スクロール圧縮機および空気調和機
【課題】 ガスインジェクションサイクルによる能力向上を図るとともに、製造コスト上昇を防止することができるスクロール圧縮機および空気調和機を提供する。
【解決手段】 それぞれの端版23a,25aの一側面に渦巻き状の壁体23b,25bを立設させた固定スクロール23および旋回スクロール25が、互いに噛み合うことにより冷媒を圧縮する複数の圧縮室を形成するスクロール圧縮機であって、固定スクロール23の端板23aの一側面には段差部42が設けられるとともに、旋回スクロール25の壁体25bの上縁には、端板23aの段差部42に対応する段付部45が設けられ、冷媒を圧縮中の複数の圧縮室に、外部から供給された冷媒を供給する供給部17pが設けられ、少なくとも複数の圧縮室が離間した段差部42および段付部45を含む間に、供給部17pから冷媒が供給されることを特徴とする。
【解決手段】 それぞれの端版23a,25aの一側面に渦巻き状の壁体23b,25bを立設させた固定スクロール23および旋回スクロール25が、互いに噛み合うことにより冷媒を圧縮する複数の圧縮室を形成するスクロール圧縮機であって、固定スクロール23の端板23aの一側面には段差部42が設けられるとともに、旋回スクロール25の壁体25bの上縁には、端板23aの段差部42に対応する段付部45が設けられ、冷媒を圧縮中の複数の圧縮室に、外部から供給された冷媒を供給する供給部17pが設けられ、少なくとも複数の圧縮室が離間した段差部42および段付部45を含む間に、供給部17pから冷媒が供給されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール圧縮機および空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷凍・空調装置等の冷凍サイクルに用いられる圧縮機としては、ピストン式やロータリ式やスクロール式の圧縮機が知られている。
これらロータリ圧縮機や、スクロール圧縮機を用いた冷凍サイクルを能力向上させる手法として、放熱器と吸熱器との間に2つの減圧器を備え、これら減圧器を用いて冷媒を2段膨張させ、一の減圧器を通過した後の中間圧を有する冷媒を圧縮機の圧縮行程に供給するガスインジェクション(エコノマイザーサイクル)が知られている。
【0003】
上述のスクロール圧縮機において、一対の圧縮室に対して供給される冷媒量が不均一になると、これらの圧縮室内の圧力が不均一となり、圧縮過程におけるスクロール圧縮機に働く力のバランスが崩れる。このように、スクロール圧縮機に働く力のバランスが崩れると、スクロール圧縮機の振動が増大するという問題があった。
そのため、スクロール圧縮機の一対の圧縮室に対して、冷媒を均一に供給するさまざまな技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平7−103152号公報(第3‐4頁、第3図等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1においては、ガスインジェクションサイクルに用いられるスクロール圧縮機の構成が示されている。具体的には、スクロール圧縮機の端版に、一対の圧縮室に対して連通する連通路を形成し、当該連通路を介して、外部から供給された冷媒を一対の圧縮室に供給する構成が開示されている。
この構成によれば、外部から冷媒を供給するインジェクション流路の数を1本にすることができる。そのため、複数のインジェクション流路を用いる場合と比較して、インジェクション流路とスクロール圧縮機の筐体との接触部等におけるシール箇所を減らすことができる。
【0005】
しかしながら、上述の構成では、一対の圧縮室に対して冷媒を分配する連通路を形成するとともに、冷媒を圧縮室に供給するポートを2ヶ所形成する必要がある。そのため、スクロール圧縮機の構成が複雑となり、製造コストアップにつながるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ガスインジェクションサイクルによる能力向上を図るとともに、製造コスト上昇を防止することができるスクロール圧縮機および空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のスクロール圧縮機は、それぞれの端版の一側面に渦巻き状の壁体を立設させた固定スクロールおよび旋回スクロールが、互いに噛み合うことにより冷媒を圧縮する複数の圧縮室を形成するスクロール圧縮機であって、前記固定スクロールと旋回スクロールの少なくともいずれか一方の端板の前記一側面には、その高さが前記壁体の渦に沿ってその中心部側で高く外端側で低くなる段差部が設けられるとともに、前記固定スクロールと旋回スクロールのいずれか他方の壁体の上縁には、前記端板の段差部に対応し、複数の部位に分割されかつ該部位の高さが渦の中心部側で低く外端側で高くなる段付部が設けられ、前記冷媒を圧縮中の前記複数の圧縮室に、外部から供給された冷媒を供給する供給部が設けられ、少なくとも前記複数の圧縮室が離間した前記段差部および前記段付部を含む間に、前記供給部から冷媒が供給されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、複数の圧縮室が離間した段差部および段付部を含む間に、供給部から複数の圧縮室へ冷媒を供給するため、一箇所に設けられた供給部により、複数の圧縮室へ冷媒を供給することができる。そのため、供給部を複数個所に設ける必要がなくなり、製造コスト上昇を防止できる。
これら段差部および段付部と接する複数の圧縮室は、段差部および段付部が離間している隙間を介して連通している。そのため、供給部が一箇所に設けられていても、上記隙間を介して、複数の圧縮室へ冷媒を供給できる。
【0009】
少なくとも複数の圧縮室が上記隙間を介して連通している間に、外部から複数の圧縮室に冷媒を供給するため、複数の圧縮室がそれぞれ独立している間のみに冷媒を供給する場合と比較して、より容積が大きな圧縮室に冷媒を供給できるため、供給する冷媒量を増やすことができる。そのため、スクロール圧縮機が吐出する単位時間当たりの冷媒量を増やすことができ、例えば、本発明のスクロール圧縮機を用いた空気調和機の冷凍能力を向上させることができる。
【0010】
上記発明においては、前記供給部が、前記固定スクロールと旋回スクロールの少なくともいずれか一方の端板に設けられた貫通孔であり、該貫通孔が、少なくとも前記複数の圧縮室が離間した前記段差部および前記段付部を含む間に、前記複数の圧縮室と連通する位置に設けられていることが望ましい。
【0011】
本発明によれば、供給部が端板に設けられた貫通孔であって、複数の圧縮室が離間した段差部および段付部を含む間に、複数の圧縮室と連通する位置に設けられているため、一箇所に設けられた貫通孔により、複数の圧縮室へ冷媒を供給することができる。
【0012】
上記発明においては、前記供給部が、前記段差部における前記段付部との接触部に設けられていることが望ましい。
【0013】
本発明によれば、供給部が段差部における段付部との接触部に設けられているため、供給部が端板の一側面に設けられている場合と比較して、冷媒を供給できる期間を長くすることができる。
上記接触部における段差部と段付部との接触は線接触であり、一側面における端板と壁体との接触は面接触であるため、供給部を上記接触部に設けることにより、壁体により冷媒供給が妨げられる期間が短くなるからである。
【0014】
上記発明においては、前記壁体の上縁における、前記段付部からうずの中心部側の領域、および、前記段付部から外端側の領域には、前記端板と接触するシール部材が設けられ、前記端板における前記シール部材が摺動しない領域に、前記供給部が設けられていることが望ましい。
【0015】
本発明によれば、供給部が、シール部材が摺動しない領域に設けられているため、供給部によりシール部材が破損されることを防止できる。シール部材の破損を防止することにより、壁体を挟んで隣接する圧力の異なる圧縮室間の冷媒漏れを防止でき、スクロール圧縮機の能力低下を防止できる。
【0016】
上記発明においては、前記供給部から前記複数の圧縮室への前記冷媒の供給を制御する制御部を有し、該制御部が、前記段差部と前記段付部とが離間している間に、前記供給部から冷媒が供給されるように制御することが望ましい。
【0017】
本発明によれば、制御部が、段差部と段付部とが離間している間に供給部から冷媒が供給されるように制御しているため、複数の圧縮室が独立している間は、一の圧縮室のみに冷媒が供給されることがない。そのため、複数の圧縮室それぞれの圧力が均一に保たれ、スクロール圧縮機の振動増大を防止できる。
【0018】
本発明の空気調和機は、上記本発明のスクロール圧縮機と、該スクロール圧縮機により圧縮された冷媒から潤滑油を分離する油分離器と、該スクロール圧縮機により圧縮された冷媒の熱を放熱させる放熱器と、放熱された冷媒の圧力を減圧させる高圧側減圧部と、減圧された冷媒を更に減圧させる低圧側減圧部と、該低圧側減圧部で減圧された冷媒に熱を吸収させる吸熱器と、を有し、前記スクロール圧縮機の供給部には、前記高圧側減圧部により減圧された冷媒と、前記油分離器により分離された前記潤滑油と、が供給されることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、油分離器により分離された潤滑油を、供給部を介して、スクロール圧縮機の圧縮室に戻すことができる。圧縮室に潤滑油を戻すことにより、圧縮室からの冷媒漏れを防止でき、スクロール圧縮機の能力向上、および、空気調和機の能力向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスクロール圧縮機および空気調和機によれば、複数の圧縮室が離間した段差部および段付部を含む間に、供給部から複数の圧縮室へ冷媒を供給するため、一箇所に設けられた供給部により、複数の圧縮室へ冷媒を供給することができる。そのため、供給部を複数個所に設ける必要がなくなり、製造コスト上昇を防止できるという効果を奏する。
【0021】
少なくとも複数の圧縮室が上記隙間を介して連通している間に、外部から複数の圧縮室に冷媒を供給するため、複数の圧縮室がそれぞれ独立している間のみに冷媒を供給する場合と比較して、より容積が大きな圧縮室に冷媒を供給できるため、供給する冷媒量を増やすことができる。そのため、スクロール圧縮機が吐出する単位時間当たりの冷媒量を増やすことができ、例えば、本発明のスクロール圧縮機を用いた空気調和機の冷凍能力を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態について図1から図13を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る空気調和機を説明する概略図である。
空気調和機1は、図1に示すように、冷媒を圧縮するスクロール圧縮機3と、圧縮された冷媒の熱を放熱させるコンデンサ(放熱器)5と、放熱された冷媒の圧力を減圧させる第1膨張弁(高圧側減圧部)7と、減圧された冷媒を気液分離するレシーバ9と、液冷媒をさらに減圧する第2膨張弁(低圧側減圧部)11と、減圧された液冷媒に熱を吸収させるエバポレータ(吸熱器)13と、から概略構成されている。
レシーバ9とスクロール圧縮機3との間には、レシーバ9において気液分離された気体冷媒をスクロール圧縮機3に供給するインジェクション流路(供給部)17が配置されている。
【0023】
図2は、図1のスクロール圧縮機の構成を説明する断面図である。
スクロール圧縮機3は、図2に示すように、密封容器であるハウジング21と、冷媒を圧縮する固定スクロール23および旋回スクロール25と、旋回スクロール25を回転駆動するモータ27と、から概略構成されている。
ハウジング21には、ハウジング21内を高圧室HRと低圧室LRとに分離するディスチャージカバー29と、エバポレータ13から冷媒を低圧室LRに導く吸入管31と、高圧室HRから冷媒をコンデンサ5に導く吐出管33と、固定スクロール23および旋回スクロール25を支持するフレーム35と、が設けられている。
【0024】
旋回スクロール25とモータ27との間には、モータ27の回転力を旋回スクロールに伝える回転シャフト37が設けられている。
フレーム35と旋回スクロール25との間には、旋回スクロール25の自転を防止するオルダムリング39が設けられている。
【0025】
図3は、図2の固定スクロールおよび旋回スクロールの構成を説明する斜視図である。
固定スクロール23は、図3(a)に示すように、端板23aの一側面に渦巻き状の壁体23bが立設された構成となっている。旋回スクロール25は、図3(b)に示すように、固定スクロール23と同様に端板25aの一側面に渦巻き状の壁体25bが立設された構成となっており、特に壁体25bは固定スクロール23側の壁体23bと実質的に同一形状をなしている。旋回スクロール25は固定スクロール23に対して相互に公転旋回半径だけ偏心し、かつ、180度だけ位相をずらした状態で、壁体23b,25b同士を噛み合わせて組み付けられている。
【0026】
この場合、図2に示すように、旋回スクロール25は、モータ27で駆動される回転シャフト37の上端に設けられて旋回運動する偏心ピン37a及びオルダムリング39の作用により、固定スクロール23に対して公転旋回運動を行うようになっている。
一方、固定スクロール23は、ハウジング21に固定されており、端板23aの背面中央には圧縮された流体の吐出ポート32が設けられている。
【0027】
固定スクロール23の端板23aには、壁体23bが立設された一側面に、壁体23bの渦方向に沿って中心部側で高く外端側で低くなるよう形成された段差部42を備えている。旋回スクロール25側の端板25aも固定スクロール23の端板23aと同様に、壁体25bが立設された一側面に、壁体25bの渦方向に沿って中心部側で高く外端側で低くなるよう形成された段差部43を備えている。
【0028】
端板23aの底面は、段差部42が形成されていることにより、中心部側に設けられた底の浅い底面23fと外端側に設けられた底の深い底面23gとの2つの部位に分けられている。隣り合う底面23f,23g間には、段差部42を構成し、前記底面23f,23gを繋いで垂直に切り立つ連結壁面23hが存在している。
端板25aの底面も上述した端板23aと同様に、段差部43が形成されていることにより、中心部側に設けられた底の浅い底面25fと外端側に設けられた底の深い底面25gとの2つの部位に分けられている。隣り合う底面25f,25g間には、段差部43を構成し、前記底面25f,25gを繋いで垂直に切り立つ連結壁面25hが存在している。
【0029】
また、固定スクロール23側の壁体23bは、旋回スクロール25の段差部43に対応し、その渦巻き状の上縁が2つの部位に分割され、かつ、渦の中心部側で低く外端側で高い段付部44となっている。旋回スクロール25側の壁体25bも壁体23bと同様に、固定スクロール23の段差部42に対応し、渦巻き状の上縁が2つの部位に分割され、かつ、渦の中心部側で低く外端側で高い段付部45となっている。
【0030】
具体的には、壁体23bの上縁は、中心部寄りに設けられた低位の上縁23cと外終端寄りに設けられた高位の上縁23dとの2つの部位に分けられ、隣り合う上縁23c,23d間には、両者を繋いで旋回面に垂直な連結縁23eが形成されている。壁体25bの上縁も上述した壁体23bと同様に、中心部寄りに設けられた低位の上縁25cと外終端寄りに設けられた高位の上縁25dとの2つの部位に分けられ、隣り合う上縁25c,25d間には、両者を繋いで旋回面に垂直な連結縁25eが形成されている。
【0031】
連結縁23eは、壁体23bを旋回スクロール25の方向から見ると壁体23bの内外両側面に滑らかに連続し壁体23bの肉厚に等しい直径を有する半円形をなしている。また、連結縁25eも連結縁23eと同様に、壁体25bの内外両側面に滑らかに連続し壁体25bの肉厚に等しい直径を有する半円形をなしている。
また、連結壁面23hは、端板23aを旋回軸方向から見ると旋回スクロールの旋回に伴って連結縁25eが描く包絡線に一致する円弧をなしている。また、連結壁面25hも連結壁面23hと同様に、連結縁23eが描く包絡線に一致する円弧をなしている。
【0032】
固定スクロール23の壁体23bには、上縁23c,23dに連結縁23eの近傍で二つに分断されたチップシール24a,24bが設けられている。同様に、旋回スクロール25の壁体25bには、上縁25c,25dに連結縁25eの近傍で二つに分断されたチップシール26a,26bが設けられている。これらのチップシールは、旋回スクロール25と固定スクロール23との間において、上縁(歯先)と底面(歯底)との間に形成されるチップシール隙間をシールして圧縮したガス流体の漏れを最小限に抑えるものである。
【0033】
すなわち、固定スクロール23に旋回スクロール25を組み付けると、低位の上縁25cに設けたチップシール26bが底の浅い底面23fに接触し、高位の上縁25dに設けたチップシール26aが底の深い底面23gに接触する。同時に、低位の上縁23cに設けたチップシール24aが底の浅い底面25fに接触し、高位の上縁23dに設けたチップシール24bが底の深い底面25gに接触する。
この結果、両スクロール23,25間には、互いに向かい合う端板23a,25aと壁体23b,25bとに区画された複数の圧縮室Cが形成される。
なお、図3においては、固定スクロール23の段付形状を示すため、固定スクロール23の上下を逆にして図示されている。
【0034】
また、図3(a)に示すように、固定スクロール23の端板23aの底面には、インジェクション流路17と接続されているインジェクションポート(供給部、貫通孔)17pが形成されている。インジェクションポート17pは、底面の内の底の深い底面23gであって、段差部42の連結壁面23hの近傍領域に形成されている。
【0035】
次に上述した空気調和機1の作用について説明する。
スクロール圧縮機3により圧縮され高圧となった冷媒は、図1に示すように、コンデンサ5に向かって吐出される。コンデンサ5に流入した冷媒はその熱を外部に放出して凝縮し、第1膨張弁7に向かって流出する。冷媒は第1膨張弁7により減圧され中間圧の冷媒となりレシーバ9に流入する。冷媒はレシーバ9において液冷媒とガス冷媒とに分離され、液冷媒は第2膨張弁11に向かって流出する。液冷媒は第2膨張弁11により減圧され低圧の冷媒となり、エバポレータ13に流入する。低圧の冷媒はエバポレータ13において外部の空気から熱を奪い、蒸発してガス冷媒となり、スクロール圧縮機3に流入し、再び圧縮される。
【0036】
一方、レシーバ9において分離されたガス冷媒は、インジェクション流路17を介してスクロール圧縮機3に流入する。スクロール圧縮機3に流入した冷媒は再び圧縮される。
再びスクロール圧縮機3により圧縮された冷媒は、コンデンサ5に吐出され上述のサイクルを繰り返す。
【0037】
次にスクロール圧縮機3の作用について説明する。
図4(a)から図11(o)は、図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。図4(a)から図11(o)は、固定スクロール側から固定スクロールおよび旋回スクロールを見た透視図である。図12は、図4(a)から図11(o)までのインジェクションポートから冷媒が供給される圧縮室の容積変化を示すグラフである。
【0038】
図4(a)は、ある旋回角における固定スクロール23と旋回スクロール25との相対位置を示している。圧縮室Cは固定スクロール23および旋回スクロール25の外終端近傍に位置し、低圧室LR(図2参照)に対してまだ締め切られていない。
また、固定スクロール23の段差部42と旋回スクロール25の段付部45とは離間しており、旋回スクロール25の段差部43と固定スクロール23の段付部44とは離間している。
【0039】
その後、旋回角が進むと、それぞれ図4(b),図5(c)に示すように、圧縮室Cは、各スクロール23,25における壁体23b,25bの渦方向に沿って中心部側へ移動する。
また、図5(c)のときに、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44とは接触する。
【0040】
さらに、旋回角が進むと、それぞれ図5(d),図6(e)に示すように、圧縮室Cは、各スクロール23,25における壁体23b,25bの渦方向に沿って中心部側へ移動する。
スクロール最外周部壁面が相手スクロール壁面と接触するとき、圧縮室Cは低圧室LRに対して締め切られ、一対の独立した空間C1,C2となる。この時の圧縮室C1の容積は、図12におけるDである。以後、旋回角が進むにつれて圧縮室C(C1,C2)の容積は、図12に示すように、小さくなり、圧縮室内の冷媒は圧縮される。
また、この直後に、一方の圧縮室C1の中心部側端が、インジェクションポート17pと連通し、第1膨張弁7により減圧された中間圧の冷媒がインジェクション流路17を介して、圧縮室C1に供給され始める(図12中のE点)。
【0041】
さらに圧縮が進むと、それぞれ図6(f),図7(g),(h)に示すように、圧縮室C1,C2は、各スクロール23,25における壁体23b,25bの渦方向に沿って中心部側へ移動する。
この間、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44とは接触し続けているため、圧縮室C1,C2は独立した空間として隔離されている。また、圧縮室C1に対してインジェクションポート17pに対して中間圧の冷媒が供給され続けている。
【0042】
図8(i)の位置まで圧縮すると、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44との接触が終了する。
以後、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44が離間する。すると、固定スクロール23の壁体23bおよび旋回スクロール25の壁体25bを挟んで隣接していた圧縮室C1,C2が、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44の離間部を介して連通する(図12のI点)。
【0043】
さらに圧縮が進むと、図8(j),図9(k),(l),図10(m),(n)に示すように、連通した圧縮室C1,C2は、各スクロール23,25における壁体23b,25bの渦方向に沿って中心部側へ移動する。
この間、インジェクションポート17pから圧縮室C1に供給された中間圧の冷媒は、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44の離間部を介して、圧縮室C1,C2内を自由に流通する。そのため、圧縮室C1,C2内の圧力は均一に保たれる。
【0044】
図11(o)の位置まで圧縮すると、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44とが再び接触し、圧縮室C1,C2は再び独立した空間となる(図12のO点)。
また、この直前に、インジェクションポート17pの上に旋回スクロール25の壁体25bが移動する。そのため圧縮室C1との連通が閉ざされるとともに、圧縮室C1は更に渦方向の中心側へ移動するため、圧縮室C1への中間圧の冷媒供給が終了する(図12のM点)。
以後、旋回角が進むにつれて圧縮室C1,C2は渦方向の中心側へ移動し、最後には吐出ポート32と連通して、圧縮した冷媒を高圧室HRに向けて吐出する(図2参照)。
【0045】
上記の構成によれば、圧縮室C1,C2が離間した段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44との隙間を介して連通している間にも、一箇所に設けられたインジェクションポート17pから圧縮室C1に、第1膨張弁7により減圧された中間圧の冷媒を供給することができる。つまり、インジェクションポート17pから供給された中間圧の冷媒は、圧縮室C1、上記隙間を介して圧縮室C2にも供給されるため、圧縮室C1,C2の圧力バランスを取ることができる。
その結果、スクロール圧縮機3における圧縮室C1,C2の圧力バランスの崩れによる振動増大を防止できる。
【0046】
圧縮部C1,C2が上記隙間を介して連通している間にも、インジェクションポート17pから中間圧の冷媒を供給するため、圧縮部C1,C2がそれぞれ独立している間のみに冷媒を供給する場合と比較して、より容積が大きな圧縮部C1,C2に冷媒を供給できるため、供給する冷媒量を増やすことができる。
そのため、スクロール圧縮機3が吐出する単位時間当たりの冷媒量を増やすことができ、空気調和機1の冷凍能力を向上させることができる。
【0047】
図13は、図3のインジェクションポートの他の形成位置を説明する部分拡大図である。
なお、インジェクションポート17pは、図3(a)に示すように、固定スクロール23の底面23gにおける段差部42の連結壁面23hの近傍領域に形成されていてもよいし、図13に示すように、固定スクロール23の底面23fにおける連結壁面23hの近傍領域に形成されていてもよい。
さらには、インジェクションポート17pは、底面23fにおける連結壁面23hから離れた領域に形成されていてもよい。ただし、少なくとも圧縮室C1,C2が連通している間に、インジェクションポート17pと圧縮室C1とが連通する位置にインジェクションポート17pを形成する必要がある。
【0048】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図14および図15を参照して説明する。
本実施形態の空気調和機の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、スクロール圧縮機のインジェクションポート周辺構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図14および図15を用いてインジェクションポート周辺構成のみを説明し、その他構成要素等の説明を省略する。
図14は、本実施形態における空気調和機のスクロール圧縮機の構成を説明する部分拡大図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
空気調和機101におけるスクロール圧縮機103は、図14に示すように、密封容器であるハウジング21と、冷媒を圧縮する固定スクロール23および旋回スクロール125と、固定スクロール23および旋回スクロール125を支持するフレーム135と、を有している。
【0050】
スクロール圧縮機103には、レシーバ9(図1参照)において気液分離された中間圧冷媒をスクロール圧縮機103に供給するインジェクション流路117が接続されている。インジェクション流路117は、ハウジング21およびフレーム135を経由して旋回スクロール125から圧縮室Cに中間圧冷媒を供給できるように構成されている。
インジェクション流路117には、フレーム135と旋回スクロール125との間に中間圧冷媒の流れを制御する弁構造(制御部)119が設けられている。
【0051】
弁構造119は、フレーム135に形成された溝部120と、旋回スクロール125に形成された貫通孔であるインジェクションポート(供給部、貫通孔)121と、から構成されている。溝部120は、固定スクロール23と旋回スクロール125とが所定の位置関係にある場合にのみ、インジェクションポート121と連通する形状に形成されている。
具体的には、インジェクションポート121と連通する圧縮室C1が、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44との隙間を介して、他の圧縮室C2と連通する間のみ、溝部120とインジェクションポート121とが連通するように溝部120の形状が決定されている。
【0052】
次に上述した空気調和機101の作用、および、スクロール圧縮機103の作用について説明する。
空気調和機101の作用については、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0053】
スクロール圧縮機103における、固定スクロール23および旋回スクロール125の動きと、それに伴う圧縮室C1,C2の容積変化については、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0054】
ここで、スクロール圧縮機103における、圧縮室C1,C2の容積変化と、インジェクションポート121からの中間圧冷媒の供給のタイミングについて説明する。
図15は、図14の貫通孔から冷媒が供給される圧縮室の容積変化を示すグラフである。
圧縮室C1が締め切られてから(図15のD点)、圧縮室C1とインジェクションポート121とが連通する(図15のE点)までは、第1の実施形態と同様に、インジェクションポート121から中間圧の冷媒は圧縮室C1に供給されていいない。
【0055】
圧縮室C1とインジェクションポート121とが連通した後、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44とが離間し、その隙間を介して圧縮室C1が他の圧縮室C2と連通する(図15のI点)までの間は、弁構造119の溝部120とインジェクションポート121とが連通していない(図14参照)。そのため、図15のE点からI点までの間は、インジェクションポート121から中間圧の冷媒が圧縮室C1に供給されていない。
圧縮室C1と圧縮室C2とが連通した後は、溝部120とインジェクションポート121とが連通し(図14参照)、インジェクションポート121から圧縮室C1および圧縮室C2に中間圧の冷媒が供給される。
【0056】
その後、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44とが再び接触し、圧縮室C1,C2は再び独立した空間となると(図15のO点)、弁構造119の溝部120とインジェクションポート121との連通が絶たれる(図14参照)。
以後、旋回角が進むにつれて圧縮室C1,C2は渦方向の中心側へ移動し、最後には吐出ポート32と連通して、圧縮した冷媒を高圧室HRに向けて吐出する(図2参照)。
【0057】
上記の構成によれば、弁構造119が、圧縮室C1,C2が連通している間のみに、インジェクションポート121から中間圧の冷媒が供給されるように制御している。そのため、圧縮室C1,C2が独立している間は中間圧の冷媒が供給されることがなく、圧縮室C1,C2内の圧力を均一に保つことができ、スクロール圧縮機103の振動増大を防止できる。
【0058】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図16を参照して説明する。
本実施形態の空気調和機の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、スクロール圧縮機のインジェクションポート構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図16を用いてインジェクションポート周辺のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図16は、本実施形態における空気調和機のスクロール圧縮機の構成を説明する部分拡大図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0059】
空気調和機301におけるスクロール圧縮機303は、図16に示すように、冷媒を圧縮する固定スクロール323および旋回スクロール25を有している。
固定スクロール323の連結壁面(接触部)323hには、インジェクション流路17(図1参照。)から供給された中間圧冷媒を圧縮室Cに供給する貫通孔であるインジェクションポート(供給部、貫通孔)317pが形成されている。
インジェクションポート317pは、壁体23bおよび底面23f,23gと略平行に形成されているとともに、壁体23b側に寄った位置に形成されている。
【0060】
次に上述した空気調和機301の作用、および、スクロール圧縮機303の作用について説明する。
空気調和機301の作用については、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0061】
スクロール圧縮機303における、固定スクロール323および旋回スクロール25の動きと、それに伴う圧縮室C1,C2の容積変化、及び、インジェクションポート317pからの中間圧冷媒の供給タイミングについても、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0062】
ここで、本実施形態の特徴部である壁体25bによるインジェクションポート317pの開閉について説明する。
インジェクションポート317pは、図16に示すように、連結壁面323hに形成され、旋回スクロール25における壁体25bの連結縁25e(図3(b)参照。)により開閉される。
【0063】
上記の構成によれば、インジェクションポート317pが連結壁面323hに設けられているため、インジェクションポート317pが端板23aの底面(例えば、底面23fや底面23g)に設けられている場合と比較して、冷媒を供給できる期間を長くすることができる。
連結壁面323hにおける連結縁25eとの接触は線接触であり、端板23aの底面における壁体25bとの接触は面接触のであるため、インジェクションポート317pを上記連結壁面323hに設けることにより、壁体25bにより冷媒供給が妨げられる期間が短くなるからである。
【0064】
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について図17を参照して説明する。
本実施形態の空気調和機の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、スクロール圧縮機のインジェクションポート構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図17を用いてインジェクションポート周辺のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図17は、本実施形態における空気調和機のスクロール圧縮機の構成を説明する部分拡大図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
空気調和機401におけるスクロール圧縮機403は、図17に示すように、冷媒を圧縮する固定スクロール423および旋回スクロール25を有している。
固定スクロール423の底面23fには、インジェクション流路17(図1参照。)から供給された中間圧冷媒を圧縮室Cに供給する貫通孔であるインジェクションポート(供給部、貫通孔)417pが形成されている。
具体的には、底面23fの段差部42の近傍領域であって、旋回スクロール25のチップシール26b(図3(b)参照。)が摺動しない範囲Lに、インジェクションポート417pが形成されている。
【0066】
次に上述した空気調和機401の作用、および、スクロール圧縮機403の作用について説明する。
空気調和機401の作用については、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0067】
スクロール圧縮機403における、固定スクロール423および旋回スクロール25の動きと、それに伴う圧縮室C1,C2の容積変化、及び、インジェクションポート417pからの中間圧冷媒の供給タイミングについても、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0068】
上記の構成によれば、インジェクションポート417pが、チップシール26bが摺動しない領域に設けられているため、インジェクションポート417pとの接触によりチップシール26bが破損されることを防止できる。チップシール26bの破損を防止することにより、壁体25bを挟んで隣接する圧力の異なる圧縮室C1,C2間の冷媒漏れを防止でき、スクロール圧縮機403の能力低下を防止できる。
【0069】
〔第5の実施の形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について図18を参照して説明する。
本実施形態の空気調和機の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、スクロール圧縮機に中間圧冷媒を供給するインジェクション流路の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図18を用いてインジェクション流路周辺のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図18は、本実施形態における空気調和機を説明する概略図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0070】
空気調和機501は、図18に示すように、冷媒を圧縮するスクロール圧縮機3と、圧縮された冷媒から潤滑油を分離するオイルセパレータ(油分離器)503と、潤滑油が分離された冷媒の熱を放熱させるコンデンサ5と、放熱された冷媒の圧力を減圧させる第1膨張弁7と、減圧された冷媒を気液分離するレシーバ9と、液冷媒をさらに減圧する第2膨張弁11と、減圧された液冷媒に熱を吸収させるエバポレータ13と、から概略構成されている。
【0071】
レシーバ9とスクロール圧縮機3との間には、レシーバ9において気液分離された気体冷媒をスクロール圧縮機3に供給するインジェクション流路(供給部)517が配置されている。
オイルセパレータ503とインジェクション流路517との間には、オイルセパレータ503により分離された潤滑油をインジェクション流路517に供給するオイル流路519が配置されている。オイル流路519には絞り521が設けられ、絞り521により、オイルセパレータ503内とインジェクション流路517内との圧力差を調整している。
【0072】
次に上述した空気調和機501の作用について説明する。
スクロール圧縮機3により圧縮され高圧となった冷媒は、図18に示すように、オイルセパレータ503に向かって吐出される。オイルセパレータ503に流入した冷媒は、スクロール圧縮機3の潤滑油と冷媒とに分離され、分離された冷媒はコンデンサ5に向かって吐出される。
【0073】
コンデンサ5に流入した冷媒はその熱を外部に放出して凝縮し、第1膨張弁7に向かって流出する。冷媒は第1膨張弁7により減圧され中間圧の冷媒となりレシーバ9に流入する。冷媒はレシーバ9において液冷媒とガス冷媒とに分離され、液冷媒は第2膨張弁11に向かって流出する。液冷媒は第2膨張弁11により減圧され低圧の冷媒となり、エバポレータ13に流入する。低圧の冷媒はエバポレータ13において外部の空気から熱を奪い、蒸発してガス冷媒となり、スクロール圧縮機3に流入し、再び圧縮される。
【0074】
一方、レシーバ9において分離されたガス冷媒は、インジェクション流路517を介してスクロール圧縮機3に流入する。スクロール圧縮機3に流入した冷媒は再び圧縮される。
オイルセパレータ503において分離された潤滑油は、オイル流路519によりインジェクション流路517に供給される。インジェクション流路517に供給された潤滑油は、冷媒とともにスクロール圧縮機3に流入する。
再びスクロール圧縮機3により圧縮された冷媒は、コンデンサ5に吐出され上述のサイクルを繰り返す。
【0075】
上記の構成によれば、オイルセパレータ503により分離された潤滑油を、インジェクションポート17pを介して、スクロール圧縮機3の圧縮室C1,C2に戻すことができる。圧縮室C1,C2に潤滑油を戻すことにより、シール性を向上させ、圧縮室C1,C2からの冷媒漏れを防止でき、スクロール圧縮機3の能力向上、および、空気調和機501の能力向上を図ることができる。
【0076】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
上記の実施の形態においては、この発明を空気調和機として説明したが、具体的には冷凍機、空調機など、その他各種の空気調和機を適用した機器に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る空気調和機を説明する概略図である。
【図2】図1のスクロール圧縮機の構成を説明する断面図である。
【図3】図2の固定スクロールおよび旋回スクロールの構成を説明する斜視図である。
【図4】図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。
【図5】図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。
【図6】図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。
【図7】図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。
【図8】図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。
【図9】図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。
【図10】図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。
【図11】図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。
【図12】図4から図11までのインジェクションポートから冷媒が供給される圧縮室の容積変化を示すグラフである。
【図13】図3のインジェクションポートの他の形成位置を説明する部分拡大図である。
【図14】本発明の第2の実施形態における空気調和機のスクロール圧縮機の構成を説明する部分拡大図である。
【図15】図14の貫通孔から冷媒が供給される圧縮室の容積変化を示すグラフである。
【図16】本発明の第3の実施形態における空気調和機のスクロール圧縮機の構成を説明する部分拡大図である。
【図17】本発明の第4の実施形態における空気調和機のスクロール圧縮機の構成を説明する部分拡大図である。
【図18】本発明の第5の実施形態における空気調和機を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0078】
1,101,301,401,501 空気調和機
3,103,303,403 スクロール圧縮機
5 コンデンサ(放熱器)
7 第1膨張弁(高圧側減圧部)
11 第2膨張弁(低圧側減圧部)
13 エバポレータ(吸熱器)
17,517 インジェクション流路(供給部)
17p,121,317p,417p インジェクションポート(供給部、貫通孔)
23,323,423 固定スクロール
23a,25a 端板
23b,25b 壁体
25,125 旋回スクロール
42,43 段差部
44,45 段付部
119 弁構造(制御部)
323h 連結壁面(接触部)
503 オイルセパレータ(油分離器)
C,C1,C2 圧縮室
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール圧縮機および空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷凍・空調装置等の冷凍サイクルに用いられる圧縮機としては、ピストン式やロータリ式やスクロール式の圧縮機が知られている。
これらロータリ圧縮機や、スクロール圧縮機を用いた冷凍サイクルを能力向上させる手法として、放熱器と吸熱器との間に2つの減圧器を備え、これら減圧器を用いて冷媒を2段膨張させ、一の減圧器を通過した後の中間圧を有する冷媒を圧縮機の圧縮行程に供給するガスインジェクション(エコノマイザーサイクル)が知られている。
【0003】
上述のスクロール圧縮機において、一対の圧縮室に対して供給される冷媒量が不均一になると、これらの圧縮室内の圧力が不均一となり、圧縮過程におけるスクロール圧縮機に働く力のバランスが崩れる。このように、スクロール圧縮機に働く力のバランスが崩れると、スクロール圧縮機の振動が増大するという問題があった。
そのため、スクロール圧縮機の一対の圧縮室に対して、冷媒を均一に供給するさまざまな技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平7−103152号公報(第3‐4頁、第3図等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1においては、ガスインジェクションサイクルに用いられるスクロール圧縮機の構成が示されている。具体的には、スクロール圧縮機の端版に、一対の圧縮室に対して連通する連通路を形成し、当該連通路を介して、外部から供給された冷媒を一対の圧縮室に供給する構成が開示されている。
この構成によれば、外部から冷媒を供給するインジェクション流路の数を1本にすることができる。そのため、複数のインジェクション流路を用いる場合と比較して、インジェクション流路とスクロール圧縮機の筐体との接触部等におけるシール箇所を減らすことができる。
【0005】
しかしながら、上述の構成では、一対の圧縮室に対して冷媒を分配する連通路を形成するとともに、冷媒を圧縮室に供給するポートを2ヶ所形成する必要がある。そのため、スクロール圧縮機の構成が複雑となり、製造コストアップにつながるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ガスインジェクションサイクルによる能力向上を図るとともに、製造コスト上昇を防止することができるスクロール圧縮機および空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のスクロール圧縮機は、それぞれの端版の一側面に渦巻き状の壁体を立設させた固定スクロールおよび旋回スクロールが、互いに噛み合うことにより冷媒を圧縮する複数の圧縮室を形成するスクロール圧縮機であって、前記固定スクロールと旋回スクロールの少なくともいずれか一方の端板の前記一側面には、その高さが前記壁体の渦に沿ってその中心部側で高く外端側で低くなる段差部が設けられるとともに、前記固定スクロールと旋回スクロールのいずれか他方の壁体の上縁には、前記端板の段差部に対応し、複数の部位に分割されかつ該部位の高さが渦の中心部側で低く外端側で高くなる段付部が設けられ、前記冷媒を圧縮中の前記複数の圧縮室に、外部から供給された冷媒を供給する供給部が設けられ、少なくとも前記複数の圧縮室が離間した前記段差部および前記段付部を含む間に、前記供給部から冷媒が供給されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、複数の圧縮室が離間した段差部および段付部を含む間に、供給部から複数の圧縮室へ冷媒を供給するため、一箇所に設けられた供給部により、複数の圧縮室へ冷媒を供給することができる。そのため、供給部を複数個所に設ける必要がなくなり、製造コスト上昇を防止できる。
これら段差部および段付部と接する複数の圧縮室は、段差部および段付部が離間している隙間を介して連通している。そのため、供給部が一箇所に設けられていても、上記隙間を介して、複数の圧縮室へ冷媒を供給できる。
【0009】
少なくとも複数の圧縮室が上記隙間を介して連通している間に、外部から複数の圧縮室に冷媒を供給するため、複数の圧縮室がそれぞれ独立している間のみに冷媒を供給する場合と比較して、より容積が大きな圧縮室に冷媒を供給できるため、供給する冷媒量を増やすことができる。そのため、スクロール圧縮機が吐出する単位時間当たりの冷媒量を増やすことができ、例えば、本発明のスクロール圧縮機を用いた空気調和機の冷凍能力を向上させることができる。
【0010】
上記発明においては、前記供給部が、前記固定スクロールと旋回スクロールの少なくともいずれか一方の端板に設けられた貫通孔であり、該貫通孔が、少なくとも前記複数の圧縮室が離間した前記段差部および前記段付部を含む間に、前記複数の圧縮室と連通する位置に設けられていることが望ましい。
【0011】
本発明によれば、供給部が端板に設けられた貫通孔であって、複数の圧縮室が離間した段差部および段付部を含む間に、複数の圧縮室と連通する位置に設けられているため、一箇所に設けられた貫通孔により、複数の圧縮室へ冷媒を供給することができる。
【0012】
上記発明においては、前記供給部が、前記段差部における前記段付部との接触部に設けられていることが望ましい。
【0013】
本発明によれば、供給部が段差部における段付部との接触部に設けられているため、供給部が端板の一側面に設けられている場合と比較して、冷媒を供給できる期間を長くすることができる。
上記接触部における段差部と段付部との接触は線接触であり、一側面における端板と壁体との接触は面接触であるため、供給部を上記接触部に設けることにより、壁体により冷媒供給が妨げられる期間が短くなるからである。
【0014】
上記発明においては、前記壁体の上縁における、前記段付部からうずの中心部側の領域、および、前記段付部から外端側の領域には、前記端板と接触するシール部材が設けられ、前記端板における前記シール部材が摺動しない領域に、前記供給部が設けられていることが望ましい。
【0015】
本発明によれば、供給部が、シール部材が摺動しない領域に設けられているため、供給部によりシール部材が破損されることを防止できる。シール部材の破損を防止することにより、壁体を挟んで隣接する圧力の異なる圧縮室間の冷媒漏れを防止でき、スクロール圧縮機の能力低下を防止できる。
【0016】
上記発明においては、前記供給部から前記複数の圧縮室への前記冷媒の供給を制御する制御部を有し、該制御部が、前記段差部と前記段付部とが離間している間に、前記供給部から冷媒が供給されるように制御することが望ましい。
【0017】
本発明によれば、制御部が、段差部と段付部とが離間している間に供給部から冷媒が供給されるように制御しているため、複数の圧縮室が独立している間は、一の圧縮室のみに冷媒が供給されることがない。そのため、複数の圧縮室それぞれの圧力が均一に保たれ、スクロール圧縮機の振動増大を防止できる。
【0018】
本発明の空気調和機は、上記本発明のスクロール圧縮機と、該スクロール圧縮機により圧縮された冷媒から潤滑油を分離する油分離器と、該スクロール圧縮機により圧縮された冷媒の熱を放熱させる放熱器と、放熱された冷媒の圧力を減圧させる高圧側減圧部と、減圧された冷媒を更に減圧させる低圧側減圧部と、該低圧側減圧部で減圧された冷媒に熱を吸収させる吸熱器と、を有し、前記スクロール圧縮機の供給部には、前記高圧側減圧部により減圧された冷媒と、前記油分離器により分離された前記潤滑油と、が供給されることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、油分離器により分離された潤滑油を、供給部を介して、スクロール圧縮機の圧縮室に戻すことができる。圧縮室に潤滑油を戻すことにより、圧縮室からの冷媒漏れを防止でき、スクロール圧縮機の能力向上、および、空気調和機の能力向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスクロール圧縮機および空気調和機によれば、複数の圧縮室が離間した段差部および段付部を含む間に、供給部から複数の圧縮室へ冷媒を供給するため、一箇所に設けられた供給部により、複数の圧縮室へ冷媒を供給することができる。そのため、供給部を複数個所に設ける必要がなくなり、製造コスト上昇を防止できるという効果を奏する。
【0021】
少なくとも複数の圧縮室が上記隙間を介して連通している間に、外部から複数の圧縮室に冷媒を供給するため、複数の圧縮室がそれぞれ独立している間のみに冷媒を供給する場合と比較して、より容積が大きな圧縮室に冷媒を供給できるため、供給する冷媒量を増やすことができる。そのため、スクロール圧縮機が吐出する単位時間当たりの冷媒量を増やすことができ、例えば、本発明のスクロール圧縮機を用いた空気調和機の冷凍能力を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態について図1から図13を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る空気調和機を説明する概略図である。
空気調和機1は、図1に示すように、冷媒を圧縮するスクロール圧縮機3と、圧縮された冷媒の熱を放熱させるコンデンサ(放熱器)5と、放熱された冷媒の圧力を減圧させる第1膨張弁(高圧側減圧部)7と、減圧された冷媒を気液分離するレシーバ9と、液冷媒をさらに減圧する第2膨張弁(低圧側減圧部)11と、減圧された液冷媒に熱を吸収させるエバポレータ(吸熱器)13と、から概略構成されている。
レシーバ9とスクロール圧縮機3との間には、レシーバ9において気液分離された気体冷媒をスクロール圧縮機3に供給するインジェクション流路(供給部)17が配置されている。
【0023】
図2は、図1のスクロール圧縮機の構成を説明する断面図である。
スクロール圧縮機3は、図2に示すように、密封容器であるハウジング21と、冷媒を圧縮する固定スクロール23および旋回スクロール25と、旋回スクロール25を回転駆動するモータ27と、から概略構成されている。
ハウジング21には、ハウジング21内を高圧室HRと低圧室LRとに分離するディスチャージカバー29と、エバポレータ13から冷媒を低圧室LRに導く吸入管31と、高圧室HRから冷媒をコンデンサ5に導く吐出管33と、固定スクロール23および旋回スクロール25を支持するフレーム35と、が設けられている。
【0024】
旋回スクロール25とモータ27との間には、モータ27の回転力を旋回スクロールに伝える回転シャフト37が設けられている。
フレーム35と旋回スクロール25との間には、旋回スクロール25の自転を防止するオルダムリング39が設けられている。
【0025】
図3は、図2の固定スクロールおよび旋回スクロールの構成を説明する斜視図である。
固定スクロール23は、図3(a)に示すように、端板23aの一側面に渦巻き状の壁体23bが立設された構成となっている。旋回スクロール25は、図3(b)に示すように、固定スクロール23と同様に端板25aの一側面に渦巻き状の壁体25bが立設された構成となっており、特に壁体25bは固定スクロール23側の壁体23bと実質的に同一形状をなしている。旋回スクロール25は固定スクロール23に対して相互に公転旋回半径だけ偏心し、かつ、180度だけ位相をずらした状態で、壁体23b,25b同士を噛み合わせて組み付けられている。
【0026】
この場合、図2に示すように、旋回スクロール25は、モータ27で駆動される回転シャフト37の上端に設けられて旋回運動する偏心ピン37a及びオルダムリング39の作用により、固定スクロール23に対して公転旋回運動を行うようになっている。
一方、固定スクロール23は、ハウジング21に固定されており、端板23aの背面中央には圧縮された流体の吐出ポート32が設けられている。
【0027】
固定スクロール23の端板23aには、壁体23bが立設された一側面に、壁体23bの渦方向に沿って中心部側で高く外端側で低くなるよう形成された段差部42を備えている。旋回スクロール25側の端板25aも固定スクロール23の端板23aと同様に、壁体25bが立設された一側面に、壁体25bの渦方向に沿って中心部側で高く外端側で低くなるよう形成された段差部43を備えている。
【0028】
端板23aの底面は、段差部42が形成されていることにより、中心部側に設けられた底の浅い底面23fと外端側に設けられた底の深い底面23gとの2つの部位に分けられている。隣り合う底面23f,23g間には、段差部42を構成し、前記底面23f,23gを繋いで垂直に切り立つ連結壁面23hが存在している。
端板25aの底面も上述した端板23aと同様に、段差部43が形成されていることにより、中心部側に設けられた底の浅い底面25fと外端側に設けられた底の深い底面25gとの2つの部位に分けられている。隣り合う底面25f,25g間には、段差部43を構成し、前記底面25f,25gを繋いで垂直に切り立つ連結壁面25hが存在している。
【0029】
また、固定スクロール23側の壁体23bは、旋回スクロール25の段差部43に対応し、その渦巻き状の上縁が2つの部位に分割され、かつ、渦の中心部側で低く外端側で高い段付部44となっている。旋回スクロール25側の壁体25bも壁体23bと同様に、固定スクロール23の段差部42に対応し、渦巻き状の上縁が2つの部位に分割され、かつ、渦の中心部側で低く外端側で高い段付部45となっている。
【0030】
具体的には、壁体23bの上縁は、中心部寄りに設けられた低位の上縁23cと外終端寄りに設けられた高位の上縁23dとの2つの部位に分けられ、隣り合う上縁23c,23d間には、両者を繋いで旋回面に垂直な連結縁23eが形成されている。壁体25bの上縁も上述した壁体23bと同様に、中心部寄りに設けられた低位の上縁25cと外終端寄りに設けられた高位の上縁25dとの2つの部位に分けられ、隣り合う上縁25c,25d間には、両者を繋いで旋回面に垂直な連結縁25eが形成されている。
【0031】
連結縁23eは、壁体23bを旋回スクロール25の方向から見ると壁体23bの内外両側面に滑らかに連続し壁体23bの肉厚に等しい直径を有する半円形をなしている。また、連結縁25eも連結縁23eと同様に、壁体25bの内外両側面に滑らかに連続し壁体25bの肉厚に等しい直径を有する半円形をなしている。
また、連結壁面23hは、端板23aを旋回軸方向から見ると旋回スクロールの旋回に伴って連結縁25eが描く包絡線に一致する円弧をなしている。また、連結壁面25hも連結壁面23hと同様に、連結縁23eが描く包絡線に一致する円弧をなしている。
【0032】
固定スクロール23の壁体23bには、上縁23c,23dに連結縁23eの近傍で二つに分断されたチップシール24a,24bが設けられている。同様に、旋回スクロール25の壁体25bには、上縁25c,25dに連結縁25eの近傍で二つに分断されたチップシール26a,26bが設けられている。これらのチップシールは、旋回スクロール25と固定スクロール23との間において、上縁(歯先)と底面(歯底)との間に形成されるチップシール隙間をシールして圧縮したガス流体の漏れを最小限に抑えるものである。
【0033】
すなわち、固定スクロール23に旋回スクロール25を組み付けると、低位の上縁25cに設けたチップシール26bが底の浅い底面23fに接触し、高位の上縁25dに設けたチップシール26aが底の深い底面23gに接触する。同時に、低位の上縁23cに設けたチップシール24aが底の浅い底面25fに接触し、高位の上縁23dに設けたチップシール24bが底の深い底面25gに接触する。
この結果、両スクロール23,25間には、互いに向かい合う端板23a,25aと壁体23b,25bとに区画された複数の圧縮室Cが形成される。
なお、図3においては、固定スクロール23の段付形状を示すため、固定スクロール23の上下を逆にして図示されている。
【0034】
また、図3(a)に示すように、固定スクロール23の端板23aの底面には、インジェクション流路17と接続されているインジェクションポート(供給部、貫通孔)17pが形成されている。インジェクションポート17pは、底面の内の底の深い底面23gであって、段差部42の連結壁面23hの近傍領域に形成されている。
【0035】
次に上述した空気調和機1の作用について説明する。
スクロール圧縮機3により圧縮され高圧となった冷媒は、図1に示すように、コンデンサ5に向かって吐出される。コンデンサ5に流入した冷媒はその熱を外部に放出して凝縮し、第1膨張弁7に向かって流出する。冷媒は第1膨張弁7により減圧され中間圧の冷媒となりレシーバ9に流入する。冷媒はレシーバ9において液冷媒とガス冷媒とに分離され、液冷媒は第2膨張弁11に向かって流出する。液冷媒は第2膨張弁11により減圧され低圧の冷媒となり、エバポレータ13に流入する。低圧の冷媒はエバポレータ13において外部の空気から熱を奪い、蒸発してガス冷媒となり、スクロール圧縮機3に流入し、再び圧縮される。
【0036】
一方、レシーバ9において分離されたガス冷媒は、インジェクション流路17を介してスクロール圧縮機3に流入する。スクロール圧縮機3に流入した冷媒は再び圧縮される。
再びスクロール圧縮機3により圧縮された冷媒は、コンデンサ5に吐出され上述のサイクルを繰り返す。
【0037】
次にスクロール圧縮機3の作用について説明する。
図4(a)から図11(o)は、図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。図4(a)から図11(o)は、固定スクロール側から固定スクロールおよび旋回スクロールを見た透視図である。図12は、図4(a)から図11(o)までのインジェクションポートから冷媒が供給される圧縮室の容積変化を示すグラフである。
【0038】
図4(a)は、ある旋回角における固定スクロール23と旋回スクロール25との相対位置を示している。圧縮室Cは固定スクロール23および旋回スクロール25の外終端近傍に位置し、低圧室LR(図2参照)に対してまだ締め切られていない。
また、固定スクロール23の段差部42と旋回スクロール25の段付部45とは離間しており、旋回スクロール25の段差部43と固定スクロール23の段付部44とは離間している。
【0039】
その後、旋回角が進むと、それぞれ図4(b),図5(c)に示すように、圧縮室Cは、各スクロール23,25における壁体23b,25bの渦方向に沿って中心部側へ移動する。
また、図5(c)のときに、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44とは接触する。
【0040】
さらに、旋回角が進むと、それぞれ図5(d),図6(e)に示すように、圧縮室Cは、各スクロール23,25における壁体23b,25bの渦方向に沿って中心部側へ移動する。
スクロール最外周部壁面が相手スクロール壁面と接触するとき、圧縮室Cは低圧室LRに対して締め切られ、一対の独立した空間C1,C2となる。この時の圧縮室C1の容積は、図12におけるDである。以後、旋回角が進むにつれて圧縮室C(C1,C2)の容積は、図12に示すように、小さくなり、圧縮室内の冷媒は圧縮される。
また、この直後に、一方の圧縮室C1の中心部側端が、インジェクションポート17pと連通し、第1膨張弁7により減圧された中間圧の冷媒がインジェクション流路17を介して、圧縮室C1に供給され始める(図12中のE点)。
【0041】
さらに圧縮が進むと、それぞれ図6(f),図7(g),(h)に示すように、圧縮室C1,C2は、各スクロール23,25における壁体23b,25bの渦方向に沿って中心部側へ移動する。
この間、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44とは接触し続けているため、圧縮室C1,C2は独立した空間として隔離されている。また、圧縮室C1に対してインジェクションポート17pに対して中間圧の冷媒が供給され続けている。
【0042】
図8(i)の位置まで圧縮すると、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44との接触が終了する。
以後、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44が離間する。すると、固定スクロール23の壁体23bおよび旋回スクロール25の壁体25bを挟んで隣接していた圧縮室C1,C2が、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44の離間部を介して連通する(図12のI点)。
【0043】
さらに圧縮が進むと、図8(j),図9(k),(l),図10(m),(n)に示すように、連通した圧縮室C1,C2は、各スクロール23,25における壁体23b,25bの渦方向に沿って中心部側へ移動する。
この間、インジェクションポート17pから圧縮室C1に供給された中間圧の冷媒は、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44の離間部を介して、圧縮室C1,C2内を自由に流通する。そのため、圧縮室C1,C2内の圧力は均一に保たれる。
【0044】
図11(o)の位置まで圧縮すると、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44とが再び接触し、圧縮室C1,C2は再び独立した空間となる(図12のO点)。
また、この直前に、インジェクションポート17pの上に旋回スクロール25の壁体25bが移動する。そのため圧縮室C1との連通が閉ざされるとともに、圧縮室C1は更に渦方向の中心側へ移動するため、圧縮室C1への中間圧の冷媒供給が終了する(図12のM点)。
以後、旋回角が進むにつれて圧縮室C1,C2は渦方向の中心側へ移動し、最後には吐出ポート32と連通して、圧縮した冷媒を高圧室HRに向けて吐出する(図2参照)。
【0045】
上記の構成によれば、圧縮室C1,C2が離間した段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44との隙間を介して連通している間にも、一箇所に設けられたインジェクションポート17pから圧縮室C1に、第1膨張弁7により減圧された中間圧の冷媒を供給することができる。つまり、インジェクションポート17pから供給された中間圧の冷媒は、圧縮室C1、上記隙間を介して圧縮室C2にも供給されるため、圧縮室C1,C2の圧力バランスを取ることができる。
その結果、スクロール圧縮機3における圧縮室C1,C2の圧力バランスの崩れによる振動増大を防止できる。
【0046】
圧縮部C1,C2が上記隙間を介して連通している間にも、インジェクションポート17pから中間圧の冷媒を供給するため、圧縮部C1,C2がそれぞれ独立している間のみに冷媒を供給する場合と比較して、より容積が大きな圧縮部C1,C2に冷媒を供給できるため、供給する冷媒量を増やすことができる。
そのため、スクロール圧縮機3が吐出する単位時間当たりの冷媒量を増やすことができ、空気調和機1の冷凍能力を向上させることができる。
【0047】
図13は、図3のインジェクションポートの他の形成位置を説明する部分拡大図である。
なお、インジェクションポート17pは、図3(a)に示すように、固定スクロール23の底面23gにおける段差部42の連結壁面23hの近傍領域に形成されていてもよいし、図13に示すように、固定スクロール23の底面23fにおける連結壁面23hの近傍領域に形成されていてもよい。
さらには、インジェクションポート17pは、底面23fにおける連結壁面23hから離れた領域に形成されていてもよい。ただし、少なくとも圧縮室C1,C2が連通している間に、インジェクションポート17pと圧縮室C1とが連通する位置にインジェクションポート17pを形成する必要がある。
【0048】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図14および図15を参照して説明する。
本実施形態の空気調和機の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、スクロール圧縮機のインジェクションポート周辺構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図14および図15を用いてインジェクションポート周辺構成のみを説明し、その他構成要素等の説明を省略する。
図14は、本実施形態における空気調和機のスクロール圧縮機の構成を説明する部分拡大図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
空気調和機101におけるスクロール圧縮機103は、図14に示すように、密封容器であるハウジング21と、冷媒を圧縮する固定スクロール23および旋回スクロール125と、固定スクロール23および旋回スクロール125を支持するフレーム135と、を有している。
【0050】
スクロール圧縮機103には、レシーバ9(図1参照)において気液分離された中間圧冷媒をスクロール圧縮機103に供給するインジェクション流路117が接続されている。インジェクション流路117は、ハウジング21およびフレーム135を経由して旋回スクロール125から圧縮室Cに中間圧冷媒を供給できるように構成されている。
インジェクション流路117には、フレーム135と旋回スクロール125との間に中間圧冷媒の流れを制御する弁構造(制御部)119が設けられている。
【0051】
弁構造119は、フレーム135に形成された溝部120と、旋回スクロール125に形成された貫通孔であるインジェクションポート(供給部、貫通孔)121と、から構成されている。溝部120は、固定スクロール23と旋回スクロール125とが所定の位置関係にある場合にのみ、インジェクションポート121と連通する形状に形成されている。
具体的には、インジェクションポート121と連通する圧縮室C1が、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44との隙間を介して、他の圧縮室C2と連通する間のみ、溝部120とインジェクションポート121とが連通するように溝部120の形状が決定されている。
【0052】
次に上述した空気調和機101の作用、および、スクロール圧縮機103の作用について説明する。
空気調和機101の作用については、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0053】
スクロール圧縮機103における、固定スクロール23および旋回スクロール125の動きと、それに伴う圧縮室C1,C2の容積変化については、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0054】
ここで、スクロール圧縮機103における、圧縮室C1,C2の容積変化と、インジェクションポート121からの中間圧冷媒の供給のタイミングについて説明する。
図15は、図14の貫通孔から冷媒が供給される圧縮室の容積変化を示すグラフである。
圧縮室C1が締め切られてから(図15のD点)、圧縮室C1とインジェクションポート121とが連通する(図15のE点)までは、第1の実施形態と同様に、インジェクションポート121から中間圧の冷媒は圧縮室C1に供給されていいない。
【0055】
圧縮室C1とインジェクションポート121とが連通した後、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44とが離間し、その隙間を介して圧縮室C1が他の圧縮室C2と連通する(図15のI点)までの間は、弁構造119の溝部120とインジェクションポート121とが連通していない(図14参照)。そのため、図15のE点からI点までの間は、インジェクションポート121から中間圧の冷媒が圧縮室C1に供給されていない。
圧縮室C1と圧縮室C2とが連通した後は、溝部120とインジェクションポート121とが連通し(図14参照)、インジェクションポート121から圧縮室C1および圧縮室C2に中間圧の冷媒が供給される。
【0056】
その後、段差部42と段付部45、および、段差部43と段付部44とが再び接触し、圧縮室C1,C2は再び独立した空間となると(図15のO点)、弁構造119の溝部120とインジェクションポート121との連通が絶たれる(図14参照)。
以後、旋回角が進むにつれて圧縮室C1,C2は渦方向の中心側へ移動し、最後には吐出ポート32と連通して、圧縮した冷媒を高圧室HRに向けて吐出する(図2参照)。
【0057】
上記の構成によれば、弁構造119が、圧縮室C1,C2が連通している間のみに、インジェクションポート121から中間圧の冷媒が供給されるように制御している。そのため、圧縮室C1,C2が独立している間は中間圧の冷媒が供給されることがなく、圧縮室C1,C2内の圧力を均一に保つことができ、スクロール圧縮機103の振動増大を防止できる。
【0058】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図16を参照して説明する。
本実施形態の空気調和機の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、スクロール圧縮機のインジェクションポート構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図16を用いてインジェクションポート周辺のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図16は、本実施形態における空気調和機のスクロール圧縮機の構成を説明する部分拡大図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0059】
空気調和機301におけるスクロール圧縮機303は、図16に示すように、冷媒を圧縮する固定スクロール323および旋回スクロール25を有している。
固定スクロール323の連結壁面(接触部)323hには、インジェクション流路17(図1参照。)から供給された中間圧冷媒を圧縮室Cに供給する貫通孔であるインジェクションポート(供給部、貫通孔)317pが形成されている。
インジェクションポート317pは、壁体23bおよび底面23f,23gと略平行に形成されているとともに、壁体23b側に寄った位置に形成されている。
【0060】
次に上述した空気調和機301の作用、および、スクロール圧縮機303の作用について説明する。
空気調和機301の作用については、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0061】
スクロール圧縮機303における、固定スクロール323および旋回スクロール25の動きと、それに伴う圧縮室C1,C2の容積変化、及び、インジェクションポート317pからの中間圧冷媒の供給タイミングについても、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0062】
ここで、本実施形態の特徴部である壁体25bによるインジェクションポート317pの開閉について説明する。
インジェクションポート317pは、図16に示すように、連結壁面323hに形成され、旋回スクロール25における壁体25bの連結縁25e(図3(b)参照。)により開閉される。
【0063】
上記の構成によれば、インジェクションポート317pが連結壁面323hに設けられているため、インジェクションポート317pが端板23aの底面(例えば、底面23fや底面23g)に設けられている場合と比較して、冷媒を供給できる期間を長くすることができる。
連結壁面323hにおける連結縁25eとの接触は線接触であり、端板23aの底面における壁体25bとの接触は面接触のであるため、インジェクションポート317pを上記連結壁面323hに設けることにより、壁体25bにより冷媒供給が妨げられる期間が短くなるからである。
【0064】
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について図17を参照して説明する。
本実施形態の空気調和機の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、スクロール圧縮機のインジェクションポート構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図17を用いてインジェクションポート周辺のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図17は、本実施形態における空気調和機のスクロール圧縮機の構成を説明する部分拡大図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
空気調和機401におけるスクロール圧縮機403は、図17に示すように、冷媒を圧縮する固定スクロール423および旋回スクロール25を有している。
固定スクロール423の底面23fには、インジェクション流路17(図1参照。)から供給された中間圧冷媒を圧縮室Cに供給する貫通孔であるインジェクションポート(供給部、貫通孔)417pが形成されている。
具体的には、底面23fの段差部42の近傍領域であって、旋回スクロール25のチップシール26b(図3(b)参照。)が摺動しない範囲Lに、インジェクションポート417pが形成されている。
【0066】
次に上述した空気調和機401の作用、および、スクロール圧縮機403の作用について説明する。
空気調和機401の作用については、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0067】
スクロール圧縮機403における、固定スクロール423および旋回スクロール25の動きと、それに伴う圧縮室C1,C2の容積変化、及び、インジェクションポート417pからの中間圧冷媒の供給タイミングについても、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0068】
上記の構成によれば、インジェクションポート417pが、チップシール26bが摺動しない領域に設けられているため、インジェクションポート417pとの接触によりチップシール26bが破損されることを防止できる。チップシール26bの破損を防止することにより、壁体25bを挟んで隣接する圧力の異なる圧縮室C1,C2間の冷媒漏れを防止でき、スクロール圧縮機403の能力低下を防止できる。
【0069】
〔第5の実施の形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について図18を参照して説明する。
本実施形態の空気調和機の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、スクロール圧縮機に中間圧冷媒を供給するインジェクション流路の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図18を用いてインジェクション流路周辺のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図18は、本実施形態における空気調和機を説明する概略図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0070】
空気調和機501は、図18に示すように、冷媒を圧縮するスクロール圧縮機3と、圧縮された冷媒から潤滑油を分離するオイルセパレータ(油分離器)503と、潤滑油が分離された冷媒の熱を放熱させるコンデンサ5と、放熱された冷媒の圧力を減圧させる第1膨張弁7と、減圧された冷媒を気液分離するレシーバ9と、液冷媒をさらに減圧する第2膨張弁11と、減圧された液冷媒に熱を吸収させるエバポレータ13と、から概略構成されている。
【0071】
レシーバ9とスクロール圧縮機3との間には、レシーバ9において気液分離された気体冷媒をスクロール圧縮機3に供給するインジェクション流路(供給部)517が配置されている。
オイルセパレータ503とインジェクション流路517との間には、オイルセパレータ503により分離された潤滑油をインジェクション流路517に供給するオイル流路519が配置されている。オイル流路519には絞り521が設けられ、絞り521により、オイルセパレータ503内とインジェクション流路517内との圧力差を調整している。
【0072】
次に上述した空気調和機501の作用について説明する。
スクロール圧縮機3により圧縮され高圧となった冷媒は、図18に示すように、オイルセパレータ503に向かって吐出される。オイルセパレータ503に流入した冷媒は、スクロール圧縮機3の潤滑油と冷媒とに分離され、分離された冷媒はコンデンサ5に向かって吐出される。
【0073】
コンデンサ5に流入した冷媒はその熱を外部に放出して凝縮し、第1膨張弁7に向かって流出する。冷媒は第1膨張弁7により減圧され中間圧の冷媒となりレシーバ9に流入する。冷媒はレシーバ9において液冷媒とガス冷媒とに分離され、液冷媒は第2膨張弁11に向かって流出する。液冷媒は第2膨張弁11により減圧され低圧の冷媒となり、エバポレータ13に流入する。低圧の冷媒はエバポレータ13において外部の空気から熱を奪い、蒸発してガス冷媒となり、スクロール圧縮機3に流入し、再び圧縮される。
【0074】
一方、レシーバ9において分離されたガス冷媒は、インジェクション流路517を介してスクロール圧縮機3に流入する。スクロール圧縮機3に流入した冷媒は再び圧縮される。
オイルセパレータ503において分離された潤滑油は、オイル流路519によりインジェクション流路517に供給される。インジェクション流路517に供給された潤滑油は、冷媒とともにスクロール圧縮機3に流入する。
再びスクロール圧縮機3により圧縮された冷媒は、コンデンサ5に吐出され上述のサイクルを繰り返す。
【0075】
上記の構成によれば、オイルセパレータ503により分離された潤滑油を、インジェクションポート17pを介して、スクロール圧縮機3の圧縮室C1,C2に戻すことができる。圧縮室C1,C2に潤滑油を戻すことにより、シール性を向上させ、圧縮室C1,C2からの冷媒漏れを防止でき、スクロール圧縮機3の能力向上、および、空気調和機501の能力向上を図ることができる。
【0076】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
上記の実施の形態においては、この発明を空気調和機として説明したが、具体的には冷凍機、空調機など、その他各種の空気調和機を適用した機器に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る空気調和機を説明する概略図である。
【図2】図1のスクロール圧縮機の構成を説明する断面図である。
【図3】図2の固定スクロールおよび旋回スクロールの構成を説明する斜視図である。
【図4】図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。
【図5】図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。
【図6】図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。
【図7】図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。
【図8】図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。
【図9】図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。
【図10】図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。
【図11】図2の固定スクロールと旋回スクロールとの動き、および、圧縮室の変化を説明する図である。
【図12】図4から図11までのインジェクションポートから冷媒が供給される圧縮室の容積変化を示すグラフである。
【図13】図3のインジェクションポートの他の形成位置を説明する部分拡大図である。
【図14】本発明の第2の実施形態における空気調和機のスクロール圧縮機の構成を説明する部分拡大図である。
【図15】図14の貫通孔から冷媒が供給される圧縮室の容積変化を示すグラフである。
【図16】本発明の第3の実施形態における空気調和機のスクロール圧縮機の構成を説明する部分拡大図である。
【図17】本発明の第4の実施形態における空気調和機のスクロール圧縮機の構成を説明する部分拡大図である。
【図18】本発明の第5の実施形態における空気調和機を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0078】
1,101,301,401,501 空気調和機
3,103,303,403 スクロール圧縮機
5 コンデンサ(放熱器)
7 第1膨張弁(高圧側減圧部)
11 第2膨張弁(低圧側減圧部)
13 エバポレータ(吸熱器)
17,517 インジェクション流路(供給部)
17p,121,317p,417p インジェクションポート(供給部、貫通孔)
23,323,423 固定スクロール
23a,25a 端板
23b,25b 壁体
25,125 旋回スクロール
42,43 段差部
44,45 段付部
119 弁構造(制御部)
323h 連結壁面(接触部)
503 オイルセパレータ(油分離器)
C,C1,C2 圧縮室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの端版の一側面に渦巻き状の壁体を立設させた固定スクロールおよび旋回スクロールが、互いに噛み合うことにより冷媒を圧縮する複数の圧縮室を形成するスクロール圧縮機であって、
前記固定スクロールと旋回スクロールの少なくともいずれか一方の端板の前記一側面には、その高さが前記壁体の渦に沿ってその中心部側で高く外端側で低くなる段差部が設けられるとともに、
前記固定スクロールと旋回スクロールのいずれか他方の壁体の上縁には、前記端板の段差部に対応し、複数の部位に分割されかつ該部位の高さが渦の中心部側で低く外端側で高くなる段付部が設けられ、
前記冷媒を圧縮中の前記複数の圧縮室に、外部から供給された冷媒を供給する供給部が設けられ、
少なくとも前記複数の圧縮室が離間した前記段差部および前記段付部を含む間に、前記供給部から冷媒が供給されることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項2】
前記供給部が、前記固定スクロールと旋回スクロールの少なくともいずれか一方の端板に設けられた貫通孔であり、
該貫通孔が、少なくとも前記複数の圧縮室が離間した前記段差部および前記段付部を含む間に、前記複数の圧縮室と連通する位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載のスクロール圧縮機。
【請求項3】
前記供給部が、前記段差部における前記段付部との接触部に設けられていることを特徴とする請求項1記載のスクロール圧縮機。
【請求項4】
前記壁体の上縁における、前記段付部からうずの中心部側の領域、および、前記段付部から外端側の領域には、前記端板と接触するシール部材が設けられ、
前記端板における前記シール部材が摺動しない領域に、前記供給部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のスクロール圧縮機。
【請求項5】
前記供給部から前記複数の圧縮室への前記冷媒の供給を制御する制御部を有し、
該制御部が、前記段差部と前記段付部とが離間している間に、前記供給部から冷媒が供給されるように制御することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のスクロール圧縮機。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のスクロール圧縮機と、
該スクロール圧縮機により圧縮された冷媒から潤滑油を分離する油分離器と、
該スクロール圧縮機により圧縮された冷媒の熱を放熱させる放熱器と、
放熱された冷媒の圧力を減圧させる高圧側減圧部と、
減圧された冷媒を更に減圧させる低圧側減圧部と、
該低圧側減圧部で減圧された冷媒に熱を吸収させる吸熱器と、を有し、
前記スクロール圧縮機の供給部には、前記高圧側減圧部により減圧された冷媒と、前記油分離器により分離された前記潤滑油と、が供給されることを特徴とする空気調和機。
【請求項1】
それぞれの端版の一側面に渦巻き状の壁体を立設させた固定スクロールおよび旋回スクロールが、互いに噛み合うことにより冷媒を圧縮する複数の圧縮室を形成するスクロール圧縮機であって、
前記固定スクロールと旋回スクロールの少なくともいずれか一方の端板の前記一側面には、その高さが前記壁体の渦に沿ってその中心部側で高く外端側で低くなる段差部が設けられるとともに、
前記固定スクロールと旋回スクロールのいずれか他方の壁体の上縁には、前記端板の段差部に対応し、複数の部位に分割されかつ該部位の高さが渦の中心部側で低く外端側で高くなる段付部が設けられ、
前記冷媒を圧縮中の前記複数の圧縮室に、外部から供給された冷媒を供給する供給部が設けられ、
少なくとも前記複数の圧縮室が離間した前記段差部および前記段付部を含む間に、前記供給部から冷媒が供給されることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項2】
前記供給部が、前記固定スクロールと旋回スクロールの少なくともいずれか一方の端板に設けられた貫通孔であり、
該貫通孔が、少なくとも前記複数の圧縮室が離間した前記段差部および前記段付部を含む間に、前記複数の圧縮室と連通する位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載のスクロール圧縮機。
【請求項3】
前記供給部が、前記段差部における前記段付部との接触部に設けられていることを特徴とする請求項1記載のスクロール圧縮機。
【請求項4】
前記壁体の上縁における、前記段付部からうずの中心部側の領域、および、前記段付部から外端側の領域には、前記端板と接触するシール部材が設けられ、
前記端板における前記シール部材が摺動しない領域に、前記供給部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のスクロール圧縮機。
【請求項5】
前記供給部から前記複数の圧縮室への前記冷媒の供給を制御する制御部を有し、
該制御部が、前記段差部と前記段付部とが離間している間に、前記供給部から冷媒が供給されるように制御することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のスクロール圧縮機。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のスクロール圧縮機と、
該スクロール圧縮機により圧縮された冷媒から潤滑油を分離する油分離器と、
該スクロール圧縮機により圧縮された冷媒の熱を放熱させる放熱器と、
放熱された冷媒の圧力を減圧させる高圧側減圧部と、
減圧された冷媒を更に減圧させる低圧側減圧部と、
該低圧側減圧部で減圧された冷媒に熱を吸収させる吸熱器と、を有し、
前記スクロール圧縮機の供給部には、前記高圧側減圧部により減圧された冷媒と、前記油分離器により分離された前記潤滑油と、が供給されることを特徴とする空気調和機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−64005(P2007−64005A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247605(P2005−247605)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]