説明

スイッチング電源装置

【課題】適切な電力変換動作を行なうことが可能なスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】スイッチング電源装置101は、制御巻線N3に誘起された交流電圧に基づいて主スイッチング素子Q1をオンするための電流を供給し、かつ主スイッチング素子Q1のオン期間を制御することにより、負荷RLへの直流電圧レベルを制御する主制御回路21と、第1の入力ノードLと主スイッチング素子Q1の制御電極との間に直列接続された第1の抵抗および第1のダイオードD1と、第2の入力ノードNと主スイッチング素子Q1の制御電極との間に直列接続された第2の抵抗および第2のダイオードD2とを備え、1次側整流平滑回路BD1,C4は、主スイッチング素子Q1の制御電極および第1の入力ノードL間、ならびにスイッチング素子Q1の制御電極および第2の入力ノードN間にそれぞれ電流経路を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に関し、特に、AC−DCコンバータおよびDC―DCコンバータなどとして好適に実施されるスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
RCC(Ringing Choke Converter)方式のスイッチング電源装置は、低コストな電源装置として、広く用いられている。RCC方式のスイッチング電源装置では、主スイッチング素子のオン期間中に変圧器内に励磁エネルギーを蓄積するとともに、変圧器の制御巻線に誘起される電圧から得た電流および2次側からのフィードバック電流によってコンデンサを充電する。そして、この充電電圧が所定電圧になると制御スイッチング素子が主スイッチング素子の制御端子をオフ駆動する。このオフ期間において、変圧器内に蓄積されていた励磁エネルギーを2次側に出力し、出力終了後に変圧器の制御巻線に発生するリンギングパルスを主スイッチング素子の制御端子に帰還する。これにより、主スイッチング素子を再びオン駆動し、定常発振を行なう。そして、負荷が重くなる程、自動的にオフ期間およびオン期間が長く、すなわちスイッチング周波数が低下して、2次側出力電圧を定電圧に維持する。このような構成により、PWM(Pulse Width Modulation)方式のスイッチング電源装置のような複雑な制御回路が不要であり、かつこのような制御回路を動作させ、かつパルス幅の基準となる電圧を発生するための電源回路が不要になることから、低コスト化を図ることができる。
【0003】
従来のRCC方式のスイッチング電源装置として、たとえば、特許文献1には、以下のようなスイッチング電源装置が開示されている。すなわち、変圧器と、商用電源を整流する第1の整流回路と、第1の整流回路で整流した電圧を交流電圧に変換して変圧器の一次側巻線に供給するスイッチング素子と、変圧器の二次側巻線に接続された第2の整流回路とを備える。そして、第2の整流回路で整流された電圧を負荷に供給するスイッチング電源装置において、商用電源のライブ側およびニュートラル側のそれぞれに対応して設けられる2つのインピーダンス素子を備える。各インピーダンス素子の一端はいずれもスイッチング素子のゲート端子またはベース端子に接続され、一方のインピーダンス素子の他端は第1の整流回路のライブ側端子に接続され、他方のインピーダンス素子の他端は第1の整流回路のニュートラル側端子に接続される。
【0004】
また、特許文献2には、以下のようなRCC方式のスイッチング電源装置が開示されている。すなわち、リンギングチョークコンバータ方式のスイッチング電源装置において、起動回路に関連して、起動回路で得られた起動電圧を保持する保持手段を設ける。そして、保持手段は、起動回路からの電流で充電される起動コンデンサと、起動コンデンサの充放電電流を制限する電流制限抵抗と、起動コンデンサの充電電圧を電流制限抵抗と起動回路との接続点から取り出し、主スイッチング素子の制御端子に与える逆流防止用のダイオードとを含む。起動コンデンサおよび電流制限抵抗の時定数が、スイッチング周期の時間単位では起動コンデンサの充電電圧が変動しない大きさに設定される。
【特許文献1】特開2000−350445号公報
【特許文献2】特開2004−194387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、たとえば特許文献2に記載されたスイッチング電源装置のようなRCC方式のスイッチング電源装置において、昨今の待機時の省エネルギーに対する要求から、起動抵抗での電力損失が無視できないレベルとなっている。
【0006】
また、特許文献1に記載されたスイッチング電源装置は、上記2つのインピーダンス素子が起動抵抗および放電抵抗の両方を兼ねる構成である。
【0007】
ここで、一般に、スイッチング電源装置では、ノーマルモードノイズ対策として入力交流電圧の入力ノード間にコンデンサが配置され、また、このコンデンサに蓄えられた電荷を放電するための抵抗がこの入力ノード間に配置される。
【0008】
特許文献1記載のスイッチング電源装置では、このような放電用のコンデンサが配置されていないが、入力交流電圧の入力ノード間にコンデンサを配置すると仮定した場合、起動抵抗および放電抵抗の役割を兼ねる2つの抵抗を通して放電電流が流れてしまい、消費電力が増大してしまう。
【0009】
また、電力損失の低減に伴い内部損失が極端に低減されると、出力電力が極端に小さい軽負荷時では、スイッチング電源装置への交流電圧出力を停止した後も、入力交流電圧の整流回路の後段に配置された平滑コンデンサに蓄積されたエネルギーが、いつまでも消費されずに残留する。これにより、スイッチング電源装置への交流電圧出力が停止した後も、スイッチング電源装置の出力電圧が維持されてしまう。そうすると、交流電圧をトランスに与えるためのスイッチング素子がオンしたままとなる。この状態においてスイッチング電源装置への交流電圧出力が再開されると、このスイッチング素子に過大な電流が流れ、スイッチング素子が破壊される可能性がある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、適切な電力変換動作を行なうことが可能なスイッチング電源装置を提供することである。
【0011】
また、本発明の他の目的は、電力損失の低減を図ることが可能なスイッチング電源装置を提供することである。
【0012】
また、本発明のさらに別の目的は、安定した電力変換動作を行なうことが可能なスイッチング電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わるスイッチング電源装置は、第1の入力ノードおよび第2の入力ノードから受けた入力交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換する1次側整流平滑回路と、1次巻線、2次巻線および制御巻線を含むトランスと、1次巻線に結合され、オン・オフすることにより直流電圧を交流電圧に変換し、変換した交流電圧を1次巻線に供給する主スイッチング素子と、2次巻線に誘起された交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換する2次側整流平滑回路と、制御巻線に結合され、制御巻線に誘起された交流電圧に基づいて主スイッチング素子をオンするための電流を主スイッチング素子の制御電極に供給し、かつ主スイッチング素子のオン期間を制御することにより、2次側整流平滑回路によって変換される直流電圧のレベルを制御する主制御回路と、第1の入力ノードと第2の入力ノードとの間に接続された第1のキャパシタと、第1の入力ノードと主スイッチング素子の制御電極との間に直列接続された第1の抵抗および第1のダイオードと、第2の入力ノードと主スイッチング素子の制御電極との間に直列接続された第2の抵抗および第2のダイオードとを備え、1次側整流平滑回路は、主スイッチング素子の制御電極に結合され、主スイッチング素子の制御電極および第1の入力ノード間に電流経路を形成し、かつ主スイッチング素子の制御電極および第2の入力ノード間に電流経路を形成している。
【0014】
好ましくは、主スイッチング素子の制御電極に対する第1のダイオードの導通方向および第2のダイオードの導通方向が同じであり、1次側整流平滑回路は、第2のダイオードと導通方向が同じになるように主スイッチング素子の制御電極と第1の入力ノードとの間に接続された第3のダイオードと、第1のダイオードと導通方向が同じになるように主スイッチング素子の制御電極と第2の入力ノードとの間に接続された第4のダイオードとを含む。
【0015】
好ましくは、第1の抵抗は、第1の入力ノードと第1のダイオードとの間に接続され、第2の抵抗は、第2の入力ノードと第2のダイオードとの間に接続され、スイッチング電源装置は、さらに、第1のダイオードおよび第2のダイオードと主スイッチング素子の導通電極との間に直列接続された第3の抵抗および第2のキャパシタと、第3の抵抗または第2のキャパシタと第1のダイオードおよび第2のダイオードとの接続ノードと、主スイッチング素子の制御電極との間に接続された第5のダイオードとを備える。
【0016】
またこの発明のさらに別の局面に係わるスイッチング電源装置は、第1の入力ノードおよび第2の入力ノードから受けた入力交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換する1次側整流平滑回路と、1次巻線、2次巻線および制御巻線を含むトランスと、1次巻線に結合され、オン・オフすることにより直流電圧を交流電圧に変換し、変換した交流電圧を1次巻線に供給する主スイッチング素子と、2次巻線に誘起された交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換する2次側整流平滑回路と、制御巻線に結合され、制御巻線に誘起された交流電圧に基づいて主スイッチング素子をオンするための電流を主スイッチング素子の制御電極に供給し、かつ主スイッチング素子のオン期間を制御することにより、2次側整流平滑回路によって変換される直流電圧のレベルを制御する主制御回路と、入力交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換し、変換した直流電圧に基づいて主スイッチング素子の制御電極に電流を供給する起動電流用整流平滑回路とを備える。
【0017】
好ましくは、1次側整流平滑回路は、第1の入力ノードおよび第2の入力ノードに結合され、入力交流電圧を整流する第1のダイオードと、第1のダイオードに結合された第1端と、第2端とを有し、第1のダイオードによって整流された電圧を平滑化する第1のキャパシタとを含み、起動電流用整流平滑回路は、第1の入力ノードと主スイッチング素子の制御電極との間に接続され、入力交流電圧を整流する第2のダイオードと、第2のダイオードに結合された第1端と、第2端とを有し、第2のダイオードによって整流された電圧を平滑化する第2のキャパシタと、第1のキャパシタの第1端と第2のキャパシタの第1端との間に接続され、第2のキャパシタから第1のキャパシタへの方向に導通する第3のダイオードを含む。
【0018】
より好ましくは、起動電流用整流平滑回路は、さらに、第3のダイオードによって整流された電圧を分圧して第2のキャパシタに印加するための分圧抵抗を含む。
【0019】
またこの発明のさらに別の局面に係わるスイッチング電源装置は、入力交流電圧を整流平滑する第1の1次側整流平滑回路と、1次側整流平滑回路によって整流平滑された電圧をさらに整流平滑する第2の1次側整流平滑回路と、1次巻線、2次巻線および制御巻線を含むトランスと、1次巻線に結合され、第2の1次側整流平滑回路によって整流平滑された電圧を、オン・オフすることにより交流電圧に変換し、変換した交流電圧を1次巻線に供給する主スイッチング素子と、2次巻線に誘起された交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換する2次側整流平滑回路と、制御巻線に結合され、制御巻線に誘起された交流電圧に基づいて主スイッチング素子をオンするための電流を主スイッチング素子の制御電極に供給し、かつ主スイッチング素子のオン期間を制御することにより、2次側整流平滑回路によって変換される直流電圧のレベルを制御する主制御回路とを備え、第1の1次側整流平滑回路は、整流平滑した電圧に基づいて主スイッチング素子の制御電極に電流を供給する。
【0020】
またこの発明のさらに別の局面に係わるスイッチング電源装置は、第1の入力ノードおよび第2の入力ノードから受けた入力交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換する1次側整流平滑回路と、1次巻線、2次巻線、制御巻線、および2次巻線より振幅の大きい交流電圧が誘起される補助巻線を含むトランスと、1次巻線に結合され、オン・オフすることにより直流電圧を交流電圧に変換し、変換した交流電圧を1次巻線に供給する主スイッチング素子と、2次巻線に誘起された交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換する2次側整流平滑回路と、補助巻線に誘起された交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換する補助用整流平滑回路と、制御巻線に結合され、制御巻線に誘起された交流電圧に基づいて主スイッチング素子をオンするための電流を主スイッチング素子の制御電極に供給し、かつ主スイッチング素子のオン期間を制御することにより、2次側整流平滑回路によって変換される直流電圧のレベルを制御する主制御回路と、補助用整流平滑回路の出力を短絡するか否かを切り替える出力短絡回路とを備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、適切な電力変換動作を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0023】
[構成および基本動作]
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図である。
【0024】
図1を参照して、スイッチング電源装置101は、ブリッジダイオードBD1と、コンデンサC1,C2,C4と、ダイオードD1〜D3と、ヒューズF1と、たとえばFET(Field Effect Transistor)である主スイッチング素子Q1と、抵抗R1A,R1B,R3と、トランスT1と、主制御回路21と、コンデンサC20と、ダイオードD20とを備える。トランスT1は、一次巻線N1と、制御巻線N2と、二次巻線N3とを含む。主制御回路21は、制御トランジスタQ2と、フォトカプラPC1のフォトトランジスタQ3と、コンデンサC5,C6と、抵抗R4〜R6とを含む。
【0025】
コンデンサC1は、入力ノードLと入力ノードNとの間に接続されている。抵抗R1AおよびダイオードD1は、入力ノードLと主スイッチング素子Q1のゲートとの間に直列接続されている。抵抗R1BおよびダイオードD2は、入力ノードNと主スイッチング素子Q1のゲートとの間に直列接続されている。
【0026】
ブリッジダイオードBD1は、抵抗R5を介して主スイッチング素子Q1のゲートに接続され、主スイッチング素子Q1のゲートおよび入力ノードL間に電流経路を形成し、かつ主スイッチング素子Q1のゲートおよび入力ノードN間に電流経路を形成している。
【0027】
ブリッジダイオードBD1において、ダイオードDAは、ダイオードD2と導通方向が同じになるように主スイッチング素子Q1のゲートと入力ノードLとの間に接続されている。また、ダイオードDBは、ダイオードD1と導通方向が同じになるように主スイッチング素子Q1のゲートと入力ノードNとの間に接続されている。
【0028】
抵抗R3およびコンデンサC2は、ダイオードD1およびダイオードD2と主スイッチング素子Q1の導通電極との間に直列接続されている。なお、抵抗R3およびコンデンサC2の接続順序は図1に示すものと逆であってもよい。
【0029】
ダイオードD3は、抵抗R3とダイオードD1およびダイオードD2との接続ノードと、主スイッチング素子Q1のゲートとの間に接続されている。
【0030】
より詳細には、抵抗R1Aは、ヒューズF1を介してノードLに接続された第1端と、ダイオードD1のアノードに接続された第2端とを有する。抵抗R1Bは、ノードNに接続された第1端と、ダイオードD2のアノードに接続された第2端とを有する。ダイオードD1およびD2は、ダイオードD3のアノードおよび抵抗R3の第1端に接続されたカソードを有する。ダイオードD3は、主スイッチング素子Q1のゲートに接続されたカソードを有する。抵抗R3は、コンデンサC2の第1端に接続された第2端を有する。
【0031】
ダイオードDAは、ヒューズF1を介してノードLに接続されたカソードを有する。ダイオードDBは、ノードNに接続されたカソードを有する。ダイオードDCおよびDDは、コンデンサC4の正電極および1次巻線N1の第1端に接続されたカソードを有する。
【0032】
主スイッチング素子Q1は、1次巻線N1の第2端に接続されたドレインを有する。
抵抗R4の第1端と、抵抗R6の第1端とが制御巻線N2の第1端に接続されている。抵抗R4の第2端とコンデンサC5の第1端とが接続されている。制御トランジスタQ2は、フォトトランジスタQ3のエミッタ、抵抗R6の第2端およびコンデンサC6の第1端に接続されたベースと、主スイッチング素子Q1のゲート、フォトトランジスタQ3のコレクタおよびコンデンサC5の第2端および抵抗R5の第1端に接続されたコレクタとを有する。
【0033】
コンデンサC2の第2端と、主スイッチング素子Q1のソースと、抵抗R5の第2端と、コンデンサC4の負電極と、ダイオードDAおよびDBのアノードと、制御トランジスタQ2のエミッタと、コンデンサC6の第2端とがトランスT1の1次側グランドすなわち制御巻線N2の第2端に接続されている。
【0034】
スイッチング電源装置101は、たとえばリンギングチョークコンバータ(RCC)方式のスイッチング電源である。
【0035】
トランスT1の1次巻線N1に主スイッチング素子Q1が直列接続されている。また、トランスT1の制御巻線N2の出力を、主制御回路21を介して主スイッチング素子Q1のゲートに帰還させることにより発振が継続される。
【0036】
コンデンサC1は、ノーマルモードノイズ対策用に配置されている。また、抵抗R1A,R1Bは、コンデンサC1に蓄えられた電荷を放電し、かつ主スイッチング素子Q1の起動回路となる。
【0037】
電源投入、すなわち入力ノードLおよびNならびにヒューズF1を介して入力交流電圧が供給されると、抵抗R1AまたはR1Bと抵抗R5とによって分圧された電圧が主スイッチング素子Q1のゲートに供給される。これにより、主スイッチング素子Q1内の接合容量が充電され、主スイッチング素子Q1のゲート電位が上昇する。そして、主スイッチング素子Q1のゲート電位が主スイッチング素子Q1の閾値電圧以上になると、主スイッチング素子Q1がオンし、1次巻線N1に電圧が印加されてトランスT1のコアに励磁エネルギーが蓄積される。
【0038】
また、入力交流電圧は、ブリッジダイオードBD1によって全波整流される。ブリッジダイオードBD1から出力された電圧は、コンデンサC4によって平滑され、直流入力電圧となる。
【0039】
主スイッチング素子Q1は、ゲートに供給される電圧に基づいてオン・オフするスイッチング動作を行なう。主スイッチング素子Q1は、スイッチング動作によりコンデンサC4の両端電圧である直流入力電圧を交流電圧に変換してトランスT1の一次巻線N1に供給する。
【0040】
制御巻線N2では、主スイッチング素子Q1のオン時に、1次巻線N1と同一方向に電圧が誘起される。この誘起電圧によってバイアス抵抗R4および直流カット用のコンデンサC5を介して主スイッチング素子Q1のゲートに誘起電流が与えられる。これにより、主スイッチング素子Q1はオン状態を維持する。また、この誘起電流は、フォトカプラPC1のフォトトランジスタQ3を介してコンデンサC6に与えられる。これにより、コンデンサC6が充電される。
【0041】
また、トランスT1の2次側出力電圧すなわち負荷RLへの出力電圧が大きくなるほど、フォトトランジスタQ3を通して流れるコンデンサC6の充電電流が大きくなり、コンデンサC6の端子間電圧は速く上昇する。
【0042】
コンデンサC6の端子間電圧は、主スイッチング素子Q1のゲート−ソース間に接続された制御トランジスタQ2のベースに与えられる。制御トランジスタQ2のベース電位が制御トランジスタQ2の閾値電圧以上になると、制御トランジスタQ2がオンする。これにより、主スイッチング素子Q1のゲート電位が低下し、主スイッチング素子Q1はオフする。すなわち、トランスT1の2次側出力電圧が大きくなるほど、すなわち負荷RLが軽負荷であるほど、コンデンサC6の端子間電圧が速く上昇し、主スイッチング素子Q1が早期にオフされる。
【0043】
そして、主スイッチング素子Q1がオフすると、制御巻線N2に主スイッチング素子Q1のゲート電位を負電位とするような電圧が誘起される。この誘起電圧により、抵抗R6を介してコンデンサC6の電荷が引き抜かれ、主スイッチング素子Q1が次にオンするための準備が行なわれる。
【0044】
主スイッチング素子Q1のオフした直後から、1次巻線N1によりトランスT1のコアに蓄積されていた励磁エネルギーの2次巻線N3側への出力が開始される。2次巻線N3において誘起された電圧は、ダイオードD20によって整流され、平滑コンデンサC20によって平滑化された後、負荷RLへ出力される。
【0045】
また、平滑コンデンサC20の両端には、図示しない電圧検出回路が接続される。この電圧検出回路は、分圧抵抗、およびフォトカプラPC1の発光ダイオードなどを含む。そして、フォトカプラPC1の発光ダイオードが負荷RLへの出力電圧に対応した輝度で点灯駆動される。これにより、負荷RLへの出力電圧値がフォトカプラPC1を介して、1次側の主制御回路21へフィードバックされる。
【0046】
トランスT1のコアに蓄積されていた励磁エネルギーが2次巻線N3からすべて放出されると、1次巻線N1の寄生容量に蓄積されていたエネルギーが1次巻線N1から放出され、1次巻線N1の寄生容量と1次巻線N1のインダクタとの間で共振すなわちリンギングが起こり、リンギング電圧が発生する。このリンギング電圧は、1次巻線N1と磁気的に結合している制御巻線N2に伝達される。制御巻線N2に伝達されたリンギング電圧は、抵抗R4およびコンデンサC5を伝達して主スイッチング素子Q1のゲートに与えられる。このリンギング電圧値は、定常発振状態で主スイッチング素子Q1の閾値電圧以上となるように設定されており、これにより主スイッチング素子Q1がオンする。以上のように、主スイッチング素子Q1が継続してオン・オフ駆動されることにより、初期発振状態から、定常発振状態へ移行する。
【0047】
コンデンサC6には、制御巻線N2で誘起された電流が抵抗R6を介して与えられる。これらの抵抗R6およびコンデンサC6の直列回路は、制御巻線N2と並列に接続され、過電流保護回路を構成している。この過電流保護回路によって、2次側短絡などが生じても、主スイッチング素子Q1のオン期間が所定期間に制限され、主スイッチング素子Q1の保護が図られている。
【0048】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置において、ノードLが正電位のときの電流経路を示す図である。
【0049】
図2を参照して、コンデンサC1のノードL側端子の電位がプラスであり、ノードN側端子の電位がマイナスである場合には、経路Aで示すような方向に電流が流れ、コンデンサC1の電荷が放電される。
【0050】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置において、ノードNが正電位のときの電流経路を示す図である。
【0051】
図3を参照して、コンデンサC1のノードN側端子の電位がプラスであり、ノードL側端子の電位がマイナスである場合には、経路Bで示すような方向に電流が流れ、コンデンサC1の電荷が放電される。
【0052】
ノードLが正電位であり、ノードNが負電位であるときには、コンデンサC1の電荷が抵抗R1A、ダイオードD1、ダイオードD2および抵抗R1Bの経路を通して放電されることが、ダイオードD2によって阻止される。また、ノードNが正電位であり、ノードLが負電位であるときには、コンデンサC1の電荷が抵抗R1B、ダイオードD2、ダイオードD1および抵抗R1Aの経路を通して放電されることが、ダイオードD1によって阻止される。
【0053】
これらの経路Aおよび経路Bを通して流れる電流は、いずれもコンデンサC1から抵抗R5を介してトランスT1の1次側グランドに至るまでに主スイッチング素子Q1のゲートを経由する。すなわち、経路Aおよび経路Bを通して流れる電流は、コンデンサC1の放電電流であるとともに、主スイッチング素子Q1の起動電流となる。
【0054】
このように、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置では、電源投入直後に主スイッチング素子Q1をオンするための起動抵抗の機能と、コンデンサC1の充電電荷を放電するための放電抵抗の機能とを、共通の抵抗回路が兼ねる。すなわち、放電抵抗の役割を図2に示す場合には抵抗R1AおよびR5が果たし、図3に示す場合には抵抗R1BおよびR5が果たす。また、起動抵抗の役割を図2に示す場合には抵抗R1Aが果たし、図3に示す場合には抵抗R1Bが果たす。
【0055】
これにより、起動抵抗および放電抵抗を別個に配置する構成と比べて、起動抵抗および放電抵抗による電力損失を低減することができる。すなわち、異なる機能を担う2つの回路ブロックと、これらの回路にそれぞれ流れる電流とを、それぞれ1つの回路ブロックおよび単一電流に統一している。異なる目的のために流される2つの電流を共通化することにより、電力損失を低減することができる。
【0056】
ここで、スイッチング電源装置101では、入力交流電圧がコンデンサC1の両端に印加されるため、経路Aおよび経路Bを通してそれぞれ流れる電流はコンデンサC1の両端電圧に伴い変動する。
【0057】
前述のように、2次側出力電圧を検知する図示しない電圧検出回路によってフォトカプラPC1のフォトトランジスタQ3にフィードバックされた帰還信号により、2次側出力電圧が一定となるように主スイッチング素子Q1のオン期間が制御される。
【0058】
ところが、主スイッチング素子Q1のゲートに入力交流電圧に連動した起動電流が供給されると、主スイッチング素子Q1のオン期間を調節するための帰還信号とは無関係の情報が、主スイッチング素子Q1のゲートへ入力されることとなり、結果として2次側出力電圧が入力交流電圧の影響を受けてリップル電圧成分を含んでしまう。
【0059】
しかしながら、スイッチング電源装置101では、抵抗R3、コンデンサC2およびダイオードD3により、抵抗R1AからダイオードD1への経路で整流された電流および抵抗R1BからダイオードD2への経路で整流された電流が、それぞれコンデンサC2で平滑された後に主スイッチング素子Q1のゲートに供給される。これにより、2次側出力電圧がリップル電圧成分を含んでしまうことを防ぐことができる。
【0060】
また、抵抗R3、コンデンサC2およびダイオードD3により、コンデンサC2の充電電荷による電流が主スイッチング素子Q1のゲートに供給される。したがって、抵抗R3、コンデンサC2およびダイオードD3の定数を適切に設定することにより、抵抗R1AおよびR1Bの抵抗値を大きくすることができるため、電力損失をさらに低減することができる。
【0061】
したがって、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置では、適切な電力変換動作を行なうことができる。
【0062】
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0063】
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置と比べてスイッチング素子を起動するための回路を別途設けたスイッチング電源装置に関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置と同様である。
【0064】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図である。
【0065】
図4を参照して、スイッチング電源装置102は、ブリッジダイオードBD1と、コンデンサC1,C4と、ヒューズF1と、たとえばFET(Field Effect Transistor)である主スイッチング素子Q1と、抵抗R11A,R11Bと、トランスT1と、主制御回路21と、起動電流用整流平滑回路12と、コンデンサC20と、ダイオードD20とを備える。トランスT1は、一次巻線N1と、制御巻線N2と、二次巻線N3とを含む。主制御回路21は、制御トランジスタQ2と、フォトカプラPC1のフォトトランジスタQ3と、コンデンサC5,C6と、抵抗R4〜R6とを含む。起動電流用整流平滑回路12は、ダイオードD11,D12と、コンデンサC2と、抵抗R12,R13とを含む。
【0066】
スイッチング電源装置102は、たとえば、軽負荷時に間欠発振を行なうことにより、効率を向上させる。
【0067】
すなわち、スイッチング電源装置102において、軽負荷時、負荷RLへの出力電圧の目標値を行き過ぎるハンチング動作が起こるように、平滑コンデンサC20の両端に接続された図示しない電圧検出回路のゲインが調整される。これにより、主スイッチング素子Q1の定常発振が、その定常発振の周波数より低い周波数で間欠的に起こる。たとえば、定常発振の周波数が数10kHzとすると、間欠発振の周波数は数Hzである。すなわち、スイッチング電源装置102では、主スイッチング素子Q1の定常発振が暫く続き、暫く止まり、暫く続く、という状態が繰り返される。
【0068】
ここで、主スイッチング素子Q1の定常発振が暫く続いている状態から暫く止まる状態に移行する切っ掛けが、上記ハンチング動作である。また、主スイッチング素子Q1の定常発振が暫く止まっている状態から暫く続く状態に移行する切っ掛けは、起動抵抗R12およびR13が与える。
【0069】
ダイオードD11ならびに抵抗R12およびR13は、入力ノードLと主スイッチング素子Q1の制御電極との間に直列接続されている。
【0070】
キャパシタC2は、ダイオードD11および抵抗R12の接続ノードに結合された第1端と、第2端とを有し、ダイオードD11によって整流された電圧を平滑化する。
【0071】
キャパシタC4は、ブリッジダイオードBD1に結合された正電極と、負電極とを有し、ブリッジダイオードBD1によって整流された電圧を平滑化する。
【0072】
ダイオードD12は、キャパシタC2の第1端とキャパシタC4の正電極との間に接続され、キャパシタC2からキャパシタC4への方向に導通する。
【0073】
より詳細には、ダイオードD11は、ヒューズF1を介してノードLに接続されたアノードと、抵抗R12の第1端、ダイオードD12のアノードおよびコンデンサC2の第1端に接続されたカソードとを有する。ダイオードD12は、コンデンサC4の正電極および1次巻線N1の第1端に接続されたカソードを有する。抵抗R13は、抵抗R12の第2端に接続された第1端と、主スイッチング素子Q1のゲートおよび抵抗R5の第1端に接続された第2端とを有する。コンデンサC2の第2端が、コンデンサC4の負電極と、ダイオードDAおよびDBのアノードと、制御巻線N2の第2端とに接続されている。
【0074】
ここで、スイッチング電源装置102が起動電流用整流平滑回路12を備えない構成であると仮定する。すなわち、コンデンサC4に蓄積された電荷は、トランスT1への電力供給源であるとともに、コンデンサC4に蓄積された電荷により、主スイッチング素子Q1のゲートへ起動電流が供給される構成であると仮定する。この場合、入力交流電圧の供給を停止した後も、軽負荷時は、コンデンサC4に蓄積された電力の減衰がゆるやかである。
【0075】
これに対して、スイッチング電源装置102では、コンデンサC4に蓄積された電荷によってトランスT1へ電力が供給される一方で、コンデンサC4とは別の電力源である起動電流用整流平滑回路12が設けられている。すなわち、この電力源は、入力交流電圧をダイオードD11で整流し、かつコンデンサC2で平滑化することにより、主スイッチング素子Q1のゲートに起動電流を供給する。
【0076】
したがって、コンデンサC4に電力が残っている場合でも、コンデンサC2に蓄えられた電荷が消費されれば、主スイッチング素子Q1のゲートに起動電流が供給されず、主スイッチング素子Q1がオフするため、間欠発振は停止する。コンデンサC2の容量を任意に設定することにより、間欠発振停止までの時間を任意に設定することができる。
【0077】
ここで、起動電流の供給を絶つと発振が停止する理由について説明する。前述のように、一般的にRCC方式のスイッチング電源では、電源投入初期に起動電流に依存した発振によってスイッチング動作が過渡的に行なわれる。しかしながら、定常発振状態に至れば制御巻線N2におけるリンギング電圧が主スイッチング素子Q1をオンするためのトリガとなり、自律的にスイッチング動作が継続される。このため、起動抵抗は実質的に連続動作の継続および停止には寄与しない。
【0078】
一方、軽負荷時に間欠発振を行なうことにより、効率を向上する動作を行なうRCC方式のスイッチング電源では、起動抵抗から供給される起動電流により定常発振状態へと移行することにより、間欠発振が継続される。このため、起動電流が絶たれればその時点で間欠発振は停止してしまう。
【0079】
したがって、本発明の第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置では、起動電流用整流平滑回路12により、入力交流電圧の供給停止後、特に軽負荷時に、起動電流を停止することにより、出力保持時間を任意に短く設定することが可能となる。
【0080】
また、コンデンサC4の両端電圧が減衰した状態でも、コンデンサC2の両端電圧が残留していると、起動電流が主スイッチング素子Q1のゲートに供給され続け、主スイッチング素子Q1はオン状態を維持する。この状態で、電源が再度投入される、すなわち入力交流電圧が再度供給されると、オンしている主スイッチング素子Q1を通して過大な電流が流れるため、主スイッチング素子Q1が破壊される可能性がある。
【0081】
しかしながら、スイッチング電源装置102では、ダイオードD12を配置することにより、コンデンサC4の両端電圧が減衰した場合、コンデンサC2の両端電圧もそれに伴い減衰させることができるため、主スイッチング素子Q1を確実にオフすることができる。
【0082】
その他の構成および動作は第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0083】
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0084】
<第3の実施の形態>
本実施の形態は、第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置と比べて分圧抵抗を追加したスイッチング電源装置に関する。以下で説明する内容以外は第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置と同様である。
【0085】
図5は、本発明の第3の実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図である。
【0086】
図5を参照して、スイッチング電源装置103は、スイッチング電源装置102と比べて、起動電流用整流平滑回路12の代わりに起動電流用整流平滑回路13を備える。起動電流用整流平滑回路13は、ダイオードD11,D12と、コンデンサC2と、抵抗R21,R22,R23とを含む。
【0087】
抵抗R21は、ダイオードD11のカソードに接続された第1端と、抵抗R22の第1端、抵抗R23の第1端、ダイオードD12のアノードおよびコンデンサC2の第1端に接続された第2端とを有する。抵抗R22の第2端とコンデンサC2の第2端とが接続されている。抵抗R23の第2端と主スイッチング素子Q1のゲートとが接続されている。
【0088】
抵抗R21,R22は、ダイオードD11を介してコンデンサC2に印加される電圧を分圧する。これにより、コンデンサC2の耐圧を小さくすることができるため、コンデンサC2の単価低減および実装スペースの低減を実現することができる。なお、抵抗R21,R22において常に一定の電力が消費されるため、消費電力の観点からは、本発明の第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置の方が優れている。
【0089】
その他の構成および動作は第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0090】
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0091】
<第4の実施の形態>
本実施の形態は、第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置と比べてブリッジダイオードBD1を備えない構成としたスイッチング電源装置に関する。以下で説明する内容以外は第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置と同様である。
【0092】
図6は、本発明の第4の実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図である。
【0093】
図6を参照して、スイッチング電源装置104は、第1整流平滑回路14と、第2整流平滑回路15と、コンデンサC1と、ヒューズF1と、たとえばFET(Field Effect Transistor)である主スイッチング素子Q1と、抵抗R11A,R11B,R12,R13と、トランスT1と、主制御回路21と、コンデンサC20と、ダイオードD20とを備える。トランスT1は、一次巻線N1と、制御巻線N2と、二次巻線N3とを含む。主制御回路21は、制御トランジスタQ2と、フォトカプラPC1のフォトトランジスタQ3と、コンデンサC5,C6と、抵抗R4〜R6とを含む。第1整流平滑回路14は、ダイオードD21と、コンデンサC22とを含む。第2整流平滑回路15は、ダイオードD22と、コンデンサC24とを含む。
【0094】
第1整流平滑回路14は、入力交流電圧を整流平滑し、整流平滑した電圧によって主スイッチング素子Q1の制御電極に電流を供給する。
【0095】
第2整流平滑回路15は、第1整流平滑回路14によって整流平滑された電圧をさらに整流平滑する。
【0096】
主スイッチング素子Q1は、1次巻線N1に結合され、第2整流平滑回路15によって整流平滑された電圧を、オン・オフすることにより交流電圧に変換し、変換した交流電圧を1次巻線N1に供給する。
【0097】
すなわち、スイッチング電源装置104では、コンデンサC22で平滑した直流電圧を抵抗R12およびR13に印加して主スイッチング素子Q1のゲートへ起動電流を供給する一方、コンデンサC22で平滑した直流電圧を後段のダイオードD22およびコンデンサC24により整流平滑してトランスT1へ供給する。
【0098】
特に、スイッチング電源装置が軽負荷用であり、ダイオードD21およびD22を縦列配置することによる損失が問題とならない場合であって、入力交流電圧を全波整流する必要がないときには、スイッチング電源装置104のような構成が好適である。スイッチング電源装置104では、本発明の第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置と比べて部品点数を少なくすることができる。
【0099】
その他の構成および動作は第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0100】
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0101】
<第5の実施の形態>
本実施の形態は、第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置と比べて異常検出機能を追加したスイッチング電源装置に関する。以下で説明する内容以外は第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置と同様である。
【0102】
図7は、本発明の第5の実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図である。
【0103】
図7を参照して、スイッチング電源装置105は、本発明の第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置と比べて、トランスT1の代わりにトランスT2を備え、さらに、ダイオードD21と、コンデンサC21と、サイリスタSCR1と、ゲート回路16とを備える。トランスT2は、一次巻線N1と、制御巻線N2と、二次巻線N3と、補助巻線N4とを含む。
【0104】
補助巻線N4では、2次巻線N3より振幅の大きい交流電圧が誘起される。ダイオードD21は、補助巻線N4に誘起された電圧を整流する。コンデンサC21は、ダイオードD21によって整流された電圧を平滑化する。
【0105】
ゲート回路16は、異常検出時、サイリスタSCR1を導通させることにより、コンデンサC21の両端をショートする。ここで、検出される「異常」としては、スイッチング電源装置105の出力電圧制御機能が壊れ、出力電圧が異常に高くなってしまった場合、スイッチング電源装置105の能力以上の電流を要求する負荷が接続され、スイッチング電源装置105が過電流出力状態になってしまった場合、およびスイッチング電源装置105が設置されている周囲の温度が異常に上昇した場合などがある。
【0106】
図8は、本発明の第5の実施の形態に係るスイッチング電源装置が補助巻線N4を備えないと仮定した構成を示す図である。
【0107】
図8を参照して、このスイッチング電源装置では、出力シャットダウン形式の保護機能を実現する。すなわち、異常検出時に出力端をサイリスタでショートし、後述する図9に示すような出力特性を利用して、出力のシャットダウンを実現している。
【0108】
ゲート回路16は、異常検出時、サイリスタSCR1を導通させることにより、負荷RLへの2つの出力端をショートする。
【0109】
図9は、図8に示す構成における出力電流−出力電圧特性と、サイリスタによるクランプ電圧との関係を示す図である。
【0110】
図9において、グラフG1は定格出力電圧が高い場合を示し、グラフG2は定格出力電圧が低い場合を示す。また、VSはクランプ電圧、すなわちサイリスタSCR1が導通したときの負荷RLへの出力端間の電圧である。
【0111】
図9を参照して、定格出力電圧が比較的高い場合(グラフG1)、サイリスタSCR1の導通時は定格出力電圧に比べて出力電圧が十分低下するため、出力電力は、最大出力電力(点a)に対して十分小さな電力となる(点A)。
【0112】
しかしながら、定格出力電圧が比較的低い場合(グラフG2)、定格出力電圧が比較的高い場合と比べて、サイリスタSCR1の導通時、定格出力電圧に対する減衰比率は小さい。すなわち、最大出力電力(点b)とサイリスタSCR1の導通時の出力電力との差が小さい(点B)。
【0113】
このように、定格出力電圧が比較的低い場合には、異常検出時の保護動作において、スイッチング電源装置の最大出力電力と大差ない電力が出力され続けてしまう。したがって、異常を検出した場合に回路にとってストレスの少ない動作モードへ移行し、この動作モードを維持するという保護回路としての本来の目的を果たさないことになる。
【0114】
しかしながら、本発明の第5の実施の形態に係るスイッチング電源装置では、トランスT2の2次側に二次巻線N3より高い電圧を出力する補助巻線N4を追加し、補助巻線N4の出力を整流して平滑した副出力に対して、異常検出時にサイリスタによる短絡動作を行なう。このような構成により、定格出力電圧が低い場合でも、回路にとってストレスの少ない動作モードに移行しそれを維持するという保護回路としての本来の目的を果たすことができる。
【0115】
図10は、本発明の第5の実施の形態に係るスイッチング電源装置における出力電流−出力電圧特性と、サイリスタによるクランプ電圧との関係を示す図である。
【0116】
図10において、グラフG3は主出力電力が0のときの副出力を示し、グラフG4は副出力電力が0のときの主出力を示す。ここで、主出力とは、二次巻線N3の出力を整流して平滑した出力である。また、VSはクランプ電圧、すなわちサイリスタSCR1が導通したときの出力端間電圧である。AR1は、サイリスタSCR1が導通したときの副出力電力を示し、AR2は、AR1で示される副出力電力を主出力電力に換算した結果を示す。
【0117】
図10を参照して、異常検出時、サイリスタSCR1が導通すると、副出力は点Cで示す状態となる。この動作点Cでの出力電力を主出力に換算すると、点Dに相当する。すなわち、グラフG4においても、最大出力電力を与える動作点bに対して主出力の電力を十分小さくすることが可能となる。
【0118】
グラフG3に示すように、サイリスタ導通時の副出力の出力電圧をサイリスタ非導通時よりも十分大きくすることにより、図10に示すスイッチング電源装置の出力特性を決定している主制御回路21が、サイリスタ導通時、図10に示す出力特性において出力電力の十分小さい領域へ動作状態を移行する。これにより、二次巻線N3から取り出される電力を低減することができる。
【0119】
その他の構成および動作は第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0120】
本発明は、電源システムの一部として常時動作し、この電源システムにおける他の電源ブロックの動作および停止を司る回路へ電力を供給する待機電源として使用されるRCC方式のスイッチング電源装置に好適である。
【0121】
すなわち、このような用途では、スイッチング電源装置が常時動作していることから、軽負荷時の消費電力の低減が特に必要となるが、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置では、これを実現する。
【0122】
また、軽負荷時の出力保持時間低減の要求と、定格負荷での出力保持時間増大の要求を両立させる必要がある場合、本発明の第2〜第5の実施の形態に係るスイッチング電源装置では、これを実現する。
【0123】
また、待機電源は、最低限必要な電力を回路ブロックへ供給する必要があるため、出力電圧が3V〜5Vと比較的小さい場合がある。このような低電圧出力のRCC方式のスイッチング電源の出力端をサイリスタなどで短絡し、図9に示すような出力フの字特性を利用する場合には、出力電圧が低いことが原因で出力電力をセーブしきれない不具合が起こり得る。本発明の第5の実施の形態に係るスイッチング電源装置では、この不具合を回避する。
【0124】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置において、ノードLが正電位のときの電流経路を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置において、ノードNが正電位のときの電流経路を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係るスイッチング電源装置が補助巻線N4を備えないと仮定した構成を示す図である。
【図9】図8に示す構成における出力電流−出力電圧特性と、サイリスタによるクランプ電圧との関係を示す図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態に係るスイッチング電源装置における出力電流−出力電圧特性と、サイリスタによるクランプ電圧との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0126】
101〜105 スイッチング電源装置、BD1 ブリッジダイオード、C1,C2,C4〜C6,C20,C21,C24 コンデンサ、D1〜D3,D11,D12,D20,D21,D22 ダイオード、F1 ヒューズ、Q1 主スイッチング素子、Q2 制御トランジスタ、Q3 フォトトランジスタ、PC1 フォトカプラ、R1A,R1B,R3,R4〜R6,R11A,R11B,R12,R13,R21,R22,R23 抵抗、T1,T2 トランス、21 主制御回路、N1 一次巻線、N2 制御巻線、N3 二次巻線、N4 補助巻線、L,N ノード、12,13 起動電流用整流平滑回路、14 第1整流平滑回路、15 第2整流平滑回路、16 ゲート回路、SCR1 サイリスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力ノードおよび第2の入力ノードから受けた入力交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換する1次側整流平滑回路と、
1次巻線、2次巻線および制御巻線を含むトランスと、
前記1次巻線に結合され、オン・オフすることにより前記直流電圧を交流電圧に変換し、前記変換した交流電圧を前記1次巻線に供給する主スイッチング素子と、
前記2次巻線に誘起された交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換する2次側整流平滑回路と、
前記制御巻線に結合され、前記制御巻線に誘起された交流電圧に基づいて前記主スイッチング素子をオンするための電流を前記主スイッチング素子の制御電極に供給し、かつ前記主スイッチング素子のオン期間を制御することにより、前記2次側整流平滑回路によって変換される直流電圧のレベルを制御する主制御回路と、
前記第1の入力ノードと前記第2の入力ノードとの間に接続された第1のキャパシタと、
前記第1の入力ノードと前記主スイッチング素子の制御電極との間に直列接続された第1の抵抗および第1のダイオードと、
前記第2の入力ノードと前記主スイッチング素子の制御電極との間に直列接続された第2の抵抗および第2のダイオードとを備え、
前記1次側整流平滑回路は、前記主スイッチング素子の制御電極に結合され、前記主スイッチング素子の制御電極および前記第1の入力ノード間に電流経路を形成し、かつ前記主スイッチング素子の制御電極および前記第2の入力ノード間に電流経路を形成しているスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記主スイッチング素子の制御電極に対する前記第1のダイオードの導通方向および前記第2のダイオードの導通方向が同じであり、
前記1次側整流平滑回路は、
前記第2のダイオードと導通方向が同じになるように前記主スイッチング素子の制御電極と前記第1の入力ノードとの間に接続された第3のダイオードと、
前記第1のダイオードと導通方向が同じになるように前記主スイッチング素子の制御電極と前記第2の入力ノードとの間に接続された第4のダイオードとを含む請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記第1の抵抗は、前記第1の入力ノードと前記第1のダイオードとの間に接続され、
前記第2の抵抗は、前記第2の入力ノードと前記第2のダイオードとの間に接続され、
前記スイッチング電源装置は、さらに、
前記第1のダイオードおよび前記第2のダイオードと前記主スイッチング素子の導通電極との間に直列接続された第3の抵抗および第2のキャパシタと、
前記第3の抵抗または前記第2のキャパシタと前記第1のダイオードおよび前記第2のダイオードとの接続ノードと、前記主スイッチング素子の制御電極との間に接続された第5のダイオードとを備える請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
第1の入力ノードおよび第2の入力ノードから受けた入力交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換する1次側整流平滑回路と、
1次巻線、2次巻線および制御巻線を含むトランスと、
前記1次巻線に結合され、オン・オフすることにより前記直流電圧を交流電圧に変換し、前記変換した交流電圧を前記1次巻線に供給する主スイッチング素子と、
前記2次巻線に誘起された交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換する2次側整流平滑回路と、
前記制御巻線に結合され、前記制御巻線に誘起された交流電圧に基づいて前記主スイッチング素子をオンするための電流を前記主スイッチング素子の制御電極に供給し、かつ前記主スイッチング素子のオン期間を制御することにより、前記2次側整流平滑回路によって変換される直流電圧のレベルを制御する主制御回路と、
前記入力交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換し、前記変換した直流電圧に基づいて前記主スイッチング素子の制御電極に電流を供給する起動電流用整流平滑回路とを備えるスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記1次側整流平滑回路は、
前記第1の入力ノードおよび前記第2の入力ノードに結合され、前記入力交流電圧を整流する第1のダイオードと、
前記第1のダイオードに結合された第1端と、第2端とを有し、前記第1のダイオードによって整流された電圧を平滑化する第1のキャパシタとを含み、
前記起動電流用整流平滑回路は、
前記第1の入力ノードと前記主スイッチング素子の制御電極との間に接続され、前記入力交流電圧を整流する第2のダイオードと、
前記第2のダイオードに結合された第1端と、第2端とを有し、前記第2のダイオードによって整流された電圧を平滑化する第2のキャパシタと、
前記第1のキャパシタの第1端と前記第2のキャパシタの第1端との間に接続され、前記第2のキャパシタから前記第1のキャパシタへの方向に導通する第3のダイオードを含む請求項4記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記起動電流用整流平滑回路は、さらに、
前記第3のダイオードによって整流された電圧を分圧して前記第2のキャパシタに印加するための分圧抵抗を含む請求項5記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
入力交流電圧を整流平滑する第1の1次側整流平滑回路と、
前記1次側整流平滑回路によって整流平滑された電圧をさらに整流平滑する第2の1次側整流平滑回路と、
1次巻線、2次巻線および制御巻線を含むトランスと、
前記1次巻線に結合され、前記第2の1次側整流平滑回路によって整流平滑された電圧を、オン・オフすることにより交流電圧に変換し、前記変換した交流電圧を前記1次巻線に供給する主スイッチング素子と、
前記2次巻線に誘起された交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換する2次側整流平滑回路と、
前記制御巻線に結合され、前記制御巻線に誘起された交流電圧に基づいて前記主スイッチング素子をオンするための電流を前記主スイッチング素子の制御電極に供給し、かつ前記主スイッチング素子のオン期間を制御することにより、前記2次側整流平滑回路によって変換される直流電圧のレベルを制御する主制御回路とを備え、
前記第1の1次側整流平滑回路は、前記整流平滑した電圧に基づいて前記主スイッチング素子の制御電極に電流を供給するスイッチング電源装置。
【請求項8】
第1の入力ノードおよび第2の入力ノードから受けた入力交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換する1次側整流平滑回路と、
1次巻線、2次巻線、制御巻線、および前記2次巻線より振幅の大きい交流電圧が誘起される補助巻線を含むトランスと、
前記1次巻線に結合され、オン・オフすることにより前記直流電圧を交流電圧に変換し、前記変換した交流電圧を前記1次巻線に供給する主スイッチング素子と、
前記2次巻線に誘起された交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換する2次側整流平滑回路と、
前記補助巻線に誘起された交流電圧を整流平滑することにより直流電圧に変換する補助用整流平滑回路と、
前記制御巻線に結合され、前記制御巻線に誘起された交流電圧に基づいて前記主スイッチング素子をオンするための電流を前記主スイッチング素子の制御電極に供給し、かつ前記主スイッチング素子のオン期間を制御することにより、前記2次側整流平滑回路によって変換される直流電圧のレベルを制御する主制御回路と、
前記補助用整流平滑回路の出力を短絡するか否かを切り替える出力短絡回路とを備えるスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−284636(P2009−284636A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133371(P2008−133371)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】