説明

スクリーンチェンジャのスクリーン交換方法及びスクリーンチェンジャ

【課題】DB式の押出機のスクリーンチェンジャの空気抜き作業において、樹脂の空気抜き溝からの流出を的確に検知することができるスクリーンチェンジャのスクリーン交換方法及びこの方法を好適に利用することができるスクリーンチェンジャを提供する。
【解決手段】本発明は、DB(DUAL BAR SCREEN CHANGER)式の押出機のスクリーンチェンジャにおいて、空気抜き溝から樹脂が流れ出すことによってスクリーン交換後の空気抜き作業を完了させる方法であり、空気抜き溝から大気中に流れ出す樹脂の温度がその周囲の温度、例えばスライドバーの温度と異なることを利用して樹脂の空気抜き溝からの流出の有無を検出する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機のスクリーンチェンジャのスクリーン交換方法及びこの方法を好適に利用することができるスクリーンチェンジャに係り、特に、DB(DUAL BAR SCREEN CHANGER)式のスクリーンチェンジャにおいて、空気抜きを的確に行うことができるスクリーン交換方法及びスクリーンチェンジャに関する。
【背景技術】
【0002】
押出機は、樹脂原料を溶融、混練して押し出す際に、樹脂原料に含まれるゴミや異物、劣化物や不純物等を取り除くためのスクリーンチェンジャが、ギアポンプと金型の間に設けられている。スクリーンチェンジャは種々の型式のものがあるが、DB式のスクリーンチェンジャは、ハウジング内に分岐した一対の流路を設け、スクリーン交換側流路と稼動側流路とをそれぞれ切り替えてスクリ−ンの交換を行うことができるようになっている。このため、スクリ−ンの交換を行うときに押出機を停止しなくてもよいという利点を有する。しかしながら、スクリ−ン交換は、スクリーンをスクリーンチェンジャ外に引き出して行われるため、スクリ−ン交換後には空気抜きを行う必要があり、このための構造、作業が必要になるという不利な点がある。
【0003】
この空気抜きの方法として、以下のような方法が提案されている。例えば、特許文献1又は2においては、スクリーン交換後にスクリーンをスクリーンチェンジャ内の空気抜き位置に戻し、そのスクリーンの周囲及び樹脂流路内に樹脂を充填しつつ、充填される樹脂によりスクリーンチェンジャ内の空気を大気中に排出させることによって空気抜きが行われる。この空気抜き作業は、空気抜き溝から樹脂が流れ出すことによって完了するとされる。
【0004】
特許文献3においては、スクリーン交換後に、スクリーンの周囲及び樹脂流路内の空気を樹脂の充填により大気中に排出することによって空気抜きが行われることについては、上記特許文献1や2と同様であるが、スクリーンの周囲及び樹脂流路内の空気を所定箇所に捕集する構造を設け、捕集された空気を装置内の隙間(空気抜き孔)から空気のみを大気中に排出させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-90635号公報
【特許文献1】特開平8-252859号公報
【特許文献2】特開2006-116908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スクリーン交換後の空気抜きが不十分であると、樹脂中に空気が巻き込まれて樹脂切れを起こし、製品の品質低下をまねく。このため、空気抜きは確実に行う必要があるが、特許文献3に記載の空気抜き方法は、空気の排出完了を確認する方法は無い。一方、特許文献1又は2に記載の空気抜き方法は、空気抜き溝からの樹脂の流出によって空気が排出されたことが確認できるので好ましい。しかし、特許文献1又は2に、樹脂の空気抜き溝からの流出をどのように検知し、どの時点で空気抜き作業を完了とするかについて何ら記載がない。空気抜き溝から樹脂が流出している間は、稼動側の樹脂流路の樹脂圧が不安定になり製品品質に問題を主ずる恐れがあるので、空気抜き溝からの樹脂の流出を的確に検知する必要がある。
【0007】
本発明は、DB式の押出機のスクリーンチェンジャの空気抜き溝から樹脂が流れ出すことによってスクリーン交換後の空気抜き作業を完了させる方法において、樹脂の空気抜き溝からの流出を的確に検知することができ、また、空気の排出向上を図ることができるスクリーンチェンジャのスクリーン交換方法及びこの方法を好適に利用することができるスクリーンチェンジャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るスクリーンチェンジャのスクリーン交換方法は、一対のスライドバーが嵌装されたハウジング内に、溶融、混練された樹脂を流入させ、2つの樹脂流路に分岐させてそれぞれのスライドバーに設けられたスクリーン及びブレーカプレートを通したのち、再び1つの樹脂流路に合流させて送り出す流路が設けられたスクリーンチェンジャにおいて、前記一対のスライドバーのうちの一のスライドバーをハウジングからスクリーン交換位置に引き出し、分岐された一の樹脂流路内への樹脂の流入を阻止した状態で一のスクリーンを交換する段階と、前記一のスライドバーを前記ハウジングの空気排出操作位置に引き戻し、前記一の樹脂流路内に溶融、混練された樹脂の一部を流入させる段階と、前記一の樹脂流路に連通し外部に開放された空気抜き溝部に温度変化が検知された後、前記一のスライドバーを前記ハウジングの稼動位置に引き戻し、前記一の樹脂流路内に溶融、混練された樹脂を稼動状態に流入させる段階と、上記操作と同様に、他の一のスライドバーのスクリーンを交換し、他の一の樹脂流路内の空気抜きを行った後、他の一のスライドバーを前記ハウジングの稼動位置に引き戻し、前記他の一の樹脂流路内に溶融、混練された樹脂を稼動状態に流入させる段階と、により実施される。
【0009】
上記発明において、使用する樹脂の種類、温度よって、空気抜き溝部に温度変化が現れた後、スライドバーをハウジングの稼動位置に引き戻すまでの時間を調整するのがよい。
【0010】
上記方法は、以下のスクリーンチェンジャにより好適に実施することができる。すなわち、本発明に係るスクリーンチェンジャは、一対のスライドバーが嵌装されたハウジング内に、溶融、混練された樹脂を流入させ、2つの樹脂流路に分岐させてそれぞれのスライドバーに設けられたスクリーン及びブレーカプレートを通したのち、再び1つの樹脂流路に合流させて送り出す流路が設けられたスクリーンチェンジャであって、前記スライドバーは、前記ハウジング内に稼動位置、空気排出操作位置及びスクリーン交換位置に設定することができ、該空気排出操作位置に設定されたときは前記樹脂流路に連通し外部に開放された空気抜き穴を有するとともに、前記一の樹脂流路内に溶融、混練された樹脂の一部を流入させることができるようになっており、前記空気抜き穴の排出口の温度を検出する樹脂温度検出センサと、前記排出口から離れた位置の前記スライドバーの温度を検出するベース温度検出センサと、前記樹脂温度検出センサと前記ベース温度検出センサの差異を演算し、その差異が一定値になると前記スライドバーを稼動位置に設定させる制御手段と、を有してなる。
【0011】
上記スクリーンチェンジャの発明において、樹脂温度検出センサは、非接触型の温度センサを使用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、押出機のスクリーンチェンジャのスクリーン交換後の空気抜き作業において、スクリーンチェンジャ内の樹脂圧が5〜20MPaという高圧であるにもかかわらず、樹脂の空気抜き溝からの流出を的確に検知することができ、また、空気の排出の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るスクリーンチェンジャの構成を示す模式図である。
【図2】スクリーンチェンジャの空気抜き作業を説明する図1の一部断面図である。
【図3】図2のAA断面図である。図3(a)は空気抜き作業中の状態、図3(b)は、スクリーン交換時の状態、図3(c)は通常稼働中の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、DB式の押出機のスクリーンチェンジャにおいて、空気抜き溝から樹脂が流れ出すことによってスクリーン交換後の空気抜き作業を完了させる方法であり、空気抜き溝から大気中に流れ出す樹脂の温度がその周囲の温度、例えばスライドバーの温度と異なることを利用して樹脂の空気抜き溝からの流出の有無を検出する方法である。
【0015】
本発明は、図1に示すスクリーンチェンジャにより好適に実施することができる。本例のスクリーンチェンジャ10は、図1に示すように、ハウジング11に一対のスライドバー15(15A、15B)が嵌装されている。そして、図3(c)に示すように、そのハウジング内に流入した樹脂は、2つの樹脂流路に分岐し再び1つの樹脂流路に合流して送り出されるように流路13(13A、13B)が設けられており、樹脂はそれぞれのスライドバー15A、15Bに設けられたスクリーン22及びブレーカプレート23を通ったのち、再び1つの樹脂流路13に合流するようになっている。
【0016】
スライドバー15は、ハウジング11に嵌入された状態で図1に示す油圧ユニット25、シリンダ26(26A、26B)及び制御手段30により図1の左右方向にスライド可能になっており、リミットスイッチ33(33A、33B)、34(34A、34B)、35(35A、35B)により、それぞれ稼動(通常の稼動)位置、空気排出操作位置及びスクリーン交換位置に設定することができるようになっている。
【0017】
また、スクリーンチェンジャ10には、図2のB-B断面図に示すように、スクリーン22の前後の流路13Aにそれぞれ空気抜き溝17、18が設けられており、空気抜き溝17、18が大気に開口する排出口17a、18aの温度を測定する樹脂温度検出センサ37(37A、37B)、38(38A、38B)が設けられ、排出口17a、18aから離れた位置のスライドバー15の温度を検出するベース温度検出センサ39(39A、39B)が設けられている。樹脂温度検出センサ37、38、ベース温度検出センサ39は、非接触型の温度センサであるのがよい。
【0018】
本スクリーンチェンジャ10において、スクリーン22の交換及び空気抜き作業は以下のように行われる。先ず、図1に示すスライドバー15Aをスクリーン交換位置(最大引出位置)に引き出してスクリーン22を交換する。このとき、スライドバー15A、15Bは図3(b)に示す状態にあり、流路13Aは閉じられ、樹脂は流路13Bを通って金型等に供給されている。
【0019】
次に、スライドバー15Aを空気排出操作位置に引き戻す。このとき、スクリーンチェンジャ10は、図1、図2、図3(a)に示す状態になっている。すなわち、スライドバー15Aは図1に示す状態において、図2に示すように、流路13の樹脂が樹脂注入溝16を通ってスクリーン交換がされたスクリーン22の前後及び周囲の流路13Aを満たしてゆく。流路13Aを満たしてゆく樹脂により空気は、空気抜き溝17、18を通って大気中に排出される。流路13Aが樹脂により完全に満たされると、樹脂は空気抜き溝17、18を通って排出口17a、18aから大気中に排出される。
【0020】
空気抜き作業中において、樹脂温度検出センサ37、38により空気抜き溝17、18の排出口17a、18aの温度を測定していると、空気が排出される状態から樹脂が排出される状態に変化すると、温度変化が観察されるので、空気抜き溝17、18から樹脂が大気中に排出され始めたことを検知することができる。しかしながら、空気抜き作業中において、樹脂温度検出センサ37、38による排出口17a、18aの温度測定と、ベース温度検出センサ39による温度測定とに基づくデータから空気抜き作業の完了を判断する方が好ましい。空気抜き作業状態に関し、より多くの情報を得ることができるからである。一方、取り扱う樹脂によっては、樹脂温度検出センサ37A、38A(37B、38B)のいずれか1つを削除することができ、ベース温度検出センサ39A(39B)を削除することができる。
【0021】
次に、樹脂の空気抜き溝17、18から大気中への排出が開始された後、スライドバー15Aを更に引き戻し、スライドバー15Aを稼動位置に設定する。このとき、スライドバー15A、15Bは、図3(c)の状態になっており、樹脂は、13A、13Bを通って金型等へ供給される状態になっている。
【0022】
樹脂の空気抜き溝17、18から大気中への排出が開始された後、どの程度の樹脂を排出するか、この排出時間をどの程度にするかは、樹脂の排出抵抗、樹脂の種類、稼働条件等によって決められる。従って、排出時間は制御できるようになっているのがよい。
【0023】
スライドバー15Aのスクリーン交換が終わると、次にスライドバー15Bのスクリーン交換が、上記スライドバー15Aの場合と同様に行われる。スライドバー15Bのスクリーン交換が終わると、スクリーン交換作業が完了する。
【符号の説明】
【0024】
10 スクリーンチェンジャ
11 ハウジング
13(13A、13B) 流路
15(15A、15B) スライドバー
16 樹脂注入溝
17 空気抜き溝
17a 排出口
18 空気抜き溝
18a 排出口
22 スクリーン
23 ブレーカプレート
25 油圧ユニット
26(26A、26B) シリンダ
30 制御手段
33(33A、33B)〜35(35A、35B) リミットスイッチ
37(37A、37B)〜38(38A、38B) 樹脂温度検出センサ
39(39A、39B) ベース温度検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のスライドバーが嵌装されたハウジング内に、溶融、混練された樹脂を流入させ、2つの樹脂流路に分岐させてそれぞれのスライドバーに設けられたスクリーン及びブレーカプレートを通したのち、再び1つの樹脂流路に合流させて送り出す流路が設けられたスクリーンチェンジャにおいて、
前記一対のスライドバーのうちの一のスライドバーをハウジングからスクリーン交換位置に引き出し、分岐された一の樹脂流路内への樹脂の流入を阻止した状態で一のスクリーンを交換する段階と、
前記一のスライドバーを前記ハウジングの空気排出操作位置に引き戻し、前記一の樹脂流路内に溶融、混練された樹脂の一部を流入させる段階と、
前記一の樹脂流路に連通し外部に開放された空気抜き溝部に温度変化が検知された後、前記一のスライドバーを前記ハウジングの稼動位置に引き戻し、前記一の樹脂流路内に溶融、混練された樹脂を稼動状態に流入させる段階と、
上記操作と同様に、他の一のスライドバーのスクリーンを交換し、他の一の樹脂流路内の空気抜きを行った後、他の一のスライドバーを前記ハウジングの稼動位置に引き戻し、前記他の一の樹脂流路内に溶融、混練された樹脂を稼動状態に流入させる段階と、を有するスクリーンチェンジャのスクリーン交換方法。
【請求項2】
使用する樹脂の種類、温度よって、空気抜き溝部に温度変化が現れた後、スライドバーをハウジングの稼動位置に引き戻すまでの時間を調整する請求項1に記載のスクリーンチェンジャのスクリーン交換方法。
【請求項3】
一対のスライドバーが嵌装されたハウジング内に、溶融、混練された樹脂を流入させ、2つの樹脂流路に分岐させてそれぞれのスライドバーに設けられたスクリーン及びブレーカプレートを通したのち、再び1つの樹脂流路に合流させて送り出す流路が設けられたスクリーンチェンジャであって、
前記スライドバーは、前記ハウジング内に稼動位置、空気排出操作位置及びスクリーン交換位置に設定することができ、該空気排出操作位置に設定されたときは前記樹脂流路に連通し外部に開放された空気抜き穴を有するとともに、前記一の樹脂流路内に溶融、混練された樹脂の一部を流入させることができるようになっており、
前記空気抜き穴の排出口の温度を検出する樹脂温度検出センサと、
前記排出口から離れた位置の前記スライドバーの温度を検出するベース温度検出センサと、
前記樹脂温度検出センサと前記ベース温度検出センサの差異を演算し、その差異が一定値になると前記スライドバーを稼動位置に設定させる制御手段と、を有するスクリーンチェンジャ。
【請求項4】
樹脂温度検出センサは、非接触型の温度センサであることを特徴とする請求項3に記載のスクリーンチェンジャ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−218403(P2012−218403A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89405(P2011−89405)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】