説明

スクリーン及びスクリーンの製造方法

【課題】反射面の形成のために複雑な制御を行う必要がなく、比較的簡易に形成できる構造を有し、投射光を適切に反射させるとともに外光の反射を抑えることができるスクリーン及びスクリーンの製造方法を提供すること。
【解決手段】スクリーン10は、第1成膜工程において、反射膜RMが、多数の立体部2aの全面に亘って形成されるので、比較的簡単に製造できながらも反射特性が高いものとなる。また、第2成膜工程において、投射光PLの入射と外光OLの入射とを考慮して光吸収膜AMを形成しているので、効率的な投射光PLの反射を行うとともに、反射膜RMにおける外光OLの反射を抑制するものにもなっている。光吸収膜AMの形成では、膜厚を均一にする必要も真空を引く必要もないので、簡易な装置で成膜が行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方のプロジェクタ等の投影装置からの投射光を反射して投影画像を映し出すスクリーン及びスクリーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、投影画像を反射させる反射スクリーンとして、下方からの斜め投射に対して正面側で観察可能にするものであって、スクリーン基板上に多数の凸状の単位形状部を2次元的に配置させるものが知られている(特許文献1参照)。このスクリーンでは、各単位形状部の表面にプロジェクタ等の投影機からの投影位置に応じて部分的に投射光の反射面を形成しており、反射面の形成されていない領域に入射する上方からの外光を遮断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−215162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、下方からの斜め投射に応じて、スクリーン基板上の所望の位置に反射面を部分的に設けるには、当該反射面となる膜の形成において、スクリーン基板に対して斜方から成膜物質を射出させるといった高度な制御が必要となる。また、反射面に所望の反射特性をもたせるために、反射面となる一層以上の膜の厚さを精密に調整するといった制御が必要となる可能性もある。
【0005】
また、当該反射面以外の部分から入射する外光等の不要な成分を処理するために、スクリーン基板の素材として、光透過性や光吸収性を有するものを用いる必要がある。例えば、スクリーン基板に光透過性の素材を用いる場合、スクリーン基板を透過した光を観察者側に戻ることのないように吸収させるため、さらに裏面全体に黒塗りを行う等の処理が必要となる。
【0006】
そこで、本発明は、反射面の形成のために複雑な制御を行う必要がなく、比較的簡易に形成できる構造を有し、投射光を適切に反射させるとともに外光の反射を抑えることができるスクリーン及びスクリーンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るスクリーンは、(a)スクリーン基板の前面側に2次元的に配置される複数の立体部と、(b)スクリーン基板のうち、少なくとも複数の立体部の表面に入射する投射光に対応する領域上に形成される反射膜と、(c)複数の立体部の表面に入射する外光に対応する領域上に形成される光吸収膜とを備え、(d)光吸収膜の少なくとも一部が、反射膜の表面側に反射膜の一部に重畳して形成されている。ここで、複数の立体部表面に入射する投射光に対応する領域は、各立体部の部分領域となっている。
【0008】
上記スクリーンでは、反射膜が少なくとも投射光に対応する領域上に形成されることで、投射光を適切に反射させることができ、かつ、光吸収膜が外光に対応する領域上に形成されるので不要な成分である外光の反射を抑制することができる。これにより、コントラストがより改善され、画像品質が安定した投影を行い得るものとなる。この際、特に、光吸収膜の少なくとも一部が、反射膜の表面側に反射膜の一部に重畳して形成されているので、反射膜と光吸収膜との境界は、簡易な塗布等により形成可能な光吸収膜の外縁によって画定される。よって、当該スクリーンについて、反射面の形成のために複雑な制御を行う必要がなく、比較的簡易に形成できる構造とすることができる。また、スクリーン基板として遮光性を考慮することなく種々の素材を用いることが可能である。
【0009】
また、本発明の具体的な態様によれば、(a)反射膜が、スクリーン基板のうち、複数の立体部の全表面に形成され、(b)光吸収膜が、当該反射膜の表面側に形成され反射膜を部分的に覆う。この場合、比較的簡易に均一な膜厚で反射膜を効率的に形成させることが可能となる。また、当該反射膜の表面側において、光吸収膜の形成されていない部分は、反射膜の露出した状態となることで、投射光を反射する反射面として機能する。
【0010】
また、本発明の別の態様によれば、光吸収膜が、少なくとも可視光波長を吸収する黒色顔料を含む。この場合、光吸収膜中の黒色顔料により外光中の可視光成分を吸収するので、当該成分が観察者のいる側に目障りな外光が反射されて投影画像に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0011】
また、本発明の別の態様によれば、反射膜が、金属膜であり、当該金属膜と光吸収膜との間に形成され当該金属膜を被覆する被覆膜をさらに備える。この場合、被覆膜により、例えば金属膜が剥がれたり酸化したりしないように保護することや、金属膜の反射作用を補強することが可能となる。
【0012】
また、本発明の別の態様によれば、被覆膜が、金属膜を保護する物質により形成される金属保護膜及び金属膜による反射の作用を促進する物質により形成される増反射膜のいずれかである。この場合、被覆膜を金属保護膜とすれば金属膜が剥がれたり酸化したりしないように保護することが可能となり、被覆膜を増反射膜とすれば金属膜の反射作用を補強することが可能となる。
【0013】
また、本発明の別の態様によれば、被覆膜が、金属膜と同一の領域に形成される。この場合、被覆膜を必要とする領域に無駄なく形成させることができる。
【0014】
また、本発明の別の態様によれば、金属膜が、アルミニウム及び銀のいずれかである。この場合、種々の方法で反射特性のよい反射膜を形成することができる。
【0015】
また、本発明の別の態様によれば、反射膜が、誘電体多層膜である。この場合、反射膜に十分な強度を持たせることができ、例えば被覆膜等を用いず、反射面として機能する部分を露出させることが可能である。
【0016】
また、本発明の別の態様によれば、反射膜とスクリーン基板との間に形成される付着力補強用の下地膜をさらに備える。この場合、スクリーン基板に対する反射膜の付着強度を高めることができ、反射膜を意図通りの箇所に形成することができ、その耐久性を高めることができる。
【0017】
上記課題を解決するため、本発明に係るスクリーンの製造方法は、(a)スクリーン基板の前面側に2次元的に配置される複数の立体部を有するスクリーンの製造方法であって、(b)スクリーン基板のうち、少なくとも複数の立体部の表面に入射する投射光に対応する領域上に対して、反射膜となる第1成膜物質を入射させて成膜を行う第1成膜工程と、(c)スクリーン基板に対して所定の入射角度で光吸収膜となる第2成膜物質を入射させることにより、反射膜の表面側に反射膜の一部に重畳させるとともに反射膜の残りの部分を露出させるように当該光吸収膜の成膜を行う第2成膜工程とを有する。
【0018】
上記スクリーンの製造方法では、第1成膜工程において、投射光に対応する領域上に対して反射膜を形成させ、第2成膜工程において、反射膜の表面側に反射膜の一部に重畳させるとともに反射膜の残りの部分を露出させるように光吸収膜を形成させている。この場合、スクリーンの製造において、反射膜と光吸収膜との境界は、簡易な塗布等により形成可能な光吸収膜の外縁によって画定される。よって、反射面の形成のために複雑な制御を行う必要がない。また、製造されるスクリーンは、比較的簡易に形成できる構造でありながらも、投射光を適切に反射させるとともに外光の反射を抑えることができ、コントラストがより改善され、画像品質が安定した投影を行い得るものとなる。また、スクリーンの製造において、スクリーン基板として種々の素材を用いることが可能である。
【0019】
また、本発明の具体的な態様によれば、第2成膜工程において、投射光の入射方向とは異なる入射方向から第2成膜物質を入射させて塗布することにより、光吸収膜を複数の立体部の表面に入射する外光に対応する領域上に形成させる。これにより、第2成膜物質により形成される光吸収膜が投射光の反射を妨げること回避しつつ、外光に対応する適切な領域に光吸収膜を形成させることができるとともに、反射面の領域と光吸収を行う領域とを画定することができる。
【0020】
また、本発明の別の態様によれば、第2成膜工程において、第2成膜物質が、投射光の入射方向と反対側の方向から塗布される。ここで、投射光の入射方向と反対側の方向を規定するために、まず、スクリーン表面を巨視的に平面であると捉えた仮想的な平面をスクリーン面と呼ぶものとする。さらに、このスクリーン面に垂直な平面であり、かつ、ある方向からスクリーン面に入射する投射光の光路をスクリーン面へ正射影した線分にも垂直であって、当該投射光のスクリーン平面上の入射点を含む平面を境界面と呼ぶものとする。この場合において、投射光の入射方向と反対側の方向とは、当該境界面を境として分けた2つの領域のうち、当該投射光を含まない領域側から当該境界面側に向かう方向であって、当該投射光をスクリーン面へ正射影した成分とは逆方向の成分を含む方向を言う。一般に、室内におけるプロジェクタ等の画像投射において、室内の天井等に設置された照明により、スクリーンの上方側から外光が入射する。これに対して、例えば室内の床側にプロジェクタ等を設置することにより、スクリーンの下方側から投射光が入射するようにする。このような場合に、第2成膜物質が、投射光の入射方向と反対側の方向即ち上方から塗布されていることで、当該スクリーンは、下方から入射する投射光を効率よく反射するとともに、上方から即ち投射光とは反対側から入射する外光を効率よく吸収することができる。
【0021】
また、本発明の別の態様によれば、(a)第1成膜工程において、反射膜が、スクリーン基板のうち、複数の立体部の全表面に成膜され、(b)第2成膜工程において、光吸収膜が、当該反射膜の表面上に成膜される。この場合、比較的簡易に均一な膜厚で反射膜を形成することが可能となる。また、当該反射膜の表面側において、光吸収膜の形成されていない部分が反射膜の露出した状態となり、このような露出部分は、投射光を反射する反射面として機能する。
【0022】
また、本発明の別の態様によれば、第2成膜工程において、少なくとも可視光波長を吸収する黒色顔料を含む第2成膜物質を塗布する。この場合、第2成膜物質から形成される光吸収膜は、黒色顔料により外光中の可視光成分を吸収し、当該成分が観察者のいる側に反射されて投影画像に影響を及ぼすことを抑制できる。また、塗布により成膜を行うので、比較的簡易に光吸収膜を形成することができる。
【0023】
また、本発明の別の態様によれば、反射膜が、金属膜であり、第1成膜工程による当該金属膜の成膜後、第2成膜工程による前記光吸収膜の成膜前に、当該金属膜を被覆する被覆膜となる第3成膜物質を入射させて成膜を行う被覆膜形成工程をさらに有する。
【0024】
また、本発明の別の態様によれば、第1成膜工程による反射膜の成膜前に、スクリーン基板のうち、少なくとも反射膜に対応する領域上に対して下地膜となる第4成膜物質を入射させて成膜を行う下地膜形成工程をさらに備える。この場合、下地膜によってスクリーン基板に対する反射膜の付着強度を高めることができ、反射膜を意図通りの箇所に形成することができ、その耐久性を高めることができる。
【0025】
また、本発明の別の態様によれば、第1成膜工程において、第1成膜物質の成膜方法が、真空蒸着法、イオンアシスト法、スパッタ法のいずれかである。この場合、良好な反射特性を有する反射膜を効率よく所望の状態で形成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係るスクリーンを用いた投射システムを示す図である。
【図2】スクリーンの全体的な使用状態を説明するための模式図である。
【図3】スクリーンの構造について説明するための側断面図である。
【図4】(A)〜(C)は、スクリーンの表面部の製造工程について説明するための側断面図である。
【図5】(A)、(B)は、それぞれ反射膜及び被覆膜の成膜を行うための製造装置の一例について説明する側断面図である。
【図6】(A)、(B)は、それぞれ光吸収膜の成膜を行うための製造装置の一例について説明するための模式的な図である。
【図7】スクリーンの変形例について説明するための側断面図である。
【図8】第2実施形態に係るスクリーンを説明するための側断面図である。
【図9】第3実施形態に係るスクリーンを説明するための側断面図である。
【図10】反射膜及び被覆膜の成膜を行うための製造装置の側断面図である。
【図11】第4実施形態に係るスクリーンを説明するための側断面図である。
【図12】(A)〜(C)は、スクリーンの表面部の製造工程について説明するための側断面図である。
【図13】第5実施形態に係るスクリーンを説明するための側断面図である。
【図14】(A)〜(D)は、スクリーンの表面部の製造工程について説明するための側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係るスクリーンについて図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係るスクリーンを用いた投射システムの一例を示す図である。また、図2は、本実施形態のスクリーンの全体的な使用状態を説明する模式図である。
【0028】
図1に示すように、投射システム1000は、反射型のスクリーン10と、画像投射装置であるプロジェクタ100とを備える。スクリーン10は、樹脂により形成されるスクリーン基板1を備え、図2のように水平方向即ちx方向を長手方向とし、垂直方向即ちy方向を短手方向として設置される横長の長方形状を有する。なお、スクリーン10の前面10a即ちスクリーン基板1の前面側を加工して形成される表面には、詳しくは後述する不図示の微細構造が形成されている。また、図1に示すようにスクリーン10の正面下方に配置されるプロジェクタ100は、プロジェクタ本体50と、投射レンズ本体20と、反射ミラーRRとを備える。プロジェクタ100を構成する各機構は、筐体SC内に収容されている。
【0029】
以下、プロジェクタ100によるスクリーン10への画像投射について説明する。まず、プロジェクタ本体50での制御により、画像光が形成され、投射レンズ本体20から射出される。さらに、当該画像光は、反射ミラーRRでの反射により、プロジェクタ100からの投射光PLとしてスクリーン10側に射出される。この際、プロジェクタ100は、投射光PLを下方からスクリーン10の中心位置Oに対して入射角度αで投射する。スクリーン10全体に投射された投射光PLは、スクリーン10の前面10aに形成される不図示の微細凹凸構造上の反射面で前方に反射されることで、中心位置Oを通る鉛直軸LXを中心に左右対称な長方形状の画像として観察可能になる。なお、ここでは、スクリーン10及びプロジェクタ100の設置環境として、室内に天吊りされた照明装置200により、上方からの外光OLによる照明がなされている。このように、室内での投影においては、一般に、主に照明等による上方からの外光OLがスクリーン10への投影画像にとって不要な光として存在し、この外光OLの影響を避けるため、投射光PLは、外光OLとは反対側の下方から投射するようにしている。
【0030】
以下、図2を用いて図1のプロジェクタ100から投射される投射光PLとスクリーン10との配置関係について説明する。図2に示す投射レンズPOは、図1の投射レンズ本体20及び反射ミラーRRに対応するものであり、図2に示す投射光源点Sからの投射光PLは、図1の投射光PLと同一の投射角度でスクリーン10に入射するものとなっている。より具体的に説明すると、投射光源点Sは、スクリーン10に比較的近接した下方位置に設置され、投射光PLのスクリーン10の中心位置Oに入射する光束軸AXが入射角度αとなっている。また、ここでは、投射光源点Sからスクリーン10までの距離(即ち投射光源点Sからスクリーン10の前面10aを含む平面に垂直に下ろして交差する点である交点Hまでの距離)が投射距離dとなっている。
【0031】
図示のスクリーン10のような所謂フロント投射型の場合、中心位置Oを基準として、上述した入射角度αや投射距離dによって定まる各位置での投射光PLの入射角度に応じて、前面10a上の微細凹凸構造の光学的な設計がなされることが望ましい。さらに、スクリーン10は、上方からの外光OLについては前面10aで観察者のいる側に反射することのないように設計されていることが望ましい。本実施形態では、上記を踏まえて前面10aの表面に所定パターンで所定形状の微細凹凸構造を設けた上に、投射光PLを反射するための処理と外光OLを吸収するための処理とを施したものとしている。
【0032】
以下、図3を用いてスクリーン10の前面10aに設けられている表面構造を中心として、スクリーン10の構造全般について説明する。図3は、スクリーン10の一部を拡大した側断面図である。下地となるスクリーン基板1は、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の物質により形成される本体部分である樹脂基板TBを有し、樹脂基板TBの前面側には、凹凸面である多数の立体部2aが形成されている。多数の立体部2aは、それぞれ球面状の凹曲面を有しており、スクリーン基板1の前面側に2次元的に隙間なく形成されている。多数の立体部2a上の全表面には、反射膜RMが形成されている。さらに、反射膜RM上には、反射膜RMを被覆する被覆膜IMが形成されている。なお、被覆膜IMは、反射膜RMと同一の領域に形成されており、過不足のない状態で反射膜RMを覆っている。また、以上のようにして各立体部2a上に形成された反射膜RM及び被覆膜IMが占める領域のうち、各立体部2aの下方側即ち−y方向側の領域上には、上方からの外光OLを吸収する光吸収膜AMが形成されている。つまり、光吸収膜AMは、反射膜RM及び被覆膜IMの表面側において、反射膜RMを部分的に覆うように形成されている。以上のように、スクリーン10の前面10aに設けられている微細凹凸構造は、スクリーン基板1により前面側に形成される多数の立体部2a上に反射膜RM、被覆膜IM及び光吸収膜AMによる三重の層を備える構造となっている。ここで、反射膜RMのうち、光吸収膜AMが上方に形成されていない領域は、反射膜RM及び被覆膜IMによる二重膜構造部分が露出した状態となり、投射光PLのための反射面RSとして機能する。
【0033】
反射膜RMは、後に詳述するが、例えばアルミニウムを蒸着すること等により形成される金属膜である。被覆膜IMは、例えばSiO(二酸化ケイ素)を蒸着すること等により形成されており、反射膜RMが剥がれることや酸化することを防ぐための金属保護膜として機能する。
【0034】
光吸収膜AMは、少なくとも可視光波長を吸収する黒色顔料を含み、ニトロセルロースや合成樹脂であるアクリル、有機溶剤等を膜形成成分とする塗料を塗布することにより形成されており、画像投影には不要である外光OLについて、少なくとも可視光領域の成分が観察者側に反射されることを抑制する。
【0035】
以上のように、多数の立体部2aと、各立体部2a上にそれぞれ形成される反射膜RM及び被覆膜IMと、各立体部2aにおいて反射膜RM及び被覆膜IM上の一部にそれぞれ形成される光吸収膜AMとにより、前面10aに多数の表面部2が形成されている。これら多数の表面部2のうち、光吸収膜AMによって、反射膜RM以外の領域に入射する外光OLの反射が的確に防止されるものとなっている。また、反射膜RM及び被覆膜IMによって構成される反射面RSは、後述するように、投射光PLを適切に反射するとともに、外光OLは極力反射しない位置に形成されるものとなっている。なお、上述のように、多数の立体部2aは、隙間なく形成されているので、前面10aのうち、少なくとも画像投影のなされる有効領域は、多数の表面部2で埋め尽くされて平坦な部分が存在しない状態となっている。この場合、平坦な部分が残らないので、光が正反射して観察者の目に入るホットスポットと呼ばれる現象を回避できる。
【0036】
以下、各立体部2a上において反射面RSが露出する位置について説明する。上述のように、プロジェクタ等からの投射光PLは、スクリーン10の下方に位置する投射光源点S(図2参照)から射出されてスクリーン10に対して放射状に拡がるように入射する。これに対応して、反射面RSは、光吸収膜AMがマスクとなって、各立体部2aによって形成された凹面形状の上方側の部分即ち+y方向側の部分にのみ局所的に露出するように設けられている。つまり、反射面RSは、下方からの投射光PLに対向して露出して形成されており、投射光PLを観察者のいる正面側へ適度に拡散させた状態で反射させるものとなっている。一方、反射面RSは、光吸収膜AMにより、上方からの外光OLが入射する領域ではできるだけ露出しないものとなっている。つまり、光吸収膜AMが反射膜RMの一部を覆って反射面RSとして機能させないことにより、外光OLが観察者のいる正面側へ反射しないようになっている。以上のように、反射面RSは、前面10aにおいて、投射光PLを適切に正面方向へ射出させることができ、かつ、光吸収膜AMは、外光OLの反射を効率的に防ぐものとなっている。
【0037】
以下、スクリーン10の製造方法について説明する。まず、スクリーン10のうち、スクリーン基板1の作製について簡単に説明する。スクリーン基板1は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等を原材料とするシート状の部材を主たる原材料として形成される。具体的には、例えば当該シート状部材の表面にUV硬化樹脂を塗布した後、あるいは、当該シート状部材の表面を加熱して軟化させた後、多数の立体部2aに対応する凹凸形状を有するガラス型等で当該箇所をプレス加工する。これにより、スクリーン基板1が作製される。
【0038】
次に、各立体部2a上にそれぞれ形成される表面部2の製造工程について説明する。図4(A)〜4(C)は、スクリーン10のうち、多数の表面部2の形成過程について説明するための側断面図である。まず、図4(A)に示すように、多数の立体部2aの全表面に略一定の膜厚で反射膜RMが形成され(第1成膜工程)、さらに、図4(B)に示すように、反射膜RM上に被覆膜IMが形成される(被覆膜形成工程)。さらに、図4(C)に示すように、各立体部2a上の一部の領域に光吸収膜AMが形成される(第2成膜工程)。以上の第1成膜工程、被覆膜形成工程及び第2成膜工程を経て多数の表面部2が形成されることにより、スクリーン10が作製される。
【0039】
以下、上記第1成膜工程、被覆膜形成工程及び第2成膜工程のうち、まず、第1成膜工程及び被覆膜形成工程について説明する。図5(A)は、第1成膜工程及び被覆膜形成工程として反射膜RM及び被覆膜IMの成膜を一括して行うための第1製造装置の一例について説明するための側断面図である。図5(A)に示す第1製造装置300は、例えば抵抗加熱により成膜材料を蒸発させて真空蒸着による成膜を行う真空蒸着装置である。第1製造装置300は、材料源を含む蒸発源装置320と、真空容器であるチャンバ330と、チャンバ330内を真空の状態にするための排気系であり、例えばロータリポンプ等で構成される真空ポンプ340と、各部を統括して装置全体の制御を行う制御装置350とを備える。さらに、第1製造装置300は、帯状のスクリーン基板101を搬送するための移動装置360を備える。移動装置360は、帯状のスクリーン基板101を送出する送出機構360aと、スクリーン基板101を巻き取る巻取機構360bとを備える。なお、各機構360a、360bに取り付けられるモータ等は図示を省略している。蒸発源装置320は、図3に示す反射膜RMを形成するための第1成膜物質E1であるアルミニウムを射出する第1射出装置320aと、被覆膜IMを形成するための第3成膜物質E2である二酸化ケイ素(SiO)を射出する第2射出装置320bとを備える。第1及び第2射出装置320a、320bは、それぞれボート上に第1及び第3成膜物質E1、E2をマウントし、制御装置350から供給される電力を用いた抵抗加熱等により各成膜物質E1、E2を加熱し蒸発させることで成膜を行う。なお、帯状のスクリーン基板101は、スクリーン基板1の複数枚分(例えば100枚分)に相当する。つまり、スクリーン基板101を所定の大きさでカットしたものが1枚分のスクリーン基板1に相当する。
【0040】
図5(A)に示すように、移動装置360において、帯状のスクリーン基板101は、カセットテープのようにその両端部がそれぞれ各機構360a、360bに巻き付けられた状態となっている。各機構360a、360bが一方向に同期して回転動作することにより、移動装置360は、スクリーン基板101を矢印AW1の方向に一定速度で移動させるものとなっている。また、各射出装置320a、320bは、移動装置360によって搬送されるスクリーン基板101の前面側に対向して下方に配置されており、それぞれスクリーン基板101に対して第1成膜物質E1と第3成膜物質E2とを略垂直に入射させるものとなっている。また、各射出装置320a、320bは、スクリーン基板101の全面に亘って均一に成膜がなされるように、それぞれ図5(A)中の紙面手前側から奥側にかけてライン状に配置されている。
【0041】
以下、第1製造装置300の動作について説明する。まず、真空ポンプ340の排気口340aから排気がなされ、チャンバ330内部を所定値以下(例えば10−3Pa以下)の真空状態にする。次に、反射膜RM及び被覆膜IMの成膜のために各機構360a、360bを駆動させて、スクリーン基板101の処理対象部分を繰り出す。チャンバ330内で、送出機構360aからスクリーン基板101の処理対象部分が繰り出されると、まず、スクリーン基板101の処理対象部分に対して、第1射出装置320aから略垂直に射出された第1成膜物質E1が入射する。これにより、スクリーン基板101の処理対象部分に反射膜RMが形成される。次いで、スクリーン基板101の処理対象部分に対して、第2射出装置320bから略垂直に射出された第3成膜物質E2が入射する。これにより、スクリーン基板101の処理対象部分に被覆膜IMが形成される。以上により、反射膜RM及び被覆膜IMが形成されたスクリーン基板101の処理対象部分は、巻取機構360bにより巻き取られる。
【0042】
以上のようにして、第1製造装置300により、スクリーン基板101上に反射特性を有する均一な膜厚の反射膜RM及び被覆膜IMが一様に成膜される。なお、第1製造装置300では、一旦真空状態を形成すれば、真空を破ることなくスクリーン基板101を移動させることができるので、複数枚分のスクリーン基板1上に反射膜RM及び被覆膜IMを一括して形成することができる。
【0043】
また、図5(B)に示す第1製造装置400によっても上記と同様の成膜が可能である。この第1製造装置400は、第1製造装置300の変形例である。第1製造装置400では、移動装置460を構成する各機構460a、460bが同期して双方向に回転動作することにより、スクリーン基板101が矢印AW2で示す方向に一定速度で往復移動可能となっている。また、蒸発源装置420の各射出装置420a、420bは、台座420c上で矢印AW3の方向にスライド移動可能となっている。以上のような構成により、第1製造装置400は、まず、スクリーン基板101を紙面左側に移動させるときは、射出口420dに第1射出装置420aを対向配置させておくことで反射膜RMを成膜することができる。さらに、スクリーン基板101を紙面右側に移動させるときは、蒸発源装置420内の各射出装置420a、420bをスライドさせ、射出口420dに第2射出装置420bを対向配置させておくことで被覆膜IMを成膜することができる。
【0044】
次に、第2成膜工程について説明する。図6(A)は、第2成膜工程として、光吸収膜AMの成膜を行う第2製造装置の一例について説明するための模式的な図である。図6(A)に示す第2製造装置700は、斜方から第2成膜物質である黒色塗料BPを塗布することにより光吸収膜AMを形成する成膜装置であり、第1成膜工程を経たスクリーン基板101を支持する台座PDと、台座PDを種々の方向に移動させる駆動装置DRと、黒色塗料BPを射出する射出装置であるスプレーSPと、黒色塗料BPの射出方向を正確に調整する遮蔽板STとを備える。なお、第2製造装置700は、第1製造装置300と異なり、真空蒸着等を伴わず大気圧下で動作する比較的簡易な装置である。
【0045】
スクリーン基板101は、支持台である台座PDに支持され、駆動装置DRにより台座PDとともに図中矢印方向等に沿って同一平面(xy平面に平行な面)上で種々の方向に移動することができる。スプレーSPは、台座PDに支持されたスクリーン基板101に光吸収膜AMとなる第2成膜物質である黒色塗料BPを射出する。スプレーSPからスクリーン基板101への黒色塗料BPの入射角度θは、例えば不図示の外光OLの主な入射角度を想定して定められている。従って、黒色塗料BPは、スクリーン基板101に外光OLに対応する斜方から入射して塗布されるものとなっている。一方、図3等に示すように、スクリーン10の前面10aには、多数の立体部2aによる凹凸面が形成されている。このため、黒色塗料BPを成膜物質とする光吸収膜AMが反射膜RM及び被覆膜IMの表面側の一部に重畳するように形成されるとともに、当該表面側において光吸収膜AMの形成されない残りの部分が露出した状態となることで、反射面RSが必要箇所に露出した状態で形成される。なお、遮蔽板STは、スクリーン基板101を覆うように形成されており、スプレーSP付近に開口OPが設けられている。
【0046】
以下、図6(A)の第2製造装置700の動作について詳しく説明する。まず、台座PDに支持されたスクリーン基板101に対して、入射角度θでスプレーSPから黒色塗料BPが噴射される。この際、遮蔽板STにより、黒色塗料BPの一部が遮蔽される。つまり、黒色塗料BPのうち、遮蔽板STの開口OPを通過したもののみがスクリーン基板101上に塗布される。この遮蔽板STの制限により、黒色塗料BPのうちプレーSPから拡がるように噴射される成分が取り除かれるので、スクリーン基板101上に向かう黒色塗料BPの成分は、入射角度及び入射方向が略一様な指向性を持った状態となる。これにより、スクリーン基板101上に光吸収膜が成膜される領域とされない領域との境界を比較的明瞭にすることができる。既述のように、黒色塗料BPの成膜されない領域は、図3等のように反射膜RM及び被覆膜IMが露出し、反射面RSとなる。また、スプレーSPによる黒色塗料BPの塗布に伴い、スクリーン基板101は、台座PDとともに、2次元的に移動する。つまり、相対的にスプレーSP及び遮蔽板STがスクリーン基板101上の全面を走査するようにスプレーSPを2次元的に移動させることができる。この結果、スクリーン基板101の全体について図3等に示すような光吸収膜AMの成膜を行うことができる。以上のように、図3等に示す多数の立体部2aによる凹凸面上に斜方から黒色塗料BPを噴射させることで、光吸収膜AMは、各立体部2aの領域上において部分的に成膜され、これにより、反射膜RM及び被覆膜IMによる投射光PLの反射領域と、光吸収膜AMによる外光OLの光吸収領域とが画定される。なお、光吸収膜AMが施された状態のスクリーン基板101を所定のサイズでカットすることにより、1枚分のスクリーン10が切り出される。
【0047】
以上において、光吸収膜AMの成膜のための黒色塗料BPの入射方向A1は、破線で示す想定される投射光PLの入射方向とは反対側の方向となっている。以下、黒色塗料BPの入射方向A1と投射光PLの入射方向との関係について具体的に説明する。まず、スクリーン表面を巨視的に捉え微細凹凸構造を無視して平面であると仮定した仮想的な平面をスクリーン面VSとする。これは、例えば、図2のスクリーン10において、前面10aを平面として考えたものと同様である。さらに、このスクリーン面VSに垂直な平面で、かつ、投射光PLの光路をスクリーン面VSへ正射影した線分(即ち図6(A)中の+y方向)にも垂直な平面を境界面USとする。特に、図6(A)では、境界面USは、黒色塗料BPのスクリーン面VS上での入射点IPを含むものとしている。ここで、入射点IPとは、黒色塗料BPが主方向である入射方向A1からスクリーン面VS上に到達する点であり、図中の想定される投射光PLについても、この入射点IPをその入射点としているものとする。以上に規定する境界面USを基準として、投射光PLの入射方向と黒色塗料BPの入射方向A1との関係を考える。この場合、黒色塗料BPの入射方向A1は、当該境界面USを境として分けた2つの領域D1、D2のうち、投射光PLを含まない領域D1側(即ち図6(A)中の紙面+y側)から境界面US側に向かう方向(−y方向)の成分を有するものとなっている。つまり、入射方向A1は、投射光PLの方向成分のうちスクリーン面VSへ正射影した方向成分(+y方向)とは逆方向の成分を有している。このため、図3等に示すように、形成される光吸収膜AMは、一般に投射光PLとは反対側から入射する外光OLを効率よく吸収することができるものとなっている。また、光吸収膜AMが成膜されない領域として残ることにより形成される反射面RSは、下方から入射する投射光PLを効率よく反射させるものとなっている。
【0048】
図6(B)に示す第2製造装置800は、図6(A)の第2製造装置700の変形例である。この第2製造装置800には、スプレーSPの先端部分に拡散を防止する狭窄用のノズルNZが設けられており、ノズルNZの先端から黒色塗料BPの噴射がなされるものとなっている。これにより、黒色塗料BPは、スプレーSPからの噴射時にあまり拡散せず指向性をもった状態とすることができるので、第2製造装置700とは異なり、遮蔽板を設ける必要がない。また、この場合、駆動装置DRによりスプレーSPを例えば図中矢印の方向等を含むxy平面に平行に2次元的に移動させることで、スプレーSPをスクリーン基板101上の全面を走査させて、図6(A)の第2製造装置700による塗布の場合と同様に、図3等に示す光吸収膜AMの成膜を行うことができる。
【0049】
以上のように、本実施形態に係るスクリーン10は、まず、第1成膜工程において、反射膜RMが、多数の立体部2aの全面に亘って膜の厚さを均一な状態に保って膜形成されるので、比較的簡単に製造でき高い反射特性を有するものとなる。
【0050】
また、本実施形態では、第2成膜工程において、投射光PLの入射の特性と外光OLの入射の特性とを考慮して光吸収膜AMを形成しているので、効率的な投射光PLの反射を行うとともに、反射膜RMにおける外光OLの反射を抑制するものにもなっている。この場合、必要な領域に光吸収膜AMが形成されればよく、光吸収膜AMの膜厚を均一にする必要がない。従って、例えば第2製造装置700の動作上、光吸収膜AMの成膜における精密な膜厚制御が不要である。また、黒色塗料BPの塗布により光吸収膜AMを成膜するので真空状態を形成する必要もない。従って、第2成膜工程は、簡易な装置で行える。第2成膜工程において、光吸収膜AMを適切に画定して形成することで、スクリーン10は、投射光PLを適切に反射させるとともに外光PLの反射を抑えられ、コントラストがより改善され、画像品質が安定した投影を行い得るものとなる。
【0051】
さらに、被覆膜形成工程において、被覆膜IMを形成させることで、反射膜RMが剥がれることや酸化することを抑制し長寿命化を図ることができる。
【0052】
なお、第1成膜工程及び被覆膜形成工程における反射膜RM及び被覆膜IMの成膜に関して、上記のほかの方法による成膜を用いてもよく、少なくとも反射膜RSが露出する領域に反射膜RM及び被覆膜IMが形成されていれば、反射膜RM等が多数の立体部2aの全面に亘ってなされないものであってもよい。このような方法としては、例えば、反射膜RM等の形成において、斜方から成膜物質を蒸着させて、スクリーン基板1の表面のうち、反射面RSとなるべき領域をカバーするように局所的に蒸着させることが考えられる。ただし、反射膜RM等を例えば誘電体多層膜によって構成する場合、膜の厚さを一定に保つための精密な制御が必要となる。なお、上述のように反射膜RM等を多数の立体部2aの全面に亘って形成させず、スクリーン基板1の下地面が一部露出する場合においても、例えば、第2成膜工程において、反射膜RM等の外縁付近において、光吸収膜AMの一部を、スクリーン基板1の下地面を覆い、かつ、反射膜RM等に重畳するように成膜させることで、スクリーン基板1の下地面が露出せず、かつ、反射面RSの領域と光吸収膜AMの領域との境界が画定するようにできる。
【0053】
図7は、図3等に示すスクリーン10の変形例である。図7に示すスクリーン110において、各表面部102は、凸曲面形状を有するものとなっている。なお、この場合、光吸収膜AMは、各立体部102a上において、上方側即ち+y方向側の部分領域上に形成される。
【0054】
また、本実施形態のスクリーン基板1については、スクリーンシートとしての十分な強度を有するものであればよく、種々の素材が適用可能であり、例えば光吸収性部材を用いてもよい。光吸収性部材の原材料としては、光吸収作用を有する黒色のPET(ポリエチレンテレフタレート)やポリ塩化ビニル等が考えられる。また、透明のPET等の使用も可能である。
【0055】
また、本実施形態のスクリーン基板1における反射膜RMの形成において、成膜物質としてアルミニウムを用いているが、反射膜RMを金属膜で形成する場合、アルミニウムの他にも、例えば銀等を用いることも可能である。
【0056】
〔第2実施形態〕
図8は、第2実施形態に係るスクリーンを一部拡大した側断面図である。本実施形態に係るスクリーン210は、第1実施形態のスクリーン10等の変形例であり、スクリーン基板1と、反射膜RMと、光吸収膜AMとを備える。特に、反射膜RMは、屈折率の異なる2種類の誘電体層CL1、CL2が交互に積層された誘電体多層膜構造となっている。誘電体層CL1、CL2は、例えばTiO(酸化チタン)とSiOとにより、または、Ta(五酸化タンタル)とSiOとにより構成することができる。この場合、反射膜RM自体を十分丈夫なものとすることができるので、図3に示すスクリーン10等の場合と異なり、反射膜RM上に被覆膜を設けず、当該誘電体多層膜の最表層を、スクリーン210の表面の一部として露出させた状態とすることができる。
【0057】
なお、当該誘電体多層膜構造の作製については、例えば図5(B)に示す第1製造装置400において、蒸発源装置420の第1及び第2射出装置420a、420bを用いて誘電体層CL1、CL2を形成させるための成膜物質を交互に繰り返して射出させればよい。つまり、第1及び第2射出装置420a、420bのそれぞれのボート上に誘電体層CL1、CL2を形成させるための成膜物質をマウントし、各成膜物質を加熱し蒸発させることで成膜を行う。より具体的に説明すると、まず、スクリーン基板101を紙面左側に移動させるときは、蒸発源装置420内の各射出装置420a、420bをスライドさせ、射出口420dに第1射出装置420aを対向配置させておくことで反射膜RMを構成する誘電体層CL1を成膜することができる。さらに、スクリーン基板101を紙面右側に移動させるときは、蒸発源装置420内の各射出装置420a、420bをスライドさせ、射出口420dに第2射出装置420bを対向配置させておくことで反射膜RMを構成する誘電体層CL2を成膜することができる。以下、蒸発源装置420の第1及び第2射出装置420a、420bを交互に用いて誘電体層CL1、CL2を形成させるための成膜を繰り返せばよい。
【0058】
〔第3実施形態〕
図9は、第3実施形態に係るスクリーンについて説明する図である。本実施形態に係るスクリーンは、被覆膜の構造を除いて第1実施形態に示したものと同様であるので、他の構造についての詳細な説明を省略する。図9に示すスクリーン310において、被覆膜IMは、屈折率の異なる2種類の誘電体層ML1、ML2が交互に積層された誘電体多層膜構造となっている。つまり、本実施形態の被覆膜IMは、SiOによる単層膜に代えて、例えばTiO及びSiO、または、Ta及びSiOにより誘電体層ML1、ML2を構成することで、反射膜RMの反射作用を高める増反射膜として機能するものとなっている。
【0059】
以下、本実施形態に係るスクリーンの製造方法について説明する。図10は、図9に示すスクリーン310の製造のための成膜工程のうち、第1成膜工程を行う第1製造装置の一例について説明する図である。本実施形態に係る第1製造装置500は、図5(B)の第1製造装置400の変形例である。なお、本実施形態に係るスクリーンの製造方法は、第1成膜工程を除いて第1実施形態に示したものと同様であるので、第1成膜工程以外の成膜工程についての図示及び説明は省略する。
【0060】
図10に示す第1製造装置500は、第1製造装置400と同様に、例えば抵抗加熱により成膜材料を蒸発させて真空蒸着による成膜を行う真空蒸着装置であり、蒸発源装置520と、チャンバ330と、真空ポンプ340と、制御装置350と、帯状のスクリーン基板101を搬送するための移動装置560とを備える。移動装置560は、スクリーン基板101を送出する送出機構560aと、スクリーン基板101を巻き取る巻取機構560bとを備え、各機構560a、560bは、同期して双方向に回転動作することにより、スクリーン基板101が矢印AW4で示す方向に一定速度で往復移動可能となっている。また、以上のうち、特に、蒸発源装置520は、第1〜第3射出装置520a、520b、520cの3つの射出装置を備えている。これら3つの射出装置520a、520b、520cは、台座520d上で矢印AW5に示すように双方向にスライド移動可能となっている。以上のような構成により、第1製造装置500は、まず、最初にスクリーン基板101を紙面左側に移動させるときは、射出口520eに第1射出装置520aを対向配置させておくことで反射膜RMを成膜することができる。次に、スクリーン基板101を紙面右側に移動させるときは、蒸発源装置520内の各射出装置520a、520b、520cをスライドさせ、射出口520eに第2射出装置520bを対向配置させておくことで被覆膜IMを構成する誘電体層ML1を成膜することができる。さらに、スクリーン基板101を紙面左側に移動させるときは、蒸発源装置520内の各射出装置520a、520b、520cをスライドさせ、射出口520eに第3射出装置520cを対向配置させておくことで被覆膜IMを構成する誘電体層ML2を成膜することができる。以下、蒸発源装置520の第2及び第3射出装置520b、520cを交互に用いて誘電体層ML1、ML2を形成させるための成膜を繰り返せばよい。なお、当該成膜については、各層の成膜をスクリーン基板101全体について一斉に行うのではなく、部分的に繰り返すものであってもよい。例えば、スクリーン基板101のうちスクリーン1枚分に相当する領域ごとに当該成膜の動作をするものであってもよい。
【0061】
〔第4実施形態〕
図11は、第4実施形態に係るスクリーンについて説明する図である。本実施形態に係るスクリーン910は、反射膜RMのために下地膜UMを設ける点、及び被覆膜IMを省略した点を除いて、第1実施形態のスクリーン10と同様の構造を有する。
【0062】
スクリーン基板1は、例えばポリ塩化ビニル等を含むシートで形成されている。下地膜UMは、反射膜RMとスクリーン基板との間に介在する膜であり、例えば反射膜RMのスクリーン基板1に対する付着強度を高める役割を有する。特に、スクリーン基板1が軟質塩化ビニル等で形成される場合、これに含まれる可塑剤等が揮発し、真空蒸着等よってスクリーン基板1上に形成された反射膜RMが剥がれやすくなる。このため、スクリーン基板1を構成するポリ塩化ビニルシートの表面に可塑剤の揮発を抑制可能又はブロック可能な下地膜UMを予め形成することで、スクリーン基板1に対する反射膜RMの密着性を高め、反射膜RMの状態を安定化させることができる。下地膜UMは、Cr、NiCr等の金属膜とすることもできるが、アクリル系、フッ素系の樹脂その他の有機材料膜又は非金属膜とすることができる。
【0063】
以下、本実施形態に係るスクリーン910の製造方法について説明する。図12(A)〜12(C)は、図11に示すスクリーン910のうち、主に多数の表面部2の形成過程について説明するための側断面図である。各表面部2は、下地膜UM、反射膜RM及び光吸収膜AMを含んで構成される。
【0064】
まず、図12(A)に示すように、多数の立体部2aの全表面に略一定の膜厚(例えば10nm以下)で下地膜UMが形成される(下地膜形成工程)。下地膜UMは、第4成膜物質をスクリーン基板1の表面側に一様に入射させることによって、各立体部2aにおける表面全体を被覆するように一様に形成される。次に、図12(B)に示すように、第1成膜物質をスクリーン基板1の表面側に一様に入射させることによって、各立体部2aにおける表面全体を被覆するように下地膜UM上に一様に反射膜RMが形成される(第1成膜工程)。さらに、図12(C)に示すように、第2成膜物質をスクリーン基板1の表面側に局所的に入射させることによって、各立体部2aの一部領域の表面を被覆するように光吸収膜AMが形成される(第2成膜工程)。以上により、スクリーン基板1上に多数の表面部2が形成され、スクリーン910が完成する。なお、図面では省略しているが、立体部2aの製造段階までについて簡単に説明すると、まず、スクリーン基板1の素材として例えばポリ塩化ビニル製のシートを準備する。このポリ塩化ビニル製のシートは、グラスファイバ等によって強度を高めたものとすることもできる。このポリ塩化ビニルのシートの表面に熱プレスによって多数の立体部2aを転写し、多数の立体部2aを有するスクリーン基板1を得る。
【0065】
下地膜形成工程について説明すると、スクリーン基板1の全表面即ち多数の立体部2aの表面に略一定の膜厚で下地膜UMを形成する。下地膜UMがCr、NiCr等の金属膜である場合、下地膜UMは、例えば図5(A)に示す第1製造装置300と同様の機構を有する真空蒸着型の成膜装置によって形成される。ただし、この場合、蒸発源装置320のうち、第1射出装置320aによって、図12(A)に相当するCr等の第4成膜物質の成膜を行い、第2射出装置320bによって、図12(B)に相当するAl等の第1成膜物質の成膜を行うことになる。このようにして形成した下地膜UMの膜厚は、例えば5〜10nm程度とする。一方、下地膜UMがアクリル系樹脂、フッ素系樹脂その他の有機材料膜又は非金属膜である場合、下地膜UMは、例えばディッピングを利用した湿式のコーティングによって形成される。なお、ディッピング用の溶液は、有機溶媒にアクリル等の膜主成分や各種添加剤を混合したものであり、スクリーン基板1をこの溶液に一定時間浸漬した後、スクリーン基板1を引き上げて乾燥させることで、スクリーン基板1上に、所望の膜厚を有し比較的強固に付着した下地膜UMを形成することができる。このようにして形成した下地膜UMの膜厚は、例えば1〜10μm程度とする。
【0066】
以上の下地形成工程において、下地膜UMをCr、NiCr等の金属で形成する場合、真空蒸着法に限らず、例えばイオンアシスト法、スパッタ法等の物理成膜法又は物理蒸着法を用いることもできる。下地膜UMをアクリル系樹脂、フッ素系樹脂その他の有機材料又は非金属で形成する場合、ディッピングのような塗布法に限らず、例えばスプレーその他の塗布法を用いることもできる。
【0067】
なお、図12(B)の第1成膜工程は、図4(A)の第1成膜工程に相当し、図12(C)の第2成膜工程は、図4(C)の第2成膜工程に相当する。つまり、真空蒸着等によって立体部2a上の全領域に下地膜UMを覆うように反射膜RMが形成され、次に、反射膜RM上の一部の領域に光吸収膜AMが形成される。これにより、反射膜RMによる投射光PLの反射領域即ち反射面RSと、光吸収膜AMによる外光OLの光吸収領域とが画定される。
【0068】
下地膜UM上に反射膜RMを成膜する前には、下地膜UMの表面活性化処理を行うこともできる。下地膜UMの表面活性化処理としては、逆スパッタ処理、プラズマ放電処理、コロナ放電処理、RFボンバード処理、大気圧プラズマ処理等を採用することができる。下地膜UMに対して表面活性化処理を適宜施すことにより、反射膜RMの付着力や耐久性を向上させることができる。
【0069】
反射膜RMは、図8に示す第2実施形態のスクリーン210と同様に、2種類の誘電体層CL1、CL2を交互に積層した誘電体多層膜構造とすることもできる。
【0070】
また、スクリーン基板1上に形成される立体部2aの形状は、凹曲面に限らず、図7に示すように凸曲面とすることもできる。この場合、反射膜RMや被覆膜IMは、下方側即ち−y方向側に形成される。
【0071】
以上のように、本実施形態に係るスクリーン910によれば、第1成膜工程による反射膜RMの成膜前に、スクリーン基板1上に対して第4成膜物質を入射させて下地膜UMを形成するので、下地膜UMによってスクリーン基板1に対する反射膜RMの付着強度を高めることができる。これにより、反射膜RMを意図通りの箇所に形成することができ、その耐久性を高めることができる。なお、本実施形態においては、反射膜RMが、多数の立体部2aの全面に亘って膜の厚さが均一な状態に保たれて形成されるので、比較的簡単に製造でき高い反射特性を有するものとなる。また、本実施形態では、簡易な装置で行える第2成膜工程において、反射膜RM上に光吸収膜AMを形成しているので、効率的な投射光PLの反射を行うとともに、反射膜RMにおける外光OLの反射を抑制するものにもなっている。つまり、簡易な手法でコントラストがより改善され、画像品質が安定した投影を行い得るスクリーン910を提供することができる。
【0072】
〔第5実施形態〕
図13は、第5実施形態に係るスクリーンについて説明する図である。また、図14(A)〜14(D)は、図13に示すスクリーン1010のうち、主に多数の表面部2の形成過程について説明するための側断面図である。なお、本実施形態に係るスクリーン1010は、反射膜RMと光吸収膜AMとの間に被覆膜IMを介在させる点を除いて第4実施形態のスクリーン910と同様の構造を有する。つまり、図14(A)に示す下地膜形成工程で、多数の立体部2aの全表面に下地膜UMが形成され、図14(B)に示す第1成膜工程で、下地膜UM上に一様に反射膜RMが形成され、図14(C)に示す被覆膜形成工程で、反射膜RM上に一様に被覆膜IMが形成され、図14(D)に示す第2成膜工程で、各立体部2aの一部領域の表面を被覆するように光吸収膜AMが形成される。
【0073】
図14(C)に示す被覆膜形成工程で形成される被覆膜IMは、反射膜RMの表面を一様に覆っており、反射膜RMが酸化等によって劣化することを防ぐための金属保護膜として機能する。従って、反射膜RMが劣化しにくい場合、第4実施形態のように、被覆膜IMを省略した構造とすることができる。一方、反射膜RMが劣化しやすい場合、本実施形態のように、被覆膜IMを設けた構造とすることができる。
【0074】
図示のスクリーン1010の場合、反射膜RM上の全領域に被覆膜IMが形成され、被覆膜IM上の一部の領域に光吸収膜AMが形成される。つまり、反射膜RMを形成するための第1成膜工程と、光吸収膜AMを形成するための第2成膜工程との間に、スクリーン基板1上に対して第3成膜物質を入射させて被覆膜IMを形成する被覆膜形成工程を設けている。
【0075】
各表面部2を構成する下地膜UM、反射膜RM、被覆膜IM及び光吸収膜AMは、例えば図10に示す第1製造装置500と同様の機構を有する蒸着型の成膜装置によって形成される。この場合、蒸発源装置520は、第1射出装置520aによって、下地膜UMを形成するための第4成膜物質(具体的にはCr、NiCr等)を射出させ、第2射出装置520bによって、反射膜RMを形成するための第1成膜物質(具体的にはAl、Ag等)を射出させ、第3射出装置520cによって、被覆膜IMを形成するための第3成膜物質(具体的にはSiO等)を射出させる。
【0076】
なお、被覆膜IMは、図9に示す第3実施形態のスクリーン310と同様に、増反射膜、即ち2種類の誘電体層ML1、ML2を交互に積層した誘電体多層膜構造を有するものとすることもできる。
【0077】
また、スクリーン基板1上に形成される立体部2aの形状は、凹曲面に限らず、図8に示すように凸曲面とすることもできる。この場合、反射膜RMや被覆膜IMは、下方側即ち−y方向側に形成される。
【0078】
本実施形態のスクリーン1010によれば、第1成膜工程による反射膜RMの成膜前に、スクリーン基板1上に対して第4成膜物質を入射させて下地膜UMを形成するので、下地膜UMによってスクリーン基板1に対する反射膜RMの付着強度を高めることができる。これにより、反射膜RMを意図通りの箇所に形成することができ、その耐久性を高めることができる。しかも、被覆膜形成工程において、被覆膜IMを形成させることで反射膜RMが酸化することを抑制し長寿命化を図ることができる。
【0079】
以上、各実施形態について説明してきたが、上記各実施形態は、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0080】
まず、上記各実施形態では、いずれも反射膜RM及び被覆膜IMの成膜方法の一例として、真空蒸着法を用いているが、この他にも、例えばイオンアシスト法、スパッタ法等によって成膜を行うことも可能である。また、銀等の金属膜により反射膜RMを構成する場合は、メッキ等によって成膜を行うことも考えられる。
【0081】
また、上記各実施形態では、光吸収膜AMをスプレー等によって塗布しているが、例えば真空蒸着型の成膜装置によって誘電体多層膜からなる光吸収膜AMを形成することもできる。この光吸収膜AMは、吸収型のARコートとして機能し、例えば酸化チタン及び酸化ケイ素を交互に積層すること、五酸化タンタル及び酸化ケイ素を交互に積層すること等によって形成される。光吸収膜AMを形成するための成膜装置は、真空容器中において、例えばスクリーン基板1への投射光の入射方向とは反対側の方向に複数の蒸着源を交互に配置するものとなる。これにより、光吸収膜AMを照明等に対応するものとしてスクリーン基板1に対して傾いた方向から斜めに蒸着することができ、光吸収膜AMを立体部2a上の適所に形成することができる。
【0082】
また、上記各実施形態に示す成膜方法は、いずれもスクリーン前面に凹凸形状を有し、当該凹凸形状の一部の領域に反射膜を有する種々のスクリーンについて適応可能であり、例えば、スクリーン前面にプリズム状の面を有するものやシリンドリカル形状の凹凸形状もの等についても、上記と同様の反射膜RMや光吸収膜AM等の成膜が可能である。
【符号の説明】
【0083】
10、110、210、310、910、1010…スクリーン、 1…スクリーン基板、 2a…立体部、 2…表面部、 RM…反射膜、 IM…被覆膜、 AM…光吸収膜、 RS…反射面、 100…プロジェクタ、 300、400、500…第1製造装置、 320…蒸発源装置、 320a、320b…射出装置、 700、800…第2製造装置、 SP…スプレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン基板の前面側に2次元的に配置される複数の立体部と、
前記スクリーン基板のうち、少なくとも前記複数の立体部の表面に入射する投射光に対応する領域上に形成される反射膜と、
前記複数の立体部の表面に入射する外光に対応する領域上に形成される光吸収膜と
を備え、
前記光吸収膜の少なくとも一部は、前記反射膜の表面側に前記反射膜の一部に重畳して形成されている、スクリーン。
【請求項2】
前記反射膜は、前記スクリーン基板のうち、前記複数の立体部の全表面に形成され、前記光吸収膜は、当該反射膜の表面側に形成され前記反射膜を部分的に覆う、請求項1記載のスクリーン。
【請求項3】
前記光吸収膜は、少なくとも可視光波長を吸収する黒色顔料を含む、請求項1及び請求項2のいずれか一項記載のスクリーン。
【請求項4】
前記反射膜は、金属膜であり、当該金属膜と前記光吸収膜との間に形成され当該金属膜を被覆する被覆膜をさらに備える、請求項1から請求項3までのいずれか一項記載のスクリーン。
【請求項5】
前記被覆膜は、前記金属膜を保護する物質により形成される金属保護膜及び前記金属膜による反射の作用を促進する物質により形成される増反射膜のいずれかである、請求項4記載のスクリーン。
【請求項6】
前記被覆膜は、前記金属膜と同一の領域に形成される、請求項4及び請求項5のいずれか一項記載のスクリーン。
【請求項7】
前記金属膜は、アルミニウム及び銀のいずれかである、請求項4から請求項6までのいずれか一項記載のスクリーン。
【請求項8】
前記反射膜は、誘電体多層膜である、請求項1から請求項7までのいずれか一項記載のスクリーン。
【請求項9】
前記反射膜と前記スクリーン基板との間に形成される付着力補強用の下地膜をさらに備える、請求項1から請求項8までのいずれか一項記載のスクリーン。
【請求項10】
スクリーン基板の前面側に2次元的に配置される複数の立体部を有するスクリーンの製造方法であって、
前記スクリーン基板のうち、少なくとも前記複数の立体部の表面に入射する投射光に対応する領域上に対して、反射膜となる第1成膜物質を入射させて成膜を行う第1成膜工程と、
前記スクリーン基板に対して所定の入射角度で光吸収膜となる第2成膜物質を入射させることにより、前記反射膜の表面側に前記反射膜の一部に重畳させるとともに前記反射膜の残りの部分を露出させるように当該光吸収膜の成膜を行う第2成膜工程と
を有するスクリーンの製造方法。
【請求項11】
前記第2成膜工程において、投射光の入射方向とは異なる入射方向から前記第2成膜物質を入射させて塗布することにより、前記光吸収膜を前記複数の立体部の表面に入射する外光に対応する領域上に形成させる、請求項10記載のスクリーンの製造方法。
【請求項12】
前記第2成膜工程において、前記第2成膜物質は、投射光の入射方向と反対側の方向から塗布される、請求項11記載のスクリーンの製造方法。
【請求項13】
前記第1成膜工程において、前記反射膜は、前記スクリーン基板のうち、前記複数の立体部の全表面に成膜され、前記第2成膜工程において、前記光吸収膜は、当該反射膜の表面上に成膜される、請求項10から請求項12までのいずれか一項記載のスクリーンの製造方法。
【請求項14】
前記第2成膜工程において、少なくとも可視光波長を吸収する黒色顔料を含む前記第2成膜物質を塗布する、請求項10から請求項12までのいずれか一項記載のスクリーンの製造方法。
【請求項15】
前記反射膜は、金属膜であり、前記第1成膜工程による当該金属膜の成膜後、前記第2成膜工程による前記光吸収膜の成膜前に、当該金属膜を被覆する被覆膜となる第3成膜物質を入射させて成膜を行う被覆膜形成工程をさらに有する、請求項10から請求項14までのいずれか一項記載のスクリーンの製造方法。
【請求項16】
前記第1成膜工程による前記反射膜の成膜前に、前記スクリーン基板のうち、少なくとも前記反射膜に対応する領域上に対して下地膜となる第4成膜物質を入射させて成膜を行う下地膜形成工程をさらに備える、請求項10から請求項15までのいずれか一項記載のスクリーン。
【請求項17】
前記第1成膜工程において、前記第1成膜物質の成膜方法は、真空蒸着法、イオンアシスト法、スパッタ法のいずれかである、請求項10から請求項16までのいずれか一項記載のスクリーンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−97190(P2010−97190A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173990(P2009−173990)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】