説明

スイッチ

スイッチの可動部を構成する柔軟性メンブレン(32、38、138)を備えたメンブレンスイッチであり、前記柔軟性メンブレンはエレクトロルミネセンスディスプレイ(38、138)を有する。より具体的には、通常は柔軟性エレクトロルミネセンスディスプレイと共に用いられる非ラッチ型スイッチであり、前記スイッチは、スイッチを閉じる際には空隙(36、136)によって遮断されるスイッチ操作用の回路(34、35、134、135)を搭載する下側回路層(31、131)と、前記回路層の回路面に対向して取り付けられ、前記空隙に対して整列し、押す力(FG)が存在する間は前記空隙を閉じるため弾性的に押し込まれて前記回路層と操作接触し得る導電性架橋部(37、137)を搭載した弾性変形型接触層(32、38、138)と、上記2枚の層を一緒に押す力がかかっていないときにはこれらの層を離しておくスペーシング手段(33、133)とを備える。通常、上記接触層はエレクトロルミネセンスディスプレイ(39、138)である。上記スペーシング手段は上記接触層または回路層のいずれかと一体成形されているのが好ましく、上記接触層内に熱成形されているのが好都合である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチに関するものであり、特に、テレビのリモートコントローラといった電子機器の作動または操作によく用いられる押しボタン式スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
「マン・マシン・インターフェイス」の状況で、ボタンを押すことは操作者(「人」)から機械に情報を伝達する重要な方法である。電気・機械装置はたくさん存在するが、このような装置を用いてボタンを押すと、二次的な動作が引き起こされるか、またはボタンを押すことが二次的な動作に転換され、また、ボタンは電子機器の入力デバイスとして広く用いられる。本発明は特に、マイクロプロセッサ制御式電気回路での測定が可能なためマイクロプロセッサ制御下で他の事象を誘発する目的で適用される電気および/または電子ボタンに関する。
【0003】
通常そのような電子機器で使用されるボタンは非ラッチ型またはモメンタリタイプであり、そのようなボタンでは、2つの電気接点を瞬間的に(限定ではない(or otherwise))閉じることで一時的に回路が形成され、結果的にその回路に接続されているマイクロプロセッサが何らかの計算(例えば、自身のプログラムのさらに別の部分を作動する)を実施するためのトリガとして用いるようプログラミング可能な電気事象が起こる。マイクロプロセッサ制御式電気回路で通常用いられる非ラッチ型ボタンは、金属ドーム形状である。すなわちその構造体は、周縁部に脚部を設けたプレス式金属ドーム形状であり、プリント配線基板(PCB)の最上部に配置されているので、「遮断された」電気回路(すなわち、スイッチの作動時にドームにより架橋される空隙を2つの導電体間に設けた回路)の片側にある電極と常時電気的に接触している。従来の(弾力のある金属または金属被覆プラスチックの)ドーム構造体では、そのドームを押し下げるとその中心部分が下にへこむことで遮断状態の電気回路のもう一方の側に接触し、そのドームがへこんでいる間は回路が通じるようになる。また、そのドームは弾力のある材料でできているので、へこませる力が除かれると弾力によって元のドーム形に戻り、電気回路の2箇所間の電気接触が遮断される。
【0004】
このようなタイプのボタンの中には、圧力集中(force concentration)層を用いるものもある。これはモールド式/熱変形式層であり、ドームの上方を覆いドームをへこませるのに必要な力を軽減する。そのようなモールド式プラスチック層の外見を、携帯電話やラップトップキーボードに見られるようなボタンキャップ形状としてもよい。
【0005】
そのような金属ドームボタンスイッチはかなり高価な構造体となるため、安価でありながら効果的な構造が常に要求されてきた。
【0006】
上記以外の一般的なタイプのボタンは、積層式フィルムキーボード構造体でしばしば採用されるものである。このタイプのモメンタリスイッチの構造体では、スペーサによって離された状態で保持された、スイッチの中で相対的に導電性のある部分をその対向表面に載せた薄いプラスチックシートを、シート同士を離すようにして接着剤で一緒に積層している。片方のシートの対向表面には導電ペーストで印刷が施されているので、硬化後は、空隙を備えた電気回路、すなわち、「遮断」された電気回路が特定の地点に形成される。もう一方のシートの対向表面には電気ペーストで印刷が施されており、硬化後は空隙用の架橋が形成されるので、上記2枚のシートを一緒に押したとき第一のシート上に電気回路が形成される。プラスチックが弾性を有するため、閉じる力がかからないときはそれらの接点は決して触れることがなく、回路は形成されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
「従来型」フィルムキーパッド構造体では、多くの場合(上記のような)ドームボタンが用いられる。ディスプレイボタン積層体は元来硬いので、ドームボタンではアクチュエータ層が必要となることが多い。押し下げることのできるアクチュエータ層のエリアは特定の場所に集中しており、それらはボタンまたはボタンエリアと呼ばれる。場合によっては、さらに追加の層、すなわちディスプレイを構成する材料の層(例えばエレクトロルミネセンスディスプレイ層)をこれらボタンエリアの上方に配置し、そのボタンの機能を目立たせてもよい(または変更も可能)。そうすれば、そのキーパッドを含むデバイスの使い勝手が向上する。しかしながら、通常これらのディスプレイ層は下側ドーム層と比べてかなり厚く硬いため、このような層を追加すると、ドームがへこむ感触がわかりにくくなる傾向がある。そのため、ユーザにとって押しにくいものとなり、また、ボタンを押すという事象が起こったフィードバックがなくなってしまう。
【0008】
この問題を解決するために、普通はディスプレイ層とドーム層との間に第三の「アクチュエータ」層を挿入する。このアクチュエータは、ドームの中心部に対して整列した小さいふくらみを持つように熱成形されたプラスチックの薄層であるのが好ましい。そのようなふくらみがあることでディスプレイ層の表面を押す指によって生じる力が特定の場所に集中し、その対象となるドームの中心に集中するので、より少ない力でドームを一層正確かつ精密にへこませることになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、新規かつ一層シンプルなタイプのスイッチ(通常はモメンタリスイッチ)の作成を提案するものであり、ドーム層とアクチュエータ層の両方を省いて、通常その代わりに、元来空隙を有し下側回路の構成要素としても用いられる浮動型「接触(架橋)層」が用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明による第1の実施態様は押しボタン式スイッチを提供するものであり、スイッチを閉じる際には空隙によって遮断されるスイッチ操作用の回路を搭載した下側回路層と、前記回路層の回路面に対向して取り付けられ、回路側表面に前記空隙に対し整列した導電性架橋部を搭載し、前記架橋部を弾性的に押して前記回路層と操作接触させることによって、押す力が存在する間は回路層との間の空隙を閉じることの可能な弾性変形型接触層と、前記2枚の層を一緒に押す力が存在しないときにこれらの層を離しておくためのスペーシング手段とを備え、前記接触層がエレクトロルミネセンスディスプレイを有することを特徴とする。
【0011】
発明者らは以前より、剛性が高すぎてメンブレンタイプスイッチのメンブレンとしては使用不可能とみなされてきたエレクトロルミニセンスディスプレイを、ドームその他を用いないスイッチで使用できることを認識していた。従って本発明により、安価かつ製造容易でシンプルなスイッチが実現する。
【0012】
上記スイッチは、ユーザにより接触層に力が及ぼされて操作されるように配置するのが好ましく、ユーザがエレクトロルミネセンスディスプレイに力を及ぼすように配置するのが最も好ましい。
【0013】
架橋部をエレクトロルミネセンスディスプレイ表面に直接搭載してもよい。架橋部をディスプレイの裏面に印刷し、そこから発光させてもよい。あるいは、架橋部を搭載する別個の接触架橋層を接触層の一部分として設けてもよい。接触層が何枚かの層で構成されるとみなし、ユーザが層の表面に力をかけるとそれらの層が一緒に撓むのであってもよい。上記スイッチは、ユーザが接触層に力をかけることによってスイッチを作動させられるように配置されているのが好ましい。
【0014】
エレクトロルミネセンスディスプレイは、2枚の電極に挟まれた発光体(light emitting phosphor)の層を備えたタイプであることが好ましい。それらの電極の一方がインジウム錫酸化物(ITO)電極で、ほぼ透明であってもよい。
【0015】
本発明は、非ラッチ型・モメンタリタイプの押しボタン式スイッチを適宜提供する。そのようなタイプのスイッチは公知であり、ここではさらなる説明を必要としない。
【0016】
本発明は押しボタン式スイッチを提供する。そのようなスイッチは大抵、例えばコンピュータ、リモートコントローラまたは計算機などに見られるようなキーパッドのスイッチとして、何らかのアレイ形状に配置される。そのようなアレイは、目的に応じ必要数のスイッチを含んでいてもよい。そのようなアレイにおいて、各スイッチが独立した別々の要素ではなくむしろアレイに一体成形された部分であるのが最も好都合である。よって、そのようなアレイには、何枚もの小さな回路層を一体成形して作られた実質的に1枚の大きな回路層が存在し、また同様に、何枚もの小さな接触層を一体成形して作られた実質的に1枚の大きな接触層が存在するのが好ましい。
【0017】
本発明のスイッチはいずれも、スイッチ操作用の回路を搭載する下側回路層および導電性架橋部を搭載する接触層を備え、上記回路はスイッチを閉じるための空隙によって「遮断」されている。その層の形状および材料については適宜選択可能であり、その回路の用途は特に制限されない。通常、回路を有するそのような層とは、架橋により空隙を閉じることを容易にするため補強(emphasize)された架橋性空隙の片側に(通常はメッキおよびエッチングを施された銅PCBトラッキング製の)導電性部分を備える一般的なプリント配線基板(PCB)であり、それらの多くが既に実用化されているので、ここではさらなる説明を必要としない。
【0018】
上記空隙は、架橋部によって架橋または遮断される物理的な空隙であってもよい。しかしながら、架橋部との位置関係(proximity)によって抵抗値が変動する領域であってもよい。
【0019】
本発明のスイッチは、回路層の回路面と対向して取り付けられ、回路側の表面に空隙に対し整列した導電性架橋部を搭載した弾性変形型浮動接触層を含んでいてもよい。接触層または接触架橋層はある意味「浮動状態」、すなわち、自身のエリア上方では回路層にしっかり固定されておらず、回路層に対し横方向に比較的自由に動く、すなわち滑動するものであってもよい。しかしながら接触層または接触架橋層は、上記回路層から完全に横に滑り出てしまわないように、端部で上記回路層に保持されていてもよい。また、1枚の大きな回路層および1枚の大きな接触層を有するそのようなスイッチのアレイが存在する場合、周縁部付近でこれらの層を一緒に保持する一方で、対向エリア上方では固定しないようにしてもよい。そうすると理論上、横方向の動きは必然的に制限されるものの、それらの層と互いに横に滑動させることができる。
【0020】
接触層または接触架橋層を、弾性変形型(および非導電性)材料で形成してもよい。そのような材料からなる層は元来弾力性を持ち、自身の弾性係数の範囲内で層を変形させておくことが可能であるため、層を押し下げて接触させても塑性(plasticly)変形することはなく、接触層は静止位置に戻ることができ、押す力が除かれればスイッチが開く。そのような材料は普通、ポリエチレンテレフタレート(PET)といったポリエステル等、熱可塑性樹脂の薄型(0.175mm程度)シートである。
【0021】
本発明のスイッチの接触層は、その回路側表面に、対向する回路内の空隙に対し整列した導電架橋部を搭載している。接触層を押すことにより、かけられた力が存在する間は、この架橋部が押されて回路層と操作接触し空隙を閉じることが可能になる。架橋部の材料は特に制限されず、従来の導電印刷で用いられているような硬化型銀ペーストでも十分である。
【0022】
本発明のスイッチではスペーシング手段を採用しており、力がかかっていないときには接触層が回路層から離れた状態にあるため、架橋部が空隙に隣接する(defining)回路から離れており、よってスイッチが開いている。スペーシング手段が2枚の層の間に挟まれている独立した(separate)構成要素ではなくこれらの層のいずれかと実質的に一体成形されているのが非常に好ましく、スペーシング手段が接触層の一体成形部分であるのが最も好都合である。スペーシング手段は、通常は熱成形、印刷、型押し等によって、例えば1つあるいは複数の凸部、凹部または尾根状部として接触層内部に形成されているのが最も望ましい。上記接触層がプラスチック(好ましくは熱成形可能な熱可塑性プラスチック)シートである場合は、熱成形が特に有効である。
【0023】
あるいは、スペーシング手段を1つまたは複数の別個のスペーサで構成してもよい。それらのスペーサを、空隙および架橋部周辺の接点および回路層の上方まで延びている網状組織として設けてもよい。
【0024】
1個のスイッチが、実質的な架橋部周辺全体まで延びて層内の該エリアの外周を形成する周縁尾根状部(またはそれに類似したもの)をスペーシング手段として含むのが最も好都合である。周縁部としては、円形や六角形等様々な安定型(nestable)幾何学的形状が考えられるが、単純な四角形が最適と思われる。スイッチがアレイの一部に過ぎない場合、同様に上記周縁尾根部も複数の尾根部のマッチング・グリッドの一部分に過ぎない。
【0025】
本発明のスイッチは、関連するディスプレイ層を含むものであってもよい。このディスプレイ層は、アクティブタイプまたはイナクティブタイプ等、どのような種類のものであってもよいが、そのような好ましいアクティブタイプの一例として、エレクトロルミネセンスディスプレイ層が挙げられる。イナクティブタイプは単なる従来のキーキャップであってもよいが、接触層が回路層最上部表面で浮動しているのと同様に、接触層の最上部で浮動しているのが非常に好ましい。すなわち、自身のエリア上方で固着(glue)や固定されるのではないが、側面に向かって滑り出すことにより位置が左右にずれる(displacement)のを防止するために端部周辺で結び付けられているのが好ましい。
【0026】
本発明の第2の実施態様は非ラッチ型モメンタリタイプの押しボタン式スイッチを提供するものであり、該スイッチは、スイッチを閉じる際には空隙によって「遮断される」回路を搭載したスイッチ操作用の下側回路層と、回路層の回路面に対向して取り付けられ、接触層の回路側表面に空隙に対し整列した導電性架橋部を搭載し、架橋部を弾性的に押して回路層と操作接触させることにより押す力が存在する間は回路層との間の空隙を閉じることの可能な弾性変形型浮動接触層と、上記2枚の層を一緒に押す力が存在しないときにこれらの層を離しておくためのスペーシング手段とを備える。
【0027】
本発明の第2の実施態様によるスイッチが、第1の実施態様の任意の特徴のいずれかを備えていてもよい。スペーシング手段が2枚の層の間に挟まれている独立した構成要素ではなくこれらの層のいずれかと実質的に一体成形されているのが非常に好ましく、スペーシング手段が接触層の一体成形部分であるのが最も好都合である。事実、接触層がプラスチック(好ましくは熱成形可能な熱可塑性プラスチック)材料のシートである場合、スペーシング手段が、通常は熱成形、印刷、型押し等によって、例えば1つあるいは複数の凸部、凹部または尾根状部として接触層内部に形成されているのが最も望ましい。
【0028】
本発明のスイッチは、関連するディスプレイ層を含むものであってもよい。このディスプレイ層は、アクティブタイプまたはイナクティブタイプ等、どのような種類のものであってもよいが、そのような好ましいアクティブタイプの一例として、エレクトロルミネセンスディスプレイ層が挙げられる。イナクティブタイプは単なる従来のキーキャップであってもよいが、接触層が回路層最上部表面で浮動しているのと同様に、接触層の最上部で浮動しているのが非常に好ましい。すなわち、自身のエリア上方で固着や固定されるのではないが、側面に向かって滑り出すことにより位置が左右にずれるのを防止するために端部周辺で結び付けられているのが好ましい。
【0029】
本発明の第3の実施態様は、本発明の第1または第2の実施態様による、1枚の回路層と1枚の接触層を共用する複数のスイッチを備えたアレイを提供する。
【0030】
それらの回路層および接触層は、周縁部で一緒に保持されているが対向するエリアでは固定されていないのが好ましい。
【0031】
本発明の第4の実施態様は、スイッチの可動部を構成する柔軟性メンブレンを備えたメンブレンスイッチに関するものであり、上記柔軟性メンブレンはエレクトロルミネセンスディスプレイを有する。上記エレクトロルミネセンスディスプレイがスイッチの前面を構成することにより、ユーザがスイッチに圧力を加えてスイッチを作動させることができるのが好ましい。スイッチは本発明の上記実施態様のいずれかに準じるものであってもよく、それらの実施態様中の任意の特徴のいずれを有していてもよい。
【0032】
以下、本発明を、添付図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1Aおよび1Bは、先行技術による金属ドームボタンスイッチの、開いた状態と閉じた状態をそれぞれ示す断面図である。
【0034】
図2Aおよび2Bは、先行技術による積層式ボタンスイッチの、開いた状態と閉じた状態をそれぞれ示す断面図である。
【0035】
図3Aおよび3Bは、本発明による自由浮動ボタンスイッチの、開いた状態と閉じた状態をそれぞれ示す断面図である。
【0036】
図4は、本発明によるスイッチの第2の実施態様を示す。
【0037】
図1Aおよび1Bは、先行技術による金属ドームボタンスイッチの断面図である。図1Aはスイッチが開いた状態を示し、図1Bは指で押すことによりスイッチを閉じた状態を示す。
【0038】
このスイッチは非ラッチ型またはモメンタリタイプであり、2つの電気接点を瞬間的に(限定ではない)閉じることで一時的に回路が形成される。このスイッチは金属ドームの1種であり、周縁部に脚部(12:普通は4本であるが、この断面図では2本のみ示されている)を備えたプレス式金属ドーム(11)からなり、この金属ドーム(11)はプリント配線基板(PCB:13)の最上部に配置されているので、「遮断された」電気回路(すなわち2つの導電体(14、16)の間に空隙(15)が存在し、スイッチの作動時にドーム11によって空隙15が架橋される)の片方の電極(14)と常時電気的に接触している。従来のドーム構造体では、図1Bに示すようにドーム11を指の圧力(F)で押し込んだとき中心部11がへこむことにより、遮断された電気回路のもう一方の導電体16と接触し、2つの電極14、16間の空隙15を架橋することによって、ドーム11がへこんだ状態で保持されている間はその回路が通じている。そして、上記ドーム11は弾力のある材料でできているため、へこませる力Fが除かればドーム11は元のドーム形状に戻り、電気回路の2つの部品14、16間の電気接触が遮断される。
【0039】
図中のボタンではドーム11表面全体を覆う圧力集中層(17)が用いられているので、ドームをへこませるのに必要な力が軽減される。この層17には、ドーム11表面部分に対応するふくらみ(18)が形成されている(bear)ため、指で押すことにより加えられた力Fは実際、ふくらみ表面に確実に集中し、ドームに印加される。ボタンはまた、ボタンキャップ等に該当する被覆(overlying)層(19)を有する。
【0040】
上記以外の一般的なタイプのボタンの例を図2Aおよび2Bに示す。このタイプのボタンでは、薄いプラスチックシート(21)のPCB側表面に、スペーサ(25、26)によってPCB搭載回路部(電極23、24)から離して保持されたスイッチの導電架橋部(22)が設けられ、シート21、PCB(27)およびスペーサ25、26はいずれも接着剤で一緒に積層されている。シート21をPCB表面まで押し下げる(F)と、架橋部22によって2つの電極23、24がつながり、PCBの電気回路が形成される。プラスチック製シート21の弾性により、閉じる力Fがかかってないときは接点22、23、24は決して触れず、回路は形成されない。
【0041】
図3A、3Bは、本発明の第1の実施態様による自由浮動ボタンスイッチの開いた状態と閉じた状態をそれぞれ示す断面図である。
【0042】
非ラッチ型モメンタリタイプの押しボタンスイッチが図示されている。このスイッチは、下側回路層(PCB:31)と、回路層の回路面に対向して取り付けられている弾性変形型浮動接触層(32)と、これら2枚の層31、32を一緒に押す力(F)がかかっていないときにこれらの層を離しておくためのスペーシング手段(33)とを備える。ここではこのスイッチ自体をさらに詳細に説明するが、このスイッチは実際には1つのアレイを構成し、それぞれ独立して操作可能な複数の同類スイッチの1つに過ぎない。
【0043】
上記PCB回路層31は、スイッチ操作用の回路を搭載している。全体はここで示されていないが、この回路はスイッチを閉じる空隙(36)を挟む2つの電極(34、35)を有する。回路層の回路面に対向して取り付けられた接触層32は、回路に対向する表面に、上記空隙に対し整列した導電架橋部(37)を搭載している。架橋部37を(力Fで)押して回路層31の電極34、35と操作接触させることにより空隙36を閉じることができる。上記2枚の層31、32がスペーシング手段33により離された状態になっているので、これらの層を一緒に押し込む力Fがかかっていないときには、空隙36が架橋されていない状態になり、回路は「開い」ている。
【0044】
1枚の原料層表面に熱成形処理を施して上記接触層32を形成することにより、スペーシングおよび電気接点の両方を1つの構成要素に設けてもよい。そのようなものは、膜厚が通常0.175mm前後の熱可塑性フィルムから作成される。フィルムの片面には、PCB31表面全体に被覆された電極接触エリア34、35に対し使用時に整列する架橋パターン37が導電性ペースト(銀または炭素を添加したポリマーバインダ)で印刷される。その後、そのフィルムを熱成形して、接触エリア周辺すなわち隣接する接触エリア間に設けられる同類スイッチのアレイに、小さい尾根状部33が設けられる。これらの尾根状部がスペーサを構成することにより、接触層フィルム32がPCB31表面に載置されているときフィルムの導電架橋部37はPCBの接触エリア34、35と接触しない。
【0045】
接触層32の熱成形材料がスペーサとして適切に機能する上で必要な変形の程度は、材料の厚みおよび所望のボタン間スペーシングと関係がある。しかしながら通常、その材料自体の厚みの程度(すなわち約0.175mm)により決定される。
【0046】
本発明による構造体では、接触層32はスペーサ層でもあるため、全体的な製造工程のみならず、従来のフィルムキーボード(上記図2関連で説明)の構造体で必要な接着剤要素も省略可能である。
【0047】
図3Bは、本発明のボタンを押して、PCB31表面の2つの回路素子34、35間を接触させた様子を示す。ここで特筆すべきは、接触層32が図中の「サンドイッチ」構造内で浮動しており、PCB31あるいは接触層上方に位置するエレクトロルミネセンスディスプレイ層を構成するディスプレイ層38のいずれにも固着されていないという点である。ディスプレイ層38を接触層32に積層(接着(bonding))すると剛性が増加し、その結果そのアセンブリがPCB31に貼り付いてしまう(glue)。そうなると、接点を閉じるのに必要な力が増加しすぎて実用的な範囲を超えてしまうので、ボタンが非常に押しにくくなる。上記の浮動により、このような好ましくない剛性増加が回避される。
【0048】
もちろん、上記接触層32はその構造体中においてディスプレイ層38とPCB層31のいずれとも接着剤で固定されず、PCB層とディスプレイ層との間を垂直方向に(すなわち、ボタンを押す方向に沿って)「浮動」可能であるが、接触層32はそれでも何らかの手段(ここでは図示していないが、例えば、接触層に熱成形された突出部(lug)に対応するヒートステーク、位置決めピンまたはPCB中の嵌合孔、もしくは端部接点に対応する端部)によって水平方向/横方向に保持されているので、接触架橋エリア37はPCB31に対して横方向に整列した位置で常時維持されている。
【0049】
この新規な構造体では、押し下げる力Fがディスプレイ層38に印加されると、接触層32が垂直面内のみならず水平面内(横方向)にもわずかながらへこむので、適宜へこませるのに必要な力を激減させることが可能である。またこの新規な構造体では、層32の熱変形スペーシング部33を極力薄く形成することが可能なので、ボタンを作動させ接触させるのに必要なへこみを軽減でき、変形によりディスプレイ層38表面にかかる圧力を減少し、その寿命を延ばし、ユーザによってスイッチを閉じることが容易になる。
【0050】
図4に、本発明によるスイッチの第2の実施態様を示す。図3Aおよび3Bに示されている実施態様と共通する特徴については、それぞれ参照番号に100を加えて示す。
【0051】
この図では、1つのPCB131を共用する複数のスイッチ101からなるアレイ100を示す。各スイッチ101(図では、内1つのみを詳細に示す)には、空隙136を間に挟んだ1組の電極134、135が予め設けられている。先の実施態様中の接触層32の代わりに、アレイにはエレクトロルミネセンス(EL)層138のみが設けられ、この層自体が接触層の機能を果たす。このEL層138の表面に導電架橋部137が印刷されており、この導電架橋部137は、ユーザ150によって圧力が印加されると電極133、135と接触して空隙136を架橋することができる。
【0052】
ユーザ150が圧力を印加していないときに架橋部137を電極134、135から離しておくために、複数のスペーサ133が設けられている。ここではそれらのスペーサは別個のユニットとして設けられ、EL層138を回路層131に対し固定する役目も持つ。スペーサ133は各スイッチ101の電極134、135を囲む網状組織を形成し、メッシュ状になっている(describe)。しかしながら、ディスプレイ138表面に圧力がかかっていない間は片方の層をもう片方の層から離しておくセクションを備えた層を適宜印刷または形成することにより、そのようなスペーサ133が回路層131またはELディスプレイ138の一体形成部分を構成するようにしても差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】先行技術による金属ドームボタンスイッチの、開いた状態を示す断面図
【図1B】先行技術による金属ドームボタンスイッチの、閉じた状態を示す断面図
【図2A】先行技術による積層式ボタンスイッチの、開いた状態を示す断面図
【図2B】先行技術による積層式ボタンスイッチの、閉じた状態を示す断面図
【図3A】本発明による自由浮動ボタンスイッチの、開いた状態を示す断面図
【図3B】本発明による自由浮動ボタンスイッチの、閉じた状態を示す断面図
【図4】本発明によるスイッチの第2の実施態様を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチの可動部を構成する柔軟性メンブレンを備え、前記柔軟性メンブレンがエレクトロルミネセンスディスプレイを有するメンブレンスイッチ。
【請求項2】
前記エレクトロルミネセンスディスプレイが前記スイッチの前面を構成することにより、ユーザが前記スイッチに圧力を加えて前記スイッチを作動させることが可能な請求項1に記載のスイッチ。
【請求項3】
スイッチを閉じる際には空隙によって遮断されるスイッチ操作用回路を搭載した下側回路層と、
前記回路層の回路面に対向して取り付けられ、回路側表面に前記空隙に対して整列した導電性架橋部を搭載し、前記架橋部を弾性的に押して前記回路層と操作(operative)接触させることによって、押す力が存在する間は回路層との間の空隙を閉じることの可能な弾性変形型接触層と、
前記2枚の層を一緒に押す力が存在しないときにこれらの層を離しておくためのスペーシング手段とを備え、
前記接触層がエレクトロルミネセンスディスプレイを有することを特徴とする押しボタン式スイッチ(push or button switch)。
【請求項4】
前記架橋部が前記エレクトロルミネセンスディスプレイ表面に直接搭載されている請求項3に記載のスイッチ。
【請求項5】
前記接触層の一部として、前記架橋部を搭載する別個の接触架橋層を設けた請求項4に記載のスイッチ。
【請求項6】
操作の際にユーザが前記接触層に力を及ぼすことができるように配置された請求項3〜5のいずれかに記載のスイッチ。
【請求項7】
ユーザが前記エレクトロルミネセンスディスプレイに力を及ぼすことができるように配置された請求項6に記載のスイッチ。
【請求項8】
前記接触層が全域にかけて浮動しており、前記回路層にしっかりと固定されておらず回路層に対し比較的自在に移動可能な請求項3〜7のいずれかに記載のスイッチ。
【請求項9】
前記接触層が前記回路層の横から滑り出さないように端部において前記回路層に対して保持されている請求項3〜7のいずれかに記載のスイッチ。
【請求項10】
前記スペーシング手段が前記回路層または前記接触層のいずれかと一体成形されている請求項3〜9のいずれかに記載のスイッチ。
【請求項11】
前記スペーシング手段が前記接触層の一体成形部分である請求項10に記載のスイッチ。
【請求項12】
前記スペーシング手段が前記接触層内に形成されている請求項10または11に記載のスイッチ。
【請求項13】
前記スペーシング手段が、熱成形、印刷、刻印により1つあるいは複数の凸部、凹部または尾根状部として前記接触層または前記回路層内に形成される請求項12に記載のスイッチ。
【請求項14】
前記架橋部全周に延び、前記層エリアの外周を構成する周縁尾根状部を備えた請求項10〜13のいずれかに記載のスイッチ。
【請求項15】
前記スペーシング手段が少なくとも1つの別個のスペーサを備えた請求項3〜9のいずれかに記載のスイッチ。
【請求項16】
スイッチを閉じる際には空隙によって「遮断される」スイッチ操作用の前記回路を搭載した下側回路層と、
前記回路層の回路面に対向して取り付けられ、回路側表面に前記空隙と整列した導電性架橋部を搭載し、前記架橋部を弾性的に押して前記回路層と操作接触させることによって、押す力が存在する間は回路層との間の空隙を閉じることができる弾性変形型浮動接触層と、
前記2枚の層を一緒に押す力が存在しないときにこれらの層を離しておくためのスペーシング手段とを備え、
前記スペーシング手段が、前記接触層および前記回路層のいずれかと一体成形された、非ラッチ型モメンタリタイプ(non latching momentary type)の押しボタン式スイッチ。
【請求項17】
前記スペーシング手段が前記接触層の一体成形部分である請求項16に記載のスイッチ。
【請求項18】
前記請求項のいずれかに記載の複数のスイッチを備えたアレイ。
【請求項19】
前記複数のスイッチが1枚の回路層および1枚の接触層を共有する、請求項3〜17のいずれかに従属する請求項18に記載のアレイ。
【請求項20】
前記回路層と前記接触層が周縁部辺りで一緒に保持されている一方、対向するエリアでは固定されていない請求項19に記載のアレイ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−523456(P2007−523456A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553670(P2006−553670)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000600
【国際公開番号】WO2005/081275
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(503183640)ペリコン リミテッド (16)
【Fターム(参考)】