説明

スイッチング電源装置

【課題】 電子回路負荷の電力が少ない洗濯機、食器洗い機その他小電力負荷に使用されるRCC方式のスイッチング電源装置において、スイッチングトランジスタがオン時のスパイク電流を減少させるとともにオン時損失を減少させ、雑音端子電圧を減少し、スイッチングトランジスタの損失すなわち温度上昇を低減する。
【解決手段】 スイッチングトランス1の制御巻線1bとスイッチングトランジスタ3のベースとの間に、抵抗8とこの抵抗8に直列に接続したスイッチング高速化のためのコンデンサ7を接続し、スイッチングトランジスタ3のベースとスイッチングトランス1の制御巻線1bの基準電位との間にコンデンサ9を接続し、スイッチングトランス1のコレクタに抵抗11とコンデンサ10の直列接続によるスナバ回路を接続する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子回路負荷の電力が少ない洗濯機、食器洗い機その他小電力負荷に使用されるRCC方式のスイッチング電源装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、RCC方式のスイッチング電源装置は、図2に示すように構成していた。以下、その構成に付いて説明する。
【0003】図2に示すように、スイッチングトランス1は、メイン巻線1a、制御巻線1bと2次巻線1cにより構成している。このスイッチングトランス1の巻線の極性はRCC方式スイッチング電源装置の極性であり、メイン巻線1aと制御巻線1bは同相で動作し、メイン巻線1aと2次巻線1cは逆相で動作する。
【0004】コンデンサ2は、スイッチング電源装置の大元の直流電源装置となっている。スイッチングトランジスタ3は、エミッタに抵抗4を接続し、この抵抗4に並列にトランジスタのベースエミッタ間を接続し、抵抗4に流れる電流がトランジスタ5のベースエミッタ間オン電圧まで上昇するとトランジスタ5はオンする。
【0005】ダイオード6は、スイッチングトランジスタ3とスイッチングトランス1の制御巻線1bの間に接続し、制御巻線電圧が上昇するとこのダイオード6を通ってスイッチングトランジスタ3にバイアス電流を供給する。コンデンサ7は、ダイオード6に並列に接続しており、このコンデンサ6によりスイッチングのスピードアップを図っている。
【0006】抵抗8は、ダイオード6と直列に接続し、スイッチングトランジスタ3へのバイアス電流を制限するものである。トランジスタ5のコレクタおよびエミッタは、一端を抵抗8とスイッチングトランジスタ3のベースの接続点に接続し、他端を制御巻線1bの基準電位側および抵抗4の接続点に接続している。
【0007】コンデンサ10と抵抗11は直列接続して、スナバ回路(以下、CRスナバ回路という)を構成し、その一端はスイッチングトランジスタ3のコレクタとスイッチングトランス1のメイン巻線1aの接続点に接続し、他端はコンデンサ2の高電位側に接続している。
【0008】フォトカプラ12はフォトトランジスタ12aとフォトダイオード12bとで構成し、フォトトランジスタ12aのコレクタはダイオード6のカソードに接続し、エミッタはトランジスタ5のベースに接続している。ダイオード13とコンデンサ14はスイッチングトランジスタ1の2次巻線に接続し、2次整流回路を形成している。定電圧ダイオード15はフォトダイオード12bと直列接続し、コンデンサ14に並列に接続している。抵抗16は、コンデンサ2の高電位側とスイッチングトランジスタ3のベースに接続している。
【0009】上記構成において動作を説明する。コンデンサ2に電圧が与えられると、起動用の抵抗16によりスイッチングトランジスタ3がオンする。スイッチングトランジスタ3がオンすると、スイッチングトランジスタ1のメイン巻線1aに電圧が発生し、これにより制御巻線bにも電圧が発生し、スイッチングトランジスタ3にバイアスが与えられ、さらに電流が増加する。
【0010】この電流がエミッタ抵抗4に流れ、その電圧がトランジスタ5のベースエミッタ間オン電圧に到達すると、トランジスタ5がオンし、スイッチングトランジスタ3のベースバイアス電流を引き込んで、スイッチングトランジスタ3はオフとなる。
【0011】スイッチングトランジスタ3がオフすると、スイッチングトランス1の2次巻線1cに電圧が発生し、ダイオード13およびコンデンサ14の整流回路により2次直流電圧が発生する。この状態が繰り返し、2次出力電圧が定電圧ダイオード15の動作電圧とフォトダイオード12bのオン電圧の和に到達するとフォトカプラが動作を始め、これにより2次出力電圧を安定化するように動作を始める。
【0012】すなわち、2次電圧が上昇しようとするとフォトダイオード12bに電流が流れ、これによりフォトトランジスタ12aが動作し、トランジスタ5のベースにバイアス電流を供給し、これによりトランジスタ5がオンして、スイッチングトランジスタ3をオフにするという帰還動作を行う。以上はRCC方式のスイッチング電源装置の動作である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の構成では、CRスナバ回路に蓄積された電荷により、スイッチングトランジスタ3がオンのとき、スパイク状の電流が流れ、ノイズ源となり、また損失の発生源となっていた。
【0014】本発明は上記従来の課題を解決するもので、スイッチングトランジスタがオン時のスパイク電流を減少させるとともにオン時損失を減少させ、雑音端子電圧を減少し、スイッチングトランジスタの損失すなわち温度上昇を低減することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、スイッチングトランスの制御巻線とスイッチングトランジスタのベースとの間に、抵抗とこの抵抗に直列に接続したスイッチング高速化のためのコンデンサを接続し、スイッチングトランジスタのベースとスイッチングトランスの制御巻線の基準電位との間にコンデンサを接続し、スイッチングトランスのコレクタに抵抗とコンデンサの直列接続によるスナバ回路を接続したものである。
【0016】これにより、スイッチングトランジスタがオン時のスパイク電流を減少させるとともにオン時損失を減少させ、雑音端子電圧を減少でき、スイッチングトランジスタの損失すなわち温度上昇を低減することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明は、スイッチングトランスの制御巻線とスイッチングトランジスタのベースとの間に接続した抵抗とこの抵抗に直列に接続したスイッチング高速化のためのコンデンサと、前記スイッチングトランジスタのベースとスイッチングトランスの制御巻線の基準電位との間に接続したコンデンサと、前記スイッチングトランスのコレクタに接続した抵抗とコンデンサの直列接続によるスナバ回路を備えたものであり、スイッチングトランジスタのベースのオンタイミングをずらせることにより、抵抗とコンデンサからなるスナバ回路とスイッチングトランスその他パターンなどによるインダクタンスとの共振によるスナバ回路のエネルギーを消費させるとともに、コレクタ電圧が一定値低下したところでオンさせることにより、スパイク電流を低減し、ノイズの発生とトランジスタによる損失とを低減することができる。
【0018】
【実施例】以下、本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、従来例と同じ構成のものは同一符号を付して説明を省略する。
【0019】図1に示すように、コンデンサ9は、一端を抵抗8とスイッチングトランジスタ3のベースの接続点に接続し、他端を制御巻線1bの基準電位側および抵抗4の接続点に接続している。トランジスタ5のコレクタおよびエミッタはコンデンサ9と並列に接続している。他の構成は従来例と同じである。
【0020】上記構成において動作を説明する。なお、RCC方式のスイッチング電源装置の基本的な動作は従来例の動作と同じであるので説明を省略する。
【0021】コンデンサ7は、スイッチングトランジスタ3のベースバイアス回路にダイオード6と並列に接続し、ベースバイアス電圧に急峻な変化を与えるものであり、これによりスピードアップを図り、スイッチングの高速化を行うものである。一方、コンデンサ9は、抵抗8との組合せにより時定数回路を構成するものであり、時間遅れと電圧変化の鈍りを発生させるものである。
【0022】ここで、スイッチングトランジスタ3のスイッチングオンとスイッチングオフのときの動作を説明する。
【0023】スイッチングオフ時には、抵抗11、コンデンサ10の直列接続によるスナバ回路により、コレクタ電圧の上昇を遅らせることにより損失を減少することができる。
【0024】スイッチングオン時には、コンデンサ7によりダイオード6のカソード電圧は制御巻線1bの電圧発生と同時に急峻に上昇する。この急峻に上昇した電圧を抵抗8とコンデンサ9により時間遅れを発生させ、電圧上昇の速度を遅らせている。
【0025】電圧上昇の速度鈍化は、スイッチング速度を遅らせることとなり、スイッチングオン時の損失が増える。しかしながらスイッチング時間が遅れることにより、スイッチングオン時のコレクタ電圧を低下させ、また、オンタイミングを遅らせている間にスナバ回路とメイン巻線1aその他のインダクタンスとの共振によりエネルギーロスを発生させることとなり、コレクタ電圧が一定値低下したところでオンさせることにより、抵抗8とコンデンサ9によりオン時のスイッチングスピードは遅くなるが、総合的に見るとコンデンサ3がないときの動作に比べ、スパイク電流の減少および電圧電流により、スイッチングトランジスタ3の損失を減少することができる。
【0026】
【発明の効果】以上のように本発明の請求項1に記載の発明によれば、スイッチングトランスの制御巻線とスイッチングトランジスタのベースとの間に接続した抵抗とこの抵抗に直列に接続したスイッチング高速化のためのコンデンサと、前記スイッチングトランジスタのベースとスイッチングトランスの制御巻線の基準電位との間に接続したコンデンサと、前記スイッチングトランスのコレクタに接続した抵抗とコンデンサの直列接続によるスナバ回路を備えたから、スイッチングトランジスタのベースのオンタイミングをずらせることにより、抵抗とコンデンサからなるスナバ回路とスイッチングトランスその他パターンなどによるインダクタンスとの共振によるスナバ回路のエネルギーを消費させるとともに、コレクタ電圧が一定値低下したところでオンさせることにより、スイッチングオン時のスイッチング速度は下がるが、オンタイミングを遅らせることによりこの間のスナバ回路のエネルギー放出と、コレクタ電圧の低下を待ってオンさせることができ、スパイク電流を低減し、スイッチングトランジスタのオン時の損失を低減することができ、雑音端子電圧およびスイッチングトランジスタの温度上昇を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のスイッチング電源装置の回路図
【図2】従来のスイッチング電源装置の回路図
【符号の説明】
1 スイッチングトランス
1b 制御巻線
3 スイッチングトランジスタ
7 コンデンサ
8 抵抗
9 コンデンサ
10 コンデンサ
11 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】 スイッチングトランスの制御巻線とスイッチングトランジスタのベースとの間に接続した抵抗とこの抵抗に直列に接続したスイッチング高速化のためのコンデンサと、前記スイッチングトランジスタのベースとスイッチングトランスの制御巻線の基準電位との間に接続したコンデンサと、前記スイッチングトランスのコレクタに接続した抵抗とコンデンサの直列接続によるスナバ回路を備えたRCC方式のスイッチング電源装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【公開番号】特開2003−9526(P2003−9526A)
【公開日】平成15年1月10日(2003.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−187716(P2001−187716)
【出願日】平成13年6月21日(2001.6.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】