説明

スキャナ装置及びこれを備えたレーザ加工装置

【課題】ミラーの剛性を確保しつつ、スキャンミラーをモーター軸に固定する際のねじ締めの応力によるミラー反射面の歪みを抑制したスキャナ装置及びレーザ加工装置を得る。
【解決手段】スキャンミラー20に設けられた第1の固定部21と、モーター軸30に設けられた第2の固定部31において、第1端面22と第2端面32を密着させた状態で、第1の固定用部材60の凹部61を第1傾斜面23と第2傾斜面33に嵌合させる。その後、第2の固定用部材70で挟み込み、第2の固定用部材70を固定ねじ80で結合することにより、スキャンミラー20をモーター軸30に固定する。このときに発生する応力は、スキャンミラー20の反射面に平行な方向となるため、ねじ締めの応力によるミラー反射面の歪み、変形を抑制することが可能なスキャナ装置10が得られ、加工穴の位置決め精度が高く、加工穴品質の優れた安価なレーザ加工装置100が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナ装置及びこれを備えたレーザ加工装置に関し、特にスキャンミラーをガルバノスキャナのモーター軸に固定する際の取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板及び半導体チップ等における樹脂材、セラミックス材等の材料に、穴あけ、切断、マーキングを行うレーザ加工装置は、スキャナ装置を具備して構成されている。従来のスキャナ装置の構造について、図8及び図9を用いて説明する。図8は、従来のスキャナ装置に用いられているスキャンミラーの裏面側の構造を示している。スキャンミラー40は、高速での回転運動に対応するため軽量化の傾向にあり、ミラー反射面の裏面側は、中央部の背骨構造部41と肋骨構造の張り42を組み合わせた構造となっていた。
【0003】
また、従来のスキャナ装置においては、スキャンミラー40をガルバノスキャナのモーター軸に固定する際に、図9(a)に示すミラーマウント44を介して固定していた。ミラーマウント44は、スキャンミラー40をはめ込むためのコの字形の溝44aと、その反対側に突出した突起部44bを有し、突起部44bの内側にはモーター軸をはめ込むための穴44cが形成されていた。また、突起部44bにはその四方にスリット44dが設けられていた。
【0004】
図9(b)に示すように、スキャンミラー40は、例えばエポキシ系接着剤等の接着層45によりミラーマウント44に固定されていた。また、ガルバノスキャナ51のモーター軸50は、ミラーマウント44の突起部44bを固定用部材46で挟み込み、固定ねじ47で締め上げて突起部44bのスリット44dを変形させることにより固定されていた。
【0005】
図9(b)に示す従来のスキャナ装置では、スキャンミラー40のレーザ吸収により発生した熱が、接着層45を通ってミラーマウント44に伝わる。その際、接着層45の厚みの差やボイドの有無等により熱の流れが変わり、ミラーマウント44の中で温度差が発生し、熱変形を起こすことがあった。その結果、図9(c)に示すように、スキャンミラー40がその回転軸と垂直な方向(図中、矢印Gの方向)に傾き、加工穴が目標位置に対して特定の方向にずれてしまうという問題があった。
【0006】
また、スキャンミラー40とミラーマウント44の固定に使用される接着剤(接着層45)は、その他の部材と比較して剛性が低いため、接着剤を用いることによりスキャナ装置全体としての剛性が低下し、加工穴の位置精度が低くなるという問題があった。さらに接着剤による固定では、反射面が損傷したスキャンミラー40を再加工する際にミラーマウント44からの取り外しが困難であった。
【0007】
そこで、スキャンミラー40をモーター軸50に固定する際に、接着剤を使用せず、ねじ止めとする構造が提案されている。特許文献1では、図8に示すような肋骨構造の光学ミラーにおいて、ねじ締めの応力によるミラー面の歪みを低減せしめる構造として、モーター軸との固定部43近傍のミラー裏面の肋骨構造の張り42aと背骨構造部41との間に切れ込みを設けた光学ミラーが提示されている。さらに、特許文献1には、ねじ締めの応力によるミラー面の歪みを低減せしめる別の構造として、モーター軸への取り付け部分である固定部43を、ミラー反射面に対してほぼ垂直の角度に設けたものが提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3531554号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に提示された光学ミラーでは、固定部43近傍の肋骨構造の張り42aに切れ込みを設けることによりミラーの剛性が低下し、加工穴の位置決め精度が低くなるという問題があった。また、モーター軸への取り付け部分をミラー反射面に対してほぼ垂直とした構造では、取り付け部分が反射面に対して突出した構造となるため、反射面の研磨加工が困難となり、生産コストが上昇するという問題点があった。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためなされたものであり、ミラーの剛性を確保しつつ、スキャンミラーをモーター軸に固定する際のねじ締めの応力によるミラー反射面の歪みを抑制することができ、低コストで生産可能なスキャナ装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、上記のスキャナ装置を備えることにより、加工穴の位置決め精度が高く、加工穴品質の優れた安価なレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るスキャナ装置は、ガルバノスキャナのモーター軸に固定したスキャンミラーを制御装置からの回転角度指令により動作させ、スキャンミラーに入射するレーザ光を所望の方向に偏向させるスキャナ装置であって、モーター軸との固定のためにスキャンミラーに設けられた第1の固定部と、スキャンミラーとの固定のためにモーター軸に設けられた第2の固定部と、第1の固定部及び第2の固定部に嵌合される凹部を有する第1の固定用部材と、固定ねじと、少なくとも2つの部材からなりこれら2つの部材を固定ねじで結合するためのねじ穴を有する第2の固定用部材を備え、第1の固定部は、スキャンミラーの反射面に垂直な第1端面と、この第1端面に対向しスキャンミラーの回転軸から外周方向に向かって第1の固定部の厚みが連続的に減少するように傾斜した第1傾斜面を有し、第2の固定部は、反射面に垂直な第2端面と、この第2端面に対向しモーター軸の回転軸から外周方向に向かって第2の固定部の厚みが連続的に減少するように傾斜した第2傾斜面を有し、第1の固定用部材は、凹部内の側面に第1傾斜面及び第2傾斜面と対向する第3傾斜面を有し、スキャンミラーとモーター軸それぞれの回転軸を一致させ、第1端面と第2端面を密着させた状態で、第1の固定用部材の凹部を第1傾斜面と第2傾斜面に嵌合させ、さらに第1の固定用部材が嵌合された第1の固定部及び第2の固定部を第2の固定用部材で挟み込み、固定ねじで結合することによりスキャンミラーをモーター軸に固定したものである。
【0013】
また、本発明に係るレーザ加工装置は、レーザ発振器と、レーザ発振器から出力されるレーザ光の光路上に配置された上記のスキャナ装置と、スキャナ装置により偏向されたレーザ光を加工ワーク上に集光させるレンズを備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スキャンミラーに設けられた第1の固定部と、モーター軸に設けられた第2の固定部において、第1の固定用部材の凹部を第1傾斜面と第2傾斜面に嵌合させ、さらに第2の固定用部材を固定ねじで結合することによりスキャンミラーをモーター軸に固定するようにしたので、ミラーの剛性を確保しながら、スキャンミラーをモーター軸に固定したときに発生する応力がミラー反射面に平行な方向となり、ねじ締めの応力による反射面の歪みを抑制することができ、低コストで生産可能なスキャナ装置を提供することができる。
【0015】
また、本発明に係るスキャナ装置を備えることにより、加工穴の位置決め精度が高く、加工穴品質の優れた安価なレーザ加工装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係るレーザ加工装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るスキャナ装置を示す上面図及び側面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るスキャナ装置の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るスキャナ装置におけるねじ締めによる応力の方向を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係るスキャナ装置を示す上面図及び側面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るスキャナ装置の構成を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係るスキャナ装置におけるねじ締めによる応力の方向を示す図である。
【図8】従来のスキャナ装置におけるスキャンミラーの裏面側の構造を示す図である。
【図9】従来のスキャナ装置の構造とその問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
以下に、本発明の実施の形態1に係るスキャナ装置及びこれを具備したレーザ加工装置について、図面に基づいて説明する。図1は、本実施の形態1に係るレーザ加工装置の構成を示している。レーザ加工装置100は、レーザ光1を発生させる発振器2と、発振器2から出射されたレーザ光1の発散角を調整させるコリメートレンズ3と、レーザ光1を反射により狙いの方向に導くためのベンドミラー4及びレーザ光1を加工ワーク17上で任意のビームスポット径に設定するための絞り5を備えている。
【0018】
レーザ光1の光路上には、スキャナ装置10Y、10Xが配置されている。スキャナ装置10Yは、レーザ光1をY方向に偏向するY軸スキャンミラー6と、制御装置16からの回転角度指令によりY軸スキャンミラー6を回転させ、レーザ光1を所望の方向に偏向させるY軸ガルバノスキャナ7を含んで構成される。同様に、スキャナ装置10Xは、レーザ光1をX方向に偏向するX軸スキャンミラー8と、制御装置16からの回転角度指令によりX軸スキャンミラー8を回転させ、レーザ光1を所望の方向に偏向させるX軸ガルバノスキャナ9を含んで構成される。
【0019】
また、レーザ加工装置100は、レーザ光1を加工ワーク17上に集光するfθレンズ(集光レンズ)11、加工ワーク17を固定してXY平面上に駆動させるXYテーブル12、加工ワーク17上の位置決めマーク18の確認や、レーザ照射によって加工された加工穴の検出を行うCCDカメラ13、加工ワーク17上の任意の位置を照明する照明装置14、CCDカメラ13により撮像した撮像データの画像処理を行う画像処理装置15を備えている。上記の発振器2、Y軸ガルバノスキャナ7、X軸ガルバノスキャナ9、XYテーブル12、CCDカメラ13、照明装置14及び画像処理装置15は、制御装置16により駆動制御される。
【0020】
このように、レーザ加工装置100は、スキャナ装置10Y、10Xを備えている。これらのスキャナ装置10Y、10Xにおいて、高速での回転運動に耐えうるY軸スキャンミラー6及びX軸スキャンミラー8の剛性を確保し、これらのスキャンミラー6、8をY軸ガルバノスキャナ7及びX軸ガルバノスキャナ9のモーター軸にそれぞれ固定する際のねじ締めの応力によるミラー反射面の歪みを抑制することにより、加工穴の位置決め精度
が高く、加工穴品質の優れたレーザ加工装置100が実現する。
【0021】
本実施の形態1に係るスキャナ装置の構成について、図2及び図3を用いて説明する。図2は、本実施の形態1に係るスキャナ装置を示す図であり、(a)はスキャンミラーの反射面から見た上面図、(b)はスキャンミラーの側面から見た側面図である。また、図3(a)は、図2(b)中、A−Aで示す部分における断面図、図3(b)は、図2(b)中、B−Bで示す部分における断面図、図3(c)は、図3(a)を部分的に拡大した分解図である。なお、図2及び図3では、ガルバノスキャナは図示を省略している。
【0022】
本実施の形態1に係るスキャナ装置10は、図2(a)、(b)に示すように、スキャンミラー20、ガルバノスキャナのモーター軸30、これらを固定するための第1の固定用部材60と第2の固定用部材70、及び固定ねじ80を含んで構成されている。本実施の形態1では、第1の固定用部材60と第2の固定用部材70はそれぞれ2つの部材からなり、第1の固定用部材60の2つの部材は、スキャンミラー20の反射面と平行な方向に対向配置されている。
【0023】
また、図3(a)に示すように、スキャンミラー20には、モーター軸30との固定のための第1の固定部21が設けられ、モーター軸30には、スキャンミラー20との固定のための第2の固定部31が設けられている。本実施の形態1では、第1の固定部21及び第2の固定部31は、スキャンミラー20の反射面と平行な方向に張り出した構造となっている。このように、第1の固定部21をミラー反射面に対して突出していない形状とすることにより、研磨工程において反射面を研磨する際の妨げにならない。
【0024】
第1の固定用部材60は、第1の固定部21及び第2の固定部31に嵌合される凹部61を有している。また、第2の固定用部材70は、図3(b)に示すように、第1の固定用部材60が嵌合された第1の固定部21及び第2の固定部31を挟み込む2つの部材からなり、これら2つの部材を固定ねじ80で結合するためのねじ穴81、ねじ座82、及びねじ部83を有している。
【0025】
また、図3(c)に示すように、スキャンミラー20に設けられた第1の固定部21は、スキャンミラー20の反射面に垂直な第1端面22と、この第1端面22に対向しスキャンミラー20の回転軸Hから外周方向に向かって第1の固定部21の厚みが連続的に減少するように傾斜した第1傾斜面23を有している。
【0026】
一方、モーター軸30に設けられた第2の固定部31は、スキャンミラー20の反射面に垂直な第2端面32と、この第2端面32に対向しモーター軸30の回転軸Hから外周方向に向かって第2の固定部31の厚みが連続的に減少するように傾斜した第2傾斜面33を有している。さらに、第1の固定用部材60は、凹部61内の側面に、第1傾斜面23及び第2傾斜面33と対向する第3傾斜面62を有している。
【0027】
なお、図3(c)において、第1の固定部21の第1傾斜面23の傾斜角度と、第2の固定部31の第2傾斜面33の傾斜角度は、ほぼ等しく形成されている(θ=θ)。また、第1の固定用部材60の第3傾斜面62の傾斜角度は、第1傾斜面23及び第2傾斜面33の傾斜角度よりも高傾斜となるように形成されている(θ<θ、θ<θ)。
【0028】
上記のように構成された第1の固定部21と第2の固定部31において、スキャンミラー20の回転軸Hとモーター軸30の回転軸Hを一致させ、第1端面22と第2端面32を密着させた状態で、第1の固定用部材60の凹部61を第1傾斜面23と第2傾斜面33に嵌合させる。その後、第2の固定用部材70で挟み込み、第2の固定用部材70を固定ねじ80で結合することにより、スキャンミラー20をモーター軸30に固定する。
【0029】
本実施の形態1において、スキャンミラー20をモーター軸30に固定したときに発生する応力について図4を用いて説明する。第1の固定用部材60により嵌合されたスキャンミラー20とモーター軸30を、第2の固定用部材70によりねじ締めしたときに発生する応力は、図4中、矢印Cで示すように、スキャンミラー20の反射面に平行で、且つ第1端面22と第2端面32をより密着させる方向となる。
【0030】
以上のように、本実施の形態1によれば、スキャンミラー20に設けられた第1の固定部21と、モーター軸30に設けられた第2の固定部31において、スキャンミラー20の回転軸Hとモーター軸30の回転軸Hを一致させ、第1端面22と第2端面32を密着させた状態で、第1の固定用部材60の凹部61を第1傾斜面23と第2傾斜面33に嵌合させた後、第2の固定用部材70を固定ねじ80で結合することにより、スキャンミラー20をモーター軸30に固定したときに発生する応力がミラー反射面に平行な方向となり、垂直方向の応力が働かないため、ねじ締めの応力によるミラー反射面の歪み、変形を抑制することが可能なスキャナ装置10が得られる。
【0031】
また、本実施の形態1に係るスキャナ装置10によれば、従来のスキャンミラーに設けられていた、固定部近傍の肋骨構造の張りの切れ込みを設ける必要がないため、ミラーの剛性が確保され、ミラー反射面の歪み、変形が発生しにくい。さらに、スキャンミラー20に設けられた第1の固定部21は、ミラー反射面に対して突出していない形状であるため、反射面の研磨が容易であり、低コストで生産可能である。
【0032】
さらに、本実施の形態1に係るスキャナ装置10を備えることにより、加工穴の位置決め精度が高く、加工穴品質の優れた安価なレーザ加工装置100を提供することが可能である。
【0033】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係るスキャナ装置の構成について、図5及び図6を用いて説明する。なお、本実施の形態2に係るスキャナ装置を具備したレーザ加工装置の構成は、上記実施の形態1(図1)と同様であるので説明を省略する。
【0034】
図5は、本実施の形態2に係るスキャナ装置を示す図であり、(a)はスキャンミラーの反射面の裏面側から見た図、(b)はスキャンミラーの側面から見た図である。また、図6(a)は、図5(a)中、D−Dで示す部分における断面図、図6(b)は、図5(a)中、E−Eで示す部分における断面図、図6(c)は、図6(a)を部分的に拡大した分解図であり、図6中、スキャンミラー20aの上側が反射面の裏面、下側が反射面である。なお、図5及び図6では、ガルバノスキャナは図示を省略している。
【0035】
本実施の形態2に係るスキャナ装置10aは、図5(a)、(b)に示すように、スキャンミラー20aとガルバノスキャナのモーター軸30a、これらを固定するための第1の固定用部材60aと第2の固定用部材70a、及び固定ねじ80を含んで構成されている。本実施の形態2では、第1の固定用部材60aと第2の固定用部材70aはそれぞれ2つの部材からなり、第1の固定用部材60aの2つの部材は、スキャンミラー20の反射面と垂直な方向に対向配置されている。
【0036】
また、図6(a)に示すように、スキャンミラー20aには、モーター軸30aとの固定のための第1の固定部21aが設けられ、モーター軸30aには、スキャンミラー20aとの固定のための第2の固定部31aが設けられている。第1の固定用部材60aは、
第1の固定部21a及び第2の固定部31aに嵌合される凹部61aを有している。
【0037】
第2の固定用部材70aは、図6(b)に示すように、第1の固定用部材60aが嵌合された第1の固定部21a及び第2の固定部31aを挟み込む2つの部材からなり、これら2つの部材を固定ねじ80で結合するためのねじ穴81、ねじ座82、及びねじ部83を有している。
【0038】
また、図6(c)に示すように、スキャンミラー20aに設けられた第1の固定部21aは、スキャンミラー20aの反射面に垂直な第1端面22aと、この第1端面22aに対向しスキャンミラー20aの回転軸Hから外周方向に向かって第1の固定部21aの厚みが連続的に減少するように傾斜した第1傾斜面23aを有している。本実施の形態2では、第1の固定部21aは、ミラー裏面側に張り出した部分と、反射面側に設けられた切り欠き24の内部に、それぞれ第1傾斜面23aを有している。このように、第1の固定部21aをミラー反射面に対して突出していない形状とすることにより、研磨工程において反射面を研磨する際の妨げにならない。
【0039】
一方、モーター軸30aに設けられた第2の固定部31aは、ミラー反射面に垂直な第2端面32aと、この第2端面32aに対向しモーター軸30aの回転軸Hから外周方向に向かって第2の固定部31aの厚みが連続的に減少するように傾斜した第2傾斜面33aを有している。本実施の形態2では、第2の固定部31aは、ミラー反射面側と裏面側にそれぞれ切り欠き34を有し、その内部に第2傾斜面33aを有している。さらに、第1の固定用部材60aは、凹部61a内の側面に、第1傾斜面23a及び第2傾斜面33aと対向する第3傾斜面62aを有している。
【0040】
なお、図6(c)において、第1の固定部21aの第1傾斜面23aの傾斜角度と、第2の固定部31aの第2傾斜面33aの傾斜角度は、ほぼ等しく形成されている(θ=θ)。また、第1の固定用部材60aの第3傾斜面62aの傾斜角度は、第1傾斜面23a及びの第2傾斜面33aの傾斜角度よりも高傾斜となるように形成されている(θ<θ、θ<θ)。
【0041】
上記のように構成された第1の固定部21aと第2の固定部31aにおいて、スキャンミラー20aの回転軸Hとモーター軸30aの回転軸Hを一致させ、第1端面22aと第2端面32aを密着させた状態で、第1の固定用部材60aの凹部61aを第1傾斜面23aと第2傾斜面33aに嵌合させる。その後、第2の固定用部材70aで挟み込み、第2の固定用部材70aを固定ねじ80で結合することにより、スキャンミラー20aをモーター軸30aに固定する。
【0042】
本実施の形態2において、スキャンミラー20aをモーター軸30aに固定したときに発生する応力について、図7を用いて説明する。第1の固定用部材60aにより嵌合されたスキャンミラー20aとモーター軸30aを、第2の固定用部材70aによりねじ締めしたときに発生する応力は、図7中、矢印Fで示すように、スキャンミラー20aの反射面に平行で、且つ第1端面22aと第2端面32aをより密着させる方向となる。
【0043】
以上のように、本実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様に、ねじ締めの応力によるミラー反射面の歪み、変形を抑制することが可能であり、スキャンミラーの剛性が確保され、反射面の研磨が容易であるため低コストで生産可能なスキャナ装置10aが得られる。
【0044】
さらに、本実施の形態2に係るスキャナ装置10aを備えることにより、加工穴の位置決め精度が高く、加工穴品質の優れた安価なレーザ加工装置100を提供することが可能
である。
【0045】
なお、上記実施の形態1及び実施の形態2では、第1の固定用部材60、60aと第2の固定用部材70、70aはそれぞれ2つの部材から構成されているが、これらの部材は3つ以上の部材から構成されていてもよく、その形状も限定されるものではない。また、第1の固定部21、21a及び第2の固定部31、31aの形状についても、第1の固定用部材60、60aの凹部61、61aに嵌合される第1傾斜部23、23aと第2傾斜部33、33aが設けられていればよく、特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、スキャナ装置及びこれを具備したレーザ加工装置において、スキャンミラーをガルバノスキャナのモーター軸に固定する際の取り付け構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 レーザ光、2 発振器、3 コリメートレンズ、4 ベンドミラー、5 絞り、
6 Y軸スキャンミラー、7 Y軸ガルバノスキャナ、8 X軸スキャンミラー、
9 X軸ガルバノスキャナ、10、10X、10Y スキャナ装置、
11 fθレンズ、12 XYテーブル、13 CCDカメラ、14 照明装置、
15 画像処理装置、16 制御装置、17 加工ワーク、18 位置決めマーク、
20、20a、40 スキャンミラー、21、21a 第1の固定部、
22、22a 第1端面、23、23a 第1傾斜面、24 切り欠き、
30、30a、50 モーター軸、31、31a 第2の固定部、
32、32a 第2端面、33、33a 第2傾斜面、34 切り欠き、
41 背骨構造部、42、42a 肋骨構造の張り、43 固定部、
44 ミラーマウント、44a 溝、44b 突起部、44c 穴、44d スリット、45 接着層、46 固定用部材、47、80 固定ねじ、51 ガルバノスキャナ、
60、60a 第1の固定用部材、61、61a 凹部、62、62a 第3傾斜面、
70、70a 第2の固定用部材、80 固定ねじ、81 ねじ穴、82 ねじ座、
83 ねじ部、100 レーザ加工装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガルバノスキャナのモーター軸に固定したスキャンミラーを制御装置からの回転角度指令により動作させ、前記スキャンミラーに入射するレーザ光を所望の方向に偏向させるスキャナ装置であって、前記モーター軸との固定のために前記スキャンミラーに設けられた第1の固定部と、前記スキャンミラーとの固定のために前記モーター軸に設けられた第2の固定部と、前記第1の固定部及び前記第2の固定部に嵌合される凹部を有する第1の固定用部材と、固定ねじと、少なくとも2つの部材からなりこれら2つの部材を前記固定ねじで結合するためのねじ穴を有する第2の固定用部材を備え、
前記第1の固定部は、前記スキャンミラーの反射面に垂直な第1端面と、この第1端面に対向し前記スキャンミラーの回転軸から外周方向に向かって前記第1の固定部の厚みが連続的に減少するように傾斜した第1傾斜面を有し、前記第2の固定部は、前記反射面に垂直な第2端面と、この第2端面に対向し前記モーター軸の回転軸から外周方向に向かって前記第2の固定部の厚みが連続的に減少するように傾斜した第2傾斜面を有し、前記第1の固定用部材は、前記凹部内の側面に前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面と対向する第3傾斜面を有し、
前記スキャンミラーと前記モーター軸それぞれの前記回転軸を一致させ、前記第1端面と前記第2端面を密着させた状態で、前記第1の固定用部材の前記凹部を前記第1傾斜面と前記第2傾斜面に嵌合させ、さらに前記第1の固定用部材が嵌合された前記第1の固定部及び前記第2の固定部を前記第2の固定用部材で挟み込み、前記固定ねじで結合することにより前記スキャンミラーを前記モーター軸に固定したことを特徴とするスキャナ装置。
【請求項2】
前記第3傾斜面は、前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面よりも高傾斜であることを特徴とする請求項1記載のスキャナ装置。
【請求項3】
前記スキャンミラーを前記モーター軸に固定したときに発生する応力は、前記反射面に平行で、且つ前記第1端面と前記第2端面をより密着させる方向となることを特徴とする請求項1記載のスキャナ装置。
【請求項4】
前記第1の固定用部材は2つの部材からなり、これら2つの部材は前記スキャンミラーの前記反射面と平行な方向に対向配置されることを特徴とする請求項1記載のスキャナ装置。
【請求項5】
前記第1の固定用部材は2つの部材からなり、これら2つの部材は前記スキャンミラーの前記反射面と垂直な方向に対向配置されることを特徴とする請求項1記載のスキャナ装置。
【請求項6】
前記第1の固定部は、前記スキャンミラーの前記反射面に対して突出していない形状としたことを特徴とする請求項1記載のスキャナ装置。
【請求項7】
レーザ発振器と、前記レーザ発振器から出力されるレーザ光の光路上に配置された請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のスキャナ装置と、前記スキャナ装置により偏向されたレーザ光を加工ワーク上に集光させるレンズを備えたことを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−247611(P2012−247611A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119029(P2011−119029)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】