】
図2に示すように、スイッチパネル101は、操作面となる筺体110及び可撓性シート120と、スイッチシート130とを有する。筺体110には複数の開口部111が形成され、可撓性シート120には複数の凸状のボタン部121が形成され、スイッチシート130には複数のスイッチモジュール1が形成されている。
【0018】
これらのスイッチシート130のスイッチモジュール1と可撓性シート120のボタン部121と筺体110の開口部111とは、XY平面上において同じ位置となるように形成されている。組み立て時においては、スイッチモジュール1とボタン部121の位置が合うようにスイッチシート130と可撓性シート120とを積層し、ボタン部121と開口部111の位置が合うように可撓性シート120と筺体110とを積層する。図示は省略するが、スイッチシート130の下層には底面側の筺体を配置し、操作面側の筺体110と係合させることにより、スイッチモジュール1が筺体110内に収容される。
【0019】
以下に説明するスイッチモジュール1は、基板と、この基板の一方主面側に実装されるメタルドームとを備えるものである。複数のスイッチモジュール1が配設されたスイッチシート130は、スイッチモジュール1のメタルメタルドームを固定するため、粘着層を有する固定シートをさらに備えてもよい。
【0020】
続いて、図3及び図4に基づいて、本実施形態に係るスイッチモジュール1の構成について説明する。図3は、図2に示すスイッチモジュール1を含むA部分の拡大平面図であり、図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図である。
【0021】
図3に示すように、スイッチモジュール1の最上層には、メタルドーム50の外縁部との接点に沿って形成された第2接点41と、接点電極22と対向する位置に形成された対向電極42と、この対向電極42と接点電極22との間に形成された導通回路43と、メタルドーム50の頭頂部と対向する第1接点21を覆う保護層45とを含む第2導電回路層(図中斜線を施した部分)が形成されている。第2接点41はメタルドーム50の外縁部の接点を含む環形状に形成されており、対向電極42は接点電極22よりも小さい円形状に形成されており、導通回路43は第2接点41の環の左右両端(図中)から2つの対向電極42へそれぞれ延びる帯状に形成されている。また、保護層45は、環形状に形成された第2接点41の内側に円形状に形成されている。この保護層45と第2接点41とは絶縁されている。
【0022】
また、図4に示すように、本実施形態のスイッチモジュール1は積層構造とされており、最下層から絶縁性の基板10と、基板10の一方主面10Aに形成された第1導電回路層20と、第1導電回路層20に積層された絶縁層30と、絶縁層30に積層された第2導電回路層40と、第2導電回路層40の上に載置されたメタルドーム50と、を備えている。
【0023】
本実施形態に係る基板10は、例えば、ガラスエポキシ樹脂等から構成されるリジットなプリント配線基板(PCB:Printed Circuit Board)や、ポリイミド等から構成されるフレキシブルプリント配線基板(FPC:Flexible Printed Circuit)である。
【0024】
この基板10の一方主面10Aに形成される第1導電回路層20は、第1接点21と、接点電極22と、信号回路23とを含む。これらの第1導電回路層20は、銅、銀又は金などの金属又は金属含有材料で構成されている。第1接点21は、メタルドーム50の頭頂部50Aと対向する位置に略円形に形成され、メタルドーム50が押圧された際に、メタルドーム50の頭頂部と接触する。接点電極22はメタルドーム50の外縁部よりも外側の位置に略円形に形成されており、メタルドーム50の押圧操作に応じたスイッチ信号が入出力される。
【0025】
また、信号回路23は、導通回路43と絶縁層30を介して立体的に交差するように、導通回路43の下側の領域に形成されている。さらに、第1導電回路層20は、第1接点21から延出する配線21aと、接点電極22から延出する配線22aとを含む。第1接点21及び接点電極22に入出力されたスイッチ信号は配線21a及び/又は配線22aを介して出力される。
【0026】
本実施形態に係るスイッチモジュール1では、信号回路23が、第2接点41と接点電極22とを接続する導通回路43の下側に絶縁層30を介して配線されている。つまり、本実施形態の信号回路23は、導通回路43、第1接点21、接点電極22、配線21a及び配線22aと絶縁されている。このように信号回路23を配置することにより、導通回路43を、信号回路23を飛び越す(絶縁状態で交差する)ジャンパ回路として機能させることができる。その結果、スイッチ信号を伝達するための第1接点21及び接点電極22と、スイッチ信号以外の信号を伝達するための信号回路23とを、基板10の同一の主面に形成することができる。
【0027】
本実施形態における絶縁層30は、第1導電回路層20の上層に形成され、接着剤層31とカバーレイフィルム32とを含む。絶縁層30は、第1接点21に対向する位置に形成された第1開口部34と、2つの接点電極22に対向する位置にそれぞれ形成された第2開口部35とを有する。第1開口部34及び第2開口部35は貫通穴である。第1開口部34及び第2開口部35以外の領域、すなわち、信号回路23、第1開口部34の開口領域以外の第1接点21、第2開口部35の開口領域以外の接点電極22は、絶縁層30によって覆われている。その結果、信号回路23は絶縁層30によって第1導電回路層20及び第2導電回路層40と絶縁されている。
【0028】
特に限定されないが、第2開口部35は直径0.3mm以上の円形であることが望ましい。0.3mm未満とすると所望の接続信頼性を確保することができないからである。このように第2開口部35の開口を0.3mm以上とする根拠は、後述する実施例1に示す。なお、上限は特に限定されず、製品の小型化の要請に応じて適宜設定することができる。
【0029】
絶縁層30の上層には第2導電回路層40が形成されている。先に説明したように、第2導電回路層40は、メタルドーム50の外縁部に接する第2接点41と、接点電極22に接する対向電極42と、対向電極42を介して接点電極22と第2接点41とを接続させる導通回路43とを含む。図4に示すように、第2接点41は、メタルドーム50の外縁部と接するように形成されており、対向電極42は接点電極22と対向する位置に絶縁層30の第2開口部35を埋めるように形成されており、導通回路43は第2接点41と対向電極42との間に形成されている。
【0030】
また、本実施形態の第2導電回路層40は、第1接点21を覆うように形成された導電性の保護層45を含む。保護層45は第2接点41と絶縁されている。保護層45を構成する材料は、導電性材料であれば特に限定されないが、本実施形態の保護層45はカーボンペーストにより形成されている。保護層45を酸化腐食性の低いカーボンペーストで形成することにより、金属等により形成された第1接点21を酸化腐食から保護することができる。この保護層45の上面の高さは任意に設定することができるが、本実施形態では、保護層45の上面の高さ、第2接点41の上面の高さ、導通回路43の上面の高さ及び対向電極42の上面の高さはすべて同じであり、第2導電回路層40の上面は平坦になっている。
【0031】
第2導電回路層40の上層には、メタルドーム50が載置される。メタルドーム50は、ステンレスや銅系金属などの導電性及び可撓性を持つ材料で構成されている。メタルドーム50の形状は限定されないが、例えば、3〜6mm程度の直径、及び0.1〜0.4mm程度の高さのドーム形状である。このメタルドーム50は、頭頂部自体が可動接点として機能し、頭頂部が押圧されるとドーム形状が徐々に反転変形する一方で、頭頂部への押圧が解除されると自己弾性により当初のドーム形状に復元するようになっている。
【0032】
ちなみに、メタルドーム50は、固定シートによって基板10側に固定される。固定シートは、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)などの合成樹脂材料から構成されるシート部材と、このシート部材の下面に塗布されたアクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤等の粘着層とを備えている。固定シートの粘着層がメタルドーム50を保持しつつ、このメタルドーム50が貼り付けられていない部分の粘着層が基板10に付着してメタルドーム50を基板10に固定する。
【0033】
続いて、図5(A)〜(E)に基づいて、本実施形態のスイッチモジュール1の製造工程を説明する。同図は図3のIV-IV線に沿うスイッチモジュール1の製造工程における半製品の断面を示す図である。
【0034】
まず、図5(A)に示すように、片面の導体張積層板Lを準備する。導体張積層板Lは、厚さが10μm〜250μmの可撓性を有するポリイミド(PI)などの絶縁性の基板10の一方主面に、銅などの金属箔11が張り付けられた板状部材である。絶縁性の基板10としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)やポリエステル(PE)などを用いることも可能である。
【0035】
次に、図5(B)に示すように、第1導電回路層20を形成する。図5(B)は第1導電回路層20が形成された基板10(半製品)の図3のIV-IV線に沿う断面図である。本実施形態では、まず、第1接点21、第1接点の配線21a、接点電極22、接点電極の配線22a、及び信号回路23に対応する所定形状のマスクを用いてレジストパターンを形成し、その後、塩化第二銅又はアルカリエッチャント液などを用いてエッチング処理を行い、金属箔11の所定領域を除去し基板10の主面10Aに第1導電回路層20を形成する。エッチング加工法は、公知のエッチャントを用いて、公知の手法を用いることができる。
【0036】
第1導電回路層20の形成手法は上述の手法に限定されず、絶縁性の基板10の主面に銀などの金属を含む導電性ペーストやカーボンペーストを用いて、第1導電回路層20のパターンに応じてスクリーン印刷をすることにより第1導電回路層20を形成してもよいし、スパッタ法により第1導電回路層20を形成してもよい。
【0037】
次に、図5(C)に示すように、第1導電回路層20の上に第1開口部34と第2開口部35が形成された絶縁層30を形成する。本実施形態の絶縁層30は、第1接点21と対向する位置に第1開口部34が形成され、接点電極22と対向する位置に第2開口部35が形成された厚さが5μm〜40μmのポリイミドフィルムからなるカバーレイフィルム32と接着層31とを含む。第1開口部34及び第2開口部35は、金型などにより打ち抜く手法により予め所定の位置に形成されている。本実施形態では、絶縁層30の第1開口部34の位置を第1接点21と対向する位置に合せるとともに、同じく絶縁層30の第2開口部35の位置を接点電極22と対向する位置に合せ、第1導電回路層20の上に積層する。
【0038】
接着層31及びカバーレイフィルム32の材質は特に限定されず、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などをベースにした材料を用いることができる。絶縁層30の形成手法は限定されず、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂をベースとしたカバーコートインクを用いてスクリーン印刷により形成することができる。
【0039】
次に、図5(D)に示すように、絶縁層30の主面に、第2導電回路層40を形成する。本実施形態では、絶縁層30の主面にカーボンペーストを用いて、第2導電回路層40のパターンに応じてスクリーン印刷をすることより第2導電回路層40を形成する。カーボンペーストの代わりに銀などの金属を含む導電性ペーストを用いることもできる。本工程のスクリーン印刷に用いられるスクリーン版には、第2接点41と、対向電極42と、導通回路43と、保護層45のパターン(図3に斜線で示すパターン)に応じた孔が形成されている。このスクリーン版を用いることにより、第2接点41と、対向電極42と、導通回路43と、保護層45を一度の印刷工程で同時に形成することができる。その結果、製造コストを低減させることができる。特に、第1接点21を覆う保護層を金めっきによって構成する場合に比べると、材料コスト及び作業コストを大幅に低減することができる。しかも、金めっき層を形成する場合に必要なリフロー工程を省くことができるため、スイッチモジュール1の寸法精度に影響を与える熱履歴も低減させることができる。
【0040】
次に、図5(E)に示すように、第2接点41とメタルドーム50の外縁部とが接するように固定シート60を用いてメタルドーム50を第2導電回路層40の上固定する。以上の工程によりスイッチモジュール1が作製される。
【0041】
続いて、実施例1について説明する。
【0042】
<実施例1>
同一の絶縁性基板10を備えた導体張積層板Lを準備し、共通の材料及び共通の方法を用いて共通の第1導電回路層20を形成した。そして、第2開口部35の開口部の直径のみが異なり、他の構成は共通する絶縁層30を第1導電回路層20に積層した。さらに、共通の材料及び共通の手法を用いて共通の第2導電回路層40を形成し、実施例1〜3及び比較例1に係るスイッチモジュールを作製した。
【0043】
第2開口部35の開口部の直径が0.3mmのものを実施例1とし、同直径が0.4mmのものを実施例2とし、同直径が0.5mmのものを実施例3とし、同直径が0.2mmのものを比較例1とした。
【0044】
続いて、実施例1〜3及び比較例1について、第1導電回路層20の接点電極22と、第1接点21を覆う保護層45との間に所定電圧を印加したときの接触抵抗を計測した。その結果を表1に示す。
【0045】
また、一定の接続信頼性を評価するための閾値を20Ωとし、実施例1〜3及び比較例1の接触抵抗を評価した。計測された抵抗値が閾値以上である場合は接続信頼性が不良である(×)と評価し、計測された抵抗値が閾値未満である場合は接続信頼性が良好である(○)と評価した。評価結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に示すように、第2開口部35の開口径φを0.3mm以上とすることにより、接触抵抗値を所定の閾値未満とすることができ、高い接続信頼性が確保できることが確認された。なお、第2開口部35の開口径φの上限は、接点電極22の大きさ及び接点電極の配線22aの太さに応じて適宜設定することができる。
【0048】
以上のように構成される本実施形態のスイッチモジュール1は、スルーホールを設けなくてもメタルドーム50の押圧操作に応じたスイッチ信号を取得することができる。スルーホールの形成は、位置合わせや削り屑の除去、さらにはめっき加工などの作業を伴うが、本実施形態のスイッチモジュール1はこれらの作業をしなくてもよいので、製造コストを低減させることができる。
【0049】
本実施形態のスイッチモジュール1は、比較的安価な片面の導体張積層板Lを用いて作製できるので加工コスト及び材料コストを低減させることができる。また、メタルドーム50のスイッチ信号を取得するための第1導電回路層20及び第2導電回路層40が、基板10の片面側のみに形成されるので、高い可撓性を有するスイッチモジュール50を得ることができる。
【0050】
ところで、メタルドームのスイッチ信号を取得するための回路や電極が基板の片面のみに形成されたスイッチモジュールとして、メタルドームの外周縁に接する外周電極に切り欠きを形成し、この切り欠きを介してメタルドームの頭頂部と接する中央電極から配線を引き出すものが知られている。
【0051】
しかし、この種のスイッチモジュールを製造する際には、外周電極に切り欠きを形成する加工、この切り欠き部分と中央電極からの配線とを絶縁させるための加工、さらにはメタルドームへの押圧力が均等に分散されるようにするために外周電極の高さと切り欠き部分の高さを揃える加工などの複雑で細かい作業が必要となる。しかも、これらの加工には高い精度が要求されるので、この種のスイッチモジュールの製造コストは高くなる傾向がある。
【0052】
これに対し、上述した本実施形態のスイッチモジュール1は、これらの複雑な加工をしなくても、スイッチ信号を取得するための回路や電極を基板の片面のみに形成することができるので、製造コストを低減させることができる。
【0053】
本実施形態のスイッチモジュール1では、基板10の一方主面10Aに、第1接点21及び接点電極22と絶縁されるとともに、絶縁層30を介して導通回路43と交差する信号回路23を設けたので、この導通回路43を、信号回路23を飛び越すジャンパ回路として機能させることができる。このため、本実施形態に係るスイッチモジュール1では、スイッチ信号を伝達するための第1接点21及び接点電極22とスイッチ信号以外の信号を伝達するための信号回路23を基板10の同一主面に形成することができる。また、本実施形態では、導通回路43の下部の比較的広い領域に、自由なレイアウト及び任意の密度で信号回路23を形成することができる。その結果、所望の効率的な配線が可能で、かつ高密度配線が可能なスイッチモジュール1を提供することができる。
【0054】
また、本実施形態のスイッチモジュール1では、第2導電回路層40の保護層45を酸化腐食性の低いカーボンペーストで構成することにより、カーボンペーストの印刷により形成された第2導電回路層40を最上層として、その上にメタルドーム50を直接配置することができる。
【0055】
一般に、第1接点21は銅などの金属により構成されているが、この場合は、第1接点21の酸化腐食を防止するための第1接点21を覆う金めっき層を形成する工程が必要となる。このため、材料コスト及び製造コストが高くなるという問題がある。これに対し、本実施形態のスイッチモジュール1では、第2導電回路層40の保護層45自体が酸化腐食性の低いカーボンペーストで構成されているので、別途第1接点21に金めっきなどをする必要が無い。その結果、材料コスト及び作業コストを大幅に低減することができる。
【0056】
同様に、本実施形態のスイッチモジュール1では、導通回路43を酸化腐食性の低いカーボンペーストで構成することにより、導通回路43の酸化腐食を防止することができる。一般に、ジャンパ回路は金属粉を含む導電性ペーストにより形成されている。この場合は、ジャンパ回路の酸化腐食を防止するためのジャンパ回路を覆う絶縁保護層を形成する工程がさらに必要となるので、材料コスト及び製造コストが高くなるという問題がある。これに対し、本実施形態のスイッチモジュール1では、ジャンパ回路として機能する導通回路43自体が酸化腐食性の低いカーボンペーストで構成されているので、別の絶縁保護層で導通回路43を覆う必要がないため、材料コスト及び製造コストを低減させることができる。
【0057】
上述したように、第1接点21を覆う金めっき層や信号回路23を覆う絶縁保護層を形成する必要が無いため、各工程の前後に行われるリフロー工程を省くことができるので、製品が受ける熱履歴を低減させることができる。その結果、熱処理による基板収縮などによる寸法誤差などの発生も防止することができる。
【0058】
第2導電回路層40の第2接点41、対向電極42、導通回路43及び保護層45は印刷により同時に形成することができるので、製造コストを低減させることができる。
【0059】
<第2実施形態>
以下において、本発明の第2実施形態に係るスイッチモジュール1を説明する。
【0060】
本実施形態のスイッチモジュール1は、第1開口部34の内周縁が第1接点21の外周縁よりも内側に位置する点以外は、第1実施形態と共通する。ここでは、重複した説明を避け、異なる点を中心に説明する。
【0061】
図6は本発明の第2実施形態に係るスイッチモジュール1の図2に示すA部分の拡大平面図であり、図7は図6のVII-VII線に沿う断面図である。
【0062】
図6及び図7に示すように、本実施形態では、円形の第1接点21の直径W2よりも、円形の第1開口部34の直径W1の方が短く構成されている。本実施形態において、第1接点21と第1開口部34の中心は共通するため、第1開口部34の内周縁は第1接点21の外周縁よりも内側に位置している。このため、第1開口部34の内周縁と第1接点21の外周縁との間に隙間がなく、第1開口部34の内周縁はその下層にある第1接点21により支持されている。
【0063】
このように、第1開口部34の内周縁と第1接点21の外周縁との間に隙間がないので、印刷されたカーボンペーストが隙間に入り込んで印刷面にかすれが生じることを防止することができる。また、下層にある第1接点21が第1開口部34の内周縁を下から支えることにより、印刷面に段差が生じるのを防ぐので、印刷面の段差によるかすれが生じることを防止することができる。印刷のかすれは接続信頼性を低下させる原因となるが、これを防ぐことで接続信頼性の高いスイッチモジュール1を提供することができる。
【0064】
ちなみに、先述の図4に示す第1実施形態に係るスイッチモジュール1は、第1開口部34の内周縁が第1接点21の外周縁よりも外側に位置している。このように構成されたスイッチモジュール1は、絶縁層30の第1開口部34の内周縁と第1接点21の外周縁との間に凹状の隙間が生じる。この隙間を含む面にカーボンペーストを印刷すると、カーボンペーストの物性やスクリーン印刷の条件によっては、時間の経過とともにカーボンペーストがこの隙間に流れ込み、第1開口部34の内周縁と第1接点21の外周縁との間でカーボンペースト層が不連続となる場合がある。第2導電回路層40を構成するカーボンペースト層に不連続部分が存在すると、回路が正常に機能せず、スイッチモジュール1の接続信頼性を低下させる原因となる。これに対し、本実施形態では、絶縁層30の第1開口部34の内周縁と第1接点21の外周縁との間に凹状の隙間が生じないようにできるので、接続信頼性の高いスイッチモジュール1を提供することができる。
【0065】
続いて、第2実施形態に係る実施例2について説明する。
【0066】
<実施例2>
共通の材料及び共通の手法を用いて、第1開口部34の内周縁が第1接点21の外周縁よりも外側に位置しているスイッチモジュール(図4参照)を実施例4として作製し(N=360個)、第1開口部34の内周縁が第1接点21の外周縁よりも内側に位置しているスイッチモジュール(図7参照)を実施例5として作製した(N=360個)。実施例4及び実施例5のそれぞれ360個のスイッチモジュールを目視により観察し、カーボンペースト層(第2導電回路層40)にかすれ(不連続な部分)が生じているスイッチモジュールの個数をカウントした。カーボンペースト層(第2導電回路層40)にかすれが生じたスイッチモジュールの個数が10個以上である場合は不要(×)と評価し、7個未満である場合は良好(○)と評価し、ゼロ個である場合は優秀(◎)と評価した。評価結果を表2に示す。
【0067】
【表2】

【0068】
表2に示すように、実施例4では、360個のスイッチモジュールのうち6個にカーボンペースト層のかすれが確認されたので良好と評価した。実施例5では、360個のスイッチモジュールのうちカーボンペースト層のかすれが確認されたものは無かった(ゼロ個)ので優秀と評価した。
【0069】
このように、本実施形態では、第1開口部34の内周縁が第1接点21の外周縁よりも内側に位置するように構成し、絶縁層30の第1開口部34の内周縁と第1接点21の外周縁との間に凹状の隙間ができないようにしたので、カーボンペーストの物性やスクリーン印刷の条件の影響を受けることなく、カーボンペースト層(第2導電回路層40)にかすれ(不連続な部分)が生じることを抑制することができた。
【0070】
<第3実施形態>
以下において、本発明の第3実施形態に係るスイッチモジュール1を説明する。本実施形態のスイッチモジュール1は、ダミー回路24を有する点以外は、第1実施形態と共通する。ここでは、重複した説明を避け、異なる点を中心に説明する。
【0071】
図8は本発明の第3実施形態に係るスイッチモジュールの図2に示されたA部分の拡大平面図、図9は図8のIX-IX線に沿う断面図である。
【0072】
図8及び図9に示すように、本実施形態のダミー回路24は、スイッチ回路としての機能を持たない回路パターンであり、基板10の一方主面10A上であって、導通回路43の下部の第1接点21の周囲に、内周の位置がS1かつ外周の位置がS2の環形状に形成されている。また、ダミー回路24の厚さは、第1接点21と同じ厚さに形成されている。
【0073】
図9に示すように、第1開口部34の内周縁の周囲は、その下層にあるダミー回路24により支持されている。なお、本実施形態では、第2実施形態と同様に、第1開口部34の内周縁が第1接点21の外周縁よりも内側に位置しているため、第1開口部34の内周縁はその下層にある第1接点21により支持されている。
【0074】
ちなみに、本実施形態のダミー回路24は、絶縁層30によって、第1接点21、接点電極22、信号回路23(ダミー回路24以外の第1導電回路20)及び第2接点42、導通回路43、対向電極42などの第2導電回路40と絶縁されており、情報伝達機能を備えていない。
【0075】
特に限定されないが、本実施形態のダミー回路24は、第1接点21、接点電極22、信号回路23(ダミー回路24以外の第1導電回路20)と共通の手法によって形成することができる。
【0076】
このように、第1導電回路層20を構成する第1接点21が第1開口部34の内周縁を下から支え、同じく第1導電回路層20を構成するダミー回路24が第1開口部34の内周縁の周囲を下から支えているため、絶縁層30の主面の高さを均等にして、第2導電回路層40の印刷面に段差が生じないようにすることができる。これにより、印刷面の段差によって生じる印刷のかすれの発生を防ぎ、第2導電回路層40に欠けが生じることを防ぐことができる。その結果、接続安定性の高いスイッチモジュール1を提供することができる。
【0077】
また、第1接点21とともにダミー回路24を設けることにより、第1接点21の上に位置する絶縁層30の主面領域(第1開口部34の内周縁)の硬さとダミー回路24の上に位置する絶縁層30の主面領域(第1開口部34の内周縁の周囲)の硬さを均等にすることができる。これにより、スクリーン印刷をする際に、スキージと絶縁層30との当接圧力を均等に調整できるので、均等な厚さの第2導電回路層40を印刷することができる。その結果、接続安定性の高いスイッチモジュール1を提供することができる。
【0078】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0079】
1…スイッチモジュール
10…基板
11…金属箔
L…導体張積層板
20…第1導電回路層
21…第1接点
21a…第1接点の配線
22…接点電極
22a…接点電極の配線
23…信号回路
24…ダミー回路
30…絶縁層
31…接着層
32…カバーレイフィルム
34…第1開口部(第1接点に対向する開口)
35…第2開口部(接点電極22に対向する開口)
40…第2導電回路層
41…第2接点
42…対向電極
43…導通回路
45…保護層
50…メタルドーム
50A…頭頂部、可動接点
60…固定シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の一方主面側に実装されたメタルドームと、を備えるスイッチモジュールであって、
前記基板の一方主面に形成され、前記メタルドームの頭頂部と対向する第1接点と、前記メタルドームの押圧操作に応じたスイッチ信号が入力又は出力される接点電極とを含む第1導電回路層と、
前記第1導電回路層に積層され、前記第1接点と前記接点電極に対向する位置にそれぞれ開口部を有する絶縁層と、
前記絶縁層の主面に形成され、前記メタルドームの外縁部に接する第2接点と、当該第2接点と前記接点電極を接続する導通回路を含む第2導電回路層と、を有することを特徴とするスイッチモジュール。
【請求項2】
前記第1導電回路層は、前記第1接点及び前記接点電極と絶縁された信号回路を含み、前記導通回路は前記絶縁層を介して前記信号回路と交差することを特徴とする請求項1に記載のスイッチモジュール。
【請求項3】
前記第2導電回路層は、前記第1接点を覆う保護層を含み、
前記第2導電回路層がカーボンペーストから形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチモジュール。
【請求項4】
前記接点電極に対向する位置に設けられた開口部は、直径0.3mm以上の円形であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のスイッチモジュール。
【請求項5】
前記第1接点に対向する位置に設けられた前記開口部の内周縁が前記第1接点の外周縁よりも内側に位置することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のスイッチモジュール。
【請求項6】
前記第1導電回路層は、前記導通回路の下部であって、前記第1接点の周囲に形成された前記第1接点と同じ厚さのダミー回路を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のスイッチモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−198728(P2011−198728A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67432(P2010−67432)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】