説明

スイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板、入力モジュール及び携帯機器

【課題】信頼性のあるスイッチングと良好なクリック感を確保し、カバーレイフィルムの破損を抑制できるスイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板、入力モジュール、携帯機器の提供を課題とする。
【解決手段】ベースフィルム51上に導電パターン52、カバーレイフィルム53を備え、導電パターンに第1、第2固定接点を備え、ドーム状可動接点を押動することで第1、第2固定接点間のスイッチングが行われるフレキシブルプリント配線板で、第1固定接点521のリード線521aを第2固定接点522の一部開放領域522aを介して外部に延長し、カバーレイフィルム53は第1、第2固定接点を露出状態に保持する一方、一部開放領域を通るリード線521aを被覆し、第1、第2固定接点の少なくとも一方のベースフィルム51上での高さを、カバーレイフィルム53で被覆される周囲の導電パターン52の高さよりも高くしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板、そのフレキシブルプリント配線板を用いた入力モジュール、そのモジュールを用いた携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、ノートパソコン、デジタルカメラ等の携帯機器においては、一般的に、入力モジュールを用いて所要の入力操作ができるようになされている。そして前記入力モジュールには、その構成の一部として、入力操作に伴ってスイッチ動作がなされるよう、スイッチング用の固定接点を導電パターン上に備えたフレキシブルプリント配線板が用いられたりする。
また前記携帯電話機等の携帯機器においては、入力キー等を備えた入力操作部からの押圧スイッチ操作を前記フレキシブルプリント配線板の一対の固定接点間における断接動作に結びつける仲介部材として、ドーム状の可動接点を用いる場合が多い。
前記ドーム状の可動接点を用いてスイッチングを行う従来技術として、例えば特開2002−157939号公報には、フレキシブルプリント回路のスイッチ構造が開示されている。この従来技術のスイッチ構造は、導電パターン(2b)上に設けられた一対の分断された固定接点に対し、その上にラバードーム(3)が配置された構造とされている。そしてラバードーム(3)が押されることで、カーボン接点(3d)(可動接点)が、前記一対の接点間を接続する構造とされている。
また特開2004−79442号公報には、携帯電話用キーシート・モジュールが開示されている。その図4には、回路基板上に構成される一対の固定接点として、島状の固定接点(6)とその周りを囲む環状の固定接点(5)が開示されている。そしてドームの接点ばね(4)が押されることで島状の固定接点(6)とその周囲を囲む環状の固定接点(5)とが接続される構造が開示されている。
また特開2007−141871号公報には、シートスイッチ及びその操作シートが開示されている。その図4Aには、回路基板上に構成される一対の固定接点として、島状の固定接点(5)とそれを囲む環状の固定接点(ターミナル6)とが開示されている。そして島状の固定接点(5)のリード線が環状の固定接点(ターミナル6)の囲みの一部開放領域から外部に延出されるようにした構造が開示されている。
【特許文献1】特開2002−157939号公報
【特許文献2】特開2004−79442号公報
【特許文献3】特開2007−141871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されるスイッチ構造では、一対の固定接点が単に両側に離間(分割)して配置される構造であるため、ラバードーム(3)を固定接点上に直接的に配置することはできない。なぜなら両固定接点同士が常時導通状態となってしまうからである。このため特許文献1のスイッチ構造では、ラバードーム(3)を両固定接点のより外側で且つ高い位置にあるカバーレイ(2c)上に設置する構造とされている。が、このような構造では、個々のラバードーム(3)の寸法をより大きくしなければならず、またスイッチングに必要なラバードーム(3)の屈曲深度をより大きくしなければならないという問題が生じる。勿論、特許文献1のスイッチ構造では、一対の固定接点が単に両側に離間されただけの配置であるので、1つの固定接点とそれを囲む環状の固定接点とからなる一対の固定接点を採用するものに比べて、スイッチング動作の確実性、信用性が劣るという問題もある。
【0004】
上記特許文献2に開示される従来技術は、一対の固定接点が島状の固定接点(6)とそれを囲む環状の固定接点(5)とからなる構造を採用するものである。そして両固定接点(5)(6)間での常時導通を防止するために、島状の固定接点(6)のリード線を基板(1)に設けたスルーホール(7)を介して反対側の基板表面に延出させる構造としている。しかし、このような構造では、基板の両面に及んで導電パターンを形成しなければならないという問題がある。
【0005】
上記特許文献3に開示される従来技術においては、メタルドーム(7)を環状の固定接点(ターミナル6)に設置する構造にした場合、メタルドーム(7)が固定接点(5)のリード線にも接地して常時導通状態になってしまう。このためメタルドーム(7)が接地するリード線部分はカバーレイ等の絶縁層で被覆することになる。が、そうするとカバーレイ等の絶縁層で被覆されたリード線部分の高さが環状の固定接点(6)の高さよりも高くなるため、結果として設置されるメタルドーム(7)の姿勢が傾く問題が生じる。
【0006】
上記特許文献3等の従来技術においてメタルドーム等のドーム状可動接点が傾く状況を、図9〜図11を用いて説明する。
図9はフレキシブルプリント配線板の平面図で、図10は図9のK−K断面図、図11は図9のL−L断面図である。
ベースフィルム100の一側表面に一対の固定接点210、220を設けた導電パターン200が積層され、更に前記一対の固定接点210、220を除いて導線パターン200を被覆するカバーレイフィルム300が積層されている。前記一対の固定接点210、220は、島状の第1固定接点210と、この第1固定接点210を囲む環状の第2固定接点220とからなる。第1固定接点210のリード線211は、第2固定接点220の囲みの一部開放領域221を通して、外部領域に延長されるように積層されている。そして前記第1固定接点210のリード線211部分が前記カバーレイフィルム300の一部分310で被覆されるようにしている。符号400はドーム状可動接点で、該ドーム状可動接点400が前記第2固定接点220上に設置され、一部は前記リード線211を被覆するカバーレイフィルム300の一部分310の上に設置されている。
前記ドーム状可動接点400が設置された状態のK−K断面が図10である。またL−L断面が図11である。図11でわかるように、ドーム状可動接点400は傾いた状態となる。また図10でわかるように、ドーム状可動接点400が部分的に浮いた状態となり、第2固定接点220への設置が不安定となる。このようなドーム状可動接点400の傾いた設置状態では、スイッチ動作の信頼性が低下し、またクリック感の低下を招く。更にドーム状可動接点400による接地面が偏在することで、ドーム状可動接点400が当接するカバーレイフィルム300の一部分310が破損しやすくなる。勿論、第1固定接点210までの接触深さが深くなることによる問題も生じる。
【0007】
なおドーム状可動接点400の形状を、丸形からその両側をカットした形状に変更しした可動接点を用い、可動接点がリード線211を被覆するカバーレイフィルム300の一部分310には着座しないようにすることも可能である。しかし、そのようなカットした形状の可動接点では可動接点の反発力が弱くなり、クリック感の低下につながる。
【0008】
そこで本発明は、上記従来技術におけるドーム状可動接点が傾くことによるスイッチングの信頼性低下、クリック感の低下、カバーレイフィルムの破損等の問題点を解決し、島状の固定接点とそれを囲む環状の固定接点とによる一対の固定接点を構成したフレキシブルプリント配線板において、ドーム状可動接点を組み合わせたスイッチングがなされる場合においても、スルーホールを介した両面導電パターンを構成することなく、ドーム状可動接点による信頼性のあるスイッチングと良好なクリック感とを確保し、またカバーレイフィルムの破損を抑制することができるスイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板の提供、またそのようなフレキシブルプリント配線板を用いた入力モジュール、そのモジュールを用いた携帯機器の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板は、ベースフィルム上に導電パターンと該導電パターンを被覆するカバーレイフィルムを備え、前記導電パターンにはスイッチング用の固定接点として第1固定接点とそれを囲む第2固定接点とを備え、前記固定接点に対して組み合わされるドーム状可動接点が押動されることで該ドーム状可動接点による前記第1固定接点と第2固定接点との間のスイッチングが行われるように構成してなるスイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板であって、
前記第1固定接点のリード線を前記第2固定接点の囲みの一部開放領域を介して外部領域に延長するように構成し、
前記カバーレイフィルムは、前記第1固定接点及び第2固定接点を被覆することなく露出状態に保持する一方、前記第2固定接点の囲みの一部開放領域を通るリード線を被覆するように構成し、
且つ前記第1固定接点と第2固定接点の少なくとも一方のベースフィルム上での高さを、カバーレイフィルムで被覆される周囲の導電パターンの高さよりも高く構成してあることを第1の特徴としている。
【0010】
上記本発明の第1の特徴において、第1固定接点のベースフィルム上での高さをカバーレイフィルムで被覆されている周囲の導電パターンの高さよりも高く構成すれば、ドーム状可動接点が第1固定接点に接地するのに必要な沈み込み深さが深くなりすぎるのを防止することができ、信頼性のあるスイッチングを確保できる。
また第2固定接点のベースフィルム上での高さを、カバーレイフィルムで被覆されている周囲の導電パターンの高さよりも高く構成すれば、第2固定接点とカバーレイフィルムとの高さの差をその分だけ小さくすることができ、ドーム状可動接点の設置姿勢が傾くの軽減することができる。よってドーム状可動接点による信頼性のあるスイッチングを確保することができ、良好なクリック感を維持することができる。またドーム状可動接点による押圧力の集中を緩和してカバーレイフィルムの耐破損性を改善することができる。
また第1固定接点と第2固定接点との両方におけるベースフィルム上での高さを、カバーレイフィルムで被覆される周囲の導電パターンの高さよりも高く構成すれば、ドーム状可動接点を第1固定接点に接地させるのに必要な沈み込み深さを浅くすることができると共に、ドーム状の可動接点の設置姿勢における傾きをより少なくすることができる。よって信頼性のあるスイッチングを確保し、また良好なクリック感を維持し、またカバーレイフィルムの耐破損性を改善することができる。
【0011】
また本発明のスイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1の特徴に加えて、第2固定接点のベースフィルム上での高さを、該第2固定接点の周囲にあるカバーレイフィルムのベースフィルム上での高さと同じ高さに構成してあることを第2の特徴としている。
【0012】
上記本発明の第2の特徴によれば、上記本発明の第1の特徴による作用効果に加えて、第2固定接点のベースフィルム上での高さを、該第2固定接点の周囲にあるカバーレイフィルムのベースフィルム上での高さと同じ高さに構成してあるので、ドーム状可動接点として、ドームの一部をカットした形状のものではなく丸形の可動接点を用いても、ドーム状可動接点の設置姿勢における傾きを無くすことができる。よってスルーホールを介した両面導電パターンを構成することなく、丸形のドーム状可動接点による信頼性のあるスイッチングを確保し、また良好なクリック感を維持し、カバーレイフィルムの耐破損性を向上させることができる。
【0013】
また本発明のスイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1の特徴に加えて、第1固定接点、第2固定接点及び第2固定接点の周囲にあるカバーレイフィルムのベースフィルム上での高さを同じ高さに構成してあることを第3の特徴としている。
【0014】
上記本発明の第3の特徴によれば、上記本発明の第1の特徴による作用効果に加えて、第1固定接点、第2固定接点及び第2固定接点の周囲にあるカバーレイフィルムのベースフィルム上での高さを同じ高さに構成してあるので、
ドーム状可動接点として、ドームの一部をカットした形状のものではなく、丸形の可動接点を用いても、ドーム状可動接点の設置姿勢における傾きを無くすことができる。よってスルーホールを介した両面導電パターンを構成することなく、ドーム状可動接点による信頼性のあるスイッチングを確保し、また良好なクリック感を維持し、カバーレイフィルムの耐破損性を向上させることができる。
加えて、第1固定接点も第2固定接点やその周囲のカバーレイフィルムと同じ高さにあるので、ドーム状可動接点を第1固定接点に接地させるのに必要な沈み込み深さが深くなりすぎるのを防止することができ、確実なスイッチングができる。またドーム状可動接点の耐破損性を十分に確保することができる。
【0015】
また本発明のスイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板は、上記第1〜第3の何れか1つの特徴に加えて、第1固定接点、第2固定接点、カバーレイフィルムの高さ調整は、それらに対応する導電パターン部分の積層厚を増肉若しくは減肉することによってなされていることを第4の特徴としている。
【0016】
上記第4の特徴によれば、上記第1〜第3の何れか1つに記載の特徴による作用効果に加えて、第1固定接点、第2固定接点、カバーレイフィルムの高さ調整は、それらに対応する導電パターン部分の積層厚を増肉若しくは減肉することによってなされているので、第1固定接点、第2固定接点、カバーレイフィルムの高さ調整を簡単に行うことができる。
【0017】
また本発明の入力モジュールは、上記第1〜第4の特徴の何れか1つに記載のスイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板と、該配線板に組み合わされるドーム状可動接点と、該ドーム状可動接点に対して入力操作による押圧力を作用させる入力操作部とを少なくとも備えたことを第5の特徴としている。
【0018】
上記本発明の第5の特徴に記載の入力モジュールによれば、スルーホールを介した両面導電パターンを構成したフレキシブルプリント配線板を用いることなく、ドーム状可動接点を用いた信頼性、耐久性のあるスイッチングを確保し、また良好なクリック感を得ることができる。
【0019】
また本発明の携帯機器は、上記第5の特徴に記載の入力モジュールを少なくとも備えたことを第6の特徴としている。
【0020】
上記第6の特徴による携帯機器によれば、スルーホールを介した両面導電パターンを構成したフレキシブルプリント配線板を用いることなく、ドーム状可動接点を用いて信頼性、耐久性のあるスイッチングを確保し、また良好なクリック感を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のスイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板、入力モジュール及び携帯機器によれば、ドーム状の可動接点を用いたものにおいて、信頼性のあるスイッチングと良好なクリック感を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下の図面を参照して、本発明の実施の形態に係るスイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板、入力モジュール及び携帯機器を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の実施形態であって、特許請求の範囲に記載の内容を限定するものではない。
【0023】
図1は本発明の第1の実施形態に係る携帯機器としての携帯電話機を示す斜視図、図2は図1に示す携帯電話機の入力モジュールの平面図、図3は図2に示す入力モジュールの一部を示す断面図、図4は入力モジュールに用いられるフレキシブルプリント配線板に設けられたスイッチング用の固定接点を示す平面図、図5は図4のA−A断面図で、フレキシブルプリント配線板のスイッチング用の固定接点にドーム状可動接点を組み合わせた状態を示す。図6は図4のB−B断面図で、フレキシブルプリント配線板のスイッチング用の固定接点にドーム状可動接点を組み合わせた状態を示す。
【0024】
先ず図1を参照して、本実施形態に係る携帯電話機1は、入力部1aと表示部1bとを備える。表示部1bはヒンジ部1cを介して入力部1aに開閉自在とされている。
【0025】
図2、3も参照して、前記入力部1aには、そのケース内に入力モジュール2を備えている。入力モジュール2には、入力操作部10、導光部20、ドームスイッチ部30、LED等の光源40、フレキシブルプリント配線板50を備えている。
【0026】
前記入力操作部10は、入力操作を行う部分で、前記入力部1aに露出した入力キー11及び該入力キー11と一体に成形された入力シート12とからなる。入力シート12及び入力キー11はラバーで構成することができる。
前記導光部20は、光源40からの光を前記入力操作部10の入力キー11に導き、急力キー11を光らすためのものである。導光板21に光の反射パターン22が形成されている。23は押圧用凸部で、導光部20に設けられているが、入力操作部10に設けてもよい。
【0027】
前記ドームスイッチ部30には、ドームメタルと称するドーム状可動接点31とそれをバックアップするラバー等の軟質弾性シートからなるドームシート32とを備えている。このドームスイッチ部30はフレキシブルプリント配線板50上に配置されている。
フレキシブルプリント配線板50は、ベースフィルム51とその上面に構成された導電パターン52と、更にその導電パターン52を被覆するカバーレイフィルム53を備えている。
前記ベースフィルム51はポリイミド等の絶縁性の樹脂材料を用いることができる。
導電パターン52は、例えば銅箔によるパターンをベースフィルム51上に形成して構成することができる。
前記カバーレイフィルム53もポリイミド等の絶縁性の樹脂材料を用いることができる。
【0028】
図4も参照して、前記導電パターン52には、その一部にスイッチング用の固定接点として、第1固定接点521と第2固定接点522とを備えている。
第1固定接点521は島状の固定接点とされ、第2固定接点522は第1固定接点521の周囲を囲む環状の固定接点とされている。第2固定接点522上に設置された上記ドーム状可動接点31が押動されることで、該ドーム状可動接点31の中央部が下方に沈み込み、第1固定接点521に接地する。この接地によって第1固定接点521と第2固定接点522とがドーム状可動接点31を介して導通する。
第1固定接点521のリード線521aは、第2固定接点522の囲みの一部開放領域522aを介して外部領域へと延長されている。リード線521aをこのように構成することで、ベースフィルム51にスルーホールを設けなくても、第1固定接点521と第2固定接点522との常時導通状態を避けることができる。
前記カバーレイフィルム53は、前記第1固定接点521と第2固定接点522とについては、これらを被覆することなく露出状態に保持している。ただし、前記第2固定接点522の囲みの一部開放領域522aを通る第1固定接点521のリード線521a部分を、カバーレイフィルム53のリード線被覆部531で被覆するように構成している。このように構成することで、前記ドーム状可動接点31を環状の第2固定接点522上に設置して組み合わせても、第1固定接点522と第2固定接点522とが常時導通状態となるのを避けることができる。
【0029】
図5、図6を参照して、本実施形態では第2固定接点522のベースフィルム51上での高さを、該第2固定接点522の周囲にあるカバーレイフィルム53のベースフィルム51上での高さと同じ高さにしている。より詳細に言えば、第2固定接点522の高さを前記カバーレイフィルム53のリード線被覆部531の高さと同じにしている。これによって、ドーム状可動接点31の環状の下端面が第2固定接点522上及びその第2固定接点522と面一のリード線被覆部531上に接面することになり、ドーム状可動接点31が傾くことがなく設置される。即ち、ドーム形状の何れの部分もカットされることのない丸形のドーム状可動接点31を用いても、この丸形の可動接点31が傾いて設置されることがなくなる。傾斜設置がなされないので、押圧力が偏在して加わることもなく全体に均等に加わり、結果としてカバーレイフィルム53のリード線被覆部531や第2固定接点522やドーム状可動接点31の耐破損性が向上する。勿論、ドーム状可動接点31が傾かないので、信頼性のあるスイッチングと良好なクリック感とを確保できる。
また丸形の可動接点31を用いる場合は、一部をカットしたものに比べて、クリック感が確保しやすい。
【0030】
前記第2固定接点522の高さを、カバーレイフィルム53の高さと同じ高さにするため、本実施形態では、基本となる導電パターン52の第2固定接点522に対応する部分に対して導電性金属の鍍金を施し、これにより第2固定接点522の積層厚を増肉して高くするように構成している。
一方、第1固定接点521は、元の導電パターン52の積層厚のままで、増肉による積層厚の増加は行っていない。
【0031】
図7、図8を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。図7は第1実施形態における図4のA−A断面に相当する断面図で、フレキシブルプリント配線板のスイッチング用の固定接点にドーム状可動接点を組み合わせた状態を示す。図8は図4のB−B断面に相当する断面図で、フレキシブルプリント配線板のスイッチング用の固定接点にドーム状可動接点を組み合わせた状態を示す。
【0032】
本第2実施形態では、第1固定接点521及び第2固定接点522のベースフィルム51上での高さを、周囲にあるカバーレイフィルム53のベースフィルム51上での高さと同じ高さにしている。より詳細に言えば、第1固定接点521と第2固定接点522との高さを前記カバーレイフィルム53のリード線被覆部531の高さと同じにしている。
これによってドーム状可動接点31が傾くことがなく、第2固定接点522及びカバーレイフィルム53のリード線被覆部531上に設置することができる。丸形のドーム状可動接点31を用いても傾斜状態になることがないので、押圧力が全体に均等に加わり、カバーレイフィルム53のリード線被覆部531や第2固定接点522やドーム状可動接点31の耐破損性が向上する。勿論、ドーム状可動接点31が傾かないので、信頼性のあるスイッチングと良好なクリック感とを確保できる。
また第1固定接点521の高さが第2固定接点522やカバーレイフィルム53のリード線被覆部531の高さと同じであるので、ドーム状可動接点31の必要沈み込み深さが深くなりすぎることがなく、安定した信頼性のあるスイッチングが確保できると共に、耐破損性を良好に維持できる。
【0033】
前記第1固定接点521、第2固定接点522の高さを、カバーレイフィルム53の高さと同じ高さにするため、本実施形態では、基本となる導電パターン52の第1固定接点521に対応する部分及び第2固定接点522に対応する部分に対して、導電性金属の鍍金を施し、これにより第1固定接点521及び第2固定接点522の積層厚を増肉して高くするように構成している。
【0034】
上記第1の実施形態及び第2の実施形態においては、第1固定接点521や第2固定接点522の積層厚を鍍金等で増加させることで、それらの高さをカバーレイフィルム53のリード線被覆部531と同じ高さに調整している。しかし、代わりに第1固定接点521のリード線521a部分の積層厚、即ち肉厚を、エッチング等により減肉することで、そのリード線521a部分を被覆するカバーレイフィルム53のリード線被覆部531のベースフィルム51上での高さを低く減じることで、該リード線被覆部531と第2固定接点522との高さを同じ高さにするようにしてもよい。
【0035】
また上記第1の実施形態及び第2の実施形態においては、第2固定接点522をカバーレイフィルム53(リード線被覆部531)の高さと同じ高さにし、また第1固定接点521と第2固定接点522との両方をカバーレイフィルム53(リード線被覆部531)の高さと同じにしたが、必ずしも同じ高さに一致させなければならないものではない。第1固定接点521と第2固定接点522の少なくとも一方のベースフィルム上での高さを、周囲の導電パターン52の積層厚(積層高さ)よりも高くすることで、それらのカバーレイフィルム53(リード線被覆部531)との高さの差を少なくするようにしてもよい。これによってドーム状可動接点31が傾いて設置されるのを軽減し、スイッチングの信頼性の低下、クリック感の低下を予防し、またカバーレイフィルム53の耐破損性の低下を予防するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、携帯電話等の携帯機器、それに用いられる入力モジュール、それに用いられるフレキシブルプリント配線板として、産業上利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る携帯機器としての携帯電話を示す斜視図である。
【図2】携帯電話機の入力モジュールの平面図である。
【図3】図2に示す入力モジュールの一部を示す断面図である。
【図4】入力モジュールに用いられるフレキシブルプリント配線板に設けられたスイッチング用の固定接点を示す平面図である。
【図5】図4のA−A断面図で、フレキシブルプリント配線板のスイッチング用の固定接点にドーム状可動接点を組み合わせた状態を示す。
【図6】図4のB−B断面図で、フレキシブルプリント配線板のスイッチング用の固定接点にドーム状可動接点を組み合わせた状態を示す。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る携帯機器の入力モジュールに用いられるフレキシブルプリント配線板にドーム状可動接点を組み合わせた状態を示す断面図で、図4のA−A断面に相当する断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る携帯機器の入力モジュールに用いられるフレキシブルプリント配線板にドーム状可動接点を組み合わせた状態を示す断面図で、図4のB−B断面に相当する断面図である。
【図9】従来技術を説明するフレキシブルプリント配線板の平面図である。
【図10】図9のK−K断面図である。
【図11】図9のL−L断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 携帯電話機
1a 入力部
1b 表示部
1c ヒンジ部
2 入力モジュール
10 入力操作部
11 入力キー
12 入力シート
20 導光部
21 導光板
22 反射パターン
23 押厚用凸部
30 ドームスイッチ部
31 ドーム状可動接点
32 ドームシート
40 光源
50 フレキシブルプリント配線板
51 ベースフィルム
52 導電パターン
53 カバーレイフィルム
521 第1固定接点
521a リード線
522 第2固定接点
522a 一部開放領域
531 リード線被覆部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルム上に導電パターンと該導電パターンを被覆するカバーレイフィルムを備え、前記導電パターンにはスイッチング用の固定接点として第1固定接点とそれを囲む第2固定接点とを備え、前記固定接点に対して組み合わされるドーム状可動接点が押動されることで該ドーム状可動接点による前記第1固定接点と第2固定接点との間のスイッチングが行われるように構成してなるスイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板であって、
前記第1固定接点のリード線を前記第2固定接点の囲みの一部開放領域を介して外部領域に延長するように構成し、
前記カバーレイフィルムは、前記第1固定接点及び第2固定接点を被覆することなく露出状態に保持する一方、前記第2固定接点の囲みの一部開放領域を通るリード線を被覆するように構成し、
且つ前記第1固定接点と第2固定接点の少なくとも一方のベースフィルム上での高さを、カバーレイフィルムで被覆される周囲の導電パターンの高さよりも高く構成してあることを特徴とするスイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
第2固定接点のベースフィルム上での高さを、該第2固定接点の周囲にあるカバーレイフィルムのベースフィルム上での高さと同じ高さに構成してあることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
第1固定接点、第2固定接点及び第2固定接点の周囲にあるカバーレイフィルムのベースフィルム上での高さを同じ高さに構成してあることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
第1固定接点、第2固定接点、カバーレイフィルムの高さ調整は、それらに対応する導電パターン部分の積層厚を増肉若しくは減肉することによってなされていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のスイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1つに記載のスイッチング用の固定接点を備えたフレキシブルプリント配線板と、該配線板に組み合わされるドーム状可動接点と、該ドーム状可動接点に対して入力操作による押圧力を作用させる入力操作部とを少なくとも備えたことを特徴とする入力モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の入力モジュールを少なくとも備えたことを特徴とする携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−205885(P2009−205885A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45523(P2008−45523)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】