説明

スイッチング電源装置

【課題】電力変換トランスの入出力間の電圧の差を大きくした場合であっても、共振用インダクタのサイズを小さくすることができるスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】スイッチング回路と電圧変換用トランスと共振用インダクタとを備える。スイッチング回路は、スイッチング素子と、このスイッチング素子に並列に接続されたコンデンサとを含んで構成される。電圧変換用トランスは8の字状に磁路を構成する第1磁芯を備える。この第1磁芯には1次側に設けられた第1巻線と、2次側に設けられた第2巻線および第3巻線とが巻回されている。共振用インダクタは8の字状に磁路を構成する第2磁芯を備える。この第2磁芯には第2巻線に直列に接続された第1共振用インダクタと、第3巻数に直列に接続された第2共振用インダクタがそれぞれ巻回されている。この共振用インダクタはスイッチング回路のコンデンサと共に共振回路を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧共振型のスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スイッチング電源装置として種々のタイプのものが提案され、実用に供されている。その1つとして、特許文献1に記載されているように、電力変換トランスの入力巻線に接続されたスイッチング回路のスイッチング動作により、高圧バッテリからの入力直流電圧Vinをスイッチングし、スイッチングにより得られた入力交流電圧を電力変換トランスの入力巻線に入力し、電力変換トランスにより変換された出力交流電圧を電力変換トランスの出力巻線から取り出す方式がある。スイッチング回路のスイッチング動作に伴い、出力巻線に現れる電圧は、整流回路によって整流された後、平滑回路によって出力直流電圧Voutに変換されて出力されるようになっている。
【0003】
この種のスイッチング電源装置では、スイッチング回路は、例えば、4つのスイッチ素子をブリッジ接続してなるフルブリッジ型のインバータ回路であり、各スイッチ素子にはコンデンサが並列に接続されている。このコンデンサと、スイッチング回路および電力変換トランスの間に直列に接続された共振用インダクタとにより、共振回路を構成し、その共振特性を利用して、スイッチング素子のオン・オフによって生じるサージ電圧が低減される。
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO01−071896号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電力変換トランスの入出力間の電圧の差を大きくした場合は、共振用インダクタの巻き数を増やしてインダクタンスを大きくすることが必要となる。また、巻線と磁芯との絶縁距離を広げるためにそれらの間に設けられた絶縁材を厚くすることも必要となる。このように、電力変換トランスの入出力間の電圧の差を大きくした場合は、巻数を増やしたり、絶縁材を厚くする必要があるため、共振用インダクタのサイズが大きくなってしまい、これにより、スイッチング電源装置の小型化を阻害する虞があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、電力変換トランスの入出力間の電圧の差を大きくした場合であっても、共振用インダクタのサイズを小さくすることができるスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスイッチング電源装置は、スイッチング回路と、電圧変換用トランスと、整流回路と、共振用インダクタとを備えたものである。スイッチング回路は、スイッチング素子と、このスイッチング素子に並列に接続されたコンデンサとを含んで構成され、直流入力電圧を交流電圧に変換するインバータ回路である。電圧変換用トランスは、8の字状に磁路を構成する第1磁芯と、この第1磁芯にそれぞれ巻回された1次側巻線、2次側第1巻線および2次側第2巻線とを備え、スイッチング回路からの交流電圧を降圧して出力するようになっている。1次側巻線は、電圧変換用トランスの1次側に設けられ、スイッチング回路の動作に応じて自身に流れる電流の方向が変化するようにスイッチング回路に接続されている。2次側第1巻線および2次側第2巻線は、電圧変換用トランスの2次側にそれぞれ設けられ、それぞれの一端が互いに接続されている。整流回路は、電圧変換用トランスの2次側の出力交流電圧を整流するようになっている。共振用インダクタは、8の字状に磁路を構成する第2磁芯と、この第2磁芯にそれぞれ巻回された第1共振用インダクタおよび第2共振用インダクタとを備える。第1共振用インダクタは、2次側第1巻線および2次側第2巻線の接続点から2次側第1巻線を介して整流回路の終端までの第1経路中に設けられており、第2共振用インダクタは、 接続点から2次側第2巻線を介して整流回路の終端までの第2経路中に設けられている。この共振用インダクタは、スイッチング回路のコンデンサと共に共振回路を構成している。
【0008】
第2磁芯は、例えば、E型磁芯同士を互いに重ね合わせたり、または、E型磁芯とI型磁芯とを互いに重ね合わせて構成されている。E型磁芯とI型磁芯との重ね合わせ方としては、例えば、支持基体上にI型磁芯を載置してその上にE型磁芯を重ね合わせる方法や、支持基体上にE型磁芯を載置してその上にI型磁芯を重ね合わせる方法がある。
【0009】
また、第1磁芯および第2磁芯がそれぞれ、E型磁芯とI型磁芯とを互いに重ね合わせて構成されていてもよい。このとき、第1磁芯および第2磁芯の各I型磁芯が共通化されていることが好ましい。ただし、第1磁芯および第2磁芯が互いに独立していることが必要となる。ここで、「互いに独立している」とは、2つのE型磁芯が単に空間的に分離されているだけでなく、第1磁芯および第2磁芯の各磁路が別個の磁路と同視できる程度に磁気的に分離されていることを指している。
【0010】
本発明のスイッチング電源装置では、高圧の直流入力電圧がスイッチング回路によって交流電圧に一旦変換されたのち、その交流電圧が電圧変換トランスで変圧(降圧)される。このとき、電圧変換トランスの1次側に設けられたスイッチング回路のコンデンサと、電圧変換トランスの2次側に設けられた共振用インダクタの第1共振用インダクタおよび第2共振用インダクタとにより、共振回路を構成し、その共振特性を利用して、スイッチング素子のオン・オフによって生じるサージ電圧が低減される。
【0011】
このように、共振回路を構成する第1共振用インダクタおよび第2共振用インダクタを、降圧型の電圧変換トランスの2次側に設けることにより、1次側に設けた場合と比べて、これら共振用インダクタに入力される電圧が小さくなり、これら共振用インダクタの巻き数が少なくて済む。これにより、巻線が多層になることはなく、巻線と磁芯との間に絶縁材を設けた場合であっても、絶縁材を厚くする必要はない。このことは、降圧型の電力変換トランスの入出力間の電圧の差を大きくした場合であっても同様である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスイッチング電源装置によれば、共振回路を構成する第1共振用インダクタおよび第2共振用インダクタを降圧型の電圧変換トランスの2次側に設けるようにしたので、降圧型の電力変換トランスの入出力間の電圧の差を大きくした場合であっても、従来のような降圧型の電圧変換用トランスの1次側に設けた場合と比べて、共振用インダクタを小さくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を表すものである。このスイッチング電源装置は、高圧バッテリHBから供給される高圧の直流入力電圧Vinを、より低い直流出力電圧Voutに変換して、負荷Lに供給するDC−DCコンバータとして機能するものであり、後述するように2次側がセンタタップ型カソードコモン接続のスイッチング電源装置である。
【0015】
このスイッチング電源装置は、1次側巻線22および2次側巻線23,24を含んで構成された3巻線型のトランス2(電圧変換用トランス)を有している。トランス2の1次側にはインバータ回路1(スイッチング回路)が、2次側には共振用インダクタ3、整流回路4および平滑回路5がそれぞれ設けられている。インバータ回路1は一次側高圧ラインL1Hと1次側低圧ラインL1Lとの間に設けられている。
【0016】
また、1次側高圧ラインL1Hに入力端子T1が、1次側低圧ラインL1Lに入力端子T2がそれぞれ設けられており、これら入力端子T1,T2が高圧バッテリHBの出力端子と接続されるようになっている。また、平滑回路5の高圧側のラインである出力ラインL0に出力端子T3が、平滑回路5の低圧側のラインである接地ラインLGに出力端子T4がそれぞれ設けられており、これら出力端子T3,T4が負荷Lの入出力端子と接続されるようになっている。
【0017】
インバータ回路1は、高圧バッテリHBから出力される直流入力電圧Vinをほぼ矩形波状の単相交流電圧に変換する単相インバータ回路である。このインバータ回路1は、制御回路(図示せず)から供給されるスイッチング信号によってそれぞれ駆動される4つのスイッチング素子11,12,13,14をフルブリッジ接続してなるフルブリッジ型のスイッチング回路である。スイッチング素子としては、例えば、MOS−FET(Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor )やIGBT(Insulated Gate Bipolor Transistor )などの素子が用いられる。また、各コンデンサ15,16,17,18が、スイッチング素子11,12,13,14の各々に並列に接続されている。なお、スイッチング素子をMOS−FETで構成した場合は、MOS−FETが有する寄生容量を、コンデンサ15,16,17,18として利用してもよい。
【0018】
スイッチング素子11は、トランス2の1次側巻線22の一端と1次側高圧ラインL1Hとの間に設けられ、スイッチング素子12は1次側巻線22の一端と1次側低圧ラインL1Lとの間に設けられている。スイッチング素子13は1次側巻線22の他端と1次側高圧ラインL1Hとの間に設けられ、スイッチング素子14は1次側巻線22の他端と1次側低圧ラインL1Lとの間に設けられている。
【0019】
これより、インバータ回路1は、スイッチング素子11,14のオン動作により、1次側高圧ラインL1Hから順にスイッチング素子11、1次側巻線11Aおよびスイッチング素子14を通って1次側低圧ラインL1Lに至る第1の電流経路に電流が流れる一方、スイッチング素子12,13のオン動作により、1次側高圧ラインL1Hから順にスイッチング素子13、1次側巻線22およびスイッチング素子12を通って1次側低圧ラインL1Lに至る第2の電流経路に電流が流れるようになっている。
【0020】
トランス2は、1次側巻線22(1次側巻線)、2次側巻線23(2次側第1巻線)および2次側巻線24(2次側第2巻線)が互いに同じ向きの極性を有するように磁芯21に巻回されることにより磁気結合された磁気素子である。このトランス2は、降圧型のトランスであり、2次側巻線23および2次側巻線24の巻き数が、1次側巻線22のそれよりも少なくなっている。
【0021】
トランス2の一対の2次側巻線23,24は後述の第1共振用インダクタ32および第2共振用インダクタ33を介してセンタタップC(接続点)で互いに接続され、このセンタタップCが接地ラインLGを介して出力端子T4に接続されている。つまり、トランス2の2次側はセンタタップ型の接続となっている。これより、このトランス2は、インバータ回路1によって変換された交流電圧を変圧(降圧)し、一対の2次側巻線23,24の各端部A,Bから、互いに180度位相が異なる交流電圧VO1,VO2を出力するようになっている。なお、この場合の変圧の度合いは、1次側巻線22と2次側巻線23,24との巻数比によって定まる。
【0022】
共振用インダクタ3は、磁芯31(第2磁芯)と、磁芯31に巻回された第1共振用インダクタ32および第2共振用インダクタ33とを備える。第1共振用インダクタ32は、磁気結合した状態で2つのインダクタ32A,32Bに分離されており、インダクタ32Aの一端がトランス2の2次側巻線23の一端に直列に接続され、インダクタ32Bの一端がトランス2の2次側巻線23の他端に直列に接続されている。また、インダクタ32Aの他端が整流回路4に接続され、インダクタ32Bの他端がセンタタップCに接続されている。第2共振用インダクタ33も同様に、磁気結合した状態で2つのインダクタ33A,33Bに分離されており、インダクタ33Aの一端がトランス2の2次側巻線24の一端に直列に接続され、インダクタ33Bの一端がトランス2の2次側巻線24の他端に直列に接続されている。また、インダクタ33Aの他端が整流回路4に接続され、インダクタ33Bの他端がセンタタップCに接続されている。
【0023】
なお、センタタップCから2次側巻線23を介して整流回路4の終端である接続点D(後述)までの経路が、本発明の「第1経路」に対応し、センタタップCから2次側巻線24を介して整流回路4の終端である接続点D(後述)までの経路が、本発明の「第2経路」に対応する。
【0024】
これにより、電圧変換トランス2の1次側に設けられたスイッチング回路1のコンデンサ15,16,17および18の少なくとも1つと、電圧変換トランス3の2次側に設けられた共振用インダクタ3の第1共振用インダクタ32および第2共振用インダクタ33とにより、共振回路を構成するようになっており、その共振特性を利用して、スイッチング素子のオン・オフによって生じるサージ電圧を低減するようになっている。
【0025】
ここで、トランス2は上記したように降圧型であり、トランス2の2次側の電圧の方が1次側の電圧よりも低いので、第1共振用インダクタ32および第2共振用インダクタ33のそれぞれの巻数を、従来のように共振回路をトランス2の1次側に設けた場合と比べて少なくすることができ、1巻きにすることも可能である。また、第1共振用インダクタ32および第2共振用インダクタ33と、磁芯31とを絶縁するために、これらの間に絶縁材(図示せず)を設ける必要がある場合であっても、第1共振用インダクタ32および第2共振用インダクタ33に印加される電圧は低いので、絶縁材を薄くしたり、なくすることが可能である。これにより、共振用インダクタ3を簡易かつ小さな構造にすることができる。
【0026】
また、上記したように、第1共振用インダクタ32および第2共振用インダクタ33のそれぞれの巻数を1巻きにすることも可能であることから、第1共振用インダクタ32および第2共振用インダクタ33を1巻きの板状の板金でそれぞれ構成することもできる。これにより、トランス2の2次側に大電流を流す場合であっても、共振用インダクタ3を簡易かつ小さな構造にすることができる。
【0027】
ところで、磁芯21および磁芯31はそれぞれ、8の字状の磁路を有している。磁芯21は、第1磁芯21Aと第2磁芯21Bとからなり、第1磁芯21Aを導電性の支持基体(図示せず)上に載置すると共にその第1磁芯21A上に第2磁芯21Bを重ね合わせて構成されたものである。磁芯31についても同様に、第1磁芯31Aと第2磁芯31Bとからなり、第1磁芯31Aを導電性の支持基体(図示せず)上に載置すると共にその第1磁芯31A上に第2磁芯31Bを重ね合わせて構成されたものである。
【0028】
ここで、第1磁芯21Aおよび第2磁芯21Bは、互いに等しい形状であってもよいし、互いに異なる形状であってもよい。第1磁芯31Aおよび第2磁芯31Bについても同様に、互いに等しい形状であってもよいし、互いに異なる形状であってもよい。互いに等しい形状としては、例えば、図4に示したように、第1磁芯21A、第2磁芯21B、第1磁芯31Aおよび第2磁芯31BがいずれもE型形状となっているケース(第1のケース)が考えられる。互いに異なる形態としては、例えば、第1磁芯21Aおよび第1磁芯31Aが共にI型形状、第2磁芯21Bおよび第2磁芯31Bが共にE型形状となっているケース(第2のケース)や、逆に、第1磁芯21Aおよび第1磁芯31Aが共にE型形状、第2磁芯21Bおよび第2磁芯31Bが共にI型形状となっているケース(第3のケース)が考えられる。
【0029】
第2のケースでは、図5に示したように、第1磁芯21Aおよび第1磁芯31Aが共通のI型の磁芯21Cで構成されていることが好ましく、第3のケースでは、図6に示したように、第2磁芯21Bおよび第2磁芯31Bが共通のI型の磁芯21Dで構成されていることが好ましい。これにより、磁芯の形状が互いに等しい場合と比べて、部品点数を1つ削減することができる。
【0030】
ただし、トランス2のI型磁芯と、共振用インダクタ3のI型磁芯とを共通化する場合は、磁芯21および磁芯31が互いに独立していることが必要となる。ここで、「互いに独立している」とは、2つのE型磁芯が単に空間的に分離されているだけでなく、磁芯21および磁芯31の各磁路が別個の磁路と同視できる程度に磁気的に分離されていることを指す。このように、トランス2のI型磁芯と、共振用インダクタ3のI型磁芯とが共通化されていても、磁芯21および磁芯31が互いに独立していれば、トランス2の磁芯21と共振用インダクタ3の磁芯31とが互いに影響を及ぼし合うことはなく、それぞれのインダクタンスが変動して所望の値からずれてしまう虞はない。このことは、数値シミュレーションで確認されている。
【0031】
ところで、磁芯には一般に表面に反りがあるため、磁芯の表面のうち支持基体や他の磁芯と接する面を平らに研磨する作業が必ず必要となるが、第1のケースでは、第1磁芯21Aおよび第2磁芯21B、第1磁芯31Aおよび第2磁芯31Bはそれぞれ共通形状であり、実装上、上側および下側のいずれにも配置可能であることから、I型磁芯の両面およびE型磁芯の両面の合計4面を研磨しなければならない。一方、第2のケース(I型磁芯を共通化した場合も含む)では、I型磁芯の両面およびE型磁芯の片面の合計3面だけを研磨すればよく、同様に、第3のケース(I型磁芯を共通化した場合も含む)では、I型磁芯の片面およびE型磁芯の両面の合計3面だけを研磨すればよい。このように、第2のケースおよび第3のケース(いずれもI型磁芯を共通化した場合も含む)では、第1のケースと比べて研磨面数を1つ削減することができる。
【0032】
また、磁芯を支持基体に固定するには固定用の金具が必要となるが、第1のケースおよび第2のケース(I型磁芯を共通化した場合も含む)ならびに第3のケースでは、トランス2側の磁芯21と共振用インダクタ3側の磁芯31とをそれぞれ留める金具が2つ必要となる。一方、第3のケースにおいてI型磁芯を共通化した場合では、I型磁芯が上側に配置されているので、1つの金具で済み、その結果、他の場合と比べて、部品点数を1つ削減することができる。
【0033】
整流回路4は、一対のダイオード41,42からなる単相全波整流型のものである。ダイオード41のアノードは第1共振用インダクタ32の一端に、ダイオード42のアノードは第2共振用インダクタ33の一端にそれぞれ接続されている。ダイオード41,42の各カソード同士は、接続点Dにおいて互いに接続されると共に、出力ラインLOに接続されている。つまり、この整流回路4はカソードコモン接続の構造を有しており、トランス2の交流出力電圧VO1,VO2の各半波期間をそれぞれダイオード41,42によって個別に整流して直流電圧を得るようになっている。
【0034】
平滑回路5は、チョークコイル51と平滑コンデンサ52とを含んで構成されている。チョークコイル51は、出力ラインLOに挿入配置されており、その一端は接続点Dに、その他端は出力端子T3にそれぞれ接続されている。平滑コンデンサ52は、チョークコイル51の他端と接地ラインLGとの間に接続されている。平滑回路5は、このような構成により、整流回路4で整流された直流電圧を平滑化して直流出力電圧Voutを生成し、これを出力端子T3,T4から負荷Lに供給するようになっている。
【0035】
次に、以上のような構成のスイッチング電源装置の作用を説明する。なお、以下では、一般的なスイッチング動作でインバータ回路1を駆動する場合について説明するが、例えば、ゼロボルトスイッチング(Zero Volto Switching)動作でインバータ回路1を駆動することも可能である。
【0036】
インバータ回路1のスイッチング素子11,14がオンすると、スイッチング素子11からスイッチング素子14の方向に電流が流れ、トランス2の2次側巻線23,24に現れる電圧VO1,VO2がダイオード42に対して逆方向となり、ダイオード41に対して順方向となる。このため、2次側巻線11Bからダイオード41を通って出力ラインLOに電流が流れる。
【0037】
次に、スイッチング素子11,14がオンからオフになると、トランス2の2次側巻線24に現れる電圧[−VO2]は、ダイオード42に対して順方向となる。このため、2次側巻線24からダイオード42を通って出力ラインLOに電流が流れる。
【0038】
次に、スイッチング素子12,13がオンすると、スイッチング素子13からスイッチング素子12の方向に電流が流れ、トランス2の2次側巻線23,24に現れる電圧[−VO1]、[−VO2]がダイオード42に対して順方向になる一方、ダイオード41に対して逆方向となる。このため、2次側巻線24からダイオード42を通って出力ラインLOに電流が流れる。
【0039】
最後に、スイッチング素子12,13がオンからオフになると、トランス2の2次側巻線23に現れる電圧[−VO1]はダイオード41に対して順方向となる。このため、2次側巻線23からダイオード41を通って出力ラインLOに電流が流れる。
【0040】
このようにして、電源本体部10は、高圧バッテリHBから供給された直流入力電圧Vinを直流出力電圧Voutに変圧(降圧)し、その変圧した直流出力電圧Voutを低圧バッテリLBに給電する。
【0041】
このとき、スイッチング回路1のコンデンサ15,16,17および18の少なくとも1つと、共振用インダクタ3の第1共振用インダクタ32および第2共振用インダクタ33とにより、共振回路を構成し、その共振特性を利用して、スイッチング素子11,12,13および14のオン・オフによって生じるサージ電圧が低減される。
【0042】
このように、共振回路を構成する第1共振用インダクタおよび第2共振用インダクタが、電圧変換トランスの2次側に設けられることにより、1次側に設けた場合と比べて、これら共振用インダクタに入力される電圧を小さくすることができる。
【0043】
これより、本実施の形態のスイッチング電源装置では、共振回路を構成する第1共振用インダクタ32および第2共振用インダクタ33を電圧変換トランス2の2次側に設けるようにしたので、1次側に設けた場合と比べて、これら共振用インダクタ32,33に入力される電圧は小さくなり、これら共振用インダクタ32,33の巻き数が少なくて済む。これにより、巻線が多層になることはなく、巻線と磁芯との間に絶縁材を設けた場合であっても、絶縁材を厚くする必要はない。このことは、電力変換トランスの入出力間の電圧の差を大きくした場合であっても同様である。
【0044】
したがって、本実施の形態のスイッチング電源装置では、電力変換トランスの入出力間の電圧の差を大きくした場合であっても、従来のような電圧変換用トランス2の1次側に設けた場合と比べて、共振用インダクタ3のサイズを小さくすることができる。
【0045】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は、これらに限定されず、種々の変形が可能である。
【0046】
例えば、上記実施の形態のスイッチング電源装置では、トランス2の2次側がカソードコモン接続であったが、図7に示したように、アノードコモン接続であってもよい。また、インバータ回路1はフルブリッジ型であったが、図8(A)〜(E)に例示したような、フォーワード型1−1、リセット巻線付きフォーワード型1−2、ダブルフォーワード型1−3、プッシュプル型1−4およびハーフブリッジ型1−5などであってもよい。
【0047】
また、上記実施の形態のスイッチング電源装置では、トランス2の一対の2次側巻線23,24が共振用インダクタ3の第1共振用インダクタ32および第2共振用インダクタ33を介してセンタタップCで互いに接続されるようにしていたが、図9ないし図11に示したように、トランス2の一対の2次側巻線23,24が直接センタタップCに接続されるようにしてもよい。このとき、トランス2の第1磁芯21Aおよび共振用インダクタ3の第1磁芯31AをI型磁芯でそれぞれ構成した場合は、図12および図13に示したように、それぞれのI型磁芯を共通化してもよい。
【0048】
また、トランス2の2次側の接続関係は、上記実施の形態や、図9ないし図11に示した形態の他に、例えば、図14ないし図16や、図18ないし図20、図23、図24に示したような形態であってもよい。なお、トランス2の2次側の接続関係を、図14ないし図16や、図18ないし図20に示したような形態とした場合であって、トランス2の第1磁芯21Aおよび共振用インダクタ3の第1磁芯31AをI型磁芯でそれぞれ構成したときは、図17や、図21および図22に示したように、それぞれのI型磁芯を共通化してもよい。
【0049】
なお、上記したような種々の接続関係とした場合であっても、上記実施の形態と同様、第1共振用インダクタ32は、センタタップCから2次側巻線23を介して接続点D(整流回路4の末端)までの経路中に設けられ、第2共振用インダクタ33は、センタタップCから2次側巻線24を介して接続点D(整流回路4の末端)までの経路中に設けられている。
【0050】
また、上記実施の形態のスイッチング電源装置では、トランス2の2次側がセンタータップ型であったが、他の構成であってもよく、例えば、フォーワード型やカレントダブラ型、フルブリッジ型などであってもよい。ただし、このような構成とした場合は、トランス2の2次側の巻線が1つになるので、その2次側の1つの巻線に一端に第1共振用インダクタ32が、その2次側の1つの巻線に他端に第2共振用インダクタ33が、それぞれ直列に接続されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を表す回路図である。
【図2】図1のトランスおよび共振用インダクタのそれぞれの磁芯の上面図である。
【図3】図2の磁芯の側面図である。
【図4】図2の磁芯の斜視図である。
【図5】図2の磁芯の一変形例を表す側面図である。
【図6】図2の磁芯の他の変形例を表す側面図である。
【図7】スイッチング電源装置の一変形例の構成を表す回路図である
【図8】スイッチング回路の種々の変形例を表す回路図である。
【図9】スイッチング電源装置の他の変形例の構成を表す回路図である。
【図10】図9の磁芯の上面図である。
【図11】図9の磁芯の側面図である。
【図12】図9の磁芯の一変形例を表す側面図である。
【図13】図9の磁芯の他の変形例を表す側面図である。
【図14】スイッチング電源装置の他の変形例の構成を表す回路図である。
【図15】図14の磁芯の上面図である。
【図16】図14の磁芯の側面図である。
【図17】図14の磁芯の他の変形例を表す側面図である。
【図18】スイッチング電源装置の他の変形例の構成を表す回路図である。
【図19】図18の磁芯の上面図である。
【図20】図18の磁芯の側面図である。
【図21】図18の磁芯の一変形例を表す側面図である。
【図22】図18の磁芯の他の変形例を表す側面図である。
【図23】スイッチング電源装置の他の変形例の構成を表す回路図である。
【図24】スイッチング電源装置の他の変形例の構成を表す回路図である。
【符号の説明】
【0052】
1…インバータ回路、2…トランス、3…共振用インダクタ、4…整流回路、5…平滑回路、11,12,13,14…スイッチング素子、15,16,17,18…コンデンサ、21,21A,21B,21C,21D,31,31A,31B…磁芯、22…1次側巻線、23,24…2次側巻線、32…第1共振用インダクタ、33…第2共振用インダクタ、41,42…ダイオード、51…チョークコイル51、52…平滑コンデンサ、A,B…端部、C…接続点、HB…高圧バッテリ、L…負荷、L1H…1次側高圧ライン、L1L…1次側低圧ライン、LO…出力ライン、LG…接地ライン、T1,T2…入力端子、T3,T4…出力端子、Vin…入力直流電圧、Vout…出力直流電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子と、このスイッチング素子に並列に接続されたコンデンサとを含んで構成され、直流入力電圧を交流電圧に変換するスイッチング回路と、
8の字状に磁路を構成する第1磁芯と、前記第1磁芯に巻回されると共に前記スイッチング回路の動作に応じて自身に流れる電流の方向が変化するように前記スイッチング回路に接続された1次側巻線と、前記第1磁芯に巻回されると共にそれぞれの一端が互いに接続された2次側第1巻線および2次側第2巻線とを有し、前記スイッチング回路からの交流電圧を降圧して出力する電圧変換用トランスと、
前記電圧変換用トランスの2次側の出力交流電圧を整流する整流回路と、
8の字状に磁路を構成する第2磁芯と、前記2次側第1巻線および前記2次側第2巻線の接続点から前記2次側第1巻線を介して前記整流回路の終端までの第1経路中に設けられると共に前記第2磁芯に巻回された第1共振用インダクタと、前記接続点から前記2次側第2巻線を介して前記整流回路の終端までの第2経路中に設けられると共に前記第2磁芯に巻回された第2共振用インダクタとを有し、前記コンデンサと共に共振回路を構成する共振用インダクタと
を備えたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記第2磁芯は、E型磁芯同士を互いに重ね合わせて構成されたものである
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記第2磁芯は、E型磁芯とI型磁芯とを互いに重ね合わせて構成されたものである
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記第1磁芯および第2磁芯は、互いに独立した2つのE型磁芯と、互いに共通のI型磁芯とを互いに重ね合わせて構成されたものである
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
支持基体をさらに備え、
前記第1磁芯および第2磁芯は、前記I型磁芯を前記支持基体上に載置すると共に、そのI型磁芯上に前記2つのE型磁芯をそれぞれ重ね合わせて構成されたものである
ことを特徴とする請求項4に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
支持基体をさらに備え、
前記第1磁芯および第2磁芯は、前記2つのE型磁芯を前記支持基体上に載置すると共に、その2つのE型磁芯上に前記I型磁芯を重ね合わせて構成されたものである
ことを特徴とする請求項4に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−43765(P2007−43765A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222117(P2005−222117)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】