説明

スイッチ押圧部材の支持構造、及びスイッチ押圧部材

【課題】キートップを弾性押圧部材に対して接着剤を用いて接着する場合に剥離を防止するために接着剤量を増量したとしても、余剰接着剤が接着部外周に溜まって硬化して係止突起と干渉する不具合をなくすることができる。
【解決手段】スイッチ11を内奥部に配置した開口部2を備えたパネル1と、開口部内に嵌合配置され開口部の内周に設けた係止突起3により外周を係止されたスイッチ押圧部材20と、を備え、スイッチ押圧部材は、係止突起の前方に位置した樹脂製キートップ21と、前面をキートップの背面に接着されると共に外周部を係止突起により支持された弾性押圧部材30と、を備え、弾性押圧部材は、係止突起の内径空所内を内外方向へ進退する基部31と、基部の後部から外径方向へ突出して係止突起に係止される被係止部32と、を備え、基部の前面外周部には、接着剤溜まり部35を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばオーディオ機器、カー・ナビゲーション装置等の車載機器に装備される操作キーの改良に関し、特に車載機器の薄型化に対応して薄型化が求められる操作キーに好適なスイッチ押圧部材の支持構造、及びスイッチ押圧部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のダッシュボードには、オーディオ機器、ナビゲーションシステム、空調機器等の各種機器を操作するための操作キー類が配置されている。
車載機器は、車室内のダッシュボード面の限られたスペースに設置されるため、機器自体の薄型化が求められており、それに伴って機器に装備される操作キー類にも薄型化が求められている。操作キー類を薄型化することにより、キートップがパネルから突出する量が減縮される。
【0003】
図7(a)及び(b)は従来の薄型化された操作キーの組付け構造を示す断面図、及びスイッチ押圧部材の構成を示す断面図である(例えば、特許文献1)。(a)に示すように機器のフロントパネル100には操作キー装着用の開口部101が形成されており、開口部101の内周には係止突起102が突設されている。更に開口部101の内奥部に固定されたプリント基板110の前面にはメンブレンスイッチ、或いはタクトスイッチ等のスイッチ111が配置されている。開口部101内にはスイッチ押圧部材120が支持されている。
スイッチ押圧部材120は、係止突起102の前方に位置して平坦な背面121aを有し且つ係止突起の内径よりも大径の樹脂製のキートップ121と、接着剤125により前面130aをキートップの背面121aに接着されると共に外周部を係止突起102により抜け落ち不能に支持されるシリコンゴム製の弾性押圧部材130と、を備えている。
スイッチ押圧部材120は、開口部101内に配置されて係止突起102により脱落不能に支持されている。図7(a)のようにスイッチ押圧部材120の前面を押し込んでいない時にはスイッチ111を構成する図示しない2つの接点が離間したオフ状態となっている一方で、スイッチ押圧部材120を押し込んで弾性変形させた場合にはスイッチ押圧部材の背面がスイッチ111を押圧して2つの接点をオンさせる。
【0004】
弾性押圧部材130は、係止突起102の内径空所内を内外方向へ進退する基部131と、基部の後部から外径方向へ突出して係止突起の背面に係止される被係止部132と、スイッチ111と接してこれを押し込む突起130Aと、を備えている。
薄板状のキートップ121の平面状の背面121aと、伸縮自在な弾性押圧部材130の平面状の前面130aとを接着剤125により接着することにより薄型化を達成しているが、平面同士を接着剤により接着しているため、塗布する接着剤量を適切にコントロールできない場合には種々の不具合が発生していた。即ち、接着剤量が少ないと弾性押圧部材からキートップが剥離し易くなり、接着剤量が多すぎると図7(a)に示したように接着剤125が両部材の接着面の外周にあふれ出す。あふれ出した接着剤125が硬化すると係止突起102と干渉し易い状態となり、キートップを矢印A方向へ押圧した時に必要ストロークSを確保することができず、オンしない、クリック感が得られない(感触不良)等の不具合を起こす虞があった。
【0005】
次に、上記の如き車載用機器に装備される操作キー類の薄型化は、キートップがパネル面から突出する突出量の低減となって現れる。
ドライバーが操作キーのキートップの位置を指先で判別して押圧する際の操作性を高めるためには、ある程度キートップがパネルよりも突出していることが好ましい一方で、機器の薄型化に対応したり、デザイン的な配慮からは、キートップの突出量は少ない方が好ましい。しかし、キートップの前面がパネル面と面一になる程度に突出量を抑えるとすれば、運転中のドライバーが指先の感触だけで操作キーの位置を確認する際に不便であるばかりでなく、指先が操作キーを嵌合させているパネルの開口部の周縁にも同時に触れてしまいキートップだけを押し込むことが難しくなる。
しかし、キートップ121を若干でもパネル前面よりも突出させた場合、パネル前面から突出したキートップ121の外周部121bに異物が引っ掛かったり、貼り付いた場合に、この異物を除去するためにキートップが引っ張られると、図7(c)に示すようにシリコンゴム製の弾性押圧部材130の被係止部132が引き延ばされて破断したり、被係止部132が係止突起102から離脱して修復不能に陥ることがある。特に、図7(d)に示すように基部131から袴状に延びる被係止部132の肉厚Tは、クリックストロークCを確保するためにあえて薄肉化しているため、その強度を高めるために厚肉化することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−72129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように車載用機器に装備されている操作キーにあっては、樹脂製のキートップを樹脂製の弾性押圧部材に対して接着剤を用いて接着していたため、接着剤量のコントロールが難しく、接着剤量が過少な場合には部材間が剥離し、接着剤量が過大な場合には余剰接着剤が接着部外周に溜まって硬化して係止突起と干渉し易い状態となり、キートップを押圧した時に必要ストロークを確保することができず、オンしない、クリック感が得られない(感触不良)等の不具合を起こす虞があった。
また、操作性を高めるためにはキートップはパネル面から若干突出していることが好ましいが、この場合にはキートップの周縁に異物が引っ掛かったり、貼り付くことがあり、この異物を除去するために操作キーを強く引き出すと、操作キーが破損することがあった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、樹脂製のキートップを樹脂製の弾性押圧部材に対して接着剤を用いて接着する場合に剥離を防止するために接着剤量を増量したとしても、余剰接着剤が接着部外周に溜まって硬化して係止突起と干渉する不具合をなくすることができるスイッチ押圧部材の支持構造を提供することを目的としている。
また、本発明は、操作性を高めるためにキートップをパネル面から若干突出させた場合に、キートップの周縁に付着した異物を除去するために操作キーを強く引き出したとしても、操作キーが破損することを防止することができるスイッチ押圧部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、スイッチを内奥部に配置した開口部を備えたパネルと、該開口部内に嵌合配置され該開口部の内周に設けた係止突起により外周を係止されたスイッチ押圧部材と、を備えたスイッチ押圧部材の支持構造であって、前記スイッチ押圧部材は、前記係止突起の前方に位置したキートップと、接着剤により前面を該キートップの背面に接着されると共に外周部を前記係止突起により抜け落ち不能に支持され、且つ前記キートップ前面を押圧しない時には前記スイッチをオフ状態に維持する一方で、前記キートップ前面を所定量以上押圧したときに弾性変形して前記スイッチをオンさせる弾性押圧部材と、を備え、前記弾性押圧部材は、前記係止突起の内径空所内を内外方向へ進退する基部と、該基部の後部から外径方向へ突出して前記係止突起に係止される被係止部と、を備え、前記基部の前面外周部に、接着剤溜まり部を備えたことを特徴とする。
キートップを弾性押圧部材に対して接着剤を用いて接着する場合には接着剤量の調整が難しいため、余剰接着剤が接着部外周に溜まって硬化して係止突起と干渉することがある。本発明では、弾性押圧部材に接着剤溜まり部を設けたので、このような不具合をなくすることができる。
【0009】
請求項2の発明は、前記係止突起の内周には、前記接着剤溜まり部に保持された接着剤との干渉を回避する接着剤回避部が形成されていることを特徴とする。
係止突起側に接着剤回避部を設けることにより、スイッチ押圧部材側の余剰接着剤との緩衝を防止できる。
請求項3の発明は、前記接着剤溜まり部は、前記基部の前面外周部の外径を後方へ向けてテーパー状に拡開させたテーパー面であることを特徴とする。
請求項4の発明は、前記接着剤回避部は、前記係止突起の内周の少なくとも一部の内径を、前方から後方へ向けてテーパー状に漸減させたテーパー面であることを特徴とする。
請求項5の発明は、前記接着剤溜まり部は、前記基部の前面外周部の外径を後方へ向けて段差状に拡開させた段差面であることを特徴とする。
請求項6の発明は、前記接着剤回避部は、前記係止突起の内周の少なくとも一部の内径を、前方から後方へ向けて段差状に漸減させた段差面であることを特徴とする。
【0010】
請求項7の発明は、スイッチを内奥部に配置した開口部を備えたパネルの該開口部内に嵌合配置され該開口部の内周に設けた係止突起により外周を係止されたスイッチ押圧部材であって、前記スイッチ押圧部材は、前記係止突起の前方に位置した樹脂製キートップと、前面を該キートップの背面に固定されると共に外周部を前記係止突起により抜け落ち不能に支持され、且つ前記キートップ前面を押圧しない時には前記スイッチをオフ状態に維持する一方で、前記キートップ前面を所定量以上押圧したときに弾性変形して前記スイッチをオンさせる弾性押圧部材と、を備え、前記弾性押圧部材は、前記係止突起の内径空所内を内外方向へ進退する基部と、該基部の後部から外径方向へ突出して前記係止突起に係止される袴状の被係止部と、を備え、前記被係止部は、前記基部の後部外周から外径方向へ拡開して前面にて前記係止突起と接触する被係止面と、該被係止面の外周部から後方へ屈曲して延びる筒状の脚部と、を備え、前記被係止部の内面には、前記基部の後面外周から前記脚部内壁にかけて断面テーパー状の厚肉部が形成されていることを特徴とする。
キートップが押圧方向とは逆方向へ引っ張られた場合であっても、弾性押圧部材の被係止部の内側面の一部を厚肉としたので、被係止部が必要以上に延びることを防止でき、スイッチ押圧部材が係止突起から離脱して抜き取られたり、被係止部がちぎれるといった不具合を解消することができる。
請求項8の発明は、前記基部の後面外周と前記厚肉部との連結部には補強薄肉部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂製のキートップを樹脂製の弾性押圧部材に対して接着剤を用いて接着する場合に剥離を防止するために接着剤量を増量したとしても、余剰接着剤が接着部外周に溜まって硬化して係止突起と干渉する不具合をなくすることができる。
また、操作性を高めるためにキートップをパネル面から若干突出させた場合に、キートップの周縁に付着した異物を除去するために操作キーを強く引き出したとしても、操作キーが破損することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るスイッチ押圧部材の支持構造の構成を示す断面図である。
【図2】(a)及び(b)は第2の実施形態におけるキートップ非押圧時、及び押圧時を示す断面図である。
【図3】(a)及び(b)は本発明のスイッチ部材の支持構造を説明するための分解斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るスイッチ部材の支持構造を説明するための縦断面図である。
【図5】パネルに設けた開口部内に、2つの樹脂パーツからなる固定部品を嵌合して固定した状態を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るスイッチ押圧部材とこのスイッチ押圧部材の支持構造を示す断面図であり、(a)は非押圧状態、(b)は押圧状態、(c)はスイッチ押圧部材が引抜き方向へ引かれた状態を夫々示している。
【図7】(a)及び(b)は従来の薄型化された操作キーの組付け構造を示す断面図、及びスイッチ押圧部材の構成を示す断面図、(c)及び(d)は他の従来例の構成、及び欠点を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るスイッチ押圧部材の支持構造の構成を示す断面図であり、図2(a)及び(b)は第2の実施形態におけるキートップ非押圧時、及び押圧時を示す断面図である。また、図3(a)及び(b)は本発明のスイッチ部材の支持構造を説明するための分解斜視図である。
本発明に係るスイッチ押圧部材の支持構造は、オーディオ機器、カー・ナビゲーション装置等の車載機器を構成する操作キーに適用される。
車載機器のフロントパネル1には操作キー装着用の開口部2が形成されており、開口部2の内周には係止突起3が突設されている。更に開口部2の内奥部に固定されたプリント基板10の前面にはメンブレンスイッチ、或いはタクトスイッチ等のスイッチ11が配置されている。開口部2内にはスイッチ押圧部材20が脱落不能な状態で支持されている。操作キーは、パネルの開口部2(係止突起3)と、スイッチ11と、スイッチ押圧部材20と、から構成されている。
スイッチ押圧部材20は、開口部2の内部に嵌合配置されて係止突起3により脱落不能に支持されている。
【0014】
図1のようにスイッチ押圧部材20の前面をスイッチ11へ向けて押し込んでいない時には、キートップ21の前面21aはパネル面よりも若干突出している。また、この状態では、スイッチ11を構成する図示しない2つの接点が離間したオフ状態となっている一方で、スイッチ押圧部材20を押し込んで弾性変形させた場合にはスイッチ押圧部材の背面がスイッチ11を押圧して2つの接点をオンさせる。
スイッチ押圧部材20は、係止突起3の前方に位置して平坦な背面21bを有し、且つ係止突起の内径よりも大径の樹脂製のキートップ21と、接着剤25により前面30aをキートップの背面21bに接着されると共に外周部を係止突起3により抜け落ち不能に支持されるシリコンゴム製の弾性押圧部材30と、を備えている。弾性押圧部材30の背面にはスイッチ11と接してこれを押し込むための突起30Aが設けられている。突起30Aは、弾性押圧部材30と同じシリコンゴム材料から構成されている。本例では、突起30Aは弾性押圧部材30の背面に設けた凹所内に位置しているが、平坦な背面から直接突設してもよい。
スイッチ押圧部材20を開口部2に組み付けるに際しては、開口部2の前面側及び後面側から夫々キートップ21と弾性押圧部材30をあてがい、両部材21、30の対向面同士を接着剤25により接着する。
【0015】
弾性押圧部材30は、係止突起3の内径空所内を内外方向へ進退する基部31と、基部の後部から外径方向へ袴状に突出して係止突起の背面に係止される被係止部32と、を備えている。被係止部32の後端縁は、プリント基板10の前面に当接した状態に設置される。
薄板状のキートップ21の平面状の背面21bと弾性押圧部材30の平面状の前面30aとの接着を接着剤25により行うことにより薄型化を達成している。
図1に示した本発明に係るスイッチ押圧部材の支持構造の特徴的な構成は、基部31の前面外周部に、後方へ向けて外径がテーパー状に漸増するテーパー面(接着剤溜まり部)35を設けた点にある。
このように基部31の前面外周部に余剰接着剤を溜めるための接着剤溜まり部35を設けたことにより、余剰接着剤は接着剤溜まり部35内部に収容されて硬化するため、係止突起3と干渉してスイッチ押圧部材の進退動作を妨げることがなくなる。
【0016】
次に、図2の実施形態では、筒状の前面外周部に設けた接着剤溜まり部35に加えて、係止突起3の内周に、前方から後方へ向けて内径が漸減するテーパー面(接着剤回避部)5が形成されている。
このように係止突起3の内周に、余剰接着剤25を回避するための接着剤回避部5を形成したため、余剰接着剤と係止突起3との干渉回避が更に進み、スイッチ押圧部材の進退動作を妨げることがなくなる。このため、スイッチ押圧部材を押圧した時に、引っ掛かりなく、クリック感を得るための必要ストロークを確保することができる。
なお、接着剤溜まり部35を設けずに、接着剤回避部5だけを設けても良い。
なお、接着剤溜まり部35は、キートップ21の背面と弾性押圧部材30の前面との間から外周方向へあふれ出した余剰接着剤を捕捉して溜めることができるスペース(凹所、空所)を形成し得る構成であればどのような形状であってもよい。従って、テーパー面でなくても、曲面状の凹所等であってもよい。
また、接着剤回避部5についても、キートップ21の背面と弾性押圧部材30の前面との間から外周方向へあふれ出した余剰接着剤との干渉を回避できる形状であればどのような形状であってもよい。
【0017】
例えば、図4は本発明の他の実施形態の構成を示す断面図であり、接着剤溜まり部35と接着剤回避部5の各断面形状を段差状(階段状)とした構成が特徴的である。このように接着剤溜まり部35の形状は、余剰接着剤を溜めることにより係止突起3側への余剰接着剤の突出量を減殺させることができればどのような形状であってもよい。また、接着剤回避部5の形状は、スイッチ押圧部材の外周面に突出した余剰接着剤との干渉を回避できることができる退避形状であればどのような形状であってもよい。
なお、上記実施形態では、固定部品としてのパネルに設けた係止突起3と、可動部品としてのスイッチ押圧部材20とが、余剰接着剤により互いに干渉する不具合を解消するための構成について提案したが、このような構造は、パネルと、パネルに接着する固定部品との接合部にも適用することができる。
即ち、図5の実施形態は、パネル1に設けた開口部2内に、2つの樹脂パーツ51、52から成る固定部品50を嵌合して固定した状態を示す断面図である。固定に際しては、開口部2の前面側及び後面側から夫々前部樹脂パーツ51と後部樹脂パーツ52をあてがい、両部材の対向面同士を接着剤55により接着する。
前部樹脂パーツ51の平坦な背面と、後部の樹脂パーツ52の平坦な前面との間は接着剤55により接着されるが、後部樹脂パーツ52の前面外周に沿って接着剤溜まり部53としてのテーパー面が形成されているため、余剰接着剤が樹脂溜まり部53内に保持され、開口部2の内周と接着することがなくなる。
また、係止突起3側にも余剰接着剤55を回避するための接着剤回避部5を形成したため、余剰接着剤と係止突起3との干渉回避が更に進む。
【0018】
次に、図6は本発明の一実施形態に係るスイッチ押圧部材とこのスイッチ押圧部材の支持構造を示す断面図であり、(a)は非押圧状態、(b)は押圧状態、(c)はスイッチ押圧部材が引抜き方向へ引かれた状態を夫々示している。
このスイッチ押圧部材20は、スイッチ11を内奥部に配置した開口部2を備えたパネル1の開口部内に嵌合配置され開口部の内周に設けた係止突起3により外周を係止されている。
スイッチ押圧部材20は、係止突起3の前方に位置する樹脂製キートップ21と、接着剤25により前面30aをキートップの背面21bに接着されると共に外周部を係止突起3により抜け落ち不能に支持され、且つキートップ前面を押圧しない時にはスイッチ11をオフ状態に維持する一方で、キートップ前面を所定量以上押圧したときに弾性変形してスイッチをオンさせる弾性押圧部材30と、を備えている。
弾性押圧部材30は、係止突起3の内径空所内を内外方向へ進退する基部31と、基部の後部から外径方向へ突出して係止突起の背面に係止される袴状の被係止部32と、を備えている。
被係止部32は、基部31の後部外周から外径方向へ拡開して前面にて係止突起3と接触する被係止面32aと、被係止面32aの外周部から後方へ屈曲して延びる中空筒状の脚部32bと、を備えている。脚部32bの後端縁は、プリント基板10の前面に当接した状態に設置される。
【0019】
本発明の特徴的な構成は、被係止部32の内面に、基部31の後面外周から脚部32bの内壁にかけて断面テーパー状(略三角形状)の厚肉部33が形成されている点にある。
このように袴状の被係止部32の内底面外周の立ち上がり部(被係止部の肩部内壁)に厚肉部33を設けたので強度が高まり、スイッチ押圧部材20を引抜き方向へ引っ張ったとしても、被係止面32aが係止突起3により変形させられて係止突起3の内部空所から脱落したり、応力集中により被係止部32が破損することがなくなる。
特に、基部31の後端外周部と、被係止部32の内周との接続部が薄肉となるため、スイッチ押圧部材が引抜き方向へ引っ張られた場合に応力が薄肉部に集中して破断することも懸念されるが、厚肉部33のテーパー面33aの内側端部を基部31の背面31aの内側(中心部寄り位置)に位置させることによりオーバーラップ部(補強薄肉部)34を形成したので、薄肉部の強度を高めることができる。
【0020】
即ち、オーバーラップ部34は、図6(a)中の一部拡大図に示したように、厚肉部33と基部31の外周縁部との連結状態に特徴があり、連結部の外側のL字状の角部34aよりも、連結部の内側の鈍角状の角部34bの方が基部31の背面31aの中心部に近い位置に設定されている。このため、必要十分な肉厚を有し且つ十分な柔軟性及び耐久性を有したオーバーラップ部34とすることができる。
なお、厚肉部33を設けたことにより、スイッチ押圧部材20を押圧する時に、クリック感触への影響が懸念されるが、薄肉状のオーバーラップ部34が柔軟に伸縮、変形するため、十分なストロークが可能となり、押圧したときのクリック感触を確保することができる。
本発明によれば、キートップ21が図6(c)の矢印W方向へ引っ張られた場合であっても、弾性押圧部材30の被係止部32の内側面の一部を厚肉としたので、被係止部32が必要以上に延びることを防止でき、スイッチ押圧部材20が係止突起3から離脱して抜き取られたり、被係止部32がちぎれるといった不具合を解消することができる。
また、被係止部の厚肉部33と、基部31との接続部を十分な厚味を有したオーバーラップ部34としたので、キートップをスイッチオン方向へ押圧した時も、薄肉部が伸縮しつつストロークすることで、キーをオンした感触を確保することができる。
【符号の説明】
【0021】
1…フロントパネル、2…開口部、3…係止突起、3a…キートップ前面、5…接着剤回避部、10…プリント基板、11…スイッチ、20…スイッチ押圧部材、21…キートップ、21a…前面、21b…背面、25…接着剤、30…弾性押圧部材、30a…前面、31…基部、31a…背面、30A…突起、32…被係止部、32a…被係止面、32b…脚部、33…厚肉部、33a…テーパー面、34…オーバーラップ部、34a…角部、34b…角部、50…固定部品、51…前部樹脂パーツ、52…後部樹脂パーツ、55…接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチを内奥部に配置した開口部を備えたパネルと、該開口部内に嵌合配置され該開口部の内周に設けた係止突起により外周を係止されたスイッチ押圧部材と、を備えたスイッチ押圧部材の支持構造であって、
前記スイッチ押圧部材は、前記係止突起の前方に位置したキートップと、接着剤により前面を該キートップの背面に接着されると共に外周部を前記係止突起により抜け落ち不能に支持され、且つ前記キートップ前面を押圧しない時には前記スイッチをオフ状態に維持する一方で、前記キートップ前面を所定量以上押圧したときに弾性変形して前記スイッチをオンさせる弾性押圧部材と、を備え、
前記弾性押圧部材は、前記係止突起の内径空所内を内外方向へ進退する基部と、該基部の後部から外径方向へ突出して前記係止突起に係止される被係止部と、を備え、
前記基部の前面外周部に、接着剤溜まり部を備えたことを特徴とするスイッチ押圧部材の支持構造。
【請求項2】
前記係止突起の内周には、前記接着剤溜まり部に保持された接着剤との干渉を回避する接着剤回避部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ押圧部材の支持構造。
【請求項3】
前記接着剤溜まり部は、前記基部の前面外周部の外径を後方へ向けてテーパー状に拡開させたテーパー面であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチ押圧部材の支持構造。
【請求項4】
前記接着剤回避部は、前記係止突起の内周の少なくとも一部の内径を、前方から後方へ向けてテーパー状に漸減させたテーパー面であることを特徴とする請求項2又は3に記載のスイッチ押圧部材の支持構造。
【請求項5】
前記接着剤溜まり部は、前記基部の前面外周部の外径を後方へ向けて段差状に拡開させた段差面であることを特徴とする請求項1、2、又は4に記載のスイッチ押圧部材の支持構造。
【請求項6】
前記接着剤回避部は、前記係止突起の内周の少なくとも一部の内径を、前方から後方へ向けて段差状に漸減させた段差面であることを特徴とする請求項2、3、又は5に記載のスイッチ押圧部材の支持構造。
【請求項7】
スイッチを内奥部に配置した開口部を備えたパネルの該開口部内に嵌合配置され該開口部の内周に設けた係止突起により外周を係止されたスイッチ押圧部材であって、
前記スイッチ押圧部材は、前記係止突起の前方に位置した樹脂製キートップと、前面を該キートップの背面に固定されると共に外周部を前記係止突起により抜け落ち不能に支持され、且つ前記キートップ前面を押圧しない時には前記スイッチをオフ状態に維持する一方で、前記キートップ前面を所定量以上押圧したときに弾性変形して前記スイッチをオンさせる弾性押圧部材と、を備え、
前記弾性押圧部材は、前記係止突起の内径空所内を内外方向へ進退する基部と、該基部の後部から外径方向へ突出して前記係止突起に係止される袴状の被係止部と、を備え、
前記被係止部は、前記基部の後部外周から外径方向へ拡開して前面にて前記係止突起と接触する被係止面と、該被係止面の外周部から後方へ屈曲して延びる筒状の脚部と、を備え、
前記被係止部の内面には、前記基部の後面外周から前記脚部内壁にかけて断面テーパー状の厚肉部が形成されていることを特徴とするスイッチ押圧部材。
【請求項8】
前記基部の後面外周と前記厚肉部との連結部には補強薄肉部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載のスイッチ押圧部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−134470(P2011−134470A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290686(P2009−290686)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(508209990)J&Kカーエレクトロニクス株式会社 (98)
【Fターム(参考)】