説明

スクリュー搬送構造

【課題】 搬送上手側のスクリュー軸の後端と搬送下手側のスクリュー軸の始端とをベベルギヤを介して連動連結したスクリュー搬送構造において、誤組みのない組付けを行うことができるようにする。
【解決手段】 スクリュー軸25のギヤ連結部25aとこれに嵌合連結されるベベルギヤ35の中心嵌合孔の断面形状を、一つの特定された回転位相においてのみ互いの嵌合が許容される形状に設定してある。好ましくは、スクリュー軸25のギヤ連結部25aにおける外周面に、互いに平行に対向する一対の扁平カット面S1,S2を備えるとともに、両扁平カット面S1,S2の間で互いに対向する軸外周面の一方に扁平カット面S3を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに搭載された脱穀装置における1番物(穀粒)や2番物の搬送、あるいは、穀粒タンクに貯留された穀粒の搬出装置などに利用されるスクリュー搬送構造に関する。
【背景技術】
【0002】
1番物や2番物の搬送に用いられるスクリュー搬送構造は、脱穀装置の1番物横送りスクリューあるいは2番物横送りスクリューで横送り搬出された1番物や2番物を、穀粒タンクへ揚送するスクリューや2番還元用のスクリューの下端部に受け渡すようになっている。また、穀粒タンクに貯留された穀粒の搬出装置では、穀粒タンクの底部に配備された底スクリューで横送り搬出した穀粒を縦送りスクリューコンベアの下端に供給し、縦送りスクリューコンベアで揚送した穀粒を上下揺動および旋回可能な横送りスクリューコンベアの始端に送り込むよう構成されている。
【0003】
そして、上記のように複数のスクリューに亘って穀粒を順次受け渡してゆくスクリュー搬送構造においては、搬送上手側のスクリュー軸の後端と搬送下手側のスクリュー軸の始端とを、ギヤケースに組み込まれたベベルギヤを介して連動連結する連動構造が多用されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2001−204233号公報
【特許文献2】特開2004−201651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記スクリュー搬送構造においては、ギヤケースに組み付け咬合された一対のベベルギヤの中心孔に各スクリュー軸をスプライン嵌合、あるいは、小判孔嵌合によって差込み連結するのであるが、スプライン嵌合連結ではスプラインピッチで嵌合位相が変更可能であり、また、小判孔嵌合では180°に反転しての嵌合が可能であり、無造作に差込み嵌合すると、上手側スクリューにおけるスクリュー羽根の終端と下手側スクリューにおけるスクリュー羽根始端との回転位相が合わなくなって円滑な穀粒受け渡しができなくなり、スクリュー交差部位における搬送能力が低下し、穀粒の損傷や詰まりなどが発生しやすくなる。特に、上手側スクリューにおけるスクリュー羽根の終端に掻き出し用の排出板を備えたものにおいては、排出板で送り出した穀粒を下手側スクリューにおけるスクリュー羽根始端で円滑に受継ぐように一層適切な位相合わせが必要となる。
【0005】
そこで、従来では、組付け方向を明記したラベルをギヤケースに貼り付ける、等して誤組みの発生を回避しているのであるが、ラベルの準備およびこれの貼付け作業が別途必要となってコスト高の一因となるものであった。
【0006】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、誤組みのない組付けを行うことができるスクリュー搬送構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、搬送上手側のスクリュー軸の後端と搬送下手側のスクリュー軸の始端とをベベルギヤを介して連動連結したスクリュー搬送構造であって、
各スクリュー軸のギヤ連結部とこれに嵌合連結されるベベルギヤの中心嵌合孔の断面形状を、一つの特定された回転位相においてのみ互いの嵌合が許容される形状に設定してあることを特徴とする。
【0008】
上記構成によると、スクリュー軸とこれに対応したベベルギヤは一つの特定された回転位相においてしか嵌合連結されることはなく、所定の位相で咬合させた一対のベベルギヤの中心嵌合孔に各スクリュー軸のギヤ連結部を差込み嵌合するだけで、搬送上手側スクリュー軸におけるスクリュー羽根の終端と下手側スクリュー軸におけるスクリュー羽根の始端とは所定の位相関係を保って回転することになる。
【0009】
従って、第1の発明によると、組付け方向を明記したラベルなどを要することなく誤組みのない組付けを行うことが可能となった。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記スクリュー軸のギヤ連結部における外周面に、互いに平行に対向する一対の扁平カット面を備えるとともに、両扁平カット面の間で互いに対向する軸外周面の一方に扁平カット面を備えてあるものである。
【0011】
上記構成によると、スクリュー軸のギヤ連結部に形成した3つの扁平カット面は嵌合位相の合わせ面とトルク伝達面の機能を発揮し、第1発明の上記効果をもたらすととともに、3つの扁平カット面を介してトルク伝達を確実に行うことができる。
【0012】
第3の発明は、上記第1の発明において、
前記スクリュー軸のギヤ連結部における外周面に、非平行状態に対向する一対の扁平カット面を備えてあるものである。
【0013】
上記構成によると、スクリュー軸のギヤ連結部における外周面への切削加工が2箇所だけとなり、第1発明の上記効果をもたらすととともに、加工コストの節減に有効となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に、本発明に係るスクリュー搬送構造を備えた自脱型の脱穀装置の縦断した側面図が示されている。この脱穀装置は、コンバインに搭載されて使用されるものであって、図1において図外左方に配備された刈取り部で刈取られて横倒れ姿勢で搬送されてきた刈取り穀稈をフィードチェーン1で受取り、その穂部を扱室2に挿入した状態で図中左方から右方に通過搬送することで、扱室2に前後水平に軸支した扱胴3によって脱穀処理し、穀稈から分離した処理物を扱室下部に沿って張設した受網4で選別し、受網4を漏下した細かい処理物を扱室2の下方に配備された揺動選別部5の前半部に落下供給するとともに、受網4を漏下しなかった大きい処理物を扱室終端の送塵口6から搬出して揺動選別部5の中間部に落下供給し、揺動選別部5に落下供給された処理物を前後に長い揺動選別ケース7で受け止め、載置した処理物を後方(図1では右方)に向けて揺動搬送しながら粗選別用の前部チャフシーブ8、精選別用のグレンシーブ9、ほぐし用の選別ラック10、後部チャフシーブ11、ストローラック12、などを利用して篩い選別するとともに、選別部前端部に備えた唐箕13から後方上方に向けて供給された選別風を吹き付けて風選処理し、グレンシーブ9から漏下した穀粒を1番回収部14に選別回収するとともに、後部チャフシーブ11やストローラック12から漏下した2番物を2番回収部15に選別回収するよう構成されている。
【0015】
1番回収部14に回収した穀粒は、横送りスクリュー16によって機外にまで横送りされた後、スクリュー式の揚穀装置17によって揚送されて穀粒タンクなどの回収部(図示せず)に供給され、2番回収部15に回収した2番物は横送りスクリュー18によって横送りされた後、スクリュー式の2番還元装置19によって揚送され、揺動選別ケース7の前部に還元供給されて再選別処理を受けるよう構成されている。
【0016】
また、扱室2の後方で揺動選別部5の後部上方箇所には、排ワラ搬送経路の下側に位置させて横断流ファンからなる排塵ファン20が横架されており、扱室2の終端に形成された送塵口6から吹き出てきた浮塵やワラ屑、選別風によって揺動選別部5の後部上方に吹き上げられた浮塵やワラ屑が排塵ファン2に吸引されて強制的に機体後方に排出されるようになっている。また、前記排塵ファン20の上方には、穂先側係止搬送機構21aと株元側挟持搬送機構21bとを斜めに並列配置してなる排ワラ搬送装置21が配備されており、扱室2から搬出されてきた横倒れ姿勢の排ワラが後方かつ穂先側に向けて斜め搬送され、脱穀装置後端に装着される排ワラカッタ、排ワラ結束装置、排ワラドロッパ、などの排ワラ処理装置(図示せず)に供給されるようになっている。
【0017】
また、扱室2の後方には、扱胴3と同軸心で駆動回転される六角形状のささり落とし用の処理回転体22が配置されており、フィードチェーン1で挟持されて扱室2から搬出されてきた排ワラを処理回転体22で上方から叩き揺することで排ワラに刺さり込んでいる穀粒を分離して落下回収するようになっている。
【0018】
揚送装置17は横送りスクリュー16にベベルギヤ連動されて駆動され、また、2番還元装置19は横送りスクリュー18にベベルギヤ連動されて駆動されるようになっており、各連動構造は同様であるので、その代表として、横送りスクリュー16と揚送装置17との連動構造を図面に基づいて以下に説明する。
【0019】
図4に示すように、横送りスクリュー16はスクリュー軸25にスクリュー羽根26、掻き上げ板27、および、軸受けカバー28を溶接して構成されており、スクリュー軸25の搬送下手側の端部が脱穀装置4の横外側に配備されたギヤケース29に挿入支持されている。また、揚送装置17は搬送筒30に縦送りスクリュー31を内装して構成されるとともに、スクリュー羽根32および軸受けカバー33を溶接したスクリュー軸34の下端部が前記ギヤケース29に挿入支持されている。
【0020】
ギヤケース29には直交して咬合された一対のベベルギヤ35,36が軸受け支承されており、各ベベルギヤ35,36の中心嵌合孔35a,36aに前記スクリュー軸25,34の端部に形成されたギヤ連結部25a,34aがそれぞれ差込み嵌合されている。
【0021】
図5に示すように、スクリュー軸25,34のギヤ連結部25a,34aは、その外周面に互いに平行に対向する一対の扁平カット面S1,S2を備えるとともに、両扁平カット面S1,S2の間で互いに対向する軸外周面の一方に扁平カット面S3を備えており、かつ、図6に示すように、ベベルギヤ35,36の中心嵌合孔35a,36aが前記ギヤ連結部25a,34aの断面形状と同形状に形成され、もって、スクリュー軸25,34とベベルギヤ35,36とがそれぞれ一つの特定された回転位相においてのみ互いに嵌合連結可能となっている。
【0022】
前記ベベルギヤ35,36のボス部端面とギヤケース29における軸受けボス部の端面にはそれぞれ合いマークma,mbが刻設されており、これら合いマークma,mbを用いて両ベベルギヤ35,36をギヤケース29に組み付けた状態で、これらベベルギヤ35,36にそれぞれスクリュー軸25,34を差込み嵌合することで、横送りスクリュー16と縦送りスクリュー31とが所定の回転位相の関係を保って連動連結されることになる。
【0023】
このようにして位相合わせ状態で横送りスクリュー16と縦送りスクリュー31とが連動連結されることで、横送りスクリュー16で横送りされた穀粒はその搬送終端で掻き上げ板27によって掻き上げられ、この掻き上げられた直後に縦送りスクリュー31のスクリュー羽根32の始端ですくい上げられて円滑に揚送されてゆくことになる。
【0024】
〔他の実施例〕
【0025】
(1)スクリュー軸25,34とベベルギヤ35,36とを一つの特定された回転位相においてのみ嵌合連結する構造としては、図8に示すように、スクリュー軸25,34のギヤ連結部25a,34aにおける外周面に、非平行状態に対向する一対の扁平カット面S4,S5を備えるとともに、ギヤ連結部25a,34aの断面形状に合致する形状にベベルギヤ35,36の中心嵌合孔35a,36aの断面形状を形成して実施することもできる。
【0026】
(2)図9,図10に示すように、ささり落と用の前記処理回転体22の外周に、線材を屈曲した処理歯23aや板材をV形に屈折した処理歯23bを突設して、これら処理歯23a,23bを排ワラに突入させてほぐすことで穀粒回収効率を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】脱穀装置の縦断側面図
【図2】脱穀装置の横断平面図
【図3】脱穀装置の縦断背面図
【図4】スクリュー搬送構造の要部を示す縦断正面図
【図5】横送りスクリューの(イ)軸端部の断面図と(ロ)側面図
【図6】ベベルギヤの(イ)縦断側面図と(ロ)正面図
【図7】ギヤケースとこれに組み込まれたベベルギヤの正面図
【図8】別実施例のスクリュー軸とこれに連結されたベベルギヤの正面図
【図9】別実施例の処理回転体を示す正面図
【図10】さらに別の実施例の処理回転体を示す斜視図
【符号の説明】
【0028】
25 スクリュー軸
25a ギヤ連結部
34 スクリュー軸
34a ギヤ連結部
35 ベベルギヤ
35a 中心嵌合孔
36 ベベルギヤ
36a 中心嵌合孔
S1 扁平カット面
S2 扁平カット面
S3 扁平カット面
S4 扁平カット面
S5 扁平カット面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送上手側のスクリュー軸の後端と搬送下手側のスクリュー軸の始端とをベベルギヤを介して連動連結したスクリュー搬送構造であって、
各スクリュー軸のギヤ連結部とこれに嵌合連結されるベベルギヤの中心嵌合孔の断面形状を、一つの特定された回転位相においてのみ互いの嵌合が許容される形状に設定してあることを特徴とするスクリュー搬送構造。
【請求項2】
前記スクリュー軸のギヤ連結部における外周面に、互いに平行に対向する一対の扁平カット面を備えるとともに、両扁平カット面の間で互いに対向する軸外周面の一方に扁平カット面を備えてある請求項1記載のスクリュー搬送構造。
【請求項3】
前記スクリュー軸のギヤ連結部における外周面に、非平行状態に対向する一対の扁平カット面を備えてある請求項1記載のスクリュー搬送構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−271241(P2006−271241A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93560(P2005−93560)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】