説明

スイッチング電源装置

【課題】 異常が生じた場合であっても、内部素子を破壊することなく出力電圧の上昇を防止して出力電圧を供給する負荷の過電圧保護を図ることができるとともに、小型化、低コスト化することができるスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】 入力直流電圧Vinが与えられコイル22に流れる電流をスイッチングするFET13と、FET13のオン期間にコイル22に蓄積されたエネルギーを放出する電流経路を形成するダイオード21と、コイル22に流れる電流で充電される平滑コンデンサ23とを備え、平滑コンデンサ23の電圧を出力電圧Voutとするステップダウン型のスイッチング電源装置10において、FET13とコイル22との間に接続され、導通状態/遮断状態とに切り換わるFET15と、出力電圧Voutが所定の電圧よりも高くなったことを検出した場合にFET15を遮断状態にする過電圧検出器17とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力直流電圧をそれよりも低い直流電圧に変換して出力するステップダウン型のスイッチング電源装置に関するものであり、特に、出力電圧の上昇を防止して出力電圧を供給する負荷の過電圧保護を図ったスイッチング電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノート型パーソナルコンピュータやIP(Internet Protocol)電話機等の各種電子機器に使用されるACアダプタやバッテリから供給される直流電圧は、一般に、電子機器内のマイクロコンピュータに代表されるロジック回路部品等を動作させるのに必要な電圧よりも高い電圧になっている。
【0003】
そこで、ACアダプタやバッテリから供給される直流電圧をロジック回路部品等の動作電圧まで降下させるための電源装置として、少数の素子で構成できるとともに電源効率が良く、小型化、低消費電力化に有利なチョッパ方式のステップダウン型スイッチング電源装置が広く用いられている。
【0004】
このようなスイッチング電源装置には、入力直流電圧が変動しても出力電圧は一定となるように制御されているものが多く、スイッチング電源装置が正常に動作している場合は、このスイッチング電源装置の出力ラインに接続されているロジック回路部品等に過電圧が印加されることはないが、スイッチング電源装置に異常が発生した場合、入力直流電圧がそのままロジック回路部品等に印加され、ロジック回路部品等が過電圧で破壊されてしまうということがあった。
【0005】
そこで、スイッチング電源装置に異常が発生した場合であっても、入力直流電圧がそのままロジック回路部品等に印加されてしまうのを防止するため、従来より、過電圧保護機能を有したスイッチング電源装置が用いられている。
【0006】
図2は、従来のスイッチング電源装置の電気的構成を示す回路ブロック図である。図2において、50はスイッチング電源装置であり、スイッチング電源装置50は、入力端子51、出力端子52、FET(電界効果トランジスタ)53、FET55、コントローラIC(Integrated Circuit)56、及び、ダイオード61とコイル62と平滑コンデンサ63とから成る整流平滑回路54を備えている。
【0007】
入力端子51は、ACアダプタやバッテリ等である外部の直流電源1に接続されており、入力端子51には直流電源1から入力直流電圧Vinが供給されている。また、出力端子52には、ロジック回路部品等の負荷2に負荷2の動作電圧であり入力直流電圧Vinより低い直流電圧である出力電圧Voutを供給する出力ライン3が接続されている。
【0008】
スイッチング電源装置50の内部では、FET53の主端子の一端は入力端子51に接続され、FET53の主端子の他端はアノードをグランドに接続したダイオード61のカソードとコイル62の一端とに接続されている。そして、コイル62の他端は平滑コンデンサ63を介してグランドに接続されるとともに、FET55を介して出力端子52に接続されている。
【0009】
また、FET53の制御端子は、入力直流電圧Vinを動作電源としてFET53のオン/オフ制御を行うコントローラIC56に接続され、コントローラIC56には平滑コンデンサ63の電圧がフィードバックされるようになっている。また、FET55の制御端子にも平滑コンデンサ63の電圧が与えられるようになっている。
【0010】
次に、このような構成のスイッチング電源装置50の動作を説明する。入力直流電圧Vinが与えられるとコントローラIC56は動作を開始し、フィードバックされた平滑コンデンサ63の電圧に基づいたパルス信号をFET53の制御端子に与える。FET53はこのパルス信号に応じてオン/オフを繰り返し、入力直流電圧Vinをスイッチングしたパルス電圧を生成する。
【0011】
そして、このパルス電圧が整流平滑回路54で整流、平滑された後、負荷2に供給される。この場合、FET53がオンのときは、入力端子51からコイル62に電流が流れ、これによりコイル62にエネルギーが蓄積されるとともに、FET55を介して負荷2にエネルギーが供給される。
【0012】
一方、FET53がオフのときは、コイル62に蓄積されたエネルギーがダイオード61を通じFET55を介して負荷2に供給される。尚、平滑コンデンサ63はコイル62を流れる電流で充電され、出力端子52にはこの平滑コンデンサ63によって平滑化された出力電圧Voutが発生し、この出力電圧Voutが出力ライン3を介して負荷2に供給される。
【0013】
出力電圧Voutの電圧値は、FET53のオン/オフのデューティによって定まり、FET53のオン/オフのデューティはコントローラIC56によって平滑コンデンサ63の電圧に応じて調整されるので、出力電圧Voutは所定の電圧値に一定に保たれることになる。
【0014】
従って、スイッチング電源装置50が正常に動作している場合は、負荷2に出力電圧Voutの前記所定の電圧値を越える電圧が印加されることはないが、スイッチング電源装置50に異常が発生した場合、例えば、FET53が熱暴走や静電気破壊によりショートモードで故障した場合や、コントローラIC56がFET53をオンさせ続けてしまうような状態で故障した場合等には、入力直流電圧Vinがそのまま負荷2に印加されることになる。
【0015】
このようにスイッチング電源装置50に異常が発生した場合、例えば、IP電話機に搭載されるスイッチング電源装置は、48Vの入力直流電圧からIP電話機に搭載された動作電圧3.3Vのマイクロコンピュータ等のロジック回路部品等に供給する出力電圧を生成するようになっており、動作電圧3.3Vのロジック回路部品等の耐圧はそれほど高く設定されていないので、48Vが印加されたロジック回路部品等は、過電圧で破壊されてしまうことになる。
【0016】
そこで、スイッチング電源装置50に異常が発生した場合であっても、入力直流電圧Vinがそのまま負荷2に印加されることを防止するために、FET55が整流平滑回路54と出力端子52との間に設けられており、平滑コンデンサ63の電圧が所定の電圧、例えば、負荷2の耐圧を超える電圧になったときにはFET55が遮断状態となって整流平滑回路54と出力端子52との接続を遮断する。
【0017】
これにより、入力直流電圧Vinがそのまま、負荷2に印加されることがなくなり、このようにして、負荷2の過電圧保護が図られている。
【0018】
また、同期整流方式非絶縁DC−DCコンバータにおいて、平滑コンデンサ間の端子間電圧と所定の基準電圧とを比較して前記端子間電圧値が前記基準電圧値以上であることを検出するとオン駆動信号を転流用トランジスタに向けて出力する過電圧保護回路を備えるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11―187651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述したように、図2に示すスイッチング電源装置50において、何らかの異常でFET53がオンし続けている場合、FET55が遮断状態となることにより、出力端子52に接続された出力ライン3に入力直流電圧Vinが印加されることはなく、負荷2が過電圧により破壊されることは防止できるが、このとき、平滑コンデンサ63には入力直流電圧Vinが印加される。
【0020】
即ち、平滑コンデンサ63には、FET53が所定のオン/オフを繰り返している正常時には出力電圧Voutの所定の電圧値を超える電圧が印加されることはないが、何らかの異常でFET53がオンし続ける場合には入力直流電圧Vinが印加されることになる。
【0021】
そこで、入力直流電圧Vinが印加されても平滑コンデンサ63が破壊されないように、平滑コンデンサ63には入力直流電圧Vinの電圧値を超える耐圧のコンデンサを用いる必要があるが、上述したように、IP電話機の場合では入力直流電圧Vinの電圧値は48Vにもなるので、それを超える耐圧のコンデンサは体積が大きくなるとともにコストが高くなり、スイッチング電源装置の大型化、高コスト化を招いてしまうという問題があった。
【0022】
また、特許文献1に記載の従来技術では、過電圧検出部は、出力電圧が基準電圧以上になったことを検出すると、転流用トランジスタにオン駆動信号を与えて転流用トランジスタを強制的にオン状態にさせる。これにより、出力端子間がチョークコイルを介して短絡状態となり出力電圧の発生が停止するので、出力端子間に接続された負荷に過電圧が印加されることは防止できるが、このとき、入力端子間が短絡状態となることにより、スイッチング用トランジスタ及び転流用トランジスタに過大な電流が流れることになり、スイッチング用トランジスタや転流用トランジスタ等の内部素子がこの過大な電流により破壊されてしまう可能性があるという問題があった。
【0023】
本発明は、上記の問題点に鑑み、異常が生じた場合であっても、内部素子を破壊することなく出力電圧の上昇を防止して出力電圧を供給する負荷の過電圧保護を図ることができるとともに、小型化、低コスト化することができるスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、入力直流電圧をスイッチングしてパルス電圧に変換するスイッチング素子と、前記パルス電圧を整流、平滑して出力電圧となる前記入力直流電圧よりも低い直流電圧を生成する整流平滑回路とを備えるステップダウン型のスイッチング電源装置において、前記スイッチング素子と前記整流平滑回路との間に接続され、与えられる信号に基づいて導通状態と遮断状態とに切り換わるスイッチ手段と、前記出力電圧が所定の電圧よりも高くなったことを検出した場合に前記切換手段を遮断状態にする信号を前記スイッチ手段に与える過電圧検出手段とを設けたものである。
【0025】
この構成によれば、出力電圧が前記所定の電圧よりも高くなった場合には前記スイッチ手段が遮断状態になり前記スイッチング素子からのパルス電圧が前記整流平滑回路に与えられなくなるので、前記スイッチング素子、整流平滑回路、スイッチ手段等の内部素子に過大な電流を流すことなく出力電圧の上昇が防止され、出力電圧が前記所定の電圧より高くなることがなくなる。また、前記整流平滑回路に印加される電圧が前記所定の電圧より高くなることもなくなる。
【0026】
また、請求項2の発明は、入力直流電圧が与えられコイルに流れる電流をスイッチングするスイッチング素子と、前記スイッチング素子のオン期間に前記コイルに蓄積されたエネルギーを放出する電流経路を形成する整流素子と、前記コイルに流れる電流で充電される平滑コンデンサとを備え、前記平滑コンデンサの電圧を出力電圧とするステップダウン型のスイッチング電源装置において、前記スイッチング素子と前記コイルとの間に接続され、与えられる信号に基づいて導通状態と遮断状態とに切り換わるスイッチ手段と、前記出力電圧が所定の電圧よりも高くなったことを検出した場合に前記スイッチ手段を遮断状態にする信号を前記スイッチ手段に与える過電圧検出手段とを設けたものである。
【0027】
この構成によれば、出力電圧が前記所定の電圧よりも高くなった場合には前記スイッチ手段が遮断状態になり前記スイッチング素子からのパルス電圧が前記コイルに与えられなくなるので、前記スイッチング素子、コイル、平滑コンデンサ、スイッチ手段等の内部素子に過大な電流を流すことなく出力電圧の上昇が防止され、出力電圧が前記所定の電圧より高くなることがなくなる。また、前記平滑コンデンサに印加される電圧が前記所定の電圧より高くなることもなくなる。
【0028】
また、請求項3の発明では、請求項1または請求項2の発明において、前記スイッチ手段を電界効果トランジスタとしている。この構成によれば、前記スイッチング素子と前記整流平滑回路または前記コイルとの間の導通状態/遮断状態の切り換えを高速、且つ低消費電力で行うことができる。さらに、機械的接点を有さないので、寿命が長く、切り換えの信頼性を高くすることができる。
【0029】
また、請求項4の発明では、請求項1〜請求項3のいずれかの発明において、前記出力電圧が所定の電圧よりも高くなったことを前記過電圧検出手段が検出したときから所定の初期化処理が行われるまで前記スイッチ手段が遮断状態に保持されるようにしている。これにより、前記出力電圧が所定の電圧よりも高くなったときから所定の初期化処理が行われるまで出力電圧は0Vとなり、出力電圧が供給される負荷の過電圧保護を図ることができるとともに、この負荷にこの負荷本来の動作電圧よりも高い電圧が印加され続けて、発熱等の問題が生じる可能性を無くすことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、内部素子に過大な電流を流すことなく出力電圧の上昇が防止され、出力電圧が所定の電圧よりも高くなることがなくなるので、例えば、何らかの異常等によってスイッチング素子が導通し続ける状態となっても、入力直流電圧がそのまま、出力電圧が供給される負荷に印加されるということがなくなり、この負荷の過電圧保護を図ることができる。
【0031】
また、前記整流平滑回路に印加される電圧が前記所定の電圧よりも高くなることもなくなるので、前記整流平滑回路を構成する素子として耐圧の低い素子を使用することができ、前記整流平滑回路を小型化、低コスト化することができ、スイッチング電源装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0032】
また、前記平滑コンデンサに印加される電圧が前記所定の電圧よりも高くなることもなくなるので、前記平滑コンデンサとして耐圧の低いコンデンサを使用してこの平滑コンデンサを小型化、低コスト化することができ、スイッチング電源装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るスイッチング電源装置の電気的構成を示す回路ブロック図である。図1において、10はスイッチング電源装置であり、スイッチング電源装置10は、入力端子11、出力端子12、FET13、FET15、コントローラIC16、過電圧検出器17、及び、ダイオード21とコイル22と平滑コンデンサ23とから成る平滑回路14を備えている。
【0034】
入力端子11は、ACアダプタやバッテリ等である外部の直流電源1に接続されており、入力端子11には直流電源1から入力直流電圧Vinが供給されている。また、出力端子12には、ロジック回路部品等の負荷2に入力直流電圧Vinより低い直流電圧である出力電圧Voutを供給する出力ライン3が接続されている。
【0035】
スイッチング電源装置10の内部では、FET13の主端子の一端が入力端子11に接続され、FET13の主端子の他端はFET15の主端子の一端に接続されている。そして、FET15の主端子の他端はアノードをグランドに接続したダイオード21のカソードとコイル22の一端とに接続され、コイル22の他端は出力端子12に接続されている。さらに、コイル22の前記他端は平滑コンデンサ23を介してグランドに接続されるとともに、過電圧検出器17の信号入力端子に接続され、過電圧検出器17の信号出力端子はFET15の制御端子に接続されている。
【0036】
また、FET13の制御端子は、入力直流電圧Vinを動作電源としてFET13のオン/オフ制御を行うコントローラIC16に接続され、コントローラIC16には平滑コンデンサ23の電圧がフィードバックされるようになっている。
【0037】
次に、このような構成のスイッチング電源装置10の動作を説明する。先ず、FET15は、過電圧検出器17からの過電圧検出信号が与えられていないときはオン状態(導通状態)、過電圧検出信号が与えられたときはオフ状態(遮断状態)となり、過電圧検出器17は平滑コンデンサ23の電圧、即ち、出力電圧Voutと所定の閾値電圧とを比較して、出力電圧Voutが前記所定の閾値電圧を超えたときに過電圧検出信号を出力するようになっている。この過電圧検出器17の閾値電圧は、入力直流電圧Vinの電圧値及び負荷2の耐圧より低い電圧値に設定されている。
【0038】
入力直流電圧Vinが与えられるとコントローラIC16は動作を開始し、フィードバックされた平滑コンデンサ23の電圧に基づいたパルス信号をFET13の制御端子に与える。FET13はこのパルス信号に応じてオン/オフを繰り返し、入力直流電圧Vinをスイッチングしたパルス電圧を生成する。
【0039】
そして、このパルス電圧がオン状態であるFET15を介して整流平滑回路14に与えられ、整流平滑回路14で整流、平滑された後、負荷2に供給される。この場合、FET13がオンのときは、入力端子11からFET13及びFET15を介してコイル22に電流が流れ、これによりコイル22にエネルギーが蓄積されるとともに、負荷2にエネルギーが供給される。一方、FET13がオフのときは、コイル22に蓄積されたエネルギーがダイオード21を通じて負荷2に供給される。
【0040】
そして、平滑コンデンサ23はコイル22を流れる電流で充電され、出力端子12にはこの平滑コンデンサ23によって平滑化された出力電圧Voutが発生し、この出力電圧Voutが出力ライン3を介して負荷2に供給される。
【0041】
出力電圧Voutの電圧値は、FET13のオン/オフのデューティによって定まり、FET13のオン/オフのデューティはコントローラIC16によって平滑コンデンサ23の電圧に応じて調整されるので、出力電圧Voutは所定の電圧値に一定に保たれることになる。
【0042】
従って、スイッチング電源装置10が正常に動作している場合は、負荷2に出力電圧Voutの前記所定の電圧値を越える電圧が印加されることはない。
【0043】
一方、スイッチング電源装置10に異常が発生した場合、例えば、FET13が熱暴走や静電気破壊によりショートモードで故障した場合や、コントローラIC16がFET13をオンさせ続けてしまうような状態で故障した場合、出力電圧Voutは前記所定の電圧値を越えて上昇する。
【0044】
そして、出力電圧Voutが過電圧検出器17の所定の閾値電圧を超えたときに過電圧検出器17が過電圧検出信号を出力し、過電圧検出信号が与えられたFET15はオフ状態となる。これにより、FET13とコイル22との接続が遮断され、FET13からの電流がコイル22に流れなくなり、出力電圧Voutは降下する。
【0045】
そして、出力電圧Voutが過電圧検出器17の所定の閾値電圧より低くなると、過電圧検出器17は過電圧検出信号の出力を停止し、過電圧検出信号が与えられなくなったFET15はオン状態となり、FET13とコイル22とが導通し、FET13からの電流がコイル22に流れ、出力電圧Voutは再び上昇するが、上述のようにして、出力電圧Voutが過電圧検出器17の所定の閾値電圧を超えたときにFET15はオフ状態となるので、出力電圧Voutの電圧値が過電圧検出器17の所定の閾値電圧より高くなることはない。
【0046】
過電圧検出器17の所定の閾値電圧は負荷2の耐圧よりも低い電圧値に設定されているので、スイッチング電源装置10に異常が発生した場合であっても、負荷2にその耐圧以上の電圧が印加されて負荷2が破壊されるということが防止できる。即ち、負荷2の過電圧保護が図られている。
【0047】
また、平滑コンデンサ23にも過電圧検出器17の所定の閾値電圧より高い電圧が印加されることがないので、平滑コンデンサ23には入力直流電圧Vinの電圧値よりも高い耐圧を有するコンデンサを使用する必要はなく、低い耐圧のコンデンサを使用して平滑コンデンサ23を小型化、低コスト化することができる。
【0048】
また、異常によりFET13がオンし続けているときに、過電圧保護のため、上述したようにFET15がオン/オフを繰り返しても、FET13、FET15、及び他の内部素子に短絡電流等の過大な電流が流れることはなく、FET13、FET15、及び他の内部素子が破壊されてしまうことがなく安全である。
【0049】
ところで、過電圧保護のため、上述したようにFET15がオン/オフを繰り返すことにより、出力電圧Voutの電圧値は、出力電圧Voutの所定の電圧よりも高く設定されている過電圧検出器17の所定の閾値電圧となる。これにより、負荷2に負荷2の本来の動作電圧よりも高い電圧が印加され続けることになり、場合によっては、負荷2に発熱等の問題が生じる可能性がある。
【0050】
そこで、過電圧検出器17は、一旦、出力電圧Voutが所定の閾値電圧を超えたことを検出すると、所定の初期化処理が行われるまで過電圧検出信号を出力し続けるようにしても良い。このようにすると、一旦、出力電圧Voutが所定の閾値電圧を超えると、過電圧検出器17は過電圧検出信号を出力し続け、過電圧検出信号が与え続けられるFET15はオフ状態に保持されることになる。
【0051】
これにより、出力電圧Voutは0Vとなり、負荷2の過電圧保護を図ることができるとともに、負荷2に負荷2の本来の動作電圧よりも高い電圧が印加され、負荷2に発熱等の問題が生じる可能性を無くすことができる。
【0052】
尚、FET15の方に、一旦、過電圧検出信号が与えられてから所定の初期化処理が行われるまでFET15がオフ状態になるように保持する機能を持たせるようにすることも可能である。また、前記所定の初期化処理は、入力直流電圧Vinが与えられたときに行われるようにしても良いし、図示しない操作部でリセット操作等の所定の操作が行われたときに行われるようにしても良い。
【0053】
以上、説明したように、本実施形態によれば、スイッチング電源装置10に異常が発生した場合、例えば、FET13が熱暴走や静電気破壊によりショートモードで故障した場合や、コントローラIC16がFET13をオンさせ続けてしまうような状態で故障した場合であっても、出力電圧Voutの電圧値が過電圧検出器17に設定されている所定の閾値電圧以上に高くなることを防止して、負荷2に過電圧が印加されて破壊されてしまうことを防止することができる。即ち、負荷2の過電圧保護を図ることができる。
【0054】
また、上記のような異常が発生した場合であっても、平滑コンデンサ23に入力直流電圧Vinがそのまま印加されることはなく、印加される電圧は過電圧検出器17に設定されている所定の閾値電圧以上に高くなることはないので、平滑コンデンサ23に耐圧の低いコンデンサを使用することが可能となる。これにより、平滑コンデンサ23を小型化、低コスト化して、スイッチング電源装置10の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0055】
また、本実施形態では、FET13及びFET15はいずれも電界効果トランジスタであるが、いずれか一方、または両方ともがバイポーラトランジスタであっても構わない。また、FET15は、リレー等の機械的接点を有するスイッチに置き換えることも可能である。その場合、そのリレー等の機械的接点を有するスイッチに保持機能を有するようにしても構わない。
【0056】
また、ダイオード21をFET13と相補的にオン/オフするトランジスタに置き換えるか、または、ダイオード21と並列にFET13と相補的にオン/オフするトランジスタを設けるようにした同期整流方式のスイッチング電源装置においても、本発明が適用できることは言うまでもない。
【0057】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各部の構成等を適宜に変更して実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係るスイッチング電源装置の電気的構成を示す回路ブロック図である。
【図2】従来のスイッチング電源装置の電気的構成を示す回路ブロック図である。
【符号の説明】
【0059】
1 直流電源
2 負荷
3 出力ライン
10 スイッチング電源装置
11 入力端子
12 出力端子
13 FET(電界効果トランジスタ、スイッチング素子)
14 整流平滑回路
15 FET(電界効果トランジスタ、スイッチ手段)
16 コントローラIC
17 過電圧検出器(過電圧検出手段)
21 ダイオード(整流素子)
22 コイル
23 平滑コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力直流電圧をスイッチングしてパルス電圧に変換するスイッチング素子と、前記パルス電圧を整流、平滑して出力電圧となる前記入力直流電圧よりも低い直流電圧を生成する整流平滑回路とを備えるステップダウン型のスイッチング電源装置において、
前記スイッチング素子と前記整流平滑回路との間に接続され、与えられる信号に基づいて導通状態と遮断状態とに切り換わるスイッチ手段と、
前記出力電圧が所定の電圧よりも高くなったことを検出した場合に前記スイッチ手段を遮断状態にする信号を前記スイッチ手段に与える過電圧検出手段と、
を設けたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
入力直流電圧が与えられコイルに流れる電流をスイッチングするスイッチング素子と、前記スイッチング素子のオン期間に前記コイルに蓄積されたエネルギーを放出する電流経路を形成する整流素子と、前記コイルに流れる電流で充電される平滑コンデンサとを備え、前記平滑コンデンサの電圧を出力電圧とするステップダウン型のスイッチング電源装置において、
前記スイッチング素子と前記コイルとの間に接続され、与えられる信号に基づいて導通状態と遮断状態とに切り換わるスイッチ手段と、
前記出力電圧が所定の電圧よりも高くなったことを検出した場合に前記スイッチ手段を遮断状態にする信号を前記スイッチ手段に与える過電圧検出手段と、
を設けたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記スイッチ手段が電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記出力電圧が所定の電圧よりも高くなったことを前記過電圧検出手段が検出したときから所定の初期化処理が行われるまで前記スイッチ手段が遮断状態に保持されるようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−33943(P2006−33943A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206265(P2004−206265)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】